JP4282915B2 - ネットワークエコー消去システムおよびエコー消去方法 - Google Patents

ネットワークエコー消去システムおよびエコー消去方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信システムに関する。特に本発明は、電話システムのエコーを消去する新しい改良された方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在の地上ベースの電話機は全て両方向の伝送を支持する2線式ライン(利用者または加入者ループと呼ばれる)によって中央局に接続されている。しかしながら、約35マイルより長い呼びに対して、2つの伝送方向は物理的に分離したワイヤで区別されなければならず、結果的に4線式ラインになる。2線式および4線式セグメントをインターフェイスする装置はハイブリッドと呼ばれる。典型的な長距離電話回路は、局部ハイブリッドへの加入者ループにおける2線式、遠方のハイブリッドへの長距離ネットワーク上の4線式および遠方の通話者への2線式であると説明できる。
【0003】
ハイブリッドの使用は長距離スピーチ伝送を容易にするが、ハイブリッドにおけるインピーダンス整合は結果的にエコーを生じさせる。通話者Aのスピーチは電話ネットワーク中の遠方のハイブリッド(通話者Bに最も近いハイブリッド)から通話者Aに向かって反射され、彼または彼女自身の音声の耳障りなエコーを通話者Aに聞かせる。したがって、ネットワークエコー消去装置はハイブリッドにおいてインピーダンス不整合によって発生させられたエコーを取除くために地上ベースの電話ネットワークにおいて使用され、ハイブリッドと共に中央局に典型的に配置される。したがって、通話者AまたはBに最も近く配置されたエコー消去装置は、呼びの他方の端部のハイブリッドによって発生されられたエコーを消去するために使用される。
【0004】
地上ベースの電話システムにおいて使用されるネットワークエコー消去装置は、典型的に信号のデジタル伝送を容易にするようなデジタル装置である。アナログスピーチ信号はデジタル形態に変換される必要があるため、中央局に配置されたコーデックが典型的に使用される。電話機A(通話者A)から中央局Aに供給されたアナログ信号はハイブリッドAを通過させられ、コーデックAによってデジタル形態に変換される。その後、デジタル信号は、それらがアナログ形態への変換のためにコーデックBに供給される中央局Bに伝送される。アナログ信号はハイブリッドBを通って電話機B(通話者B)に結合される。ハイブリッドBにおいて、通話者Aの信号のエコーが生成される。このエコーはコーデックBによってエンコードされ、中央局Aに伝送される。中央局Aにおいて、エコー消去装置は復帰エコーを除去する。
【0005】
通常のアナログセル電話システムにおいて、エコー消去装置はまた使用され、典型的にベースステーションに配置されている。これらのエコー消去装置は、不所望のエコーを除去するために地上ベースのシステムのものと同様にして動作する。
【0006】
自動車ステーションと地上ベースの電話機との間の呼びのためのデジタルセル電話システムにおいて、自動車ステーションの通話者のスピーチはコーデックを使用してデジタル化され、その後1組のパラメータにスピーチをモデル化するボコーダを使用して圧縮される。ボコード化されたスピーチはコード化され、電波でデジタル的に送信される。ベースステーションの受信機は信号をデコードし、伝送されたスピーチパラメータからデジタルスピーチ信号を合成するボコーダデコーダに4線式でそれを送る。この合成されたスピーチは、24個の音声チャンネルの時間多重送信群であるT1 インターフェイスを介して電話ネットワークに送られる。通常中央局であるネットワークのある点において、信号はアナログ形態に変換され、加入者ループにおいてハイブリッドに送られる。このハイブリッドにおいて、信号は地上ベースの加入者電話機へのワイヤ対による伝送のために2線式に変換される。
【0007】
参照のために、自動車ステーションと地上ベースの電話機との間のセルの呼びにおいて、自動車ステーションの通話者は遠端部の通話者であり、地上ベースの電話機の通話者は近端部の通話者である。地上ベースのシステムにおけるように、遠端部の通話者のスピーチは電話ネットワーク中の遠方ハイブリッドから遠端部の通話者に向かって反射される。その結果として、遠端部の通話者、すなわち自動車ステーションは彼等自身の音声の耳障りなエコーが聞こえる。
【0008】
通常のネットワークエコー消去装置は、典型的に適応デジタルフィルタ処理技術を使用している。しかしながら、通常使用されているフィルタはチャンネルを正確に複製することができず、結果的にある残留エコーを生じる。中央クリップエコー抑制装置は残留エコーを消去するために使用される。エコー消去装置は、信号を非直線的な関数にする。合成された雑音は、中央クリップエコー抑制装置によってゼロに設定された信号部分を置換し、チャンネルが“不活性”を発音させないようにするために使用されることができる。
【0009】
【発明の解決しようとする課題】
上記のエコー消去方法はアナログ信号に対して満足できるが、このタイプの残留エコー処理はデジタル電話機において問題を生じさせる。上記のように、デジタルシステムにおいて、ボコーダは伝送のためにスピーチを圧縮するために使用される。ボコーダは特に非直線的な効果に感応するため、中央クリップは音声品質を劣化させる。さらに、使用される雑音置換技術は通常の雑音特性において知覚的な変化を発生させる。
【0010】
したがって、本発明の目的は、改良された音声品質のために高度のダイナミックエコー消去を行うことのできる新しい改良されたエコー消去システムを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、アナログ通信システムとデジタル通信システムとの結合におけるエコー消去に特に適したエコー消去装置を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、両方の加入者が同時に話した場合に対してエコー消去装置に改良されたエコー消去特性を与えることである。
【0013】
【課題解決のための手段】
本発明は、エコー受信チャンネル信号が帰路チャンネルと通信しているエコーチャンネルから帰路チャンネルに導入される、帰路チャンネルから前記エコー受信チャンネル信号を消去するエコー消去システムにおいて、遠端チャンネルから遠端信号を受信し、利得制御信号に従って前記遠端信号を調整して、制御されたダイナミックレンジ信号を供給する自動利得制御装置と、 この自動利得制御装置に結合され、この自動利得制御装置から前記制御されたダイナミックレンジ信号を受信し、前記エコー受信チャンネル信号および入力帰路チャンネル信号から構成された前記結合信号を前記帰路チャンネルから受信し、前記エコー受信チャンネル信号を前記帰路チャンネルから減算し、前記自動利得制御信号を前記自動利得制御装置に供給するエコー消去手段とを具備していることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
地上ベースの電話システムとインターフェイスするセル電話システムのようなセル通信システムにおいて、ベースステーションに配置されたネットワークエコー消去装置は、自動車ステーションに戻ったエコーを消去する。図1を参照すると、一例のシステム構造がデジタルセル電話システムおよび地上ベース電話システムに対するそのインターフェイスのために設けられている。このシステム構造は自動車ステーション10、セルまたはベースステーション30、自動車電話交換局(MTSO)40、中央局50および電話機60の動作素子によって形成される。他の構造は、種々の動作素子の配置または位置を変化するだけでセルシステムを含むシステムに対して使用されてもよいことが理解されるべきである。本発明のエコー消去装置はまた通常のシステムにおいて通常のエコー消去装置の代わりに使用されてもよいことが理解されるべきである。
【0015】
自動車ステーション10は、特には示されていない他の素子と共にマイクロホン13およびスピーカ14を含む送受話器12と、コーデック16と、ボコーダ18と、トランシーバ20と、アンテナ22とを含んでいる。自動車ステーションの利用者の音声は、マイクロホン13によって受信されコーデック16に結合されてデジタル形態に変換される。その後、デジタル化された音声信号はボコーダ18によって圧縮される。ボコード化されたスピーチは変調され、トランシーバ20およびアンテナ22によって電波でデジタル的に送信される。
【0016】
トランシーバ20は例えば時分割多重アクセス(TDMA)、或は周波数ホッピング(FH)またはコード分割多重アクセス(CDMA)等の拡散スペクトルタイプのデジタル変調技術を使用してもよい。CDMA変調および送信技術の一例は、米国特許第 5,103,459号明細書(“SYSTEM AND METHOD FOR GENERATING SIGNAL WAVEFORM IN A CDMA CELLULAR TELEPHONE ”,1992年 4月 7日出願)に記載されている。このようなCDMAシステムにおいて、ボコーダ18は本出願人の米国別出願第07/713,661号明細書(“VARIABLE RATE VOCODER ”,1991年 6月11日)に記載されているような可変率タイプであることが好ましい。
【0017】
ベースステーション30は特には示されていない他の素子と共に、アンテナ32、トランシーバシステム34およびMTSOインターフェイス36を含んでいる。ベースステーショントランシーバシステム34は自動車ステーション10および別の自動車ステーション(示されていない)から受信された信号を復調してデコードし、MTSO40への伝送のためにそれらをMTSOインターフェイス36に送る。信号はマイクロ波、光ファイバまたは配線リンク等の種々の異なる方法によりベースステーション30からMTSOに伝送される。
【0018】
MTSO40は、特に示されていない他の素子と共にベースステーションインターフェイス42、複数のボコーダセレクタカード44A乃至44Nおよび公共交換電話ネットワーク(PSTN)インターフェイス48を含む。ベースステーション30からの信号はベースステーションインターフェイス42で受信され、ボコーダセレクタカード44A乃至44Nの1つ、例えばボコーダセレクタカード44Aに供給される。
【0019】
各ボコーダセレクタカード44A乃至44Nは、各ボコーダ45A乃至45Nおよび各ネットワークエコー消去装置46A乃至46Nを備えている。各ボコーダ45A乃至45N内に含まれたボコーダデコーダ(示されていない)は、各自動車ステーション伝送スピーチパラメータからデジタルスピーチ信号を合成する。その後、これらのサンプルは、PSTNインターフェイス48にそれらを送る各エコー消去装置46A乃至46Nに送られる。この例において、信号はボコーダ45Aおよびエコー消去装置46Aを通して供給される。その後、各呼びに対して合成されたスピーチサンプルは、典型的に配線T1 インターフェイス、すなわち24個の音声チャンネルの時間多重群を介して電話ネットワークへのPSTNインターフェイス48を通って中央局50に送られる。
【0020】
中央局50は、特に示されていない他の素子と共にMTSOインターフェイス52、コーデック54およびハイブリッド56を含んでいる。MTSOインターフェイス52を通って中央局50において受信されたデジタル信号は、それがアナログ形態に変換されてハイブリッド56に送られるコーデック54に結合される。ハイブリッド56においてアナログ4線式信号は、地上ベースの加入者電話機60へのワイヤ対による伝送のために2線式に変換される。
【0021】
コーデック54から出力されたアナログ信号はまたインピーダンス不整合のためにハイブリッド56から反射される。この信号反射は、自動車ステーション10に向かって戻るエコー信号の形態を取る。ハイブリッド56における反射またはエコー通路は破線の矢印58によって示されている。
【0022】
別の方向において、電話機60からの2線式アナログスピーチ信号は中央局50に供給される。中央局50において、スピーチ信号はハイブリッド56において4線式に変換され、自動車ステーション10に向かって進むエコー信号に付加される。結合されたスピーチおよびエコー信号はコーデック54においてデジタル化され、MTSOインターフェイス52によってMTSO40に送られる。
【0023】
MTSO40において、信号はPSTNインターフェイス48によって受信され、信号がボコーダ45Aによってエンコードされる前にエコーを除去するエコー消去装置46Aに送られる。ボコードされたスピーチ信号は、自動車ステーション10への伝送のためにベースステーションインターフェイス42を介してベースステーション30およびその他の適当な付加的なベースステーションに転送される。ベースステーション42から伝送された信号は、MTSOインターフェイス36によってベースステーション30で受信される。信号は送信エンコーディングおよび変調のためにトランシーバシステム34に送られ、アンテナ32で送信される。
【0024】
送信された信号は自動車ステーション10においてアンテナ22で受信され、復調およびデコーディングのためにトランシーバ20に供給される。その後、信号は合成されたスピーチサンプルが生成されるボコーダ18に供給される。これらのサンプルはスピーカ14に供給されたアナログスピーチ信号と共にデジタルアナログ変換のためにコーデック16に供給される。 本発明のエコー消去装置を十分に理解するために、デジタルセル環境において動作する場合の伝統的なエコー消去装置およびその欠点を検討することが有効である。図2には、伝統的なネットワークエコー消去装置(NEC)100 のブロック図が示されている。
【0025】
図2において、自動車ステーションからのスピーチ信号は遠端部のスピーチx(n)として記号を付けられ、一方地上側からのスピーチは近端部のスピーチv(n)として記号を付けられている。ハイブリッドからのx(n)の反射は、未知のエコーチャンネル102 を通してx(n)を送りエコー信号y(n)を生成する場合をモデル化され、エコー信号y(n)は近端部のスピーチ信号v(n)と合計器104 において合計される。合計器104 はエコー消去装置自身に含まれている素子ではないが、このような装置の物理的な効果はシステムの寄生的結果である。低い周波数の背景雑音を除去するために、エコー信号y(n)と近端部のスピーチ信号v(n)の合計は、フィルタ106 を通してハイパスフィルタ処理され、信号r(n)を生成する。信号r(n)は、合計器108 および近端部のスピーチ検出回路110 への1つの入力として供給される。
【0026】
合計器108 の別の入力(減算入力)は、適応トランスバーサルフィルタ112 の出力に結合される。適応フィルタ112 は、遠端部のスピーチ信号x(n)および合計器108 から出力されたエコー残留信号e(n)のフィードバックを受信する。エコーを消去する時、適応フィルタ112 はエコー路の衝撃応答を連続的に追跡し、合計器108 中のフィルタ106 の出力からエコー複製y(n)を減算する。適応フィルタ112 はまた近端部のスピーチが検出されたときにフィルタ適応プロセスを凍結するように回路110 から制御信号を受信する。
【0027】
エコー残留信号e(n)はまた回路110 および中央クリップエコー抑制装置114 に出力される。抑制装置114 の出力は、エコー消去装置が作動しているときに消去されたエコー信号として供給される。
【0028】
エコー路衝撃応答は、図3のグラフに示されているように、フラット遅延領域およびエコー分散の2つの部分に分解されることができる。応答特性がゼロに近いフラット遅延領域は、遠端部のスピーチに対する往復遅延によって発生させられ、ハイブリッドから反射してエコー消去装置に戻る。応答が著しいエコー分散領域は、ハイブリッドからの反射によって発生させられたエコー応答である。
【0029】
適応フィルタによって生成されたエコーチャンネル評価が本当のエコーチャンネルに完全に整合した場合、エコーは完全に消去される。しかしながら、フィルタは通常チャンネルを正しく複写することができず、ある残留エコーを生じさせる。エコー抑制装置114 は、しきい値Aより下に落ちる任意の信号部分をゼロに設定する非直線的な関数により信号を通過させ、またしきい値Aより上の変化されていない任意の信号セグメントを通過させることによって残留エコーを消去する。合成された雑音は、中央クリップによってゼロに設定された信号部分を置換し、チャンネルが“不活性”の音響状態になることを阻止するために使用されることができる。
【0030】
上記のように、この方法はアナログ信号に対して満足できるが、この残留エコー処理はボコーダが伝送のためにスピーチを圧縮するために使用されるデジタル電話機において問題を生じさせる。ボコーダは特に非直線的な効果に感応するため、中央クリップは音声品質を劣化させ、一方で雑音置換技術は雑音特性において知覚的な変化を生じさせる。
【0031】
図4は図2の適応フィルタ112 の構造をさらに詳細に示す。以下のように図4の表記を定める:
N:フィルタ次数;
x(n):時間nにおける遠端部スピーチのサンプル;
k (n):時間nにおけるk番目のフィルタタップ;
r(n):時間nにおけるエコーサンプル;
y(n):時間nにおける評価されたエコー;
e(n):時間nにおけるエコー残留。
【0032】
適応フィルタ112 は複数のタップを有する遅延素子 1201 乃至 120N-1 、複数の乗算器 1220 乃至 122N-1 、加算器124 および係数発生器126 を含む。入力された遠端部スピーチサンプルx(n)は遅延素子 1201 および乗算器 1220 の両者に入力される。次のサンプルがフィルタ112 に入来すると、古いサンプルは遅延素子 1202 乃至 122N-1 を通してシフトされ、それらはまた各乗算器 1221 乃至 122N-1 に出力される。
【0033】
係数発生器126 は合計器108 (図2)から出力されたエコー残留信号e(n)を受信し、1組の係数h0 (n)乃至hN-1 (n)を発生する。これらのフィルタ係数値h0 (n)乃至hN-1 (n)は、乗算器 1220 乃至 122N-1 にそれぞれ入力される。各乗算器 1220 乃至 122N-1 からの結果的な出力は、それらが合計されて評価されたエコー信号y(n)を供給する合計器124 に供給される。その後、評価されたエコー信号y(n)は、それがエコー信号r(n)から減算されてエコー残留信号e(n)を形成する合計器108 (図2)に供給される。図2の伝統的なエコー消去装置において、制御入力は発生器126 に供給され、近端部のスピーチが回路110 によって検出されない場合に係数更新を可能にする。二重トークまたは近端部のスピーチだけが回路110 によって検出された場合、制御入力はフィルタ係数の更新を不能にする。
【0034】
エコー路応答を追跡するためにフィルタタップ係数を適合させる係数発生器126 において実施されるアルゴリズムは、正規化された最小平均二乗(NLMS)適応アルゴリズムである。このアルゴリズムに対してベクトル:
x(n) =[ x(n) x(n-1) x(n-2) …x(n-N+1)] (1)
h(n) =[ h0 (n) h1 (n) h2 (n) …hN-1 (n)] (2)
を導入すると、h(n)とx(n)との間のベクトル内積は:
【数1】
Figure 0004282915
として定められる。
【0035】
適応アルゴリズムは:
【数2】
Figure 0004282915
として定められ、ここにおいて、
h(n)はタップ係数ベクトルであり、
x(n)は基準信号入力ベクトルであり、
e(n)はエコー残留信号であり、
μはステップサイズであり、
xx(n)はN個の最も新しいサンプルの二乗の合計として計算されたエネルギ評価であって、ここで:
【数3】
Figure 0004282915
このアルゴリズム(4)の主な利点は、それが別の適応アルゴリズムよりも小さい計算要求を有し、その安定特性が良く理解されていることである。集束は、μ=1が最も速い集束を行うステップサイズ(0<μ<2)の適切な選択によって保証されることができる。より小さいステップサイズは、集束速度を犠牲にして定常状態でより大きい程度の消去を提供する。
【0036】
近端部の通話者スピーチ信号v(n)は、近端部の通話者からのスピーチが検出されたとき、適応フィルタ112 が近端部のスピーチ検出回路110 によってディスエーブルされるため、エコー残留信号e(n)に含まれないことが留意されなければならない。
【0037】
フィルタ112 にエネーブル信号を供給することに加えて、回路110 はまたExx(n)の値を生成し、制御入力においてフィルタ112 に供給する。さらに、μの値は典型的に発生器126 において固定されるか、或は固定された値が制御入力において回路110 から供給される。
【0038】
エコー消去の最も難しい設計問題は、二重トークすなわち両方の加入者が同時に話した場合の検出および処理である。単一の通信だけを可能にする音声活性化スイッチ(VOX)と対照的に、エコー消去装置は二重通信を保存し、近端部の通話者が話している間に、遠端部の通話者エコーを連続的に消去しなければならない。フィルタ係数が近端部のスピーチによって劣化されることを阻止するために、フィルタタップは実際のエコーチャンネルの伝送特性からの発散を阻止するために凍結されなければならない。
【0039】
図2を参照すると、近端部のスピーチ検出回路110 はエネルギ測定値x(n)、r(n)およびe(n)を使用し、近端部のスピーチが発生した時を決定することができる。従来の二重トーク検出方法は、ハイブリッドを横切るエコー路の損失が約6dBである知識を使用してx(n)およびr(n)の短期間エネルギ平均を比較する。ハイブリッド損失が6dBより下降した場合、近端部のスピーチであると示される。しかしながら、実験結果において、この方法が感度を欠くことが明らにされている。近端部のスピーチv(n)の大きいダイナミック範囲は、この方法に時々誤検出させ、フィルタ係数を劣化させる。
【0040】
別の一般的な二重トーク検出方法は、短期間エコー復帰損失強化(ERLE)を検査することである:
【数4】
Figure 0004282915
ERLEは、それがエコー消去装置を通された後、エコーから除去されるエネルギ量を表す。この二重トーク検出方法はr(n)およびe(n)の短期間エネルギ評価を比較し、短期間ERLEが6dB等のある予め定められたしきい値より下に下降した場合に二重トークであると宣言する。この方法は大きい感度を提供するが、それは近端部のスピーチの開始を検出する前に小さい遅延を招き、適応が凍結される前にエコーチャンネル評価を少し劣化させる。この損傷のために、付加的な技術を使用して残留エコーを除去することが必要とされる。したがって、本発明が提供するような二重トーク中のエコーチャンネル評価を保存する改良された方法を見出すことが望ましい。
【0041】
二重トークを検出するためにこれらのエコー比較方法のいずれかを使用した時、特にセル呼び環境における高レベルの背景雑音は、正しい二重トーク検出において問題を生じる可能性が高い。したがって、本発明が提供するように、高い雑音背景レベル環境において二重トークを検出するための改良された方法を使用することが望ましい。
【0042】
図5を参照すると、本発明のネットワークエコー消去装置(NEC)140 の1実施例のブロック図が示されている。実施例において、NEC140 はテキサス州ダラスのテキサス・インスツルメンツ社によって製造されたTMS 320C 3Xシリーズデジタル信号プロセッサのようなデジタル信号プロセッサ形態で構成される。別のデジタル信号プロセッサは、この技術にしたがって機能するようにプログラムされることが理解されなければならない。その代りとして、NEC140 の別の構造がディスクリートなプロセッサから、または適応特定集積回路(ASIC)形態で構成されてもよい。
【0043】
実施例において、NEC140 は本質的に異なる動作状態のそれぞれに対して限定された機能を有する状態マシンであることが理解されるべきである。NEC140 が動作する状態は、沈黙、遠端部のスピーチ、近端部のスピーチ、二重トークおよびハングオーバーである。以下、NEC140 の動作をさらに詳細に説明する。
【0044】
図5において、図2に対するように自動車ステーションからのスピーチ信号は遠端部のスピーチx(n)として記号が付けられ、地上側のスピーチは近端部のスピーチv(n)として記号が付けられる。ハイブリッドからのx(n)の反射は、未知のエコーチャンネル142 を通してx(n)を送り、エコー信号y(n)を生成する場合をモデル化されており、このエコー信号y(n)は近端部のスピーチ信号v(n)と合計器144 で合成される。合計器144 はエコー消去装置自身に含まれた素子ではないが、このような装置の物理的な効果はシステムの寄生的な結果である。低い周波数の背景雑音を除去するために、エコー信号y(n)および近端部スピーチ信号v(n)の合計はフィルタ146 によりハイパスフィルタ処理され信号r(n)を生成する。信号r(n)は、合計器148 および150 並びに制御装置152 に1つの入力として供給される。
【0045】
入力された遠端部のスピーチx(n)は、1組のトランスバーサル適応フィルタ(初期フィルタ156 、状態フィルタ158 およびエコー消去装置フィルタ160 )および制御装置152 への入力のためにバッファ154 に蓄積される。実施例において、初期フィルタ156 は 448個のフィルタ係数またはタップを有し、一方状態フィルタ158 およびエコー消去装置フィルタ160 はそれぞれ 256個のタップを有している。
【0046】
NEC140 の初期動作中、スピーチサンプルx(n)は制御装置152 の制御下における初期エコー消去およびエコー遅延調節のために初期フィルタ156 に与えられる。初期動作のこの期間中、状態フィルタ158 およびエコー消去装置フィルタ160 は制御装置152 によってディスエーブルされる。初期フィルタ156 からの初期エコー消去出力信号yi (n)はフィルタスイッチ162 を通して合計器148 に供給される。信号yi (n)は、合計器148 において信号r(n)から減算され、エコー残留信号e(n)の初期評価を生成する。制御装置152 の制御下において、フィルタスイッチ162 は、合計器148 への入力に対して初期フィルタ156 およびエコー消去装置フィルタ160 の出力の間の選択をする。
【0047】
上記のように、エコー遅延調節プロセスはNEC140 の初期動作の期間中に行なわれる。このプロセスにおいて、初期フィルタ156 のフィルタタップ係数またはタップは、最大値のタップの決定のために制御装置152 に与えられる。このプロセスは、信号のエコー分散領域とフラット遅延領域を区別するために使用される。
【0048】
エコー遅延調節プロセスの終了時に、初期フィルタ156 からの 256個のタップは、以下さらに詳細に説明されるように状態フィルタ158 およびエコー消去装置フィルタ160 のタップに複写される。エコー遅延調節プロセスの結果は、信号r(n)のエコー分散領域と一致したサンプルx(n)に関して適応フィルタ処理が行われることを確実にする。この初期動作の後、状態フィルタ158 およびエコー消去装置フィルタ160 はエネーブルされ、最初にフィルタ156 によって与えられたタップを使用する。将来的な適応は生成されたタップに基づいている。
【0049】
NEC140 の常態動作の期間中、信号y1 (n)は状態フィルタ158 から合計器150 の1つの入力に出力され、それは合計器150 において信号r(n)から減算される。合計器150 からの結果的な出力は、制御装置152 に入力される第1のエコー残留信号e1 (n)である。エコー消去装置フィルタ160 の出力であるエコー複写信号y(n)はフィルタスイッチ162 を通して合計器148 の1つの入力に供給され、それは合計器148 において信号r(n)から減算される。合計器148 から出力された結果的なエコー残留信号e(n)は、制御装置152 への入力としてフィードバックされる。合計器148 からの出力としての第2のエコー残留信号e(n)はNEC140 の出力として直接的に、或は付加的な処理素子を通して供給される。以下詳細に説明されるように、制御装置152 はまた状態フィルタ158 およびエコー消去装置フィルタ160 の適応に対して制御を行う。
【0050】
本発明において、雑音解析/合成特徴はNEC140 の出力において与えられる。この特徴は、出力スイッチ164 、雑音解析装置166 および雑音合成装置168 によって支持される。出力スイッチ164 および雑音解析装置166 の両者は合計器148 から出力信号e(n)を受信する。雑音解析装置166 は制御装置152 の制御下において信号e(n)を解析し、雑音合成装置168 に解析出力を供給する。雑音合成装置168 は、信号e(n)の解析された特性に基づいて合成された雑音信号s(n)を生成する。その後、雑音合成装置168 の出力が出力スイッチ164 に供給される。制御装置152 の制御下にある出力スイッチ164 を通って、NEC140 の出力は合計器148 からの直接の信号として供給されるか、或は雑音合成装置168 から合成された雑音信号s(n)として供給される。
【0051】
大部分の典型的な電話会話は、1人だけが任意の時に話している場合、単一トークモードで行われる。遠端部の通話者だけが話している場合に、NEC140 は合成された雑音信号s(n)とエコー残留信号e(n)を置換することによってエコーを完全に排除するために雑音解析/合成特徴を使用する。遠端部の通話者が信号特性の変化を検出しないようにするために、直線的な予測コーディング(LPC)技術を使用して沈黙の最も新しい期間中に実際の背景雑音のパワーおよびスペクトル特性と整合するように雑音が合成される。以下においてさらに詳細に説明されるこの雑音合成方法は、二重トークに対するNEC140 の最適化を可能にするように設計考慮項目として単一トークを効果的に回避する。以下、雑音解析/合成特徴に関して詳細に説明する。
【0052】
本発明の付加的な特徴として、図5の実施例に示されているように利得段もまた設けられることができる。この特徴を構成する時、NEC140 への遠端部のスピーチ信号x(n)の入力に可変利得素子170 が設けられている。入力された遠端部のスピーチ信号x(n)は可変利得段170 を通ってバッファ154 および未知のエコーチャンネル142 に供給される。制御装置152 は可変利得段170 との組合わせで自動利得制御特徴を提供し、そうでなければ未知エコーチャンネル142 によって非直線的に影響を与えられる信号を限定する。制御装置152 および可変利得段170 はまたフィルタ適応プロセスに対して集束時間を減少するように機能する。以下、この特徴をさらに詳細に説明する。
【0053】
本発明の実施例に示されているように、2つの独立的に適応するフィルタであるフィルタ158 および160 は、未知のエコーチャンネルを追跡する。フィルタ160 は実際のエコー消去を行うが、フィルタ158 はNEC140 が動作すべき状態を決定するために制御装置152 によって使用される。このために、フィルタ158 および160 はそれぞれ状態フィルタおよびエコー消去装置フィルタと呼ばれる。この2フィルタ方法の利点は、未知のエコーチャンネル140 をモデル化するエコー消去装置フィルタ160 のフィルタ係数が近端部のスピーチからの劣化の危険性なしにより効果的に保存されることが可能なことである。エコーチャンネル特性を密に保存することによって、本発明の設計は中央クリッピングを不要にする。
【0054】
フィルタ158 および160 の特性を監視する制御装置152 内で実行される制御アルゴリズムは、二重トークにおける評価されたエコーチャンネル特性を保存するために最適化される。制御装置152 は適切な時間においてフィルタ158 および160 の適用をオンおよびオフに切替え、両フィルタのステップサイズを調節して、速い初期適応を可能にするようにx(n)に関して利得装置170 を調節する。
【0055】
図6は、図5の制御装置152 を(機能的なブロック図の形態で)さらに詳細に示す。図6において、制御装置152 は状態マシンおよびプロセス制御装置180 、エネルギ計算装置182 、差動エネルギマグニチュード装置184 、可変適応しきい値装置186 、自動利得制御装置188 およびフラット遅延計算装置190 から構成されている。
【0056】
状態マシン180 は、図14に関して示されているように全体的な状態マシン機能および図7に関して示されているような種々の全体プロセス制御を実行する。状態マシン180 は、NEC140 の初期動作中に初期フィルタ156 およびフラット遅延計算装置190 に対する制御を行う。状態マシン180 は、初期設定に関して状態フィルタ158 およびエコー消去装置フィルタ160 を制御し、適応制御およびステップサイズ制御を行う。状態マシン180 はまた雑音解析装置166 およびスイッチ162 ,164 に対して制御を行う。状態マシン180 はまたエコー消去装置フィルタ160 の状態マシンの適応制御に対して可変適応しきい値装置186 をエネーブルする。状態マシン
180 はまたエコー消去装置フィルタ160 および状態フィルタ158 にそれぞれ供給するために合計器148 から信号e(n)を、および合計器150 から信号e1(n)受信する。別の形態では、信号e1(n)およびe(n)は状態フィルタ158 およびエコー消去装置フィルタ160 に直接供給されてもよい。 エネルギ計算装置182 は円形バッファ154 からのx(n)、HPF146 からのr(n)、合計器148 からのe(n)、および合計器150 からのe1(n)に対するサンプル値を受信し、差動エネルギマグニチュード装置184 および状態マシン180 に供給するために以下説明されるように種々の値を計算する。差動エネルギマグニチュード装置184 は、近端部のスピーチおよび、または遠端部のスピーチが存在しているか否かを決定するように、しきい値レベルとの比較のためにエネルギ計算装置182 において計算されたエネルギ値を使用する。この決定の結果は状態マシン180 に提供される。
【0057】
エネルギ計算装置182 は、フィルタ158 および160 に対して各段階でエネルギ評価を計算する。これらのエネルギ評価は最も新しいサンプルの二乗の合計として計算される。時間nにおける信号x(n)についての2つのエネルギ測定値Ex (n)およびExx(n)はそれぞれ128 および256 個のサンプルに対して計算され、以下の式にしたがって表されることができる:
【数5】
Figure 0004282915
同様に、エネルギ計算装置182 は、以下の式にしたがって各信号r(n)、e(n)およびe1(n)に対する時間nでのエネルギ評価Er (n)、Ee (n)およびEe1(n)を計算する:
【数6】
Figure 0004282915
エネルギ計算装置182 はまた以下の式にしたがって時間nのハイブリッド損失Hloss(n)を計算する:
【数7】
Figure 0004282915
エコー消去装置フィルタ160 のエコー復帰損失強化(ERLE)は、以下の式にしたがってエネルギ計算装置182 により計算される:
【数8】
Figure 0004282915
状態フィルタ158 のエコー復帰損失強化(ERLE1 )はまた以下の式にしたがってエネルギ計算装置182 により計算される:
【数9】
Figure 0004282915
エコーチャンネルによって発生させられたエコー信号中の非直線性を回避するために、最大値の近くに予め設定されたしきい値より低い値にサンプルx(n)の受信された値を制限することが望ましい。可変利得段170 と組合わせられた自動利得制御装置188 がこの結果を達成する。円形バッファからサンプルx(n)を受信する自動利得制御装置188 は、サンプル値が過度に大きい場合にそれらを制限するように可変利得素子170 に利得制御信号を供給する。
【0058】
NEC140 の初期動作時の状態マシン180 の制御下におけるフラット遅延計算装置190 は、初期フィルタからフラット遅延を計算する。その後、フラット遅延計算装置190 は状態フィルタ158 およびエコー消去装置フィルタ160 に円形バッファオフセット情報を提供し、呼びに対するフラット遅延期間を考慮する。
【0059】
本発明のネットワークエコー消去装置の実施例において、3分枝方法は二重トーク検出/処理問題を解決するために使用される。したがって、本発明は(1)異なるステップサイズを持つ2つの独立的に適用するフィルタと;(2)フィルタ適用をオンおよびオフに切替えるための可変しきい値と;および(3)スピーチ検出用の差動エネルギアルゴリズムとを使用する。
【0060】
NEC140 は、2つの独立的に適応する適応フィルタを使用する。別の2フィルタ方法とは異なって、NEC140 はエコー消去のために使用するフィルタ158 と160 間で前後に切替えず、また定常状態で2つのフィルタ間でタップ情報も交換しない。これらの以前から知られている両技術はエコー消去装置の出力において不所望の“ポップ”を生じさせる転移を発生させる。本発明において、エコー消去装置フィルタ160 は常に実際のエコー消去を行い、一方状態フィルタ158 は異なる消去装置状態を区別するために状態マシン180 内で行われた制御アルゴリズムによって使用される。この新しい二重フィルタ方法は、エコー消去装置フィルタ160 に対する伝統的な適用方法の使用を可能にする。制御アルゴリズムが消去装置が動作する状態を“確証しない”場合、それはエコー消去装置フィルタ160 の適用をオフに切替え、一方状態フィルタ158 は連続的に適用する。状態マシン180 は、状態決定の助けとなるように状態フィルタ158 から収集された統計を使用する。適応フィルタのステップサイズは、エコー消去装置フィルタ160 が定常状態で高いERLEを獲得し、一方状態フィルタ158 はエコーチャンネル応答の任意の変化に迅速に応答するように調節される。2つのフィルタ158 および160 が前述された方法で同時に適用することを可能にすることによって、エコー消去装置の全体的な特性が強化される。 状態フィルタ158 およびエコー消去装置フィルタ160 は、初期フィルタ156 と共に図4を参照して記載された方法でそれぞれ構成される。状態フィルタ158 およびエコー消去装置フィルタ160 は、8kHzのサンプリング速度で32msのエコー分散期間を計算するためにそれぞれ256 個のタップを含む。状態フィルタ158 およびエコー消去装置フィルタ160 に対して、エコー分散期間およびサンプリング速度に応じて、多いまたは少ない数のタップが使用されてもよいことが理解されるべきである。サンプルバッファ154 は、アメリカ大陸を横断して行われた呼びに対するフラット遅延およびエコー分散の64msの時間期間を計算するために512 個の遠端部のスピーチサンプルを含んでいる。個々の電話機の呼びにおいて直面するフラット遅延の異なる値を処理するために、本発明のネットワークエコー消去装置はフラット遅延を自動的に決定し、エコー分散領域で動作するタップ数を最大にするようにフィルタタップをシフトする。したがって、本発明のエコー消去装置はシフトを伴わなずに 0乃至32msの範囲のエコー応答を処理し、最大遅延シフトにより32乃至64msまでのエコー応答を処理する。デジタル信号プロセッサおよびそれに関連した処理技術に関して技術的に良く知られているように、初期フィルタ156 はフィルタ158 および160 を形成するために使用されてもよいことが理解されなければならない。初期処理の終了時、初期フィルタ156 は“破壊”されて、独立した係数発生器を備えた2つのフィルタ158 および160 にされる。以下、初期特徴をさらに詳細に説明する。
【0061】
二重トークの開始時にエコー消去装置フィルタ160 のフィルタ係数を保存するために、NEC140 はエコー消去装置フィルタ160 の適応をオンおよびオフに切替えるために可変適応しきい値(VTで示された)を使用する。可変適応しきい値(VT)は可変適応しきい値装置186 によって計算され、状態マシン180 に供給される。制御アルゴリズムは、状態フィルタ158 またはエコー消去装置フィルタ160 のいずれがVTより大きいERLEを有している場合に、エコー消去装置フィルタ160 を適応させることを可能にする。再び図4を参照すると、発生器126 に供給された制御入力は、係数ベクトル発生器126 がフィルタ適応のためにフィルタ係数を更新することを可能にする制御装置152 からのエネーブル信号を含んでいる。両フィルタのERLEがVTより小さい場合、状態マシン180 は係数ベクトル発生器126 が更新された係数を供給できないようにする。この場合、係数ベクトル発生器126 は、適応が再度エネーブルされるまで既存の係数を出力する。制御入力はまた式(4)のμ、Exx(n)およびe(n)の値のような別のパラメータを係数ベクトル発生器126 に提供する。
【0062】
図6において、状態フィルタ158 に対するERLEはr(n)およびe1(n)の値を使用して式(6)にしたがってエネルギ計算装置182 において計算される。同様に、値r(n)およびe(n)の値に関してエコー消去装置160 に対してエネルギ計算装置182 で計算が行なわれる。可変適応しきい値装置186 において、この例では6dBの初期最小しきい値に状態マシン180 によってVTが初期化される。可変適応しきい値装置186 におけるしきい値処理は以下のCコードによって説明されることができる:
もしも(ERLE>VT+6dB)であるならば、
{VT=MAX[VT(ERLE−6dB)]}
また、もしも(ERLE<MT−3dB)であるならば、
{VT=MT}である。
【0063】
ERLEが(VT+6dB)を通って上昇すると、適応しきい値も上昇し、ピークERLEの後方に6dBを残す。この6dBの余裕はERLEの可変度を示す。状態マシン180 は、フィルタ158 および160 のいずれのERLEが最後のERLEピークの6dB内にある場合、エコー消去装置フィルタ160 が連続的に適応することを可能にする。ERLEが最小しきい値より下の3dBに下降した場合、適応しきい値は最小しきい値にリセットされる。この方法の利点は、エコー消去装置フィルタ160 の適応が二重トークの開始時に直ぐに停止させられることである。例えば、遠端部の通話者が話している唯一の1人であると仮定する、最後のERLEピークは34dBである。近端部の通話者が話し始めると、ERLEは下降して、ERLEが28dBになったときにフィルタ適応は停止される。慣例的な近端部のスピーチ検出器は、ERLEが約6dBより下に下降するまで適応を中止せず、これはエコーチャンネル評価が少し劣化されることを許す。したがって、エコーチャンネル特性をさらに密に保存することによって、本発明は二重トークにおけるさらに大きいエコー排除を達成し、一方で伝統的なエコー消去装置において使用される中央クリッパと関連した音声品質劣化を回避する。
【0064】
本発明の実施例において、フィルタ160 の適応が停止させられる前に両フィルタ158 および160 のERLEがVTより下に下降することが好ましい。この制御アルゴリズムの特性は、両フィルタのERLEが二重トークの開始時に直ぐ下降するため、いずれのERLE測定値の正常な可変度と二重トークの開始を区別することを助ける。
【0065】
本発明の別の観点は、フィルタ158 および160 が集束を達成するとき、VTに対する最小しきい値の値は初期設定から増加されることである。VTに対する最小しきい値が増加すると、エコー消去装置フィルタ160 が適応される前に、さらに高いERLEが必要である。
【0066】
大きい背景雑音レベルが状態決定を妨害しないようにするために、本発明のエコー消去装置は信号x(n)およびe(n)に関して差動エネルギアルゴリズムを使用する。差動エネルギマグニチュード装置184 および状態マシン180 内で行われ、以下さらに詳細に説明されるこのアルゴリズムは、背景雑音レベルを連続的に監視し、通話者が話しているか否かを決定するために信号エネルギとそれを比較する。実施例における差動エネルギマグニチュード装置184 は、背景雑音レベルBi の関数である3つのしきい値T1 (Bi )、T2 (Bi )およびT3 (Bi )を計算する。信号x(n)の信号エネルギが3つの全しきい値を越えた場合、通話者が話していると決定される。信号エネルギがT1 およびT2 を越えるがT3 を越えない場合、通話者は“スピード”という単語中の“sp”音のような無声音を発していると決定される。信号エネルギが3つの全しきい値より小さい場合、通話者は話していないと決定される。
【0067】
本発明のエコー消去装置におけるサンプルデータ処理の例示的な全体フロー図は図7および以下に示されている。状態マシン180 の制御下のアルゴリズムがブロック200 で最初にスタートし、次にブロック202 においてx(n)およびv(n)のμ法則のサンプルを初めに獲得し、その後それらはブロック204 でそれらの直線的な値に変換される。v(n)サンプルはブロック206 においてサンプルr(n)を得るためにハイパスフィルタ(HPF)を通過させられる。HPFであり、残留DCおよび低周波数雑音を除去する図5のフィルタ146 は、良く知られたデジタルフィルタ技術を使用して構成されたデジタルフィルタである。HPFは典型的に37dB排除によりカットオフされた 120Hzの停止帯域および 0.7dBリップルによりカットオフされた 250Hzのパスバンドの特性を持つ第3のオーダーの楕円型フィルタとして構成される。HPFは典型的に以下のように表Iに示された係数を持つ第1のオーダーおよび第2のオーダーの直接形態構造の縦続接続として構成される。
【0068】
Figure 0004282915
次にエネルギ平均Ex およびExxはブロック208 において信号サンプルx(n)に対して更新される。次にブロック210 においてエネルギ平均Er (n)がハイブリッド上でのエネルギ損失Hloss(n)の計算と共に信号サンプルr(n)に対して更新される。
【0069】
ブロック212 において、適応フィルタ158 (図5)の出力である値y1 (n)が計算され、ブロック214 でエコー残留e1(n)が決定される。ブロック216 においてERLE1 およびフィルタ158 に対するエネルギ平均Ee1が更新される。同様に、ブロック218 で適応フィルタ160 (図5)の出力である値y(n)が計算され、その後ブロック220 において残留エコーe(n)が決定される。それからブロック222 においてフィルタ160 に対するERLEおよびエネルギ平均Ee が更新される。ブロック208 乃至222 に示されたあるステップは、別のステップに要求される値によって決定されるようにその他の種々の順番で行われてもよいことが理解されるべきである。さらに、あるステップはステップ212 乃至216 および218 乃至222 のように並列に行われてもよい。したがって、図7を参照してここに説明された順序は処理ステップの順序の一例に過ぎない。
【0070】
前のステップの終了時、パラメータ調節ステップはブロック224 で行われ、このステップは図8を参照してさらに詳細に説明される。パラメータ調節ステップの終了すると、周期関数ステップがブロック226 で行われ、このステップは図9を参照してさらに詳細に説明される。周期関数ステップの終了すると、状態マシン動作ステップがブロック228 で行われ、このステップは図14を参照してさらに詳細に説明される。状態マシン動作ステップの終了時、プロセスはフロー図の点Aに戻って反復する。
【0071】
図8のフロー図は、図7のブロック224 のパラメータ調節ステップを詳細に示す。パラメータ調節ステップにおいて、フィルタステップサイズおよび可変しきい値パラメータがエコー消去装置動作中に更新される。
【0072】
状態フィルタ158 およびエコー消去装置フィルタ160 (図5)の両者は、フィルタ係数発生器への制御入力において1のステップサイズ(μ1 =μ2 =1)を提供することによって動作の開始時に状態マシン180 によって初期化される。このレベルにおけるこのフィルタの初期化は、速い初期集束を可能にする。パラメータ調節ステップに達した時、初期パラメータ調節アルゴリズムが使用される。この初期アルゴリズムにおいて、エコー消去装置フィルタに対してμ2 の値に設定された制御素子が0.5 の固定値より大きいか否かに関する決定がブロック250 で行われる。そうならば、ERLEが14dBより大きいか否かに関する決定がブロック252 で行われる。チャンネルの集束を獲得し始めた時のように、ERLEが14dBより大きくない場合、カウンタ(Scountカウンタ)の値はブロック254 でゼロ(Scount=0)に等しく設定され、パラメータ調節ステップはこのサンプルに対して終了され、サブルーティンは点Cで出される。
【0073】
ERLEが14dBより大きいと決定された場合、ブロック256 においてカウンタがインクレメントされる。その後、ブロック258 において、Scount値が 400のカウント値にインクレメントされたか否かに関する決定が行われる。Scount値が 400のカウント値より小さい場合、パラメータ調節ステップはこのサンプルに対して終了され、サブルーティンは点Cで出される。
【0074】
しかしながら、ブロック258 の決定により結果的にScount値が 400のカウント値に等しいことが判明し、それが50msに対して14dBより大きいERLEに対応する(連続的に)場合、ブロック260 において状態フィルタのステップサイズ(μ1 )は 0.7にシフトされ、エコー消去装置フィルタのステップサイス(μ2 )は 0.4にシフトされる。またブロック260 において、Scountカウンタはゼロにリセットされる。その後、パラメータ調節ステップはサンプルに対して終了され、サブルーティンは点Cで出される。
【0075】
ブロック250 でエコー消去装置フィルタに対してμ2 の値を設定された制御素子が0.5 の固定値より大きくないことが決定された場合、中間アルゴリズムが実施される。この中間アルゴリズムにおいて、μ2 に対する値が0.2 より大きいか否かに関する決定がブロック262 において行われる。そうであるならば、ERLEが20dBより大きいか否かに関する決定がブロック264 で行われる。ERLEが20dBより大きくない場合、ブロック266 においてScount値はゼロに等しく設定され(Scount=0)、このサンプルに対するパラメータ調節ステップが終了され、サブルーティンは点Cで出される。
【0076】
ERLEが20dBより大きいと決定された場合、ブロック268 においてカウンタはインクレメントされる。その後、ブロック270 においてカウンタ値が 400のカウント値にインクレメントされるか否かの決定が行われる。カウンタ値が 400のカウント値より小さい場合、パラメータ調節ステップはこのサンプルに対して終了され、サブルーティンは点Cで出される。
【0077】
しかしながら、ブロック270 の決定により結果的にScount値が 400のカウント値に等しいことが判明し、それが50msに対して20dBより大きいERLEに対応する場合、ブロック272 において値μ1 は 0.4にシフトされ、値μ2 は 0.1にシフトされる。さらにブロック272 において、最小しきい値は6dBの初期最小しきい値から12dBに増加される。その後、パラメータ調節ステップはこのサンプルに対して終了され、サブルーティンは点Cで出される。
【0078】
さらに小さいステップサイズへのフィルタの“ギアシフト”は、さらに高いERLEレベルが使用されることを可能にすることに留意されるべきである。しかしながら、好ましい実施例においてμ2 <μ1 の関係は維持され、それによってエコー消去装置フィルタが高い定常状態のERLEを獲得し、状態フィルタがエコーチャンネル応答の変化に迅速に応答する。
【0079】
μ2 のエコー消去装置フィルタの値が0.1 に設定された後、可変適応しきい値アルゴリズムはエコーチャンネル応答をさらに密に保存するように作用する。可変適応しきい値装置
186 内で行われた可変しきい値アルゴリズムは、ブロック
262 においてμ2 の値が0.2 より小さく定められたときに実施される。ERLEがブロック274 において6dBの初期最小しきい値に最初に設定された可変しきい値(VT)より6dB大きいように定められた場合、VTの値はブロック276 で修正される。ブロック276 において、VTはVTの前の値の大きい方またはERLEマイナス6dBの値に設定される。VTが設定されると、パラメータ調節ステップはこのサンプルに対して終了され、サブルーティンは点Cで出される。
【0080】
しかしながら、ブロック274 においてERLEがVTプラス6dBの値より大きくないことが決定された場合、ブロック278 でERLEが最小しきい値マイナス3dBより小さいか否かの決定が成される。ブロック278 において、最小しきい値MTの値は中間アルゴリズムで設定されたように12dBである。ERLEが最小しきい値マイナス3dBより大きい場合、パラメータ調節ステップはこのサンプルに対して終了され、サブルーティンは点Cで出される。しかしながら、ブロック278 においてERLEが最小しきい値マイナス3dBより大きくないと決定された場合、ブロック280 においてVTは12dBであるMTの値に設定される。パラメータ調節ステップはこのサンプルに対して終了され、サブルーティンは点Cで出される。
【0081】
最小しきい値を増加することによって、プロセスはエコー消去装置フィルタが適応される時に関してさらに選択的になり、いずれのフィルタからの高いERLEが必要とされることに留意すべきである。高い最小しきい値の使用は、以下図14中の状態マシン処理に関して説明されるように、二重トーク状態からハングオーバー状態にエンターするために要求される高いERLEを結果的に生じさせる。
【0082】
大きい近端部の背景雑音の存在時においてさえ、定常状態への速い転移を促進するために、本発明のエコー消去装置は最初に遠端部のスピーチ中にx(n)の入力利得を+3dBに調節する(IGain =3dB)。図5に示されているように、状態マシン180 は可変利得段170 に対する制御を行う。この初期の3dB利得は、さらに速い初期集束を可能にする近端部の雑音に関してr(n)で受信されたエコーのサイズを増大する(S/N比が3dBだけ増加する)。図7のブロック272 において最小しきい値が12dBに達すると、状態マシン180 は 100msごとに1.5 dBのステップで0dBの公称値にIGain を回復する。実験的研究において、1.5 dBの利得変化はリスナーに対して知覚不可能であることが明らにされている。この利得調節は通常遠端部のスピーチの最初の 500ms内で段階的に除去される。
【0083】
自動利得制御装置188 の制御下における可変利得段170 に関する第2の利得調節は、クリッピングを自動的に回避するように行われる。エコー消去装置がボコーダから受信するx(n)のμ法則のサンプルは、典型的に−8031乃至+8031の範囲である。ハイブリッドに向かって送られるサンプルx(n)が+8031または−8031の最大値に近い場合、ハイブリッドから戻ったサンプルは基準信号x(n)に非直線的に関連している。この問題を解決するために、本発明のエコー消去装置は、サンプルx(n)の絶対値が最大値の近くの予め設定された値、例えば7900の値より大きい時は常に入力サンプルを1.5 dBだけ減衰する(IGain =−1.5 dB)ように可変利得素子170 を自動的に制御するために自動利得制御装置188 を使用する。IGain は、消去装置が沈黙状態に入ると直ぐに0dBに回復される。近端部のリスナーに知覚不可能であるこの利得変化は通常典型的な会話において作用するが、遠端部の通話者が大声で話している場合はエコー消去装置の動作を大幅に改良する。
【0084】
再び図7を参照すると、パラメータ調節ステップが終了した後、周期関数計算ステップが実行される。図9は、周期関数計算ステップ:(1)信号x(n)およびe(n)の差動エネルギマグニチュード、(2)雑音解析の自己相関およびダービン帰納、および(3)エコー遅延を変化させることを考慮するためのタップシフトアルゴリズムで周期的に行われる3つの計算を示す。
【0085】
図9において、周期関数計算ステップはブロック 300でどの計算が実行される必要があるかに関して状態マシンの状態およびカウンタ(Fcount )から決定する関数選択ステップでスタートする。状態にかかわらず、 128個のサンプルごとにx(n)およびe(n)の差動エネルギマグニチュードが差動エネルギマグニチュード装置184 において計算される(図6)。
【0086】
DEM(x)で示された信号xの差動エネルギマグニチュードは、遠端部の通話者が話しているか否かを決定するために使用される。好ましい実施例において、DEM(x)は範囲[0,3]中の整数として与えられる。DEM(x)の値は、ブロック302 において背景雑音レベルXBi のエネルギの評価の関数である3つの計算されたしきい値と、図6のエネルギ計算装置182 から供給された信号x(n)のエネルギEx を比較することによって決定される。
【0087】
このステップにおいて、背景雑音評価は 128個のサンプルごとに計算され、制御において次の新しいXBi+1 が計算される:
【数10】
Figure 0004282915
遠端部の信号のエネルギEx は、再度これら3つのしきい値と比較される。Ex が3つのしきい値の全てより大きい場合、DEM(x)=3であり、スピーチが存在していることを示す。Ex がT1 およびT2 より大きいがT3 よりは大きくない場合、DEM(x)=2であり、発声されていないスピーチが存在している可能性があることを示す。Ex がT2 およびT3 より大きくないがT1 より大きい場合、DEM(x)=1である。最後に、Ex が3つのしきい値の全てより小さい場合、DEM(x)=0であり、スピーチが存在しないことを示す。DEM(x)の値は、差動エネルギマグニチュード装置184 から状態マシン180 に供給される。
【0088】
同様に、信号eの差動エネルギマグニチュードDEM(e)が計算され、近端部の通話者が話しているか否かを決定するために使用されている。DEM(e)はまた好ましい実施例において[0,3]の範囲の整数値として与えられる。DEM(e)は、ブロック304 において以下の3つの計算されたしきい値と図6のエネルギ計算装置182 から供給された信号e(n)のエネルギEe を比較するによって決定される:
【数11】
Figure 0004282915
e が3つのしきい値の全てより大きい場合、DEM(e)=3であり、近端部のスピーチが存在していることを示す。Ee がT3 より大きくないがT1 およびT2 より大きい場合、DEM(e)=2であり、発声されていない近端部のスピーチが存在している可能性があることを示す。Ee がT2 およびT3 より大きくなくT1 より大きい場合、DEM(e)=1である。最後に、Ee が3つのしきい値の全てより小さい場合、DEM(e)=0であり、スピーチが存在しないことを示す。DEM(e)の値は、差動エネルギマグニチュード装置184 から状態マシン180 に供給される。
【0089】
DEM(x)およびDEM(e)の値が計算されると、XBi およびEBi の値はブロック306 において式(17)および(24)に対して更新される。XBi およびEBi の両者は160000の値に初期化されることに留意すべきである。
【0090】
背景雑音レベルを追跡する差動エネルギ測定値を使用することによって、背景雑音の高いレベルでも誰かが話しているか否かの正しい決定が行われることができる。これは、正しい状態決定を行う時に図6の状態マシン180 を助ける。
【0091】
上記のように、雑音解析計算は周期関数計算ステップで行われる。関数がブロック300 で選択し、状態マシンが現在のサンプルに対して“0”の状態であることを検出したとき、現在のサンプルを含む最後の256 個のサンプルが全て状態マシンの状態“0”であるか否かに関する決定がブロック308 において行われる。そうであるならば、スピーチをボコード化するために伝統的に使用される線形予測コーディング(LPC)方法が雑音のスペクトル特性を計算するために使用される。しかしながら、これらの全てのサンプルが状態“0”でない場合、LPC方法はスキップされる。
【0092】
LPC方法は、過去のサンプルプラス励起の線形組合せによって生成されるものとして各サンプルをモデル化する。どの通話者も話していない場合、エラー信号e(n)が予測エラーフィルタ(図5の雑音解析素子166 )を通して送られ、全ての短期間冗長を除去する。このフィルタの伝達関数は以下の式によって与えられる:
【数12】
Figure 0004282915
ここで、実施例の中の予測装置の次数は5である(P=5)。
【0093】
LPC係数ai は、良く知られた効果的な計算方法であるRabiner およびSchafer 氏による文献(Digital Processing of Speech Signals)に記載されているようにブロック312 のダービンの帰納によりブロック310 の自己相関方法を使用して128 個のサンプルのブロックから計算される。最初の6つの自己相関係数R(0)乃至R(5)は次のように計算される:
【数13】
Figure 0004282915
その後、LPC係数がダービンの帰納アルゴリズムを使用して自己相関値から直接計算される。アルゴリズムは以下のように表されることができる:
【数14】
Figure 0004282915
によって与えられ、雑音解析のために使用されたフィルタの逆数である、雑音合成フィルタ(図5の雑音合成素子168 )に白色雑音を通すことによって同じスペクトル特性により生成されることができる。
【0094】
LPCコーディング技術は、実施例において雑音をモデル化する優れた方法を提供することが理解されるべきである。しかしながら、雑音をモデル化するためにその他の技術が使用されることが可能であり、或は雑音モデル化が全く使用されなくてもよい。
【0095】
周期関数計算ステップの別の関数として、タップシフトアルゴリズムがエコー遅延を変化することを示すために使用される。この計算は、ブロック314 においてERLEが10dBより大きい場合に、呼びに対する初期サンプル処理時に、およびオプション的に 256個のサンプルごとに実行される。ERLEが10dBより大きい場合、ある消去が存在しているという指示である最大タップ、すなわち初期フィルタ(図5のフィルタ156 )中の最大値のフィルタ係数がブロック316 で図6のフラット遅延計算装置190 において決定される。その後、エコー分散領域からの非常に多数の、またフラット遅延領域からの少数のサンプルを処理するためにタップのシフトがブロック318 において行われる。タップのシフトはバッファから状態フィルタおよびエコー消去装置フィルタへの、通常発生するよりもかなり多数のエコー分散領域サンプルの定められた配置である。ブロック320 において、これらのサンプルに関するエネルギ平均の再計算が実行される。タップシフトアルゴリズムが終了されるか、或は周期関数計算ステップの他の2つの計算が終了されると、ブロック322 においてFカウントがインクレメントされ、サブルーティンが出される。
【0096】
エコー遅延調節に関して、ベースステーションと電話ネットワーク中のハイブリッドにおけるエコー消去装置間の距離は、呼びによって広範囲に変化することができるため、エコー信号のフラット遅延もまた広い範囲を有する。この遅延の範囲は、米国が横断方向に3000マイルであり、電気信号が光の2/3の速度で伝播すると考えることによって迅速に評価されることができる。往復距離は6000マイルなので、最大フラット遅延はほぼ:
【数15】
Figure 0004282915
本発明のネットワークエコー消去装置は、さらに多いタップがフラット遅延領域で“消費”される代わりに、エコー分散領域で動作するように異なる呼びに認められるフラット遅延の異なる値を示す。例えば、タップシフト機構を持たない伝統的なエコー消去装置において、16msのフラット遅延は、フィルタ遅延ライン中の128 個の最も新しいサンプルが消去装置に入ったエコーサンプルと相関しないため、エコー消去装置の最初の128 個のタップをゼロに近付ける。したがって、実際のエコー信号は残っている128 個のタップによってのみ消去される。これと反対に、本発明のNECはフラット遅延が16msであることを自動的に決定し、古いサンプルについて動作するようにタップをシフトする。この方法はエコー分散領域上でさらに多数のタップを使用し、良好な消去を実現させる。
【0097】
本発明のNECは、円形バッファ(図5のバッファ154 )に遠端部のスピーチx(n)の512 個のサンプルを蓄積し、これは64msの遅延に対応する。消去装置が始動したとき、それは最初に図10に示されたように図5の初期フィルタ156 において448 個の最も新しいサンプル上の448 個のタップを適応させる。
【0098】
この位置のタップによる初期集束を得た後、アルゴリズムは最大タップ値および初期フィルタ156 のタップバッファにおけるその各位置を見出すことによってフラット遅延計算装置190 内のフラット遅延を決定する。最大タップのタップ番号(Tmax で示された)は、それが遠端部のスピーチサンプルがエコー消去装置から出力され、ハイブリッドから反射し、エコー消去装置に戻る時間なのでフラット遅延に対応する。Tmax だけタップをシフトする代わりに、アルゴリズムはエコーチャンネル応答が少し変化した場合に備えて32個のサンプルの安全な間隔を残す。実際のタップシフト値は以下のように与えられる:
shift = MAX[0,MIN(Tmax −32,256)] (36)
shift が決定されると、Tshift から始まる初期フィルタのタップは図11に示されたようなフラット遅延計算装置190 によって状態フィルタおよびエコー消去装置フィルタの両者に複写される。Tshift による円形バッファへのオフセットは、制御フィルタおよびエコー消去装置フィルタの両者のゼロ番目のフィルタタップが到達されたTshift が最も新しいサンプルの前に位置するようにサンプルと整列するために使用される。図12は、64msのエコー集束を可能にするような最大シフトを示す。タップが古いサンプルについて動作するようにシフトされた後、エネルギ測定値Ex (n)およびExx(n)は、これらの古いサンプルの二乗の合計を測定するように対応的に修正される。
【0099】
ここにおいて説明のために、3つの適応フィルタが記載されている。しかしながら、種々の構造、特にデジタル信号プロセッサにおいて、初期フィルタはまた同じ物理的メモリを使用する状態フィルタおよびエコー消去装置フィルタとして機能することが理解されるべきである。
【0100】
図7および図9の点Dで周期関数計算ステップを出た時、状態マシン制御アルゴリズムは状態マシン180 (図6)によって実行される。状態マシン制御アルゴリズムは、図13に示されたように5つの状態を有する状態マシンとしてモデル化されることができる。状態マシン180 中で行われているような状態マシン制御アルゴリズムは、結果的に新しい各サンプルにより状態の変化を生じさせることができる。
【0101】
ブロック330 における状態0は、通話者が話していない沈黙状態である。状態フィルタまたはエコー消去装置フィルタはこの状態で適応せず、エコーチャンネルからの発散を阻止する。NECが256 個の連続したサンプル時間に対して状態0のままである場合、制御フルゴリズムは図9の雑音解析ルーティンを開始し、LPC解析を使用して背景雑音の周波数特性をコード化する。
【0102】
遠端部の通話者だけが話している場合、NECはブロック332 で状態1に入力し、この状態においてフィルタは常に適応する。エコー消去装置フィルタは、いずれかのフィルタのERLEが適応しきい値VTより上である場合に適応する。雑音合成ルーティンは雑音を生成し(最後の沈黙の期間中に得られたLPC係数を使用して)、残留エコーを置換する。事実、遠端部のスピーチx(n)がどれ程大きくても、エコー残留は自動車に戻らないため、NECは状態1において無限大のERLEを有する。
【0103】
近端部の通話者だけが話している場合、NECはブロック334 の状態2に入る。ここにおいて、状態マシンは両フィルタの適応を凍結し、信号e(n)を出力する。近端部の通話者が話しを止めた場合、NECは状態0(沈黙)に転移する前に、状態4(ハングオーバー)に転移し、実施例では50msのハングオーバーである。このハングオーバーは、近端部のスピーチの可能な中断を示す。遠端部の通話者が話し始めた場合、NECは状態3(二重トーク)に転移する。
【0104】
二重トークが始まる状態3のブロック336 において、状態マシンはエコー消去装置フィルタの適応を凍結し、e(n)を出力する。ハイブリッド損失が3dBより上である場合、状態マシン制御アルゴリズムは状態フィルタが適応してエコーチャンネル衝撃応答の可能な変化を示すことを可能にする。例えば、両フィルタが集束されると仮定すると、遠端部の通話者だけが話し、エコーチャンネルは急に変化する。この状況は、例えば自動車ステーションの通話者が地上電話側の2人の人物に同時に話すように誰かが拡張電話を採用した場合に発生する可能性がある。この場合、両フィルタのERLEは突然低下し、NECは二重トーク状態にシフトし、近端部のスピーチとエコー信号を間違える。両フィルタは通常二重トーク時に凍結されるが、この場合両フィルタが適応することを許されていなければ、NECは呼びが終端するまでこの状態のままである。しかしながら、NECは状態フィルタが適応することを許されているか否かを決定するためにハイブリッド損失を使用する。状態フィルタが適応すると、そのERLEは新しいエコーチャンネルを再度獲得するため上昇し、ANECは状態3(二重トーク)から復帰する。状態図に示されているように、状態3を出る唯一の方法はハイブリッド損失が3dBより大きい場合にのみ入ることができ、状態フィルタまたはエコー消去装置フィルタのいずれのERLEが最小しきい値MTより上である状態4(ハングオーバー)を通る。
【0105】
ブロック338 の状態4は、近端部のスピーチにおける中止を示すハングオーバー状態である。遠端部の通話者が話しており、近端部のスピーチが実施例における100 msに対して検出されない場合、NECはブロック340 で状態4(ハングオーバー)から状態1(遠端部のスピーチ)に転移する。遠端部の通話者が話しておらず、近端部のスピーチが実施例において50msの期間検出されない場合、NECは状態4(ハングオーバー)から状態0に転移する。近端部のスピーチが検出された場合には制御アルゴリズムは状態2(近端部スピーチ)または状態3(二重トーク)のいずれかにNECを戻す。
【0106】
NEC状態マシン制御アルゴリズムは図14〜16に示されている。図14〜16において、アルゴリズムは現在の状態が状態1(遠端部スピーチ)であるかどうかについての予備的決定を各サンプルに対して実行する。ブロック342 において現在の状態が状態1であると決定され、Hlossの値が3dBより小さいと決定された場合、制御素子はブロック344 で値e(n)の出力を許す。この場合、前のサンプルに対して遠端部のスピーチは存在していたが、現在のサンプルに対して二重トークが存在している状況を示す。同様に、現在の状態がブロック340 、346 および348 において状態1,2および3(遠端部のスピーチ、近端部のスピーチおよび二重トーク)のいずれでもないとそれぞれ決定された場合、ブロック344 においてe(n)の値は出力されることが許され、出力制御が状態マシンによって行われる。その後NECが次のサンプルを処理する次の状態に関する決定が行われ、次の状態決定が制御状態マシンアルゴリズムの点Eで開始する。
【0107】
ブロック340 において、現在の状態が状態1(遠端部のスピーチ)であると決定され、ブロック342 においてHlossの値が3dBより大きいと決定された場合、ブロック350 において状態フィルタは適応することを許される。その後、ERLEおよびERLE1 はブロック352 および354 においてそれぞれVTに対して検査されて、いずれか一方がVTより大きい場合、ブロック356 においてエコー消去装置フィルタが適応することを許される。しかしながら、両ブロック352 および354 においてERLEおよびERLE1 がVTより大きくない場合、エコー消去装置フィルタは適応しない。いずれの場合でも、ブロック358 において合成された雑音サンプルは沈黙の最後の期間中に得られたLPC係数を使用して制御素子の制御の下に合成された雑音成分によって生成される。合成された雑音サンプルs(n)はブロック360 で出力され、出力制御が制御素子によって行われる。その後、NECが次のサンプルを処理する次の状態に関する決定が行われ、次の状態決定が点Eで開始する。
【0108】
点Eにおいて、プログラム実行は次の状態サブルーティンに入る。ブロック362 でDEM(x)の値が2の整数値以上である場合、DEM(e)が1以下であるか否かを決定するためにブロック364 において検査が行われる。DEM(e)が1以下でない場合、状態マシンはブロック366 において2の次の状態(近端部のスピーチ)に転移する。しかしながら、DEM(e)が1未満であるならば、状態マシンはブロック368 で0の次の状態(沈黙)に転移する。転移が状態2または0に対して行なわれても、ルーティンはハングオーバー決定のために状態マシン制御アルゴリズムの点Fに進む。
【0109】
しかしながら、点Eで次の状態サブルーティンに入った時、ブロック362 でDEM(x)の値が2以上であるならば、DEM(e)の値はブロック370 において3に等しいか否か決定される。そうでなければ、次の状態はブロック372 で1(遠端部のスピーチ)であると決定され、ルーティンはハングオーバー決定のために制御状態マシンアルゴリズムの点Fに進む。ブロック370 においてDEM(e)の値が3に等しいと決定された場合、ブロック374 、376 および378 においてHloss、ERLEおよびERLE1 がそれぞれ3dBより小さいが否かを決定するために検査が行われる。ブロック374 、376 および378 において値の任意の1つが3dBより小さい場合、ブロック380 において次の状態は状態3(二重トーク)であると決定される。しかしながら、ブロック374 、376 および378 において各値が3dB以上である場合、ブロック372 で次の状態は状態1(遠端部のスピーチ)であると決定される。前のようにブロック380 およびブロック372 から、ルーティンはハングオーバー決定のために制御状態マシンアルゴリズムの点Fに進む。
【0110】
ブロック340 において現在の状態が状態1(遠端部のスピーチ)でないと決定された場合、ブロック346 においてこのブロックに対するエントリィが行われて、現在の状態が状態2(近端部のスピーチ)であるか否かの決定が行われる。現在の状態が状態2である場合、ブロック382 でe(n)の値が出力される。その後、ブロック386 でDEM(x)が3に等しいか否かを最初に決定することによって次の状態に関する決定が行われ、そうならば、次の状態はブロック368 で状態3(二重トーク)に設定される。しかしながら、DEM(x)が3に等しくない場合、ブロック388 においてDEM(e)が2以上であるか否かの決定が行われる。
【0111】
ブロック388 においてDEM(e)が2以上であると決定された場合、ブロック390 で次の状態は現在の状態である状態2(近端部のスピーチ)のままに設定される。しかしながら、ブロック388 でDEM(e)が2以上でないと決定された場合、ブロック392 においてDEM(x)が1以下であるか否かの決定が行われる。ブロック392 でDEM(x)が1以下でないと決定された場合、ブロック386 において次の状態は状態3(二重トーク)に設定される。ブロック392 でDEM(x)が1以下であると決定された場合には、ブロック394 で次の状態は状態4(ハングオーバー)であるようにに設定される。さらにブロック394 において、制御素子中の内部カウンタであるHカウンタ(示されていない)は400 のHcount 値に設定される。ブロック386 、390 および394 からルーティンは、ハングオーバー決定のために制御状態マシンアルゴリズムの点Fに進む。
【0112】
ブロック346 で現在の状態が状態2(近端部のスピーチ)ではないことが決定されたならば、ブロック348 において現在の状態は状態3(二重トーク)であると決定される。現在の状態が状態3ならば、ブロック396 でe(n)の値が出力される。その後、ブロック398 でDEM(x)が3に等しいか否かを最初に決定することによって次の状態に関する決定が行われ、そうでなければ、ルーティンは上記に説明されたように状態決定のためにブロック388 に進む。しかしかながら、DEM(x)が3に等しい場合、ブロック400 においてHlossが3dBより大きいか否かの決定が行われる。ブロック400 においてHlossが3dBより大きくないならば、ブロック386 において次の状態が状態3(二重トーク)に設定される。Hlossが3dBより大きいならば、ブロック402 で状態フィルタが適応することを許される。
【0113】
状態フィルタの適応が許された時、ブロック404 においてERLEがMTより大きいか否かの決定が行われ、その後ブロック406 においてERLE1 がMTより大きいか否かの決定が行われる。ERLEまたはERLE1 のいずれがMTより大きい場合、ブロック408 における次の状態は状態4(ハングオーバー)に設定される。しかしながら、ERLE1 がMTより大きくない場合、次の状態はブロック386 における状態3(二重トーク)に設定される。ブロック408 において次の状態が状態4(二重トーク)に設定された場合、Hcount は800 に設定される。ブロック386 および408 から、ルーティンはハングオーバー決定のために状態マシン制御アルゴリズムの点Fに進む。
【0114】
ハングオーバールーティンは、近端部のスピーチ状態または二重トーク状態から遠端部のスピーチまたは沈黙の状態への転移間に遅延が発生することを確実にする。ハングオーバー決定ルーティンが点Fで入力されると、ブロック410 において現在の状態が状態4(ハングオーバー)であるか否かに関する決定が行われる。現在の状態が状態4でない場合、状態マシン制御アルゴリズムルーティンは出され、ルーティンは図7の点Aに戻る。
【0115】
ブロック410 において現在の状態が状態4であると決定された場合、ブロック412 において次の状態が状態2より小さい状態、すなわち状態1(遠端部のスピーチ)または状態0(沈黙)に設定されたか否かが決定される。ブロック412 において次の状態が状態0または1でないと決定された場合、状態マシン制御アルゴリズムサブルーティンは出され、サブルーティンは図7の点Aに戻る。しかしながら、次の状態が状態0または1であると決定された場合、ブロック414 でHcount はデクレメントされ、その後ブロック416 でHcount が0に等しいか否かの決定が行われる。Hcount が0に等しいと決定された場合、状態マシン制御アルゴリズムサブルーティンが出され、サブルーティンは図6の点Aに戻る。しかしながら、Hcount が0に等しくない場合、ブロック418 において次の状態は状態4に設定され、状態マシン制御アルゴリズムサブルーティンが出され、サブルーティンは図7の点Aに戻る。
【0116】
実施例に関して説明された多数のパラメータは、本発明の技術的範囲内で修正されることができることが理解されるべきである。例えば、ハングオーバー遅延はしきい値、しきい値レベル数またはフィルタステップサイズ値等の別のパラメータに変化されることが可能である。
【0117】
好ましい実施例の前述の説明は、当業者が本発明を形成または使用することを可能にするために行われている。これらの実施例に対する種々の修正は当業者に容易に明らかであり、またここに限定された普遍的な原理は発明の機能を使用せずにその他の実施例に適応されることが可能である。したがって、本発明はここに示された実施例に制限されるものではなく、ここに記載された原理および新しい特徴と一致した広い範囲の技術的範囲に適応される。
【図面の簡単な説明】
【図1】デジタルセル電話システムおよび地上ベースの電話システムとのインターフェイス構造例を示したブロック図。
【図2】通常のエコー消去装置のブロック図。
【図3】エコーチャンネル衝撃応答の領域を示したグラフ。
【図4】トランスバーサル適応フィルタのブロック図。
【図5】本発明のエコー消去装置の1実施形態のブロック図。
【図6】エコー消去装置のブロック図である。図5の制御装置をさらに詳細に示したブロック図である。
【図7】エコー消去のためのサンプルデータ処理のフロー図。
【図8】図7のパラメータ調節ステップに含まれるステップのフロー図。
【図9】図7の周期関数計算ステップに含まれるステップのフロー図。
【図10】円形端部のサンプルバッファおよび初期フィルタタップ位置を示した図。
【図11】タップバッファおよび初期フィルタタップの状態フィルタおよびエコー消去装置フィルタへの複写を示した図。
【図12】タップバッファおよび状態フィルタとエコー消去装置フィルタのフィルタタップ位置のサンプルに関する最大シフトを示した図。
【図13】種々のエコー消去装置の状態を示した状態マシンの図。
【図14】図7の状態マシンのステップに含まれるステップのフロー図。
【図15】図7の状態マシンのステップに含まれるステップのフロー図。
【図16】図7の状態マシンのステップに含まれるステップのフロー図。

Claims (8)

  1. 利得制御信号を受け、かつ利得制御信号にしたがって遠端信号を調節するように適応された可変利得素子(170)と、
    調節された遠端信号を記憶するバッファ(154)と、
    近端スピーチ信号(v(n))およびエコー信号(y(n))を含む近端信号からエコー信号を消去するため、前記バッファに接続された複数のトランスバーサル適応フィルタ(158、160)であって、遠端信号をフィルタ処理してエコー推定信号(yl(n))を生成し、エコー消去状態を区別するために使用される状態フィルタ(158)、および遠端信号をフィルタ処理してエコー推定信号(y^(n))を生成し、エコー消去を行うためのエコー消去装置フィルタ(160)と、
    複数のトランスバーサル適応フィルタを制御する制御装置(152)とを備え、
    前記制御装置が、前記バッファからの遠端信号を受けかつ前記可変利得素子に利得制御信号を供給する自動利得制御装置(188)を含むエコー消去システム(140)。
  2. 遠端信号と近端スピーチ信号とが同時に存在するとき、前記制御装置は状態フィルタ(158)のフィルタ係数の更新をディスエーブルすることなく、エコー消去装置フィルタ(160)のフィルタ係数の更新をディスエーブルする請求項1記載のエコー消去システム。
  3. 複数のトランスバーサル適応フィルタが異なるステップサイズを有する請求項1記載のエコー消去システム。
  4. エコー信号(y(n))と近端スピーチ信号(v(n))を合計して第1の合計を生成する合計器(144)と、
    第1の合計をハイパスフィルタ処理するハイパスフィルタ(146)と、
    ハイパスフィルタ処理された第1の合計(r(n))から状態フィルタの出力であるエコー推定信号(yl(n))を減算して第2の合計(el(n))を生成し、第2の合計を制御装置に供給する第2の合計器(150)とをさらに備えた、請求項1記載のエコー消去システム。
  5. 遠端チャンネルからの遠端信号を受け、
    遠端信号を調節し
    複数の適応フィルタ(158、160)で遠端信号をフィルタ処理し、
    近端スピーチ信号と遠端信号の両方が存在するか否かを短期間エコー復帰損失強化(ERLE)により検査し、
    近端スピーチ信号と遠端信号の両方が存在するとき、複数の適応フィルタのうち第2の適応フィルタ(158)のフィルタ係数の更新をディスエーブルすることなく、第1の適応フィルタ(160)のフィルタ係数の更新をディスエーブルすることを含むエコー消去を制御する方法。
  6. 複数の適応フィルタ(158、160)の第2の適応フィルタ(158)を使用して遠端信号をフィルタ処理することによってエコー推定信号yl(n)を生成し、
    近端スピーチ信号v(n) およびエコー信号y(n)の結合された信号r(n)からエコー推定信号yl(n)を減算して第1のエコー残留信号el(n)を生成し、
    第1のエコー残留信号el(n)に基づいて、第1の適応フィルタ(160)により遠端信号をフィルタ処理することによってエコー推定信号y^(n)を生成し、
    第1の適応フィルタからのエコー推定信号y^(n)を前記信号r(n)から減算して第2のエコー残留信号e(n)を生じることをさらに含む請求項5記載の方法。
  7. 遠端信号x(n)のエネルギE(n)を測定し、
    結合された信号r(n)のエネルギE(n)を測定し、
    遠端信号エネルギと結合された信号エネルギとの比を形成し、
    比を第1のしきい値と比較し、
    比が第1のしきい値より大きいなら第2の適応フィルタ(158)のフィルタ係数を更新し、
    比が第1のしきい値以下なら第2の適応フィルタ(158)のフィルタ係数の更新を保留することをさらに含む請求項6記載の方法。
  8. 第1の適応フィルタ(160)に対する第1のエコー復帰損失強化ERLE(n)を決定し、
    第2の適応フィルタ(158)に対する第2のエコー復帰損失強化ERLEl(n)を決定し、
    第1のエコー復帰損失強化を第2のしきい値と比較し、
    第2のエコー復帰損失強化を第3のしきい値と比較し、
    第1のエコー復帰損失強化ERLE(n)が第2のしきい値を越えるか、第2のエコー復帰損失強化ERLEl(n)が第3のしきい値を越えるなら、第1の適応フィルタ(160)のフィルタ係数を更新することをさらに含む請求項7記載の方法。
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