JP4295800B2 - 電解銅箔 - Google Patents

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本発明は、フレキシブルプリント配線板に関し、特に、チップオンフィルムタイプに好適なフレキシブルプリント配線板に用いる電解銅箔に関する。
近年、電子機器産業の発展に伴い、IC、LSIなどの電子部品を実装するフレキシブルプリント配線板の要求が急激に増加している。そして、その電子機器自体のダウンサイジング化、即ち小型軽量化、高機能は著しく進展している。そのため、これら電子部品等を実装する方法として、TAB(テープオートメイティッドボンディング)テープ、T−BGA(ボールグリットアレイ)テープ、ASIC(アプリケーションスペシフィックインテクレーティドサーキット)テープ等のフレキシブルフィルムキャリアテープを用いた実装方式が採用されている。特に、パーソナルコンピュータ、携帯電話のような液晶表示ディスプレイを有する電子機器においては、高精細化、薄型化等の進展は凄まじく、従来では実現できないファインピッチ回路を形成したフレキシブルプリント配線板が要求されており、それにIC等を実装する方法の確立が急務とされている。
上記のような電子機器のダウンサイジング化に対応するためには、狭小なスペースにIC等の実装を可能とする技術が必要になるが、最近着目されている技術として、いわゆるチップオンフィルム(以下COFと称す)と呼ばれる実装方式がある。このCOFには、導体回路を形成する導電性材料である銅箔等(導体層)と、ポリイミドなどの絶縁材からなるフィルム(絶縁層)とを積層したものが用いられ、この積層フィルム(以下、フレキシブル積層板と称す)にエッチング処理を施して導体回路を形成してフレキシブルプリント配線板とし、これに直接ICチップを搭載するという実装(COF)を行うのである。
このCOFに用いられるフレキシブルプリント配線板は、従来のTABテープのようなデバイスホールがなく、フィルムが支持していない導体回路部分に相当するインナーリードが存在しない。つまり、導体回路(インナーリードであっても)は必ずフィルムが支持した状態になっているので、TABテープのインナーリードに相応する導体回路のライン−スペースを更にファイン化することが可能となる。何故なら、フィルムの支持があるために導体回路をファインにしても、ボンディング時に要求される導体回路強度が確保できるからである。
ところで、このCOF用のフレキシブルプリント配線板にはデバイスホールがないことからIC等の実装時における位置決めは、一方向から導体回路パターンに光を当て、反対側のフィルムの透過光を確認して、導体回路パターン形状を直接認識することにより行われている。この透過光による位置決め法は、従来から用いられているTABテープ用実装機械に適用できるため、COF専用チップボンダーのような高額な機器を用いる必要もなくなり、広く採用される傾向にある。このようなことから、COF用のフレキシブルプリント配線板については、位置決めパターンを正確に認識できる程度の光透過率を有することが要求されている。
このCOFに用いられるフレキシブルプリント配線板としては、ポリイミド樹脂等のフィルム(絶縁層)表面にニッケルなどの金属シード層を形成し、その金属シード層に導体となる銅をメッキ等して形成する方法で得られる二層タイプのものが知られている。いわゆるダイレクトメタライズ法と呼ばれるこの方法で得られたフレキシブルプリント配線板は、ポリイミド樹脂などにより構成される絶縁層が比較的透明な状態で仕上がり光透過率も高いため、IC実装時の位置合わせは容易に行えるものの、形成した導体回路と絶縁層との密着性(ピール強度)が低いことやマイグレーションを起こしやすい傾向があることを指摘されている。
また、その他のフレキシブルプリント配線板としては、導体となる銅箔などの表面に絶縁層としてのポリイミド樹脂などを塗布するというキャスティング法や、導体回路形成をするための導体層として、銅箔をポリイミド樹脂等のフィルムへ貼り付ける、最も一般的なラミネート法により製造できることが知られている。このキャスティング法やラミネート法により得られたフレキシブルプリント配線板は、ダイレクトメタライズ法に比較すると絶縁層と導体層との密着性に優れ、耐マイグレーション性も良好である。しかしながら、導体層である銅箔をエッチング除去した部分の絶縁層は、銅箔の接着面のレプリカとなるため、光を散乱する傾向があり、IC実装時に透過光による位置決めが行えない場合があった。
そのため、キャスティング法やラミネート法によるフレキシブルプリント配線板をCOFに用いる場合、導体回路形成のエッチング処理に加え、別途レーザー加工等を行うことでポリイミド樹脂等の絶縁層に位置決め用穴を設けて対応することが余儀なくされていたのが現状であった。
このような問題に対し、本出願人はCOF用途に好適な積層フィルム及びフィルムキャリアテープを提案している(例えば、特許文献1 特開2003−23046号公報参照)。この積層フィルムは、導体層と絶縁層が積層された構造となっており、この導体層をエッチングした領域の絶縁層の光透過率が50%以上であることを特徴とする。そして、このような積層フィルムの導体層を形成する銅箔は、その接着面の表面粗さを0.1〜1.8μmとすることで高光透過率の積層フィルムを実現するものとした。このような積層フィルム及びフィルムキャリアテープは、IC等の実装時における位置決めが良好に行えるものである。
特開2003−23046号公報
しかしながら、接着面の表面粗度を小さくした銅箔を使用した場合、導体層と絶縁層との密着性、即ち導体回路のピール強度が低くなることは避けられず、絶縁層を構成する樹脂の種類や、銅箔の接着面における、表面粗度を含む表面処理法などを種々検討した上で、所望のピール強度を備える積層フィルムを製造する必要がある。また、銅箔の接着面における表面粗度を制御することにより、積層フィルムの光透過率はある程度のコントロールはできるものの、所定の光透過率を有し、且つ密着性も良好な積層フィルムを実現するために、電解銅箔の接着面を如何なるパラメータにより品質管理すればよいかについては、十分な知見がなく、早期の解明を要求されているのが現状である。
本発明は、以上のような事情のもとになされたもので、フレキシブルプリント配線板を構成する際の絶縁層の高光透過率を実現できるとともに、導体層と絶縁層との密着性、及び耐マイグレーション特性に優れるCOFに好適なフレキシブルプリント配線板を実現可能な電解銅箔を提供するものである。
上述したように、キャスティング法やラミネート法により絶縁層に導体層を設け、導体回路を形成するエッチングした場合、導体層である電解銅箔の除去された部分の絶縁層の表面形状は銅箔接着面のレプリカとなる。即ち、絶縁層に接着する銅箔表面が平滑であれば、そのレプリカであるフィルムの表面も平滑な状態になる。しかし、その反対に密着強度を低下させるという相反する作用も生じる。そこで、本発明者らは、電解銅箔の接着面の性状、即ち表面粗さとその防錆処理、及びフレキシブルプリント配線板を構成する絶縁層の光透過率並びにその密着強度について鋭意検討を行い、本発明を想到するに至った。
本発明は、導体層と、該導体層が積層された絶縁層とを有し、該導体層をエッチングして回路形成されたチップオンフィルム(以下、COFと称す)用フレキシブルプリント配線板における導体層用の電解銅箔において、 前記電解銅箔は、絶縁層に接着される接着面が、表面粗度Rz0.05〜1.5μmであるとともに、入射角60°における鏡面光沢度が250以上であり、前記導体層である電解銅箔をエッチングして回路形成した際のエッチング領域における絶縁層の光透過率が50%以上となることを特徴とする電解銅箔に関する。
電解銅箔の表面形状は、その表面粗度値を用いて規定することが殆どで、一般的に表面粗度値が小さいとその表面は平滑であり、大きいと粗い表面を示すものとして使用されている。確かに、表面粗度値は表面形状を示すパラメータとして重要であるが、あくまでも表面形状における凹凸状態を数値として捉え平均化して表現したものである。そのため、光の散乱に影響を与える表面形状を特定するには十分なものといえなかった。つまり、表面粗度の測定値は小さくても光透過率があまり高くない表面状態となる絶縁層が存在したのであった。そこで、本発明者らは電解銅箔の接着面に関し、その表面形状を特定するために鏡面光沢度を測定したところ、この接着面の鏡面光沢度とエッチング後の絶縁層における光透過率とに相関があることを見出したのである。
本発明に係る電解銅箔を用いれば、導体層のエッチング処理後における絶縁層の光透過率が50%以上であり、形成した導体回路と絶縁層との密着強度も実用上問題ないフレキシブルプリント配線板を実現できる。そして、耐マイグレーションに優れ、非常にファインな導体形成が可能となる。
COF用のフレキシブルプリント配線板における光透過率に関しては、明確な基準が存在しているとは言えないが、従来からの経験より光源としては可視光、つまり波長400〜800nm程度の光を透過させることによって透過率を測定するのである。絶縁層、即ちフィルムの材質、種類によっては500nm以下の波長を大きく吸収するものがあるため、一般的には、600〜700nmの波長域の光源を用いるものである。この波長域は、いわゆるCCDカメラ等で画像認識処理する際に用いられる光源であり、この波長域の光透過率が約50%以上あれば位置決めを容易且つ確実に行えるものと考えられている。つまり、本発明におけるフレキシブルプリント配線板用の電解銅箔であれば、絶縁層の材質等にある程度の相違があっても、電解銅箔エッチング後の絶縁層の光透過率が600〜700nmの波長域の光で50%以上にすることが可能となり、IC実装時における位置決めが確実に行えるフレキシブルプリント配線板とすることができる。
このように高光透過率を実現できるフレキシブルプリント配線板とする場合、電解銅箔の接着面を表面粗度Rz0.05〜1.5μmとするとともに鏡面光沢度(入射角60°)で250以上であることが必要である。上述したように、表面粗度がある程度小さくても、実用的な光透過率を確保できない場合がある。そのため、現状の本発明者らの研究結果に基づけば、電解銅箔の接着面は、少なくとも表面粗度がRzで1.5μm以下であり、且つ入射角60°における鏡面光沢度が250以上であることが結論として導かれたのである。表面粗度Rzが、0.05μm未満であっても本発明のフレキシブルプリント配線板を構成できるものであるが、Rz0.05μm未満の極低粗度の電解銅箔を製造することの困難性を考慮し、この下限値を定めたものである。尚、この困難性とは、例えば、極低粗度の電解銅箔を製造するには、製造時に用いるドラム状回転陰極の表面を非常に平滑にするため、電解液中で陰極表面に析出した電解銅箔がその表面から容易に剥離し、その剥離した電解銅箔が陽極と接触して短絡するという製造技術上の問題が挙げられる。
また、本発明の電解銅箔は、その接着面における入射角20°の鏡面光沢度が100以上であることが望ましい。入射角60°の鏡面光沢度は、光沢度計の測定範囲として最も広く利用される値であるために採用した。さらに、本発明者らは、JIS規格(JIS Z 8741)に従い様々な入射角に関して鏡面光沢度を検討したところ、高い鏡面光沢度(入射角60°において鏡面光沢度70以上)の場合に採用される入射角20°で、電解銅箔の接着面を測定した結果、その鏡面光沢度が100以上であるものが本発明の目的とする高光透過率を備えるフレキシブルプリント配線板が実現できると判断したのである。
そして、本発明に係る電解銅箔は、非常に低粗度であっても、絶縁層との密着性に優れるものとするために、電解銅箔の接着面に、50〜99wt%ニッケルと50〜1wt%亜鉛との組成からなるニッケル−亜鉛合金による防錆処理層を備えることが好ましい。この防錆処理層は、電解銅箔自体の表面酸化を防止するとともに接着面と絶縁層との密着強度及び耐マイグレーション特性を向上させる役目を果たす。COF用のフレキシブルプリント配線板では、絶縁材としてポリイミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルサルホン、液晶ポリマー等が用いられ、特に全芳香族ポリイミドが好適なものとされているが、ニッケル−亜鉛合金はこれら絶縁材との密着性向上に有効である。特に、ニッケルはポリイミド系の絶縁材に対する密着性を良好にする傾向がある。ニッケルが50wt%未満であると、密着性の向上が確実に図れなくなり、99wt%を越えると、エッチング処理を行った際にニッケルの残留が生じやすくなるからである。また、亜鉛が1%未満であると、フレキシブルプリント配線板の製造時(キャスティング法やラミネート法)に生じる熱履歴により、銅が絶縁層側に拡散する傾向となり、その結果密着強度を確保できなくなる。亜鉛が50%を超えると、フレキシブルプリント配線板の製造時に用いられるSnめっき液に対する耐食性が低下し、導体回路の剥離減少が生じやすくなる傾向がある。
この本発明に係る電解銅箔における防錆処理は、ニッケル−亜鉛合金の接着面付着量を20〜100mg/mにすることが実用的に望ましい。20mg/m未満であると、密着強度を確保できなくなり、100mg/mを超えると、導体回路形成のエッチング時にエッチング残を生じる傾向がある。そしてさらに、このニッケル−亜鉛合金防錆処理を行う場合、ニッケルと亜鉛との量比は4:1〜7:3の範囲であることが好ましい。ニッケル−亜鉛合金のニッケル比率が80%を超えると、エッチング残が生じる傾向がある。また、亜鉛比率が30%を超えると、密着強度が低下する傾向がある。
そして、この防錆処理層は、ニッケル−亜鉛合金層上にクロメート層を形成したものであり、該防錆処理層表面にはアミノ官能性シランカップリング剤を吸着させたシランカップリング剤吸着層を形成することが望ましい。クロメート層とシランカップリング剤吸着層は、絶縁層との密着性をさらに向上させ、耐湿性や耐薬品性の向上を図ることができる。
このシランカップリング剤の種類には特に制限はなく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4−グリシジルブチルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどを用いることができる。また、本発明者等の研究によると、ポリイミド系の絶縁材に対しては、特にアミノ官能性シランが好適なものであることも確認している。例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
上記したように本発明の電解銅箔を用いて形成されるフレキシブルプリント配線板は、絶縁層としてポリイミド系樹脂が採用され易いが、このようなポリイミド系樹脂による絶縁層と電解銅箔との密着性はあまり良好ではなく、密着強度(ピール強度)を確保することが難しいとされている。特に、ポリイミド系樹脂からなるフィルム又は基材へ接着剤などを介さずに直接電解銅箔を接着する場合には、その密着性は非常に悪くなる。ところが、防錆処理層をニッケル−亜鉛合金により形成し、さらにアミノ官能性シランカップリング剤吸着層を形成しておくと、ポリイミド系樹脂からなる絶縁層との密着強度をある程度のレベルに維持できるようになるのである。
そして、キャスティング法のように電解銅箔表面に樹脂剤を塗布してポリイミド系樹脂による絶縁層を形成する場合にあっては、シランカップリング剤として上記したアミノ官能性シランを用いると、さらに密着強度を向上させることができる。このことについては、本発明者らは次のように推測している。代表的なポリイミドであるカプトンは、酸無水物とジアミンとの反応によりポリアミック酸を生成し、このポリアミック酸中のNH基とCOOH基のOHが脱水することによりイミド閉環がされ、ポリイミドとなる。ここで、本発明に係るフレキシブルプリント配線板において電解銅箔の接着面にアミノ官能性シランを備えている場合には、ポリアミック酸のOHとアミノ官能性シランの加水分解物の有するHとが脱水反応をして化学結合をする結果、優れた密着強度を実現できるものではないかと考えられる。
以上説明したような本発明に係る電解銅箔においては、電解銅箔の光沢面をその接着面として用いることが好ましい。本発明者らの研究によると、表面粗度がRz2μm弱の値を有する接着面であっても、絶縁層の光透過率が低くなることを確認している。本発明の電解銅箔は、通常、ドラム状回転陰極を硫酸銅電解液に浸漬して、電解反応によりドラム状回転陰極の周面へ銅を電着させ、電着した銅を該周面から連続的に剥がし取って製造される。この電解銅箔では、電着初期時、つまり、ドラム状回転陰極の周面に電着を開始した側の面を光沢面と呼び、その反対となる電解終了面側を粗面と呼び区別をする。つまり、光沢面はドラム状回転陰極の電着表面の転写形状となる平滑な表面であり、粗面は凹凸を持つ「つや消し」表面となるものである。LP箔(ロープロファイル銅箔)といわれるものは粗面側の表面粗度値をかなり低い値になるようにコントロールした電解銅箔であるが、その粗面には光沢があまりないものが通常である。また、このようにして得られた電解銅箔では、いわゆるリジットのプリント配線板を構成するプリプレグなどとの密着強度を考慮して、プリプレグとの接着面となる粗面側にコブ付け処理とよばれる粗化処理が一般的に行われる。このような粗化処理を行うと、その表面の光沢度はさらに低い状態となり、当然、このような光沢度の低い表面を接着面とした場合、ほぼ確実に絶縁層の光透過率が悪くなる。
そこで、本発明者等は、本発明に係る電解銅箔の製造方法を検討した結果、次のような製造方法によることが望ましいことを見出した。本発明に係る電解銅箔の製造方法としては、ドラム状回転陰極周面表面を0.05〜1.5μm(Rz)の表面粗度になるような研磨処理を行い、該ドラム状回転陰極を硫酸銅電解液に浸漬して、電解反応によりドラム状回転陰極の周面へ銅を電着させ、電着した銅を該周面から連続的に剥がし取って電解銅箔を形成し、該電解銅箔の光沢面側に上述した防錆処理層、シランカップリング剤吸着層を適宜形成するのである。
前述したように電解銅箔の光沢面はドラム状回転陰極の周面表面のレプリカとなるため、ドラム状回転陰極周面表面を表面粗度で0.05〜1.5μm(Rz)に研磨仕上げを行うのである。このような研磨処理が施されたドラム状回転陰極より得られる電解銅箔の光沢面に、ニッケル−亜鉛合金層、クロメート層、シランカップリング剤吸着層を適宜形成することで、本発明のフレキシブルプリント配線板用銅箔を製造できる。この場合、ドラム状回転陰極表面の研磨処理は、その周面に沿う方向に研磨スジが入りやすいが、このような研磨スジをできるだけ発生させないように行うことが望ましい。研磨スジが目立ってくると周面表面の表面粗度値が0.05〜1.5μm(Rz)となっていても、得られる電解銅箔の光沢面における鏡面光沢度が低くなる場合があるからである。つまり、得られた電解銅箔におけるドラムの周面に沿った長手方向(MD方向)と、ドラム幅方向(TD方向)では、鏡面光沢度の値が異なる傾向があることが認められたためである。
以上説明したように、本発明の電解銅箔を用いれば、フレキシブルプリント配線板を構成する絶縁層の光透過率を50%以上とすることができるので、IC実装時の位置合わせを精確に行うことが可能となり、導体層と絶縁層との密着性が良好であるばかりでなくて、耐マイグレーション特性も非常に優れたものとなる。さらに、導体層を形成する電解銅箔にコブ付け処理がされていないため、ファインピッチのCOF用のフレキシブルプリント配線板を容易に形成することも可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
第一実施形態:まず、この第一実施形態では、本発明のフレキシブルプリント配線板に用いる電解銅箔の製造から説明を行う。電解銅箔の製造は、従来から知られているドラム状回転陰極を用いた電解銅箔製造装置でその断面概略を図1に示した。電解銅箔製造装置1は、銅を電着させるチタン製のドラム状回転陰極2(直径3m、幅1.35m)と、回転陰極2の周面形状に沿って対向配置した、DSAと呼ばれる不溶性陽極3とを備えている。この回転陰極2と陽極3とは、図示せぬ給電装置と接続されている。ドラム状回転陰極2はその容積のほぼ半分が電解液に浸漬するようにされ、陽極3は二分割で、その分割された陽極3間に、回転陰極2下方から電解液を供給するための電解液供給口4を有する電解液供給手段5が設けられている。この電解液供給口4から回転陰極2に向けて硫酸銅電解液を供給すると、図1の破線で示すように、電解液は回転陰極2周面形状に沿って上昇するように流動し、電解槽7にオーバーフローする。回転陰極2周面に電析した銅箔6は、回転陰極2から剥がされ、ガイドロール8を介して巻き取りロール9に巻き取られるようになったものである。電解銅箔の製造条件は、表1に示す通りである。
また、チタン製のドラム状回転陰極の周面は、PVA(ポリビニールアセタール)製砥石を用いて研磨処理を行い、上記した電解銅箔製造装置に装着した後、酸化アルミニウムを砥粒とする2500番のバフを用いてバフ研磨処理を施して、周面の表面粗度がRz0.05〜1.5μmの範囲内になるように研磨仕上げをした。その後、表1の条件で電解銅箔の製造を行った。本実施形態に用いた電解銅箔は、VLPタイプ(ベリーロープロファイルタイプ、粗面側表面粗度Rz1.5〜5.0μm)と呼ばれるもので、厚み12μmとして製造した。
上記のようにして電解銅箔を3ロット準備し、その光沢面に対し防錆処理として、ニッケル−亜鉛合金メッキ処理、クロメート処理、シランカップリング剤処理の順で処理を行い、本実施形態のフレキシブルプリント配線板用の電解銅箔を製造した。その表面処理条件は表2に示す通りである。また、これらの処理はロール状となった電解銅箔を一方向から巻き出し、ガイドロールを介して順次各処理槽に案内されて各表面処理が施されるようになっており、最終的に乾燥処理を経てロール状に巻き取るようになっている、一般的に知られた表面処理機(図示省略)を用いて行った。
3ロットの電解銅箔に対し、その光沢面に表2の条件で表面処理を施し、3ロットのフレキシブルプリント配線板用電解銅箔を作成した(実施例1〜3)。また、比較のために、本出願人が既に超ファインパターン用途として提案しているバフ研磨処理銅箔を2ロット準備した(比較例1、2)。このバフ研磨処理銅箔とは、電解銅箔の粗面をバフにより物理研磨し、粗面側の凹凸を消滅させ、そのバフ研磨粗面にコブ付け処理、防錆処理(ニッケル−亜鉛メッキ、クロメート処理)、シランカップリング剤処理を行ったものである(詳細については、特開平9−195096号公報参照)。この比較例のバフ研磨処理銅箔は、超ファインパターン用途として開発されたもので、リジットのプリント配線板やTABテープなどの用途に好適な銅箔として使用されているものである。尚、この比較例に用いた電解銅箔は、上記した電解条件(但し、ドラム状回転陰極周面の表面粗度は異なる)で製造したVLPタイプで、厚みはバフ研磨仕上がりで15μmになるようにしたものである。
実施例1〜3、比較例1、2に関して、その接着面側の表面粗度、防錆処理の各付着量を測定した結果について説明する。表面粗度は、JIS B 0601に準拠して行い、十点平均粗さ(Rz)として算出した。また、防錆処理に関する付着量測定は、所定面積のサンプルを切り出し、サンプルの表面を溶解した溶液を作成して、その溶液をICPにより吸光度分析して溶液中のNi、Zn等の濃度を求め、単位面積当たりの各付着量を算出したものである。表3に測定結果を示す。
ここで、各銅箔の接着面側の鏡面光沢度と、光透過率とを測定した結果について説明する。鏡面光沢度は、ハンディグロスメーターPG−1M(日本電色工業(株)社製)により測定し、入射角60°、20°の際の値を採用した。また、光透過率は、市販のポリイミドワニス(新日本理化社製、リカコートSN−20)を各銅箔に塗布して加熱することにより、厚み40μmのポリイミドによる絶縁層を形成した積層フィルムを作成し、この積層フィルムに対してエッチングすることで部分的に銅箔を除去し、その除去部へ光源を当てて吸光光度計により測定した。測定波長は400〜800nmとして、600nmの波長での光透過率を代表値とした。この結果を表3に示す。
鏡面光沢度は、電解銅箔製造時に生じるドラム状回転陰極の周方向に対応する方向(MD)と、ドラム状回転陰極の幅方向に対応する方向(TD)との2方向に分けて測定を行った。その結果、実施例1〜3の接着面では、非常に高い鏡面光沢度値を有することが確認でき、それに対応するように光透過率も50%以上であることが判明した。一方、比較例の接着面では、コブ付け処理が施されている関係上鏡面光沢度は非常に小さな値であった。そして、光透過率についても50%未満という結果となり、位置決めするために必要と考えられる光透過率が得られなかった。ここで、参考のために比較例1及び2の非接着面側の鏡面光沢度を測定した結果を表4に示す。
この表4で示す比較例1、2の非接着面とは電解銅箔の光沢面側に相当するが、比較例の電解銅箔の場合、電解銅箔製造時の回転陰極周面における表面粗度は1.5〜2.0μm程度であり、研磨スジが若干見受けられた。比較例の鏡面光沢度が非常に小さな値となった明確な理由は不明であるが、単に表面粗度値が小さいからといって鏡面光沢度が大きくなるとは限らないことが予想された。
次に、この第一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板用電解銅箔の接着面の観察結果について説明する。図2には、実施例1の銅箔接着面をSEM観察した写真を示している。図2(a)が倍率100、(b)が倍率2000である。これをみると判るように、接着面は非常に平滑な状態で、研磨スジも非常に小さいことが判った。
また、図3には、レーザー顕微鏡により、実施例1の銅箔接着面をスキャニングして、そのプロファイルを観察したものである。図3中、白線で示されたものが、銅箔のTD方向にレーザーをスキャンして得られた接着面表面プロファイル(800倍)である。これを見ると判るように、実施例1の接着面は、表面粗度値が小さい上、その凹凸状態も非常に小さく、均等的になっていることが確認された。
第二実施形態:この第二実施形態では、電解銅箔の種類及びその表面処理、特にコブ付け処理の有無による、その接着面の鏡面光沢度と光透過率について検討した結果を説明する。表5に各種電解銅箔とその鏡面光沢度及び光透過率について測定した結果を示す。
表5には、比較として使用したサンプルを比較例A−1〜6として記載している。具体的には、比較例A−1の通常箔とは、銅箔JIS規格のグレードIII該当する電解銅箔であり、その粗面は凹凸形状をしており、その凸部に微細銅粒のコブ付け処理を施したものである(厚み18μm)。比較例A−2の低粗度箔とは、第一実施形態で説明したVLPタイプ(ベリーロープロファイルタイプ、粗面側表面粗度Rz1.5〜5.0μm)と呼ばれる電解銅箔である(厚み12μm)。但し、ここでの低粗度箔は、チタン製のドラム状回転陰極の周面をPVA製砥石を用いて研磨処理を行い、上記した電解銅箔製造装置に装着後、酸化アルミニウムを砥粒とする1500番のバフを用いてバフ研磨処理を施して、周面の表面粗度がRz1.6〜1.8μmの範囲内となるように研摩処理し、上記表1に記載の電解条件で製造されたものを使用している。この低粗度箔の粗面側にコブ付け処理をしたものが比較例A−2、光沢面側にコブ付け処理をしたものが比較例A−3、A−4である。ここでA−1〜A−3のコブ付け処理は、以下に示す焼けめっき後、かぶせめっきを行うという一般的な処理条件である。
1.焼けめっき処理条件
硫酸銅(銅濃度) 10 g/L
硫酸 170 g/L
液温 50 ℃
処理時間 2 秒
2.かぶせめっき処理条件
硫酸銅(銅濃度) A−1 50 g/L
A−2 140 g/L
A−3 50 g/L
硫酸 170 g/L
液温 50 ℃
処理時間 2 秒
また、A−4のコブ付け処理は、上記処理条件のうち、添加剤として砒素(As)を焼けめっき液に1g/L含有させたものを使用して焼けめっき処理(他のやけめっき処理条件は同じ)をした後、A−1と同じ濃度のかぶせめっき液(他のかぶせめっき処理条件は同じ)を用いてかぶせめっきをおこなったものである。このA−4のコブ付け処理は、一般的なコブ付け処理条件で形成される銅粒(1〜2μm)よりもさらに微細な銅粒(0.1〜1μm)をコブとして電着されたものとなっている。
そして、比較例A−5は、低粗度箔の光沢面にコブ付け処理することなく、防錆処理を施したものである。また、比較例A−6は、いわゆるダイレクトメタライズ法によるもので、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社、カプトンEN、厚み38μm、)の片面に、蒸着法によりCr−Ni皮膜(70Å)を形成して、その蒸着皮膜の上に銅メッキ処理を行うことで銅を導体層(8μm)として形成したものである。さらに、実施例A−1は上記第一実施形態で使用した実施例3である。尚、比較例A−1〜5の防錆処理は、表3に示した実施例A−1と同じ処理をしている。光透過率は、比較例A−1〜5、実施例A−1については、第一実施形態と同様に市販のポリイミドワニス(新日本理化社製リカコートSN−20)を各銅箔に塗布して加熱することにより、厚み40μmのポリイミド層を形成した積層フィルムを作成して測定を行った。表面粗度、光透過率の測定については上記第一実施形態と同様であるため、省略する。
表5を見ると判るように、接着面にコブ付け処理を施したものについては、表面粗度値は大きく、鏡面光沢度値(入射角60°)が小さくなり、当然に、光透過率も非常に低いものとなっている。また、接着面としてコブ付け処理を施していない光沢面を使用する場合であっても、その表面粗度値が1.6μmになると、入射角60°の鏡面光沢度値もあまり大きくなく、結果として光透過率も実用上満足できるレベルとは言えなかった。一方、ダイレクトメタライズ法の比較例A−6の場合、蒸着膜に銅メッキ処理をしたものなので、当然に光透過率は高い結果であった。そして、実施例A−1の場合については、表面粗度は0.8μmと小さく且つ鏡面光沢度(入射角60°)が300以上あり、それに対応して光透過率が高いものとなることが判明した。
第三実施形態:最後に、電解銅箔の接着面における防錆処理に関し、フレキシブルプリント配線板を構成した際の密着性及び耐マイグレーション特性を調査した結果について説明する。この第三実施形態の密着特性調査は、上記第一実施形態の実施例3と同じ電解銅箔を用いて、表6に示す各防錆処理を施したものを準備して行った。
表6に示すように、実施例3の電解銅箔に対し、各種の防錆処理を施し、電解クロメート処理(クロム酸1.0g/L溶液使用)後、表6中a〜eの5種類のシランカップリング剤処理をそれぞれ行った。防錆処理の各条件は次の通りである。
・比較例B−1〜5の防錆処理条件(以下の順序にて処理)
1.亜鉛(Zn)防錆処理
Zn濃度 6.0 g/L
ピロリン酸カリウム 140 g/L
pH 10.5
液温 40 ℃
電流密度 1.25 A/dm
処理時間 12 秒
2.水洗処理
3.電解クロメート処理
CrO濃度 1.0 g/L
pH 12.0
液温 25 ℃
電流密度 1.25 A/dm
処理時間 12 秒
4.水洗処理
5.シランカップリング剤処理
6.乾燥処理 150 ℃
・比較例B−6,7の防錆処理条件
錫(Sn)防錆処理
Sn濃度 6.0 g/L
ピロリン酸カリウム 100 g/L
pH 10.5
液温 40 ℃
電流密度 0.75 A/dm
処理時間 12 秒
このSn防錆処理後上記B−1〜5のNo.2以降の処理を行った。
・比較例B−8,9の防錆処理条件
ニッケル(Ni)防錆処理
Ni濃度 6.0 g/L
ピロリン酸カリウム 100 g/L
pH 10.5
液温 40 ℃
電流密度 0.5 A/dm
処理時間 12 秒
このNi防錆処理後上記B−1〜5のNo.2以降の処理を行った。
・比較例B−10,11の防錆処理条件
コバルト(Co)防錆処理
Co濃度 3.0 g/L
ピロリン酸カリウム 100 g/L
pH 10.5
液温 40 ℃
電流密度 0.5 A/dm
処理時間 12 秒
このCo防錆処理後上記B−1〜5のNo.2以降の処理を行った。
・比較例B−13,14の防錆処理条件
亜鉛(Zn)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)3元系防錆処理
Zn濃度 0.25 g/L
Ni濃度 3.0 g/L
Co濃度 4.0 g/L
ピロリン酸カリウム 100 g/L
pH 10.5
液温 40 ℃
電流密度 0.5 A/dm
処理時間 12 秒
このZn−Ni−Co3元系防錆処理後上記B−1〜5のNo.2以降の処理を行った。
比較例B−12、参考例B−1の防錆処理条件は上記第一実施形態の表2と同様である。また、シランカップリング処理はa〜eの各種シランカップリング剤(5g/L)溶液を作成して行った。尚、表6の表面処理を施した電解銅箔のすべてについて、その接着面の表面粗度はRzで0.8μmである。
密着性の評価は、上述したような表面処理を施した後、各電解銅箔に市販のポリイミドワニス(新日本理化社製リカコートSN−20)を塗布して加熱することにより、厚み40μmのポリイミド層(絶縁層)を形成した積層フィルムを作成し、各ピール強度の測定により行った。ピール強度の測定は、JIS−C−6481に準拠したもので、常態と、150℃で50時間の熱処理を行った熱後に関して行った。また、ブラックニング評価として、エープロセス建浴液(メルテックス株式会社製)を用いて導体層をアルカリエッチングした際に、エッチングの絶縁層の表面状態を観察することにより行った。また、光透過率については上記した方法と同様なため説明を省略する。
表6に示すように、本参考例B−1ではピール強度値が非常に高く、実用上問題ないことが判る。また、防錆処理として、Zn、Sn、Ni、Coを単独で処理した場合及び、及びZn−Ni−Coの3元系の防錆処理をした場合は、シランカップリング剤が同じであっても、Zn−Niの2元系の防防錆処理よりも低いピール強度を示すことが判明した。さらに、シランカップリング剤cのアミノ官能性シランは、他のシランカップリング剤(a、b、d、e)に比べ、ピール強度を高くする傾向が確認された。このアミノ官能性シランが他のものよりも、ピール強度を高くする理由は、各シランカップリング剤の構造式を考慮すると、各構造式におけるシラン鎖の嵩高さ等が関係しているのでないかと推測される。
金属箔電解製造装置の部分拡大斜視図。 実施例1の銅箔接着面のSEM観察写真。 実施例1の銅箔接着面のレーザー顕微鏡の観察結果を示す写真。

Claims (2)

  1. 導体層と、該導体層が積層されたポリイミド系樹脂による絶縁層とを有し、該導体層をエッチングして回路形成した際のエッチング領域における絶縁層の光透過率が50%以上となるチップオンフィルム用フレキシブルプリント配線板における導体層用の電解銅箔において、
    前記電解銅箔は、絶縁層に接着される接着面が光沢面であり、該接着面の表面粗度がRz0.05〜1.5μmであるとともに、入射角60°における鏡面光沢度が250以上であり、
    当該接着面は、99〜50wt%ニッケルと、1〜50wt%亜鉛とからなるニッケル−亜鉛合金によるニッケル−亜鉛合金層と、該ニッケル−亜鉛合金層上に形成されたクロメート層とからなる防錆処理層を有し、該防錆処理層表面にシランカップリング剤吸着層を形成したことを特徴とする電解銅箔。
  2. 前記シランカップリング剤吸着層は、アミノ官能性シランカップリング剤を吸着させて形成した請求項1に記載の電解銅箔。
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