JP4278786B2 - マトリックス形工具マガジン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マトリックス形工具マガジンに係り、特に、工具を洗浄する機能をもった工具段取り部を備えたマトリックス形工具マガジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、工具マガジンの種類には、大きく分けるとチェーン型工具マガジンとマトリックス型工具マガジンとがある。
【0003】
チェーン型工具マガジンは、多数の工具ポットをチェーンで無端状に繋ぎ、このチェーンをスプロケットに巻き掛け、スプロケットをモータにより駆動し工具ポットを移動させるようにしたものである。
【0004】
この種のチェーン型工具マガジンでは、工具ポットがチェーンで無端状につながっている構造から、NC装置から指令された一本の工具を自動工具交換装置のチェンジャと受け渡す位置まで搬送するにも、工具マガジン内の全ての工具を移動させなければならない。交換する工具は一本にもかかわらず、収納工具全体の移動が必然的に伴うため、動力の浪費につながるばかりでなく、工具選択動作と工具返却動作に必要な時間が長くなる。とりわけ、多品種の部品加工に対応するために数百本もの工具を収納する工具マガジンでは、工具選択、返却動作にだけで数10秒もかかる場合があり、機械稼働率低下につながる。
【0005】
これに対して、マトリックス型工具マガジンは、工具搬送装置が特定の工具ポットに直接アクセスできるため、工具選択動作と返却動作の高速化を実現できる利点がある。このようなマトリックス型工具マガジンの従来例としては、特公平4−6492号公報、特開平10−128637号公報等を挙げることができる。
【0006】
この種のマトリックス形工具マガジンでは、工具マガジンへ装填する工具の段取りを行うための工具段取り部が付属している。この段取り部は、マシニングセンタでの加工が終了して不要となった工具を外に搬出したり、逆に新たに必要となった工具を工具マガジンへ搬入するためのいわば出入口である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のマトリックス形工具マガジンにあっては、不要となった工具は、段取り部までは搬送ロボットなどの搬送装置によって運ばれるが、その後は、作業員が手作業で段取り部から取り出している。取り出した不要工具には、その刃先や工具ホルダに切屑や切削油剤が付着して汚れているため、切屑を取り除いたり、切削油剤を拭き取る作業を別途行っている。
【0008】
これらの工具清掃は、従来は専ら手作業で行われている。作業員にとっては、ただでさえ重い工具を取り扱う作業が大変な上に、場合によっては刃先にからまった切屑を取り除くときに指にけがをしたり、切削油剤の処理中に廃油で衣服やからだが汚れることがある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、工具マガジンの工具段取り部における工具清掃作業を自動化し、快適で安全な作業環境を提供できるようにしたマトリックス形工具マガジンを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、工作機械の主軸に自動工具交換装置を介して供給する工具を収納する工具収納部がマトリックス形に配列されたマトリックス形工具マガジンにおいて、工具マガジン本体に沿って移動し指定された工具収納部の工具の取り出しおよび返却を行い工具を前記自動工具交換装置との間で受け渡す工具搬送装置と、新たに使用する工具および不要の工具について工具マガジンに対する搬出入の段取りを行うための工具段取り部を備え、前記工具段取り部は、工具を着脱可能に保持する工具保持手段を有する移動体と、段取り部内の所定の段取り位置と工具を前記搬送装置に受け渡すための段取り部外の受渡し位置との間で前記移動体を往復させる搬送手段と、前記段取り位置にある移動体上の工具に向けてノズルから洗浄媒体を噴出する自動洗浄手段と、を具備することを特徴としている。
【0011】
また請求項2に記載した発明は、前記自動洗浄手段がノズルから噴出させる洗浄媒体を切削油剤または圧縮空気の一方に選択的に切り換えられる洗浄媒体回路を備えることを特徴としている。
【0012】
前記洗浄自動手段は、請求項3に記載したように、切削油剤の供給タンクを工作機械と共用するようにしたことが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるマトリックス形工具マガジンの一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態によるマトリックス形工具マガジン全体を示す正面図、図2は同マトリックス工具マガジンの平面図である。この図1、図2は、横形のマシニングセンタに本発明を適用した実施の形態を示し、1が工作機械、2が自動工具交換装置(ATC)である。ATC2が工作機械1の主軸3に供給する工具を貯蔵している工具マガジン4は、工作機械1の側面側に配置されている。
【0015】
マシニングセンタにおける座標系は、主軸3の軸線方向をZ軸とし、これに直交して直交座標系をなす各方向をX軸、Y軸としている。+X軸方向が工具マガジン4の前方である。図1では、工具マガジン4を後側、すなわち−X軸方向にみている。
【0016】
図2において、マシニングセンタの主軸頭10に配置されている主軸3には、その先端部の工具装着部に装着される工具6をクランプ、アンクランプするための公知のコレット引っ張り機構方式の工具クランプ・アンクランプ機構が内蔵されている。ATC2は、ツインアームタイプの交換アーム5の両端部で工具を把持し、旋回動作および軸方向への進退移動動作を組み合わせて主軸交換位置P1 にある主軸3と、待機位置P2で待機している工具キャリア12との間の工具6の受け渡しを行う。この工具キャリア12は、工具6を着脱自在に把持する把持機構を内蔵しているものである。14は、工具キャリア12を中継位置P3から 待機位置P2の間を移動させる中継装置である。本発明の工具マガジンでは、工 具マガジンに格納されている工具6は、工具キャリア12に入れられた状態でそれぞれ工具6について指定されている格納位置と中継位置P3の間を搬送される。この搬送を行うのが参照符号16で示す装置である。
【0017】
工具マガジン4は、図1および図2に示すように、長方形の工具マガジンラック18を備えており、この工具マガジンラック18には、第1の工具収納部20と第2の工具収納部22の2種類の収納部が工具の使用状況に応じた比率でマトリックス状に、全体として一定の間隔であたかも斜めに配列されているようになっている。
【0018】
第1工具収納部20は、標準寸法の工具6を1本づつ収納する専用の収納部である。これに対して、第2工具収納部22は、四つの菱形空間を区画するパネル26を取り外すことで、標準寸法または大径の工具6のいずれの収納にも対応できるようになっている。工具6は、半月状のグリップ24によって、落下することなく保持されている。
【0019】
図2および図3に示すように、工具搬送装置16は、Y−Z平面に平行なL字形のZフレーム部43と、Y軸方向に昇降可能にZフレーム部43に取り付けられているYフレーム部44を備え、これらがY−Z移動部を構成するようになっている。工具マガジン4の上枠および下枠には、工具搬送装置16を案内するためにガイドレール45a、45bがZ軸方向に設けられている。また、図2に示すように、天井部ガイドレール51も、これらのガイドレール45a、45bと平行に架設されている。工具搬送装置16をZ軸方向に移動させる駆動モータが工具マガジン4の端部に配設されている第1のサーボモータ46である。工具マガジン4の上下両端部には、タイミングベルト48a、48bが設けられており、第1サーボモータ46の回転を伝動軸47を介してタイミングベルト48a、48bに伝達し、タイミングベルト48a、48bと連結している工具搬送装置16をZ軸方向に往復移動させることができる。
【0020】
Zフレーム部43には、Yフレーム部44の昇降を案内するガイドレール49a、49bがY軸方向に取り付けられており、ボールネジ50が同じく平行に配置されている。Yフレーム部44は、ガイドレール49a、49bに摺動自在に係合しているとともに、このボールネジ50に螺合するボールナット(図示せず)がYフレーム部44に固定されている。52は、ボールネジ50を回転駆動する第2のサーボモータである。
【0021】
X軸方向に工具キャリア12を移動させるためのX軸移動部56は、工具キャリア12を着脱可能に保持するクランプ部を内蔵し、Yフレーム部44にX軸方向に敷設されたガイドレール57a、57bに摺動自在に係合している。このガイドレール57a、57bと平行にボールネジ60が配設され、このボールネジ60に螺合するボールナット62は、X軸移動部56に固定されている。ボールネジ60を回転駆動する第3のサーボモータ64は、Yフレーム部44に取り付けられており、タイミングベルト66を介してボールネジ60に回転を伝達するようになっている。
【0022】
このような工具搬送装置16では、Y−Z移動部は、工具6を保持した工具キャリア12あるいは空の工具キャリア12を工具マガジン4と平行なY−Z平面に沿って移動させ、指定された位置の工具収納部20または22の前まで移動させ、X移動部がX軸方向に工具キャリア12を移動させ、工具6の返却、取り出しを行うことができる。例えば、図1において、中継位置P4で中継装置14から工具搬送装置16に渡された工具キャリア12は、P7で示す工具返却位置まで移動する。ここで工具を返却してから、工具搬送装置16は、空の工具キャリア12をP8で示す位置まで移動させてから、指令された工具を取り出し、さらに中継位置P4まで移動させて工具キャリア12を中継装置14に工具ごと渡すようになっている。
【0023】
次に、図1において、70は、工具段取り部を示している。この工具段取り部70は、工具マガジン4に必要な工具6を補充したり、使えなくなくった工具と新たな工具を交換したり、あるいは、不要となった工具を搬出するなど、工具マガジン4への工具段取りを行うためのもので、ATC2に近い位置に設けられる。段取りされる工具6は、工具段取り部70内の段取り位置P5と、工具マガジン4の端部に位置する待機ポット72の受渡し位置P6との間を、工具段取り部70に設けられた搬送手段によって往復移動させることができる。
【0024】
そこで、図4に工具段取り部70の詳細を示す。
【0025】
この図4において、73が段取り部のハウジングである。このハウジング73の外側と内側には、ベース74に固定されたフランジ75a、75bが直立しており、このフランジ75a、75bにZ軸と平行にガイドレール76a、76bが架け渡されている。このガイドレールに76a、76bに摺動自在に嵌合するガイド77を有する移動体78は、ガイドレール76a、76bに案内されて前記段取り位置P5と受渡し位置P6の間を移動可能になっている。ハウジング73の外側、すなわち工具マガジン4側のフランジ75aには、駆動シリンダ80のヘッド側が固定されており、この駆動シリンダ80のロッド側からはガイドレール76a、76bと平行にピストンロッド82が延び、その先端部がブラケット83を介して移動体78と連結されている。駆動シリンダ80のピストンロッド82が前進することで移動体78は段取り位置P5まで移動し、ピストンロッド82が後退することで、ハウジング73外部の受渡し位置P6まで移動することができる。この駆動シリンダ80の動作は、図示しない電磁切換弁が切り換える。
【0026】
移動体78には、工具6を着脱可能に保持する手段として工具6の工具ホルダ6aが嵌まるように半月状の切り欠きを有する把持部84が設けられている。この把持部84には、工具6の工具ホルダ6に形成されているドライブキー溝に係合して工具6を回転方向に規制するキー85が取り付けられている。
【0027】
図4に示されるように、段取り部70には、工具6を自動洗浄する手段が次のように設けられている。段取り部70の内部には、圧縮エア、切削油剤などの洗浄媒体を導入する洗浄パイプ86が工具6の長手方向に延び、この洗浄パイプ86には、洗浄媒体を移動体78上の工具6に向けて噴出する洗浄ノズル87aが所要数取り付けられている。洗浄パイプ86には、管継手を介して洗浄パイプ88、89が直角に接続され、それぞれ工具ホルダ6a、工具刃先側に向けて洗浄媒体を噴出する洗浄ノズル87b、87cが取り付けられている。
【0028】
洗浄パイプ86には、ハウジング73の外側側面で管継手を介してホース90が接続されている。このホース90は、逆止め弁91a、91bを組み込んである三方管継手91によって分岐され、一方には切削油剤用ホース92が接続され、他方には、電磁切換弁93を介してエア用ホース94が接続されている。
【0029】
図5に示すように、切削油剤用ホース92は切削油剤ポンプ95と接続されている。この場合、切削油剤供給タンク96は、工作機械1と共用するようになっており、切削油剤ポンプ95は、切削油剤供給タンク96に溜まっている切削油剤を前記切削油剤ホース92から段取り部70に送る他、加工中の工作機械1の主軸に図示しない配管を介して送ることができる。97は、段取り部70の底に配置されているオイルパンで、このオイルパン97で受けた切削油剤は、ドレン管98を通じて切削油剤供給タンク96に回収される。一方、エア供給源99から供給される圧縮空気は、電磁切換弁93が開いたときに段取り部70の洗浄ノズル87a乃至87cに送ることができる。
【0030】
図4において、段取り部70は、洗浄中に切削油剤が外部に飛散しないように全体を覆うためにカバー100が設けられている。このカバー100は、矢印方向に引いて開閉することができる。なお、図示はしないが、このカバー100には、安全確保のためにカバー100の開状態、閉状態を検出するためのリミットスイッチが設けられている。
【0031】
以上のように構成される段取り部70では、カバー100を開いた状態にしておいて、工具6の搬出入が行われる。上述したように、駆動シリンダ80によって駆動されて工具6を載せた移動体78が図1における段取り位置P5と受渡し位置P6の間を往復運動する。
【0032】
工具マガジン4から不要になった工具6が段取り部70まで搬送されてくると、工具は自動的に洗浄される。一連の洗浄の手順は、前記の移動体78の移動と連携する電気シーケンス制御として組まれていて、次のように実行される。
【0033】
まず、カバー100が閉じられてから、切削油剤ポンプ95が運転される。切削油剤は、ホース92、洗浄パイプ86を通って洗浄ノズル87a、87b、87cから移動体78上の工具6に向けて勢いよく噴出される。この切削油剤の噴射によって工具6の表面の汚れや付着した切屑は吹き飛ばされる。この切削油剤の噴射を所定時間続けた後、切削油剤ポンプ95は停止する。
【0034】
次いで、電磁切換弁93が開き、圧縮空気がホース94、継手91、洗浄パイプ86を通って洗浄ノズル87a、87b、87cに送られる。したがって、洗浄ノズル87a、87b、87cからは切削油剤に替って圧縮空気が勢いよく噴出され、工具6の表面の残っている切屑を吹き飛ばすとともに、表面を乾燥させる。この圧縮空気は、逆止弁91bによって切削油剤側の回路には流れ込むことがないようになっている。
【0035】
こうして所定時間エアブローを続けてから電磁切換弁93が閉じて工具6の洗浄が終了する。その後、カバー100が開くので、使用済みの工具6についてはつねに人手を介することなくきれいに洗浄された状態にして取り出すことができる。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、工具マガジンに工具自動洗浄機能を付加した工具段取り部を設けているので、工具マガジンで不要になった使用済み工具をつねにきれいに清掃された状態で取り出すことが可能となり、工具マガジンの工具段取り部における工具清掃作業を自動化し、快適で安全な作業環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるマトリックス形工具マガジンの一実施形態を示す側面図。
【図2】同マトリックス形工具マガジンの平面図。
【図3】本発明によるマトリックス形工具マガジンと工具搬送装置を示す概略斜視図。
【図4】同マトリックス形工具マガジンに設けられる工具段取り部を示す斜視図。
【図5】同工具段取り部の自動洗浄装置の回路図。
【符号の説明】
1 工作機械
2 自動工具交換装置
3 主軸
4 工具マガジン
5 交換アーム
6 工具
10 主軸頭
12 工具キャリア
14 中継装置
16 工具搬送装置
70 工具段取り部
78 移動体
80 駆動シリンダ
84 保持部
87a〜c 洗浄ノズル
100 カバー
Claims (3)
- 工作機械の主軸に自動工具交換装置を介して供給する工具を収納する工具収納部がマトリックス形に配列されたマトリックス形工具マガジンにおいて、
工具マガジン本体に沿って移動し指定された工具収納部の工具の取り出しおよび返却を行い工具を前記自動工具交換装置との間で受け渡す工具搬送装置と、
新たに使用する工具および不要の工具について工具マガジンに対する搬出入の段取りを行うための工具段取り部を備え、
前記工具段取り部は、工具を着脱可能に保持する工具保持手段を有する移動体と、
段取り部内の所定の段取り位置と工具を前記搬送装置に受け渡すための段取り部外の受渡し位置との間で前記移動体を往復させる搬送手段と、
前記段取り位置にある移動体上の工具に向けてノズルから洗浄媒体を噴出する自動洗浄手段と、
を具備することを特徴とするマトリックス形工具マガジン。 - 前記自動洗浄手段は、ノズルから噴出させる洗浄媒体を切削油剤または圧縮空気の一方に選択的に切り換えられる洗浄媒体回路を備えることを特徴とする請求項1に記載のマトリックス形工具マガジン。
- 前記洗浄自動手段は、切削油剤の供給タンクを工作機械と共用するようにしたことを特徴とする請求項2に記載のマトリックス形工具マガジン。
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