JP4278996B2 - ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主面のステップをバンチングさせた単結晶サファイヤ傾斜基板及びその製造方法に関し、特に、SAWフィルタのように量子構造を組み込んだデバイスに適したステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から単結晶サファイヤ傾斜基板の表面上に量子細線を形成できることが知られている(特許文献1参照)。以下、特許文献1の内容を引用して説明する。サファイア単結晶基板の最表面は、超平坦な原子面(テラス面)となっているので、温度及び雰囲気等の条件を適正に制御した成膜条件下では、テラス面に付着した薄膜構成原子がテラス面上で核形成することなく、テラス上を拡散してステップサイトにトラップされ、結晶化される。その結果、ステップに沿って薄膜構成原子が配列される。このとき、テラス上での薄膜の被覆率を1以下にすると、線幅が数nm〜数十nmの量子細線がサファイア単結晶基板上に作製される。これにより、絶縁性,放熱性,耐放射線性,耐熱性,耐化学性等に優れたサファイア基板の上に量子構造を組み込んだデバイスの作成が可能となる。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−83802号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の熱処理方法(特許文献1)により得られる単結晶サファイヤ傾斜基板を用いてSAWフィルタを製作しても、SAWフィルタは、デバイスとして機能しないという問題点がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、例えばSAWフィルタのように量子構造を組み込んだデバイスに適したステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板を提供することである。
【0006】
本発明者らは、上記課題の原因を追及した結果、従来の熱処理方法により得られた単結晶サファイヤ傾斜基板は、シングルステップであることから金属細線の膜厚が薄く、シート抵抗が急激に増加してしまい、その結果SAWフィルタとして機能しないという知見を得た。そこで、本発明者らは、さらに、研究を重ねた結果、単結晶サファイヤ傾斜基板のバンチング現象に着目し、ステップバンチングを制御するという着想に至った。ステップバンチは、シングルステップよりステップ高さが高いため、ステップバンチを制御すれば、SAWフィルタの櫛形電極を形成する際、シート抵抗が適当になるような金属細線の膜厚を確保することができるためである。
【0007】
上記着想に基づいたさらなる研究の結果、本発明者らは、所望のステップバンチを備えた単結晶サファイヤ傾斜基板の製造に成功し、請求項1乃至請求項7の発明を完成した。
【0008】
請求項1記載の発明は、単結晶サファイヤの所定の結晶軸を所定方位に向けて所定角度傾斜させた単結晶サファイヤ傾斜基板において、前記所定方位と前記単結晶サファイヤ傾斜基板の傾斜方位との回転ズレ角度が、前記単結晶サファイヤ傾斜基板の主面の法線を回転軸とする回転方向に対して±0.1°以下であり、前記単結晶サファイヤ傾斜基板の主面に、直線状に配列した小孔又は小突起を、前記単結晶サファイヤ傾斜基板の前記所定方位に対して垂直方向にストライプ状に配列し、前記主面の傾斜角度に応じて熱処理時間及び加熱温度を制御してステップをバンチングさせて形成された原子層2層分以上原子層500層分以下の高さを有する直線状のステップバンチを備えたSAWフィルタ用ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板である。
【0009】
所定方位は、加工の際、単結晶サファイヤ傾斜基板の主面を傾斜させたい方位、即ち、傾斜させたい目標の方位である。傾斜方位は、単結晶サファイヤ傾斜基板が実際に傾斜している方向である。回転ズレ角度は、単結晶サファイヤ傾斜基板の主面の法線を回転軸として、所定方位に対する傾斜方位の回転方向のズレ角度である。回転ズレ角度は、回転方向に対して±0.1°以下であればよいが、回転方向に対して±0.05°以下が好ましい。回転ズレ角度が±0.1°を超えると、例えば、所定の結晶軸をc軸とし、所定方位をm軸とした場合、生成されるステップバンチのステップエッジの直線性が損なわれるためである。
【0015】
小孔又は小突起は、熱処理中に原子の移動をピン止めする働きを有するため、小孔又は小突起を所定方位に対して垂直に配列した場合、直線性に優れたステップバンチが生成される。また、小孔又は小突起の配列間隔を調整することによってステップバンチの高さを制御することができる。
【0017】
小孔又は小突起がストライプ状に配列されているため、ステップバンチもこの小孔又は小突起の配列に応じてストライプ状に形成される。また、ストライプの間隔を変えることにより所望のストライプ間隔のステップバンチが生成される。
【0019】
「原子層」における原子とは、サファイヤを構成するアルミニウム原子や酸素原子である。
【0020】
請求項2記載の発明は、単結晶サファイヤの所定の結晶軸を所定方位に向けて所定角度傾斜させた単結晶サファイヤ傾斜基板において、前記所定方位と前記単結晶サファイヤ傾斜基板の傾斜方位との回転ズレ角度が、前記単結晶サファイヤ傾斜基板の主面の法線を回転軸とする回転方向に対して±0.1°以下であり、前記単結晶サファイヤ傾斜基板の主面に、直線状に配列した小孔又は小突起を、前記単結晶サファイヤ傾斜基板の前記所定方位に対して垂直方向にストライプ状に配列し、前記主面の傾斜角度に応じて熱処理時間及び加熱温度を制御してステップをバンチングさせて形成された0.4nm以上100nm以下の高さを有する直線状のステップバンチを備えたSAWフィルタ用ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板である。
【0023】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記主面が、c面からa軸又はm軸方向に向けて0.05°以上1.0°以下の範囲で傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載のSAWフィルタ用ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板である。
【0024】
c面基板は、ステップエッジの原子密度が大きいため、直線性に優れたステップバンチが生成されやすい。
【0026】
ステップバンチの高さをH、ステップ間隔(テラス幅)をw、単結晶サファイヤ傾斜基板の傾斜角度をθとすると、それぞれの関係は、θ=arctan(H/w)で表される。この式は、傾斜角度が大きいほどテラス幅が小さくなることを示しており、傾斜角度が大きい単結晶サファイヤ傾斜基板は、熱処理時において原子の移動距離が短くてすむため、低温でステップバンチを生成しやすい。
【0027】
傾斜角度が0.05°より小さいと、ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板をSAWフィルタに使用する場合、テラス幅が広くなりすぎるためである。一方、傾斜角度が1.0°を越えると、ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板をSAWフィルタに使用する場合、テラス幅が狭くなりすぎるためである。また、傾斜角度が1.0°を越えると、生成されるステップバンチが乱れやすくなる。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記主面が、a面又はm面又はr面から所定角度傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載のSAWフィルタ用ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板である。
【0029】
例えば、a面基板は、シングルステップの高さhが高いため、c面に比べて高いステップバンチが生成される。
【0032】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板上に、前記主面のステップエッジに沿ってZnO細線を形成し、該ZnO細線のエッジに沿って金属細線を形成し、前記金属細線からなる櫛形電極を形成したことを特徴とするSAWフィルタである。
【0033】
請求項6記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板上に、前記主面のステップエッジに沿って金属細線を形成し、前記主面をZnO膜で覆い、前記金属細線からなる櫛形電極を形成したことを特徴とするSAWフィルタである。
【0034】
単結晶サファイヤ傾斜基板の主面にAl等の導電膜を成膜すると、線幅が数nmから数十nmの金属細線がステップエッジに沿って形成される。これは、テラス面に付着した薄膜構成原子がテラス面上で核形成することなく、テラス上を拡散してステップサイトにトラップされ、結晶化するためである。この結果、ステップに沿って薄膜構成原子が配列し、量子細線が形成される。
【0035】
請求項7記載の発明は、単結晶サファイヤの所定の結晶軸を所定方位に向けて所定角度傾斜させた単結晶サファイヤ傾斜基板の製造方法において、前記所定方位と前記単結晶サファイヤ傾斜基板の傾斜方位との回転ズレ角度を、前記単結晶サファイヤ傾斜基板の主面の法線を回転軸とする回転方向に対して±0.1°以下とし、前記単結晶サファイヤ傾斜基板の主面に、小孔を直線状且つ前記単結晶サファイヤ傾斜基板の前記所定方位に対して垂直方向にストライプ状に配列し、前記主面の傾斜角度に応じて熱処理時間及び加熱温度を制御してステップをバンチングさせ、原子層2層分以上原子層500層分以下の高さを有する直線状のステップバンチを形成することを特徴とするSAWフィルタ用ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板の製造方法である。
【0037】
ステップのバンチングは、シングルステップのテラス上の原子が熱によってステップエッジ方向に拡散すると共に、不安定なステップエッジ部から原子が昇華することによって生じる現象である。
【0038】
ステップをバンチングさせるためには、シングルステップの得られる加熱温度に対して約100℃以上約500℃以下、好ましくは約100℃以上約300℃以下、より好ましくは約150℃以上約200℃以下の高い温度で熱処理するとよい。
【0041】
【発明の実施の形態】
本実施形態に係るステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板について説明する。図1及び図2に示すように、このステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板1は、c軸が主面の法線に対してm軸方向に所定角度θ傾斜しており、c面(0001)がm面(10-10)方向に所定角度θ傾斜した面を主面とする基板である。
【0042】
ステップバンチ5の高さHとステップ2の高さhは、式(1)の関係があり、また、ステップバンチの高さHとステップ間隔(テラス幅)wと主面の傾斜角度θ(所定角度θ)は、式(2)の関係がある。
H=nh (n:ステップの数)・・・(1)
θ=arctan(H/w)・・・・・・・・(2)
【0043】
ステップバンチ5の高さHは、用いられる基板の用途や基板の傾斜角度θによって異なるが原子層2層分以上原子層500層以下の範囲又は0.4nm以上100nm以下の範囲が好ましい。また、傾斜角度θは、傾斜方位にもよるが、c軸をm軸方向に傾斜させる場合、0.05°以上1.0°以下の範囲が好ましい。
【0044】
このステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板1は、図3に示す単結晶サファイヤの所定の結晶軸(c軸)を所定方位(m軸)に向けて所定角度θ傾斜させた単結晶サファイヤ傾斜基板(図4(b)参照)を熱処理することにより得られる基板である。
【0045】
この図4(b)に示す単結晶サファイヤ傾斜基板は、図3に示す単結晶サファイヤから加工する際、図4(a)に示すように、傾斜方位(c軸)と所定方位との回転ズレ角度αが±0.1°以下になるように高精度に加工されている。この傾斜方位(c軸)は、単結晶サファイヤ傾斜基板のc軸が実際に傾斜している方向である。また、所定方位は、単結晶サファイヤからの加工の際、単結晶サファイヤ傾斜基板の主面を傾斜させたい方位、即ち、傾斜させたい目標の方位である。回転ズレ角度αは、単結晶サファイヤ傾斜基板の主面の法線を回転軸として、所定方位に対する傾斜方位の回転方向のズレ角度である。
【0046】
このように、単結晶サファイヤ傾斜基板を高精度に加工するのは、回転ズレ角度αが0.1°を超えて大きくなると、ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板1のステップバンチ5の直線性が乱れる原因になるためである。特に、ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板1をSAWフィルタの基板として利用する場合、ステップの直線性が要求されるため、回転ズレ角度αを±0.1°以下の高精度に加工することが求められる。
【0047】
なお、回転ズレ角度αは、±0.1°以下であればよいが、±0.05°以下が好ましい。
【0048】
単結晶サファイヤ傾斜基板の厚みは、用いられる基板の用途によって異なるが0.1mm以上の厚みが好ましい。これは、単結晶サファイヤ傾斜基板の反りをできるだけ小さくするためである。SAWフィルタ用の基板としては、厚みを0.3mm以上2.0mm以下の範囲にするのが好ましい。
【0049】
なお、本実施形態では、c面(0001)がm面(10-10)方向に所定角度θ傾斜した面を主面とするステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板1(c→m面オフ基板)について説明したが、本発明に係るステップバンチ単結晶サファイヤ基板は、これに限定されるものではない。したがって、たとえば、c面(0001)がa面(11-20)方向に所定角度θ傾斜した面を主面とするステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板(c→a面オフ基板)やa面(11-20)がc面(0001)方向に所定角度θ傾斜した面を主面とするステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板(a→c面オフ基板)などであってもよい。
【0050】
次に、本実施形態に係るステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板1の製造方法について説明する。
【0051】
上述のように、c面(0001)がm面(10-10)方向に所定角度θ傾斜した面を主面とし、回転ズレ角度αが±0.1°以下になるように単結晶サファイヤを高精度で加工する。
【0052】
次に、加工によって得られた単結晶サファイヤ傾斜基板を研磨・洗浄した後、単結晶サファイヤ傾斜基板をサファイヤ容器内に収容し、焼成炉で熱処理を行う。サファイヤ容器を用いるのは、単結晶サファイヤ傾斜基板の表面への付着物による汚染を防ぐためである。
【0053】
熱処理は、800℃〜1,500℃で1時間〜100時間、若しくは800℃〜1,300℃で1時間〜10時間、大気雰囲気下で行う。加熱温度と加熱時間は、単結晶サファイヤ傾斜基板の傾斜角度θや形成するステップバンチの高さHによって異なる。たとえば、傾斜角度θが0.5°以上になると、約1,000℃でステップバンチが形成される。また、傾斜角度θが1.0°になると、約1,000℃で原子層5層分のステップバンチが形成される。すなわち、傾斜角度θが大きいほどテラス幅が小さくなり、原子の移動距離が短くてすむため、低温でステップバンチを生成しやすい。なお、ステップをバンチングさせるためには、通常のシングルステップが形成される熱処理温度から約100℃〜500℃高い温度で熱処理を行うのが好ましい。
【0054】
次に、ステップバンチが形成される原理について説明する。ステップバンチは、シングルステップのテラス上の原子が熱によってステップエッジ方向に拡散すると共に、不安定なステップエッジ部から原子が昇華することによって形成される。
【0055】
なお、上述の説明では、熱処理時間は1時間〜100時間としたが、傾斜角度0.5°以下の場合、ステップバンチが起こる温度で熱処理すると、ステップエッジ方向だけでなくテラス方向へも原子の拡散が促進される。このため、テラス上を均一な状態にするには、100時間以上の熱処理を行うことが望ましい。
【0056】
次に、単結晶サファイヤ傾斜基板に小孔を形成する場合について説明する。
【0057】
上記のように、c面(0001)がm面(10-10)方向に所定角度θ傾斜した面を主面とし、回転ズレ角度αが±0.1°以下に高精度に加工された単結晶サファイヤ傾斜基板を用意し、図5に示すように、直線状に配列した小孔4を形成する。また、この小孔4は、所定方位に対して垂直方向に配列されている。
【0058】
この小孔4は、集束イオンビームを用いて開けられる。小孔4の径は、数nm〜数十nm程度であり、小孔4の深さは、ステップバンチの高さHによって異なるが、所望のステップバンチの高さHの1〜10倍程度が適している。なお、ステップがバンチングした後に、小孔4が周りの原子によって完全に埋められるためには、小孔4の深さをステップバンチの高さHの3倍までにするとよい。
【0059】
次に、上記と同様に、単結晶サファイヤ傾斜基板を研磨・洗浄した後、熱処理を行う。熱処理の結果、小孔が原子の移動をピン止めする働きをするため、ステップの直線性・等間隔性・平行性に優れたステップバンチが生成される。
【0060】
【実施例1】
以下の条件の単結晶サファイヤ傾斜基板、即ち、c軸が主面の法線に対してm軸方向に1.0°傾斜し、回転ズレ角度αが±0.01°以下の高精度に加工された単結晶サファイヤ傾斜基板を用いた。
単結晶サファイヤの所定の結晶軸:c軸
単結晶サファイヤ傾斜基板の傾斜方位:c軸
所定方位:m軸
所定角度θ:1.0°
回転ズレ角度α:±0.01°
単結晶サファイヤ基板の厚み:1.0mm
【0061】
上記条件の単結晶サファイヤ傾斜基板を研磨・洗浄した後、以下の条件で熱処理を行った。
加熱温度:サファイヤ容器中で1,000℃
熱処理時間:3時間
加熱雰囲気:大気中
【0062】
上記条件で熱処理を行った結果、ステップバンチの高さHが原子層5層分(約1.10nm)であるステップバンチが形成された。
【0063】
【実施例2】
実施例1の条件と同様の条件に加え、集束イオンビームを用いて以下の小孔を形成した単結晶サファイヤ傾斜基板を用いた。
小孔径:数nm
小孔の深さ:2.20nm
小孔の配置:所定方位(m軸)に垂直な直線状に配置
小孔の配置間隔L1:直線状に3μm間隔
小孔のストライプ間隔L2:100nm間隔
【0064】
実施例1の条件と同様の条件で熱処理を行った結果、ステップバンチの高さHが原子層8層分(約1.8nm)であり、直線性・平行性に優れたステップバンチが形成された。
【0065】
【比較例】
以下の条件の単結晶サファイヤ傾斜基板、即ち、c軸が主面の法線に対してm軸方向に1.0°傾斜した単結晶サファイヤ傾斜基板を用いた。
単結晶サファイヤの所定の結晶軸:c軸
単結晶サファイヤ傾斜基板の傾斜方位:c軸
所定方位:m軸
所定角度θ:1.0°
単結晶サファイヤ基板の厚み:1.0mm
【0066】
上記条件の単結晶サファイヤ傾斜基板を研磨・洗浄した後、以下の条件で熱処理を行った。
加熱温度:サファイヤ容器中で850℃
熱処理時間:3時間
加熱雰囲気:大気中
【0067】
上記条件で熱処理を行った結果、ステップバンチは確認されず、図6に示すように、ステップエッジがうねっているシングルステップが確認された。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る製造方法によれば、単結晶サファイヤ傾斜基板の主面の傾斜角度に応じて熱処理時間及び加熱温度を制御することにより、所望の均一なステップバンチを形成することができる。また、ステップの直線性・等間隔性・平行性がコントロールされたステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板上にAl等の導電膜を成膜すると、ステップに選択的に成長するため成膜時間を制御することにより、直線性・等間隔性・平行性に優れた金属細線を形成するができる。これを用いれば高周波数でかつ周波数特性に優れたSAWフィルタなどのデバイスが実現可能である。
【0069】
【発明の効果】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の発明は、直線性に優れたステップバンチを形成することができるため、例えば、高周波数でかつ周波数特性に優れたSAWフィルタ用の基板として利用できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係るステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板のステップバンチを説明する図である。
【図2】本実施形態に係るステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板の表面を示す側面図である。
【図3】所定の結晶軸を傾斜させる前の単結晶サファイヤを示す図であり、所定の結晶軸、所定方位、傾斜方位の関係を説明する図である。
【図4】図4(a)は、単結晶サファイヤ傾斜基板の上面図であり、回転ズレ角度を説明する概念図である。図4(b)は、単結晶サファイヤ傾斜基板の側面図であり、所定の結晶軸の傾斜方位と傾斜角度を説明する概念図である。
【図5】単結晶サファイヤ傾斜基板の主面に形成した小孔を説明する概念図である。
【図6】ステップエッジにうねりが生じているシングルステップの概念図である。
【符号の説明】
1 ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板
2 ステップ
3 テラス
4 小孔
5 ステップバンチ
H ステップバンチの高さ
h ステップの高さ
w ステップ間隔(テラス幅)
θ 所定角度(傾斜角度)
α 回転ズレ角度
L1 小孔間隔
L2 ストライプ間隔
Claims (7)
- 単結晶サファイヤの所定の結晶軸を所定方位に向けて所定角度傾斜させた単結晶サファイヤ傾斜基板において、
前記所定方位と前記単結晶サファイヤ傾斜基板の傾斜方位との回転ズレ角度が、前記単結晶サファイヤ傾斜基板の主面の法線を回転軸とする回転方向に対して±0.1°以下であり、
前記単結晶サファイヤ傾斜基板の主面に、直線状に配列した小孔又は小突起を、
前記単結晶サファイヤ傾斜基板の前記所定方位に対して垂直方向にストライプ状に配列し、前記主面の傾斜角度に応じて熱処理時間及び加熱温度を制御してステップをバンチングさせて形成された原子層2層分以上原子層500層分以下の高さを有する直線状のステップバンチを備えた
SAWフィルタ用ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板。 - 単結晶サファイヤの所定の結晶軸を所定方位に向けて所定角度傾斜させた単結晶サファイヤ傾斜基板において、
前記所定方位と前記単結晶サファイヤ傾斜基板の傾斜方位との回転ズレ角度が、前記単結晶サファイヤ傾斜基板の主面の法線を回転軸とする回転方向に対して±0.1°以下であり、
前記単結晶サファイヤ傾斜基板の主面に、直線状に配列した小孔又は小突起を、
前記単結晶サファイヤ傾斜基板の前記所定方位に対して垂直方向にストライプ状に配列し、前記主面の傾斜角度に応じて熱処理時間及び加熱温度を制御してステップをバンチングさせて形成された0.4nm以上100nm以下の高さを有する直線状のステップバンチを備えた
SAWフィルタ用ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板。 - 前記主面は、c面からa軸又はm軸方向に向けて0.05°以上1.0°以下の範囲で傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載のSAWフィルタ用ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板。
- 前記主面は、a面又はm面又はr面から所定角度傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載のSAWフィルタ用ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板上に、
前記主面のステップエッジに沿ってZnO細線を形成し、
該ZnO細線のエッジに沿って金属細線を形成し、
前記金属細線からなる櫛形電極を形成したことを特徴とするSAWフィルタ。 - 請求項1〜4のいずれかに記載のステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板上に、
前記主面のステップエッジに沿って金属細線を形成し、
前記主面をZnO膜で覆い、
前記金属細線からなる櫛形電極を形成したことを特徴とするSAWフィルタ。 - 単結晶サファイヤの所定の結晶軸を所定方位に向けて所定角度傾斜させた単結晶サファイヤ傾斜基板の製造方法において、
前記所定方位と前記単結晶サファイヤ傾斜基板の傾斜方位との回転ズレ角度を、前記単結晶サファイヤ傾斜基板の主面の法線を回転軸とする回転方向に対して±0.1°以下とし、
前記単結晶サファイヤ傾斜基板の主面に、小孔を直線状且つ
前記単結晶サファイヤ傾斜基板の前記所定方位に対して垂直方向にストライプ状に配列し、前記主面の傾斜角度に応じて熱処理時間及び加熱温度を制御してステップをバンチングさせ、原子層2層分以上原子層500層分以下の高さを有する直線状のステップバンチを形成することを特徴とする
SAWフィルタ用ステップバンチ単結晶サファイヤ傾斜基板の製造方法。
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