JP4275448B2 - パネル取付金具及びパネル取付方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に軽量気泡コンクリート(ALC)パネルなどからなる床や屋根パネルの取付けに使用される取付金具および取付方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、軽量気泡コンクリート(ALC)パネルなどからなる床や屋根パネルを取付けるには次のような方法や提案がなされている。
第1の従来例としては、ほぼ一様な円形断面のフックボルトを用い、該フックボルトの雄ねじがある一端側を、ALCパネルの貫通孔に裏面より挿通し、該フックボルトの雄ねじがある一端側に丸座金を入れ、ナットを雄ねじに螺合させて、ALCパネルに該フックボルトを仮止めし、次に、ALCパネルをH形鋼からなる梁(あるいは柱)の所定位置に載置し、該フックボルトを回転させ他端側のフック部分の掛止部を梁のフランジに掛けて、ナットを回して本締め行い、ついで該フックボルトを梁に溶接して固定することにより、ALCパネルを梁に取付ける方法がある。
【0003】
第2の従来例としては、特許2835485号(特許文献1)に提案されているフックボルトの雄ねじ側に掛止部の方向を示す偏平面を形成して、雄ねじの断面を非円形にした非円形フックボルトと、該非円形フックボルトの非円形断面部分が挿通される非円形孔を有し前記非円形フックボルトと共に回る共回り座金とからなり、ナットを回して締結する際に止めピンや共回り座金に設けた止め片で共回り座金の回転止めを可能として、非円形フックボルトの回転を防止できるようにすることにより、フックボルトを梁に溶接することなく、ALCパネルを取付けることを可能とする方法がある。
【0004】
しかしながら、前述の第1の従来例では、ナットを回して締め付ける時に、フックボルトが共回りしてしまい、円滑な締め付けが出来ないのみならず、フックボルトを梁に溶接する必要があった。また、共回りを防ぐために、掛止部の方向から掛止部を手や工具によって押さえながら締め付けることも行われているが、掛止部が梁のフランジの端面に対し直角でなく傾斜した状態で固定されてしまうことも多く、問題となることがあった。
【0005】
このような第1の従来例の問題を回避するために、第2の従来例による非円形フックボルトが提案されているが、非円形フックボルトは、雄ねじに偏平面をあらかじめ形成する加工手間が非円形フックボルトの製作時に発生し、さらに、座金として、汎用的な丸座金は使用できず、特殊な止めピンや止め片を予め加工した共回り座金を用意する必要があるなどの問題がある上、雄ねじが偏平面を形成するために、切削されてねじ量が少なくなっているので、ねじ締め付け時に、ねじ山同士の摩擦抵抗が小さくなりがちで、ALCパネル取付完了後の建物の変形や各種振動などで、ナットの回転緩みが生じやすい傾向にあった。
【0006】
このような第1や第2の従来例の問題を回避するために、図5、図6、図7に示すようなフックボルトの掛止部にALCパネルに貫入する爪部を突出させて、ナットを回して締結する際に、爪部を自動的にALCパネルに貫入させ、回転を防止することにより、フックボルトを溶接をせずに梁にALCパネルを固定することが可能な方法を提案した。(特開2002−242349号(特許文献2)、266453号(特許文献3))
しかしながら、この第3の方法においても、フックボルトをALCパネルの貫通孔に裏面より挿通し、雄ねじがある一端側にナットを螺合させて、ALCパネルに仮止めする必要があり、また、あらかじめパネルにセットした場合、敷き込み後に180度回転させなければならず、施工しづらいという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特許2835485号公報
【特許文献2】
特開2002−242349号公報
【特許文献3】
特開2002−266453号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、パネルへの仮止めが簡単で、しかもパネルの敷き込み後であっても簡単な作業でパネルの取付施工ができるパネル取付金具及びパネル取付方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フックボルト軸部にバネ状の羽部を設けることにより、上記課題が解決できることを見出したことに基づき、完成されたものである。
本発明は、一端側にねじを刻設した軸部の他端側に、好ましくは爪部を突出した掛止部を設けるとともに、軸部にパネル穴の内部に係止されるバネ状の羽部を少なくとも1カ所以上設けたことを特徴とするパネル取付金具及び該パネル取付金具の軸部を取付部材上に当接されたパネル端部の所定位置に開けた貫通孔およびこれに連通しこれよりも大きい収容孔に下方より挿通して、該パネル取付金具を該軸部に設けられたバネ状の羽根によりパネル内部に係止し、次いで締付部材を収容孔から軸部のねじ部に螺合させて、パネル取付金具の掛止部を該取付部材の下部に掛止してなることを特徴とするパネル取付方法である。
【0010】
本発明のパネル取付金具及び取付方法によれば、パネルの敷き込み作業を一気に行った後、パネルの裏面から軽く挿入するだけで軸部に設けた羽部がパネル穴の内部に係止し落下せず保持できる。また、パネルの敷き込み後に施工でき、あらかじめ金具をパネルにセットする必要が無く、裏面の金物の突出部がパネルの敷き込み作業の邪魔になることがない。
また、本発明によれば、挿入後に床上で締め付け作業をする事で、掛止部の軸部側に形成された爪部が、自動的にパネルに貫入することにより軸部の回転を防止でき、掛止部の建物躯体側への溶接作業を無くし、施工の簡素化が可能になる。また、掛止部の方向を確認しながら取付金物を180度回転させる必要も無い。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態を図1から図4により、具体的に説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係るパネル取付金具を示す。図2は、本発明の第1の実施例に係るパネル取付金具を使用して、ALCパネルを床パネルとして取り付ける場合を示す説明図である。図3は第1の実施例に係るパネル取付金具のナットを円盤ナットにして座金の機能を持たせた場合を示す。図4は、本発明に係るパネル取付金具の軸部の羽部を変えた他の実施例を説明するための説明図である。
【0012】
図1に示す本発明の第1の実施例に係るパネル取付金具1は、軸部2の一端側にねじ部4が刻設されたフックボルトの該軸部の他端側の掛止部3にALCパネルに貫入する爪部6を軸部の方向に突出するように折り曲げ加工したプレートを組み込み、軸部には幅3mm、長さ30mm、厚さ0.5mmのプレートを溶接により2箇所取り付け、羽状に広げバネ状の羽部を2箇所設けて形成されている。爪部6はプレートの両端に2箇所、軸部方向に15mmの高さで形成されている。この爪部はパネルに貫入する部分である。図2に示すようにこの爪部の高さは、ALCパネル9を取付けるH型鋼の梁10のフランジ11の最大厚さより5mm程度高くすると、この梁のサイズより薄いサイズのフランジにはほぼすべて回転の防止機能を果たすことが可能となる。パネル取付金具1をALCパネル9の貫通孔9aに挿入するとバネ状の羽部が広がることにより、挿入後に、羽部が係止しパネル取付金具1の落下を防止してくれる。そのため、このパネル取付金具1をALCパネル敷き込み後に、ALCパネルの裏面から貫通孔9aに軽く挿入するだけで軸部に設けた羽部がパネル穴の内部に係止し落下せず保持できる。そのため、挿入後に床上でナットの締め付け作業をする事ができ、しかも、掛止部の軸部側に形成された爪部が、自動的にパネルに貫入することにより軸部の回転を防止しながら取付作業をすることができる。
【0013】
次に図1に示したパネル取付金具1を使用し、ALCパネル9を床版として取り付ける場合を例にあげ、図2を参照しながら、パネルの取付方法について説明する。
ALCパネル9の端部寄りの所定位置には貫通孔9aおよびこれに連通しこれよりも大きい収容孔9bを開ける。H形鋼からなる梁10のフランジ11上にALCパネル9の端部下面を当接させる。次に、パネル取付金具1の掛止部3をフランジ11の方向に向け、下方より貫通孔9aに挿通し、パネル取付金具1を仮止めする。バネ状の羽部が広がることにより、挿入後に、羽部がALCパネル内に係止し、パネル取付金具1がパネル9に仮止めされる。なお、ここまでは、パネル取付金具1の掛止部3の軸部近傍5に突出形成されている爪部6はパネルに貫入しない状態となっている。引き続き、この状態で、上方より収容孔に丸座金7を配置し、ナット8をねじ部4に螺合させてナット8を本締めすると、爪部6が下方よりALCパネル9に貫入し、パネル取付金具1の回転が拘束され、掛止部3はフランジ11から外れることがなく固定され、ALCパネル9の取付けが完了する。
【0014】
ナット8には、皿形ばね座金付きのものや、セレーション加工付きのものなど、緩み防止機構が付いたもの、あるいは、図3に示すように円盤状のものや、ナットと丸座金がカシメ加工により一体化しているものを採用してもよい。
また、軸部2内側にねじを刻設し、ねじ部4を雌ねじにしてもよく、この場合には、締付部材としてナット8の代わりに、ボルトによって締め付けることになる。この場合、ボルト頭部は軸部より大きくされる。
【0015】
図4は、本発明に係るパネル取付金具において、羽部の構成が違う他の例を示す。図4(A)は、弾力のある針金を略Ω状に折り曲げ、且つ両端を下向きになるように折り曲げたクリップを軸部のねじ山にはめ込んで羽部を作成した例である。図4(B)は、図4(A)を更に折り曲げ1回転形状とし、ねじ山への保持力を高めたものである。図4(C)は図1に示すパネル取付金具1の爪部6を軸部の方向に突出するように折り曲げ加工したプレートに立ち上げ部を設け、これにより、羽部を形成したものである。図4(D)は羽部を1ヶ所とし、さらに羽部の先端を軸部側へ折り曲げたものである。折り曲げることにより施工中、羽部の先端が手に刺さる危険を防止することができ、安全性が高まるとともにALCパネルの貫通孔に挿入した時に羽部の先端の折り曲げ部が貫通孔に突出して、落下防止機能を向上させることができる。針金を1回転以上折り曲げたクリップで羽部を1ヶ所とする時は羽部は下側に連なるようにすることが貫通孔に挿入し易くなり好ましい。
【0016】
針金を折り曲げたクリップを軸部のねじ山にはめ込んで羽部を作成する時は、針金の径をねじ山の高さと同程度にすると貫通孔をパネル取付金具の軸部と同程度にでき、望ましい。
また、本発明は、パネル面を水平にした床や屋根面のみならず、斜めの勾配屋根へパネルを取り付ける場合にも使用することができる。また、取付部材はH型鋼のみならず、パネル取付金具の掛止部が掛止できるものであれば、アングルや溝型鋼など、他の部材であってもよい。
【0017】
【発明の効果】
本発明は、上述の如く構成したので、パネル取付金具をパネルの裏面から軽く挿入するだけで軸部に設けた羽部がパネル穴の内部に係止し落下せず保持でき、パネルへの仮止めが簡単で、しかも、あらかじめ金物をパネルにセットする必要も無く、パネルの敷き込み後であっても、簡単な作業でパネルの取付施工ができる。また、挿入後に床上で締め付け作業をする事で、掛止部の軸部側に形成された爪部が、自動的にパネルに貫入することにより軸部の回転を防止でき、掛止部の建物躯体側への溶接作業を無くし、施工の簡素化を可能になる。また、掛止部の方向を確認しながら金物を180度回転させるような、特別な施工手間は不要とできる。更に簡単な床下作業のみで、回転を防止し、床上で安全に締め付け作業ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係るパネル取付金具を示す。
【図2】本発明の第1の実施例に係るパネル取付金具を使用して、ALCパネルを床版として取り付ける場合を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係るパネル取付金具のナットを円盤ナットにして座金の機能を持たせた場合を示す。
【図4】(A)、(B)、(C)及び(D)は、それぞれ本発明のパネル取付金具の羽部の形態例を示す説明図である。
【図5】従来例によるパネル取付金具を示す斜視図である。
【図6】従来例のパネル取付状態を示す斜視図である。
【図7】従来例によるパネル取付方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 パネル取付金具
2 軸部
3 掛止部
4 ねじ部
5 羽部
6 爪部
7 丸座金
8 ナット
9 ALCパネル
9a 貫通孔
9b 収容孔
10 H形鋼からなる梁
11 フランジ
Claims (3)
- 一端側にねじを刻設した軸部の他端側に該軸部と略垂直に掛止部を設けるとともに、該軸部にパネル穴の内部に係止されるバネ状の羽部を少なくとも1カ所以上設けたことを特徴とするパネル取付金具。
- 掛止部に爪部を突出させたことを特徴とする請求項1記載のパネル取付金具。
- 請求項1又は2記載のパネル取付金具の軸部を取付部材上に当接されたパネル端部の所定位置に開けた貫通孔およびこれに連通しこれよりも大きい収容孔に下方より挿通して、該パネル取付金具を該軸部に設けられたバネ状の羽根によりパネル内部に係止し、次いで締付部材を収容孔から軸部のねじ部に螺合させて、パネル取付金具の掛止部を該取付部材の下部に掛止してなることを特徴とするパネル取付方法。
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