JP4288991B2 - 重合体の精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は重合体の精製方法に関し、詳しくは、金属含有量が極めて少ない重合体を得ることができる、重合体の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル樹脂、フェノール樹脂、脂環式オレフィン樹脂等の合成樹脂は、半導体製造用の電気絶縁膜やレジスト;液晶表示素子用の透明カバー膜;などの分野で広く使用されているが、これらの性能を向上させるためには、樹脂中に残留する金属に起因する電気ノイズや透明性阻害が問題であることが指摘されている。上記半導体や透明成形品の用途では、樹脂中の金属含有量が1ppm以下であることが要求されている。しかし、樹脂などの重合体中には、重合反応、重合体変性反応などの重合体を調製する工程で使用される金属含有触媒由来の金属成分;反応器、乾燥機、移送配管などから混入する環境由来の金属成分;などが残留している。このような残留金属の中でも、特に重合反応や重合体の炭素−炭素二重結合に対する水素添加反応など重合体を調製する過程で使用された金属含有触媒由来の金属成分が多量であり、これを除去することが重要となっている。
【0003】
重合体と金属成分と有機溶媒とから成る重合体溶液を吸着剤に接触させ、重合体に残留する金属成分を吸着させて除去する方法が検討されている。特許文献1では、金属アルキリデン触媒(金属はルテニウム又はオスミウム)でノルボルネン系単量体やシクロアルケン誘導体の開環(メタセシス)重合を行った後、重合体溶液中に残留する金属含有触媒をビニル化合物で不活化し、次いで、該重合体溶液を吸着剤に接触させて重合体中の残留金属を吸着、除去する方法が提案されている。そして、重合体溶液を吸着剤に接触させる方法としては、ロート、ろ過機やカラム中に吸着剤の充填層を形成し、常圧ろ過、吸引ろ過、大気或いは不活性ガスによる加圧ろ過、カラム分離などが例示され、実施例では活性アルミナ充填層を用いた吸引ろ過による方法が記載されている。しかしながら、この方法による精製を行っても、重合体中に残留する金属量を、せいぜい200ppm程度にまでしか低減できなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−163958号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、金属成分が混入している重合体溶液から、金属成分を効率よく除去することのできる重合体の精製方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、金属含有触媒を用いる反応で得られた重合体から触媒を回収する方法を広く検討した結果、特に、均一系の金属含有触媒を用いる反応を経て得られた重合体から触媒残渣を分離する場合に触媒由来の金属の除去が困難になること、そしてその傾向が、特に、極性構造や芳香環構造を有する重合体の場合に顕著であることを掴んだ。
そこで本発明者は、極性構造又は芳香環構造を有する重合体と金属含有均一系触媒とを有する溶液から触媒を分離する方法の研究に注力した結果、水素を溶存させた該重合体の溶液を、吸着剤に接触させると、触媒が吸着剤によく吸着してろ別が容易になり、触媒由来の金属まかりでなく、環境から混入するナトリウムなどの環境から混入する金属も削減できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によって下記1〜6が提供される。
1.重合体と金属成分と有機溶媒とを含む重合体溶液を吸着剤と接触させる重合体の精製方法であって、重合体溶液の温度が40〜200℃であり、かつ当該重合体溶液温度での溶存水素の分圧が0.1〜10MPaである重合体の精製方法。
2.重合体が極性構造又は芳香環構造を有するものである上記1記載の重合体の精製方法。
3.金属成分の少なくとも1種類が、重合体を得るのに用いた金属含有均一系触媒である上記1記載の重合体の精製方法。
4.属含有均一系触媒が白金族原子を含有する触媒である上記3記載の重合体の精製方法。
5.重合体溶液が、0.1〜10MPaの水素分圧を有する環境下で重合体と金属成分と有機溶媒とを含む溶液を40〜200℃に加熱して調製されたものである請求項1記載の重合体の精製方法。
6.上記1〜5のいずれかに記載の重合体の精製方法によって得られる、重合体を得るのに用いた触媒由来の金属含有量が50ppb以下である重合体。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において、吸着剤と接触させる重合体溶液は、重合体と金属成分と有機溶媒とを含有するものであることはもちろんであるが、更に、重合体溶液が所定温度に加熱されており、また、特定水素分圧の水素を溶存するものである。以下、このような本発明にかかる吸着剤と接触させる重合体溶液を「水素溶存重合体溶液」ということがある。
水素溶存重合体溶液は、通常、重合体と金属成分とが任意の有機溶媒に溶解されてなる重合体溶液に、水素を溶解させて得られる。
【0009】
本発明に用いる重合体に格別な制限はないが、後に詳述する金属触媒を用いて得られた重合体が好適である。もちろん金属触媒を用いないで製造された重合体であっても、製造工程で混入する環境由来の金属成分を除去するために、本発明の方法を採用することができる。
本発明の適用対象となる金属成分は、重合体とともに溶液中に存在する金属成分であれば限定されず、例えば重合体を調製するのに用いられた金属含有均一系触媒などの金属触媒由来の成分や環境由来の金属が挙げられる。また、溶解状態、析出状態を問わない。
本発明に用いる有機溶媒は、常温で液体の一般的に有機溶媒として工業的に使用されているものであればよく、例えば重合体の調製に用いる有機溶媒が挙げられる。
【0010】
重合体と金属成分と有機溶媒とを含有する重合体溶液は、いかなる方法により調製されたものであっても良く、例えば金属含有触媒存在下で得られた重合体反応液そのものであっても、乾燥した重合体を新たな溶媒に溶解したものであってもよい。
また、重合体溶液が、重合反応の後の反応液である場合、固形分濃度を調整するため、任意の溶媒を追加することができ、また、該溶液中の溶媒の一部を蒸発させることもできる。追加する溶媒としては、重合体を溶解するものであれば限定されないが、反応液を構成している有機溶媒と同一であると、有機溶媒を回収、再利用する場合に精製が簡便になるので好ましい。
【0011】
水素を重合体溶液に溶解させる方法に格別な制限はなく、例えば、加圧装置を用いて、水素雰囲気下、重合体と金属成分とを含む加熱された重合体溶液を加圧する方法や、加熱した重合体溶液中に水素ガスをバブリングする方法などがある。
加圧装置を用いる方法においても、バブリングする方法においても、重合体溶液の温度は、水素の溶解度と重合体溶液の安定性を考慮して設定すればよいが、通常40〜200℃、好ましくは50〜180℃である。また、加圧装置を用いる場合やバブリングによる場合の、重合体溶液に加える水素圧は、水素分圧で通常0.1〜10MPa、好ましくは1〜10MPa、より好ましくは1〜8MPaである。重合体溶液に水素を溶存させるのに要する時間は、溶存方法、重合体や有機溶媒の種類、重合体溶液の量、重合体溶液の固形分濃度、重合体溶液の温度、加える圧力等によって異なるが、通常の重合体溶液の溶存可能な水素の量には限界があるため、生産性の観点から、通常5分〜10時間、好ましくは30分〜5時間である。
また水素溶存重合体溶液の固形分濃度は、吸着剤との接触方法により任意に選択できるが、通常5〜80重量%、好ましくは10〜50重量%である。重合体濃度が低すぎると金属含有均一系触媒の除去効率が低下して不経済になるおそれがあり、一方、重合体濃度が高すぎると吸着剤との接触が十分行えない可能性がある。
【0012】
本発明においては、このような水素溶存重合体溶液を吸着剤と接触させることにより、重合体から金属を除去する。
吸着剤としては、重合体中の残留金属を除去するのに用いることができる公知のもの、例えば活性炭;グラファイト;金属酸化物ゲル;粘土層間化合物;などが挙げられる。また、使用された吸着剤は脱着処理をして再利用することが可能である。
【0013】
活性炭としては、活性炭粉末あるいは造粒活性炭の市販品などを使用できる。これらを水による洗浄、酸による洗浄、アルカリによる洗浄、有機溶媒による洗浄等によって不純物成分や表面に付着している異物をとり除き、乾燥してから使用することが好ましい。
【0014】
グラファイトとしては、天然グラファイト、人造グラファイトのいずれでもよい。グラファイトは、アルカリ金属や金属ハロゲン化合物と層間化合物を形成することが知られており、レジスト又はその組成成分溶液に適用すると、不純金属成分をきわめて効率よく低減できる。ただし、活性炭と同様、使用前に十分洗浄、乾燥等を行うことが好ましい。
金属酸化物ゲルとしては、シリカゲル、アルミナゲル、アルミノシリカゲルを挙げることができる。
【0015】
粘土層間化合物としては、ホウフッ石、ハクリュウ石、ホウソーダ石、カイジュウジフッ石、モルデンフッ石、ダキアルドフッ石、キフッ石、クリノプチロルフッ石、ブリュースターフッ石、ダクフッ石、リョクチュウ石、キンセイ石、カスミ石、カンクリン石等の天然ゼオライト類;ゼオライトA型等各型のゼオライト、合成ゼオライト;カオリナイト、アンチゴライト、デッカイト、クリソタイル、ナクライト、パイロサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、タルク、バーミキュライト、白雲母、金雲母、マーガライト、ザンソフィライト、クロライト等が挙げられる。
【0016】
重合体溶液を吸着剤に接触させる方法に格別な制限はなく、例えば、重合体溶液に吸着剤を添加する方法Aや水素を接触させた重合体溶液を吸着剤層に流通させる方法Bが挙げられる。水素溶存重合体溶液を吸着剤に接触させる時間は、当該溶液の固形分濃度や量、接触方式、吸着剤の種類や量などにより異なるが、通常10分〜10時間、より好ましくは30分〜5時間である。
【0017】
前記方法Aにおいて吸着剤の添加は、水素を溶存させ終えた後の溶液(水素溶存重合体溶液)に対して行ってもよいし、水素溶存重合体溶液となる前の重合体溶液(重合体溶液に水素を溶存させる前や水素を溶存させている途中の重合体溶液)に対して行っても良い。水素溶存重合体溶液となる前の重合体溶液に吸着剤を添加する場合は、吸着剤を添加した後の重合体溶液に、上述の方法などによって水素を溶存させる必要がある。また、重合体溶液に吸着剤を添加した後、攪拌するなどして吸着剤を溶液内で循環させることもできる。吸着剤の添加量は、重合体100重量部あたり、好ましくは0.1〜100重量部、より好ましくは、0.5〜50重量部、特に好ましくは1〜30重量部である。吸着剤の添加量が少なすぎると重合体の金属含有量をあまり低減させられないおそれがあり、逆に、多すぎるとろ過に時間がかかって生産性が低下する可能性がある。
【0018】
水素溶存重合体溶液を吸着剤と接触させる際、40〜200℃の水素溶存重合体溶液に、水素を連続的に又は断続的に0.1〜10MPaの圧力で加え続けることが好ましい。
また、精製したい重合体が水素によって変性される重合体である場合、例えば、重合体が炭素−炭素二重結合を有する重合体である場合、金属成分として炭素−炭素二重結合の水素添加(水素化)反応の触媒として機能する金属含有触媒が含まれていると、重合体が水素化されてしまう。このように重合体の副反応(例えば、重合体の水素化反応)を起こすことなく精製するためには、100℃以下で溶液に水素を溶存させる、重合体溶液に吸着剤を添加してから水素を溶存させるなどの方法を採用すると良い。
【0019】
溶液に吸着剤を添加する方法Aを採用した場合、接触処理後の吸着剤を除去(固液分離)する必要がある。固液分離手段としては、ろ過が一般的である。ろ過装置としては、フィルタによって固液分離するものであれば限定されない。ろ材としては、不鋳鋼、モネルメタル等の金網を有するリーフフィルタ;ポリアミド、ポリエステル、羊毛等の繊維製ろ布;ポリフッ化ポリプロピレン、ポリカーボネート等の合成樹脂製ストレーナ;などが挙げられる。固液分離の駆動力としては、遠心力、加圧、減圧、重力等などいずれでもよい。また、回分式でも、ケーキ掻き取り刃を備えた連続式でもよい。
尚、このろ過に先立って、フィルタの目詰まりを防止するため、円筒型遠心沈降機、円錐型遠心沈降機、クラリファイア、分離板型遠心沈降機などの遠心分離装置を用いて、吸着剤の大部分を沈殿除去することもできる。遠心分離での吸着剤の除去率を高くするためには、遠心分離装置にかける重合体溶液の粘度を好ましくは1Pa・s以下、より好ましくは0.5Pa・s以下、特に好ましくは0.3Pa・s以下に調整するのが良い。粘度調整のために接触処理後の重合体溶液に溶媒を添加することができる。添加する溶媒としては、重合体を調製するときに使用した反応溶媒と同一であると、回収、再利用する場合に精製が簡便になるので好ましい。
【0020】
吸着剤層に流通させる前記方法Bにおいて、吸着剤層は吸着剤固定層又は吸着剤移動層である。具体的には、重合体溶液を吸着剤が充填された固定層に流通させる方式と、吸着剤を移動層として垂直の塔(管)の上方から落下させ、下方から水素溶存重合体溶液を流して向流接触させる方式とがある。
方法Bにおいては、水素溶存重合体溶液の固形分濃度を、上述した固形分濃度の範囲の中でも低めに、例えば5〜30重量%にするのが生産性の観点から好ましい。
水素溶存重合体溶液を吸着剤層に流通させる操作は回分式でも連続式でも可能であるが、連続式で操作する場合は、上記の反応器添加方式に比して、使用吸着剤の量が相対的に多い。重合体100重量部あたり、通常10〜70重量部、好ましくは、50〜70重量部である。流通速度(m3/hr−溶液流量)/(m3−吸着層容量)は、通常2〜30hr−1、好ましくは5〜10hr−1である。
【0021】
水素溶存重合体溶液を吸着剤固定層に流通させる場合は、固定層として充填塔、充填容器、充填管等が使用される。固定層に水素溶存重合体溶液を流通させる当初は、充填層の上流端で該触媒の吸着が有効に行われ、残りはその直ぐ下流部の吸着剤で吸着されるので吸着圏は比較的に狭い。操業が進行して上流部の吸着剤の吸着能が飽和するにつれて吸着圏の下流端は充填層の下流側に移行してゆく。吸着圏の下流端が充填層の下流端に到達する時点で充填層を新規の吸着剤と入れ替える。
【0022】
垂直に設置された塔(管)の上方から吸着剤を移動層として落下させ、下方から水素溶存重合体溶液を流して向流接触させる方式を採る場合は、吸着剤は1度の使用ではまだ多くの吸着サイトを残しているので、通常は脱着して繰り返し再利用する。
この移動層方式においては、該吸着剤を該溶液から分離する工程として、塔(管)の下端にストレーナを設けて固液分離する。
【0023】
吸着剤との接触を終えた溶液は、通常、凝固法、直接乾燥法など公知の処理に付され、重合体の回収が行われる
凝固法は、重合体溶液を重合体の貧溶媒と混合して重合体を析出させる方法である。貧溶媒の例としては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などの極性溶媒を挙げることができる。
凝固して得られた重合体のクラムは、上記と同様の遠心分離装置により固液分離される。分離された重合体クラムは、次に、例えば真空中又は窒素中もしくは空気中で加熱されて乾燥され、粒子状重合体に、又は必要に応じてこれに各種配合剤が加えられて溶融押出機から押し出され、ペレットにされる。
【0024】
一方、直接乾燥法は、重合体溶液を減圧下で加熱して溶媒を蒸発させる方法である。蒸発した溶媒は、通常、冷却により凝縮させて回収される。この方法には、遠心薄膜連続蒸発乾燥機、掻面熱交換型連続反応器型乾燥機、高粘度リアクタ装置などの公知の乾燥装置が用いられる。真空度や温度は、その装置によって適宜選択され、限定されない。
【0025】
上述してきた本発明の精製方法によって精製された重合体は触媒由来の金属含有量は50ppb以下、より好ましくは30ppb以下、特に好ましくは10ppb以下であり、他の金属も10ppb以下である。
以下に、本発明の精製方法を採用できる重合体の一例を詳述するが、本発明の精製方法はこれらに限定して使用されるものではない。
【0026】
本発明の方法による精製で金属低減効果に著効が見られる重合体として、極性構造又は芳香環構造を有する重合体が挙げられる。
極性構造とは、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、硫黄原子などの非共有電子対を有するヘテロ原子を含む一価もしくは多価の原子団;である。ヘテロ原子を含む一価もしくは多価の原子団の具体例としては、アミノ基、N,N−ジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボニル基、カルボニルオキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、オキシカルボニル基、カルボキシル基、ホルミル基、アルコキシ基、エステル基、ヒドロキシル基、グリシジル基、ニトリル基、エーテル基、チオエーテル基、N−置換アミド基、N−置換イミド基;及び、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基、カルボン酸無水物残基、リン酸基、亜リン酸基などの酸性基;ピロリジニル基、ピロリニル基、ピペリジノ基などの非芳香族性の複素環基;などが挙げられる。
本発明において芳香環構造は芳香族性を有する環からなる構造であり、芳香性を有する環(以下、芳香環という)としては、ベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環などの結合ベンゼン環;トロピリウム環、シクロプロペニウム環などの非ベンゼン系芳香族環;ピリジン、ピロール、フラノール、チオフェンなどの複素芳香環を有する基;などが挙げられる。もちろんこれらの芳香環構造は、アルキル基などの置換基を有するものであってもよい。
【0027】
極性構造又は芳香環構造を有する重合体の例としては、重合体が、金属含有均一系触媒存在下で常法に従って行われる単量体の重合反応、重合体の水素化反応、重合体の変性反応、加水分解反応等によって得られるものであって、極性構造又は芳香環構造を有するものが挙げられる。具体的には、例えば、脂環式オレフィン単量体(ノルボルネン系単量体、単環シクロアルケン、ビニル脂環式炭化水素、芳香族ビニル単量体、単環共役ジエン、単環非共役ジエンなど)の開環重合体;脂環式オレフィン単量体の開環重合体の水素化物;脂環式オレフィン単量体の開環重合体又はその水素化物のエポキシ変性体やマレイン酸変性体;脂環式オレフィン単量体の開環重合体の加水分解物;脂環式オレフィン単量体の付加重合体;脂環式オレフィン単量体の付加重合体のエポキシ変性体やマレイン酸変性体;芳香族ビニル単量体のアニオン重合体;芳香族ビニル単量体のアニオン又はラジカル重合体の水素化物;共役ジエン単量体のアニオン重合体;共役ジエン単量体のラジカル重合体の水素化物;などの重合体であって、極性構造又は芳香環構造を有するものである。特に脂環式オレフィン単量体や芳香族ビニル単量体を用いて得られた重合体やその水素化物において本発明方法の著効が見られる。
極性構造又は芳香環構造を有する単量体単位の、重合体を構成する単量体単位の合計量に対する割合に格別な制限はないが、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上である。極性構造又は芳香環構造を有する単量体単位の割合が多い程、本発明方法の効果が発揮される。
【0028】
上記極性構造又は芳香環構造を有する重合体は、特開平8−20692号公報、特開平8−259784号公報、特開平10−307388号公報、特開2001−48924号公報などに記載されている、金属含有均一系触媒を用いた公知の重合反応、水素化反応、変性反応、加水分解反応などによって得られる。これらの反応は、通常上述した触媒が存在する有機溶媒中で行われる。
金属含有触媒としては、以下のような開環重合触媒、付加重合触媒、アニオン重合触媒、水素化触媒などが挙げられる。
【0029】
金属を含有する開環重合触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金などの白金族;タングステン、モリブデン及びレニウム(a);リチウム、ナトリウム、カリウムなどの第1族原子(b1);マグネシウム、カルシウムなどの第2族原子(b2);亜鉛、カドミウム、水銀などの第12族原子(b3);ホウ素、アルミニウムなど13族原子(b4);ケイ素、スズ、鉛などの第15族原子(b5);チタン、ジルコニウムなどの第4族原子(b6);などから選ばれる1種類の金属原子を含有し、かつ少なくとも1つの当該原子−炭素結合あるいは当該原子−水素結合を有するものが挙げられる。
金属を含有する付加重合触媒としては、第3族〜第12族の遷移金属化合物であって、該遷移金属にπ電子で配位する配位子を有する化合物が用いられる。特に好ましい例として、第10族遷移金属(ニッケル、パラジウム、白金)のアリル錯体と第4族(チタン、ジルコニウム)又は第5族遷移金属(バナジウム、ニオブ、タンタル)のシクロペンタジエニル錯体を挙げることができる。尚、ここで原子の族は全て長周期型周期律表における族である。
開環又は付加重合の金属含有触媒使用量は、単量体に対するモル比が、好ましくは1:100〜1:2,000,000であり、より好ましくは1:500〜1:1,000,000であり、特に好ましくは1:1,000〜1:500,000である。触媒量が多すぎると重合反応後の触媒除去が困難となり、少なすぎると十分な重合活性が得られない。
【0030】
金属を含有するアニオン重合触媒としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム。フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどのモノ有機リチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼンなどの多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレンなどが挙げられる。これらの中でも、有機リチウム化合物が好ましく、モノ有機リチウムが特に好ましい。これらの有機アルカリ金属は、単独、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。有機アルカリ金属の使用量は、単量体100重量部あたり、通常0.05〜100ミリモル、好ましくは0.10〜50ミリモル、より好ましくは0.15〜20ミリモルである。
【0031】
金属を含有する水素化触媒としては、チタン、コバルト、ニッケルなどの有機酸塩又はアセチルアセトン塩と、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、スズなどの有機金属化合物とを組み合わせた、いわゆるチグラータイプの触媒;ルテニウム、ロジウム、レニウムなどの貴金属錯体触媒などを挙げることができる。
また、前述した開環重合触媒も水素化触媒として使用できるものがある。例えば、白金属原子を含有する触媒は、開環重合反応活性と水素添加活性とが高いので、例えばノルボルネン系単量体を開環重合した後、続いて、得られた重合体に水素添加する場合に、重合触媒をそのまま水素添加触媒として使用することができる。特に、白金属原子を含有する触媒の中でも、ルテニウムを含有する触媒が好適であり、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、RuHCl(CO)〔P(C6H5)3〕3、RuCl2〔P(C6H5)3〕3、RuH2(CO)〔P(C6H5)3〕3、Ru(CO)3〔P(C6H5)3〕2などの開環重合触媒が、本発明において著効を示す。
【0032】
金属含有触媒残渣の中でも、金属含有均一系触媒の残渣は、従来、重合体溶液に溶存するので除去が困難とされている。本発明の精製方法が効果を発揮するのは、このような金属含有均一系触媒が重合体とともに溶液中に溶解している場合である。特に、従来、一層精製が困難とされている、極性構造又は芳香環構造を有する重合体が金属含有均一系触媒とともに溶液中に溶解している場合、金属成分が重合体の極性構造又は芳香環構造に配位するためか、従来、一層精製が困難とされていたが、本発明の方法によれば、残留金属を容易に低減することができる。
【0033】
有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、ジメチルホルミアミド、N−メチルピロリドンなどの含窒素系炭化水素;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類;クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの含ハロゲン系炭化水素;プロピレングリコール;などを挙げることができる。
【0034】
これらの重合体調製の反応において、一般的な反応条件は以下の通りである。
重合反応は、重合温度において、単量体と金属含有均一系触媒とを有機溶媒中で混合することにより開始される。溶媒に添加する単量体の量は、好ましくは1〜60重量%、より好ましくは2〜55重量%である。単量体の濃度が低すぎると生産性が悪くなり、逆に、高すぎると重合後の反応溶液粘度が高くなりすぎて、その後に水素化反応を行う場合は困難になる可能性がある。添加する触媒の量は、単量体100重量部に対して、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.03〜30重量部である。
重合温度は特に制限はないが、通常−30℃〜200℃、好ましくは0℃〜180℃である。重合時間は、通常1分〜100時間である。
【0035】
水素化反応を行うには、反応温度、水素分圧、反応時間及び反応液濃度を対象とする重合体の種類によって適宜、最適な範囲に設定する。重合体溶液と水素化触媒とを接触させる方法としては、(1)該重合体溶液に水素化触媒を一定量添加して、反応器内で水素存在下に撹拌混合する方法、及び、(2)重合体溶液と水素とを、水素化触媒を充填した固定床式反応器に通過させる方法のいずれの方法も用いることができる。いずれの場合も、重合体濃度が1〜30重量%である溶液に対して、水素化触媒を重合体100重量部に対して、通常0.01〜50重量部、より好ましくは0.03〜30重量部用いる。水素化時の反応温度は、好ましくは50〜300℃、より好ましくは100〜250℃であり、水素分圧は、好ましくは0.5〜10MPa、より好ましくは1〜8MPaであり、反応時間は、好ましくは0.5〜20時間、より好ましくは1〜10時間である。
【0036】
上記重合体を得るために用いることのできる単量体としては、例えば、以下のものが挙げられる。単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
<極性構造又は芳香環構造を有する単量体>
8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(「8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロドデセン」とも言う。以下、その呼称に倣う。)、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸イミド、5−ヒドロキシメチルノルボルネン、8−シアノテトラシクロドデセンなどの極性基を有するノルボルネン系単量体;
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(5−フェニルノルボルネンとも言う。以下、この呼称に倣う。)、テトラシクロ[6.6.12,5.01,6.08,13]テトラデカ−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンともいう)、8−フェニルテトラシクロドデセンなどの芳香族基を有するノルボルネン系単量体;
スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレンなどの芳香族ビニル単量体;
【0038】
メトキシシクロプロペン、メトキシカルボニルシクロブテン、ヒドロキシメチルシクロペンテン、シアノシクロペンテン、ヒドロキシカルボニルシクロヘキセン、フェニルシクロヘキセン、クロロシクロヘプテン、トリメトキシシリルシクロオクテンなどの極性構造又は芳香環構造を有する単環シクロアルケン;
6−エトキシ−1,4−シクロヘキサジエン、4−ヒドロキシ−1,6−シクロオクタジエン、4−フェニル−1,6−シクロオクタジエンなどの極性構造又は芳香環構造を有する単環非共役ジエン単量体;
2−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシメチル−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシカルボニル−1,3−ペンタジエン、3−フェニル−1,3−ヘキサジエンなどの極性構造又は芳香環構造を有する鎖状共役ジエン単量体;
メトキシシクロペンタジエン、6−ヒドロキシメチル−1,3−シクロヘキサジエン、6−エトキシカルボニル−1,3−シクロオクタジエンなどの極性構造又は芳香環構造を有する単環共役ジエン単量体;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどのニトリル単量体;
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和脂肪酸単量体;
【0039】
<極性基も芳香族基も有しない単量体>
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[7.4.0.110,13.02,7]トリデカ−2,4,6−11−テトラエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどのなどの極性基も芳香族基も有しないノルボルネン系単量体;
エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセンなどの極性基も芳香族基も有しない鎖状アルケン単量体;
シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、ビニルシクロヘキセンなどの極性基も芳香族基も有しない単環アルケン;
1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの極性基も芳香族基も有しない鎖状共役ジエン単量体;などが挙げられる。
【0040】
【実施例】
以下に実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、部及び%は、特記のない限り質量基準である。測定法は以下によった。
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、重合体を、シクロヘキサンを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリイソプレンのMw及びMnに換算して求めた。
(2)水素添加率(水添率)
水素添加率は、1H−NMRスペクトルにより、水素添加前の炭素−炭素二重結合に対する水素化された炭素−炭素二重結合の割合(モル)を求めた。
【0041】
(3)金属含有量
重合体溶液について、フレームレス原子吸光分光光度計を用いて原子吸光分析を行い、触媒由来の金属であるルテニウム(Ru)、及び環境由来の金属であるナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)の含有量(ppb)を測定した。用いた原子吸光分光光度計の検出限界はRu、K、Ca、Fe、Mg、及びAlが5ppbであり、Naは10ppbである。
【0042】
合成例1
8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロドデセン100部、1−ヘキセン1.3部、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.05部及びテトラヒドロフラン400部を、窒素置換したガラス製耐圧反応器に仕込み、撹拌しつつ70℃にて2時間反応して重合体溶液A(固形分濃度:約20%)を得た。重合体溶液Aの重合体のMwは5,500、Mnは3,200であった。
この重合体溶液A中に未反応単量体が残留していないことを、ガスクロマトグラフィーにて確認後、重合体溶液Aの一部を攪拌機つきオートクレーブに移し、温度150℃にて水素を圧力4MPaで溶存させて5時間反応させ、水素化された重合体(水素化率100%)を含む重合体溶液B(固形分濃度:約20%)を得た。重合体溶液Bの重合体のMwは7,000、Mnは4,070であった。
重合体溶液A及びBの金属含量を表1に示す。
【0043】
合成例2
合成例1において、8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロドデセンに代えて、8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロドデセンとノルボルネンとのモル比80/20の混合物を用いたほかは合成例1と同様に行い、水素化された重合体(水素化率100%)を含む重合体溶液C(固形分濃度:約20%)を得た。水素化して得られた重合体の組成は、8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロドデセン単位80モル%、ノルボルネン単位20モル%であり、Mwは5,300、Mnは2,890であった。
重合体溶液Cの金属含量を表1に示す。
【0044】
実施例1
100部の重合体溶液Bに、1部の活性炭粉末を添加した耐熱容器をオートクレーブに入れ、攪拌しつつ150℃にて水素を4MPaの圧力で3時間溶存させた。次いで、溶液を取り出して孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルタでろ過して活性炭を分離して重合体溶液を得た。ろ過は滞りなく行えた。該溶液をエチルアルコール中に注いで凝固させ、生成したクラムを乾燥して得られた重合体の金属含有量を表1に示す。
【0045】
実施例2
実施例1において、重合体溶液Bに代えて重合体溶液Cを使用したほかは実施例1と同様に行った。実施例1と同様の試験を行い、重合体溶液を得た。結果を表1に示す。
【0046】
実施例3
実施例1において、重合体溶液Bに代えて重合体溶液Aを使用し、また、重合体溶液に水素を溶存させる温度を60℃としたほかは実施例1と同様に行い、重合体溶液を得た。実施例1と同様の試験を行った結果を表1に示す。
【0047】
比較例1
水素を使用しないで温度150℃にて3時間撹拌したほかは実施例1と同様に行った。実施例1と同様の試験を行った結果を表1に示す。
【0048】
比較例2
水素に代えて窒素を用いたほかは実施例1と同様に行い、重合体溶液を得た。実施例1と同様の試験を行った結果を表1に示す。
【0049】
比較例3
重合体溶液Bに代えて重合体溶液Aを使用し、また、水素に代えて窒素を用いたほかは実施例1と同様に行って重合体溶液を得た。実施例1と同様の試験を行った結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1が示すように、合成例1及び2にて、極性基であるヒドロキシカルボニル基を有するノルボルネン系単量体を、それぞれルテニウム含有触媒で開環重合及び水素化して得た単独重合体及び共重合体について、それぞれの溶液に活性炭を添加して、150℃にて水素を4MPaで3時間溶存させてから活性炭をろ別したところ、いずれも重合体中の触媒由来の金属ルテニウム含有量は極めて少なく、また、環境由来のその他の金属も検出限界以下であった(実施例1及び2)。また、合成例1で得た単独重合体の水素化前の重合体溶液について、水素を溶存させる温度を150℃から60℃に低下することにより、重合体を水素化させないで、金属含有量を極めて少なくすることができた(実施例3)。
一方、上記単独重合体の溶媒溶液に活性炭を添加して温度150℃にて3時間撹拌しても、該溶液に水素を溶存させずにろ過して得られた重合体では金属の低減が認められなかった(比較例1)。
また、水素に代えて窒素を用いたほかは実施例1と同様に行っても、いずれも重合体の金属含有量は大きかった(比較例2及び3)。
【0052】
【発明の効果】
本発明の精製方法によると、重合体に残留する、触媒に由来する金属のみならず、金属製反応器や他の反応資材など環境から混入する金属も大幅に削減できる。
こうして本発明の精製方法によって精製された重合体は、金属をほとんど含まないので、半導体製造用電気絶縁膜、表示素子用カバー膜、封止膜などの電子部品;光ディスク、呼応額フィルム、レンズなどの光学製品などに好適に使用することができる。
Claims (4)
- 重合体と金属成分と有機溶媒とを含む重合体溶液を吸着剤と接触させる重合体の精製方法であって、重合体溶液の温度が40〜200℃であり、かつ当該重合体溶液温度での溶存水素の圧力が0.1〜10MPaであり、
前記重合体溶液が、0.1〜10MPaの水素圧を有する環境下で重合体と金属成分と有機溶媒とを含む溶液を40〜200℃に加熱して調製されたものである重合体の精製方法。 - 重合体が極性構造又は芳香環構造を有するものである請求項1記載の重合体の精製方法。
- 金属成分の少なくとも1種類が重合体を得るのに用いた金属含有均一系触媒である請求項1記載の重合体の精製方法。
- 金属含有均一系触媒が白金族原子を含有する触媒である請求項3記載の重合体の精製方法。
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