JP4291491B2 - ポリオレフィン変性ポリオール及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン変性ポリオール、及びその製造方法に関する。詳しくは、ポリウレタン樹脂の原料として用い得る、ポリオレフィン構造を含有したポリオール、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン系樹脂、及びポリプロピレン系樹脂とオレフィン系エラストマーから得られる成形品に対する塗膜密着性の向上、或いは、ポリウレタンとポリオレフィンとの接着性を改良する等の目的で、エチレン性酸無水物をグラフト重合した酸変性オレフィン重合体とポリオキシアルキレン鎖を有するポリオール、或いは、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸、又はその無水物と、分子中に水酸基を2個以上有するポリオール化合物とで変性して成る変性ポリオレフィン重合体が提案されている。
【0003】
例えば、特開平8−259744号公報には、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体からなる樹脂用改質剤(C)において、ブロック(A)は、ポリオレフィン鎖であり、ブロック(B)はポリオキシアルキレン鎖、またはポリエポキシドと、アミンまたはジオールとの反応生成物を構成単位とする重合体が例示されている。該公報において、低分子量ポリエチレンに無水マレイン酸を反応させた無水マレイン酸変性ポリエチレンとポリオキシプロピレン化グリセリンとのブロック共重合体(実施例3)をエチレン−プロピレンブロック共重合体、及びエチレン−プロピレンゴムに添加することにより、塗膜密着性、塗膜品の外観等が良好になることが記載されている(実施例7)。
【0004】
しかし、該公報では、酸変性オレフィン重合体と、ポリオキシアルキレンポリオール、或いは、酸変性オレフィン重合体と、ポリエポキシド化合物とアミン、又はジオールとの反応生成物とのブロック重合体における両成分の混合比が不明である上、使用する酸変性オレフィン重合体の粘度、分子量分布等の性状に関しては、何ら記載されていない。本発明者らが調べた結果、用いる酸変性オレフィン重合体の組成によっては、本発明者らが目的とするポリオレフィン変性ポリオールが得られないことがわかった。更に、実施例3における酸変性オレフィン重合体とポリオキシアルキレンポリオールとの仕込量、及び、反応条件では、得られた重合体の酸価が高くなり、ポリウレタンの原料として用い得るには、十分でないことがわかった。
【0005】
又、特公昭63−36603号公報には、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸、又はその無水物と、分子中に水酸基を2個以上有するポリオール化合物と、及び場合により、ポリオール化合物の脂肪酸エステルとで変性して成る変性ポリオレフィンが開示されている。分子中に水酸基を2個以上有するポリオール化合物としては、該公報の2頁、カラム3、21〜44行に記載されている。該公報における各変性成分の割合、特に、ポリオレフィンとポリオール化合物に関しては、ポリオレフィン100重量部に対して、ポリオール化合物が0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である(2頁、第4欄、44行〜3頁、第5欄、7行)ことが記載されている。このような割合であると室温で固体となり、液状にするためには、ポリオレフィンの融点近傍まで温度を上げる必要があるため、本発明者らが目的とするポリウレタンの主原料として用い得ることは困難である。
【0006】
更に、特公平1−50246号公報には、ポリオレフィン、無水マレイン酸とポリオールを反応させて得られる無水マレイン酸のポリオールエステル、およびラジカル発生剤を溶融状態で混練押出したオレフィングラフト変性物の製造方法が開示されている。更に、該公報では、未反応の遊離マレイン酸を少なくするために、1級水酸基を末端とするポリオールの使用が好適であると記載されている(2頁、第4欄、41行〜3頁、第5欄、1行)。しかし、該公報で用いているポリオールは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン等の低分子量の活性水素化合物であるため、該公報記載の製造方法で得られた変性物は、室温で固体である。その上、成形用押出機、又は二軸(多軸)混練押出機を使用して製造しなければならないため、操作が煩雑となる。
【0007】
従って、ポリオレフィン構造の特徴を活かしながら、従来のポリウレタンの製造方法に適用し得る、ポリオレフィン構造を含有したポリオレフィン変性ポリオール、及び、効率的な該ポリオールの製造方法が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリオレフィン含有量が高い場合においても、特定範囲の粘度を有し、且つ、液分離を起こさない貯蔵安定性に優れたポリオレフィン変性ポリオール、及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定範囲の分子量を有するポリオレフィンと不飽和基含有ポリオールとをグラフト共重合することにより、特定範囲の粘度に制御し、貯蔵安定性に優れたポリオレフィン変性ポリオールを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明の第1発明は、数平均分子量300〜10000のポリオレフィン(a)と総不飽和度が少なくとも0.05meq/gである不飽和基含有ポリオール(b)とをグラフト共重合したポリオレフィン変性ポリオールであって、ポリオレフィン(a)単位の含有量が2〜80重量%、水酸基価が5〜600mgKOH/g、及び、25℃における粘度が200〜100000mPa・sであることを特徴とするポリオレフィン変性ポリオールである。前記したポリオレフィン変性ポリオールにおいて、ポリオレフィン(a)単位の含有量は5〜70重量%であることが好ましい。
【0011】
更に、ポリオレフィン(a)単位が、α−オレフィン単位を20〜80モル%含む、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体が好ましい。不飽和基含有ポリオール(b)については、アクロイル基、メタアクロイル基、ビニルフェニル基、プロペニル基、アリル基、及びビニルエーテル基から選ばれた少なくとも1種の不飽和基を有するポリオールであることが好適である。更に、オキシアルキレン基が少なくとも30重量%であることが好ましい。又、ポリオレフィン変性ポリオールの25℃における粘度は、400〜80000mPa・sであることが好ましい。
【0012】
本発明の第2発明は、前記第1発明に係わるポリオレフィン変性ポリオールを製造する方法であって、ラジカル開始剤の存在下、100〜200℃において、数平均分子量300〜10000のポリオレフィン(a)と総不飽和度が少なくとも0.05meq/gである不飽和基含有ポリオール(b)との総重量に対して、(a)が2〜80重量%の範囲でグラフト共重合反応を行うことを特徴とするポリオレフィン変性ポリオールの製造方法である。
【0013】
本発明により提供されるポリオレフィン変性ポリオールは、ポリオレフィン構造を含有したポリオールであって、高濃度のポリオレフィンを含有した場合も、液状を呈しており、特定範囲の粘度を有し、且つ、液分離を起こさず、貯蔵安定性に優れている。
従って、本発明に係わるオレフィン変性ポリオールは、ポリウレタンフォーム、塗料、接着剤、床材、防水材、シーリング材、靴底、エラストマー等のポリウレタン分野のみならず、潤滑油、樹脂改質剤、ポリウレタンとポリオレフィンとの相溶化剤等の幅広い分野において、使用し得る極めて有用な資材である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明で使用するポリオレフィンについて説明する。ポリオレフィンとしては、オレフィンの単独重合体、又は共重合体であって、数平均分子量が300〜10000の範囲の重合体である。実質的に無色透明であり、液状のものが好ましい。
【0015】
ポリオレフィンを構成するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコデセン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン等が挙げられる。
【0016】
オレフィン単独重合体として、好ましくは炭素原子数3〜20、更に好ましくは炭素原子数4〜10のα−オレフィンを重合したものである。オレフィン共重合体としては、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンから構成される共重合体、及び、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンの中から選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合体等が好ましい。液状のポリオレフィンを得るためには、ポリオレフィンとして、単独重合より共重合組成が好ましい。共重合体の製造方法としては、Aモノマーを重合後、次いで、Bモノマーを重合するブロック共重合方法、AモノマーとBモノマーを不規則に重合するランダム共重合方法等が挙げられる。特に、ランダム共重合方法で得られたポリオレフィンが好ましい。更に、エチレンとα−オレフィンとの共重合体は、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体が好ましく、特に、エチレンとプロピレンとの共重合体が好ましい。
【0017】
ポリオレフィン(a)がエチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンから構成される共重合体の場合、α−オレフィンの組成は、ポリオレフィンに対して、好ましくは20〜80モル%、更に好ましくは40〜60モル%である。α−オレフィンの組成が20モル%未満の場合、共重合体は液状を呈さなくなるか、或いは、有機溶剤への溶解性が低下してくる。一方、α−オレフィンの組成が80モル%を超える場合、熱に対する酸化安定性が低下する。
【0018】
ポリオレフィン(a)の数平均分子量は300〜10000である。ポリオレフィン(a)の数平均分子量、並びに、分子量分布指数(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、GPCという)法で測定した値である(測定方法は実施例で詳述する)。ポリオレフィン(a)の数平均分子量として、好ましくは400〜8000、更に好ましくは500〜5000である。数平均分子量が300未満であると、ポリオレフィンの耐熱性が低下する。一方、10000を超えると粘度が高くなり、その取り扱いが困難になる。又、ポリオレフィン(a)の分子量分布指数は1〜4が好ましく、更に好ましくは1.1〜3、最も好ましくは1.1〜2.5である。ポリオレフィンの分子量分布指数を1未満とすることは、実質的に困難である。一方、分子量分布指数が4を超えると、得られたポリオレフィン変性ポリオールの粘度が高くなる。
【0019】
更に、ポリオレフィン(a)の、135℃におけるデカリン溶液中で測定した極限粘度[η]は0.01〜0.3dl/gが好ましい。更に好ましくは0.02〜0.25dl/gであり、最も好ましくは0.03〜0.2dl/gである。極限粘度[η]が、0.01dl/g未満となると、ポリオレフィン変性ポリオールをウレタン化した場合、力学物性の改良効果が少ない。一方、極限粘度[η]が0.3dl/gを超えると、ポリオレフィン変性ポリオールの粘度が高くなり、ポリウレタンの製造工程において、取り扱いが困難となる。
【0020】
ポリオレフィン(a)は、公知のカチオン重合、或いはアルキノキサンを助触媒とするメタロセン系触媒による重合によって製造することができる。触媒、及びオレフィンの種類を制御することにより、ポリオレフィンの末端、或いは分子鎖中に二重結合を導入することもできる。二重結合を導入したポリオレフィンは不飽和基含有ポリオールとグラフト共重合し易い。又、ポリオレフィン変性ポリオールの使用分野により、ポリオレフィンの水素添加反応を行い、分子中の二重結合を飽和することもできる。具体的には、例えば、特開昭57−123205号公報、或いは、特開昭62−121710号公報に記載されている方法が挙げられる。
【0021】
上述のように、本発明では、特開平8−259744号公報に記載されるような、酸無水物で変性された特殊なポリオレフィンは使用しない。
【0022】
次に、ポリオレフィン(a)とグラフト共重合する不飽和基含有ポリオール(b)について説明する。不飽和基含有ポリオールとしては、分子中にアクロイル基、メタアクロイル基、ビニルフェニル基、プロペニル基、アリル基、及びビニルエーテル基から選ばれた少なくとも1種の不飽和基を有するポリオールが好ましい。これらの不飽和基の中で、アクロイル基、メタアクロイル基、プロペニル基、アリル基が好ましい。更に好ましくはプロペニル基、アリル基であり、最も好ましくはアリル基である。前記した不飽和基の含有量は、総不飽和度として、少なくとも0.05meq/gであることが好ましい。より好ましくは少なくとも0.1meq/g、更に好ましくは少なくとも0.3meq/g、最も好ましくは少なくとも0.5meq/gである。総不飽和度の上限は、通常、6meq/g程度である。
【0023】
不飽和基含有ポリオールの製造方法として、1)塩基性触媒の存在下、分子内に活性水素基、好ましくは、水酸基を1個以上存在し、且つ、不飽和基を有する化合物にエポキサイド化合物を付加重合する方法、2)塩基性触媒の存在下、活性水素化合物に、アリルグリシジルエーテルを含有するエポキサイド化合物を付加重合する方法等が例示できる。
【0024】
塩基性触媒としては、特開平9−194588号公報に記載の3級アミン化合物、カリウム、ルビジウム、及び、セシウム等の比較的原子半径の大きいアルカリ金属化合物類や、バリウム等のアルカリ土類金属化合物類が例示できる。化合物の形態としては、水酸化物やアルコキシ化物が好ましい。特に、塩基性触媒として、ポリオールからの触媒除去の容易性、エポキサイド化合物の重合活性の観点から、P=N結合を有する化合物触媒が好適である。P=N結合を有する化合物の好ましい形態としては、ホスファゼニウム化合物、ホスフィンオキシド化合物、及び、ホスファゼン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である。これらの内、工業的な利用見地から、ホスファゼニウム化合物、及びホスフィンオキシド化合物が特に好ましい。
【0025】
ホスファゼニウム化合物としては、特開平11−106500号公報記載の化合物が挙げられる。例えば、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシド、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムメトキシド、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムエトキシド、テトラキス[トリ(ピロリジン−1−イル)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウム tert−ブトキシド等が例示される。
【0026】
ホスファゼン化合物としては、特開平10−36499号公報の化合物が挙げられる。例えば、1−tert−ブチル−2,2,2−トリス(ジメチルアミノ)ホスファゼン、1−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−2,2,2−トリス(ジメチルアミノ)ホスファゼン、1−エチル−2,2,4,4,4−ペンタキス(ジメチルアミノ)−2λ5,4λ5−カテナジ(ホスファゼン)、1−tert−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[ トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]−2λ5,4λ5−カテナジ(ホスファゼン)、1−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]−2λ5,4λ5−カテナジ(ホスファゼン)、1−tert−ブチル−2,2,2−トリ(1−ピロリジニル)ホスファゼン、または7−エチル−5,11−ジメチル−1,5,7,11−テトラアザ−6λ5−ホスファスピロ[5,5]ウンデカ−1(6)−エン等が例示できる。
【0027】
ホスフィンオキシド化合物としては、特開平11−302371号に記載の化合物が挙げられる。例えば、トリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフィンオキシド、トリス[トリス(ジエチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフィンオキシド等が例示できる。
【0028】
先ず、不飽和基含有ポリオールの製造方法1)について説明する。前記したP=N結合を有する化合物を触媒として、分子中に不飽和基、及び活性水素基を有する化合物にエポキサイド化合物の付加重合を行う。分子中に不飽和基、及び活性水素基を有する化合物としては、例えば、アクロイル基、或いは、メタアクロイル基を有した水酸基含有化合物が挙げられる。具体的な化合物を例示すると、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタアクリレート、トリプロピレングリコールメチルアクリレート、トリプロピレングリコールメチルメタアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、トリメチロールプロパンモノホルマルアクリレート、グリセロールモノホルマルアクリレート等が挙げられる。
【0029】
又、ビニルフェニル基を有する水酸基含有化合物が挙げられる。具体的な化合物を例示すると、4−ビニルフェノール、2−ヒドロキシエチル−4−ビニルフェニルエーテル、(2−ヒドロキシプロピル)−4−ビニルフェニルエーテル、(2,3−ジヒドロキシプロピル)−4−ビニルフェニルエーテル、4−(2−ヒドロキシエチル)スチレン等が挙げられる。
【0030】
更に、プロペニルエーテル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基等を有する水酸基含有化合物が挙げられる。具体的な化合物を例示すると、プロペニルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、2,3−ジヒドロキシプロピルプロネニルエーテル等や、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−ヒドロキシプロピルアリルアルコール等や、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0031】
これらの不飽和基、及び活性水素基含有化合物の中で最も好ましくは、アクロイル基、メタアクロイル基、プロペニル基、及びアリル基を有する水酸基含有化合物であり、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、2,3−ジヒドロキシプロピルプロネニルエーテル等や、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−ヒドロキシプロピルアリルアルコール等が好適である。更に好ましくは、プロペニル基、及びアリル基を有する水酸基含有化合物である。
【0032】
エポキサイド化合物としては、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは2種以上併用してもよい。この中で、好ましくは、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドである。更に好ましくはプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドである。
【0033】
上記化合物にエポキサイド化合物を付加重合するに際しては、化合物中の活性水素基に対して、0.001〜20モル%、好ましくは、0.01〜15モル%、更に好ましくは、0.01〜12モル%の塩基性触媒を用いる。特に、P=N結合を有する化合物触媒を用いる場合は、化合物中の活性水素基に対して、0.001〜5モル%、好ましくは、0.01〜3モル%、更に好ましくは、0.01〜1モル%の範囲である。
【0034】
エポキサイド化合物の付加重合の温度は15〜160℃が好ましい。更に好ましくは70〜150℃、最も好ましくは75〜145℃である。エポキサイド化合物の最大反応圧力は、0.8MPaG以下が好ましい。更に好ましくは0.6MPaG以下、最も好ましくは0.5MPaG以下である。不飽和基含有ポリオールの水酸基価(OHV)は、5〜610mgKOH/gが好ましい。更に好ましくは10〜500mgKOH/g、最も好ましくは、10〜200mgKOH/gである。不飽和基含有ポリオールのOHVは、使用するエポキサイド化合物の量で制御する。
【0035】
前記した方法により、エポキサイド化合物の付加重合を行った後、ポリオレフィン変性ポリオールの使用分野によっては、不飽和基含有ポリオール中の触媒を除去することが好ましい。アルカリ金属、アルカリ土類金属類を触媒とした場合には、酸で中和し、吸着剤により精製する方法や、イオン交換樹脂で精製する方法等の公知の技術が適用できる。触媒除去操作後の、ポリオレフィン変性ポリオール中のアルカリ金属、及び、アルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属の残存量は100ppm以下とすることが好ましい。更に、好ましくは80ppm以下、最も好ましくは30ppm以下である。ポリオレフィン変性ポリオール中に全く金属が残存しないことがより好ましい。
【0036】
P=N結合を有する化合物を触媒とした場合には、比表面積が450〜1200m2/g、且つ、平均細孔直径が40〜100Åであるケイ酸アルミニウム、及びケイ酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種の吸着剤との接触により、P=N結合を有する化合物を除去する方法が好ましい。以下、P=N結合を有する化合物を触媒として、エポキサイド化合物を付加重合したポリオールからの触媒除去方法について説明する。
【0037】
吸着剤として、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムの他に、前記形状を満足するならばシリカゲルも用いることができる。好ましくはケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムである。前記ケイ酸アルミニウム、及び、ケイ酸マグネシウムの中でも合成品がより好ましい。これらの特性を有する吸着剤の市販品としては、協和化学工業(株)製、商品名:KW−600BUP−S、KW−700PEL、KW−700SEL等が挙げられる。好ましくはKW−700PEL、KW−700SELであり、更に好ましくはKW−700SELである。
【0038】
合成ケイ酸アルミニウムの例としては、二酸化珪素の含有量が55〜75重量%、酸化アルミニウムの含有量が5〜25重量%のものが好ましい。その化学組成の例としては、Al2O3・nSiO2・mH2Oが挙げられる(n、mは、酸化アルミニウムへの二酸化珪素、または水の配位数)。特に、水が配位したものが好ましい。合成ケイ酸マグネシウムの例としては、二酸化珪素の含有量が55〜70重量%、酸化マグネシウムの含有量が5〜20重量%のものが好ましい。その化学組成の例としては、MgO・xSiO2・yH2Oが挙げられる(x、yは、酸化マグネシウムへの二酸化珪素、または水の配位数)。特に、水が配位したものが好ましい。
【0039】
触媒が残存したポリオール(以下、粗製ポリオールという)と吸着剤との接触方法としては、回分式と連続式の2方法が挙げられる。回分式とは、例えば、反応機に仕込んだ粗製ポリオールに、吸着剤を装入し、攪拌混合する方法である。ポリオールの着色、劣化を防止する目的で、不活性ガスの存在下、攪拌混合することが好ましい。また、吸着剤の使用量としては、粗製ポリオールに対して0.01〜2重量%程度であり、好ましくは0.05〜1.5重量%、更に好ましくは0.1〜0.9重量%である。接触時間は、スケールにも依るが、前記温度条件で1〜6時間程度が好ましい。連続式とは、吸着剤を充填した塔に粗製ポリオールを通液する方法である。空塔速度は、スケールにも依るが、0.1〜3(1/hr)程度が好ましい。吸着剤と接触した後、ろ過、遠心分離等の常用の方法によりポリオールを回収する。又、吸着温度は、通常、50〜150℃、好ましくは60〜140℃である。
【0040】
前記した方法により、不飽和基含有ポリオール中のP=N結合を有する化合物の残存量を150ppm以下に制御することが可能である。上記、処理法によれば、P=N結合を有する化合物の残存量は1ppm程度まで低減できる。
【0041】
次いで、不飽和基含有ポリオールの製造方法2)について、説明する。該方法は、活性水素化合物に付加重合するエポキサイド化合物に不飽和基を含有したエポキサイド化合物を併用し、ポリオール中に不飽和基を導入する方法である。
【0042】
活性水素化合物としては、アルコール類、フェノール化合物、ポリアミン、アルカノールアミン、チオアルコール類等が挙げられる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の1価アルコール類、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の2価アルコール類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等の多価アルコール類、グルコース、ソルビトール、デキストロース、フラクトース、蔗糖、メチルグルコシド等の糖類、又は、その誘導体、エチレンジアミン、ジ(2−アミノエチル)アミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪酸アミン類、トルイレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族アミン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ノボラック、レゾール、レゾルシン等のフェノール化合物等が挙げられる。
【0043】
チオアルコール類としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン等の1価のチオアルコール類、エチレンチオグリコール、プロピレンチオグリコール、トリメチレンチオグリコール、ブタンジチオール等の2価のチオアルコール類や、ジエチレンチオグリコール、トリエチレンチオグリコール等のアルキレンチオグリコール類が挙げられる。これらの活性水素化合物の中で、好ましくは、2価アルコール類、3価アルコール類、ポリアミン、アルカノールアミン類である。
【0044】
前記した活性水素化合物に付加重合するエポキサイド化合物、及び活性水素化合物へのエポキサイド化合物の付加重合触媒は、不飽和基含有ポリオールの製造方法1)で例示した化合物を使用することが好ましい。特に、エポキサイド化合物の内、ポリオール中に不飽和基を導入する上で、アリルグリシジルエーテルは必須化合物である。総不飽和度として、少なくとも0.05meq/gの不飽和基(アリル基)を含有していることが好ましい。ポリオール中のアリル基の含有量として、好ましくは少なくとも0.1meq/g、更に好ましくは少なくとも0.3meq/g、最も好ましくは少なくとも0.5meq/である。総不飽和度の上限は、通常、6meq/g程度である。ポリオール中の不飽和基(アリル基)の含有量(総不飽和度)は、JIS K−1557記載の酢酸第2水銀法、或いは核磁気共鳴スペクトル(NMR)法により定量できる。
【0045】
又、ポリオール中へのアリル基の導入量は、モノマーであるアリルグリシジルエーテルの反応率により制御される。通常、P=N結合を有する化合物触媒を用いることにより、アリルグリシジルエーテルは、ほぼ100%近い割合で反応する。アリルグリシジルエーテルの反応率は、ガスクロマトグラフィーにより定量できる。アリルグリシジルエーテル(以下、AGEと言う)のポリオールへの導入方法としては、予め、AGEを、AGE以外のエポキサイド化合物と混合し、付加重合に行うランダム重合法、或いは、AGE以外のエポキサイド化合物を付加重合後、次いで、AGEを付加重合するブロック重合法等が例示できる。
【0046】
AGE、及びその他のエポキサイド化合物の付加重合は、前記した不飽和基含有ポリオールの製造方法1)記載と同条件が好ましい。又、エポキサイド化合物付加重合後のポリオールからの触媒除去方法についても、前記1)記載の方法が好適である。更に、製造方法2)により得られる不飽和基含有ポリオールのOHVについても、前記した製造方法1)の項で述べた範囲であることが好ましい。
【0047】
AGEを用いて、ポリオール中に不飽和基を導入する方法において、活性水素化合物にAGEを含むエポキサイド化合物を付加重合する方法の他に、公知のポリオールにAGEを共重合し、不飽和基含有ポリオールとして使用することもできる。例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリエステルポリオール、及びポリカプロラクトンジオール等のポリオールに、前記した塩基性触媒、特にP=N結合を有する化合物触媒を添加後、AGEを反応し、次いで、AGE以外のエポキサイド化合物の付加重合を行う方法が挙げられる。
【0048】
以上、詳述した不飽和基含有ポリオールの製造方法1)及び2)において、不飽和基含有ポリオール中のオキシアルキレン基の含有量は、少なくとも30重量%であることが好ましい。オキシアルキレン基、特に、オキシプロピレン基の導入により、ポリオレフィンとグラフト共重合後のポリオレフィン変性ポリオールの粘度が低下する。不飽和基含有ポリオール中の更に好ましいオキシアルキレン基の含有量は、少なくとも40重量%であり。最も好ましくは、少なくとも50重量%である。不飽和基含有ポリオール中のオキシアルキレン基の含有量は、使用するアルキレンオキサイドの量で制御する。
【0049】
前記した製造方法1)、2)により、不飽和基含有ポリオールを製造した後、ラジカル開始剤の存在下、ポリオレフィンとのグラフト共重合反応を行う。ラジカル開始剤としては、公知の化合物が使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物、或いは、パーオキシジスルフィド等が挙げられる。特に、過酸化物が好ましい。過酸化物の使用量は、不飽和基含有ポリオール中の不飽和基1当量に対して、2〜40モル%が好ましい。更に好ましくは3〜25モル%、最も好ましくは、8〜20モル%の範囲である。通常、不活性ガス雰囲気下、加圧反応機に仕込んだポリオレフィンに、不飽和基含有ポリオール、及びラジカル開始剤を滴下しながら、反応を行う方法が好ましい。不飽和基含有ポリオール、及びラジカル開始剤を一括で添加しても構わないが、反応温度を一定に制御するという観点で、不飽和基含有ポリオール、及びラジカル開始剤を滴下する方法が好ましい。滴下する際のポリオレフィンの温度(重合反応温度)は100〜200℃である。好ましくは110〜180℃、更に好ましくは120〜170℃である。100℃未満であると、グラフト反応率が低下する。一方、200℃を超えると、得られるポリオレフィン変性ポリオールが着色する傾向にある。滴下時間は、反応スケールにも依るが、通常、1〜20時間である。不飽和基含有ポリオール中の不飽和基濃度、或いはラジカル開始剤の量が多いときには、反応温度を一定に制御しながら、滴下することが好ましい。
【0050】
前記した温度で、不飽和基含有ポリオール、及びラジカル開始剤を滴下後、反応スケールにも依るが、同温度範囲内で0.5〜7時間反応を継続する。その後、ラジカル開始剤の分解物等を除去する目的で、加熱減圧操作を行うことが好ましい。加熱減圧条件として、例えば、100〜200℃、6.55kPa以下の条件で、1〜10時間実施する方法が挙げられる。その際、反応液中に、不活性ガス、例えば、窒素ガスを導入しながら減圧操作を行う方法により、ラジカル開始剤の分解物等の除去率が向上する。
【0051】
又、ポリオレフィン(a)、及び不飽和基含有ポリオール(b)の使用量により、ポリオレフィン変性ポリオール中のポリオレフィン単位の含有量を制御する。ポリオレフィン(a)と不飽和基含有ポリオール(b)の総重量に対して、ポリオレフィン(a)の量を2〜80重量%の範囲とすることにより、ポリオレフィン変性ポリオール中のポリオレフィン単位の含有量を制御する。
前記した方法により、ポリオレフィン変性ポリオールを製造する。ポリオレフィン変性ポリオール中のポリオレフィン単位の含有量は2〜80重量%である。好ましくは5〜70重量%、更に好ましくは10〜60重量%である。ポリオレフィン単位の含有量が2重量%未満となると、ポリオレフィンによるポリウレタン物性への改質効果が少ない。一方、ポリオレフィン単位の含有量が80重量%を超えると、ポリオレフィン変性ポリオールの粘度が上昇し、作業性が低下する。又、ポリオレフィン変性ポリオールと液分離しなければ、ポリオレフィンとグラフト共重合していないポリオールが存在しても構わない。
【0052】
ポリオレフィン変性ポリオールのOHVは5〜600mgKOH/gである。好ましくは9〜490mgKOH/g、更に好ましくは9〜190mgKOH/gである。ポリオレフィン変性ポリオールのOHVが5mgKOH/g未満になると、粘度の上昇、或いは、ポリウレタン樹脂の強度が低下する等の問題が生じる。一方、OHVが600mgKOH/gを超えると、ポリオレフィン単位の含有量にも依るが、ポリオレフィン変性ポリオールを長期に貯蔵した場合、ポリオレフィン相とポリオール相が分離する傾向にあるので好ましくない。又、25℃におけるポリオレフィン変性ポリオールの粘度は200〜100000mPa・sであり、室温で液状を呈していることが好ましい。ポリオレフィン変性ポリオールの粘度は、ポリオレフィン単位の含有量、及びポリオレフィンの組成に依存する。ポリオレフィン変性ポリオールの好ましい粘度は400〜80000mPa・s/25℃である。更に好ましくは400〜50000mPa・s/25℃である。ポリオレフィン変性ポリオールの粘度は低いほど好ましい。粘度が100000mPa・s/25℃を超えると、作業性が低下する上、ポリイソシアネート化合物との混合性も低下する。
【0053】
更に、本発明のポリオレフィン変性ポリオールは、室温(18〜25℃)で1ヶ月静置しても均一状態であることが好ましい。室温において、ポリオレフィンは、ポリオキシアルキレン化されたポリオールと比較して、比重が小さいため、未反応ポリオレフィンが存在していると、ポリオレフィン変性ポリオールは二層に分離する傾向にある。本発明の方法により、1ヶ月間程度の保管においても、均一なポリオレフィン変性ポリオールが得られることを見出した。更に、本発明のポリオールによるポリオレフィンの変性方法において、酸無水物で変性したポリオレフィンを使用していないため、ポリオレフィン変性ポリオール中の遊離酸が残存しない利点を有する。
【0054】
又、ポリオレフィン変性ポリオールの経時的な安定性を向上させるため、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等を使用しても良い。例えば、酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシアニソール、t−ブチルヒドロキシトルエン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニロキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、ジステアリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
【0055】
紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。熱安定剤としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイト等が挙げられる。これら各々の添加量は、ポリオレフィン変性ポリオールに対して、0.001〜5重量%が好ましい。更に好ましくは0.01〜2重量%、最も好ましくは0.02〜1重量部である。
【0056】
以上、詳述したように、本発明の目的は、従来の製造方法に適用し得る、ポリオレフィン構造を含有するポリオレフィン変性ポリオール、特に、高濃度のポリオレフィンを含有しても均一であり、特定範囲の粘度を有するポリオレフィン変性ポリオール、及び、その製造方法を提供することにある。
【0057】
本発明により提供されるポリオレフィン変性ポリオールは、ポリオレフィン構造の特徴を活かしながら、従来のポリウレタンの製造方法に適用し得る、ポリオレフィン構造を含有するポリオールであり、ポリウレタンフォーム、及び、エラストマー、塗料、接着剤、床材、防水材、シーリング材、靴底、弾性補強剤等の幅広いポリウレタン分野の他に、相溶化剤、界面活性剤、潤滑剤、作動液の分野等において使用できる優れた資材である。
【0058】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示し、本発明の熊様を更に明らかにするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例、比較例における分析、及び評価は、下記の方法に従って行った。
【0059】
(1)ポリオレフィン、及びその組成(単位:モル%)
ポリオレフィンとして、エチレンとプロピレンのランダム共重合体、及び、ポリエチレンを用いた。その組成は、「有機化合物のスペクトルによる同定法」(R.M.SILVERSTEIN著、1983年発行、第4刷、東京化学同人発行)記載の方法(231〜277頁)により、13C−核磁気共鳴装置(日本電子(株)製、400MHz13C−NMR)を用いて、エチレン、及び、プロピレンに由来する特性スペクトルを検出し、各スペクトルの面積比から、共重合体の構成成分比を求める。
【0060】
(2)ポリオレフィンの極限粘度(以下、[η]という、単位:dl/g)
「高分子合成の実験法」(大津 隆行、木下 雅悦共書、1993年発行、第14刷、化学同人発行)記載の方法(27〜29頁)により、ウベローデ粘度計を用い、デカリンを溶媒として、135℃におけるオレフィン重合体の[η]の測定を行う。
【0061】
(3)ポリオレフィンの数平均分子量(以下、Mnという、単位:g/mol)、及び、その分子量分布指数(以下、Mw/Mnという)
(株)島津製作所製、LC−6Aシステムを用い、検量線を東ソー(株)製の単分散ポリスチレンにて作成する。測定条件を以下に記す。分離カラム:東ソー(株)製ポリスチレンゲル(商品名:G6000HX、G4000HX、G3000HX、G2000HX)、分離液:液体クロマトグラフィー用テトラヒドロフラン、温度:40℃、流速:0.7ml/min。
【0062】
(4)ポリオレフィン重合体の動粘度(単位:mm2/s)
JIS K−2283記載の方法により、100℃における動粘度を測定する。
【0063】
(5)ポリオレフィン変性ポリオールの水酸基価(以下、OHVという、単位:mgKOH/g)
JIS K−1557記載のOHV測定方法において、無水フタル酸/ピリジン溶液(以下、ピリジン溶液と言う)に対するポリオレフィン変性ポリオールの溶解性を向上させる目的で、ブランク、及び試料を入れたピリジン溶液に、予め、減圧蒸留により、精製、脱水処理を行った20mlのテトラヒドロフラン(THF)を添加する。THFを添加したピリジン溶液に試料を溶解させた後、JISK−1557に準拠して、OHVの測定を行う。
【0064】
(6)ポリオレフィン変性ポリオールの粘度(単位:mPa・s/25℃)
JIS K−1557記載の方法により測定する。
【0065】
(7)ポリオレフィン変性ポリオールの貯蔵安定性(以下、貯蔵安定性と言う)
オレフィン変性ポリオールをガラス製のサンプル瓶に採取し、密閉後、25℃のオーブンに1ヶ月静置する。1ヶ月静置後、目視により、外観を評価する。評価基準を以下に示す。1:ポリオレフィン相とポリオール相とが分液せず、均一液体。2:やや不均一液体であり、分液している。3:完全に分液している。
【0066】
(8)不飽和基含有ポリオールのOHV、総不飽和度(単位:meq./g)、及び、酸価(単位:mgKOH/g)
JIS K−1557記載の方法により、測定する。
【0067】
次いで、実施例について説明する。エポキサイド化合物の付加重合触媒として、以下の調製例1に示すホスファゼニウム化合物を用いた。更に、該触媒を使用して、以下の調製例2に示す不飽和基含有ポリオールを調製した。
【0068】
調製例1
<ホスファゼニウム化合物(以下、PZNという)>
テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムクロリド(Fluka社製) 31.02g(40mmol)を200mlの50重量%のメタノール−水の混合溶媒に溶解させて、0.2mol/lの溶液を調整した。この溶液を、室温にて、140mlの水酸基型に交換した陰イオン交換樹脂(バイエル社製、商品名;レバチットMP500)を充填したカラム(直径20mm、高さ450mm)に140ml/hの速度で流通した。次いで、450mlの50重量%のメタノール−水の混合溶媒を同速度で流通した。流出液を濃縮した後、80℃、665Paの条件で乾燥し、固形状とした。この固形物をテトラヒドロフランとジエチルエーテルの体積比1:15の混合溶媒に溶解後、再結晶することにより、28.76gの無色の化合物を得た。収率は95%であった。
【0069】
りん酸トリ−n−ブチルを内部標準化合物とした、該化合物の重水素化ジメチルスルホキシド溶液中の31P−NMR(日本電子(株)製核磁気共鳴装置)の化学シフトは−33.3(5重線、1P)ppm、7.7(2重線、4P)ppmであり、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムカチオン中の中心のリン原子、及び、周りの4つのりん原子として帰属される。又、テトラメチルシランを内部標準とした1H−NMRの化学シフトは2.6ppmであり、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムカチオン中のメチル基に帰属され、リン原子とのカップリングにより、2重線として観測される。元素分析値(重量%)は、C:38.28、H:9.82、N:29.43、P:19.94(理論値、C:38.09、H:9.72、N:29.61、P:20.46)であった。
【0070】
調製例2
<不飽和基含有ポリオール(以下、不飽和ポリオールAと言う)>
耐圧製のオートクレーブにジプロピレングリコール(以下、DPGと言う)を仕込み、次いで、DPGの水酸基に対して、0.25モル%のPZNを添加した。その後、オートクレーブ内の窒素置換を行い、80℃に昇温した。反応温度80℃、最大反応圧力が0.4MPaG以下の条件で、大気圧の状態から、OHVが224mgKOH/gになる量のプロピレンオキサイドを逐次装入した。オートクレーブの圧力に変化が認められなくなるまで、同温度で反応を継続した後、80℃、1.33kPa以下の条件で、0.5時間の減圧処理を行った。その後、該粗製ポリオール中の水酸基に対して、50モル%のアリルグリシジルエーテル(AGE:和光純薬(株)製)を一括でオートクレーブに装入し、80℃、15時間反応を継続した。ガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製、型式:GC−14A)にて、ポリオール中に未反応のAGEが存在しないことを確認した後、OHVが112mgKOH/gになる量のプロピレンオキサイドを逐次装入した。プロピレンオキサイドの反応温度は、80℃、最大反応圧力は0.35MPaG以下である。オートクレーブの圧力に変化が認められなくなるまで、同温度で反応を継続した後、80℃、1.33kPa以下の条件で、0.5時間の減圧処理を行い、粗製ポリオールを得た。
【0071】
次いで、窒素雰囲気下、該粗製ポリオールをセパラブルフラスコに仕込み、80℃に昇温後、同温度にて、粗製ポリオールに対して、3重量%のイオン交換水、及び2重量%の固体酸(協和化学工業(株)、商品名:KW−700SEL)を添加した。80℃、3時間、攪拌を行った後、減圧脱水操作を行いながら、最終的に、110℃、1.33kPa以下の条件で3時間の加熱減圧脱水を行った。次いで、保持粒径1μmのろ紙を用いた加圧ろ過器により、精製ポリオールを回収した。
精製ポリオールの分析を行った結果、OHVは113.1mgKOH/g、総不飽和度は0.988meq./g、酸価は、0.011mgKOH/gであった。GPC分析の結果、分子量分布指数(Mw/Mn)は1.03であった。
【0072】
実施例1
ポリオレフィン変性ポリオールA
攪拌機、2本の均圧管付き滴下ロート、温度計、及び水冷式コンデンサーを装着したセパラブルフラスコに、エチレン成分の含有量が48モル%、Mnが3600g/mol、Mw/Mnが1.65、[η]が0.06dl/g、動粘度が150mm2/sであるエチレン・プロピレン共重合体(以下、ポリオレフィンAと言う)166.91gを仕込み、窒素置換を行った。その後、160℃に昇温後、同温度にて、滴下ロートに秤量していた490.60gの不飽和ポリオールA、及び、10.71gの過酸化ジ(tert−ブチル)(片山化学(株)製)を滴下した。2時間で、不飽和ポリオールA、及び過酸化ジ(tert−ブチル)の滴下を行った。滴下後、160℃にて2時間の反応を行った後、170℃に昇温し、170℃、1.33kPa以下の条件で、3時間の減圧処理を行い、ポリオレフィン変性ポリオールAを得た。ポリオレフィン変性ポリオールAのポリオレフィン単位の含有量は、25.3重量%、OHVは、83.5mgKOH/g、粘度は、3050mPa・s/25℃であり、貯蔵安定性は1であった。
【0073】
実施例2
ポリオレフィン変性ポリオールB
実施例1において、ポリオレフィンAの仕込量を450.10g、不飽和ポリオールAの仕込量を450.07g、及び過酸化ジ(tert−ブチル)の仕込量を9.752gに変更した以外は、実施例1と同様な操作方法により、ポリオレフィン変性ポリオールの合成を行った。得られたポリオレフィン変性ポリオールBのポリオレフィン単位の含有量は、50.0重量%、OHVは、55.8mgKOH/g、粘度は23000mPa・s/25℃であり、貯蔵安定性は1であった。
【0074】
実施例3
ポリオレフィン変性ポリオールC
実施例1において、ポリオレフィンAの仕込量を351.30g、不飽和ポリオールAの仕込量を215.31g、及び過酸化ジ(tert−ブチル)の仕込量を4.687gに変更した以外は、実施例1と同様な操作方法により、ポリオレフィン変性ポリオールの合成を行った。得られたポリオレフィン変性ポリオールCのポリオレフィン単位の含有量は、62.0重量%、OHVは、43.3mgKOH/g、粘度は50800mPa・s/25℃であり、貯蔵安定性は1であった。
【0075】
比較例1
ポリオレフィン変性ポリオールD
実施例2において、不飽和ポリオールAを、不飽和基を有していない2官能性のポリオキシプロピレンポリオール(三井化学(株)製、商品名:Diol−1000、総不飽和度0.010meq./g)に変更した以外は、実施例2と同様な操作方法により、ポリオレフィン変性ポリオールの合成を行った。ポリオレフィンの仕込みは、ポリオレフィンと不飽和ポリオールとの総重量に対して、50重量%であった。合成後、一昼夜静置した後、ポリオレフィンとポリオールとが分液していたため、OHV、粘度は測定不可能であった。貯蔵安定性は3であった。
【0076】
比較例2
ポリオレフィン変性ポリオールE
実施例1において、ポリオレフィンAの仕込量を779.10g、及び不飽和ポリオールAの仕込量を40.90gに変更した以外は、実施例1と同様な方法により、ポリオレフィン変性ポリオールを合成した。ポリオレフィンの仕込みは、ポリオレフィンと不飽和ポリオールとの総重量に対して、95重量%であった。合成後、一昼夜静置した後、ポリオレフィンとポリオールとが分液していたため、OHV、粘度は測定不可能であった。貯蔵安定性は3であった。
【0077】
実施例、比較例の結果を[表1]にまとめた。表中のDiol−1000とは、水酸化カリウムを触媒として、ジプロピレングリコールにプロピレンオキサイドを付加重合したポリオキシプロピレンポリオールであり、総不飽和度が0.010meq./gのポリオールである。DTBOとは、ラジカル開始剤である過酸化ジ(tert−ブチル)の略号である。
【0078】
【表1】
【0079】
<実施例の考察>
[表1]より、ポリオール中の不飽和基含有量が0.988meq./gである不飽和ポリオールとポリオレフィンとをグラフト共重合したポリオレフィン変性ポリオールは、ポリオレフィン単位の含有量が25.3〜62.0重量%まで増加しても液分離を起こさず、貯蔵安定性に優れている(実施例1〜3)。一方、不飽和基含有量が0.010meq./gと低いポリオキシプロピレンポリオール(Diol−1000)を使用したポリオレフィン変性ポリオールは、ポリオレフィンの仕込量が実施例2と同様であるにも係わらず2層に分離する(比較例1)。更に、ポリオレフィンと不飽和ポリオールとの総重量に対して、ポリオレフィンの仕込量が95重量%の場合(比較例2)、比較例1と同様、2層に分離するため貯蔵安定性が悪い。
【0080】
【発明の効果】
本発明のポリオレフィン変性ポリオールは、ポリオレフィン構造を含有したポリオールであって、高濃度のポリオレフィンを含有した場合も、液状を呈しており、特定範囲の粘度を有し、且つ、液分離を起こさず、貯蔵安定性に優れている。従って、本発明に係わるオレフィン変性ポリオールは、ポリウレタンフォーム、塗料、接着剤、床材、防水材、シーリング材、靴底、エラストマー等のポリウレタン分野のみならず、潤滑油、樹脂改質剤、ポリウレタンとポリオレフィンとの相溶化剤等の幅広い分野において、使用し得る極めて有用な資材である。
Claims (7)
- 数平均分子量300〜10000のポリオレフィン(a)と塩基性触媒の存在下、活性水素化合物に、アリルグリシジルエーテルを含有するエポキサイド化合物を付加重合して製造され、総不飽和度が少なくとも0.05meq/gである不飽和基含有ポリオール(b)とをグラフト共重合したポリオレフィン変性ポリオールであって、ポリオレフィン(a)単位の含有量が2〜80重量%、水酸基価が5〜600mgKOH/g、及び、25℃における粘度が200〜100000mPa・sであることを特徴とするポリオレフィン変性ポリオール。
- ポリオレフィン(a)単位の含有量が5〜70重量%であることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン変性ポリオール。
- ポリオレフィン(a)単位が、α−オレフィン単位を20〜80モル%含む、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン変性ポリオール。
- 不飽和基含有ポリオール(b)が、アリル基並びに、アクロイル基、メタアクロイル基、ビニルフェニル基、プロペニル基、及びビニルエーテル基から選ばれた少なくとも1種の不飽和基を有するポリオールであることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン変性ポリオール。
- 不飽和基含有ポリオール(b)中のオキシアルキレン基が少なくとも30重量%であることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン変性ポリオール。
- 25℃における粘度が400〜80000mPa・sであることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン変性ポリオール。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオレフィン変性ポリオールを製造する方法であって、ラジカル開始剤の存在下、100〜200℃において、数平均分子量300〜10000のポリオレフィン(a)と塩基性触媒の存在下、活性水素化合物に、アリルグリシジルエーテルを含有するエポキサイド化合物を付加重合して製造され、総不飽和度が少なくとも0.05meq/gである不飽和基含有ポリオール(b)との総重量に対して、(a)が2〜80重量%の範囲でグラフト共重合反応を行うことを特徴とするポリオレフィン変性ポリオールの製造方法。
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