JP4276803B2 - 繊維強化積層体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化管状体に係り、特に、強度の安定性に優れ、軽量の繊維強化管状体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、釣竿等の管状体に適用される繊維強化積層体は、ガラス繊維や炭素繊維等の強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸して形成したプリプレグを巻回し、硬化することにより構成される。
【0003】
このような繊維強化積層体の強度を更に向上させるために、熱硬化性樹脂にセラミックスや金属のウィスカーを混合する方法(特公平3−20338号公報)や、プリプレグ層間にウィスカー層を介在させる方法(特公平5−15407号公報)が知られている。
【0004】
このような方法により、繊維強化積層体の強度を向上させることが可能であるが、しかし、その反面、ウィスカーは硬質、高弾性で、かつ高強度であるため、配合量を極めて慎重に選択しなければ、強化繊維を傷つけてしまい、逆に強度が低下してしまう。即ち、ウィスカーの配合量によって強度が向上する場合と低下する場合とがあり、強度の安定性に問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情の下になされ、強度の安定性を有するとともに、軽量の繊維強化管状体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、強化繊維に母材を含浸した2層の強化繊維層を含む繊維強化積層体からなる繊維強化管状体であって、前記2層の強化繊維層の層間および/または前記2層の強化繊維層のうち樹脂含量(RC)のより高い強化繊維層の強化繊維間の母材中に、0.1μmより小さい直径を有し、かつ前記母材および強化繊維より小さい比重を有する極微細繊維を混入したことを特徴とする繊維強化管状体を提供する。
【0007】
また、本発明は、強化繊維に母材を含浸した繊維強化積層体の層間および/または強化繊維間の母材中に、1μmより小さい直径を有し、かつ弾性率が20トン/mm(196000N/mm)以下である極微細繊維を混入したことを特徴とする繊維強化積層体を提供する。
【0008】
以上のように構成される繊維強化積層体では、極微細繊維は非常に細いか、または弾性率が非常に小さいため、自在に屈曲し、従って、強化繊維を折り曲げたり傷つけたりすることはない。そのため、強化繊維の強度の低下を防止することが出来、積層体の強度の向上および安定化を図ることが可能である。また、極微細繊維は母材および強化繊維より小さい比重を有しているため、軽量であり、かつ高い比強度を有する繊維強化積層体を得ることが出来る。
【0009】
強化繊維としてカーボン長繊維を用い、極微細繊維として、繊維径500nm以下のカーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーを用いることが出来る。また、極微細繊維として、中空状又は孔隙を有するものを用いることが出来る。このような材料を用いることにより、上述と同様に、強度の向上および安定化を図ることが可能であるとともに、極めて軽量で、かつ高い比強度を有する繊維強化積層体を得ることが出来る。
【0010】
更に、本発明の繊維強化積層体では、極微細繊維を、母材に非直線状の形態、例えば、屈曲、湾曲等した状態で混入することが出来る。そうすることにより、極微細繊維は三次元方向の各方向に補強効果を発揮し、繊維強化積層体の強度の向上をバランスよく図ることが出来る。
【0011】
更にまた、極微細繊維を、気体を含有した状態で母材に混入することが出来る。このような構成では、空気、水素、窒素等の気体が極微細繊維の内部に密封状態で含まれているので、積層体内の気泡とは異なり、積層体の強度の低下を生ずることなく一層の軽量化を図ることが出来る。
【0012】
また、極微細繊維は、密着性向上のための表面処理が施され、表面処理後の表面に微細な凹凸を有するものとすることが出来る。このような極微細繊維によると、極微細繊維表面の微細な凹凸のため表面積が拡大し、そこに広範囲に母材が接触するため、積層体の層の界面における剥離を防止することが可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示し、本発明についてより詳細に説明する。
本発明に係る繊維強化積層体は、強化繊維に母材を含浸した繊維強化積層体の層間および/または強化繊維間の母材中に、極微細繊維を混入したことを特徴とする。
【0014】
第1の発明に使用される極微細繊維は、0.1μmより小さい直径を有するものである。極微細繊維の直径が0.1μm以上である場合には、自在に屈曲することが困難となり、従って、強化繊維を折り曲げたり傷つけたりすることがあり、本発明の目的を達成することが困難となる。なお、極微細繊維の直径は、強化繊維の直径の、好ましくは1/5以下、より好ましくは1/10以下であるのがよい。
【0015】
また、極微細繊維は、母材および強化繊維より小さい比重、好ましくは0.5〜0.01の比重を有するものである。極微細繊維の比重が母材および強化繊維の比重以上の場合には、繊維強化積層体の軽量化を達成することが困難となる。
【0016】
第2の発明に使用される極微細繊維は、1μm以下の直径を有するとともに、20トン/mm(196000N/mm)以下の弾性率を有するものである。このように低い弾性率を有することにより、0.1μm以上(1μm未満)の直径を有するものであっても、強化繊維を傷つけることを防止することが出来、本発明の目的を達成することが出来る。
【0017】
以上の第1および第2の発明に係る繊維強化積層体において、極微細繊維の強度は、母材よりも高強度を有することが望ましい。また、極微細繊維の硬度は、強化繊維よりも小さいことが望ましい。このように、強化繊維よりも硬度の低い材料を用いることにより、強化繊維を傷つけることを防止することが出来る。
【0018】
繊維強化積層体の層間または強化繊維間の母材中に混入される極微細繊維の配合割合は、強化繊維の体積よりも少ない量であるのが望ましい。例えば、配合位置における単位断面積当り25%以下、好ましくは20%以下、0.1%以上となるような量であるのがよい。極微細繊維の配合割合が多すぎると、均一に混合しにくいか、または剥離等を生じ易くなり、少なすぎると、補強や軽量化等の物性改良効果が低くなり、好ましくない。
【0019】
本発明に係る繊維強化積層体では、強度、直径等の異なる複数種類の極微細繊維を用いることも可能である。即ち、同一位置に複数種類の極微細繊維を配設してもよく、或いは、異なる強度または直径ごとに配設位置を変えてもよい。
【0020】
極微細繊維は、短繊維状、長繊維状等、任意の形状のものを用いることが出来る。極微細繊維は、積層体の層間に配設しても、強化繊維の繊維間に配設してもよい。
【0021】
極微細繊維は、RC(樹脂含量)が多い繊維強化層に相対的に多く配合されるのが望ましい。樹脂が多い部分は相対的に強度が弱くなり易いので、極微細繊維の配合量を多くすることにより、繊維強化積層体の強度の向上および安定化を図ることが可能である。
【0022】
例えば、軸長方向繊維層のRCを低くし、周方向繊維層のRCを多くするとともに、この周方向繊維層の中に、または周方向繊維層と軸長方向繊維層との層間に配設するのがよい。そうすることにより、通常、周方向繊維層を外層や内層に用いることが多いので、この層の樹脂部分からのクラックの発生を防止することが出来る。なお、繊維方向には無関係に、RCの高い層を1層以上設け、そこに極微細繊維を配設してもよい。
【0023】
極微細繊維をRCが低い層、例えば25%以下の層に配設する場合、単位体積比または単位面積比で10%以下の量とすることが望ましい。10%を越えると、強度の安定化を得ることが困難となる。下限は特に限定されず、わずかの量でも強度の向上および安定化に寄与するが、0.1%以上混入させることが望ましい。
【0024】
極微細繊維としては、上述したように、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーを用いることが出来る。カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーは、約1μm以下の繊維径を有する極めて微小な繊維状の形態を有し、約5〜7μmの繊維径を有するカーボンファイバーとは全く異なる材料である。また、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーは、強度がカーボンファイバーよりも極めて高いという特徴を有する。
【0025】
カーボンナノチューブは、図6に示すように、炭素網面が繊維軸に平行で、断面が同心円(年輪)状の中空状構造を有する材料である。比重が1.0以下と低く、比強度が、通常のカーボン繊維の数倍〜数十倍と高い。
【0026】
なお、図6に示すような中空状構造では、空気、水素、窒素等の気体を内部に密封状態で含ませることが出来るので、このような気体は積層体内の気泡とは異なり、積層体の強度の低下を生ずることなく一層の軽量化を図ることが出来る。
【0027】
カーボンナノファイバーは、図7に示すように、炭素網面の繊維軸に対する配向が平行であるもの(a)、傾斜しているもの(b)、垂直であるもの(c)があるとともに、断面組織も、同心円状に限らず、同心円錐状、平板状のものもある。カーボンナノファイバーは、極微小な孔隙(ナノポア)を有するため、軽量であり、比重が1.0以下と低い。
【0028】
なお、図7に示すような配向を有するカーボンナノファイバーは、その大部分または一部が特定の方向に指向するように混入させる場合に好適に用いることが出来る。
【0029】
本発明に使用される強化繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、金属繊維、合成樹脂繊維等を用いることが出来る。また、強化繊維は、直径の10倍以上の長さを有する長繊維であることが望ましく、UD、織布、不織布のいずれを用いることも出来る。或いは、マット状のものを用いることも可能である。或る程度、サイズを大きくして使用する方が、効率よく強化作用を発揮することが出来るとともに、強化繊維の混合比率を大きくすることが出来る。
【0030】
本発明に使用される母材としては、樹脂、金属のいずれをも用いることが出来る。樹脂としては、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化製樹脂を用いることが出来、金属としては、アルミニウム、チタン、ステンレス等を用いることが出来る。
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の具体例について説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る管状体を示す斜視図である。この管状体1は、FRP(繊維強化樹脂)を巻回して得た積層体からなる。
図2は、図1に示す管状体の一部断面を示す図である。図2に示すように、管状体1は、内側から順に、第1層11、第2層12、第3層13、第4層14、第5層15からなる5層構造を有する。この場合、第1層11は内層を構成し、第2〜4層12〜14は中層を構成し、第5層15は外層を構成する。
【0033】
各層の仕様は、以下の通りである。
Figure 0004276803
なお、以上の例は5層構造の例であるが、必ずしも5層すべてがなくてもよい。即ち、3層構造でも、4層構造でもよく、複数層あればよい。
各層は、1層から構成されていても、或いは複数層からなるものであってもよい。また、各層の厚さは特に限定されず、任意であるが、曲げ剛性を向上させる上では、軸長方向繊維層の層厚を周方向繊維層の層厚の2倍以上とすることが望ましい。
【0034】
周方向繊維層(交差方向繊維層)の単層(またはプリプレグ)の層厚は、0.05mm以下、好ましくは0.01〜0.05mmと薄くすることが、強度の安定化のためには好ましい。
中間層のRC(樹脂含量)は、内層および外層のRCと同等か、またはそれより多くすることが望ましい。
【0035】
図3は、極微細繊維、例えばカーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーを、外層を構成する強化繊維間、および外層と中層との間に配設した構造を示す断面図である。図3において、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバー16は、外層(第5層15)を構成する強化繊維の周囲、即ち繊維と繊維の間、および外層(第5層15)と中層(第4層14)との間に配設されている。なお、外層の上には、塗膜層17が被覆されている。
【0036】
このような構造により、外層自体、および外層と中層との界面が補強され、管状体1の強度の向上および安定化を図ることが出来る。
なお、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーは、図3に示す位置に限らず、どの層内および/または層間に配設してもよい。また、層内および/または層間の全体に配設しても、一部に配設してもよい。
【0037】
図4は、極微細繊維としてのカーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーの配設状態を説明する断面図である。図4において、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバー21は、強化繊維としてのカーボン繊維22に含浸した母材としてのエポキシ樹脂23中に混入されている。
【0038】
このような構造では、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバー21は、カーボン繊維22に部分的に、またカーボン繊維22に沿うように接触している。即ち、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバー21がカーボン繊維22に接触していても、それ自体容易に変形するため、カーボン繊維22の方向を蛇行させたり、カーボン繊維22を傷つけることがない。そのため、カーボン繊維22の強度の低下を生ずることなく、管状体全体の強度の向上および安定化を図ることが出来る。
【0039】
なお、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバー21は、図4では、エポキシ樹脂23中にランダムに混合されているが、その大部分または一部が特定の方向に指向するようにしてもよい。例えば、本発明の繊維強化積層体をゴルフシャフト、ゴルフヘッド等に適用する場合、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバー21に方向性を持たせて混入したり、一部に集中(層状)配分することも可能である。例えば、かたまり状にして混入したり、層状に配分してもよい。これにより、混入密度を多くすることが出来る。
【0040】
図5は、カーボンナノファイバーの様々な例を示し、(a)は、1本のカーボンナノファイバー31を拡大して示す。カーボンナノファイバー31は、5〜10nmの直径を有し、屈曲および湾曲した非直線状の、断面多角形状の短繊維状である。カーボンナノファイバー31の表面は、段差またはスジ状の微細な凹凸32が形成されている。
【0041】
このような構造によると、カーボンナノファイバー31の表面の微細な凹凸のため、表面積が拡大し、そこに広範囲に母材が接触するため、積層体の層の界面における剥離を防止することが出来るという利点がある。
【0042】
図5(b)は、直径30〜50nmである、(a)に示すカーボンナノファイバー31よりも直径の大きい、断面略円形のカーボンナノファイバー32を示すSEM拡大図である。この図に示すカーボンナノファイバー32も、非直線状であって、表面にシワ状等の極微小凹凸34が形成されている。
【0043】
図5(c)は、多数の短繊維状のカーボンナノファイバー35がからまって塊となった状態を示すSEM拡大図である。1本のカーボンナノファイバー35の直径は約50nmである。
【0044】
図5に示すいずれのカーボンナノファイバーを用い、繊維強化積層体の層間および/または強化繊維間の母材中に混入しても、繊維強化積層体の強度の向上および安定化を達成することが可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によると、繊維強化積層体の層間および/または強化繊維間の母材中に極微細繊維を混入しているので、強度の向上および安定性を図ることが出来るとともに、軽量の繊維強化積層体を得ることが可能である。かかる繊維強化積層体は、釣竿、ゴルフクラブ、その他のスポーツ用品に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る管状体を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係る管状体の一部を示す断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る管状体における、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーを、外層を構成する強化繊維間、および外層と中層との間に配設した構造を示す断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る管状体における、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーの配設状態を説明する断面図。
【図5】カーボンナノファイバーの様々な例を示す図。
【図6】カーボンナノチューブの構造を示す図。
【図7】カーボンナノファイバーの構造を示す図。
【符号の説明】
1・・・管状体
11・・・第1層
12・・・第2層
13・・・第3層
14・・・第4層
15・・・第5層
16・・・カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバー
17・・・塗膜層
21,31,33,35・・・カーボンナノファイバー
22・・・カーボン繊維
23・・・エポキシ樹脂
32・・・微細な凹凸
34・・・極微小凹凸

Claims (2)

  1. 強化繊維に母材を含浸した2層の強化繊維層を含む繊維強化積層体からなる繊維強化管状体であって、前記2層の強化繊維層の層間および/または前記2層の強化繊維層のうち樹脂含量(RC)のより高い強化繊維層の強化繊維間の母材中に、0.1μmより小さい直径を有し、かつ前記母材および強化繊維より小さい比重を有する極微細繊維を混入したことを特徴とする繊維強化管状体。
  2. 前記2層の強化繊維層は、軸長方向強化繊維層及び周方向強化繊維層であり、該周方向強化繊維層は軸長方向強化繊維層よりも樹脂含量(RC)が高いことを特徴とする請求項1に記載の繊維強化管状体。
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