JP4273440B2 - 電子材料用洗浄水及び電子材料の洗浄方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子材料用洗浄水及び電子材料の洗浄方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、半導体用シリコン基板、液晶用ガラス基板、フォトマスク用石英基板などの電子材料の表面に付着した不純物、特に微粒子を、ウェット洗浄により効果的に除去することができる電子材料用洗浄水及び電子材料の洗浄方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体用シリコン基板、液晶用ガラス基板、フォトマスク用石英基板などの電子材料は、RCA洗浄と呼ばれる、硫酸と過酸化水素水の混合液、塩酸と過酸化水素水と水の混合液、アンモニア水と過酸化水素水と水の混合液など、過酸化水素をベースとする濃厚薬液を用いた高温洗浄により清浄化されていた。RCA洗浄は、電子材料表面の金属を除去するために有効な方法であり、同時に電子材料表面に付着した微粒子も除去される。しかし、このような方法では、高濃度の酸、アルカリや過酸化水素水を多量に使用するために、廃液中にこれらの薬液が排出され、廃液処理において中和や沈殿処理などに多大な負担がかかるとともに、多量の汚泥が発生する。すなわち、電子材料の表面の清浄度を確保するために、薬品及び廃液処理に多大な費用を必要としてきた。また、近年環境保全、省資源の観点からも、ウェット洗浄工程の見直しが進められている。
例えば、特開平9−10713号公報には、薬品及び超純水の使用量が少なく、高温プロセスを経ることなく、廃液処理が容易であり、しかもハイドロカーボン除去率が極めて高く、かつ、十分な水素ターミネートを容易に行うことが可能なウェット処理方法として、被処理物を水素又は水素と微量の希ガスを含有する超純水で、20kHz以上の超音波を照射しながらウェット処理する方法が提案されている。電子材料工場においては、通常は過剰な量の電子材料用洗浄水が調製され、ユースポイントにおいて使用されなかった余剰の洗浄水は、超純水源として循環再利用される場合がある。このような場合に、還元性の水素を溶解した洗浄水は、紫外線照射酸化装置による有機物の分解を妨げるなど、再利用について種々の制約があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、半導体用シリコン基板、液晶用ガラス基板、フォトマスク用石英基板などの電子材料の表面に付着した不純物、特に微粒子を、ウェット洗浄により効果的に除去することができる電子材料用洗浄水及び電子材料の洗浄方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、超純水にアルゴンを溶解した洗浄水が、電子材料表面に付着した微粒子の除去に対して優れた効果を有し、超音波を照射しながら洗浄することにより、特に優れた微粒子除去効果が発揮されることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)超純水に、アルカリを添加してpH8〜11に調製された超純水であって、アルゴンを10mg/リットル以上溶解してなることを特徴とする電子材料用洗浄水、
(2)水素の含有量が、0.3mg/リットル以下である第(1)項記載の電子材料用洗浄水、及び、
(3)電子材料を、超音波を照射しながら、アルゴン10mg/リットル以上を含有し、pH8〜11の洗浄水により洗浄することを特徴とする電子材料の洗浄方法、
を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
(4)溶存アルゴン濃度が20mg/リットル以上である第(1)項記載の電子材料用洗浄水、
(5)アルカリがアンモニア水である第(1)項記載の電子材料用洗浄水、
(6)電子材料が、半導体用シリコン基板、液晶用ガラス基板又はフォトマスク用石英基板である第(3)項記載の電子材料の洗浄方法、
(7)洗浄により、電子材料表面に付着した微粒子を除去する第(3)項記載の電子材料の洗浄方法、
(8)超音波の周波数が400kHz以上である第(3)項記載の電子材料の洗浄方法、
(9)超純水にアルゴンをバブリングすることにより、アルゴンを溶解することを特徴とする電子材料用洗浄水の製造方法、
(10)溶存気体の除去及びアルゴンの溶解に気体透過膜モジュールを用いることを特徴とする電子材料用洗浄水の製造方法、
(11)アルゴンをスウィープガスとして用いる気体透過膜処理により、溶存気体の除去及びアルゴンの溶解を行う第(10)項記載の電子材料用洗浄水の製造方法、
(12)スウィープガスとして用いるアルゴンを減圧に保つ第(11)項記載の電子材料用洗浄水の製造方法、
(13)超純水から溶存気体を除去し、次いで除去した気体の飽和度に見合う量以下のアルゴンを溶解する第(10)項記載の電子材料用洗浄水の製造方法、
(14)超純水にアルゴンを溶解してなる電子材料用洗浄水をユースポイントまで送水し、ユースポイントにおいて使用されなかった余剰の電子材料用洗浄水を貯留槽に返送し、循環再使用することを特徴とする電子材料用洗浄水の供給装置、及び、
(15)貯留槽の気相部をアルゴン雰囲気に保つ第(14)項記載の電子材料用洗浄水の供給装置、
を挙げることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の電子材料用洗浄水は、超純水にアルゴンを10mg/リットル以上、より好ましくは20mg/リットル以上溶解してなるものである。本発明に用いる超純水としては、例えば、脱イオン水、蒸留水などの一次純水を、限外ろ過膜、精密ろ過膜などを用いて処理し、さらに、紫外線照射酸化装置などを用いて有機物を分解した超純水などを挙げることができる。使用する超純水は、25℃における電気抵抗率が18MΩ・cm以上であり、有機体炭素が10μg/リットル以下であり、金属分の含有量が20ng/リットル以下であり、微粒子が10,000個/リットル以下であることが好ましい。
アルゴンは、圧力105Pa、温度20℃において、水に対して61mg/リットル溶解する。超純水にアルゴンを溶解してなる本発明の洗浄水は、電子材料表面の微粒子汚染に対して優れた除去効果を発揮する。本発明の洗浄水を微粒子の除去に用いるとき、アルゴン濃度が高いほど洗浄効果が大きく、微粒子除去率が高くなるので、洗浄目的に応じてアルゴン濃度を選定することができる。本発明の洗浄水は、半導体用シリコン基板、液晶用ガラス基板、フォトマスク用石英基板などの洗浄に、好適に使用することができる。
本発明の電子材料用洗浄水に含まれるアルゴンは、不活性ガスであるので、洗浄水供給装置や洗浄装置に特殊な接液材料を必要とせず、特殊な金属製膜を施したシリコン基板のような材料も洗浄することができる。また、余剰の洗浄水を超純水源として循環再利用する場合も、窒素パージされた超純水と混合して支障なく使用することができる。
【0006】
アルゴンは、空気中に0.93%含まれる気体であり、液体空気の分留により95〜98%の粗アルゴンとして取り出され、水素を添加して触媒により酸素を水として除去し、窒素を精留により除去して純アルゴンとされる。あるいは、アンモニアプラントにおける合成系パージガス中の濃縮されたアルゴンから、水素を分離して純アルゴンを得ることもできる。したがって、純アルゴン中には水素が混在する可能性があり、超純水にアルゴンを溶解した洗浄水中には水素も含まれる可能性がある。本発明の電子材料用洗浄水は、水素の含有量が0.3mg/リットル以下であることが好ましく、0.1mg/リットル以下であることがより好ましく、実質的に水素を含有しないことがさらに好ましい。水素の含有量が0.3mg/リットルを超えると、余剰の洗浄水を超純水源として循環再使用したとき、紫外線照射酸化装置による有機物の分解が妨げられるおそれがある。アルゴンのみを含有し、水素を含有しない洗浄水は、水素の漏洩による事故のおそれがないので、安全管理上、比較的容易に取り扱うことができる。
本発明の電子材料用洗浄水は、高純度の酸を添加することにより、pHを7未満に調整して使用することができる。pH調整に使用する酸に特に制限はなく、例えば、塩酸、硫酸、フッ化水素酸、炭酸などを挙げることができる。また、本発明の電子材料用洗浄水は、高純度のアルカリを添加することにより、pHを7以上に調整して使用することもできる。pH調整に使用するアルカリに特に制限はなく、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを挙げることができる。本発明の電子材料用洗浄水は、pH6〜12であることが好ましく、pH8〜11であることがより好ましい。アンモニア水は、不揮発分を含有しないので、pH調整剤として特に好適に用いることができる。電子材料用洗浄水のpHが6未満であると、微粒子で汚染された電子材料からの微粒子の除去が不十分となるおそれがある。電子材料用洗浄水のpHが12を超えると、洗浄後のすすぎ工程に多量の超純水と長時間を要する上に、廃液の中和に必要な酸の量が過大となるおそれがある。
【0007】
本発明の電子材料の洗浄方法は、電子材料を、超音波を照射しながら、アルゴン10mg/リットル以上を含有する洗浄水、より好ましくはアルゴン20mg/リットル以上を含有する洗浄水により洗浄するものである。洗浄水のアルゴン濃度が高いほど、洗浄効果が高くなるので、洗浄目的に応じて必要とする洗浄水のアルゴン濃度を選定することができる。超音波を照射し、電子材料と接触する洗浄水に超音波を伝達しながら洗浄することにより、電子材料の表面に付着した微粒子の脱離効果を高めることができる。本発明方法において、照射する超音波の周波数は、400kHz以上であることが好ましく、1MHz程度以上であることがより好ましい。周波数400kHz以上の超音波を用いることにより、極めて微細な加工が施された電子材料であっても、キャビテーション効果による損傷を与えることなく、洗浄することができる。
本発明方法において、電子材料と洗浄水を接触させる方法に特に制限はなく、電子材料に付着した微粒子の種類、粒度、付着量などに応じて適宜選択することができる。例えば、洗浄水を満たした洗浄用水槽に電子材料を浸漬し、超音波を照射しながら電子材料と洗浄水を所定時間接触させるバッチ式洗浄を行うことができ、あるいは、電子材料をスピンナーや移動架台上に載せ、超音波を照射した洗浄水を電子材料の表面に注いで処理する枚葉式洗浄を行うこともできる。
【0008】
本発明の電子材料用洗浄水の製造方法に特に制限はないが、超純水を脱気して溶存気体の飽和度を低下させたのち、アルゴンを供給して超純水にアルゴンを溶解させる方法が好ましい。気体の飽和度とは、水中に溶解している気体の量を、圧力105Pa、温度20℃における気体の溶解量で除した値である。例えば、水が圧力105Pa、温度20℃の窒素と接して平衡状態にあるとき、水への窒素の溶解量は19.2mg/リットルであるので、水中に溶解している気体が窒素のみであって、その溶解量が19.2mg/リットルである水の飽和度は1.0倍であり、水中に溶解している気体が窒素のみであって、その溶解量が9.6mg/リットルである水の飽和度は0.5倍である。また、圧力105Pa、温度20℃で空気と接して平衡状態にある水は、窒素14.9mg/リットル及び酸素9.1mg/リットルを溶解して飽和度1.0倍の状態となっているので、脱気により気体の溶解量を窒素1.5mg/リットル、酸素0.9mg/リットルとした水の飽和度は0.1倍である。さらに、水が圧力105Pa、温度20℃のアルゴンと接して平衡状態にあるとき、水へのアルゴンの溶解量は61.0mg/リットルであるので、アルゴン30.5mg/リットルを溶解した水のアルゴンの飽和度は0.5倍である。
本発明の電子材料用洗浄水において、微粒子除去のための洗浄用機能水としての効果を高めるためには、溶存アルゴン濃度は高いほど好ましく、大気圧下、常温での飽和濃度である61mg/リットルに近づくほど、洗浄効果は高くなる。しかし、飽和濃度付近まで溶存アルゴン濃度を高めなくとも、あるレベル以上の濃度があれば、実質的に有効な電子材料用洗浄水となる。溶存アルゴン濃度は、10mg/リットル以上、好ましくは20mg/リットル程度、すなわち、常温、大気圧下における溶存アルゴンの飽和度の1/6ないし1/3倍であれば、洗浄効果が発揮され、溶存アルゴン濃度を30mg/リットル程度、すなわち、飽和度の50%程度まで高めると、一層高い効果が得られる。
【0009】
本発明の電子材料用洗浄水の製造において、超純水の脱気の程度に特に制限はないが、溶存アルゴン濃度が30mg/リットル以上の電子材料用洗浄水を効率よく製造するためには、溶解すべきアルゴンの飽和度に相当する量の溶存気体を脱気して、原水中の気体溶解キャパシティーに空きを作ることが好ましい。例えば、飽和度の1/2倍以上のアルゴンを溶解する場合は、飽和度の1/2倍以上に相当する溶存気体をあらかじめ脱気により除去することが好ましい。飽和度に換算した原水の溶存気体の脱気量と、飽和度に換算した溶解すべきアルゴンの量をほぼ等しくすることにより、アルゴンを無駄なく容易に溶解することができる。圧力105Pa、温度20℃において、窒素で飽和した超純水には、約19.2mg/リットルの窒素が溶解している。この超純水を原水とする場合には、溶存窒素濃度を10mg/リットル程度以下、すなわち飽和度の1/2程度以下に低減させれば、アルゴンを飽和度1/2程度まで容易に溶解することができ、溶存アルゴン濃度30mg/リットル以上の電子材料用洗浄水を得ることができる。
本発明の電子材料用洗浄水の製造において、原水とする超純水は、必ずしも窒素で飽和している必要はなく、溶存気体の種類、濃度などには全く制限はない。例えば、大気と平衡状態にあり、窒素、酸素と微量の二酸化炭素などが溶解した原水であれば、溶存気体を必要な飽和度に相当する量だけ脱気すれば、目的を達することができる。要するに、総溶存気体の低減量を飽和度に換算し、それが溶解すべきアルゴンの飽和度に見合う以上の量であればよい。
本発明の電子材料用洗浄水の製造における脱気処理としては、気体の種類にかかわらず除去することができる真空脱気や減圧膜脱気などによることが好ましい。超純水を脱気することなく、アルゴンを超純水に接触させ、ヘンリーの法則に基づいて水中の溶存気体を減らし、アルゴン濃度を高めることもできるが、所定濃度を得るためのアルゴンの必要量が多くなる。
【0010】
本発明において、超純水にアルゴンを溶解して本発明の電子材料用洗浄水を製造する方法に特に制限はなく、例えば、超純水にアルゴンをバブリングすることにより、アルゴンを溶解することができる。超純水にアルゴンをバブリングする方法は、超純水中の溶存アルゴンを一定の濃度まで高めるために必要なアルゴンの量が多いが、特殊な装置を使用することなく、簡便に高濃度に溶存アルゴンを含有する洗浄水を製造することができる。
超純水にアルゴンをバブリングすることによりアルゴンを溶解して本発明の電子材料用洗浄水を製造するに際して、あらかじめ超純水から溶存気体を除去したのち、アルゴンをバブリングすることができる。超純水から溶存気体を除去する方法に特に制限はなく、例えば、脱気膜装置に通水することができ、あるいは、減圧に保った充填塔に通水することもできる。超純水から溶存気体を除去したのちアルゴンをバブリングすることにより、超純水中の溶存アルゴンを一定の濃度まで高めるために必要なアルゴンの量を減少することができる。
【0011】
本発明の電子材料用洗浄水の製造において、溶存気体の除去及びアルゴンの溶解に気体透過膜モジュールを用いることが好ましい。気体透過膜モジュールによる溶存気体の脱気及びアルゴンの溶解は、比較的ユースポイントに近いところで、超純水の純度を損なうことなく、溶存する気体を脱気し、アルゴンを溶解することができる。
本発明の電子材料用洗浄水は、アルゴンをスウィープガスとして用いる気体透過膜処理により製造することもできる。例えば、アルゴンをスウィープガスとして、気体透過膜モジュールの気相に通気し、超純水を水相に通水することにより、アルゴンを溶解した洗浄水を得ることができる。気体透過膜モジュールの気相のアルゴン分圧を高め、超純水に溶解している気体と置換することによって溶存気体を減らし、溶存アルゴン濃度を高めることができる。アルゴンをスウィープガスとする方法によれば、ある程度過剰のアルゴンを必要とするが、簡単な装置を用いて簡便に本発明の電子材料用洗浄水を製造することができる。アルゴンをスウィープガスとして用いる気体透過膜処理において、気相を減圧とすることが好ましい。気相を減圧とすることにより、超純水に溶存する気体の脱気を促進し、効率的にアルゴンを溶解した本発明の洗浄水を製造することができる。
【0012】
本発明の電子材料用洗浄水は、気体透過膜モジュールを2段に設け、前段の気体透過膜モジュールを用いて全溶存気体を対象とする減圧膜脱気を行い、後段の気体透過膜モジュールを用いてアルゴンを溶解することによっても製造することができる。気体透過膜モジュールを2段に設けて、全溶存気体を対象とする減圧膜脱気とアルゴンの溶解を行うことにより、アルゴンを無駄に放出することなく、ほぼ定量的に超純水に溶解することができる。
気体透過膜モジュールを2段に設け、前段の気体透過膜モジュールを用いて全溶存気体を対象とする減圧膜脱気を行う場合、前段の気体透過膜モジュールの減圧気相にアルゴンを存在させることもできる。前段の気体透過膜モジュールの減圧気相にアルゴンを存在させることにより、アルゴンの使用量はやや増加するが、前段の気体透過膜モジュールにおける気体除去効率が向上し、同時に超純水にある程度のアルゴンを溶解することができる。
本発明の電子材料用洗浄水は、必要とする溶存アルゴン濃度、洗浄水の使用量などに応じて、適宜製造方法を選択して製造することができる。
【0013】
図1は、本発明の電子材料用洗浄水の製造工程の一態様の工程系統図である。超純水は、流量計1を経由して脱気膜装置2に送られる。脱気膜装置は、気体透過膜を介して超純水と接する気相側が真空ポンプ3により減圧状態に保たれ、超純水中に溶存している気体が除去される。脱気された超純水は、次いで溶解膜装置4に送られる。溶解膜装置においては、アルゴン供給器5から供給されたアルゴンが気相側に送られ、気体透過膜を介して超純水に溶解される。溶存アルゴン濃度が所定の値に達した超純水には、薬液貯槽6から薬注ポンプ7によりアンモニア水などが供給され、所定のpH値に調整される。アルゴンを溶解し、アルカリ性となった超純水は、最後に精密ろ過装置8に送られ、微粒子を除去して本発明の電子材料用洗浄水が得られる。
図2は、本発明の電子材料用洗浄水の製造工程の他の態様の工程系統図である。図1に示す態様においては、溶存アルゴン濃度が所定の値に達した超純水に薬注ポンプによりアンモニア水などを供給したのに対して、本態様においては、脱気された超純水に、薬液貯槽6から薬注ポンプ7によりアンモニア水などが供給され、所定のpH値に調整されたのちに溶解膜装置4に送られる。溶解膜装置においては、アルゴン供給器5から供給されたアルゴンが気相側に送られ、気体透過膜を介して超純水に溶解される。アルカリ性となり、溶存アルゴン濃度が所定の値に達した超純水は、最後に精密ろ過装置8に送られ、微粒子を除去して本発明の電子材料用洗浄水が得られる。
【0014】
超純水にアルゴンを溶解してなる本発明の電子材料用洗浄水は、ユースポイントまで送水して使用し、ユースポイントにおいて使用されなかった余剰の電子材料用洗浄水を貯留槽に返送し、循環再使用する供給装置を用いて供給することができる。図3は、本発明の電子材料用洗浄水の供給装置の一態様の系統図である。図1に示す態様の製造工程により製造された超純水にアルゴンを溶解してなる電子材料用洗浄水は、密閉式の貯留槽9に貯留され、ポンプ10により配管11を通してユースポイント12まで送水される。ユースポイントで使用されなかった余剰の電子材料用洗浄水は、配管を通して貯留槽に返送され、循環再使用される。超純水に溶解しているアルゴンは、不活性ガスであって分解などにより失われることがないので、密閉式の貯留槽と供給配管を用いることにより、長時間にわたって水質を保持することができる。これにより、多くのユースポイントにおいて、個々に電子材料用洗浄水製造装置を設けることなく、集中的に1カ所で洗浄水を製造し、主配管と分岐配管とを経由して、複数のユースポイントまで、水質の安定した電子材料用洗浄水を供給することができる。しかも、ユースポイントで使用されなかった余剰の洗浄水は、貯留槽に戻して、再度ユースポイントへ送る循環系を組むことができる。ユースポイントにおいて使用されなかった余剰の電子材料用洗浄水は、より上流にある純水製造システム中の適当な箇所に返送することもできる。アルゴンは不活性ガスであるので、純水製造システムに返送しても、純水の製造工程に悪影響を与えるおそれはない。
本発明の電子材料用洗浄水の供給装置の貯留槽9には、アルゴン供給器5を付設して、気相部をアルゴン雰囲気に保つことが好ましい。気相部をアルゴン雰囲気に保つことにより、貯留槽に貯留された電子材料用洗浄水のアルゴン濃度を維持し、二酸化炭素などの溶解による比抵抗の低下を防止することができる。
【0015】
本発明の電子材料用洗浄水を用いることにより、微粒子で汚染された電子材料の洗浄に使用する薬品の量を大幅に減少し、かつ高い洗浄効果を得ることができ、さらに、電子材料の洗浄後の廃液処理が容易になる。すなわち、従来の洗浄廃液は、アンモニアや過酸化水素水を大量に含んだ高濃度の状態で排出されるために、中和処理や分解処理が必要であり、廃液処理においても洗浄液の調製に使用したのと同程度の量の薬品が必要となる。本発明の電子材料用洗浄水においては、例えば、排出される廃液はアルカリを含んだpH6〜12程度の液であり、少量の酸を加えて中和することにより放流し得る水質となる。もちろん、超純水の原水として再利用することも可能な水質である。廃液中に含まれるアルゴンは無害な気体であり、空気中に0.93%含まれる気体でもあるので、安全衛生や環境保全に関する問題を生ずるおそれはない。
【0016】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
参考例1
オゾンを含有する超純水で表面を酸化した直径6インチのシリコンウェーハを、アルミナ微粉末で汚染することにより、表面にアルミナの微粒子が付着した汚染ウェーハを作製した。この汚染ウェーハについて、レーザー散乱光検出方式にもとづくウェーハゴミ検査装置[東京光学機械(株)製、WM−3]を用いて、直径0.2μm以上の付着微粒子数を測定したところ、ウェーハ1枚当たり2,130個であった。
この汚染ウェーハを500rpmで回転させ、超純水にアルゴン10mg/リットルを溶解した電子材料用洗浄水に、超音波照射ノズル[プレテック社、Fine Jet]を用いて周波数1.6MHzの超音波を出力13.5W/cm2で照射しつつ、700mL/分で流しかけ、60秒間スピン洗浄を行った。乾燥後のウェーハ表面の残存微粒子数を同様にして測定したところ、ウェーハ1枚当り1,144個であり、微粒子の除去率は46.3%であった。
電子材料用洗浄水の溶存アルゴン濃度を20mg/リットル、30mg/リットル、40mg/リットル、50mg/リットル及び60mg/リットルとし、同様にして汚染ウェーハの洗浄を繰り返した。ウェーハ1枚当たりの残存微粒子数は、それぞれ765個、550個、505個、475個及び471個であった。
比較例1
参考例1と同じ汚染ウェーハを、洗浄水としてアルゴンを含有しない超純水を用いた以外は、参考例1と同様にして洗浄した。ウェーハ1枚当たりの残存微粒子数は、1,535個であった。
さらに、超純水にアルゴン1mg/リットル及び5mg/リットルを溶解した洗浄水を用いて、参考例1と同じ汚染ウェーハを同様にして洗浄した。ウェーハ1枚当たりの残存微粒子数は、1,489個及び1,404個であった。
参考例1及び比較例1の結果を、第1表に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
第1表に見られるように、微粒子の除去率は洗浄水中の溶存アルゴン濃度とともに向上し、溶存アルゴン濃度が10mg/リットル以上である本発明の電子材料用洗浄水を用いると、汚染ウェーハに付着していた微粒子のほぼ半数以上が除去されている。
実施例2
超純水にアルゴン30mg/リットルを溶解し、さらにアンモニア水をアンモニア濃度が1mg/リットルになるように添加して、pH9.4の電子材料用洗浄水を調製した。
この電子材料用洗浄水を用いて、参考例1と同じ汚染ウェーハを、参考例1と同様にして、60秒間スピン洗浄を行った。ウェーハ1枚当たりの残存微粒子数は20個であり、微粒子の除去率は99.1%であった。
比較例2
超純水にアンモニア水をアンモニア濃度が1mg/リットルになるように添加して、pH9.4の洗浄水を調製した。
この洗浄水を用いて、参考例1と同じ汚染ウェーハを、参考例1と同様にして洗浄した。ウェーハ1枚当たりの残存微粒子数は870個であり、微粒子の除去率は59.2%であった。
実施例3
スピン洗浄時間を10秒間及び30秒間とした以外は、実施例2と同じ操作を繰り返した。
洗浄、乾燥後のウエハ表面の付着微粒子数及び微粒子の除去率は、洗浄時間10秒間のとき、220個及び89.7%であり、洗浄時間30秒間のとき、110個及び94.8%であった。
比較例3
スピン洗浄時間を10秒間及び30秒間とした以外は、比較例2と同じ操作を繰り返した。
洗浄、乾燥後のウエハ表面の付着微粒子数及び微粒子の除去率は、洗浄時間10秒間のとき、1,130個及び46.9%であり、洗浄時間30秒間のとき、890個及び58.2%であった。
実施例2〜3及び比較例2〜3の結果を、第2表に示す。
【0019】
【表2】
【0020】
超純水にアルゴン30mg/リットルを溶解し、さらにアンモニア1mg/リットルを添加した実施例2の電子材料用洗浄水を用いて60秒間スピン洗浄すると、汚染ウェーハの表面に付着した微粒子はほぼ完全に除去されている。また、洗浄時間を10秒間に短縮しても、微粒子の除去率はほぼ90%に達している。
これに対して、同じアンモニア濃度であってもアルゴンを含有しない比較例2の洗浄水を用いた場合には、60秒間の洗浄によっても微粒子の除去率はほぼ60%にとどまり、かつ、洗浄時間30秒間の場合と洗浄時間60秒間の場合の微粒子除去率にほとんど差がないことから、洗浄時間を延長しても微粒子の完全な除去は困難であろうと推定される。
【0021】
【発明の効果】
本発明の電子材料用洗浄水は、使用する薬剤の量が少なく、容易に製造することができ、微粒子で汚染された電子材料の表面を高い洗浄効率で洗浄して微粒子を除去することができる。さらに、発生する廃液を容易に処理することができる。本発明の電子材料用洗浄水、超純水にアルゴンを溶解した洗浄水であって、近年ウェット洗浄で使用されはじめた水素を溶解した洗浄水と異なり、溶解させる気体が無害かつ安全であり、使用に当たっては特別な安全対策を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の電子材料用洗浄水の製造工程の一態様の工程系統図である。
【図2】図2は、本発明の電子材料用洗浄水の製造工程の他の態様の工程系統図である。
【図3】図3は、本発明の電子材料用洗浄水の供給装置の一態様の系統図である。
【符号の説明】
1 流量計
2 脱気膜装置
3 真空ポンプ
4 溶解膜装置
5 アルゴン供給器
6 薬液貯槽
7 薬注ポンプ
8 精密ろ過装置
9 貯留槽
10 ポンプ
11 配管
12 ユースポイント
Claims (3)
- 超純水に、アルカリを添加してpH8〜11に調製された超純水であって、アルゴンを10mg/リットル以上溶解してなることを特徴とする電子材料用洗浄水。
- 水素の含有量が、0.3mg/リットル以下である請求項1記載の電子材料用洗浄水。
- 電子材料を、超音波を照射しながら、アルゴン10mg/リットル以上を含有し、pH8〜11の洗浄水により洗浄することを特徴とする電子材料の洗浄方法。
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