JP4293835B2 - ピンホイール風車を用いた風力発電装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピンホイール風車を用いた風力発電装置に関するもので、特に、ピンホイール風車の形状を新規な形状とした風力発電装置に関する。
【0002】
【従来技術】
従来から風力発電装置に用いられている水平軸タイプの風車としては、プロペラを用いたものが数多く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。実用化されているプロペラを使用した風力発電装置では、風力エネルギーの利用効率を高めるためにプロペラの直径を大きくして使用している。
【0003】
このため、プロペラを鉄塔等の高い建物の頂部に設置する必要があり、また、プロペラの旋回直径を大きくするとともに、プロペラの幅を狭くする構成を用いているが、プロペラの強度を高めるためにプロペラの厚さは厚くなっている。
【0004】
このため、プロペラの全体的な重量は重くなり、プロペラの回転軸を支承する構造も強固に構成しなければならない。しかも、プロペラを高速回転させているため、風切り音などが発生し設置場所近隣に騒音被害を与えている。また、連続した強風がない限り連続駆動が困難となるので、連続した強風が常に吹いている場所等に設置しなければならず、プロペラ型の風力発電装置を設置することの場所等が限られてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、すくない風でも効率よく回転することができるとともに、回転翼の回転直径も小さく、薄くて軽い、しかも風を受ける面積が広い「かざぐるま」形とも呼ばれるピンホイール風車を用いたエネルギー変換装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
特許文献2に記載された発明では、図12に示すように、正方形の中心に貫通孔を形成し、各頂点から貫通孔に達しない直線状または曲線状の切込部32を形成して、各頂点の一方を折り曲げ、折り曲げた各頂点を接合することでピンホイール風車を構成している。
【0007】
特許文献2におけるようなピンホイール風車では、少ない風でもパワー係数を高くすることができ、頂点を折り曲げたことによる曲面部で揚力を発生する構造とすることができるので、周速比の範囲域もある程度高くすることができる。
ここで、パワー係数は、空気密度、風車の受風面積及び風速から求めることのできる理論的な風車のパワーに対する実際の風車のパワーとの比で表した値であり、周速比は、風速に対する風車先端の周速度との比で表した値である。
【0008】
しかし、特許文献2に記載されたピンホイール風車では、頂点を折り曲げることにより形成されるピンホイール風車の前面部が風の流入を阻害してしまい、背面側のブレード部に充分な風を供給することができず、ピンホイール風車として回転の高率化を図ることができなかった。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−161197号公報(【要約】、図1、図2)
【特許文献2】
特開2002−202045号公報(【要約】、段落0049〜0050、0090〜0097、0101〜0103、図1、図2、図5)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明ではピンホイール風車における上述の問題点を解決し、ピンホイール風車の形状を変えることで高性能化を図ったピンホイール風車を用いた風力発電装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願発明の課題は本件請求項1〜4に記載された各発明により達成される。
即ち、本願請求項1に係る発明は、ピンホイール風車の回転軸体により取り出した同ピンホイール風車の回転により発電機が駆動される風力発電装置であって、前記ピンホイール風車が、正多角形からなる可撓性薄板と、前記可撓性薄板の中心に形成し、前記回転軸体を貫通固定する貫通孔と、同可撓性薄板の各頂点部又は各頂点部近傍から正多角形の中心に向かって、前記頂点から中心までの長さの1/2以上切込まれ前記貫通孔に達しない直線状切込み部と、前記各頂点部の一方で直線状切込み部から少なくとも所定幅離間して、前記正多角形の一辺のうち各頂点部の一方側にある一辺の所定長さをもつ一部分を含めて切除した切除領域とを備え、
前記切除領域側の各頂点部を略前記直線状切込み部に沿って折り曲げ、折り曲げた各頂点又は各頂点近傍を接合したときに、前記切除領域が前記ピンホイール風車の前面側となり、前記接合箇所に前記回転軸体の一端部近傍を固定したことを特徴とするピンホイール風車を用いた風力発電装置にある。
【0012】
この発明では、正多角形の各頂点を正多角形の中心に向かって折り曲げたときに折り曲げた側におけるピンホイール風車の前面側の領域が所定領域に亘って切除した形状となることを特徴としている。しかも、正多角形の各頂点を折り曲げるために形成する各頂点部近傍から正多角形の中心に向かって切り込む切り込み長さを、各頂点から正多角形の中心までの長さの約1/2以上で、中心に形成した回転軸体の貫通孔に達しない長さとしている。
【0013】
これによって、各頂点の一方を折り曲げたときに形成される曲面上で、回転軸体に対する最外周となる母線まで少なくとも直線状切り込みを至らせることができ、ピンホイール風車における翼の形状を安定させることができる。仮に、切り込みの長さを頂点から正多角形の中心までの長さの約1/2以下としたときには、隣の翼の先端、即ち折り曲げなかった頂点が持ち上がってしまう形状となり、風を受ける受風面積を減少させてしまうことになる。背面側のブレードの先端部が回転軸体の軸方向側へ持ち上がった形状となることで、ピンホイール風車の回転を効率よく回転させることができなくなってしまう。
【0014】
本願発明においては、上述の切り込みの形状に加えてピンホイール風車の前面側を一部切除していることを特徴としている。切除領域としては、各折り曲げ側の頂点を含む面において、直線状切込みから少なくとも所定幅離間する線分と、各折り曲げ側の頂点から延びる辺を所定長さにわたって含む領域を切除領域としている。
【0015】
これにより、ピンホイール風車を形成するために、近傍に切除領域を含む頂点を折り曲げたときには、ピンホイール風車の前面側が所定領域に亘って切除された構成とすることができる。
【0016】
このため、ピンホイール風車の背面側に位置している翼となるブレード部分において直接風が当たる面積を拡大することができ、効率よく風力を取り出すことができるようになる。ピンホイール風車の前面側を切除しないものに比べて、風速に対する風車先端部での回転速度との比である風速比を大幅に上昇させることができ、空気密度、風車の受風面積及び風速から求めることのできる理論的な風車のパワーに対する実際の風車のパワーの比で表すことができるパワー係数の増加を達成することができるようになる。
ピンホイール風車の形状を本願発明のように構成することにより、高速型でしかも高効率の発電を行うことのできる風力発電装置を得ることができる。
【0017】
本願請求項2に係る発明は、請求項1の事項に加えて、前記切除領域が、前記各頂点の一方で前記直線状切込み部から少なくとも所定幅離間した線分と、同各一方の頂点を略前記直線状切込み部に沿って折り曲げたときに前記回転軸体に対する最外周の母線と前記各頂点の折り曲げ側にある辺との交点から前記母線に略沿った線分と、両線分間を結ぶ線分とによって囲まれる領域であることを限定した風力発電装置にある。
【0018】
この発明では、正多角形の各頂点を正多角形の中心に向かって折り曲げたときに折り曲げた側におけるピンホイール風車の前面側の切除領域を限定したことを特徴としている。
切除領域を前記切り込み長さとの関係から、前記各頂点の一方で前記直線状切込み部から少なくとも所定幅離間して切除するとともに、同各一方の頂点を略前記直線状切込み部に沿って折り曲げたときに前記回転軸体に対する最外周の母線と前記各頂点の一方側にある辺との交点から前記母線に略沿った線分と、前記直線状切込み部から少なくとも所定幅離間した線分と、これら2つの線分間を結ぶ線分とによって囲まれる領域を切除領域としている。
【0019】
これにより、ピンホイール風車の背面側に位置している翼となるブレード部分に直接風が当たる有効面積を最大にすることができる。このため、ピンホイール風車の前面側を切除する構成において、風速比を更に上昇させることができるとともに、パワー係数の増加を達成することができる。
【0020】
ピンホイール風車の形状を本願発明のように構成することにより、高速型でしかも高効率の発電を行うことのできる風力発電装置を得ることができる。
【0021】
本願請求項3に係る発明は、請求項1又は2の事項に加えて、前記正多角形が正方形である事項を限定した風力発電装置にある。
この発明では、ピンホイール風車を形成する正多角形の形状として正方形形状に限定したことを特徴とするものであり、正方形に限定したことにより、パワー係数を他の多角形形状に比べて最も大きくすることができる。このため、ピンホイール風車の形状を本願請求項3の発明のように構成することにより、高出力の発電を行うことのできる風力発電装置を得ることができる。
【0022】
本願請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに記載された事項に加えて、前記回転軸体の他端部に連結した発電機と、同発電機におけるピンホイール風車とは反対側に取付けた尾翼と、同発電機を支承する支柱に対して回転自在の支持体とを備え、前記支持体は、無風状態において前記回転軸体が水平状態となるように、発電機を前記支持体に対してピッチング自在に支承してなる事項を限定した風力発電装置にある。
【0023】
この発明では、ピンホイール風車の回転軸と連結した発電機に尾翼を設けるとともに、支柱に対してしかも同支柱の軸回りに回転自在に支承されている支持体を設け、しかも前記発電機を前記支持体に対してピッチング自在に支承して構成した風力発電を特徴としている。
【0024】
このため、ピンホイール風車、発電機及び尾翼全体の重心部位で発電機を支持体に対して支承することができ、ヤジロベー状に風向きに応じて上下方向及び左右方向にバランスさせて、ピンホイール風車の前面側を常に風速に応じて風上側へ配向させることができる。
【0025】
これにより、常に風向きに対応した向きへ自動的にピンホイール風車の前面側を向けることができるようになり、効率良く風を捉えることができる。しかも、高速型でしかも高効率の回転を行うことができるピンホイール風車の形状による機能を更に向上させ、安定した状態で、しかも高効率の発電を行うことができるようになる。
【0026】
【発明の実施形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
本発明は、ピンホイール風車を用いた風力発電装置として効果的に適用することができる。
【0027】
図1には、本願発明のピンホイール風車を折り曲げ形成する前における正方形からなる可撓性薄板の平面図を示している。図2には、正方形からなる可撓性薄板の頂点部近傍を折り曲げて形成したピンホイール風車の斜視図を示している。図3、図4には、本願発明のピンホイール風車を折り曲げ形成する前における多角形形状として正五角形、正六角形の平面図を示している。
【0028】
本願発明のピンホイール風車は、ステンレス板、アルミ板等の金属板やプラスチック製板等の可撓性薄板を用いて構成することができる。尚、可撓性薄板としては、上述の材質の板材以外にもピンホイール風車を形成することができる可撓性薄板であれば、これらの板材を使用することができるものであり、可撓性薄板の厚さは、ピンホイール風車としての強度を保持できる厚さとすることが必要である。
【0029】
図1において、各頂点4から正方形7の中心に向かって直線状切り込み2が形成してある。切り込み2の長さは、頂点4から正方形の中心までの長さの1/2以上の長さであり、中心に形成した回転軸体8を貫通固定する貫通孔5に至らない長さとなっている。正方形7の中心にはピンホイール風車から回転を取り出す回転軸体8を貫通固定する中心貫通孔5が形成され、各頂点4における切り込み2に対して一方側には、回転軸体8の先端部を貫通固定する先端貫通孔6が形成されている。
【0030】
先端貫通孔6は必ずしも形成することが必要なものではなく、図2に示すように回転軸体8の先端部を貫通固定する固定部材9を折り曲げた各頂点部に取り付けることにより、回転軸体8の先端部を折り曲げた各頂点部近傍に固定することもできる。また、正方形7の中心に形成した貫通孔5に対しても、前記固定部材9と同様の板状形状からなり回転軸体8を貫通固定することの部材を配することもできる。このとき、同貫通固定する部材により貫通孔5を補強する機能とともに、回転軸体8とピンホイール風車との取付強度を高めることができる機能を持たせることができる。
【0031】
正方形7の各頂点4近傍における切除領域3は、各頂点4の貫通孔6を形成した側において前記切込み2から少なくとも所定幅離間した線分3aと、各線分3a側にある頂点を略切込み2に沿って折り曲げたときに形成される曲面において、前記回転軸体8に対して最外周となる母線と前記各頂点の折り曲げ側にある辺との交点から前記母線に略沿った線分3bと、両線分3a、3b間を接続する線分3cとで囲まれる領域3を切除領域としている。
【0032】
切除領域3を囲む線分3a〜3cとしては、直線状の線に限定されるものではなく、曲線状の線分も本願発明における線分として含まれるものであり、切除領域3を囲む線分同士は滑らかに連続するように形成することが望ましい。線分同士が角度を持って交差すると、特に、鋭角の角度を持った交差部において集中加重が発生するので、角度を持たせて線分同士を交差させる場合であっても交差角度は鈍角となるように形成することが望ましい。
【0033】
図1においては、各頂点4から切り込み2を形成した例を示しているが、切り込み2は必ずしも各頂点4から形成する必要はなく、各頂点の近傍から正方形の中心近傍に向かって直線状に切り込みを形成することもできる。
【0034】
図3、図4に示す実施例は、正多角形が、正五角形、正六角形形状である薄板からピンホイール風車を形成する例を示している。各頂点からの切り込みの形成、切除領域の形成は、基本的には図1で説明した正方形7の場合と同様であるので、同様の構成部材に関しては、図1において用いたと同じ符号を用いることでその説明に代えることとする。
【0035】
正五角形、正六角形の場合においても、切り込みは直線状の切り込み2であり、各頂点あるいは頂点近傍から正五角形または正六角形の中心あるいは中心近傍に向かって直線状に形成している。切り込み2の長さは、各頂点4から正五角形または正六角形の中心までの長さの1/2以上であり、中心に形成した回転軸体を貫通固定する貫通孔5に至らない長さである。
【0036】
また、切除領域3は一点斜線で示す領域を切除し、切除領域3としては、各頂点4の一方側において前記直線状切込み2から少なくとも所定幅離間した線分3aと、各線分3a側にある頂点4を略切込み2に沿って折り曲げたときに形成される曲面において、前記回転軸体8に対して最外周となる母線と前記各頂点4の折り曲げ側にある辺との交点から前記母線に略沿った線分3bと、両線分3a、3b間で囲まれる領域3を切除領域としている。貫通孔5を補強する部材を用いることも、先端貫通孔6の代わりに図2で示すと同様の固定部材9を用いることができる。
【0037】
図1〜4においては正多角形の形状として、正方形、正五角形及び正六角形の例を示しているが、正多角形としてはこれらの形状に限定されるものではなく、正三角形を含む正n角形(nは3以上の正数)に対しても、本願発明におけるピンホイール風車の形状を適用できるものである。尚、ピンホイール風車の背面側のブレードと折り曲げた先端部間の距離は、折り曲げ形成した後にピンホイール風車としての機能を奏することのできる距離を離間させておくことが必要である。
【0038】
図5、図6は、0.4mmの厚さで正方形形状のステンレス板を折り曲げてピンホイール風車を形成し、旋回直径を600mmとしたものを複数用意して、それらのピンホイール風車7について風洞試験を行って得たデータをグラフとして表したものである。ピンホイール風車の試験は、図7における概略図で示す構成を有する足利工業大学の風洞実験装置を用いて行った。
【0039】
図7に示すように風洞実験は、開口部口径が1.05×1.05mの開放吹き出し形の風洞15内にピンホイール風車7を設置し、風洞15から吹き出す風速を変え実験を行った。風速を一定とした条件下で風洞内に保持したピンホイール風車7に対して無負荷状態からブレーキモータ21により徐々に負荷を加えていき、ピンホイール風車7の回転数におけるトルク値を、回転計22及びトルク変換器20にて計測したものである。風速は、ピトー管18により測定し、ベック型マノメータ19により計測した。
【0040】
図5、図6に示すグラフには、図8において示すように旋回直径が600mmとなるピンホイール風車を形成する0.4mmの肉厚である正方形形状のステンレス製可撓性薄板を用いて、各頂点近傍から前面切除の割合として切除領域の深さを30mm(▲で示す)、60mm(■で示す)、90mm(◆で示す)として3種類異ならせたピンホイール風車と前面切除を行っていない従来から知られたピンホイール風車(●で示す)を用いて実験を行い、風速が8m/sの場合について、実験により得られたデータをまとめてグラフに示したものである。
【0041】
図5には、横軸に風速比λ、縦軸にトルク係数Cqとして各形状におけるピンホイール風車のトルク特性を示している。図6には、横軸に風速比λ、縦軸にパワー係数Cpとして各形状におけるピンホイール風車のトルク特性を示している。
【0042】
ここで、ピンホイール風車のロータ直径、即ちピンホイール風車を回転させたときの最外周の旋回円の直径をD[m]、受風面積をA(=πD2/4)[m2]、空気密度をρ[kg/m3]、風速をV[m/s]、ピンホイール風車の回転数をN[rpm]、風車のトルクをQ[N・m]、風車のパワーをP[N・m/s]、風速比をλ[πND/(60V)]としたとき、トルク係数はCq=Q/(1/2・ρ・AV2・D/2)として表すことができ、パワー係数はCp=P/(1/2・ρ・AV3)として表すことができる。
【0043】
ピンホイール風車の前面部における切除量が大きくなるほど、周速比λが早くなるが、パワー係数Cpは、除去量が60mm(■で示す)で示す場合が最も大きくなり、周速比λ=3.5においてパワー係数Cp=0.22となり最大となることが分る。無負荷状態での周速比を比較すると、従来型のように切除なしの場合ではλ=3.0であるのに対して,切除量が90mmの場合にはλ=6.2となり、周速比λを2倍以上も増大させることができることが分る。
【0044】
このように、従来型のピンホイール風車のように前面部を切除しない場合に比べて前面部を切除することで、ピンホイール風車の背面側にあるブレードへ風が流入するのを阻害していた前面部を除去することができるので、風力を有効に利用して高効率でピンホイール風車を回転させることができるようになる。本願発明のピンホイール風車を発電装置の駆動部として使用することで発電効率を向上させることができる。
【0045】
また、図9、10には、旋回直径が600mmとなるピンホイール風車を形成する0.4mmの肉厚のステンレス製可撓性薄板を用いて、正三角形形状、正方形形状、正五角形形状及び正六角形形状の正多角形を形成し、それぞれの形状でピンホイール風車を構成し、図7で示す風洞実験を行った結果をグラフで示したものである。この実験では、各正多角形のは切除領域を形成しない従来型のピンホイール風車での実験を行った。
【0046】
図9には、各形状毎のトルク特性を横軸に風速比λ、縦軸にトルク係数Cqとして各形状におけるピンホイール風車のトルク特性を示している。図10には、横軸に風速比λ、縦軸にパワー係数Cpとして各形状におけるピンホイール風車のトルク特性を示している。
【0047】
図9、図10から分るようにパワー係数Cpは、4枚翼、即ち正方形から形成したピンホイール風車が最も大きくなり、周速比λ=2.0においてCp=0.17となる。このことから分るように、正方形形状の薄板から形成したピンホイール風車を発電装置に接続すればより効率的に風力発電が行える。
【0048】
また、図1に示すように、一辺の長さが580mmで厚みが0.4mmのステンレス板において切除領域の深さを80mmとしたピンホイール風車に発電機を接続して発電を行ったときには、発電機は風速3.5m/sで発電を開始し、風速6m/sで10W,風速8m/sで23Wの発電を行うことができた。
【0049】
このように、ピンホイール風車の前面側を切除することによりパワー係数を切除しないものに比べて大きくすることができ、特に、各頂点を折り曲げたときに形成される曲面に対して回転軸体の軸に直交する複数の平行な平面で前記曲面を切ったときに、回転軸体に対して最外周となる母線近傍の線分を含む領域を切除することで、周速比を最大とすることができる。
【0050】
図11には、本願発明によるピンホイール風車を用いた風力発電装置の好適な実施例の正面図(図11(a))と側面図(図11(b))を示している。風力発電装置は前面部に切除領域を有するピンホイール風車7に回転軸体8を貫通固定し、回転軸体8の端部に発電機28を連結している。発電機25の後端部には尾翼26を取り付けてある。支柱27にはその軸回りに回転可能に支持体28を支承している。支持体28には発電機28がピッチング自在に支承され、ピンホイール風車7、回転軸体8、発電機28、尾翼26等がバランスする重心位置で支持体28に発電機が支承されている。
【0051】
この構成により、左右方向からの風向きに対しては尾翼26によってピンホイール風車7の前面側を風速にバランスさせながら風上側に配向させることができ、上下方向からの風向きに対してはピッチング方向の回動によりピンホイール風車7の前面側を風速にバランスさせながら風上側に配向させることができるようになる。風向きが変わっても、それに追従して自動的にピンホイール風車7の前面側を風速にバランスさせる位置に自動的に復帰させることができるので、ピンホイール風車7を風向きに合わせた向きに配向させるための特別な機構を要しないで行う発電装置を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例におけるピンホイール風車を製作するための正方形薄板の説明図である。
【図2】ピンホイール風車の組立て図である。
【図3】本発明の他の実施例におけるピンホイール風車を製作するための正五画形薄板の説明図である。
【図4】本発明の別の実施例におけるピンホイール風車を製作するための正六画形薄板図である。
【図5】ピンホイール風車の前面部の切除割合におけるトルク特性図である。
【図6】ピンホイール風車の前面部の切除割合におけるパワー特性図である。
【図7】風洞実験の概略説明図である。
【図8】正方形薄板における切除割合を説明する図である。
【図9】翼の枚数に対応するトルク特性図である。
【図10】翼の枚数に対応するパワー特性図である。
【図11】本願発明の実施例における風力発電装置の概略図である。
【図12】従来例におけるピンホイール風車を製作するための正方形薄板の説明図である。
【符号の説明】
1 ピンホイール風車
2 切り込み
3 切除領域
5 貫通孔
6 先端貫通孔
8 回転軸体
9 固定部材
15 風洞
18 ピトー管
20 トルク変換器
21 ブレーキモータ
22 回転計
25 発電機
26 尾翼
27 支柱
28 支持体
32 切込部

Claims (4)

  1. ピンホイール風車の回転軸体により取り出した同ピンホイール風車の回転により発電機が駆動される風力発電装置であって、
    前記ピンホイール風車が、
    正多角形からなる可撓性薄板と、
    前記可撓性薄板の中心に形成し、前記回転軸体を貫通固定する貫通孔と、
    同可撓性薄板の各頂点部又は各頂点部近傍から正多角形の中心に向かって、前記頂点から中心までの長さの1/2以上切込まれ前記貫通孔に達しない直線状切込み部と、
    前記各頂点部の一方で直線状切込み部から少なくとも所定幅離間して、前記正多角形の一辺のうち各頂点部の一方側にある一辺の所定長さをもつ一部分を含めて切除した切除領域と、
    を備え、
    前記切除領域側の各頂点部を略前記直線状切込み部に沿って折り曲げ、折り曲げた各頂点又は各頂点近傍を接合したときに、前記切除領域が前記ピンホイール風車の前面側となり、前記接合箇所に前記回転軸体の一端部近傍を固定したことを特徴とするピンホイール風車を用いた風力発電装置。
  2. 前記切除領域が、前記各頂点の一方で前記直線状切込み部から少なくとも所定幅離間した線分と、同各一方の頂点を略前記直線状切込み部に沿って折り曲げたときに前記回転軸体に対する最外周の母線と前記各頂点の折り曲げ側にある辺との交点から前記母線に略沿った線分と、両線分間を結ぶ線分とによって囲まれる領域であることを特徴とする請求項1記載の風力発電装置。
  3. 前記正多角形が正方形であることを特徴とする請求項1又は2記載の風力発電装置。
  4. 前記回転軸体の他端部に連結した発電機と、
    同発電機におけるピンホイール風車とは反対側に取付けた尾翼と、
    同発電機を支承する支柱に対して回転自在の支持体と
    を備え、
    前記支持体は、無風状態において前記回転軸体が水平状態となるように、発電機を前記支持体に対してピッチング自在に支承してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の風力発電装置。
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