JP4294109B2 - 多層構造電極の形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体デバイスの多層構造電極の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、青〜緑色波長の発光をする固体光源としてII−VI族化合物半導体やIII−V族化合物からなるレーザダイオード(以下、LDと記す)の開発が盛んに行われている。このLDでの電極には複数種の金属を多層積層させるものが用いられる。例えば、ZnTeをp型コンタクト層として用いたII−VI族化合物半導体おいて、特開平6−1888524号公報にはその電極構造としてAu/Pt/Pdの3層構造電極、また、Electron.Lett.,30(1994)p1984にはAu/Pt/Ti/Niの4層構造電極など様々な多層構造電極が提案されている。化合物半導体LDのコンタクト層(ZnTe)上に形成される多層構造電極は、その機能から上部電極(Au)/バリア電極(Pt)/反応用電極(Pd、Ti/Ni)と構造的特徴で分けられる。
【0003】
最上部の上部電極は、ヒートシンクとして用いられるInに対して熱融着マウント時に反応性が高く、化学的に安定な金属や、ボンディングワイヤーと反応性がよい金属が用いられる。また、反応用電極は、コンタクト層と良好な電気特性を得るため、ZnTeのような化合物半導体のコンタクト層と反応を起し易い金属が用いられる。また、上部電極がAuのように拡散し易い金属である場合には、上部電極(Au)が化合物半導体のコンタクト層側に拡散し易く、そのため化合物半導体LDの寿命や特性に悪影響を及ぼす。そのため、上部電極(Au)と反応用電極(Pd、Ti/Ni)とに間に挟まれたバリア電極(Pt)は、上部電極の拡散を防止する役割を行うことのできる金属が用いられる。尚、上部電極が拡散しにくい金属である場合には、バリア電極は特に必要としない。
【0004】
また、上述した多層構造電極の各層は、回転式の多元連装ハースを有する電子ビーム(EB)蒸着装置により作製される。図2にEB蒸着装置201のチャンバ内部の模式図を示す。蒸着したい物質(以下、ターゲットと記す)は、ハース部202に充填されている。ハース部202は1度の真空引きの工程で複数層の蒸着を可能とするため回転皿203の上に複数配置されており、蒸着させる膜種に応じて回転皿が回転して電子ビームの照射点にターゲットを位置させる。また、シャッタ204は、ターゲット熔融中のハース部202とウェハ205間の遮断や蒸着膜が所望の膜厚に達した時の蒸着を遮断する役割がある。上記のような複数種の金属からなる多層構造電極形成時には、ターゲットの熔融、蒸着、ハースの回転・ターゲット交換を繰り返してウェハ側から順に積層される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような多層構造電極において、反応用電極とバリア電極との間の界面密着強度が十分でなく、このため化合物半導体LDで発生した熱がヒートシンク方向でうまく放散されず、化合物半導体LDの熱劣化が生じ、化合物半導体LDでの寿命が損なわれるという問題があった。また、電極の密着の度合がウェハ面内で均一でないため、化合物半導体LDの特性ばらつきが大きくなり、一枚のウェハから取れる良品率が低下するという問題や、ヒートシンクへ熱融着によってマウントした化合物半導体LDのチップが電極部で剥離して、化合物半導体LDの製品歩留まりが低下するという問題があった。
【0006】
この剥離の原因として本発明者らはバリア電極−反応用電極、あるいは上部電極−反応用電極の界面が清浄ではなく、界面に不純物層が形成され、金属間界面の密着性を阻害していることを見出した。
【0007】
【表1】
【0008】
表1は、各種金属の常温での気体に対する親和力を示したもので、気体の吸着し易さを表している。表1に見られるように、反応用電極のPd、Niやバリア電極のPtは、水素をはじめとする様々な気体と吸着し易い性質があり、ターゲットへの原料補給や被蒸着対象の化合物半導体LDのウェハ交換の際に、EB蒸着装置のメインチャンバをリークし大気開放すると、ターゲットの表面及び蒸着物が付着したハース部周辺に水素やその他の不純物が吸着、吸収される。不純物がターゲット表面に吸収、吸着した状態のターゲットがEB蒸着装置で加熱、熔融されると、ターゲット表面やハース周辺に吸着、吸収されていた不純物脱離ガス化して真空チャンバ内に汚染雰囲気を形成する。この汚染雰囲気によって不純物層が形成され、金属間界面の密着性を阻害している。
【0009】
以上の原因について、具体的に従来の多層構造電極形成方法でp型ZnTe化合物半導体基板にAu/Pt/Pdの3層電極構造を形成するプロセスを図3に示す。
【0010】
最初に、最表面層がp型ZnTeコンタクト層301を有する半導体ウェハをEB蒸着装置のメインチャンバ内にセットし、チャンバ内を高真空に排気する。この時、p型ZnTeコンタクト層301表面は清浄に保たれている。
【0011】
次に、PdターゲットをEB蒸着装置で加熱、蒸発させて、半導体ウェハ表面にPd膜302を形成する。Pdは、表1に示したように不純物を吸着しやすい性質があるので、EB蒸着装置で加熱することにより、その吸収された不純物はチャンバ内に放出される。しかし、Pdは蒸発しやすいので、低いターゲットの熔融温度1400℃で蒸着させることができることから、ターゲット及びそのハース部周辺からの不純物蒸発量は比較的少なく、ウェハ表面ヘの不純物層形成も発生しにくい。また、Pdは反応性が高いため、Pd−ZnTe界面では化学反応が生じ反応化合物が形成されるため、Pd−ZnTe界面での密着性での低下は生じない。
【0012】
次に、Pdが所定の膜厚(10nm程度)だけ成膜されたあと、一度シャッタを閉じ、蒸発物がウェハに直接に達しないようにした後、次にPtターゲットに電子ビームを照射して加熱し、熔融させる。Ptの融点は1800℃と高いため、この熔融中にPtターゲット及びその周辺に吸収、吸着されていた不純物が大量に蒸発し、汚染雰囲気が形成され、メインチャンバ内の真空度が悪化する。ウェハ表面には既にPdが成膜されており、このPdは不純物を吸収、吸着しやすいのでウェハ表面のPd膜302は汚染雰囲気を活発に吸収吸着しPd膜表面に不純物層303が形成される。ここまで作製した電極構造の模式図を図3(a)に示す。
【0013】
Ptターゲットに電子ビームを照射し熔融後、シャッタを開いてバリア電極としてPt層304を成膜を行うと、Pd膜302とPt膜304の間に不純物層303が挟みこんだ構造となる。ここまで作製した電極構造の模式図を図3(b)に示す。
【0014】
最後に、同様な方法でPt膜304上にAu膜305を形成するが、Pt膜304とAu膜305との界面で反応が生じるのでAu−Pt界面の密着強度は非常に高くなっている。
【0015】
上述したように従来の方法では、バリア電極Ptと反応用電極Pdとの界面に不純物層ができることによって、電極構造の密着性が悪くなるという問題が生じる。
【0016】
このような電極構造の密着性の低下を防ぐ手段として、サンプル投入、取り出し用ロードロック室を設けた多チャンバ式のEB蒸着装置を用いて、ターゲットを設置したチャンバを常に高真空に保つという方法がある。しかし、このような多チャンバ式のEB蒸着装置には大掛かりな設備が必要であり、非常に高価となる問題がある。
【0017】
従って、本発明では従来の1チャンバ式のEB蒸着装置を用いて複数種の金属からなる多層構造電極の密着性を高めることによって、機械的強度の高い多層構造電極の形成方法を提供することを特徴とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属ターゲットを熔融して金属を蒸着させる方法により、1チャンバ式の電子ビーム蒸着装置を用いて、第1の金属層上に第2の金属層を連続的に積層する工程を有する多層構造電極の形成方法において、第1の金属層の下部層を形成する工程と、第2の金属層の金属ターゲットの脱ガス処理を行う工程と、第1の金属層の上部層を形成する工程と、第2の金属層を形成する工程と、を順次行うことを特徴とする多層構造電極の形成方法である。
【0019】
本発明にかかる多層構造電極の形成方法において、第1の金属層を、半導体層上にこの半導体層と反応して化合物を形成する反応用電極とし、第2の金属層をバリア電極とすることができる。さらに、上記半導体層をII−VI族化合物半導体あるいは窒化ガリウム系化合物半導体のいずれかとし、上記反応用電極をPd、Ti、Niのいずれかからなる金属とし、バリア電極をPt、Moのいずれかからなる金属とすることができる。
【0020】
また、本発明にかかる多層構造電極の形成方法において、第1の金属層を、半導体層上にこの半導体層と反応して化合物を形成する反応用電極とし、第2の金属層を上部電極とすることができる。さらに、上記半導体層を窒化ガリウム系化合物半導体とし、上記反応用電極をTiからなる金属とし、上記上部電極をAlからなる金属とすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態としてAu/Pt/Pdの三層構造電極を有するII−VI族化合物半導体LDの多層構造電極の形成方法を図1に示す。
【0024】
最初に、p型ZnTeコンタクト層101を最表面に有するII−VI族化合物半導体LDウェハをEB蒸着装置のチャンバ内にセットし、チャンバ内を1〜2×10-6Torrの高真空に排気する。
次に、Pdターゲットを電子ビームにより1400℃に加熱し、蒸発させることによって、p型ZnTeコンタクト層101に上に下部層のPd膜102を形成する。この時チャンバの真空度は3〜5×10-6Torr程度であり、チャンバ内の雰囲気は十分に清浄が保たれている。Pd膜が所定の膜厚に達する前の3〜5nm程度まで成膜を行い、そこで一旦中断し、シャッタを閉じることでターゲット−ウェハ間を遮断する。図1(a)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0025】
次に、ハース部を回転させ、Ptターゲットに電子ビーム照射を行って加熱し、Ptターゲットを熔融させる。このとき、シャッタは閉じたままであるので、蒸発したPtがウェハに達することはない。Ptターゲット熔融中はターゲット及びハースの周辺部から大量の不純物ガスが放出され、チャンバ内の真空度は一旦1.5〜2×10-5Torr程度まで悪化するが、真空度が安定し6〜7×10-6Torr程度に回復するまで電子ビーム照射を継続することで脱ガス処理を行う。この脱ガス処理中に、下部層であるPd膜102上に不純物層103が形成される。図1(b)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0026】
脱ガス処理終了後、Ptターゲットへの電子ビーム照射を停止し、真空度がPd膜を形成前程度になるまで待機する。真空度が3〜5×10-6Torr程度まで回復すると、ハース部を回転させ、中断していたPd膜の形成を再開して目的の厚さである10nmまで上部層のPd膜104を積層する。この時、下部層のPd膜102と上部層のPd膜104との間には不純物層103が形成されていることになるが、Pdは反応しやすい金属であるので下部層のPd膜102及び上部層のPd膜104は不純物層103を突き抜けて相互に結合し、密着性の低下は生じない。図1(c)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0027】
上部層のPd膜104を積層後、バリア電極となるPt膜105の形成を行う。この時、既にPtターゲット及びそのハースの周辺部は充分に脱ガス処理されているので、再度の脱ガス処理は不要であり、また、放出される不純物ガス自体も大きく低減されている。従って、シャッタを閉じてPtターゲットを熔融させ、シャッタを開けてPt膜を成膜することで、清浄な上部層のPd膜104表面にPt膜105を形成することができる。Pt膜105の膜厚は100nm程度とする。Pd−Pt界面には不純物層が形成されないか、もしくは形成されても界面の密着性に影響を及ぼさない程度に極薄膜である。図1(d)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0028】
最後に、上部電極であるAu膜106を200nm程度の適切な膜厚に積層させ、Au/Pt/Pdの三層構造電極を形成する。図1(e)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0029】
このようにして作製したAu/Pt/Pdの三層構造電極をZnTeコンタクト層上に有する化合物半導体LDは、Pt膜とPd膜との密着性が高く、通電時の熱放散が妨げられることはない。また、ウェハ面内での電極に起因する化合物半導体LDの特性のばらつきが抑制され、良品率が向上した。更に、ヒートシンクへのマウントを行う工程でも、電極剥離が生じず、製品歩留まりも向上させることができた。また、Ptターゲットの脱ガス処理をPd膜を形成する前に行っても同様の結果が得られ、多層構造電極の密着性が高く、機械的強度の向上が行えた。
【0030】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態としてAu/Pt/Ti/Niの四層構造電極を有するII−VI族化合物半導体LDの多層構造電極の形成方法を図4に示す。
【0031】
最初に、p型ZnTeコンタクト層401を有するII−VI族化合物半導体LDウェハをEB蒸着装置のチャンバ内にセットし、チャンバ内を1〜2×10-6Torrの高真空に排気する。
【0032】
次に、Niターゲットを電子ビームにより加熱し、蒸発させることによって、p型ZnTeコンタクト層401に上に10nm程度までNi膜402を形成する。更に、Tiターゲットを電子ビームにより加熱し、蒸発させることによって、Ni膜402の上に下部層のTi膜403を所定の膜厚に達する前の20〜30nm程度まで成膜を行い、そこで一旦中断し、シャッタを閉じることでターゲット−ウェハ間を遮断する。両金属ターゲットを熔融させる時、Niの脱ガス処理時にはZnTeコンタクト層401を汚染雰囲気が覆うが、Ni膜402とZnTeコンタクト層401とは相互に反応し強固に結合するので密着強度に関する問題は生じない。また、Tiターゲットの脱ガス処理時にも、Niは表1に見られるようにガス吸着起し易い金属に分類されるが、TiがNiやZnやTeなどと強く反応を起すので界面での密着強度の低下の問題は生じない。
【0033】
次に、ハース部を回転させ、Ptターゲットに電子ビーム照射を行って加熱し、Ptターゲットを熔融させる。このとき、シャッタは閉じたままであるので、蒸発したPtがウェハに達することはない。Ptターゲット熔融中はターゲット及びハースの周辺部から大量の不純物ガスが放出され、チャンバ内の真空度は一旦1.5〜2×10-5Torr程度まで悪化するが、真空度が安定し6〜7×10-6Torr程度に回復するまで電子ビーム照射を継続することで脱ガス処理を行う。この脱ガス処理中に、下部層のTi膜403上に不純物層404が形成される。
【0034】
脱ガス処理終了後、Ptターゲットへの電子ビーム照射を停止し、真空度がPd膜を形成前の状態になるまで待機する。真空度が3〜5×10-6Torr程度まで回復すると、ハース部を回転させ、中断していたTi膜の形成を再開して目的の厚さである50nmまで上部層のTi膜405を積層する。この時、下部層のTi膜403と上部層のTi膜405との間には不純物層404が形成されていることになるが、Tiは反応しやすい金属であるので下部層のTi膜403及び上部層のTi膜405は不純物層を突き抜けて相互に結合し、密着性の低下は生じない。
【0035】
上部層のTi膜405を積層後、バリア電極となるPt膜の形成を行う。この時、既にPtターゲット及びそのハースの周辺部は充分に脱ガス処理されているので、再度の脱ガス処理は不要であり、また、放出される不純物ガス自体も大きく低減されている。従って、シャッタを閉じてPtターゲットを熔融させ、シャッタを開けてPt膜を成膜することで、清浄な上部層のTi膜405表面にPt膜406を形成することができる。Pt膜406の膜厚は50nm程度とする。Ti−Pt界面には不純物層が形成されないか、もしくは形成されても界面の密着性に影響を及ぼさない程度に極薄膜である。
【0036】
最後に、上部電極であるAu膜407を100nm程度の適切な膜厚に積層させ、Au/Pt/Ti/Niの四層構造電極を形成する。
【0037】
このようにして作製したAu/Pt/Ti/Niの四層構造電極をZnTeコンタクト層上に有する化合物半導体LDは、Pt膜とTi膜との密着性が高く、通電時の熱放散が妨げられることはない。また、ウェハ面内での電極に起因する化合物半導体LDの特性のばらつきが抑制され、良品率が向上した。更に、ヒートシンクへのマウントを行う工程でも、電極剥離が生じず、製品歩留まりも向上させることができた。また、Ptターゲットの脱ガス処理をNi膜形成後であってTi膜を形成する前に行っても同様の結果が得られた。
【0038】
本実施の形態では、特に問題となるPt/Tiの間の密着性の向上について説明したが、他のTi/NiやPt/Auに対して本発明の方法を適用しても効果がある。また、バリア電極として本実施の形態ではPtを用いたが、Moを用いることもでき、その場合にも本発明は効果がある。
【0039】
(実施の形態3)
本発明の第3の実施の形態としてAl/Tiの二層構造電極を有する窒化ガリウム系化合物半導体LDの多層構造電極の形成方法を図5に示す。
【0040】
最初に、n型GaNコンタクト層501を有する窒化ガリウム系化合物半導体LDウェハをEB蒸着装置のチャンバ内にセットし、チャンバ内を1〜2×10-6Torrの高真空に排気する。
【0041】
次に、Tiターゲットを電子ビームにより加熱し、蒸発させることによって、n型GaNコンタクト層501に上に下部層のTi膜502を形成する。下部層のTi膜502が所定の膜厚に達する前の3〜5nm程度まで成膜を行い、そこで一旦中断し、シャッタを閉じることでターゲット−ウェハ間を遮断する。
【0042】
次に、ハース部を回転させ、Alターゲットに電子ビーム照射を行って加熱し、Alターゲットを熔融させる。このとき、シャッタは閉じたままであるので、蒸発したAlがウェハに達することはない。Alターゲット熔融中はターゲット及びハースの周辺部から大量の不純物ガスが放出され、チャンバ内の真空度は一旦1.5〜2×10-5Torr程度まで悪化するが、真空度が安定し6〜7×10-6Torr程度に回復するまで電子ビーム照射を継続することで脱ガス処理を行う。この脱ガス処理中に、下部層のTi膜502上に不純物層503が形成される。
【0043】
脱ガス処理終了後、Alターゲットへの電子ビーム照射を停止し、真空度がTi膜を形成前になるまで待機する。真空度が3〜5×10-6Torr程度まで回復すると、ハース部を回転させ、中断していたTi膜の形成を再開して目的の厚さである10nmまで上部層のTi膜504を積層する。Tiは前述したように反応しやすい金属であるので下部層のTi膜502及び上部層のTi膜504は不純物層503を突き抜けて相互に結合し、密着性の低下は生じない。
【0044】
上部層のTi膜504を積層後、外部と電気的接続を行うAl膜505の形成を行う。この時、既にAlターゲット及びそのハースの周辺部は充分に脱ガス処理されているので、再度の脱ガス処理は不要であり、また、放出される不純物ガス自体も大きく低減されている。従って、シャッタを閉じてAlターゲットを熔融させ、シャッタを開けてAl膜を成膜することで、清浄なTi膜504表面にAl膜505を形成することができる。Al膜505の膜厚は200nm程度とする。Al−Ti界面には不純物層が形成されないか、もしくは形成されても界面の密着性に影響を及ぼさない程度に極薄膜である。以上により、Al/Tiの二層構造電極を形成できる。
【0045】
このようにして作製したAl/Tiの二層構造電極をn型GaNコンタクト層上に有する窒化ガリウム系化合物半導体LDは、Al膜とTi膜との密着性が高く、通電時の熱放散が妨げられることはない。また、ウェハ面内での電極に起因する化合物半導体LDの特性のばらつきが抑制され、良品率が向上した。更に、ヒートシンクへのマウントを行う工程でも、電極剥離が生じず、製品歩留まりも向上させることができた。また、Alターゲットの脱ガス処理をTi膜を形成する前に行っても同様の結果が得られ、多層構造電極の密着性が高く、機械的強度の向上が行えた。
【0046】
(実施の形態4)
本発明の第4の実施の形態としてAu/Pt/Tiの三層構造電極を有する窒化ガリウム系化合物半導体LDの多層構造電極の形成方法を示す。
【0047】
最初に、n型GaNコンタクト層601を有する窒化ガリウム系化合物半導体LDウェハをEB蒸着装置のチャンバ内にセットし、チャンバ内を1〜2×10-6Torrの高真空に排気する。
次に、Tiターゲットを電子ビームにより1400℃に加熱し、蒸発させることによって、n型GaNコンタクト層601に上に下部層のTi膜602を形成する。下部層のTi膜602が所定の膜厚に達する前の10〜15nm程度まで成膜を行い、そこで一旦中断し、シャッタを閉じることでターゲット−ウェハ間を遮断する。図6(a)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0048】
次に、ハース部を回転させ、Ptターゲットに電子ビーム照射を行って加熱し、Ptターゲットを熔融させる。このとき、シャッタは閉じたままであるので、蒸発したPtがウェハに達することはない。Ptターゲット熔融中はターゲット及びハースの周辺部から大量の不純物ガスが放出され、チャンバ内の真空度は一旦1.5〜2×10-5Torr程度まで悪化するが、真空度が安定し6〜7×10-6Torr程度に回復するまで電子ビーム照射を継続することで脱ガス処理を行う。この脱ガス処理中に、下部層であるTi膜602上に不純物層603が形成される。図6(b)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0049】
脱ガス処理終了後、Ptターゲットへの電子ビーム照射を停止し、真空度がTi膜を形成する前程度になるまで待機する。真空度が3〜5×10-6Torr程度まで回復すると、ハース部を回転させ、中断していたTi膜の形成を再開して目的の厚さである25nmまで上部層のTi膜604を積層する。Tiは反応しやすい金属であるので下部層のTi膜602及び上部層のTi膜604は不純物層603を突き抜けて相互に結合し、密着性の低下は生じない。図6(c)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0050】
上部層のTi膜604を積層後、バリア電極となるPt膜605の形成を行う。この時、既にPtターゲット及びそのハースの周辺部は充分に脱ガス処理されているので、再度の脱ガス処理は不要であり、また、放出される不純物ガス自体も大きく低減されている。従って、シャッタを閉じてPtターゲットを熔融させ、シャッタを開けてPt膜を成膜することで、清浄な上部層のTi膜604表面にPt膜605を形成することができる。Pt膜605の膜厚は100nm程度とする。Ti−Pt界面には不純物層が形成されないか、もしくは形成されても界面の密着性に影響を及ぼさない程度に極薄膜である。図6(d)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0051】
最後に、上部電極であるAu膜606を200nm程度の適切な膜厚に積層させ、Au/Pt/Tiの三層構造電極を形成する。図6(e)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0052】
このようにして作製したAu/Pt/Tiの三層構造電極をGaNコンタクト層上に有する化合物半導体LDは、Pt膜とTi膜との密着性が高く、通電時の熱放散が妨げられることはない。また、ウェハ面内での電極に起因する化合物半導体LDの特性のばらつきが抑制され、良品率が向上した。
【0053】
また、実施の形態3と比較して、上部電極をAuにすることでワイヤボンディング工程において、電極剥離が生じず、製品歩留まりも向上させることができた。尚、上部電極としてAuを用いた場合には、AuのLD側への拡散によるLDの特性不良や劣化が問題となるが、バリア電極Ptの存在によりこれらの問題が解消できる。
【0054】
また、Ptターゲットの脱ガス処理をTi膜を形成する前に行っても同様の結果が得られ、多層構造電極の密着性が高く、機械的強度の向上が行えた。
【0055】
また、バリア電極として本実施の形態ではPtを用いたが、Moを用いることでも同様の結果が得られることを確認した。
【0056】
(実施の形態5)
本発明の第5の実施の形態としてAu/Pt/Niの三層構造電極を有する窒化ガリウム系化合物半導体LDの多層構造電極の形成方法を示す。
【0057】
最初に、n型GaNコンタクト層701を有する窒化ガリウム系化合物半導体LDウェハをEB蒸着装置のチャンバ内にセットし、チャンバ内を1〜2×10-6Torrの高真空に排気する。
【0058】
次に、Niターゲットを電子ビームにより加熱し、蒸発させることによって、n型GaNコンタクト層701に上に下部層のNi膜702を形成する。下部層のNi膜702が所定の膜厚に達する前の10〜15nm程度まで成膜を行い、そこで一旦中断し、シャッタを閉じることでターゲット−ウェハ間を遮断する。図7(a)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0059】
次に、ハース部を回転させ、Ptターゲットに電子ビーム照射を行って加熱し、Ptターゲットを熔融させる。このとき、シャッタは閉じたままであるので、蒸発したPtがウェハに達することはない。Ptターゲット熔融中はターゲット及びハースの周辺部から大量の不純物ガスが放出され、チャンバ内の真空度は一旦1.5〜2×10-5Torr程度まで悪化するが、真空度が安定し6〜7×10-6Torr程度に回復するまで電子ビーム照射を継続することで脱ガス処理を行う。この脱ガス処理中に、下部層であるNi膜702上に不純物層703が形成される。図7(b)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0060】
脱ガス処理終了後、Ptターゲットへの電子ビーム照射を停止し、真空度がNi膜を形成する前程度になるまで待機する。真空度が3〜5×10-6Torr程度まで回復すると、ハース部を回転させ、中断していたNi膜の形成を再開して目的の厚さである25nmまで上部層のNi膜704を積層する。Niは反応しやすい金属であるので下部層のNi膜702及び上部層のNi膜704は不純物層703を突き抜けて相互に結合し、密着性の低下は生じない。図7(c)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0061】
上部層のNi膜704を積層後、バリア電極となるPt膜705の形成を行う。この時、既にPtターゲット及びそのハースの周辺部は充分に脱ガス処理されているので、再度の脱ガス処理は不要であり、また、放出される不純物ガス自体も大きく低減されている。従って、シャッタを閉じてPtターゲットを熔融させ、シャッタを開けてPt膜を成膜することで、清浄な上部層のNi膜704表面にPt膜705を形成することができる。Pt膜705の膜厚は100nm程度とする。Ni−Pt界面には不純物層が形成されないか、もしくは形成されても界面の密着性に影響を及ぼさない程度に極薄膜である。図7(d)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0062】
最後に、上部電極であるAu膜706を200nm程度の適切な膜厚に積層させ、Au/Pt/Niの三層構造電極を形成する。図7(e)に、この状態での多層構造電極の模式図を示す。
【0063】
このようにして作製したAu/Pt/Niの三層構造電極をGaNコンタクト層上に有する化合物半導体LDは、Pt膜とNi膜との密着性が高く、通電時の熱放散が妨げられることはない。また、ウェハ面内での電極に起因する化合物半導体LDの特性のばらつきが抑制され、良品率が向上した。
【0064】
また、実施の形態3と比較して、上部電極をAuとすることによってワイヤボンディング工程において、電極剥離が生じず、製品歩留まりも向上させることができた。尚、上部電極としてAuを用いた場合には、AuのLD側への拡散によるLDの特性不良や劣化が問題となるが、バリア電極Ptの存在によりこれらの問題が解消できる。
【0065】
また、Ptターゲットの脱ガス処理をNi膜を形成する前に行っても同様の結果が得られ、多層構造電極の密着性が高く、機械的強度の向上が行えた。また、バリア電極として本実施の形態ではPtを用いたが、Moを用いることでも同様の結果が得られることを確認した。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、多層構造電極での密着性を上げることができ、電極構造自体の機械的強度を向上させることができ、従って、化合物半導体LDの特性のばらつきを抑え、また、電極の剥離の問題を抑えることができるので、化合物半導体LDの製品歩留まりを向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の多層構造電極の形成工程を示した模式図である。
【図2】1チャンバ式の電子ビーム蒸着装置の概略図である。
【図3】従来の多層構造電極の形成工程を示した図である。
【図4】本発明の実施の形態2の多層構造電極の形成工程を示した模式図である。
【図5】本発明の実施の形態3の多層構造電極の形成工程を示した模式図である。
【図6】本発明の実施の形態4の多層構造電極の形成工程を示した模式図である。
【図7】本発明の実施の形態5の多層構造電極の形成工程を示した模式図である。
【符号の説明】
101、401 ZnTeコンタクト層
102 下部層のPd膜
103、404、503、603、703 不純物層
104 上部層のPd膜
105、406、605、705 Pt膜
106、407、606、706 Au膜
402 Ni膜
403、502、602 下部層のTi膜
405、504、604 上部層のTi膜
501、601、701 n型GaNコンタクト層
505 Al膜
702 下部層のTi膜
704 上部層のTi膜
Claims (5)
- 金属ターゲットを熔融して金属を蒸着させる方法により、1チャンバ式の電子ビーム蒸着装置を用いて、第1の金属層上に第2の金属層を連続的に積層する工程を有する多層構造電極の形成方法において、
前記第1の金属層の下部層を形成する工程と、
前記第2の金属層の金属ターゲットの脱ガス処理を行う工程と、
前記第1の金属層の上部層を形成する工程と、
前記第2の金属層を形成する工程と、を順次行うことを特徴とする多層構造電極の形成方法。 - 前記第1の金属層は、半導体層上に該半導体層と反応して化合物を形成する反応用電極であり、前記第2の金属層はバリア電極であることを特徴とする請求項1に記載の多層構造電極の形成方法。
- 前記半導体層は、II−VI族化合物半導体あるいは窒化ガリウム系化合物半導体のいずれかであり、
前記反応用電極は、Pd、Ti、Niのいずれかからなる金属であり、
前記バリア電極は、Pt、Moのいずれかからなる金属であることを特徴とする請求項2に記載の多層構造電極の形成方法。 - 前記第1の金属層は、半導体層上に該半導体層と反応して化合物を形成する反応用電極であり、前記第2の金属層は上部電極であることを特徴とする請求項1に記載の多層構造電極の形成方法。
- 前記半導体層は、窒化ガリウム系化合物半導体であり、
前記反応用電極は、Tiからなる金属であり、
前記上部電極は、Alからなる金属であることを特徴とする請求項4に記載の多層構造電極の形成方法。
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