JP4279644B2 - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は磁気記録媒体(以下、単に「媒体」とも称する)の製造方法に関し、詳しくは、磁気記録媒体原反を真空中で処理する工程を含む磁気記録媒体の製造方法に関する。
磁気記録媒体の一種として、非磁性基体(ベース)上に、蒸着により金属薄膜を形成してなる、いわゆる蒸着型磁気記録媒体がある。蒸着型媒体は、塗布型媒体に比して、バインダを含まないために磁性層の充填率が高く、飽和磁化を大きくすることが可能であり、また、薄膜化が可能であるために短波長の記録に対しても記録減磁を抑えることができるなど、高密度記録において有利であるという利点を有している。
上記蒸着工程は、一般に、真空チャンバー内で行われ、蒸着後の磁気記録媒体原反(以下、単に「原反」とも称する)は、ロール状に巻き取られた状態で、真空状態の真空チャンバー内を開放することにより大気で常圧に戻してから、真空チャンバー内から大気中に取り出されて、その後の工程に供される。かかる蒸着型媒体の改良に係る技術は、例えば、特許文献1等に記載されている。
特開平7−110930号公報
ところが、真空中での蒸着工程後に、ロール状に巻き取った磁気記録媒体原反を大気中で再度走行させると、原反の、被蒸着面とは反対側のベース面がガイドロールに貼り付いてしまい、走行位置にズレが生じて、原反にシワが発生する場合があった。シワの発生はエラーの原因となり、また、ひどい場合には生産を停止せざるを得ない場合もあることから、この問題を解消することが求められていた。これに対し、例えば、ガイドロールの表面を粗面化して、接触対象物である原反のベース面との間の摩擦を低下させることも考えられるが、走行に支障を来さない程度の粗面化では、貼り付きを十分に防止できるものではなかった。
そこで本発明の目的は、真空中でロール状に巻き取った磁気記録媒体原反を大気中で走行させる際における、原反のガイドロールに対する貼り付きを防止して、エラーの原因となるシワの発生を防止した磁気記録媒体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、貼り付きの発生には原反のベース面が保有する水分(ベース表面の吸着水)が関与しており、この水分のために走行時にベース表面がガイドロールに貼り付いて、走行位置の微少な変化を調整することができずに、原反にシワが生じてしまうのであろうことを見出した。ベースが保有する水分は、真空中から大気中に移される際に、大気中の水分が一気に入り込んだものであると考えられる。特に、真空中で巻き取られる原反は、蒸着時等における熱負け防止のために冷却キャンで冷却されて冷えていることが多く、この場合さらに水分が吸着(凝集)し易くなる。
このような観点から検討した結果、本発明者らは、真空中から取り出した原反の保有する水分を減圧により除去し、かつ、減圧で蒸発せずにベース表面に吸着したままの氷結した水分を、乾燥ガスにより真空度を下げることで融解させ、ガス中に蒸発させて、ベース面に吸着した水分を除去することで、上記問題を解消できることを見出して、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の磁気記録媒体の製造方法は、長尺状の磁気記録媒体原反を真空チャンバー内で蒸着法により非磁性基体の一方の面上に磁性層を設けて形成し、ロール状に巻き取ってロール状原反とし、
該ロール状原反を該真空チャンバー中から大気中に取り出した後、該ロール状原反を繰り出すことで、該原反を大気中で走行させるに先立って、
前記ロール状原反を処理用チャンバー内に載置し、載置した状態で、該ロール状原反に対し、該処理用チャンバー内の気体を吸引して真空にした後、該処理用チャンバー内に乾燥ガスとして窒素ガスを導入する乾燥ガス処理を行い、しかる後、
該ロール状原反を前記処理用チャンバーから大気中に取り出し、原反を繰り出してガイドロールを介して大気中で走行させることを特徴とするものである。
本発明における前記ロール状原反は、前記乾燥ガス導入後、前記処理用チャンバー内で少なくとも6時間保持することが好ましく、前記処理用チャンバー内の、前記真空時および前記乾燥ガス導入後の気圧は夫々、1×10-1〜1×10+2Paの範囲内、および、1×10+4〜1×10+5Paの範囲内とすることが好ましい。さらに、前記乾燥ガス処理の回数は、好適には、1〜3回にて行うことができる。
本発明によれば、真空中から大気中に取り出したことにより原反中に吸着された水分を除去するとともに、水分が除去されたままの状態で、原反を大気中での工程に供することができるので、ベース面に水分が吸着することがなく、その後の大気中での走行時においてもガイドロールに対する原反の貼り付きが生ずることはない。従って、原反におけるシワの発生を防止して、エラー上昇の問題のない磁気記録媒体を製造することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明においては、長尺状の磁気記録媒体原反を真空チャンバー内でロール状に巻き取って、真空チャンバー中から大気中に取り出した後、このロール状原反を繰り出して原反を大気中で走行させるに先立って、ロール状原反に対して、所定の乾燥ガス処理を行うことが重要となる。
具体的には、ロール状原反を処理用チャンバー内に載置した状態で、処理用チャンバー内の気体を吸引して真空にした後、この処理用チャンバー内に乾燥ガスを導入する。即ち、まず、処理用チャンバー内を減圧することにより原反に含まれる水分を蒸発させて、原反からある程度の水分を除去する。その後、乾燥ガスを導入することで、真空下で氷結して蒸発していなかった水分を溶かして、乾燥ガス中にさらに蒸発させることができるので、再度の水分の吸着を生ずることなく、原反を大気圧に近い状態に戻すことができる。また、乾燥ガスの導入により低真空度となった状態でロール状原反を大気中に開放することで、それ自体水分を含んだ大気が巻かれたロール状原反の内部に侵入するのを防止することができるので、ロール状原反の内部にも水分を吸着させることがない。そのため、その後の大気中での走行時においても原反のベース面の貼り付きの問題を生ずることがなく、良好に磁気記録媒体の製造を行うことが可能となるのである。従って、本発明に係る乾燥ガス処理に供する「原反」とは、非磁性基体の一方の面上にのみ磁性層等が形成され、他方の面はベース面となっている状態のものを意味する。
本発明において真空とは、好適には、1×10-1〜1×10+2Pa程度である。1×10+2Paよりも低真空度であると、原反が保有する水分が蒸発しにくく、短時間では十分な効果が得にくい。一方、1×10-1Paより高真空度にしても、水分が氷結して、それ以上蒸発しなくなるので、得られる効果は変わらない。また、乾燥ガス導入後の気圧としては、好適には、1×10+4〜1×10+5Pa程度である。1×10+4Paよりも高真空度であると、処理用チャンバー内から大気中に取り出した際に水分を含んだ大気がロール状原反の内部まで侵入し、再度水分吸着が起こるおそれがある。処理用チャンバー内の気圧を大気圧よりやや低く保つことにより、処理用チャンバー本体とその蓋部が間のパッキンを介して強く押圧し合って、パッキンの隙間からの処理用チャンバー内への大気の侵入を防止することができる。
本発明に用いる乾燥ガスとしては、窒素、アルゴン、水素、ヘリウム、有機ガスなどを挙げることができ、実質的に水分を含まないものを用いる。中でも、取扱い性に優れ、安価で安全(安定)な窒素ガスを用いることが好ましい。酸素を含むガスは、原反上に形成された金属薄膜等の酸化を引き起こすおそれがあるため、好ましくない。例えば、ボンベに高圧充填されている市販品の窒素ガス(例えば、純度で99%以上のもの)等は、実質的に水分を含まないガスとして使用することができる。
また、ロール状原反は、乾燥ガス導入後、処理用チャンバー内で少なくとも6時間保持することが好ましく、6〜24時間程度が最適である。保持時間が短すぎると、乾燥ガスが十分にロール状原反の内部に浸透することができず、ロール状原反の内部のベース面に吸着している水分が溶解、蒸発しない。一方、長すぎても問題は生じないが、それ以上の効果は得られない。
この乾燥ガス処理を行う回数は、好適には、1〜3回程度である。4回以上行っても問題はないが、それ以上の効果は得られない。
図1に、本発明に係る乾燥ガス処理に使用可能な処理用チャンバーの一例の概略斜視図を示す。図示する処理用チャンバー10は、処理用チャンバー本体11と、ロール状に巻き取られた原反1を固定するためのロール固定部12とを備えており、処理用チャンバー本体11には、真空引きを行うための減圧口13と、乾燥ガスの導入口14とが設けられている。処理用チャンバー本体11は、内部にロール状原反1が収納可能な寸法を有し、密閉可能に形成されているものであれば、図示する形状、構造には限定されない。また、ロール固定部12についても、ロール状原反1を処理用チャンバー本体11内で固定することができるものであれば、図示する例には限定されない。生産性を考慮しなければ、ロール状に巻き取りを行った際の真空チャンバーをそのまま処理用チャンバーとして用いることも可能である。
本発明は、磁気記録媒体の製造に際して、真空中での工程後に、大気中での工程を行う場合に適用される技術であり、真空中での工程とは、磁性層としての金属薄膜の蒸着工程のみならず、その磁性層上に形成される炭素を主成分とする硬質膜、いわゆるDLC膜の形成工程や、種々の目的で適宜行われるスパッタやCVD処理工程など、真空中で行われるあらゆる工程を含む。さらに、塗布型の磁気記録媒体においても、真空中に保持して残留溶剤を蒸発させる等の、真空中での工程を含む場合には、本発明を適用することができる。特に、真空中での工程において、原反が冷却キャン等により冷却される場合には、原反は冷却されて水分をより吸着しやすい状態にあるので、本発明の適用がより効果的である。また、大気中での工程とは、例えば、金属薄膜からなる磁性層およびDLC膜の成膜後に、被成膜面とは反対側のベース上にバックコート層を形成するための塗布工程などが挙げられる。
ここで、本発明において「炭素を主成分とする」とは、膜における炭素含有量が60〜80原子%であることを意味し、炭素の他に、通常、水素が含まれる。水素と炭素との原子比(H/C)は0.25〜0.66の範囲内であることが好ましい。また、「硬質膜」とは、具体的にはビッカース硬度が6370N/mm2(650kg/mm2)以上の膜を意味し、この硬度を屈折率の値で表すと1.9以上である。このような屈折率を有する膜は、その屈折率から硬度を近似できることがわかっている。例えば、屈折率が1.9のときのビッカース硬度は6370N/mm2(650kg/mm2)である。屈折率の上限には特に制限はないが、2.25程度であり、ビッカース硬度29400N/mm2(3000kg/mm2)に対応する。屈折率から硬度を近似する方法としては、硬質膜についてエリプソメーターにて屈折率を測定し、一方で微小硬度計(NEC(株)製)によりビッカース硬度を測定して、あらかじめ検量線を作製しておく方法を用いることができ、これにより屈折率から硬度を知ることができる。また、このような硬質膜は、非晶質またはそれに近い連続相を形成し、ラマン分光分析において、1560cm-1と1330cm-1にブロードなピークを有する。本発明においては、このような「炭素を主成分とする硬質膜」の意味で、「DLC膜」の語を用いる。
本発明においては、上記乾燥ガス処理に係る以外の磁気記録媒体の製造工程の詳細や用いる材料等については特に制限されるものではなく、常法に従い適宜選択して行うことができるが、例えば、以下のような構成とする。
非磁性基体としては、金属薄膜の蒸着工程に耐えられるものであればいかなるものであってもよく、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン等のフィルムが挙げられる。その厚さは、磁気記録媒体が使用される用途により適宜選択されるが、例えば、磁気記録媒体がデータテープとして使用される場合には、記録容量やシステム要求値に合わせて選択され、通常は3〜10μmである。
磁性層の磁性材料としては、Co、Fe等の純金属、または、Co−Ni、Co−Fe、Co−Ni−Fe、Co−Cr、Co−Cu、Co−Ni−Cr、Co−Pt、Co−Pt−Cr、Co−Cr−Ta、Co−Ni−B、Co−Ni−Fe、Co−Fe−B、Co−Ni−Fe−B等の合金類を使用することができ、特には、CoまたはCo合金を用いることが、電磁変換特性の観点から好適である。通常は、非磁性基体上にこのような磁性材料を直接か、または、非磁性基体にNiを蒸着した後で蒸着して、磁性層を形成する。磁性層の蒸着は、蒸着用チャンバー内を1.33×10-4Pa(10-6Torr)程度にまで排気した後、磁性材料を電子銃にて溶融し、磁性材料全体が溶融した時点で溶融した磁性材料と非磁性基体とを遮断する遮蔽板を取り除き、冷却キャン(ドラム)に沿って走行させている非磁性基体に対し、冷却ドラム上にて蒸着を開始する。この際、磁気特性を制御するために、酸素、オゾン、亜酸化窒素から選ばれる酸化性ガスを磁性層に導入する。
前述したように、磁性層上には、通常、劣化防止等の目的で、DLC膜が設けられる。かかるDLC膜の成膜手法としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、プラズマCVD法、イオン化蒸着法およびスパッタ法のうちのいずれかを用いる。
このうちプラズマCVD法の詳細については、例えば、特開平4−41672号公報等に記載されている。プラズマCVD法におけるプラズマは、直流、交流のいずれであってもよいが、交流を用いることが好ましい。交流を用いる場合、数ヘルツのものからマイクロ波帯域のものまで適宜利用可能である。また、「ダイヤモンド薄膜技術」(総合技術センター発行)などに記載されているECRプラズマを利用することもできる。
DLC薄膜をプラズマCVD法により形成する場合、原料ガスには、CおよびHを含む化合物を用いることが好ましいが、Cを含む化合物とHを含む化合物とを併せて用いることもできる。CおよびHを含む化合物としては、例えば、CH4、C24、C26、C38、C66等の炭化水素が、Cを含む化合物としては、例えば、CO、CO2等が、Hを含む化合物としては、例えば、H2、H2O、NH3等が挙げられる。また、CおよびHのいずれも含まない化合物、例えば、NO、NO2、N2OなどのNOxで表される化合物やN2等を、必要に応じて併用してもよい。
プラズマCVDを行う際の原料ガスの流量は、原料ガスの種類に応じて適宜決定すればよい。動作圧力は、通常、1.33〜66.5Pa(0.01〜0.5Torr)とする。
DLC膜の成膜後には、膜表面と潤滑剤との親和性を高めるために、プラズマにより表面活性化処理を行うことが好ましい。この表面活性化処理は、酸素かまたは酸素を含むガスを用いて行うことが好ましく、例えば、酸素、空気、炭酸ガスなどを用いることができる。後処理の方法としては、上述したような、DLC膜成膜時におけるのと同様の手法を用いることが実用的であり、好ましい。表面活性化処理における周波数としては、DLC膜成膜時と同様の1kHz〜40MHz程度が好適であり、特に、50kHz〜13.56MHzの範囲内であると、効果が発現しやすい。
DLD膜上には、走行時における摩擦係数の低減を図るために、通常、潤滑層を設ける。かかる潤滑層の潤滑剤成分としては、フッ素樹脂を含む潤滑剤、炭化水素系のエステル、またはこれらの混合物等を用いることができる。具体的には、例えば、基本構造として、R1−A−R2で表されるものが挙げられる。ここで、
1:CF3(CF2n−、CF3(CF2n(CH2m−、CH3(CH2p−、またはHであり、
A:−COO−、−O−、またはCOOCH(Cp2p+1)CH2COO−であり、
2:CF3(CF2n−、CF3(CF2n(CH2m−、CH3(CH2p−、またはHである。但し、R1とR2とは異なり、n=7〜17、m=1〜3、p=7〜30を満足するものが好ましい。さらに、R1および/またはR2が直鎖のものであれば、潤滑効果が大きい。nが7より小さいと撥水効果が低く、また、nが17より大きいと、潤滑剤と非磁性基体またはバックコート層とのブロッキング現象が起こり、摩擦が低くならない。これらの中でも、特にフッ素樹脂を含む潤滑剤が好ましい。さらに、これら潤滑剤は2種以上混合して用いてもよい。
潤滑層の形成に際しては、上記潤滑剤をケトン類、炭化水素類、アルコール類などの溶剤に溶解させて、潤滑層塗布液を調製する。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチルケトン等が挙げられる。炭化水素類としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等のノルマル系、iso系等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。調製された潤滑層塗布液を、DLC膜上に塗布し、乾燥することにより、潤滑層を形成することができる。潤滑層の厚みは、数nm程度である。また、潤滑剤成分の量は、塗布液の濃度により調整することができる。
さらに、本発明においては、所望に応じ、磁性層と非磁性基体との間に下地層を設けてS/N特性の改善を図ることができる。下地層は、非磁性または非磁性に近い層であり、磁性層と同様の手法で、膜厚に対する酸素の導入量を増加させることにより形成することができる。下地層の具体的な成膜条件、例えば、成膜時の非磁性基体の搬送速度、導入酸素量等については、慣用に従い適宜定めることができ、特に制限されるものではない。特には、成膜時の供給ガスとして、酸素のみでなく、酸素中にAr等の不活性ガスおよび窒素のうちの少なくとも1種を含有するガスを用いることが好ましく、これにより、S/N特性のさらなる向上を図ることができる。これは、不活性ガスの存在により下地層が粒子状に成長してミクロな凹凸が大きくなるため、この下地層上で成長する磁性層が膜面内により強く配向して、保磁力が高くなることに起因するものと考えられる。
また、非磁性基体の上記磁性層およびDLC膜形成面の反対側の面には、バックコート層を設けることができる。バックコート層は、結合剤樹脂と無機化合物および/またはカーボンブラックとを有機溶媒に混合分散させたバックコート層用塗料を、磁性層とは反対側の基材表面に塗布することにより形成され、塗料組成としては、この種の磁気記録媒体に用いられるものであればいずれのものも使用できる。例えば、結合剤樹脂としてはニトロセルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂等であり、これらを単独または混合して、媒体の特性、工程条件により適宜選択して用いることができる。カーボンブラックとしてはファーネスカーボンブラック、サーマルカーボンブラック等を挙げることができ、無機化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、アルミナ、α−酸化鉄等を挙げることができる。これら粒子は媒体に要求される電気抵抗、摩擦特性等から粒子サイズを適宜選択すればよい。有機溶剤は、ケトン系や芳香族炭化水素系等、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサノン等を用いることができ、使用する結合剤樹脂の溶解性を考慮して適宜選択すればよい。バックコート層の厚みは、0.1〜1.0μm、特には、0.3〜0.6μmが好ましい。
実施例1
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
気圧1×10-2Paの真空チャンバー内で、厚み4.7μmのPENの非磁性基体の原反を走行させながら、その一方の面上に、膜厚200nmにて、蒸着法により、酸素を導入しながら100%Coを同方向で2層成膜して、磁性層を形成した。得られた磁性層は、Mr・t=62mA(6.2memu/cm2、Mr:残留磁化、t:磁性層の厚さ)、Hc=119.4kA/m(1500 Oe)であった。次いで、この磁性層上に、下記に示す条件で、DLC膜を厚み0.01μmで成膜した。
(DLC膜の成膜手法):プラズマCVD法(RF)
(イオン源):エチレンガス
(ガス流量):10sccm
(放電周波数):50kHz
さらに、膜表面の潤滑剤に対する親和性を高めるために、DLC膜に対し、酸素ガスを用いたプラズマによる後処理を行った。その後、原反をロール状に巻き取って、真空チャンバー内から取り出した(大気圧:1atm=1.01×10+5Pa)。
次いで、非磁性基体の磁性層形成面とは他方の面上にバックコート層を形成するに先立って、DLC膜までが形成されたロール状原反1を、図1に示す処理用チャンバー10内に、ロール固定部12により固定して載置した。真空ポンプ(図示せず)により、減圧口13を介して処理用チャンバー10内の気体を吸引して、6.7×10-1Pa(5.0×10+2Torr)まで真空引きした後、乾燥ガス導入口14より処理用チャンバー10内に6.7×10+4Pa(5.0×10+7Torr)まで乾燥窒素ガスを導入して、12時間保持した。
次いで、処理用チャンバー10から取り出したロール状原反1を繰り出して、原反を金属ガイドロールを介して走行させながら、その磁性層形成面とは他方の面上に、以下の組成のバックコート層分散液を、ダイノズル法により、乾燥後の厚みが0.4μmとなるように塗布し、乾燥して、バックコート層を形成した。この際の走行性を評価した結果を、下記の表1中に示す。
(バックコート層の組成)
カーボンブラック(粒径80nm) 50重量部
炭酸カルシウム(粒径70nm) 50重量部
ニトロセルロース(Nc)(旭化成工業(株)製 BTH1/2S)40重量部
ポリウレタン樹脂(東洋紡績(株)製 UR−8300) 60重量部
MEK 800重量部
トルエン 640重量部
シクロヘキサノン 160重量部
ポリイソシアネート(固形分50%)(日本ポリウレタン工業(株)製 コロネートL)
40重量部
その後、原反のDLC膜上に、潤滑剤塗布液をダイノズル法により塗布し、乾燥して、潤滑層を形成した。潤滑剤塗布液は、以下に示す潤滑剤成分としてのコハク酸誘導体の含フッ素化合物と脂肪族エステルの含フッ素化合物とを、同一重量でMEK/ヘキサン/エタノール=1/2/7の混合溶媒中に溶解させて、潤滑剤合計濃度が0.5重量%となるようにして作製した。以上のようにして磁気記録媒体を作製した。
(潤滑剤成分)
HOOCCH(C1837)CH2COOCH2CH2(CF27CF3
CH3(C1224)COOCH2CH2(CF27CF3
実施例2〜4
真空引きの際の気圧、乾燥窒素ガスを導入した際の気圧およびその保持時間を夫々下記の表1中に示すように変えた以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製し、走行性の評価を行った。
実施例5
処理用チャンバー10を用いた処理を2回行った以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製し、走行性の評価を行った。
比較例1
処理用チャンバー10を用いた処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製し、走行性の評価を行った。
比較例2
処理用チャンバー10内を真空引きした後、乾燥窒素ガスの導入を行わずに大気中に開放した以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作製し、走行性の評価を行った。
Figure 0004279644
*)○:シワ発生なし
△:ごく僅かにシワが発生(エラーに影響なし)
×:シワ発生(エラーに大きく影響)
上記表1の結果からわかるように、真空下においた後、乾燥ガスを導入する乾燥ガス処理を行った実施例の磁気記録媒体原反においては、シワの発生がほとんどまたは全くない。また、実施例3、4の結果からは、真空度が低いと原反に吸着された水分が抜けにくいため、また、窒素を導入した際の気圧が低いとロール状原反の内部にあるベース面に吸着した水分が蒸発しにくいため、夫々、ややシワの発生が見られることがわかる。さらに、比較例2の結果からは、乾燥ガスの導入を行わずに大気中に開放すると、再度水分の吸着が起こるため、結果としてシワの発生防止効果は得られないことがわかる。
本発明に係る乾燥ガス処理に使用可能な処理用チャンバーの一例を示す概略斜視図である。
符号の説明
1 磁気記録媒体原反(ロール状原反)
10 処理用チャンバー
11 処理用チャンバー本体
12 ロール固定部
13 減圧口
14 乾燥ガス導入口

Claims (4)

  1. 長尺状の磁気記録媒体原反を真空チャンバー内で蒸着法により非磁性基体の一方の面上に磁性層を設けて形成し、ロール状に巻き取ってロール状原反とし
    該ロール状原反を該真空チャンバー中から大気中に取り出した後、該ロール状原反を繰り出すことで、該原反を大気中で走行させるに先立って、
    前記ロール状原反を処理用チャンバー内に載置し、載置した状態で、該ロール状原反に対し、該処理用チャンバー内の気体を吸引して真空にした後、該処理用チャンバー内に乾燥ガスとして窒素ガスを導入する乾燥ガス処理を行い、しかる後、
    該ロール状原反を前記処理用チャンバーから大気中に取り出し、原反を繰り出してガイドロールを介して大気中で走行させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  2. 前記ロール状原反を、前記乾燥ガス導入後、前記処理用チャンバー内で少なくとも6時間保持する請求項記載の磁気記録媒体の製造方法。
  3. 前記処理用チャンバー内の、前記真空時の気圧が1×10-1〜1×10+2Paの範囲内であり、前記乾燥ガス導入後の気圧が1×10+4〜1×10+5Paの範囲内である請求項1または2記載の磁気記録媒体の製造方法。
  4. 前記乾燥ガス処理を1〜3回行う請求項1〜のうちいずれか一項記載の磁気記録媒体の製造方法。
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