以下、必要に応じて図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係る分離取出装置を説明する。
図1は、この発明の一実施の形態に係る分離取出装置を示す概略図である。図2は、図1に示される分離取出装置における紙葉類2の分離取り出し動作を示す概略図である。
図1及び図2に示される分離取出装置は、バックアップ台11を備え、このバックアップ台11上には、紙葉類2が積層された状態で、即ち、積層体20として、載置されている。この積層体20上には、積層体20に振動を与えて互いに密着し易い積層体の紙葉類2に振動を与える振動体8及び振動体8の下方からこの振動体8に当接される積層体20の荷重を検知する加重センサ或いは圧力を検知する加圧センサ6が互いに近接して配置されている。また、積層体20上には、紙葉類2の振動を検知する振動センサ7が設けられるとともに紙葉類2を搬送する為の取り出しローラ1が同様に積層体20上に設けられている。
振動センサ7としては、積層体20に振動を与えたことによって発生される音圧の変化を検出する音響センサ、積層体20の上面位置の変化を検知する位置センサ或いは変位センサを用いることができる。その他、振動センサ7として荷重センサ、圧力センサ、加速度センサが用いられても良い。音響センサとしては、マイクがあり、このマイクが積層体20の上面上に配置される場合が想定される。音響センサで検出された音波信号は、通常、サインカーブであり、そのサインカーブの周波数は、紙葉類2の数、即ち、1枚の紙葉類2、或いは、2枚或いはそれ以上の枚数の紙葉類2が密着されている場合で異なることを利用して振動によって紙葉類2が良好に捌かれているかを検出することができる。より詳細には、音響センサが用いられる場合における、音響センサで検出される音波信号の周波数fは、下記式(1)で表される。
バネ定数kは、紙幣の剛性(ヤング率E)と相関があり、また、ヤング率Eは、断面2次モーメントIzと相関がある。
ここで、断面2次モーメントIzは、下記式(2)で表される。
従って、紙幣が2枚になると、高さhが2倍、質量mが2倍となるので、式(1)及び式(2)から周波数fが2倍高くなることが理解される。このことから、紙葉類2、例えば、紙幣が1枚である時の周波数f0が予め判っていれば、音響センサの周波数から最上段の紙葉類2に対する紙捌き良好条件(1枚に分離することができる条件)の判別が可能である。
音響センサは、積層体20の最上面或いは最側面に対向するガイド板に設置し、非接触で媒体上に発生する音圧を測定することとなる。音響センサとしてのマイク1本の音圧レベルによって紙捌き状態を判断しても良く、複数本のマイクが設置されることにより紙葉類2の振動モードが発生したかどうかを検知して紙捌き状態を判定しても良い。その他、音響マイクが紙葉類2の搬送方向に対して直交する方向、積層体20の側面或いは前面又は背面に設置して振動を検知しても良い。変位センサ及び位置センサの場合には、紙葉類の振動振幅を非接触で得ることができ、振幅を比較的容易に測定することができる。例えば、振幅が5μm以上の場合には紙捌き効果が現れていると判断すればよいこととなる。
加圧センサ6が荷重センサで構成される場合には、最上面或いは最側面の紙葉類にセンサを接触させて紙葉類2の荷重変動が測定される。荷重センサでは、取り出しローラ1と最上面或いは最側面の紙葉類との間の振動を含む負荷を同時に検知することができるので、振動センサ7と加圧センサ6を兼ねることができる。圧力センサの場合には、最上面或いは最側面の紙葉類2に対向するガイド板10aに設置し、ガイド板10aと最上面或いは最側面の紙葉類2との間で発生する圧力変動が測定される。圧力センサは、紙葉類2に接触させても良く、接触させないで音圧あるいは気圧の変動を測定しても良い。加速度センサにあっては、加速度センサを薄いフィルム上に設置し、このフィルムを最上面或いは最側面の紙葉類2に載せることにより、媒体の振動を測定することができる。加速度変動を演算により振動振幅に置き換えることも可能である。
図2に示すように取り出しローラ1が矢印T0で示すように回転されると、この取り出しローラ1によって紙葉類2が搬送方向に配置された分離部3に取り出される。分離部3は、搬送ローラ3a及び分離ローラ3bから構成され、搬送ローラ3a及び分離ローラ3b間に送り出された紙葉類2を1枚ずつに分離して図示しない処理部に搬送している。図2に示される分離部では、搬送ローラ3aが紙葉類2を搬送方向に送り出すように矢印T1で示されるように回転され、分離ローラ3bが矢印B1で示すように搬送ローラ3aの回転方向とは逆の方向に回転されている。従って、取り出しローラ1によって複数枚の紙葉類2が分離部3に供給された場合には、最上面の紙葉類2が搬送ローラ3aによって前方に送り出され、分離ローラ3bに接触している紙葉類2が搬送方向とは逆方向に戻されることとなる。取り出しローラ1によって1枚の紙葉類2が分離部3に供給された場合には、搬送ローラ3aと紙葉類2との摩擦力が分離ローラ3bと紙葉類2との摩擦紙力よりも大きいことから、分離ローラ3bの回転摩擦力に抗して紙葉類2が搬送ローラ3aによって前方に送り出されることとなる。
更に、積層体20上には、紙葉類2に振動が与えられた際に、紙葉類2が飛散しないようにガイド10aが設けられ、また、分離ローラ3bに直接紙葉類2が接触しなうように分離ローラ3bの紙葉類2の側がガイド10bで覆われている。ガイド10a、10bの搬送方向先端は、搬送ローラ3a及び分離ローラ3b間の紙葉類導入ポートを定め、ガイド10a、10bで紙葉類2の搬送が規制され、搬送ローラ3a及び分離ローラ3b間に導入される。
図1及び図2において、簡略化されて示されている振動体8は、図3に示されるような振動子12が図4に示されるような超音波ホーン14に連結される構造を有している。図3に示されるように、振動子12は、所謂ボルト締め型振動子と称せられ、内部から電極13が外部に延出されている圧電素子としての圧電セラミクス部18が1対のブロック15、16間にボルト17によってボルト締めされた構造を有している。即ち、円柱状ブロック15及びディスク状圧電セラミクス部18の中心部に貫通孔15a、18aが形成され、この貫通孔15a、18aにボルト17が螺合されるネジ溝が切られている。また、円柱状ブロック16の圧電セラミクス部18の側の中心部に凹部孔16bが形成され、この凹部孔16bにボルト17が螺合されるネジ溝が切られている。ボルト17が円柱状ブロック15及びディスク状圧電セラミクス部18の貫通孔15a、18a及び円柱状ブロック16の凹部孔16bに螺合されて締め付けられて円柱状ブロック15、ディスク状圧電セラミクス部16及び円柱状ブロック16が互いに機械的に連結されている。
この振動子12においては、ディスク状圧電セラミクス部18が電極13に印加した駆動電圧に応じて振動されると、振動体8全体が振動してその振動が円柱状ブロック16の振動面16aに伝達される。この圧電セラミクス部18の振幅は、比較的小さく、円柱状ブロック16の振動面16aから超音波振動を取り出して積層体20の面に与えても、紙葉類2を十分に捌くことができるような振動を積層体20に与えることができない。従って、この超音波振動を増幅する為に振動子12は、超音波ホーン14に機械的に連結されている。
図4に示される超音波ホーン14を機械的に連結する為に、円柱状ブロック16の振動面16aには、ネジ溝が切られた凹部孔16cが形成されている。超音波ホーン14にもこの凹部孔16cに螺合される連結部19aが超音波ホーン14の円柱状ブロック部19の一端面に設けられている。この連結部19aが凹部孔16cに螺合され、円柱状ブロック16と円柱状ブロック部19とが互いに密着されて両者が一体的に連結されている。円柱状ブロック部19の全長は、略振動波長λのλ/4に定められ、円柱状ブロック部19の他端面からは、円柱状ブロック部19の径Sbよりも小径の延出部19bが延出され、延出部19bの先端は、紙葉類2に当接されるために平坦に形成されている。超音波ホーン14では、円柱状ブロック部19の他端が、例えば、振動モーダルの位置(λ/4)に定められ、その他端から延出される延出部19bの径が円柱状ブロック部19に比べて増加或いは減少されていることから、円柱状ブロック部19を伝達された振動の振幅が延出部19bで変化されて延出部19bから紙葉類2に伝達させることができる。
このような超音波ホーン14の構造では、超音波ホーン14の先端における振動速度は、V1/V2=Sb/Saに増幅される。このような構造の超音波ホーン14により、その先端の振幅を大きくとり十分な加速度を紙葉類(媒体)2に与えることが出来る。ここで、V2は、円柱状ブロック16に伝達された振動速度及びV1は、超音波ホーン14の先端から出力される振動速度を表している。
先端径Sa=5mm、10mm、20mmの超音波ホーン14が20X60mmの振動子12に連結された実験では、超音波ホーン14の振動増幅率Sb/Saは2倍となることが確認されている。この実験では、Sa=5mmの時が摩擦低減の効果がもっとも強いことが判明している。これは、超音波ホーン14の先端の径が大きくなると、面内の振動成分が相対的に大きくなり、振動に寄与する軸方向の振動成分に対して阻害するようになるためである。それに対して超音波ホーン14が紙葉類2(媒体)に接触される観点からは、同一の押し付け圧力の場合では、径Saが大きいほど接触圧力が下がるため、媒体への傷や破損の心配も少ないことが判明した。従って、現実的な設計では、ホーン先端の径Saは5〜20mm程度が有効であることが判明している。超音波ホーン14が設けられない、振動子12のみでは摩擦低減の効果がまったく無かいことが確認されている。
上述したような振動体8において、超音波ホーン14が積層された紙葉類束(積層体20)の上部に押し付けると、超音波ホーン14の先端と最上面の紙葉類2との間並びに最上面紙葉類2とその下方に積層されている紙葉類2との間のいずれもの摩擦も十分に低くなりその状態で最上面紙葉類を搬送することで、重ね取りのない分離を実現できることが判明している。
尚、超音波ホーン14の材質としては硬くて疲労破壊性の低いチタン合金が適しているが、使用の頻度や条件でアルミ合金、ニッケル合金なども使用可能である。また、超音波ホーン14の形状は、図4に示すようにステップを介して大径の円柱ブロックと小径の円柱ブロックを同一軸線で連結する形状に限らず、図5及び図6に示されるように延出部19bの径が急激に減少せずに次第に減少するように形成されても良い。即ち、円柱ブロック19から図5に示すように円弧を伴うテーパー状に径が減少する延出部19bに形成されても良く、或いは、テーパー状に径が直線的に減少する延出部19bに形成されても良い。
尚、超音波ホーン14の先端接触部形状は、平坦な形状が一般的であるが、媒体を傷つけたり、搬送の際の抵抗になったり、封筒などの媒体の段差で引っかかったりする可能性が高いので、先端接触部形状は丸みを有する形状に加工しても良い。また、先端接触部は滑りやすいように表面の凹凸が少ないことが好ましい。
図1及び図2に示されるように、分離部3の搬送方向前方には、紙葉類2を取り出し状況を検知する監視センサ5が設けられている。この監視センサ5は、紙葉類2の厚みを検知することによって1枚の紙葉類2が送り出されたか、或いは、複数枚の紙葉類2が送り出されたかを検知することができる。また、この監視センサ5は、紙葉類2の搬送ピッチ並びに搬送された紙葉類にスキューが生じていないかを検知することができる。
監視センサ5としては、図7に示すように直接紙葉類2に接触して厚みを検出する接触タイプ或いは図8に示すように紙葉類2に非接触で光学的に厚みを検出する非接触タイプがある。
接触タイプの監視センサ5では、紙葉類2の搬送方向22に配置された搬送用ローラ24に対向して硬質ゴム或いは金属で作られた厚み検出ローラ26が設けられている。厚み検出ローラ26は、エンコーダ30から延出され、圧縮バネ32に吊架されたアーム28に回動可能に支持されている。圧縮バネ32からアーム28に附加された押し付け力によって厚み検出ローラ26は、搬送用ローラ24に押し付けられた状態に維持されている。このような接触タイプの監視センサ5では、紙葉類2が厚み検出ローラ26と搬送用ローラ24との間に搬送されると、紙葉類2の厚みに応じて厚み検出ローラ26が上下動され、この厚み検出ローラ26の上下動がアーム28に伝達され、アーム28の基部に連結されたエンコーダ30でその動きが検出される。1枚の紙葉類2の厚みと複数枚の紙葉類2の厚みは、当然に異なり、この厚みの変化がエンコーダ30で検出される。このエンコーダ30は、アーム28の変位に応じて抵抗値が変化される抵抗変位計であっても良い。
非接触タイプの監視センサ5は、図8に示されるように搬送される紙葉類2に向けて光ビームを照射する発光部40a及び紙葉類から反射された反射ビームを検出するCCD等の受光部42aが紙葉類2の上部に設けられるとともに同様に搬送さ紙葉類2に向けて光ビームを照射するLED或いは半導体レーザ等の発光部40b及び紙葉類から反射された反射ビームを検出するCCD或いはフォトセンサ(フォトインタラプタ)等の受光部42bが紙葉類2の下部に設けられている。このような光学的監視センサ5では、1枚の紙葉類2が搬送されて来る場合においては、実線で示すように反射ビームは、常に受光部42a上の基準検出位置に入射される。これに対して、複数枚の紙葉類2が搬送されると、破線で示すように反射ビームの光路が変わり、基準位置から変位Δdだけシフトされて受光部42a上に入射される。この変位Δdは、搬送される紙葉類2の厚さ依存して変化されることから、この変位Δdに応じて搬送される紙葉類2の厚さ(枚数)を検出することができる。
尚、図8に示す例では、紙葉類2の厚さ(枚数)が変わっても紙葉類2の下方に設けた受光部42bに入射する反射ビームの位置が変化しないように描かれているが、受光部42bにおいても、反射ビームの入射位置が変化される場合には、受光部42aでの反射ビームの変位と受光部42bでの反射ビームの変位との差分が上述した変位Δdに相当することとなる。紙葉類2の厚さ(枚数)が変わってもその搬送路が変化しない、例えば、ガイド上を搬送される場合には、紙葉類2の下部に発光部40b及び受光部42bが設けられなくとも良いことは明らかである。
図1及び図2に示すようにバックアップ台11には、バックアップ台リフト機構4が設けられ、このバックアップ台リフト機構4によってバックアップ台11がリフトされ、積層体20の最上面が常に振動体8及び加圧センサ6に一定圧力で押し付けられている。また、バックアップ台リフト機構4によって積層体20の最上面が取り出しローラ1に接触状態に維持されている。このバックアップ台リフト機構4は、一例として、図1に示されるように、バネ4dを介してバックアップ台11を支持する移動台4c、この移動台4cを移動する為のラック4a及びピニオン4bから構成されている。このリフト機構4においては、図示しないモータによってピニオン4が矢印T2に示されるように回転されると、このピニオン4bに歯合されてラック4aが直線的に移動される。従って、ピニオン4の回転方向に応じて、ラック4aが固定された移動台4cが上下動されることとなる。この移動台4cの上下移動により、移動台4cとバックアップ台11とを連結するバネ4dを介してバックアップ台11が上下動されることとなる。緩衝作用を有するバネ4dが両者の間に介在されることによって、バックアップ台11が上昇してその上に載置された積層体20が大きな力で振動体8、加圧センサ6或いは取り出しローラ1に衝突されることが防止される。このようにリフト機構4によって積層体20の上面の位置及び積層体20の振動体8、加圧センサ6或いは取り出しローラ1への押付力が調整され、振動体8、加圧センサ6或いは取り出しローラ1に積層体20の上面が適切な押し付け力で押し付けられることとなる。
尚、バネ4dが設けられることによって、移動台4cの上下位置が多少変動しても押付力が大きく増減しないようにロバスト性をリフト機構4与えることができる。
振動体8から積層体20に安定且つ効率的に振動を伝達させる為に振動体8には、図1に示されるように、振動体8を積層体20に押し付ける為の振動体押し付け機構9が設けられている。振動体押し付け機構9は、振動体8を移動可能に保持する保持機構並びにこの保持機構を移動する移動機構とから構成されている。保持機構では、振動体8がブロック9eに取り付け固定され、このブロック9eは、スライダ(図示せず)に上下動可能に保持されたブロック9cに圧縮バネ9d及び圧力センサ9fを介して連結されている。移動機構では、ブロック9cがこのブロック9cを移動させるベルト9aに連結され、このベルト9aがモータ9bに同様に連結されている。従って、モータ9bが動作されると、ベルト9aが移動され、これに連結されたブロック9cがスライダ上を滑動される。ブロック9cの上下動に伴い、ブロック9cに連結されたブロック9eとともに振動体8が上下動される。
ブロック9cと振動体8が設置されたブロック9eとの間に設けられた圧縮バネ9dは、振動体押し付け機構9で生ずる押付力にロバスト性を与える為に設けられ、また、圧縮バネ9dとブロック9cとの間の押付力を検知するためのセンサ9fが設けられている。このセンサにより振動体8と最上面(最側面)の紙葉類2(媒体)との間の押付力が検知される。
尚、バネ9dが設けられず、ブロック9cとブロック9eとが一体化されても良い。振動体押し付け機構9は、上述したような機構に限らず、バネ支持構造を有する回転押付機構或いはトルクモータ等のアクチュエータ等を用いる機構が採用されても良いことは明らかである。
図1及び図2に示した分離取出装置は、図9に示される制御部50を含む制御システムによって各部が制御される。即ち、制御部50から振動体8の制御を指示する制御信号が振動体制御部52に入力されると、この振動体制御部52は、振動体8を積層体20に押し付ける振動体押し付け機構9を作動させて所定圧力で振動体8を積層体20に押し付けることとなる。この押し付け圧力は、圧力センサ9fで検知され、検知信号が振動体制御部52で設定された所定圧力と比較され、この比較結果に基づいて振動体押し付け機構9が制御される。従って、振動体8は常に設定された圧力で積層体20に押し付けられる。また、振動体制御部52は、振動体8を駆動して所定の振幅並びに周波数の振動を積層体20に与えて積層体20の紙葉類を捌くこととなる。
制御部50からバックアップ台制御部54に指示が与えられると、リフト機構4が作動して積層体20がリフトされて同様に積層体20が振動体8に所定の圧力で押し付けられることとなる。リフト機構4による積層体20の振動体8への押し付け圧力は、加圧センサ6で検出されてバックアップ台制御部54に出力される。バックアップ台制御部54では、制御部50で設定された設定圧力と検出圧力とを比較して比較出力をリフト機構4に与えることとなる。従って、比較出力に応じてリフト機構4が動作され、リフト機構4は、常に適正圧力で積層体20に振動体8を接触させるように積層体20をリフトさせることとなる。
紙葉類2の振動を検出する振動センサ7からの検出信号は、センサ出力処理部56に入力され、センサ出力処理部56は、この検出信号から振動体8によって振動されている紙葉類2の振動数及びその振動振幅を解析して解析信号を制御部50にフィードバックしている。制御部50は、この解析信号と設定した振幅及び振動数とを比較して設定した振動が紙葉類2に与えられるように、振動体制御部52を介して振動体8を制御することとなる。
紙葉類2の送り出しが可能となると、制御部50は、紙葉類2の送り出し指示をローラ制御部58に与え、ローラ制御部58は、この指示に基づいて送り出しローラ1を駆動することとなる。積層体20では、振動体8から高周波振動が与えられていることから、紙葉類2間の媒体間の摩擦抵抗が小さくなり、紙葉類2が捌かれている状態にあることから、ローラ1によって分離部3にて1枚ずつに分離されて供給される。ローラ制御部58は、同様に送り出し指示に基づいて搬送ローラ3a及び分離ローラ3bを駆動し、送り出された紙葉類2がブロック状或いはサシミ状(紙葉類2がくさび形に重なり合った状態)の重送状態にあれば、分離ローラ3bによって最上面以外の紙葉類2が積層体20上に戻され、搬送ローラ3aによって最上面の1枚の紙葉類2のみが監視センサ5に向けて搬送される。
ある振動体8の駆動条件(駆動電圧・駆動周波数)及び紙葉類2と振動体6と間の押付力が常に一定の場合には、振動体8で積層体20に振動を与えても紙葉類2の種類或いは状態、同一の紙葉類2でも環境条件等によって、紙捌き効果が十分に得られない場合がある。例えば、振動体8の位置が固定されたまま紙葉類2が加振される場合、紙幣或いは書状等の状態又は種類の異なる紙葉類2が積層さえた場合等の組合せにより、最上面(紙葉類が略水平方向に沿って並べられているような積層体にあっては、その最側面)と振動体8との間の押付力は大きく変動される。また、環境条件、例えば、湿度が変化すると紙葉類2の剛性が大きく変動したり、静電気が発生したりして所定の駆動電圧或いは駆動周波数が振動体8に与えられたのでは、紙捌き効果が得られない可能性もある。
このように振動体8によって積層体20が捌かれたとしてもその捌かれた状態が不十分である場合には、ブロック状或いはサシミ状に複数の枚の紙葉類2が搬送ローラ3aと分離ローラ3bとの間に搬送される場合がある。分離ローラ3bによって重送状態の紙葉類2の一部は、積層体20の最上部に戻されるように搬送されるが、搬送ローラ3aと分離ローラ3bとの間を通過して監視センサ5に送られる場合がある。監視センサ5は、搬送された紙葉類2の厚み及び取り出しピッチ(取り出し間隔)を検出してその検出信号をセンサ出力部60に出力する。センサ出力部60では、監視センサ5からの出力信号で紙葉類2の厚み及び取り出しピッチが正常であるかを判別し、1枚のみの紙葉類2が搬送されている場合には、正常搬送として信号を制御部50に与える。また、センサ出力部60では、取り出しローラ1の取り出しタイミング(取り出しピッチ)に応じて紙葉類2が所定のタイミングで搬送されているかを検知している。ここで、搬送タイミングが所定のタイミングで搬送される場合には、紙葉類2が一定の間隔を空けて監視センサ5に搬送されていることとなり、1枚ごとに紙葉類2が正常に搬送されていると判断される。これに対して、搬送間隔が不規則になっている場合には、紙葉類2が一部サシミ状に重なりあって搬送されている場合が多く、重送して搬送される搬送異常と判断される。センサ出力部60で複数枚の紙葉類2が搬送されて来ていることが判明した場合には、搬送異常信号が制御部50に与えられる。センサ出力部60で搬送タイミングが異常である場合には、同様に搬送異常信号が制御部50に与えられる。制御部50は、搬送異常信号に応答してローラ制御部58に逆搬送信号を与え、ローラ制御部58は、搬送ローラ3a及び分離ローラ3bを制御して紙葉類2を逆搬送して紙葉類2を積層体20の上面に戻す駆動をさせる。従って、重送されて搬送された紙葉類2は、積層体20上に戻されることとなる。また、制御部50は、搬送異常信号に応答して振動体8の駆動条件(駆動電圧・駆動周波数)並びに紙葉類2と振動体6と間の押付力を再設定して後に説明するように紙捌き良好条件での搬送を再開することとなる。
図9に示されるシステムは、振動体8の駆動条件及び紙葉類2と振動体6と間の押付力を設定することができる設定部62を備え、紙葉類2の種類に応じた初期設定が可能であり、また、重送時にこの設定部62を利用して設定条件を変更することができる。また、取り出しカウンタ部64で一枚ずつ正常に搬送される紙葉類2の枚数がカウントされ、そのカウント値が制御部50に通知される。積層体20の厚み、即ち、積層されている紙葉類2の枚数に応じて設定値が変更される場合には、所定枚数が搬送された段階で制御部50は、設定条件が変更され、積層体20に対して最適な紙捌き条件が与えられる。
図10及び図11を参照して図9に示されるシステムで制御される図1及び図2に示される分離取出装置の動作を説明する。
図10は、振動体8が連続して動作される現金自動預払機(ATM)のような装置に組み込まれる分離取出装置の動作を示すフローチャートである。現金自動預払機(ATM)では、官封券と流通券とが混在して積層される場合が多く、両者が良好に取り出せる調整範囲がきわめて狭い上、環境要因もあわさって取り出し不良になる場合が多々あり、振動体8の駆動条件及び紙葉類2と振動体6と間の押付力を設定が重要となることを付け加えておく。
図10において、始めに、ステップS10で動作が開始されると、初期設定されているバックアップ台11の押付力F1及び振動体8の押付力F2の設定値が制御部50で確認され、その設定値が図示しないRAMに格納される。ステップS12に示すように、振動体8の振動子12に周波数f0の電圧V0が印加されて振動子12が振動され、所定振幅Ap及び周波数f0を有する高周波信号が振動体8の超音波ホーン14から積層体20に与えられる。振動体8は、印加電圧に応じて振幅が変化され、印加電圧の周波数に応じて振動周波数が変化される。但し、振動体8が積層体20に押し付けられている状態では、印加電圧に応じて振動体8の振幅が変化されるが、振動体8に与えられる負荷並びに積層体20の種類に応じて積層体20に与えられる振幅及び振動周波数が変化される。
ここで、紙捌き効果或いは騒音等を考慮すると駆動周波数f0は、10kHzから60kHz程度が望ましく、例えば、20kHzに共振周波数を合わせた振動体8が用いられ、基本周波数とする。駆動電圧Vは、0V〜300V間のサイン波、例えば、基本駆動電圧Vは、50±50Vのサイン波を与える。振動体8と紙葉類2との間の基本押付力は、300gf±200gfの範囲であれば良しとし、これらの基本条件にて加振する。
次に、ステップS14に示すように積層体20の最上段の紙葉類の紙捌き状態(振動状態)が振動センサ7で検知され、分離部3に紙葉類が送り出される前に紙捌き条件が良好であるかが確認される。既に説明したように、紙葉類2が分離されて振動してことを音響センサ、位置センサ或いは変位センサ等の振動センサ7で検出される。ここで、最上面(最側面)の紙葉類とこの紙葉類下に配置或いは隣接される紙葉類間で振動が位相遅れを生じている場合には紙捌き条件が良好であるとする。簡便な判定方法では、紙葉類に十分な振幅が生じているかが、上記したようなセンサによって紙葉類の振動周波数が検知されて判断される。振幅を判断基準とする場合には、例えば、基準振幅を3〜20μmの間の値、例えば、5μmとし、これ以上の媒体振幅なら紙捌き効果が得られているとする。また、紙葉類2の振動周波数で判断する場合には、振動体の駆動周波数と一致しているかどうかが検知される。
ステップS14において、振動状態が良好である場合には、ステップS16において、ローラ1,3a、3bを利用した紙葉類2の取り出しが開始される。ステップS16においては、取り出しローラ1の回転が回転速度C0に設定されて分離部3を介して紙葉類2が取り出される。紙葉類2の取り出し後、ステップS30に示すように振動センサ7で振動状態が良好であるかが確認される。振動状態が良好であれば、ステップS32において、監視センサ5で1枚の紙葉類2のみが取り出されたかが確認される。即ち、良好な振動状態下で1枚の紙葉類2のみが積層体20から分離されたかが確認される。1枚の紙葉類2が分離されたことが確認された場合には、ステップS34において、搬送された紙葉類2の枚数が取り出し枚数カウンタ部64で検出され、所定枚数に到達したかが制御部50で確認される。所定枚数に達した場合には、紙葉類2の補充の為にステップS36に示すように一連の分離取り出し動作が終了される。
ステップS14或いはステップS30において、振動状態が良好でない場合には、ステップS18において、バックアップ台11に与えられるバックアップ力F1の調整がなされる。即ち、リフト機構4によってリフトされる積層体20と振動体8との間の圧力が調整される。この圧力は、圧力センサ9fで検知される。バックアップ力F1が変更されてその圧力が圧力センサ9fで検知されるとともに、再度、積層体20の最上段の振動状態が良好であるかが確認される。良好である場合には、ステップS16に戻され、紙葉類2の取り出しが開始される。
ステップS18において、振動状態が良好でない場合には、ステップS20において、振動体8の押し付け力F2の調整ルーチンが開始される。即ち、振動体押し付け機構9が調整されて積層体20と振動体8との間の圧力F2が調整される。この圧力F2は、同様に圧力センサ9fで検知される。押し付け力F2が変更されてその圧力が圧力センサ9fで検知されるとともに、再度、積層体20の最上段の振動状態が良好であるかが確認される。良好である場合には、ステップS16に戻され、紙葉類2の取り出しが開始される。
ステップS18及び20において、振動センサ7を用いて振動状態が検知されるが、紙葉類2の振幅がほぼゼロであった場合には、振動体8が脱調したために振動体が加振していない場合がある。このように振幅ゼロが検知される場合には、高周波振動体8が機構9によって積層体20から退避させられ、改めて機構9によって押付力を振動体8に付与することが好ましい。また、紙葉類2の振動振幅が基準振幅に達していない場合には、ステップS18及びステップS20において、通常、振動体8と紙葉類2との間の押付力F1、F2が適正範囲内において次第に大きく設定される。
ステップS20において、振動状態が良好でない場合には、ステップS24において、振動子12を駆動する電圧Vを調整するルーチンが開始される。即ち、振動子12を駆動する電圧Vが変更されて振動子12が駆動される。この変更後の振動体8の駆動で振動状態が良好であるかが再び確認され、良好である場合には、同様にステップS16に戻され、紙葉類2の取り出しが開始される。
ステップS22において、振動状態が良好でない場合には、ステップS24において、振動子12を駆動する電圧の周波数fを調整するルーチンが開始される。即ち、振動子12を駆動する電圧の周波数fが変更されて振動子12が駆動される。この変更後の振動体8の駆動で振動状態が良好であるかが再び確認され、良好である場合には、同様にステップS16に戻され、紙葉類2の取り出しが開始される。
ステップS20においては、ステップS18及びステップ20の調整では、振動振幅がまだ不十分な場合に、振動体の駆動電圧Vが上昇される。多くの場合、この調整で、バックアップ荷重及び紙葉類2と振動体8との間の押付力並びに駆動電圧Vの調整で、紙葉類2の種類或いは状態並びに環境条件等の変化に対応して紙捌き効果を得られ、安定した分離取り出しができる。しかし、基準振幅に達しない場合は、ステップS23に示すように振動体8の駆動周波数が変更され、紙葉類2の紙捌き効果が十分に得られるよう調整される。一般的には、振動体8の形状或いは材料等によってその振動体8の共振周波数が定まり、この共振周波数を駆動周波数に一致させることが好ましい。
ステップ24において、振動状態が良好でない場合或いはステップS32において紙葉類2が1枚に分離できない場合には、ステップS26において、後に説明する重送処理のルーチンが開始される。この重送処理のルーチンで1枚ごとに紙葉類2が取り出されることが確認されると、再び、ステップS14に戻され、ステップS14からS24或いはステップS30からS36の処理が実行される。ステップS28において、1枚ごとに紙葉類2が取り出されないことが確認されると、ステップS38において、取り出し不良として装置が停止される。この取り出し不良では、センサ不良或いは取り出し機構の不良等の装置故障等が調べられる。
尚、駆動周波数を変化させる為に、共振周波数が異なるいくつかの振動体8が予め用意され、振動体8を選択することによっても駆動周波数を変化させることができる。特に、書状のような郵便物にあっては、重量が1gから100gと大きく変動するので、書状の重量或いは剛性等によって安定した紙捌き効果が得られる駆動周波数が異なってくることから、複数の振動体8が用意され、選択されることが好ましい。
図11を参照してステップS26に示す重送処理のルーチンについて説明する。
重送処理のルーチンにおいては、監視センサ5が重送されて紙葉類2が搬送されていることを検知すると、ステップS40に示すように振動体8が積層体20上から退避される。即ち、振動体8が積層体20から離れるように移動される。また、ステップS42に示されるようにリフト機構4が動作してバックアップ台11も退避される。即ち、リフト機構4によって積層体20を載置したバックアップ台11が降下されて積層体20と振動体8との間に十分な空間が確保される。その後、分離ローラ3bが回転され、取り出しローラ1及び搬送ローラ3aの動作が停止される。分離ローラ3bの回転により、重送されて搬送された紙葉類2が分離ローラ3bにより積層体20上に戻されることとなる。分離ローラ3bに接触している紙葉類2が次々に戻されると、ステップS46に示すように監視センサ5で残る紙葉類2が一枚になったことが確認される。この残りが1枚であると確認されると、取り出しローラ1及び搬送ローラ3aが逆転(方向T0,T1とは反対の反時計方向に回転)されて最後の1枚の紙葉類2が積層体20上に戻されることとなる。紙葉類2が全て戻されて監視センサ5がゼロ枚を検知すると、取り出しローラ3aが更に一定量だけ逆転されて紙葉類2が積層体20の最上段所定位置に戻されることとなる。
次に、重送モードでの分離搬送の設定として、初期値に代えてバックアップ力F1b及び振動体押し付け力F2bが設定され、振動体8が振動条件(周波数fob及び電圧V0b)に設定されて振動子12が加振される。リフト機構4及び押し付け機構9が作動して振動体8が積層体20の戻された紙葉類2に押し付けられる。その後、ステップS50で示すように重送モード時の回転数cbが設定されて通常の搬送に比べて緩やかにローラ1,3a、3bが回転される。ローラ1,3a、3bの回転に伴い、紙葉類2が遅い速度で搬送される。
尚、重送されて紙葉類2が搬送される場合にあっても、ブロック状に比べてサシミ状(くさび状)に分離部3に搬送される場合には、分離部3で分離可能であり、このような場合には、センサ5は、重送で搬送されたと判断することはない。
尚、上述したシステムでは、振動体8が常に動作しているとしているが、紙捌き効果が必要な時にだけ動作させても良い。必要な時のみ動作させることにより、振動体8の発熱を低減することができ、振動体8自体の長寿命化を図ることができる。例えば、紙葉類2の取り出し状態を検知するセンサ5を用いて、分離取り出し状態が良好ではない(重送気味である)ことを検知し、その場合だけ振動体を動作させれば良い。重送気味であることの判断は、例えば、ATMの場合には、紙幣のピッチ(紙幣間隔)或いはスキュー(傾き)が許容範囲よりも大きくなってきた場合に重送気味であると判断する。枚数検知センサ5は、透過型の光センサでもよく(発光部と受光部間がさえぎられた場合にONとなる)、搬送方向と直交する方向に2セット設置することにより、ピッチ・スキューを検出することができる。また、例えば、郵便物処理装置の場合には、葉書のような比較的薄い媒体を取り出そうとすると往々にして分離部3にて束となって進入し分離できなくなることが多い。この場合には、分離部3を解放し、搬送ローラ3aを逆回転させて、束をもとにもどしてから、改めて高周波振動体8を加振させてやることにより、葉書間を捌いても良い。葉書の束は、サシミ形状に捌かれ、分離部3にて一枚ずつ分離取り出しすることができる。
また、バックアップ荷重の検知は、取り出しローラ1の近辺に設置したセンサ6、例えば荷重センサ或いは圧力センサ等で検知されるが、バックアップ移動機構4cの近傍にセンサ6を置くことも可能である。積層体が多くなるにつれて紙葉類2と側面ガイド板等との摩擦抵抗及び媒体自体のバネ性が付与されることにより、最上面或いは最側面の紙葉類2と取り出しローラ1と間の押付力は、積層体の最下段部で設定した押付力とは異なってくる。取り出しローラ1自体の方に押付力を検知するセンサを設けても良い。センサ5で取り出しタイミングの遅れが生じ始めたら、重送気味と判断して紙捌き処理が実行されても良い。
以上のように、この発明の分離取出装置においては、紙葉類2の振動を検出し、振動体の駆動条件を変化させることにより、紙葉類2の種類や状態及び環境条件等によらず安定した紙捌き効果を与えることができる。
1...取り出しローラ、2...紙葉類(媒体)、3...分離部、3a...搬送ローラ、3b...分離ローラ、4...バックアップ台リフト機構、4a...ラック、4b...ピニオン、4c...移動台、4d...バネ、5...監視センサ、6...圧力センサ、7...振動センサ、8...振動体、9...振動体押し付け機構、9a...ベルト、9b...モータ、9c...台、9d...バネ、9e...ブロック、9f...センサ(押付力検知)、10a、10b...ガイド、11...バックアップ台、12...振動子、13...電極、14...超音波ホーン、15,16...ブロック、17...ボルト、18...圧電セラミック部、19...ブロック、19a...連結部、19b...延出部、20...積層体、22...搬送方向、24...搬送用ローラ、26...厚み検出ローラ、28...アーム、30...エンコーダ、32...圧縮バネ、40a...発光部、42b...受光部、50...制御部、52...振動体制御部、54...バックアップ台制御部、58...ローラ駆動部、56、60...センサ出力部、62...設定部、64...取り出し枚数カウンタ部