JP4291935B2 - 内面走査型画像記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒状体の一部によって構成されるドラムの内周面に保持された感光材料に対して、画像情報に応じて変調された光ビームを走査して画像を記録する内面走査型画像記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザビームを用いて感光材料に画像を記録する装置として、副走査搬送される平面状の感光材料の主走査方向にレーザビームを照射して記録を行う平面走査型画像記録装置、回転するドラムの外周面に装着された感光材料にレーザビームを照射して記録を行う外面走査型画像記録装置、および、円筒状ドラムの内周面に装着された感光材料にレーザビームを照射して記録を行う内面走査型画像記録装置がある。この場合、内面走査型画像記録装置は、感光材料が円筒状ドラムの内周面に装着されているため、記録中における感光材料の剥離がなく、且つ、記録される画像の寸法精度が高く、また、高速走査性、経済性に優れていることから、多用されるに至っている。
【0003】
図1は、従来の内面走査型画像記録装置2の構成を概略的に示したものである。内面走査型画像記録装置2は、内周面に感光材料Sが装着される半円筒状ドラム4と、レーザビームLを出力するレーザ発振器6と、レーザビームLを感光材料Sに対して主走査および副走査するスピナー8とを備える。
【0004】
レーザ発振器6から出力されたレーザビームLは、画像情報に応じてレーザビームLを変調する音響光学変調素子等からなる変調手段10によって変調された後、ビームエクスパンダを構成するレンズ12、14を介し2枚の反射鏡16、18により反射され、集光レンズ20を介してスピナー8に導かれる。スピナー8は、反射鏡22を半円筒状ドラム4の中心軸を中心として回転させることにより、入射したレーザビームLを反射して感光材料Sを主走査するとともに、半円筒状ドラム4の中心軸に沿った副走査方向に移動することにより、感光材料Sに2次元画像を記録する。
【0005】
ところで、前記のように構成される内面走査型画像記録装置2では、スピナー8を構成する反射鏡22が感光材料Sに指向している場合にのみ画像記録が遂行されるため、反射鏡22が感光材料Sに指向していない場合のレーザビームLが無駄となる不具合がある。また、感光材料Sは、スピナー8の1回転に対して1回の走査しかされないため、高速な画像記録は困難であった。
【0006】
このような不具合を回避するため、例えば、半円筒状ドラム4の代わりに円筒状に近いドラムを用い、レーザビームLを有効に活用して露光効率を高めることが考えられるが、そのように構成すると、感光材料Sのドラムへの着脱作業が困難になってしまう。特に、印刷用プレートに対して画像を記録するような場合、剛性の高い感光材料Sを大きな曲率で湾曲させなければならず、その作業を行う際に感光材料Sを損傷する懸念がある。従って、感光材料Sの着脱作業に長時間を要することとなり、高速での画像記録サイクルを達成することが結果的に困難となってしまう。
【0007】
一方、高速画像記録を達成するため、スピナー8の回転速度を高めることが考えられるが、スピナー8は、1枚の反射鏡22が回転軸に対して略45゜に設定された非対称形となっているため、回転むらが生じやすく、また、遠心力によって反射鏡22が変形することも懸念される。さらに、高速回転を行うと、騒音や発熱の原因ともなる。これらを回避するためには、反射鏡22を小さく構成すればよいのであるが、反射鏡22を小さくすると、レーザビームLの受光面積が小さくなってしまうため、感光材料Sに対して光エネルギを十分に集中させることができなくなり、この結果、解像度が低下して画像品質が劣化することになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、感光材料に対して画像を高速且つ高精度に記録することのできる内面走査型画像記録装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、本発明は、円筒状体の一部によって構成されるドラムの内周面に保持された感光材料に対して、画像情報に応じて変調された光ビームを走査して画像を記録する内面走査型画像記録装置において、
回転軸を中心とする同一円周上に配置される複数の反射鏡を有し、前記回転軸を中心として回転する前記各反射鏡により前記光ビームを反射し、前記感光材料に導いて走査するスピナーと、
前記スピナーの上流側に配設され、前記感光材料に前記光ビームを導く前記各反射鏡の移動速度および移動方向に対応させて前記光ビームの光軸を移動させる光ビーム移動手段とを備え、
前記光ビーム移動手段は、前記光ビームの光軸を第1方向に平行移動させる第1移動手段と、前記光軸を前記第1方向と直交する第2方向に平行移動させる第2移動手段とを備え、
前記第1移動手段または前記第2移動手段は、前記スピナーの回転に同期して揺動し、
前記第1移動手段および前記第2移動手段により、前記光軸を前記各反射鏡の移動方向に対応する方向に移動させることを特徴とする。
【0010】
この場合、スピナーの1回転に対して反射鏡の数に対応した走査線を形成することができるため、光ビームのエネルギをロスすることなく、画像を高速に記録することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図2および図3は、本実施形態の内面走査型画像記録装置30を示す。内面走査型画像記録装置30は、内周面に感光材料Sが装着される半円筒状ドラム32と、レーザビームLを出力するレーザ発振器34と、レーザビームLを画像情報に応じて変調する変調器35と、半円筒状ドラム32の軸線36に直交する面内でレーザビームLの光軸をシフトさせるビームシフト部38(光ビーム移動手段)と、レーザビームLを感光材料Sに対して主走査および副走査するスピナー40とを備える。
【0012】
半円筒状ドラム32は、その軸線36に対する中心角が約180゜に設定される。この場合、半円筒状ドラム32の軸線36に沿ったZ方向を副走査方向とし、軸線36に直交するX方向(第1方向)およびY方向(第2方向)を主走査とする。なお、X方向は図3の紙面に直交する方向とし、Y方向は図3の紙面に沿った方向とする。
【0013】
変調器35は、画像情報に応じた電気信号に従ってレーザビームLの光量を制御し、あるいは、オンオフ制御するものであり、例えば、音響光学変調素子(AOM)、電気光学変調素子(EOM)等によって構成することができる。なお、レーザ発振器34としてレーザダイオードを使用する場合には、変調器35は不要であり、レーザダイオードを直接変調することができる。
【0014】
ビームシフト部38は、Xシフトモジュール42X(第1移動手段)およびYシフトモジュール42Y(第2移動手段)から構成される。Xシフトモジュール42Xは、スピナー40に対するレーザビームLのX方向の入射位置調整を行う。Yシフトモジュール42Yは、スピナー40に対するレーザビームLのY方向の入射位置調整を行う。さらに、Xシフトモジュール42Xは、レーザビームLをX方向に平行シフトさせるための第1シフト素子44Xおよび第2シフト素子46Xからなり、Yシフトモジュール42Yは、レーザビームLをY方向に平行シフトさせるための第1シフト素子44Yおよび第2シフト素子46Yからなる。第1シフト素子44X、第2シフト素子46X、第1シフト素子44Yおよび第2シフト素子46Yは、出射するレーザビームLの回折方向を印加される電気信号に従って制御するものであり、変調器35と同様、例えば、音響光学偏向素子(AOD)、電気光学偏向素子(EOD)等によって構成することができる。ビームシフト部38の下流側には、ビームエクスパンダを構成するレンズ48、50が配列され、レンズ50の下流側には、レーザビームLを180゜偏向させるための反射鏡52、54が配列される。
【0015】
反射鏡54によって反射されたレーザビームLは、集光レンズ56を介してスピナー40に供給される。スピナー40は、半円筒状ドラム32の軸線36を中心として回転する2枚の反射鏡58、60を有する。反射鏡58、60は、軸線36に対して対称に配置される。
【0016】
図4は、前記のように構成される内面走査型画像記録装置30の制御回路を示す。この制御回路は、スピナーエンコーダ62からのスピナー40の回転に応じた回転位置信号に基づいて制御クロック信号を生成する制御クロック信号生成部64と、制御クロック信号に基づいて画像信号を生成する画像信号生成部66と、制御クロック信号に基づいてX方向シフト電圧信号を生成するX方向シフト電圧信号生成部68と、X方向ミラー誤差補正信号を生成するX方向ミラー誤差補正信号生成部70と、Y方向シフト電圧信号を生成するY方向シフト電圧信号生成部72と、Y方向ミラー誤差補正信号を生成するY方向ミラー誤差補正信号生成部74とを備える。
【0017】
画像信号生成部66、X方向シフト電圧信号生成部68、X方向ミラー誤差補正信号生成部70、Y方向シフト電圧信号生成部72およびY方向ミラー誤差補正信号生成部74には、それぞれ電圧制御発振器75、76、78、80および82が接続される。
【0018】
電圧制御発振器75から出力された周波数変調信号は、アンプ85を介して変調器35に供給され、レーザ発振器34から出力されるレーザビームLを画像信号生成部66からの画像信号に従って変調する。電圧制御発振器76から出力された周波数変調信号は、アンプ86を介して第1シフト素子44Xに供給される。電圧制御発振器78から出力された周波数変調信号は、加算器88において電圧制御発振器76からの周波数変調信号に加算され、インバータ90によって極性が反転された後、アンプ92を介して第2シフト素子46Xに供給される。電圧制御発振器80から出力された周波数変調信号は、アンプ94を介して第1シフト素子44Yに供給される。電圧制御発振器82から出力された周波数変調信号は、加算器96において電圧制御発振器80からの周波数変調信号に加算され、インバータ98によって極性が反転された後、アンプ100を介して第2シフト素子46Yに供給される。
【0019】
本実施形態の内面走査型画像記録装置30は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作につき図5〜図7に基づいて説明する。
【0020】
レーザ発振器34から出力されたレーザビームLは、先ず、変調器35に入射し、画像情報に応じてオンオフ制御される。すなわち、スピナーエンコーダ62は、スピナー40の回転角度に係る回転位置信号を制御クロック信号生成部64に供給する。制御クロック信号生成部64は、この回転位置信号から制御クロック信号を生成し、画像信号生成部66に供給する。画像信号生成部66は、制御クロック信号に従い、レーザビームLの感光材料Sに対する走査位置に対応した画像信号を電圧制御発振器75に出力する。電圧制御発振器75は、画像信号に応じた周波数変調信号を生成し、アンプ85を介して変調器35を制御する。これにより、レーザビームLが画像情報に応じてオンオフ制御され、ビームシフト部38に供給される。
【0021】
オンオフ制御されたレーザビームLの供給されたビームシフト部38を構成するXシフトモジュール42Xは、半円筒状ドラム32の軸線36に対してレーザビームLをX方向に距離Xdだけシフトさせる。すなわち、制御クロック信号生成部64から制御クロック信号が供給されたX方向シフト電圧信号生成部68は、反射鏡58、60の向きに対応したX方向シフト電圧信号を生成し、電圧制御発振器76に出力する。電圧制御発振器76は、供給されたX方向シフト電圧信号から周波数変調信号を生成し、アンプ86を介して第1シフト素子44Xに供給する。この場合、AOD等の素子からなる第1シフト素子44Xは、レーザビームLをX方向に所定角度だけ回折して出力し、次段の第2シフト素子46Xに供給する。
【0022】
一方、X方向ミラー誤差補正信号生成部70は、制御クロック信号生成部64からの制御クロック信号に基づき、反射鏡58、60のX方向に対する設定角度の誤差を補正するためのX方向ミラー誤差補正信号を電圧制御発振器78に供給する。電圧制御発振器78は、前記X方向ミラー誤差補正信号に応じた周波数変調信号を加算器88、インバータ90およびアンプ92を介して第2シフト素子46Xに供給する。この場合、加算器88には、電圧制御発振器76からX方向シフト電圧信号に基づく周波数変調信号が加算されている。従って、第2シフト素子46Xには、インバータ90によって極性が反転され、且つ、反射鏡58、60のX方向に対する設定角度の誤差だけ補正された周波数変調信号が供給される。この結果、第2シフト素子46Xに入射したレーザビームLは、X方向に対して第1シフト素子44Xと反対方向に回折され、且つ、反射鏡58、60のX方向に対する設定角度の誤差の分が補正されて出力されることになる。
【0023】
以上のようにして、Xシフトモジュール42Xは、入射したレーザビームLを反射鏡58、60の回転角度に応じてX方向に距離Xdだけ平行移動させ、且つ、そのシフト量を反射鏡58、60の設定角度の誤差分だけ補正して出力する。
【0024】
次に、レーザビームLは、ビームシフト部38を構成するYシフトモジュール42Yに入射し、第1シフト素子44Yおよび第2シフト素子46Yにより、同様にして、反射鏡58、60の回転角度に応じて、Y方向に距離Ydだけ平行移動されるとともに、そのシフト量が反射鏡58、60の設定角度の誤差分だけ補正される。
【0025】
前記のようにして、スピナー40の回転角度に応じてX方向およびY方向にシフトされたレーザビームLは、レンズ48、50によってビーム径が拡大された後、反射鏡52、54によって180゜偏向され、集光レンズ56を介してスピナー40の反射鏡58、60に導かれる。半円筒状ドラム32の軸線36を中心として回転する反射鏡58、60は、入射したレーザビームLを交互に反射して感光材料Sに導くとともに、Z方向に移動することにより、感光材料S上に2次元画像を記録する。
【0026】
より具体的には、図5に示す状態から画像の記録が開始されるものとすると、先ず、感光材料Sに指向している反射鏡58がレーザビームLを反射して感光材料Sに導き、図6に示すようにして画像の記録を行う。この間、レーザビームLは、ビームシフト部38によって、反射鏡58、60の回転角度θに応じた距離XdおよびYdだけX方向およびY方向にシフトされるとともに、反射鏡58、60の角度の誤差が補正されて反射鏡58、60に導かれる。従って、レーザビームLは、常時、反射鏡58の同一の位置によって反射され、感光材料Sに導かれる。
【0027】
次に、反射鏡58が(180゜−α)だけ回転すると、レーザビームLは、ビームシフト部38によって反射鏡60の中心位置にくるようにシフトされ、次いで、反射鏡58が180゜回転した状態から、図7に示すように、前記の場合と同様にして、反射鏡60の同一の位置によって反射され、感光材料Sに導かれる。なお、角度αは、レーザビームLを反射鏡58の中心位置から反射鏡60の中心位置までシフトするのに要する時間を考慮して設定される角度である。
【0028】
このように、レーザビームLを無駄にすることなく、反射鏡58、60の1回転に対して感光材料Sが2回走査されるため、例えば、図1に示す1つの反射鏡22のみを有するスピナー8を用いて画像を記録する場合に比較して、1/2の時間で画像を記録することができる。しかも、スピナー40の回転速度を高速化することなく、従来の倍の速度で画像を記録することができるため、高速回転による反射鏡58、60の変形や、発熱、騒音といった不具合が生じることもない。また、反射鏡58、60がスピナー40の回転軸に対して対称に設定されるため、回転むらが生じ難く、従って、安定した回転状態で画像を高精度に記録することができる。さらに、レーザ発振器34の出力を増加させることなく高速記録を行うことができるため、特に、印刷用刷版材料のような感度の低い感光材料を使用した場合に、高価なレーザ発振器34のコストを抑えることができる。
【0029】
次に、前記のようにして画像記録を行う場合におけるX方向のシフト量である距離XdとY方向のシフト量である距離Ydとの関係について説明する。なお、説明を簡単なものとするため、反射鏡58、60の設定誤差はないものとし、X方向ミラー誤差補正信号およびY方向ミラー誤差補正信号は0として説明する。
【0030】
距離XdおよびYdは、反射鏡58、60が一定の角速度で回転しているものとすると、単振動の形で表すことができる。その場合、図5の状態におけるレーザビームLによる記録開始時(θ=0)の位相の遅れ角度をφ、反射鏡58、60の番号をN(例えば、反射鏡58をN=1で表し、反射鏡60をN=2で表す。)とすると、(N−1)・π≦θ≦N・π−αの範囲において、
Xd=−Ad・cos(θ−(N−1)・π−φ) …(1)
Yd=−Ad・sin(θ−(N−1)・π−φ) …(2)
と表すことができる。Adは、レーザビームLのビーム径および反射鏡58、60の大きさによって決まる係数である。また、角度αは、レーザビームLが反射鏡58、60間で移動する際の画像記録できない範囲の角度を表す。従って、N・π−α<θ<N・πの範囲では、距離XdおよびYdは、レーザビームLを高速に次の反射鏡58、60に移動させることのできる関数として設定する。図8は、(1)および(2)式の関係を示す。
【0031】
前記のようにしてレーザビームLの位置をX方向およびY方向にシフトさせることにより、2つの反射鏡58、60を用いて効率的に画像の記録を行うことができる。
【0032】
なお、他の実施形態として、例えば、図9に示すように、3つの反射鏡102a〜102cを有するスピナー104を用いて画像記録を行うことができる。この場合、感光材料Sは、(120゜−α)の角度でドラム上に装着され、スピナー104の1回転に対して3本の走査線が記録される。
【0033】
また、図10に示すように、4つの反射鏡106a〜106dを有するスピナー108を用いて画像記録を行う場合には、感光材料Sが(90゜−α)の角度でドラム上に装着され、スピナー108の1回転に対して4本の走査線が記録される。
【0034】
一般に、スピナーを構成する反射鏡をm面として、スピナーの1回転に対しm本の走査線を記録することができる。この場合、X方向の距離XdおよびY方向の距離Ydは、2・(N−1)・π/m≦θ≦2・N・π/m−αの範囲において、
Xd=−Ad・cos(θ−2・(N−1)・π/m−φ) …(3)
Yd=−Ad・sin(θ−2・(N−1)・π/m−φ) …(4)
と表すことができる。
【0035】
以上のように、スピナーを構成する反射鏡の面数を増加させることにより、スピナーの1回転で記録することのできる走査線の数を増加させることができるとともに、ドラムの中心角が小さくなることで、感光材料Sの着脱も容易となる効果が得られる。
【0036】
図11は、光ビーム移動手段の他の実施形態を示す図である。この実施形態におけるビームシフト部110は、Xシフトモジュール112XおよびYシフトモジュール112Yから構成される。Xシフトモジュール112Xは、Y方向を軸として揺動する平行平面板114Xと、AOD、EOD等からなるシフト素子116Xとからなる。平行平面板114Xは、ガルバノメータ等の機構によって揺動することにより、レーザビームLを(3)式に示す距離XdだけX方向にシフトする。シフト素子116Xは、スピナー40の反射鏡58、60の誤差補正を行う。Yシフトモジュール112Yは、X方向を軸として揺動する平行平面板114Yと、AOD、EOD等からなるシフト素子116Yとからなる。平行平面板114Yは、ガルバノメータ等の機構によって揺動することにより、レーザビームLを(4)式に示す距離YdだけY方向にシフトする。シフト素子116Yは、スピナー40の反射鏡58、60の誤差補正を行う。なお、平行平面板114X、114Yは、ピエゾ素子等を用いて揺動させることもできる。
【0037】
図12は、入射するレーザビームLに対する平行平面板114X、114Yの揺動角度ψと、出射するレーザビームLのシフト量である距離Δとの関係説明図である。平行平面板114X、114Yの厚さをt、屈折率をnとすると、距離Δは、
Δ=t・sin(ψ−arcsin(sinψ/n))/cos(arcsin(sinψ/n)) …(5)
となる。従って、(3)〜(5)式から、Δ=XdまたはΔ=Ydとなるように、各平行平面板114X、114Yを揺動制御することにより、レーザビームLをスピナー40の反射鏡58、60の一定位置に導くことができる。
【0038】
なお、図13に示すように、平行に配置した2組の反射鏡118a、118bからなるシフトモジュール120を用いて、レーザビームLを揺動方向に距離Δだけシフトするように構成することもできる。
【0039】
また、図14に示すように、透明な2組のウェッジ板122a、122bを対向配置してなるシフトモジュール124を用いて、レーザビームLを揺動方向に距離Δだけシフトするように構成することもできる。
【0040】
さらに、光ビーム移動手段の他の実施形態として、図15および図16に示すように構成したシフトモジュール126を用いることもできる。このシフトモジュール126は、2つの反射鏡58、60を備えたスピナー40に対応するもので、傾斜する半円形状の2枚の平行平面板128、130をそれぞれの直径部分において張り合わせて形成される。入射するレーザビームLの光軸と各平行平面板128、130の入射面の法線とのなす角度をψとすると、出射するレーザビームLのシフト量である距離Δは、(5)式によって表される。そして、出射するレーザビームLは、シフトモジュール126が360゜回転する間、距離Δのシフト量を有した状態で平行平面板128によって180゜回転した後、再び原点に戻り、距離Δのシフト量を有した状態で平行平面板130によって180゜回転する動作を繰り返す。
【0041】
この場合、シフトモジュール126をスピナー40の回転に同期させて回転させることにより、レーザビームLを反射鏡58、60の同一位置に入射させることができる。このような構成からなるシフトモジュール126を用いることにより、図2に示す実施形態のように、2組のXシフトモジュール42XおよびYシフトモジュール42Yを用いることなく、しかも、レーザビームLによって画像記録できない範囲(角度α)をビーム径のレベルまで小さくし、より効率的な画像記録を行うことができる。
【0042】
ここで、図17に示すように、ビーム径dのレーザビームLをシフトモジュール126の中心からの距離Rの位置に入射させるものとすると、レーザビームLが平行平面板128、130の接続部分を通過する時間の割合Taは、
Ta=d/(π・R) …(6)
となる。この場合、レーザビームLの入射位置がシフトモジュール126の中心から離れる程、前記接続部分を通過するのに要する時間を短縮することができる。従って、画像記録できない範囲(角度α)を小さくするためには、距離Rが大きくなるように設定することが望ましい。
【0043】
なお、前記シフトモジュール126は、2つの反射鏡58、60を有するスピナー40に適用する場合としているが、m枚の平行平面板を同一円周上に配置し、m面の反射鏡を有するスピナーに拡張して適用することもできる。
【0044】
さらに、図15〜図17に示す平行平面板128、130を用いる代わりに、図18に示すように、入射面のみをレーザビームLの光軸に対して傾斜させた2枚のプリズム132、134を接合してシフトモジュール136を構成し、このシフトモジュール136をスピナー40に同期させて回転させるようにしてもよい。この場合、シフトモジュール136をレーザビームLの光軸方向に長尺に構成すれば、レーザビームLの射出方向の偏向角度や感光材料Sに対する照射位置の誤差を小さくすることができる。
【0045】
なお、上述した実施形態では、1本のレーザビームLを用いて画像記録する場合について説明したが、本発明は、複数本のレーザビームLをスピナーに対して同時に供給し、同時に複数本の走査線記録するように構成した装置にも適用することが可能である。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、スピナーの1回転に対して反射鏡の数に対応した走査線を形成することができるため、光ビームのエネルギをロスすることなく、画像を高速に記録することができる。
【0047】
また、画像の高速記録を維持し、且つ、ドラムの中心角を180゜以下とすることができるので、ドラムに対する感光材料の着脱作業を容易なものとすることができる。
【0048】
さらに、スピナーを高速回転させることなく画像の高速記録が可能となるため、スピナーから発する騒音、振動等を懸念することなく、高精度な画像記録を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術に係る内面走査型画像記録装置の構成斜視図である。
【図2】本実施形態の内面走査型画像記録装置の構成斜視図である。
【図3】図2に示す内面走査型画像記録装置の一部断面側面図である。
【図4】本実施形態の内面走査型画像記録装置の制御回路ブロック図である。
【図5】本実施形態の内面走査型画像記録装置によるレーザビームの走査状態の説明図である。
【図6】本実施形態の内面走査型画像記録装置によるレーザビームの走査状態の説明図である。
【図7】本実施形態の内面走査型画像記録装置によるレーザビームの走査状態の説明図である。
【図8】本実施形態の内面走査型画像記録装置におけるスピナーの回転角度とレーザビームの光軸の移動量との関係説明図である。
【図9】3枚の反射鏡を有するスピナーによるレーザビームの走査状態の説明図である。
【図10】4枚の反射鏡を有するスピナーによるレーザビームの走査状態の説明図である。
【図11】本発明の内面走査型画像記録装置における光ビーム移動手段の他の実施形態の説明図である。
【図12】図11に示す実施形態に用いられる平行平面板の説明図である。
【図13】本発明の内面走査型画像記録装置における光ビーム移動手段の他の実施形態の説明図である。
【図14】本発明の内面走査型画像記録装置における光ビーム移動手段の他の実施形態の説明図である。
【図15】本発明の内面走査型画像記録装置における光ビーム移動手段の他の実施形態の斜視説明図である。
【図16】図15に示す光ビーム移動手段の側面説明図である。
【図17】図15に示す光ビーム移動手段の正面説明図である。
【図18】本発明の内面走査型画像記録装置における光ビーム移動手段の他の実施形態の側面説明図である。
【符号の説明】
30…内面走査型画像記録装置 32…半円筒状ドラム
34…レーザ発振器 35…変調器
38、110…ビームシフト部 40、104、108…スピナー
42X、112X…Xシフトモジュール
42Y、112Y…Yシフトモジュール
44X、44Y…第1シフト素子 46X、46Y…第2シフト素子
58、60、102a〜102c、106a〜106d、118a、118b…反射鏡
114X、114Y、128、130…平行平面板
116X、116Y…シフト素子
120、124、126、136…シフトモジュール
122a、122b…ウエッジ板 132、134…プリズム
L…レーザビーム S…感光材料

Claims (10)

  1. 円筒状体の一部によって構成されるドラムの内周面に保持された感光材料に対して、画像情報に応じて変調された光ビームを走査して画像を記録する内面走査型画像記録装置において、
    回転軸を中心とする同一円周上に配置される複数の反射鏡を有し、前記回転軸を中心として回転する前記各反射鏡により前記光ビームを反射し、前記感光材料に導いて走査するスピナーと、
    前記スピナーの上流側に配設され、前記感光材料に前記光ビームを導く前記各反射鏡の移動速度および移動方向に対応させて前記光ビームの光軸を移動させる光ビーム移動手段とを備え、
    前記光ビーム移動手段は、前記光ビームの光軸を第1方向に平行移動させる第1移動手段と、前記光軸を前記第1方向と直交する第2方向に平行移動させる第2移動手段とを備え、
    前記第1移動手段または前記第2移動手段は、前記スピナーの回転に同期して揺動し、
    前記第1移動手段および前記第2移動手段により、前記光軸を前記各反射鏡の移動方向に対応する方向に移動させることを特徴とする内面走査型画像記録装置。
  2. 請求項1記載の装置において、
    前記ドラムは、中心角が180゜以下である円筒状体の一部によって構成され、前記スピナーは、前記中心角に応じた枚数からなる前記反射鏡を有することを特徴とする内面走査型画像記録装置。
  3. 請求項1記載の装置において、
    前記各反射鏡は、前記回転軸を中心として対称に配置されることを特徴とする内面走査型画像記録装置。
  4. 請求項記載の装置において、
    前記第1移動手段または前記第2移動手段は、音響光学偏向素子からなることを特徴とする内面走査型画像記録装置。
  5. 請求項記載の装置において、
    前記第1移動手段または前記第2移動手段は、電気光学偏向素子からなることを特徴とする内面走査型画像記録装置。
  6. 請求項記載の装置において、
    前記第1移動手段または前記第2移動手段は、前記スピナーの回転に同期して揺動する平行平面板からなることを特徴とする内面走査型画像記録装置。
  7. 請求項記載の装置において、
    前記第1移動手段または前記第2移動手段は、前記スピナーの回転に同期して揺動する一対の反射鏡からなることを特徴とする内面走査型画像記録装置。
  8. 請求項記載の装置において、
    前記第1移動手段または前記第2移動手段は、前記スピナーの回転に同期して揺動する一対のウェッジ板からなることを特徴とする内面走査型画像記録装置。
  9. 請求項1記載の装置において、
    画像記録を行う場合における前記第1方向のシフト量である距離Xdと前記第2方向のシフト量である距離Ydは、2・(N−1)・π/m≦θ≦2・N・π/m−αの範囲において、
    Xd=−Ad・cos(θ−2・(N−1)・π/m−φ)
    Yd=−Ad・sin(θ−2・(N−1)・π/m−φ)
    であることを特徴とする内面走査型画像記録装置。
    [θ:前記反射鏡の回転角度、φ:前記光ビームによる記録開始時(θ=0)の位相の遅れ角度、m:前記スピナーを構成する前記反射鏡の数、N:各前記反射鏡を特定する連番(N=1,2,・・・m)、Ad:前記光ビームのビーム径および前記反射鏡の大きさによって決まる係数、α:前記光ビームが前記反射鏡間で移動する際の画像記録できない範囲の角度]
  10. 請求項1記載の装置において、
    前記光ビーム移動手段は、前記各反射鏡の前記光ビームに対する傾斜角度の設定誤差を補正する補正手段を有し、前記補正手段は、前記感光材料に前記光ビームを導く前記各反射鏡の移動速度および移動方向に対応させて前記光ビームの光軸を移動させることを特徴とする内面走査型画像記録装置。
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