JP4295869B2 - 半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製法 - Google Patents

半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性および耐半田性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、トランジスタ、IC、LSI等の半導体素子は、外部環境からの保護および素子のハンドリングを可能にする観点から、プラスチックパッケージ、例えば、エポキシ樹脂組成物を用いて封止され半導体装置化されている。その際に生じる様々な不具合としては、ダイパッド部の変形、ボンディングワイヤーの変形、ボイドの発生等があげられる。上記ダイパッド部の変形、ボンディングワイヤーの変形といったパッケージ内部における封止材料の流動により発生する不良は、エポキシ樹脂組成物の粘度を下げるという対策により解決できる。一方、上記ボイドの発生といった封止材料の流動時の巻き込みエアー、封止材料からの発生ガス等が原因の不良は一般的にエポキシ樹脂組成物の粘度を上げることが効果的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、成形時の不良に対しては、その不良内容により、エポキシ樹脂組成物の対策方法は全く異なり、二律背反の関係が生まれ、結果的には各パッケージ毎にそのバランスをとるしか方法がなかった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、成形性および耐半田性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製法の提供をその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)〜(C)成分、ならびに無機質充填剤および硬化促進剤を必須成分とする配合成分を同時に配合してベント式混練機を用い各成分を減圧下にて混練して半導体封止用エポキシ樹脂組成物を製造する方法であって、上記混練後の半導体封止用エポキシ樹脂組成物中の揮発成分が0.1重量%以下である半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製法を要旨とする。
(A)エポキシ樹脂。
(B)フェノール樹脂。
(C)シランカップリング剤溶液。
【0006】
本発明者らは、エポキシ樹脂組成物を用いての半導体装置化に際して生じる、ダイパッド部の変形、ボンディングワイヤーの変形、ボイドの発生等様々な不具合の発生を抑制し、優れた成形性を備えた封止材料となるエポキシ樹脂組成物を得ることを目的として鋭意検討を重ねた。その結果、その配合成分としてシランカップリング剤を溶液状態で配合に供するとともに、各成分の混練をベント式混練機を用いて減圧下にて混練し封止材を製造し、混練後の封止材中の揮発成分を特定の値以下に設定すると、この封止材を用いた場合、上記成形時の不良の発生が抑制されて信頼性の高い半導体装置が得られることを見出し本発明に到達した。
【0007】
上記ベント式混練機として、ベントポートが角筒状に形成され、上記ベントポート内における長さ方向(すなわち、スクリュー軸に沿う方向)の距離がスクリュー軸のスクリュー部(このスクリュー部はベントポートに対応する部分に設けられている)のスクリューのピッチの1.5倍以上に形成され、幅方向(すなわち、スクリュー軸に直交する方向)の距離がシリンダの幅寸法と同寸法以上に形成されているベント式混練機を用いる場合には、ベントポートにコンパウンドが付着してベントポートを閉塞することがなく、これにより混練され得られた封止材は、揮発成分含有率のより少ない半導体封止材が得られるようになる。
【0008】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0009】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製法においては、配合成分として、エポキシ樹脂(A成分)と、フェノール樹脂(B成分)と、シランカップリング剤溶液(C成分)、無機質充填剤および硬化促進剤が用いられ、これら成分を必須成分とする配合成分をベント式混練機を用い減圧下にて混練することにより半導体封止用エポキシ樹脂組成物を製造するものである。そして、このようにして得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、通常、粉末状もしくはそれを打錠したタブレット状に成形して用いられる。
【0010】
上記エポキシ樹脂(A成分)としては、特に限定するものではなく各種のエポキシ樹脂が用いられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらエポキシ樹脂のなかでも、ビフェニル型エポキシ樹脂や低級アルキル基をフェニル環に付加したような低吸湿型のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、エポキシ当量150〜250、軟化点もしくは融点が50〜130℃のものが好ましい。
【0011】
上記エポキシ樹脂(A成分)とともに用いられるフェノール樹脂(B成分)は、上記エポキシ樹脂(A成分)の硬化剤として作用するものであり、特に限定するものではなく、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビフェニル型ノボラック、トリフェニルメタン型、ナフトールノボラック、フェノールアラルキル樹脂等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、フェノールアラルキル樹脂のように低吸湿性のものを用いることが好ましい。
【0012】
上記エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)の配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量あたり、フェノール樹脂中の水酸基当量が0.5〜2.0当量となるように配合することが好ましい。より好ましくは0.8〜1.2当量である。
【0013】
上記エポキシ樹脂(A成分)およびフェノール樹脂(B成分)とともに用いられるシランカップリング剤溶液(C成分)は、具体的には、シランカップリング剤の水溶液、シランカップリング剤のアルコール溶液等の状態で封止材の製造工程に供される。このように、シランカップリング剤を溶液状態として供することにより、例えばシランカップリング剤のアルコキシ基が容易に加水分解して無機質充填剤と反応し易く、シラノール基を生成するという効果を奏する。上記シランカップリング剤のアルコール溶液に用いられるアルコールとしては、一般的なアルコールであれば特に限定するものではないが、沸点が50〜80℃のアルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等があげられる。上記シランカップリング剤溶液における濃度は、水溶液およびアルコール溶液等の溶媒に関係なく、1〜10重量%の範囲に設定することが好ましい。特に好ましくは3〜8重量%である。すなわち、シランカップリング剤溶液の濃度が1重量%未満のように低いと、除去する水またはアルコールの量が多くなり、ベントによる除去が困難となる傾向がみられる。一方、シランカップリング剤溶液の濃度が10重量%を超えて高いと、例えば、シランカップリング剤のアルコキシ基の加水分解に時間を要する傾向がみられるからである。なお、上記加水分解を促進させるために、このシランカップリング剤溶液のpHを適宜調整してもよい。
【0014】
上記シランカップリング剤としては、特に限定するものではなく各種シランカップリング剤を用いることができ、なかでも、2個以上のアルコキシ基を有するものが好適に用いられる。具体的には、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0015】
上記シランカップリング剤溶液(C成分)中のシランカップリング剤の混練時における配合量は、配合成分全体中の0.05〜1重量%の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは0.1〜0.5重量%である。すなわち、シランカップリング剤溶液の配合量が0.05重量%未満のように少な過ぎると、機械的強度が向上せず、また無機成分表面を濡らす効果が損なわれる傾向がみられ、1重量%を超え多過ぎると、シランカップリング剤同士の重合反応が進行し、目的とする有機成分と無機成分のカップリング効果が減少する傾向がみられるからである。
【0016】
上記A〜C成分とともに用いられる上記無機質充填剤としては、特に限定するものではなく従来公知の各種充填剤が用いられる。例えば、溶融シリカ粉末や結晶性シリカ粉末等のシリカ粉末、アルミナ粉末等が用いられる。これらの無機質充填剤は、破砕状、球状、あるいは摩砕処理したもの等いずれのものでも使用可能である。なかでも、球状溶融シリカ粉末を用いることが好ましい。そして、これらは単独もしくは2種以上混合して用いられる。そして、上記無機質充填剤としては、平均粒径が5〜40μmの範囲のものを用いることが、流動性を良好にするという点から好ましい。上記平均粒径の測定は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0017】
上記無機質充填剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中80〜92重量%となるよう設定することが好ましく、特に好ましくは87〜92重量%である。すなわち、無機質充填剤の配合量が80重量%未満では、成形後のパッケージの吸水量が増え、実装時の信頼性が低下する傾向がみられ、92重量%を超えると、高粘度となり流動性に劣る傾向がみられるようになるからである。
【0018】
上記硬化促進剤は、エポキシ基と水酸基との反応を促進するものであれば特に限定するものではなく、従来公知のもの、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン系化合物、トリエチレンジアミン等の三級アミン類、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物等があげられる。これら硬化促進剤は単独でもしくは2種以上併せて用いられる。また、これら硬化促進剤は、分散性の観点から、予めフェノール樹脂と予備混合させて用いることが好ましい。
【0019】
本発明では上記エポキシ樹脂(A成分)、フェノール樹脂(B成分)、シランカップリング剤溶液(C成分)および無機質充填剤、硬化促進剤以外に、必要に応じて、難燃剤、難燃助剤、離型剤、カーボンブラック等の顔料や着色料、低応力化剤、粘着付与剤等他の添加剤を適宜配合することができる。
【0020】
上記難燃剤としては、ノボラック型ブロム化エポキシ樹脂等があげられ、さらに上記難燃助剤として、三酸化二アンチモンや五酸化二アンチモン等が用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0021】
上記離型剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸カルシウム等の化合物があげられ、例えば、カルナバワックスやポリエチレン系ワックスが用いられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0022】
また、上記低応力化剤としては、アクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体等のブタジエン系ゴムやシリコーン化合物があげられる。さらに、耐湿信頼性テストにおける信頼性向上を目的としてハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等のイオントラップ剤を配合してもよい。
【0023】
本発明では、半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、前記エポキシ樹脂(A成分)、フェノール樹脂(B成分)、シランカップリング剤溶液(C成分)および無機質充填剤、硬化促進剤ならびに必要に応じて他の添加剤を配合しミキサー等で充分に混合した後、さらにベント式混練機で減圧下にて溶融混練する。ついで、これを室温に冷却した後、公知の手段によって粉砕し、必要に応じて打錠するという一連の工程を経由することによって目的とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物を製造することができる。また、上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物の混練物を溶融状態で略円柱状の顆粒体もしくはペレット状に成形するという一連の工程によっても製造することができる。
【0024】
上記製造工程において用いられるベント式混練機は、2軸脱気用押出機に、ベントポートを設けたものである。この2軸脱気用押出機は、上記ベントポートで上記混合物であるスラリー状材料中の揮発分を脱気させるようにしている。そして、2軸脱気用押出機のシリンダ内に、互いに逆方向に回転する2本のスクリュー軸を左右に並設するとともに、シリンダの周壁の一部からベントポートを立ち上げ形成している。
【0025】
より詳しく説明すると、2軸脱気用押出機のシリンダの内部にスクリュー軸が配設されるとともに、シリンダの周壁の一部にベントポートが形成されており、上記スクリュー軸には、上記ベントポートに対応する部分に原料送り用のスクリュー部が形成されているとともに、このスクリュー部を挟む状態でその前後の部分に混練用のパドル部が形成されている。これにより、上記スクリュー部とシリンダの内周面との間に原料送りゾーンが形成されるとともに、上記各パドル部とシリンダの内周面との間に(加熱)混練ゾーンが形成され、上記原料送りゾーンがその両側の(加熱)混練ゾーンで気密状に密封されて原料送りゾーンの真空度が保たれることから、ベントポートでの脱気が効率良く行われるようになる。このような脱気は、真空ポンプ等により行われる。また、本発明で用いられるベント式混練機において特に好ましいものは、上記ベントポートが角筒状に形成されており、このベントポート内における長さ方向の距離が上記スクリュー部のスクリューのピッチ(通常は、5〜20mm)の1.5倍以上に、好適には、5倍程度に形成され、幅方向の距離がシリンダの幅寸法と同寸法以上に形成されている。すなわち、上記ベントポート内における長さ方向の距離が上記スクリュー部のスクリューのピッチの1.5倍未満に形成され、幅方向の距離がシリンダの幅寸法未満に形成されている場合には、ベントポートの側壁に、混合物(コンパウンド)が付着しやすくなり、ベントポートが短時間で閉塞する傾向がみられるからである。このようなベント式混練機としては、例えば、特開平7−314440号公報に開示されたベント式混練機が好適に用いられる。
【0026】
つぎに、本発明において用いられるベント式混練機の具体例を図面に基づいて説明する。図1および図2は本発明に特に好ましく用いられるベント式混練機の一例を示している。このベント式混練機は2軸型であり、シリンダ1と、このシリンダ1内に左右に並設され同方向に回転する2本のスクリュー軸4とを備えている。これら両スクリュー軸4には、その後側から順に、原料送り用の第1スクリュー部5a,混練用の第1パドル部6a,原料送り用の第2スクリュー部5b,混練用の第2パドル部6bおよび戻し用の第3スクリュー部5cが設けられている。一方、上記シリンダ1には、その上壁の後端部に原料供給口2が立設されているとともに、下壁の前端部(上記第2パドル部6bの前端部に対応する部分)に吐出口3が穿設されている。また、上記シリンダ1には、上記各パドル部6a,6bに対応する周壁の部分にヒーター等の加熱手段(図示せず)が取付けられているとともに、上記第2スクリュー部5bに対応する上壁の部分に、横断面形状長方形に形成された筒状のベントポート7が立設されている。このベントポート7は、その前後両側壁7a間の距離が、第2スクリュー部5bのスクリューのスクリューピッチの1.5倍以上、好適には5倍の値に設定され、左右両側壁7b間の距離が、シリンダ1の幅寸法と同寸法に設定されている。図において、8はベントポート7の上面開口を蓋する蓋体であり、この蓋体8の側壁に穿設された開口部8aを真空ポンプ(図示せず)に連通している。
【0027】
上記ベント式混練機を用いた溶融混練条件としては、有機成分の軟化点、融点以上の温度に設定することが好ましく、通常、70〜130℃で、1.5〜40kPaの範囲に設定される。
【0028】
前述の製法に従って得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物において、少なくとも混練直後の半導体封止用エポキシ樹脂組成物中の揮発成分が0.1重量%以下となる必要がある。特に好ましくは0.05重量%以下である。すなわち、揮発成分が0.1重量%を超え多いと、成形時のボイドの形成等の不具合が発生するからである。
【0029】
そして、上記揮発成分は、得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物の加熱減量を測定することにより求められる。すなわち、得られたエポキシ樹脂組成物を175℃×1時間の雰囲気下に投入し、加熱後の重量を測定して減量した重量を下記の式により算出して加熱減量を測定した。
【0030】
【数1】
Figure 0004295869
【0031】
このような半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いての半導体素子の封止は、特に制限するものではなく、通常のトランスファー成形等の公知のモールド方法により行うことができる。
【0032】
このようにして得られる半導体装置は、成形性に優れたエポキシ樹脂組成物によって封止されているため、ダイパッド部の変形やボンディングワイヤーの変形といったパッケージ内部での封止材の流動により発生する不良とともに、封止材流動時の巻き込みエアーおよび封止材から発生したガス等が原因となるボイドの発生等が抑制され成形性が向上して、結果、高い信頼性を備えたものである。
【0033】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0034】
まず、下記に示す各成分を準備した。
【0035】
〔エポキシ樹脂A〕
下記の式(1)で表されるビフェニル系エポキシ樹脂(エポキシ当量195、融点107℃)
【0036】
【化1】
Figure 0004295869
【0037】
〔エポキシ樹脂B〕
ブロム化エポキシ樹脂(エポキシ当量275、軟化点84℃)
【0038】
〔フェノール樹脂〕
下記の式(2)で表されるフェノールアラルキル樹脂(水酸基当量174、軟化点83℃)
【0039】
【化2】
Figure 0004295869
【0040】
〔リン系硬化促進剤〕
トリフェニルホスフィン
【0041】
〔シリカ粉末〕
溶融球状シリカ粉末(平均粒径30μm)
【0042】
〔シランカップリング剤〕
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
【0043】
〔離型剤〕
カルナバワックス
【0044】
〔三酸化二アンチモン〕
【0045】
〔カーボンブラック〕
【0046】
〔シランカップリング剤溶液の調製〕
下記の表1に示す各成分を同表に示す割合で配合し混合することによりシランカップリング剤溶液を調製した。
【0047】
【表1】
Figure 0004295869
【0048】
【実施例1〜6】
下記の表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、ミキサーで充分混合した後、前述の図1および図2に示すベント式混練機を用いこれで溶融混練を行った。つぎに、この溶融物を冷却した後粉砕することにより目的とする粉末状エポキシ樹脂組成物を得た。
【0049】
〔ベント式混練機〕
全長700mm×横幅250mm
2本のスクリュー軸:回転数50〜150rpm
ベントポート:ベントポートの前後両側壁間の距離が、第2スクリュー部のスクリュー のスクリューピッチ(12mm)の5倍の値(60mm)
左右両側壁間の距離が、シリンダの幅寸法と同寸法(95mm)
【0050】
〔溶融混練条件〕
溶融ゾーン:110℃×1分間、13kPaで減圧
【0051】
【表2】
Figure 0004295869
【0052】
【比較例1】
下記の表3に示す各成分を同表に示す割合で配合し、ミキサーで充分混合した後、前述の図1および図2に示すベント式混練機を用いこれで溶融混練を行った。つぎに、この溶融物を冷却した後粉砕することにより目的とする粉末状エポキシ樹脂組成物を得た。なお、ベント式混練機および溶融混練条件は上記実施例1と同様に設定した。
【0053】
【比較例2】
下記の表3に示す各成分を同表に示す割合で配合し、ミキサーで充分混合した後、前述の図1および図2に示すベント式混練機を用いこれで溶融混練を行った。つぎに、この溶融物を冷却した後粉砕することにより目的とする粉末状エポキシ樹脂組成物を得た。なお、ベント式混練機は上記実施例1と同様に設定し、溶融混練条件は減圧をせずそれ以外は上記実施例1と同様に設定した。
【0054】
【表3】
Figure 0004295869
【0055】
上記各エポキシ樹脂組成物中の混練直後の加熱減量(揮発成分量)を前述の方法に従って測定した。その結果を後記の表4〜表5に示す。また、このようにして得られた実施例品および比較例品の粉末状のエポキシ樹脂組成物を用いて、下記の方法に従ってフローテスター粘度を測定した。一方、上記粉末状のエポキシ樹脂組成物を用い打錠してタブレット化し、TOWA自動成形機を用いて半導体素子をトランスファー成形でモールド成形することにより半導体装置を得た。この半導体装置は、114ピン四方向フラットパッケージ(LQFP−114:20mm×20mm×厚み1.4mm)である。このようにして得られた半導体装置について、下記の方法に従って成形性(金線ワイヤー流れ、ダイシフト、ボイドの発生数)を評価した。これらの結果を後記の表4〜表5に併せて示す。
【0056】
〔フローテスター粘度〕
上記各エポキシ樹脂組成物を2g精秤し、タブレット状に成形した。そして、これを高化式フローテスターのポット内に入れ、10kgの荷重をかけて測定した。溶融したエポキシ樹脂組成物がダイスの穴(直径1.0mm×10mm)を通過して押し出されるときのピストンの移動速度からサンプルの溶融粘度を求めた。
【0057】
〔成形性〕
(1)金線ワイヤー流れ
上記金線を張ったLQFP−114の作製時において、図3に示すように、ダイパッド10を有するLQFPのパッケージフレームに金線ワイヤー14(ワイヤー最大長:3mm)を張り、これを用い上記エポキシ樹脂組成物により樹脂封止してパッケージを作製した。図3において、15は半導体チップ、16はリードピンである。そして、作製したパッケージを軟X線解析装置を用いて、金線流れ量を測定した。測定は、各パッケージから10本ずつ金線を選定して測定し、図4に示すように、正面方向からの金線ワイヤー14の流れ量を測定した。そして、金線ワイヤー14の流れ量の最大部分となる値をそのパッケージの金線流れ量の値(dmm)とし、金線流れ率〔(d/L)×100〕を算出した。なお、Lは金線ワイヤー14間の距離(mm)を示す。そして、上記金線流れ率が5%以上のものを×、5%未満のものを○として表示した。
【0058】
(2)ダイシフト
上記金線流れと同様の条件にて半導体装置を作製した。すなわち、図5に示す形状の、半導体チップ15が搭載されたダイパッド10を有するLQFP−114のパッケージ11を成形し、このパッケージ11をパッケージ11のゲート口方向から切断(一点鎖線で切断面を示す)して、その切断面を観察し、ダイパッドの設計値との差によりダイパッドの変形量を測定した。すなわち、図6(a)に示すように、ダイパッドシフトが発生した状態のパッケージについて、ダイパッド10の角の下の樹脂層の厚み(厚みaμm)を測定した。一方、図6(b)に示すように、ダイパッドシフトが発生してない正常な状態のパッケージにおいて、ダイパッド10の角の下の樹脂層の厚み(厚みbμm)を測定した。その結果、上記測定値と上記正常品との差(a−b)を絶対値で求めた。そして、その差が100μm以上のものを×、100μm未満のものを○として表示した。
【0059】
(3)ボイドの発生数
上記作製したパッケージ(LQFP−114)を軟X線で観察して、直径0.2mm以上のボイドをカウントした。なお、各実施例および比較例各々につきパッケージは10個作製した。
【0060】
【表4】
Figure 0004295869
【0061】
【表5】
Figure 0004295869
【0062】
上記表4〜表5から、実施例品と比較例品と比較した場合、比較例品はいずれも揮発成分が0.1重量%を超えており、フローテスター粘度が低かった。そして成形性評価となる、金線ワイヤー流れ、ダイシフト、ボイドの発生において、実施例品は何ら問題が無かった。このことから、実施例品は、成形性において優れたものであることは明らかである。これに対して、比較例1品は金線ワイヤー流れおよびダイシフトの評価が悪く、またボイドが発生した。また、比較例2品は金線ワイヤー流れおよびダイシフトの評価は問題なかったが、ボイドが多く形成された。
【0063】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、その配合成分としてシランカップリング剤を溶液状態で供するとともに、各配合成分をベント式混練機を用いて減圧下にて混練することにより半導体封止用エポキシ樹脂組成物を製造する方法であって、しかも混練後のエポキシ樹脂組成物中の揮発成分を特定の値以下に設定するものである。このため、得られる半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、成形性に優れており、これを半導体素子の封止材として用いた場合、成形時のダイパッド部の変形、ボンディングワイヤーの変形といったパッケージ内部での封止材の流動性に起因した不良の発生が抑制されるとともに、封止材の流動時のエアーの巻き込みや封止材からの発生ガス等が原因となるボイドの発生等成形時の不良の発生が抑制されて信頼性の高い半導体装置が得られる。
【0064】
上記ベント式混練機として、ベントポートが角筒状に形成され、上記ベントポート内における長さ方向(すなわち、スクリュー軸に沿う方向)の距離がスクリュー軸のスクリュー部(このスクリュー部はベントポートに対応する部分に設けられている)のスクリューのピッチの1.5倍以上に形成され、幅方向(すなわち、スクリュー軸に直交する方向)の距離がシリンダの幅寸法と同寸法以上に形成されているベント式混練機を用いる場合には、ベントポートにコンパウンドが付着してベントポートを閉塞することがなく、これにより混練され得られた封止材は、揮発成分含有率のより少ない半導体封止材が得られるようになる。
【0065】
したがって、上記エポキシ樹脂組成物を用いて樹脂封止された半導体装置においては、例えば、ダイパッド部の変形、ボンディングワイヤーの変形、ボイドの発生等成形時の不良の発生が抑制され、高い信頼性を備えた半導体装置が得られる。このように、上記エポキシ樹脂組成物を用いた場合、成形時の不具合が改善されるため、表面実装形態のパッケージに適用しても、基板実装時の熱応力に起因するパッケージクラックや界面剥離の問題も改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いられるベント式混練機の例を示す要部の断面図である。
【図2】 上記ベント式混練機の側面図である。
【図3】 金線流れ量を測定するために用いるパッケージを示す正面図である。
【図4】 金線流れ量の測定方法を示す説明図である。
【図5】 ダイシフト量を測定するために用いるパッケージを示す正面図である。
【図6】 ダイシフトの測定方法を示す説明図であり、(a)はダイシフトが発生した状態を示す断面図であり、(b)は正常な状態を示す断面図である。

Claims (3)

  1. 下記の(A)〜(C)成分、ならびに無機質充填剤および硬化促進剤を必須成分とする配合成分を同時に配合してベント式混練機を用い各成分を減圧下にて混練して半導体封止用エポキシ樹脂組成物を製造する方法であって、上記混練後の半導体封止用エポキシ樹脂組成物中の揮発成分が0.1重量%以下であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製法。
    (A)エポキシ樹脂。
    (B)フェノール樹脂。
    (C)シランカップリング剤溶液。
  2. 上記ベント式混練機が、シリンダの内部にスクリュー軸が配設されるとともにシリンダの周壁の一部にベントポートが形成され、上記スクリュー軸が上記ベントポートを挟む前後の部分に形成されたパドル部を備え、上記ベントポートが角筒状に形成され、上記ベントポート内における長さ方向の距離が上記パドル部に挟まれたスクリュー部のスクリューのピッチの1.5倍以上に形成され、幅方向の距離がシリンダの幅寸法と同寸法以上に形成されているベント式混練機である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製法。
  3. 上記(C)成分であるシランカップリング剤溶液の濃度が、1〜10重量%である請求項1または2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製法。
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