JP4273692B2 - 熱電変換材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱を直接電気に変換する熱電変換材料とその製造方法に関するものである。熱電変換材料を用いて製造される熱電モジュールは、特に自動車や各種製造プラント、発電プラント、ゴミ焼却施設などの排熱などの未利用のエネルギーを効率良く電気に変換するものであり、本発明によれば、省エネルギーに寄与するとともに、昨今問題となっている二酸化炭素の排出を抑制するなどの効果が奏される。
【0002】
【従来の技術】
熱電変換材料は、その材料の両端に温度差をつけることにより、熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換(ゼーベック効果)して取り出せる性質を持つ材料である。熱電変換材料の性能の高さの指標として、下式で示される性能指数(Figure of Merit)Zが用いられており、この値が大きいほど高性能であることを意味する。
Z=α2 σ/κ(K-1)
ここで、α:ゼーベック係数(V/K)、σ:電気伝導度(S/m)、κ:熱伝導率(W/mK)である。
上記性能指数Zは温度の逆数の次元なので、これに温度をかけて無次元量として表現した、無次元性能指数(ZT)を用いることも多い。また、上式中の分子α2 σを出力因子(パワーファクター)と言い、熱電変換材料の性能の目安とすることもある。
【0003】
図1(a)及び図1(b)に従来の代表的な熱電変換材料の無次元性能指数(ZT)をp型及びn型のそれぞれについて示す。この図から分かるように、熱電変換材料は、その特性の温度依存性により、使用温度域によって、材料を使い分ける必要がある。これらの熱電変換材料の中から、これまで実用に供されてきた代表的な3つの材料について、簡単に特性や特徴を述べる。
【0004】
BiTe系材料は、図1でも分かる通り、低温域では最も高い性能指数を示す材料で、現在では熱電冷却用の材料として実用化された最も利用されている熱電変換材料である。
実用材料としては、Bi2 Te3 とSb2 Te3 材料の固溶体が用いられ、その比率や、Bi2 Se3 などの添加により電気的特性を制御している。
BiTe系材料の結晶構造は層状化合物であり、物性も強い異方性があり、それを利用して高い性能の素子を構成できるが、c軸に垂直な面で容易に劈開する性質を持つため機械的強度に難点があり、焼結方法の工夫が必要となる。
【0005】
PbTe系材料は、800K以下の中温域で使用される材料で、宇宙で使用される原子炉の熱を利用する発電システムRTG(Radioactive Thermoelectric Generator)を開発する米国のSNAP(Systems for Nuclear Auxiliary Power) 計画の中心的材料となった。この計画により作られたRTGは、アポロ12〜17号や探査衛星であるパイオニア、ヴァイキングに搭載された。
【0006】
実用材料として用いるには、ドーパントとして、p型ではAg2 TeやNaを用い、n型ではPbI2 やPbBr2 を用いて、電気的特性を制御している。ただし、この材料は、大気中で酸化しやすく、そのため大気中での使用では特殊な容器に不活性ガスと共に封入するなどの工夫が必要となる。
この材料系で最も高い性能指数を示すものは、図1に示しているように、TAGSと呼ばれるGeTe−AgSbTe2 系で、650Kで2×10-3/Kと無次元性能指数(ZT)が1を大きく越えるp型材料である。しかしながら、使用温度域で構造相転移が起こるなど使いにくい材料である。
【0007】
SiGe系材料は、1270Kまで優れた熱電特性を有する材料で、有名な応用例として、深宇宙探査宇宙船のVoyageに搭載されたRTGへの応用がある。
実用材料として用いるには、ドーパントとして、p型ではBを用い、n型ではPを用いて、電気的特性を制御している。近年、GaPの添加により、熱伝導率を大きく低減できることが見い出され、性能指数が飛躍的に向上した。図1に示したSiGe系材料の特性はGaPを添加した材料の特性を示している。
【0008】
上述のように、低温域ではBiTe系材料が最も性能が高く、むしろ熱電冷却用の材料として広く実用に供されている。しかしながら、自動車の排ガスを典型例とする中温域での熱電発電のために供する材料としては、性能は高くとも実用上に問題があるTAGSなどのPbTe系材料しかなく、宇宙用途などの特殊な例に留まっており、長い間この中温域での実用的高性能熱電変換材料が求められていた。
【0009】
また、これまで長い間熱電変換材料は、TAGS以外ではZT=1を越える高性能材料はなく、「ZT=1の壁」があるといわれていたが、最近になってZT=1を越える材料系が報告されるようになった。
【0010】
本発明に述べるZnSb系材料は、歴史のある材料で、有名な例としてよく引用されるのは「パルチザンの飯ごう」といわれる応用例で1940年代に金属のコンスタンタンと組み合わせて、ゲリラが無線用の電源として使用したとのことである。しかしながら、より高性能なBiTe系やPbTe系材料のために、あまり注目されていなかった。ところが、最近になってβ−Zn4 Sb3 について、TAGSを越える性能指数を達成したとの報告(Proceedings of 15th. International Conference on Thermoelectrics,p.150,1996 年)があったことから、注目をあびている材料である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、ZnSb系材料は、高性能との報告があるものの、実用化への研究はなかなか進展していない。その原因は、本材料の機械的強度に問題があることが熱電材料の研究者の間では一般に知られているためである。
【0012】
また、ZnSb粉末は難焼結性である。そのため、焼結には高温、高圧を必要とするという報告もある。ところが、β−Zn4 Sb3 は490℃付近にβ→γの変態点が存在し、高温で焼結を試みると、その相変態のため焼結体に割れを生じる。また、高圧での焼結は、装置が大がかりになりコストが大幅にアップする。そこで、通常の一軸ホットプレスで焼結を行うと、低密度となり電気伝導性が悪く低性能となる。また、強度においても、低密度であるため低いものとなり、実用上問題となる。
【0013】
従って、本発明の目的は、空隙の少ない、緻密な微細構造を有するβ−Zn4 Sb3 焼結体からなり、高い熱電性能と高い強度を有する熱電変換材料及びその製造方法を提供し、従来一般の実用に耐える高性能熱電変換材料がなかった、自動車の排ガスを代表とする中温域の未利用エネルギーの効率的活用の可能性を拓くことにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を、下記の熱電変換材料の製造方法を提供することにより達成したものである。
【0015】
「密度が6.15g/cm3 以上であるβ−Zn4 Sb3 の焼結体であって、粒径20μm未満の微細単結晶粒を1次粒子とし、粒径20μm未満の不定形結晶粒が緊密に充填された粒径10μmから粒径200μmの多結晶粒の間を、上記1次粒子が充填された微細構造を有する焼結体からなる熱電変換材料の製造方法であって、粒径20μm未満のβ−Zn 4 Sb 3 溶製材を作製する工程と、粒径が該溶製材の粒径より大きく且つ200μm以下のβ−Zn 4 Sb 3 溶製材を作製する工程と、前者:後者=1:5〜100の重量比で混合し、焼結原料とする工程と、この焼結原料を加熱・加圧して上記焼結体を得る工程とを具備することを特徴とする熱電変換材料の製造方法。」
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、まず本発明の熱電変換材料について説明する。
本発明の熱電変換材料は、微細な単結晶粒を1次粒子とし、微細な不定形結晶粒が緊密に充填された多結晶粒の間をこの1次粒子が埋めるという構造を有するβ−Zn4 Sb3 焼結体からなるものである。
【0019】
上記1次粒子(単結晶粒)は、粒径が20μm未満であり、好ましくは粒径15μm以下、より好ましくは粒径10μm以下である。
また、上記多結晶粒は、粒径が10〜200μmであり、好ましくは粒径15〜150μm、より好ましくは粒径20〜100μmである。また、上記多結晶粒の内部は、粒径20μm未満、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下の不定形結晶粒が密に均一に分布した組織となっている。
【0020】
このように、上記焼結体は、粒径20μm未満の1次粒子(単結晶粒)と、粒径20μm未満の不定形結晶粒からなる粒径が10〜200μmの多結晶粒とからなる微細構造を有する。そのため、上記焼結体は緻密である。
尚、本発明における上記焼結体を構成する1次粒子(単結晶粒)及び多結晶粒の粒径並びに該多結晶粒を構成する不定形結晶粒の粒径は、下記の〔粒径の測定方法〕により測定したものである。
〔粒径の測定方法〕
1.試料(焼結体)を切断し、断面を研磨する。
2.試料研磨面を化学エッチングし、粒界を顕微鏡で視認できるようにする。
3.光学顕微鏡で、エッチング面を拡大撮影する。同条件で、標準スケールの写真も撮影しておく。
4.写真を、スキャナで読み取り、パソコンに画像として取り込む。その際拡大率が分かるよう、同条件で撮影した標準スケールの写真も、同様に取り込んでおく。
5.デジタル光学顕微鏡を用いる場合は、画面に表示された、スケールバーも共に画像データとしてパソコンに取り込んでおく。
6.パソコンの画面上で、得られた画像の粒界をトレースし、そのトレース画像のみを残す。
7.得られたトレース画像から、画像処理ソフト「NIH Image (Public domain software,by Wayne Rasband,National Institute of Health ,USA) 」にて、粒径を測定する。測定原理は、トレースで囲まれた部分の画素数を勘定して面積とし、同面積の円の直径に換算して粒径とする。その際、スケールバーを画面上で測定することによって、拡大率が算出できるので、その拡大率で除して実際の粒径とする。
【0021】
本発明の熱電変換材料は、このような緻密な微細構造を有するβ−Zn4 Sb3 焼結体からなるものであるため電気伝導度が大きい。このため、キャリア密度一定と考えると、ゼーベック係数はほぼ一定でも、電気伝導度の寄与が大きいため、本発明の熱電変換材料は、出力因子(パワーファクター)が大幅に増大する。
【0022】
また、微細結晶粒の多結晶や焼結体では、粒界散乱による熱伝導率を低下させる効果が生ずることが知られている(上村欣−、西田勲夫著:熱電半導体とその応用、日刊工業新聞社、昭和63年12月20日発行、第159〜163頁参照)。また、Parrott により焼結シリコン・ゲルマニウムの熱電導率の解析が行われており、結晶粒径40μmをもつSi70Ge30焼結体の格子の熱伝導率が約9%減少することが指摘されている〔J.e.Parrott;J.Phys.C(Solid State Phys.)2,147(1969)を参照〕。このようなことから、上記β−Zn4 Sb3 焼結体からなる本発明の熱電変換材料も、20μm未満の粒子で構成される微細な組織構造を有するため、熱伝導率が低下する。このため、性能指数も大幅に増大し、高い熱電性能を有する。
【0023】
また、多結晶の材料では、通常、すべり面が結晶粒界で不連続になり転位の運動は粒界で阻止される。つまり、材料は結晶粒径微細化により強化される。それは、次の関係式で表される。(門間改三、須藤 一著:構成金属材料とその熱処理、日本金属学会、昭和55年3月15日発行、第10〜12頁参照)
τf=τo+kL-1/2 (Hall-Petch の式)
τf:塑性応力
τo:転位が他の転位の影響を受けることなく結晶中を運動するときに受ける摩擦応力
L:平均の結晶粒径
k:定数
つまり、上述のような微細な組織構造を有する上記β−Zn4 Sb3 焼結体からなる本発明の熱電変換材料は、高い強度を有する熱電変換材料である。
また、本発明の熱電変換材料は、その破壊後の破面が粒内破壊の様相を呈しており結晶粒同士の結合も強固なものである。
【0024】
また、本発明の熱電変換材料は、該材料を構成するβ−Zn4 Sb3 の焼結体の密度が6.15g/cm3 以上、通常6.18〜6.31g/cm3 程度の高密度のものである。
【0025】
次に、本発明の熱電変換材料の製造方法を説明する。
まず、所定量のZn粉末、Sb粉末を秤量し、溶解法により焼結原料となるβ−Zn4Sb3 溶製材を製造する。次いで、上記溶製材を粉砕、分級し、粒径の異なる2種類の溶製材を作製する。即ち、粒径20μm未満のβ−Zn4Sb3溶製材と、粒径が該溶製材の粒径より大きく且つ200μm以下のβ−Zn4Sb3溶製材とを作製する。次いで、これらの溶製材を混合して、焼結原料を得る。
粒径20μm未満のβ−Zn4Sb3溶製材と、粒径がそれより大きいβ−Zn4Sb3溶製材との混合割合は、重量比で、前者:後者=1:5〜100、好ましくは1:10〜50である。
【0026】
次に、上記焼結原料を型に充填し、加熱・加圧して、焼結体を作製する。
上記加熱・加圧条件は、好ましくは温度400〜550℃、圧力300〜2000kgf/cm2 、より好ましくは温度450〜490℃、圧力400〜1000kgf/cm2 である。
また、上記加熱・加圧手段としては、ホットプレス法やHIP法などが挙げられる。
【0027】
【作用】
本発明の熱電変換材料の製造方法によれば、比較的簡単な工程で、緻密で微細な組織構造又は高密度であり、高い熱電性能と高い強度を有する熱電変換材料を作製できる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明の効果を具体的に説明する。
【0029】
実施例1
Zn粉末(レアメタリック社製、純度99.99%、粒度10〜30メッシュ)を84.0396g、Sb粉末(レアメタリック社製、純度99.99%、粒度10〜30メッシュ)を115.9604g秤量し、Znが化学量論組成より0.3at%リッチな組成とした。これらの粉末をアンプル管に入れ、不活性ガスを導入し、アンプル管を封入した。このアンプル管を溶解撹拌炉にセットし、溶解し、原料となるβ−Zn4 Sb3 溶製材を作製した。次いで、この溶製材をジェットミルで乾式粉砕し、10μm以下の粒径の原料1を作製した。また、上記溶製材を自動乳鉢により乾式粉砕し、15〜100μm程度の粒径の原料2を作製した。これら原料1と原料2を、原料1:原料2=1:15の重量比でVブレンダーで24時間乾式混合し、焼結原料とした。この焼結原料を黒鉛型に充填し、400kgf/cm 2の加圧下470℃で300時間でホットプレスし、β−Zn4 Sb3 焼結体を得た。
【0030】
上記焼結体のアルキメデス法により測定した密度は6.25g /cm3であり、従来一般に信頼され引用されてきた結晶構造〔H.W.Mayer,I.Mikhail,and K.Schubert,J.Less Common Metals 59,43(1978) 参照〕から計算した理論密度6.078g /cm3を大きく上まわる高密度のものであった。
上記焼結体を粉砕し、粉末X線回折測定を行った。その結果を図4に示す。この図4から明らかなように従来一般に信頼できるデータと言われてきた結晶構造であるβ−Zn4 Sb3 単相のデータと一致するパターンが得られた。この粉末X線回折データと密度との関係は不明である。
【0031】
また、上記焼結体を切断し、樹脂に埋め込み研磨後、この研磨試料の表面を光学顕微鏡により観察した。その光学顕微鏡写真を図5(a)(倍率500倍)及び図5(b)(倍率1000倍)に示す。この図5(a)及び図5(b)より、上記焼結体は、緻密で空隙の少ない組織であることがわかる。
【0032】
また、上記研磨試料の表面を浅くエッチングし(エッチング液 H2 SO4 :H2 O2 :H2 O=3:1:1)、エッチングした表面を光学顕微鏡により観察した。その光学顕微鏡写真を図2(a)(倍率1500倍)及び図2(b)(倍率2000倍)に示す。この図2(a)及び図2(b)より、上記焼結体は、粒径約10μm以下の微細な単結晶粒を1次粒子とし、粒径約15〜100μmの多結晶粒の間をこの1次粒子が埋めるという構造を有していることがわかる。
【0033】
また、上記の表面を浅くエッチングした研磨試料の表面を、上記エッチング液により更に深くエッチングし、その表面を光学顕微鏡により観察した。その光学顕微鏡写真を図3(a)(倍率1500倍)及び図3(b)(倍率2000倍)に示す。この図3(a)及び図3(b)では、多結晶粒の間に充填された粒径約10μm以下の1次粒子は、上記エッチングにより除去されており、上記多結晶粒がエッチングされて、内部の構造が明らかになっている。これらの写真より、上記焼結体の多結晶粒の内部は、粒径約10μm以下の不定形結晶粒が密に均一に分布した組織となっていることがわかる。
【0034】
以上のようにして作製した実施例1の焼結体から3w×1.5t×20Lの試験片を切り出し、ゼーベック係数及び比抵抗を測定し、出力因子(パワーファクター)を算出した。この結果を図6〜図8に示す。これより、実施例1の焼結体は高い性能を有していることが明らかである。
また、熱伝導率を測定し、無次元性能指数を算出した。この結果を図9及び図10に示す。これより、上記β−Zn4 Sb3 焼結体は、熱電性能において優れたものであることが確認された。
【0035】
また、上記β−Zn4 Sb3 焼結体から4w×3t×20Lの3点曲げ試験片を切り出し、3点曲げ試験を行ったところ、64MPaと高い値を得た。この破面の走査型電子顕微鏡写真(SEM写真)を図11(a)(倍率25倍)、図11(b)(倍率500倍)及び図11(c)(倍率1000倍)に示す。図11(a)、図11(b)及び図11(c)より、破壊は粒内破壊の様相を呈しており、粒子間の結合も強固であることがわかる。
【0036】
比較例1
原料であるβ−Zn4 Sb3 溶製材をボールミルにて10μm以下に粉砕し、これを焼結原料とする以外は実施例1とすべて同一の工程により、β−Zn4 Sb3 焼結体を得た。
【0037】
上記焼結体のアルキメデス法により測定した密度は6.05g /cm3であり、実施例1の焼結体の密度と比較すると小さいものであった。
得られた焼結体を切断し、樹脂に埋め込み研磨後、この研磨材料の表面を光学顕微鏡により観察した。その光学顕微鏡写真を図12(倍率1000倍)に示す。この図12から明らかなように、上記焼結体は、空隙の多い組織であった(図12において黒く見える部分は空隙である)。また、実施例1の焼結体で見られるような大小粒子の混在はなく、粒径10μm以下の細かい粒子が焼結していることが分かる。このような焼結体は、ホットプレス後、割れを生じ、実用材料とはならない。
【0038】
以上のようにして作製した比較例1の焼結体から3w×1.5t×20Lの試験片を切り出し、ゼーベック係数及び比抵抗を測定し、出力因子(パワーファクター)を算出した。この結果を図13〜図15に示す。これより、比較例1の焼結体は、実施例1の焼結体と比較して、電気伝導度が大幅に低下し、その結果出力因子(パワーファクター)が大幅に低下し、低い性能のものであることが明らかである。
【0039】
【発明の効果】
本発明の熱電変換材料は、空隙の少ない、緻密な微細構造を有するβ−Zn4 Sb3 焼結体又は高密度のβ−Zn4 Sb3 焼結体であり、そのため、高い熱電性能と高い強度を有する熱電変換材料である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、従来の代表的なp型の熱電変換材料の無次元性能指数を示すグラフであり、図1(b)は、従来の代表的なn型の熱電変換材料の無次元性能指数を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体の断面を研磨後、浅くエッチングした表面の光学顕微鏡写真であり、図2(a)は倍率1500倍の写真であり、図2(b)は倍率2000倍の写真である。
【図3】図3は、実施例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体の断面を研磨後を深くエッチングした表面の光学顕微鏡写真であり、図3(a)は倍率1500倍の写真であり、図3(b)は倍率2000倍の写真である。
【図4】図4は、実施例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体を粉砕し測定した粉末X線回折結果である。
【図5】図5は、実施例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体を樹脂に埋め込み研磨後の表面の光学顕微鏡写真であり、図5(a)は倍率500倍の写真であり、図5(b)は倍率1000倍の写真である。
【図6】図6は、実施例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体のゼーベック係数の測定結果を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体の比抵抗の測定結果を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体の出力因子(パワーファクター)を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体の熱伝導率の測定結果を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体の無次元性能指数を示すグラフである。
【図11】図11は、実施例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体の3点曲げ試験後の曲げ破面のSEM写真であり、図11(a)は倍率25倍の写真であり、図11(b)は倍率500倍の写真であり、図11(c)は倍率1000倍の写真である
【図12】図12は、比較例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体を樹脂に埋め込み研磨後の表面の光学顕微鏡写真である。
【図13】図13は、比較例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体のゼーベック係数の測定結果を示すグラフである。
【図14】図14は、比較例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体の比抵抗の測定結果を示すグラフである。
【図15】図15は、比較例1のβ−Zn4 Sb3 焼結体の出力因子(パワーファクター)を示すグラフである。
Claims (3)
- 密度が6.15g/cm3 以上であるβ−Zn4 Sb3 の焼結体であって、粒径20μm未満の微細単結晶粒を1次粒子とし、粒径20μm未満の不定形結晶粒が緊密に充填された粒径10μmから粒径200μmの多結晶粒の間を、上記1次粒子が充填された微細構造を有する焼結体からなる熱電変換材料の製造方法であって、粒径20μm未満のβ−Zn 4 Sb 3 溶製材を作製する工程と、粒径が該溶製材の粒径より大きく且つ200μm以下のβ−Zn 4 Sb 3 溶製材を作製する工程と、前者:後者=1:5〜100の重量比で混合し、焼結原料とする工程と、この焼結原料を加熱・加圧して上記焼結体を得る工程とを具備することを特徴とする熱電変換材料の製造方法。
- 粒径20μm未満のβ−Zn4 Sb3 溶製材と、粒径が該溶製材の粒径より大きく且つ200μm以下のβ−Zn4 Sb3 溶製材との混合割合が、前者:後者=1:10〜50の重量比である請求項1記載の熱電変換材料の製造方法。
- β−Zn4 Sb3 の焼結体の密度が、6.18〜6.31g/cm3 である請求項1又は2記載の熱電変換材料の製造方法。
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