JP4293746B2 - 加水発熱剤の発熱制御方法及び発熱制御された組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アロマテラピー、害虫駆除、食品加熱等に使用される加水発熱剤の発熱制御方法及び発熱制御された組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、水を添加することにより発熱する加水発熱剤は、種々のものが知られており、害虫駆除、食品加熱等に多用されている。
この加水発熱剤は、反応性が高く加水すると即反応したり、高温になり過ぎたりする場合には、用途に応じて、その反応性を制御するため、疎水性の油剤で加水発熱剤の表面を被覆する等の方法が施されている。
【0003】
しかしながら、この方法では、製造時に加水発熱剤を油剤で事前に処理する必要があり、加水時にも、油剤の臭気が気になるなどの課題がある。
また、被覆の程度により、著しく遅延して反応性が著しく低下し、コントロールしにくいなどの課題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、発熱性となる反応性を容易に制御すると共に、臭気もない、加水発熱剤の発熱制御方法及び発熱制御された組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、鋭意検討した結果、加水発熱剤に、特定の水溶液を添加等すること、あるいは、加水発熱剤に無機塩を混合することにより上記目的の加水発熱剤の発熱制御方法及び発熱制御された組成物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は次の(1)〜(4)に存する。
(1) 加水発熱剤に、無機塩及び/又は有機酸塩を含有する水溶液を添加することを特徴とする加水発熱剤の発熱制御方法。
(2) 加水発熱剤と、無機塩及び/又は有機酸塩を含有する水溶液とからなることを特徴とする発熱制御された組成物。
(3) 加水発熱剤に無機塩を混合することを特徴とする加水発熱剤の発熱制御方法。
(4) 加水発熱剤及び無機塩からなることを特徴とする発熱制御された組成物。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の第1発明は、加水発熱剤に、無機塩及び/又は有機酸塩を含有する水溶液を添加することを特徴とする加水発熱剤の発熱制御方法であり、第2発明は、加水発熱剤に無機塩を混合することを特徴とする加水発熱剤の発熱制御方法である。
また、本発明の第3発明は、加水発熱剤と、無機塩及び/又は有機酸塩を含有する水溶液とからなることを特徴とする発熱制御された組成物であり、第4発明は、加水発熱剤及び無機塩からなることを特徴とする発熱制御された組成物である。
【0007】
本発明の第1発明〜第4発明における加水発熱剤としては、水を加えると発熱する物質(加水発熱剤)からなるものであれば、特に限定されるものでないが、安価でかつ発熱性に優れ、食品の加熱、揮散成分の加熱蒸散剤として使用されている、酸化カルシウムが好ましい。この酸化カルシウムは、天然の石灰石を焼成して得られるものであり、焼成温度、焼成時間によって水を添加してから蒸気が出るまでの時間や、発熱温度などの反応性が変わるものである。
【0008】
本第1発明〜第4発明における加水発熱剤は、好ましくは、使用性、保存性などの面から発熱温度に対して耐熱性を有し、通気性及び耐久性を有する容器や繊維又は不織布からなる袋体内に上記加水発熱剤を収容した形態のものが望ましい。
【0009】
本第1発明又は第3発明における無機塩及び/又は有機酸塩を含有する水溶液は、加水発熱剤の発熱速度を制御するものであり、少なくとも無機塩及び/又は有機酸塩と水(イオン交換水、精製水、純水など)とを含有したものからなるものである。
【0010】
本第1発明又は第3発明に用いることができる無機塩、有機酸塩は、特に限定されるものでないが、本発明の効果の点から、無機塩としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムなど、また、有機酸塩としては、安息香酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどを用いることが望ましい。これらは、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0011】
上記添加水溶液中の無機塩及び/又は有機酸塩の含有量は、質量比で、加水発熱剤:無機塩及び/又は有機酸塩が0.5:1〜100:1、好ましくは、0.5:1〜50:1とすることが望ましい。
上記質量比が100:1未満であると、本発明の効果である発熱制御効果が得られず、また、0.5:1を越えても効果は変わらないがコスト的にも不経済となる。
【0012】
また、本発明における加水発熱剤に添加する水、すなわち、本第1発明又は第3発明における無機塩及び/又は有機酸塩を含有する水溶液及び本第2発明又は第4発明における添加水には、更に、香料、精油を含有することが好ましい。
香料、精油は、特に限定されないが、各種の合成品、天然品及びこれらの組成物を構成する各成分の他、揮発して芳香を発するもの、消臭作用のあるもの、抗菌・抗カビ作用のあるもの、漂白作用のあるもの、防虫、防ダニ作用、生物に対する忌避作用のあるもの、森林浴効果などの有効な作用のあるもの、人を鎮静させる作用のあるもの、眠気を覚ましたりする覚醒作用のあるもの等が挙げられる。
【0013】
香料成分としては、例えば、脂肪族炭化水素、テルペン炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類、脂肪族アルコール、テルペンアルコール、芳香族アルコール等のアルコール類、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等のエーテル類、脂肪族オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド類、脂肪族アルデヒド、テルペン系のアルデヒド、水素化芳香族アルデヒド、チオアルデヒド、芳香族アルデヒド等のアルデヒド類、脂肪族ケトン、テルペンケトン、水素化芳香族ケトン、脂肪族環状ケトン、非ベンゼン系芳香族ケトン、芳香族ケトン等のケトン類、アセタール類、ケタール類、フェノール類、フェノールエーテル類、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸類、酸アマイド類、脂肪族ラクトン、大環状ラクトン、テルペン系ラクトン、水素化芳香族ラクトン、芳香族ラクトン等のラクトン類、脂肪族エステル、フラン系カルボン酸族エステル、脂肪族環状カルボン酸エステル、シクロヘキシルカルボン酸族エステル、テルペン系カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル類、ニトロムスク類、ニトリル、アミン、ピリジン類、キノリン類、ピロール、インドール等の含窒素化合物等々の合成香料及び動物、植物からの天然香料、天然香料及び/又は合成香料を含む調合香料の1種又は2種以上を混合して使用することができる。例えば、合成香料としては、1996年化学工業日報社刊印藤元一著「合成香料 化学と商品知識」、1969年MONTCLAIR,N.J.刊ステファン・アークタンダー(STEFFEN ARCTANDER)著「パヒューム アンド フレーバー ケミカルズ(Perfume andFlavor Chemicals)」等に記載の香料が使用できる。天然香料としては、「香りの百科」日本香料協会編に記載の香料が使用できる。
【0014】
主な香料名を具体的に挙げると、アルデヒドC6〜C12、アニスアルデヒド、アセタールR、アセトフェノン、アセチルアセドレン、アドキサール、アリルアミルグリコレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、α−ダマスコン、β−ダマスコン、δ−ダマスコン、アンプレットリッド、アンプロキサン、アミルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒドジメチルアセタール、アミルバレリアネート、アミルサリシレート、イソアミルアセテート、イソアミルサリシレート、オウランチオール、アセチルユゲノール、バグダノール、べンジルアセテート、べンジルアルコール、べンジルサリシレート、ベルガミールアセテート、ボルニルアセテート、ブチルブチレート、p−t−ブチルシクロヘキサノール、p−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、o−t−ブチルシクロヘキサノール、o−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、ベンツアルデヒド、ベンジルフォーメート、カリオフィレン、カシュメラン、カルボン、セドロアンバー、セドリルアセテート、セドロール、セレストリッド、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、シスジャスモン、シトラール、シトラールジメチルアセタール、シトラサール、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルアセテート、シトロネリルフォーメート、シトロネリルニトリル、シクラセット、シクラメンアルデヒド、シクラプロップ、キャロン、クマリン、シンナミルアセテート、δ−C6〜C13ラクトン、ジメチルベンジルカービノール、ジヒドロジャスモン、ジヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、ジメトール、ジミルセトール、ジフェニルオキサイド、エチルワニリン、オイゲノール、フルイテート、フェンチールアルコール、フェニルエチルフェニルアセテート、ガラキソリッド、γ−C6〜C13ラクトン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ミルセン、β−カリオフィレン、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメート、ゲラニルニトリル、ヘディオン、ヘリオナール、ヘリオトロピン、cis−3−ヘキサノール、cis−3−ヘキセニールアセテート、cis−3−ヘキセニールサリシレ−ト、トリプラ−ル、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘキシルサリシレート、ヒヤシンスジメチルアセタール、ハイドロトロピックアルコール、ヒドロキシシトロネラール、インドール、イオノン、イソボルニルアセテート、イソシクロシトラール、イソEスーパー、イソユゲノール、イソノニルアセテート、イソブチルキノリン、ジャスマール、ジャスモラクトン、ジャスモフィラン、コアポン、リグストラール、リリアール、ライムオキサイド、リナロール、リナロールオキサイド、リナリルアセテート、リラール、マンザネート、マイヨール、メンサニールアセテート、メンソネート、メチルアンスラニレート、メチルユゲノール、メントール、α−メチルイオノン、β−メチルイオノン、γ−メチルイオノン、メチルイソユゲノール、メチルラベンダーケトン、メチルサリシレート、ミューゲアルデヒド、ムゴール、ムスクTM−II、ムスク781、ムスクC14、ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデセノン、シクロペンタデカノリド、アンブレッドリド、シクロヘキサデカノリド、10−オキサヘキサデカノリド、11−オキサヘキサデカノリド、12−オキサヘキサデカノリド、エチレンブラシレート、エチレンドデカンジオエート、オキサヘキサデセンー2−オン、14−メチル−ヘキサデセノリド、14−メチル−ヘキサデカノリド、ムスクケトン、ムスクチベチン、ノピルアルコール、ノピルアセテート、ネリルアセテート、ネロール、メチルフェニルアセテート、ミラックアルデヒド、ネオベルガメート、オークモスNo.1、オリボン、オキシフェニロン、パラクレジールメチルエーテル、ペンタリッド、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルアセテート、ルバフラン、ローズフェノン、ローズオキサイド、サンダロア、サンデラ、サンタレックス、スチラリールアセテート、スチラリールプロピオネート、ターピネオール、ターピニルアセテート、テトラハイドロリナロール、テトラハイドロリナリールアセテート、テトラハイドロゲラニオール、テトラハイドロゲラニールアセテート、トナリッド、トラセオライド、トリプラール、チモール、ワニリン、ベルドックス、ヤラヤラ、アニス油、べイ油、ボアドローズ油、カナンガ油、カルダモン油、カシア油、シダーウッド油、オレンジ油、マンダリン油、タンジェリン油、バジル油、ナツメグ油、シトロネラ油、クローブ油、コリアンダー油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル油、カルバナム油、ゼラニウム油、ヒバ油、桧油、ジャスミン油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、マンダリン油、ネロリ油、オークモス油、オコチア油、パチュリ油、ペパーミント油、ペリラ油、プチグレン油、パイン油、ローズ油、ローズマリー油、しょう脳油、芳油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、タイム油、トンカ豆チンキ、テレピン油、ワニラ豆チンキ、ベチバー油、イランイラン油、グレープフルーツ油、ゆず油、ベンゾイン、ペルーバルサム、トルーバルサム、チュベローズ油、ムスクチンキ、カストリウムチンキ、シベットチンキ、アンバーグリスチンキ等である。
【0015】
また、香料の溶剤又は保留剤としてジエチルフタレート、ジプロピレングリコール、ベンジルベンゾエート、イソプロピールミリステート、ハーコリン等を使用することができる。
【0016】
香料・精油の量としては、加水発熱剤に添加する添加水組成物全量中に0.1〜20重量%、好ましくは、1〜8重量%の範囲から適宜選択して配合せしめることができる。
香料・精油の配合量が0.1重量%未満では、芳香消臭等用に適度な効果が得られず、20重量%を越えると、乳化や可溶化するのに困難となり、好ましくない。
【0017】
更に、加水発熱剤を不織布等の袋体に収容した場合には、袋体への水の浸透性を高めたり、水溶液中で香料を分散させる目的で、無機塩及び/又は有機酸塩を含有する水溶液中に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸ポリエチレングリコール、アルキルアミンオキサイドなどの界面活性剤を使用することもできる。
【0018】
本第1発明の加水発熱剤の発熱制御方法及び第3発明の発熱抑制された組成物は、上述の如く、加水発熱剤と、無機塩及び/又は有機酸塩を含有する水溶液とから構成されるものであるが、本発明では、第2発明の加水発熱剤の発熱制御方法及び第4発明の発熱抑制された組成物として、上述の加水発熱剤に無機塩を混合することにより構成することもできる。
この第2及び第4発明に用いることができる無機塩としては、炭酸塩、硫酸塩、塩酸塩及び水酸化物塩から選ばれる少なくとも1種(1種単独又は2種以上)が挙げられ、好ましくは、本発明の効果の点から、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、水酸化カルシウムから選ばれる少なくとも1種を用いることが望ましい。更に好ましくは、発熱温度の抑制と蒸気の持続性との両立の点から炭酸カリウム及び/又は炭酸ナトリウムと、塩化マグネシウム及び/又は硫酸マグネシウムとを含むものからなるものが望ましい。
【0019】
上記無機塩の含有量は、質量比で、加水発熱剤:無機塩が0.5:1〜100:1、好ましくは、0.5:1〜10:1とすることが望ましい。
上記質量比が100:1未満であると、本発明の効果である発熱制御効果が得られず、また、0.5:1を越えても効果は変わらないがコスト的にも不経済となる。
【0020】
このように構成される本発明をアロマテラピー用品に適用した場合の一例を更に図面を参照して本第1発明及び第3発明の場合を例に具体的に説明する。
図1は、加水発熱器(アロマテラピー用品)の垂直切断端面図であり、図2は、図1の蓋体の平面図である。
本発明の実施の形態に使用する加水発熱器(アロマテラピー用品)Aは、図1に示すように、カップ状の外装容器1と、カップ状の容器本体3と、加水発熱剤に相当する袋体5と、皿状の蓋体7とをもって構成されている。
外装容器1は、紙等からなり、略円筒形で上面が開口したカップ状に形成されている。容器本体3は、耐熱PET等からなり、略円筒形で上面が開口したカップ状に形成されている。そして、容器本体3は、外装容器1の内周側に上面開口部から着脱自在に嵌め込まれるように、外装容器1に対応した大きさに形成されており、容器本体3の上縁には、外側に突出した鍔状の被支持部3bが設けられている。また、容器本体3の上部には、蓋体装着用段差部3aが設けられている。
【0021】
袋体5は、所定の通気抵抗〔0.005〜30kPa・s/m、本実施形態では0.05kPa・s/m〕を有する耐熱性の不織布、本実施形態ではメタ系アラミド不織布(デュポン社製スパンレース不織布)からなり、不織布の周縁部を融着して袋状に形成されている。また、袋体5は、容器本体3の内部に収容されるように、容器本体3に対応した大きさに形成されている。そして、袋体5の内部には、酸化カルシウム等の所定量の加水発熱剤(本実施形態では酸化カルシウム20g)6が充填されている。
【0022】
蓋体7は、ポリエチレン等からなり、略円筒形で上面が開口した偏平カップ状(皿状)に形成されている。そして、蓋体7は、容器本体3の段差部3aの内周側に上面開口部から着脱自在に嵌め込まれるように、容器本体3の段差部3aに対応した大きさに形成されており、蓋体7の上縁には、外側に突出した鍔状の被支持部7bが設けられている。
そして、図1、2に示すように、蓋体7には、所定の孔面積を有する多数の滴下孔7a、7a…が、底面全体に散らばって設けられている。なお、滴下孔7aの孔面積は、0.03〜1cm2(本実施形態では0.3cm2、孔面積は全てが同一)からなるものであるが、孔面積は、全てが同一でなくてもよい。また、滴下孔7a、7a…は、円形、角形など種々の形状にすることができ、特に形状は限らない。更に、蓋体7の空隙率、即ち、蓋体7の底面全体の面積に対する全滴下孔7a、7a…の孔面積の総和の比率は、5〜90%(本実施形態では40%)となっている。
【0023】
このように構成される加水発熱器(アロマテラピー用品)を使用する際には、外装容器1の内周側に上面開口部から容器本体3を嵌め込み、容器本体3の内部に袋体5を入れ、容器本体3の上部内周側に上面開口部から蓋体7を嵌め込む。そして、精製水、精油・香料、無機塩、有機酸塩、界面活性剤を主成分とする所定量の添加液〔本実施形態では全液量20g(水14.5g、精油・香料1g、硫酸マグネシウム4g、界面活性剤(ポリオキシエチレン2級アルキルエーテル)0.5gからなる添加液)〕を蓋体7の上から注ぐと、添加液が蓋体7の滴下孔7a、7a…から容器本体3内に滴下し、滴下した添加液と袋体5内の加水発熱剤とが反応して発熱し、蒸気が発生すると共に、香料、精油が揮散する。この際、添加液が蓋体7の滴下孔7a、7a…により容器本体3内に散らばって滴下するため、添加液と加水発熱剤とが過不足なく反応する。
【0024】
この実施形態では、臭気も気にならず、本来の蒸気性状を低下させずに加水発熱剤の発熱速度を制御することができるものとなる。また、界面活性剤を使用しているため、特に、加水発熱剤を疎水性不織布の袋体に収容した場合でも水の浸透性が良いという利点を有する。更に、容器本体3の熱変形を防止することができる。
従って、本第1発明及び第3発明の加水発熱剤の発熱速度制御方法及び発熱抑制された組成物をアロマテラピー用品として、安全、容易に利用することができる。
【0025】
また、本第3発明の発熱抑制された組成物は、上述の如く、加水発熱剤及び無機塩及び/又は有機酸塩を含有する水溶液を夫々別々の袋体等に収容した形態のものを述べたが、図3に示すように、所定の通気抵抗及び耐熱性を有する大きな袋体10に加水発熱剤等を収容した加水発熱剤11と上述の無機塩及び/又は有機酸塩を含有する水溶液12を収容した樹脂袋13とを収容せしめたものであってもよい。なお、上記袋体10の構成は、上述の実施の形態の袋体5の構成と同様のものである。
この場合の使用態様としては、図1における容器本体3内に収容した袋体5の代わりに上記構成の袋体10を収容せしめた状態で針などの治具等により袋体10内の樹脂袋13を破り水溶液12と加水発熱剤11とを過不足なく反応せしめることにより本発明を実施することができる。
【0026】
図4(a)及び(b)は、本第3発明の発熱抑制された組成物の別の実施形態である。この実施形態は、アルミ積層フィルムやアルミ蒸着フィルムを熱融着して成形した、袋状容器(スタンディングパウチ様)20に、加水発熱剤又は袋状の不織布に内包した加水発熱剤21を中に収容し、上端を熱融着して密封したものである。使用時に、切り口部22から上部を切って開口し、注入袋体23に収容された無機塩及び/又は有機酸塩を含有する水溶液からなる添加液24を注ぎ込むことにより添加液24と加水発熱剤21とを過不足なく反応せしめることにより本発明を実施することができる。
この実施形態では、湿気を防ぐための包装と、使用性がよい容器とを兼ね、安価で、使い捨てにも優れたものとなる。
【0027】
また、図4の実施形態において、更に図5に示すように、両側縁部から中央部付近までを更に熱融着部25,25を設けた実施形態では、誤って使用時に加水発熱剤21に触れることが起こり難くなり、容器内での発熱剤の偏りを防ぐなどの点で好ましい。
更に、図6の実施形態は、アルミ積層フィルムやアルミ蒸着フィルムを熱融着して成形した、袋状容器(三角錐タイプのパック体様)26に加水発熱剤又は袋状の不織布に内包した加水発熱剤27を中に収容し、熱融着して密封したものである。使用時に、三角錐の一端を切って開口し、上述の注入袋体23に収容された無機塩及び/又は有機酸塩を含有する水溶液からなる添加液24を注ぎ込むことにより添加液24と加水発熱剤26とを過不足なく反応せしめることにより本発明を実施することができる。この実施形態においても、湿気を防ぐための包装と、使用性がよい容器とを兼ね、安価で、使い捨てにも優れたものとなる。
本第2発明又は第4発明の場合には、上記実施形態において、無機塩及び/又は有機酸塩を水溶液中に含有する形態でなく、加水発熱剤に無機塩、好ましくは、炭酸塩、硫酸塩、塩酸塩及び水酸化物塩から選ばれる少なくとも1種の無機塩、更に好ましくは、炭酸カリウム及び/又は炭酸ナトリウムと、塩化マグネシウム及び/又は硫酸マグネシウムとを含むものを混合したものを用いると共に、添加液側に無機塩及び/又は有機酸塩を含有せしめない水溶液を用いる。これにより、上述と同様の本発明の効果を発揮せしめるものとなる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、下記▲1▼〜▲3▼の実施形態であってもよいものである。
▲1▼ 上述の実施の形態では、加水発熱剤を袋体5に収容した形態で述べたが、袋体に収容することなく、加水発熱剤を容器本体3に直接収容した形態であってもよい。
▲2▼ 上述の実施の形態では、無機塩及び/又は有機酸塩を含有する水溶液中、または、無機塩及び/又は有機酸塩を含有しない水溶液中に香料・精油を含有せしめたが、該水溶液中に香料・精油を含有せしめることなく、または該水溶液中に香料・精油を含有せしめた上で、上述の香料・精油を特に香料・精油の液状物を珪酸カルシウム、CD(サイクロデキストリン)、ゼオライト、鉱物等の担持体に担持した担持剤を加水発熱剤と共に袋体5又は袋体10に収容せしめて、香料等を発散せしめるものであってもよい。
【0029】
▲3▼ 上述の実施の形態では、アロマテラピー用品に適用した場合について述べたが、上記水溶液中に含有せしめた香料・精油の代え、または香料・精油と共に、殺虫成分等の薬剤を含有せしめることにより、並びに、上記担持体に担持した香料・精油の代え、または香料・精油と共に、殺虫成分等の薬剤(液状薬剤)を担持した担持剤を加水発熱剤と共に袋体5又は袋体10に収容せしめて、アロマテラピー用品以外の害虫駆除用品に適用することもできる。
また、本発明は、上記水溶液中に香料等を含有せしめることなく、また、上記担持剤を使用しなくとも、本発明の目的である発熱速度となる反応速度を容易に遅延させるので、加水発熱剤を使用する食品加熱用等にも好適に適用することもできる。
【0030】
【実施例】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、表1〜表3の組成における配合量(単位)は「g」である。
【0031】
〔実施例1〜8及び比較例1〜2、試験法1〕
内径直径8cm、高さ8cmのポリプロピレン製の円筒状のカップに酸化カルシウム(硬焼生石灰)を20g充填した後、下記表1に示す実施例1〜8及び比較例1〜2の添加液を添加し添加終了してから蒸気の発生が認められる時間(秒)を測定した。また、発熱剤表面の温度変化を測定し、その推移の最大値を最高温度として求めた。
これらの試験法1の測定結果を下記表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜8は、本発明の範囲外となる比較例1〜2に較べて、蒸気の出るまでの時間及び最高温度を低めに制御することができ、発熱反応を容易に制御できることが判明した。
【0034】
〔実施例9〜14及び比較例3、試験法2〕
下記表2に示す組成の酸化カルシウム(軟焼生石灰・粉末)と無機塩をミキサーで均一に混合し、不織布(PP/レーヨン=6/4)の下縁部と側縁部とをシーラーで熱融着した上縁部が開口した袋(5cm×5cm)に充填した後、上縁部を熱融着して袋体状発熱剤を作製した。
一方、イオン交換水500部に、ユーカリプタスオイル20部と、ポリオキシエチレン2級アルキルエーテル(平均付加モル数9モル)7部とを加え、30分間攪拌して乳化させ、添加液を調製した。
直径6.5cmのガラスシャーレに上記袋体状発熱剤を置き、上記添加液20gを添加して蒸気を発生させた。液を添加してから蒸気の発生が認められるまでの時間(秒)、蒸気が発生している時間(秒)を測定した。
同様に、シャーレに袋体状発熱剤を置き、発熱剤の上部表面に温度センサーを設置した後、添加液10gを発熱剤に直接かからないようシャーレ壁面近くから静かに添加し蒸散を行った。発熱剤表面の温度変化を測定し、その推移の最大値を最高温度とした。
更に、時間、温度の両測定とも、袋体状発熱剤は、周縁部(熱融着部)が側面方向にある状態でシャーレに置いて(横置き)測定した。
これらの試験法2の結果を下記表2に示す。
【0035】
〔実施例15〜20及び比較例4〜5、試験法3〕
下記表3に示す組成を用いて作製した袋体状発熱剤を、何れかの周縁部(熱融着部)が下面を向いてシャーレ底面に接した状態でシャーレに置き〔縦置き〕、添加液20gを用いて最高温度を測定した以外は、上記試験法2と同様に試験した。
これらの試験法3の結果を下記表3に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
上記表2及び3の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例9〜20は、無機塩を混合していない比較例3〜5に比べ、発熱の最高温度の抑制や、蒸気の出始める時間の遅延効果があり、使用時の安全性が増していることが判る。
また、実施例9と、上記表3の実施例15とから明らかなように、同組成であっても発熱剤の置かれ方によって発熱性が異なり、縦置き(実施例15)では、横置き(実施例9)よりも高温になっている。このように、発熱剤を利用する製品形態に際し、発熱剤がより発熱しやすい置かれ方に設置される場合には、実施例16のように混合する無機塩の量を増やすことが好ましい。
一方、実施例15、16から明らかなように、無機塩を混合していない比較例4に比べ、最高温度の抑制や蒸気の出始める時間の遅延効果はあるが、蒸気の発生している時間が短くなってしまう場合がある。このような場合には複数種の無機塩を併用使用することが好ましく、実施例18〜20のとおり、蒸気の発生している時間を短くすることなく、或いは更に長時間の蒸気発生を確保しながら、最高温度の抑制や蒸気の出始める時間の遅延を達成できる。
【0039】
【発明の効果】
本発明の加水発熱剤の発熱制御方法では、加水発熱剤の反応速度を容易に遅延、具体的には、蒸気の発生している時間を短くすることなく、或いは更に長時間の蒸気発生を確保しながら、最高温度の抑制や蒸気の出始める時間の遅延を達成でき、しかも、臭気もなく、本来の蒸気性状を低下させずに加水発熱剤の発熱を制御することができる。
また、本発明の発熱抑制された組成物は、加水発熱剤の反応速度を容易に遅延、具体的には、蒸気の発生している時間を短くすることなく、或いは更に長時間の蒸気発生を確保しながら、最高温度の抑制や蒸気の出始める時間の遅延を達成できるため、アロマテラピー用、食品加熱用、害虫駆除用等として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に使用する加水発熱器(アロマテラピー用品)の一例を示す垂直切断端面図である。
【図2】図1中の蓋体の平面図である。
【図3】本発明の発熱抑制された組成物の実施形態の一例を示す断面図であり。
【図4】(a)及び(b)は、本発明の発熱抑制された組成物の実施形態の一例を示す使用前と使用中の断面図である。
【図5】図4(a)及び(b)に示す実施形態を更に改良した実施形態の一例を示す発熱抑制された組成物の断面図である。
【図6】(a)及び(b)は、本発明の発熱抑制された組成物の他の実施形態を示す使用前と使用中の断面図である。
【符号の説明】
1 外装容器
3 容器本体
3a 蓋体装着用段差部
3b 被支持部
5 袋体(加水発熱剤)
7 蓋体
7a 滴下孔
7b 被支持部
Claims (4)
- 加水発熱剤としての酸化カルシウムと、塩化マグネシウム及び/又は硫酸マグネシウムと、炭酸カリウム及び/又は炭酸ナトリウムとからなる加水発熱剤混合物に水を混合することを特徴とする加水発熱剤の発熱制御方法。
- 加水発熱剤としての酸化カルシウムと、塩化マグネシウム及び/又は硫酸マグネシウムと、炭酸カリウム及び/又は炭酸ナトリウムと、水とからなることを特徴とする発熱制御された組成物。
- 水には、香料、精油を含有することを特徴とする請求項2に記載された発熱制御された組成物。
- 水には、薬剤を含有することを特徴とする請求項2又は3に記載された発熱制御された組成物。
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