JP4278316B2 - ヒドラジン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品原料として有用な特定のヒドラジン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
医薬品原料として有用なヒドラジン誘導体、例えば後記式[3]で表されるtert−ブチル 3−[4−(ピリジン−2−イル)ベンジル]カルバゼートは、WO97/40029に記載の抗エイズ薬
【0003】
【化3】
【0004】
の中間体として有用であり、当該中間体は、下記式[4]で表されるN−(tert−ブトキシカルボニル)−N’−{[4−(ピリジン−2−イル)フェニル]メチリデン}ヒドラゾンを、メタノール中、10%Pd/Cの存在下で還元することによって得られることが知られている(WO97/40029、実施例46C)。しかしながら、詳細な説明はなく、還元による副生物等についても記載がない。
【0005】
【化4】
【0006】
本発明者らはWO97/40029の実施例46Cを追試したところ、式[3]の化合物が水素化分解された4−(ピリジン−2−イル)トルエンが副生することを見つけ、これにより式[3]の化合物の生成率が低下すること、および溶解状態にある副生物が式[3]の化合物の晶析を妨げて収率を低下させることを認めた。このため、還元反応が選択的に進行し、かつ副反応である水素化分解反応が抑制された、式[4]のようなヒドラゾン骨格を有する化合物から式[3]のようなヒドラジン骨格を有する化合物を製造する方法の開発が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のことから、本発明の目的は、還元反応が選択的に進行し、かつ副反応である水素化分解反応が抑制された、ヒドラゾン誘導体からヒドラジン誘導体を製造する方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を行なった結果、下記式[1]のヒドラゾン誘導体から下記式[2]のヒドラジン誘導体を製造する際、金属系還元触媒と共に、有機塩基および無機塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基を反応系に添加することにより、目的の反応である還元反応が選択的に進行し、かつ副反応である水素化分解反応が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の通りである。
1. 塩基として、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムから選ばれる炭酸アルカリ、または炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムから選ばれる炭酸アルカリとトリエチルアミンとの組み合わせ、並びにパラジウム系触媒の存在下、式[1]
【0010】
【化5】
【0011】
(式中、R1は、2−ピリジル基を示し、R2は、tert−ブトキシ基を示し、Arは、p−フェニレン基を示す。)
で表されるヒドラゾン誘導体を還元することを特徴とする、式[2]
【0012】
【化6】
【0013】
(式中、R1、R2およびArは、前記と同義である。)
で表されるヒドラジン誘導体の製造方法。
2. パラジウム系触媒がPd/Cである、上記1.の製造方法。
3. 炭酸アルカリが炭酸ナトリウムである、上記1.の製造方法。
4. 還元反応後、水素ガス単独または不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で反応液を濾過する上記1.の製造方法。
5. 還元反応後、反応液を冷却し、不活性ガス単独の雰囲気下で濾過する、上記1.の製造方法。
6. 冷却温度が30℃以下である、上記5.の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下に詳細に説明する。
R1、R2における「炭素数1〜12のアルキル基」としては、直鎖状または分岐鎖状であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどが挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキルである。
【0015】
R1、R2における「炭素数1〜6のアルコキシ基」としては、直鎖状または分岐鎖状であり、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられ、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。
R1、R2における「ハロゲン原子」としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは、塩素原子、フッ素原子、臭素原子である。
【0016】
R1、R2における「置換基を有していてもよいフェニル基」の「置換基」としては、本発明の還元条件下で還元しないものであれば特に限定はなく、例えば、炭素数1〜12のアルキル基(直鎖状または分岐鎖状であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなど)、炭素数1〜6のアルコキシ基(直鎖状または分岐鎖状であり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシなど)、ハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子)などが挙げられる。フェニル基は、これら1種または2種以上で置換されていてもよい。
【0017】
R1、R2における「置換基を有していてもよいアラルキル基」の「アラルキル基」とは、アリール部がフェニル、ナフチルなどであり、かつアルキル部が炭素数1〜4、好ましくは1または2のアルキル基であるアラルキル基であり、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチルなどが挙げられる。当該「置換基」としては、本発明の還元条件下で還元しないものであれば特に限定はなく、例えば、炭素数1〜12のアルキル基(直鎖状または分岐鎖状であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなど)、炭素数1〜6のアルコキシ基(直鎖状または分岐鎖状であり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシなど)、ハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子)などが挙げられる。これら1種または2種以上で置換されていてもよい。
【0018】
R1、R2における「置換基を有していてもよいヘテロ芳香環基」の「ヘテロ芳香環基」としては、例えば、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チエニル、フリル、インドリルなどが挙げられ、好ましくはピリジルが挙げられる。「置換基」としては、本発明の還元条件下で還元しないものであれば特に限定はなく、例えば、炭素数1〜12のアルキル基(直鎖状または分岐鎖状であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなど)、炭素数1〜6のアルコキシ基(直鎖状または分岐鎖状であり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシなど)、ハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子)などが挙げられる。これら1種または2種以上で置換されていてもよい。
【0019】
R2における「置換基を有していてもよいフェニルアルコキシ基」の「アルコキシ基」としては、好ましくは炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシであり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられる。当該アルコキシ基は、本発明の還元条件下で還元しない置換基であればどのような置換基で置換されていてもよく、1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0020】
Arにおける「ヘテロ芳香環基」とは、ヘテロ芳香環の2価基であり、ヘテロ芳香環としては、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チオフェン、フラン、インドールなどが挙げられ、好ましくはピリジンである。
【0021】
本発明において、ヒドラジン体[2]は、有機塩基および無機塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基、並びに金属系還元触媒の存在下、ヒドラゾン体[1]を還元することによって得ることができる。具体的には、溶媒に、ヒドラゾン体[1]、金属系還元触媒および塩基を添加し、これを水素ガス雰囲気下で攪拌する。
【0022】
本発明の還元反応に使用する溶媒としては、ヒドラゾン体[1]を溶解し、かつ反応に悪影響を及ぼさない溶媒を用いればよく、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、イソプロパノールなど)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチルなど)、エーテル溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、エーテルなど)、炭化水素系溶媒(例えば、トルエンなど)、およびこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくはメタノール、イソプロパノールが挙げられる。これらの溶媒に少量の水を含んでいてもよい。溶媒の使用量としては、ヒドラゾン体[1]に対して、4重量倍から5重量倍程度が好ましい。
【0023】
本発明の還元反応に使用する金属系還元触媒としては、通常の還元触媒としての金属触媒を用いることができる。これらの金属触媒としては、パラジウム系触媒、白金系触媒、ニッケル系触媒が挙げられる。これらの金属系還元触媒のうち、パラジウム系触媒が好ましく、Pd/Cが最も好ましい。触媒の使用量は、使用する触媒の種類によって異なるが、例えば5%Pd/Cを使用する場合には、5%Pd/Cの使用量は、ヒドラゾン体[1]100重量部に対して、好ましくは0.5重量部から5重量部、より好ましくは1重量部から3重量部である。
【0024】
本発明の還元反応においては、有機塩基および無機塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基の存在によって、副反応である水素化分解を抑えることができる。有機塩基としては、アミン類、特に第3アミン類(例えば、トリエチルアミンなど)が好ましく、中でもトリエチルアミンが経済性の観点から好ましい。無機塩基としては、炭酸アルカリが好ましく、中でも炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが経済性の観点からより好ましい。これらは混合して使用してもよく、好ましくはトリエチルアミンと炭酸ナトリウムの組み合わせが挙げられる。
【0025】
有機塩基と無機塩基のどちらか一方を使用する場合の当該塩基の使用量は、ヒドラゾン体[1]1モルに対して、0.01〜0.5モルが好ましく、この場合において、例えば2種以上の有機塩基(または無機塩基)を使用している時には、それらの塩基の使用量の和が上記範囲内にあればよい。また、有機塩基と無機塩基を混合して使用する場合の当該塩基の使用量は、ヒドラゾン体[1]1モルに対して、有機塩基が好ましくは0.01〜0.5モル、無機塩基は好ましくは0.005〜0.1モルである。
【0026】
本発明の還元反応に使用する水素の量は、ヒドラゾン体[1]を還元できる量であればよく、水素の吸収が停止するまで反応系に導入すればよい。用いる水素の圧力は、好ましくは常圧から5気圧、より好ましくは常圧から2気圧である。
【0027】
本発明の還元温度は、用いる溶媒などによって依存するが、例えばアルコール系溶媒中での還元反応は、通常40℃から80℃、好ましくは40℃から60℃、より好ましくは40から50℃で行われ、水素の吸収が停止した時点を終点とし、通常2時間から12時間、好ましくは5時間から8時間で終了する。
【0028】
本発明者らは、還元反応後、還元時の雰囲気下(即ち、水素ガスを含む雰囲気下)で濾過することにより;水素ガス単独または不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で反応液を濾過することにより;あるいは還元反応後、反応液を冷却し、不活性ガス単独の雰囲気下で濾過することにより、出発物質であるヒドラゾン体[1]への逆反応(酸化反応)が抑制されることを見出した。例えば、還元反応後、反応液を冷却し、同温度、不活性ガス単独の雰囲気下(即ち、水素ガスのない雰囲気下)で濾過する場合、その冷却温度は、通常30℃以下、好ましくは10℃以下であり、30℃を超える場合には、逆反応が進行し易くなり、ヒドラジン体[2]の収率が低下する。反応液の濾過は、不活性ガスと水素ガスとの混合ガス中で行うのが好ましく、濾過温度は特に限定はない。
【0029】
また、還元反応後、反応液を濾過して得られた濾液に硫黄系化合物を添加する工程を経て単離したヒドラジン体[2]は溶液状態でも安定である。これは、硫黄系化合物を添加することにより、反応液中に残存する金属系還元触媒の活性が失活するためと考えられる。
【0030】
本発明で使用する硫黄系化合物としては、例えば硫黄単体、二硫化炭素、−SH基を含有する誘導体、潜在的に−SH基を含有する誘導体、およびS−S結合を含有する誘導体が挙げられ、好ましくは潜在的に−SH基を含有する誘導体が挙げられる。
【0031】
「−SH基を含有する誘導体」とは、−SH基を1つまたはそれ以上含有する誘導体であり、例えば硫化水素、NaSH、NH4SH、KSH等のチオールの塩、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール等のアルカンチオール、ベンゼンチオール等のアレーンチオール、およびメタンジチオール、エタンジチオール等の−SH基を2つ以上含有する誘導体が挙げられる。
【0032】
「潜在的に−SH基を含有する誘導体」とは、もとは−SH基を含有しておらず、中和または対イオンを水素原子に置き換えることにより−SH基を含有するような誘導体のことであり、例えば−SNa基は中和によりSH基となるため、−SNa基を有する誘導体は潜在的に−SH基を含有する誘導体といえる。具体的には、硫化ソーダ、硫化アンモニウム、およびハイドロサルファイトナトリウムが挙げられ、好ましくはハイドロサルファイトナトリウムが挙げられる。
【0033】
「S−S結合を含有する誘導体」とは、S−S結合を1つまたはそれ以上含有する誘導体であり、例えばジメチルジスルフィド、ジフェニルジスルフィド等の有機ジスルフィド誘導体、S−S結合を連続して3つ以上含有する有機ポリスルフィド誘導体、ポリ硫化アンモニウム等の無機ポリスルフィド誘導体などが挙げられる。
【0034】
本発明における硫黄系化合物の使用量は、その種類および金属系還元触媒の種類とその使用量に依存し、使用した触媒の活性が失活するまで硫黄系化合物を添加すればよい。例えば、金属系還元触媒としてパラジウム炭素をヒドラゾン体[1]1重量部に対して5重量%使用し、硫黄系化合物としてハイドロサルファイトナトリウムを使用した場合、硫黄系化合物はヒドラゾン体[1]1重量部に対して1〜10重量%、好ましくは3〜6重量%使用すればよい。
【0035】
硫黄系化合物は、通常10〜60℃、好ましくは20〜40℃で添加すればよく、金属系還元剤の種類や使用量などに依存するが、通常10分〜60分で金属系還元触媒は失活する。
【0036】
ヒドラジン体[2]の単離および精製は、常法で行うことができる。
【0037】
出発物質であるヒドラゾン体[1]は、公知の方法によって製造することができ、例えば、以下の2つの方法によって得ることができる。
(i)下記スキームにおいて、アルデヒド体1をヒドラジンと反応させてヒドラゾン体2とし、脱酸剤として塩基を用いてアシル化剤と反応させることによって、または(ii)下記スキームにおいて、アルデヒド体1とアシルヒドラジン化合物3とを反応させることによって、得ることができる。
【0038】
【化7】
【0039】
本発明の方法により得られたヒドラジン体[2]は、WO97/40029に記載の方法によって、医薬品化合物へと変換することができる。
【0040】
【実施例】
以下に本発明を参考例、比較例、実施例により説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、下記表における[I]〜[III]は、それぞれ下記化合物[I]〜[III]に対応する。
【0041】
【化8】
【0042】
参考例1(塩基を添加しない場合の還元)
メタノール25mlに、N−(tert−ブトキシカルボニル)−N’−{[4−(ピリジン−2−イル)フェニル]メチリデン}ヒドラゾン(5g、16.82mmol)および5%Pd/C(0.125g、N−(tert−ブトキシカルボニル)−N’−{[4−(ピリジン−2−イル)フェニル]メチリデン}ヒドラゾンに対して2.5重量%)を加え、水素置換後、常圧で50℃、5時間還元を行った。反応後、反応液の一部を採取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したところ、N−(tert−ブトキシカルボニル)−N’−[4−(ピリジン−2−イル)ベンジル]ヒドラジン97.11%相当、4−(ピリジン−2−イル)トルエン2.69%相当、原料物質であるN−(tert−ブトキシカルボニル)−N’−{[4−(ピリジン−2−イル)フェニル]メチリデン}ヒドラゾン0.36%相当の組成であった。
【0043】
実施例1〜3(塩基を添加した場合の還元)
表1に示した反応条件に変更する以外は、参考例1と同様にして反応を行った。但し、塩基の添加は、水素置換前に金属系還元触媒の添加と同時に行った。得られた反応液をHPLCで分析した結果、表1のようであった。表1中の塩基の使用量は、原料である式[II]の化合物1モルに対するモル数である。
【0044】
【表1】
【0045】
比較例1および実施例4
上記参考例1と同様にして得た反応液を、窒素ガス中、それぞれ表2に示した条件下で攪拌した液をHPLCで分析した。結果は、表2のようであった。
【0046】
比較例2および実施例5
上記実施例1で得た反応液を、窒素ガス中、それぞれ表2に示した条件下で攪拌した液をHPLCで分析した。結果は、表2のようであった。
【0047】
実施例6および7
上記参考例1と同様にして得た反応液を、水素/窒素(1/2)混合ガス中、それぞれ表2に示した条件下で攪拌した液をHPLCで分析した。結果は、表2のようであった。
【0048】
【表2】
【0049】
本発明により、ヒドラゾン体[1]からヒドラジン体[2]を製造する際、目的の反応である還元反応が選択的に進行し、かつ副反応である水素化分解反応が抑制される。これにより、目的化合物を高収率で得ることができる。
【0050】
実施例8
水素/窒素(約1/2)の混合ガス中、実施例3の反応液を濾過後、同温度で、得られた濾液にハイドロサルファイトナトリウム(100mg)を添加して、メタノールを減圧留去した。得られた残渣にヘプタン/イソプロパノール(容積比=9/1)を加えて加熱溶解し、窒素ガス中で濾過した後、冷却して結晶化することにより、N−(tert−ブトキシカルボニル)−N’−[4−(ピリジン−2−イル)ベンジル]ヒドラジンを4.2g得た(収率:83%)。当該結晶に対するHPLC分析の結果、原料物質であるN−(tert−ブトキシカルボニル)−N’−{[4−(ピリジン−2−イル)フェニル]メチリデン}ヒドラゾンに対応するピークは検出されなかった。
【0051】
【発明の効果】
本発明により、還元反応が選択的に進行し、かつ副反応である水素化分解反応が抑制された、ヒドラゾン誘導体からヒドラジン誘導体を製造する方法を提供することができる。
Claims (6)
- 塩基として、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムから選ばれる炭酸アルカリ、または炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムから選ばれる炭酸アルカリとトリエチルアミンとの組み合わせ、並びにパラジウム系触媒の存在下、式[1]
で表されるヒドラゾン誘導体を還元することを特徴とする、式[2]
で表されるヒドラジン誘導体の製造方法。 - パラジウム系触媒がPd/Cである、請求項1記載の製造方法。
- 炭酸アルカリが炭酸ナトリウムである、請求項1記載の製造方法。
- 還元反応後、水素ガス単独または不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で反応液を濾過する請求項1記載の製造方法。
- 還元反応後、反応液を冷却し、不活性ガス単独の雰囲気下で濾過する、請求項1記載の製造方法。
- 冷却温度が30℃以下である、請求項5記載の製造方法。
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