JP4278646B2 - 防湿層用ワックス - Google Patents
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しかしながら、このようなワックスを用いた防湿層は、熱成形性がないため、容器を成形した後に塗工や蒸着等の方法で防湿層を形成しなければならず、製造工程が複雑とならざるを得なかった。また、天然ワックス等の生分解性を有するワックスは、融点が85℃以下であるため、スープやインスタントカップ麺等のインスタント食品用の容器のように、保存に必要な防湿性、及び調理や飲食等するときに必要な耐水性、特に耐熱水性が要求される容器の被覆に用いることはできなかった。
また、他に知られている熱成形可能な生分解性フィルムにおいても、透湿度は4〜30g・mm/m2 ・24hrであり、防湿性が要求される食品容器等に用いることができるものではなかった。
本発明の生分解性フィルムは、二つの生分解性樹脂層の間に生分解性の防湿層を備えている。
ここで、該生分解性樹脂層の有する耐熱性とは、水の沸点で該生分解性樹脂層を構成する樹脂自体が溶融しないことをいう。
少なくとも一方の前記生分解性樹脂層の有する耐熱水性とは、該生分解性樹脂層が沸騰したお湯に長時間接したときに、該生分解性樹脂層を構成する樹脂がお湯に溶解したり、該樹脂自体が溶融したりすることによって、該生分解性樹脂層が損傷してお湯等が通過できる様な孔等ができないことをいう。
前記生分解性樹脂層を形成するときの製膜方法には、カレンダー法、溶融押出法、樹脂溶液又はエマルジョンを塗布後溶媒又は分散媒を蒸発させる方法等の従来からある通常の製膜方法を用いることができる。
二つの前記生分解性樹脂層を異なる樹脂で形成する場合には、融点の異なる樹脂で形成することが好ましい。このように融点の異なる樹脂で二つの生分解性樹脂層を形成することで、後述するように、本発明の生分解性フィルムを容器本体の表面に直接接合させて該表面を被覆する際に、融点の低い樹脂(低融点樹脂)で形成された生分解性樹脂層を該表面に向けて配し、溶融させた低融点樹脂を容器本体に接合させることで該表面を接着性良く被覆することができる。この場合、二つの前記生分解性樹脂層を形成する樹脂の融点の差は、5℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましい。
該耐熱性を有する生分解性の高分子物質としては、未加硫の天然ゴム、未加硫のポリイソプレン、前述した脂肪族ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらの中でも、前記ワックスとの相溶性の点からポリイソプレン又は天然ゴムが好ましいく、天然ゴムを用いる場合には臭いやアレルギーの点から蛋白をできるだけ除去したものを用いることが好ましい。
また、前記ワックスに含ませる前記生分解性の高分子物質の配合量は、生分解性フィルムとの接着力とクラック防止の点から5〜50%であることが好ましいが、防湿性を維持させる点から30重量%以下が好ましく、20重量%であることがより好ましい。
また、生分解性の高分子物質以外の成分(例えば、酸化防止剤等の添加剤や無機フィラー等)を配合することもできる。この場合には、該成分の配合量は、特に防湿性の点で20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることが好ましい。
前記生分解性樹脂が結晶性樹脂の場合は、DSC測定により得た融解曲線から求めた溶融ピーク温度Tm(℃)に対し、(Tmー40℃)〜(Tm+20℃)の範囲である。ただし、溶融ピーク温度が複数存在する場合には、融解熱量が最も大きな溶融ピークを選択する。
前記生分解性樹脂が非結晶性樹脂の場合は、そのガラス転移温度Tgに対してTg〜Tg+50℃の範囲である。
また、本発明の生分解性フィルムは、延伸成形(熱成形を含む。)を行った後、延伸率(面積延伸率)が200〜1000%における、透湿度が2g・mm/m2・24hr以下であることが好ましく、1g・mm/m2・24hr以下であることがより好ましい。
本発明の生分解性フィルムの製造方法としては、例えば、前記生分解性樹脂層用の樹脂を製膜し、該膜の片面に前記防湿層に用いられる前記ワックス等の均一な膜を形成した後、該ワックスの膜の上にさらに該生分解性樹脂層用の樹脂の膜を重ね合わせて圧着又は熱圧着させて製造する方法が挙げられる。また、このように重ね合わせる以外に、一枚の生分解性樹脂層に部分的に前記防湿層の成分を塗工した後に、該生分解性樹脂層を折り返して二つの生分解性樹脂層の間に前記防湿層を備えた形態とすることもできる。
前記防湿層の形成方法としては、溶融塗工や溶液又はエマルジョン等を塗布後に溶媒を蒸発させる方法、前記防湿層に用いられている前記ワックス等を前記生分解性樹脂フィルムで挟んで熱プレスする方法等の方法が挙げられる。
また、前記生分解性樹脂と前記防湿層に用いられる前記ワックス等を多層の溶融押出法により一度に生分解性フィルムを成形することができる。
また、本発明の生分解性フィルムをプレス成形や真空成形等により成形して単体で生分解性容器としたり、該容器が内容器に用いられたいわゆるバッグ・イン・ボックスの形態の容器にも用いることもできる。
本発明の生分解性容器は、液状物や固体を収容することができる構造物一般であり、その形状は問わず、生分解性を有する容器本体の表面に、前記本発明の生分解性フィルムが被覆されてなるものである。また、生分解性容器が熱湯を注ぐ用途等に用いられる場合には、生分解性を有する容器本体の表面に、被覆層として、少なくとも容器本体表面から、耐熱性を有する生分解性樹脂層、生分解性の防湿層、耐熱水性を有する生分解性樹脂層の順で形成された前記本発明の生分解性フィルムが被覆されてなるものである。
前記容器本体の素材としては、例えば、天然繊維、生分解性の合成繊維等の繊維、天然高分子、前記生分解性樹脂、及び、これらの混合物等が挙げられる。
該天然繊維としては、木材パルプ繊維、非木材パルプ繊維、絹、羊毛等が挙げられる。
該生分解性の合成繊維としては、ポリ乳酸繊維、ビニロン、レーヨン等が挙げられる。
該天然高分子としては、でん粉、たん白質等が挙げられる。
前記容器本体には、例えば、その素材が前記繊維である場合は、該繊維を含む原料スラリーを湿式抄造した後、脱水、乾燥して容器形態としたものや、該原料スラリーを湿式抄造した後、脱水、乾燥してシート状とし、所定形状にカットし、屈曲し、接合して容器形態としたものを用いることが好ましい。特に、素材がパルプ繊維又はパルプ繊維を主体とするものである場合には、これらの繊維を含むスラリーを湿式抄造した後、脱水、乾燥して容器形態とするパルプモールド法により成形されたものであることが好ましい。
該生分解性フィルムで被覆層を形成する部位は、容器の用途、形態等に応じて適宜選択することができる。該被覆層を形成する部位としては、例えば、容器本体の内面、容器本体の外面等が挙げられる。特にカップ等に用いる場合には、少なくとも容器本体の内表面に該被覆層が形成されているものが好ましい。
該容器本体の表面と該生分解性フィルムとを接着剤を介して接合する場合には、用いる該接着剤は、生分解性を有するものであればその組成に特に制限はない。該接着剤は、該生分解性フィルムと同様に、生分解度(好気的究極生分解度:JIS K 6950又は6953)が30%以上であるものが好ましく、50%以上であるものがより好ましく、60%以上であるものがさらに好ましい。
該接着剤としては、デンプン、ポリビニルアルコール、にかわ、ゼラチン、カゼイン、未加硫の天然ゴム、未加硫のポリイソプレン等が挙げられる。また、該接着剤として、加熱溶融により容器本体に接着させるために容器本体側の生分解性樹脂層よりも融点の低い生分解性樹脂や各種天然樹脂等を用いることもできる。
溶媒の揮散により接着させる接着剤を用いる場合には、接着成分を含む溶液をフィルムと容器本体との何れか一方若しくは両方に塗布することもでき、接着成分をフィルム若しくは容器本体の何れか一方の表面に形成し溶媒を他の一方に塗布することにより接着させることもできる。
該容器本体の表面と該生分解性フィルムとを直接接合する方法としては、例えば、該生分解性フィルムを容器本体の内面に配した後、容器本体をその外面側から加熱した状態で真空成形又は圧空成形を行い、該生分解性フィルムの生分解性樹脂層を該容器本体の内面に融着させる方法等の方法が挙げられる。
本発明の生分解性容器は、前記容器本体を構成する素材が前記繊維である場合には、その通気性を利用した真空成形法又は圧空成形法によって、該容器本体の表面(例えば内面又は外面)を前記本発明の生分解性フィルムで被覆することで製造することが好ましい。これらの真空成形法及び圧空成形法には、従来から紙容器やパルプモールド容器において用いられている通常の成形法を用いることができる。
本発明の生分解性フィルムで被覆された本発明の生分解性容器は、用途に応じて、耐熱性や耐熱水性を評価すれば良い。
本発明の生分解性防湿紙は、生分解性の紙の表面に前記本発明の生分解性フィルムが被覆されてなるものである。
前記生分解性の紙には、木材パルプ、非木材パルプを抄紙した紙、非生分解性の素材を含まない再生紙等を用いることができる。
該生分解性の紙の厚みは、用途に応じて適宜設定することができる。
前記生分解性の紙の表面に前記本発明の生分解性フィルムを被覆させる手法は、特に制限はないが、例えば、前記容器本体の表面を前記生分解性フィルムで被覆するときと同様に前記接着剤で接着する方法、前記生分解性の紙と前記生分解性フィルムとをヒートラミネーションによって接合させて被覆する方法等の手法が挙げられる。
本発明の生分解性防湿紙は、前記本発明の生分解性容器のほか、防湿包装紙、防湿性壁紙に用いることができる。
<防湿層用のワックスの調製>
溶媒(n−ヘプタン)50cc中に未加硫の天然ゴム(以下、単に天然ゴムという。)1.4gを入れて撹拌し、該天然ゴムを溶解させた後、さらに下記ワックス12.6gを入れて60℃に加熱して撹拌し、該ワックスを溶解させた。そして、80℃の送風乾燥機で前記溶媒を揮散させ、天然ゴムを10重量%含有するワックス(以下、天然ゴム含有ワックスという。)を得た。
ワックス:マイクロクリスタリンワックス、日本精蝋(株)製、「Hi−Mic−1070」
次に、下記生分解性樹脂層用のフィルムを用い、該フィルム上に上記天然ゴム含有ワックス4gをおき、これらを上下から挟むように、シリコーン樹脂で易剥離性処理を施したポリエステルフィルムをその処理面を対向させて重ね合わせ、80℃に設定したヒートプレス機で3.8kgf/cm2の押圧力で1分間加圧し、片面に上記天然ゴム含有ワックスの均一な膜が形成された一次フィルムを得た。そして、上記ポリエステルフィルムを剥がして該天然ゴム含有ワックスの面を露呈させ、該天然ゴム含有ワックス面上に下記生分解性樹脂層用のフィルムをさらに重ね合わせた後、上記同様にポリエチレンフィルムを配し、80℃に設定したヒートプレス機で3.8kgf/cm2の押圧力で1分間加圧し、生分解性樹脂層の間に天然ゴム含有ワックスからなる防湿層を有する全厚み400μmの生分解性フィルムを得た。
生分解性樹脂層用のフィルム:(ポリカプロラクトンとポリエチレンサクシネートとのポリマーブレンド、ダイセル化学(株)製、セルグリーンPHB05、厚さ100μm、20×15cm、融点113℃)
防湿層用のワックスに天然ゴムを含ませなかった以外は、実施例1と同様にして全厚み400μmの生分解性フィルムを作製した。
実施例1の天然ゴムを下記のポリイソプレンに変更し、ワックスの量を5.6gとしてポリイソプレン20重量%を含有するワックスとした以外は、実施例1と同様にして全厚み400μmの生分解性フィルムを作製した。
厚さ200μmの生分解性の無いポリエチレンフィルムを用い、実施例1、2と同様に評価を行った。
実施例3の生分解性フィルムに代えて、厚さ200μmの上記生分解性樹脂層用のフィルムの片側に上記PVA膜を形成したフィルムを用い、上記容器本体の内面を被覆した以外は、実施例3と同様にして生分解性容器を作製した。
実施例3の生分解性フィルムに代えて、厚さ150μmのポリエチレン製フィルム(生分解性なし)の片側に上記PVA膜を形成したフィルムを用い、上記容器本体の内面を被覆した以外は、実施例3と同様にして容器を作製した。
得られた各フィルムについて、カップ法(JIS Z0208)に基づいて、40℃、90%RHの雰囲気で、透湿度を調べた。
得られた生分解性フィルムを実施例3で用いたのと同じ容器本体に押込んでカップ形状にして窪みを形成した。そして、その窪みの中に常温常圧で沸騰しているお湯を注いで15分間放置した後、お湯の漏れの有無を目視で調べるとともに、防湿層組成物のしみだしの有無を、該防湿層組成物がお湯の水面に浮いているかどうかを目視して調べ、お湯の漏れ及び該防湿層組成物のしみだしの何れもが無いことをもって耐熱水性有りとした。
得られた生分解性フィルムを150mm×150mmの大きさに切断し、100℃に熱したオーブン内で該生分解性フィルムを2分間放置した後、該生分解性フィルムの両端を引張り2倍の長さに引き伸ばした際に、該生分解性フィルムが破断するか否かを調べ、破断しないことをもって熱成形性有りとした。
得られた生分解性フィルムから50×20mmの試験片を作製した。そして、この試験片の長さ方向の一端部側で、重ね合わされた二枚の生分解性樹脂フィルムを約10mm剥がしてそれぞれチャックで挟持し、引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)で引張速度20mm/分で引っ張ったときの最大引張荷重を求め、これを剥離強度とした。
Claims (1)
- 生分解性フィルム又はこれを用いた生分解性容器若しくは生分解性防湿紙に用いる防湿層用ワックスであって、
ワックスを主成分とし、5〜50重量%の生分解性の高分子物質を含んでおり、
前記ワックスが生分解性のマイクロクリスタリンワックスであり、前記高分子物質が天然ゴム又はポリイソプレンである防湿層用ワックス。
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