JP4268258B2 - 偽造防止用紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、スレッドを備えた偽造防止用紙に関し、詳しくは基紙に光輝性スレッド等を複数本抄き込んで高度の偽造、改ざん防止効果を図った偽造防止用紙に関する。このような偽造防止用紙は、商品券、ギフト券、証明書、チケット、投票券、切符、ラベル等の各種セキュリティ媒体に使用することができる。
【0002】
【従来技術】
各種セキュリティ媒体の偽造防止策として、種々のスレッドを用紙に抄き込む手法がある。このようなスレッドによる偽造防止手段は用紙を製造する段階において設けられるので、カラーコピーやスキャナー取込み、製版印刷等による方法での偽造は困難である。しかし、各種セキュリティ媒体が実際に使用される現場においては十分な真偽判定が行えるとは限らないため、コピー等の偽造手法と合わせて、真正のスレッドに似せた偽造スレッドを単純に貼り付けただけの方法による粗悪な偽造品においても本物として流通してしまう可能性がある。従って、スレッド自体だけでなく、スレッドのセキュリティ媒体への抄き込み方法においても偽造防止効果を高める必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような光輝性スレッド等入りの偽造防止用紙については、特開平6−306799号、実用新案登録3028886号(実願平8−1625号)、特開平7−207599号公報等がある。また、本願出願人による特開平10−71759号公報にはスレッドを窓部から表出するように入れたウィンド付きスレッド用紙等のスレッド入り用紙の種々の態様を提案しているが、万全の対策を施したものとは言えない。そこで、本発明はスレッドの抄き込み形態により偽造、改ざん防止の一層の困難化を図ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の要旨の第1は、基紙に樹脂フィルム基材からなるスレッドを抄き込んでなる偽造防止用紙において、上記基紙は、該スレッドを間欠的に露出する表出部と該表出部間であって該スレッドを間欠的に覆う被覆部とを備え、該表出部は該スレッドの幅より広幅であり、当該表出部に現れたスレッドの両サイドに透かし部が設けられていることを特徴とする偽造防止用紙、にある。かかる偽造防止用紙であるため、偽造、改ざんが困難である。
【0005】
上記課題を解決するための本発明の要旨の第2は、上記要旨の第1に記載の表出部と被覆部に2本以上のスレッドが平行に抄き込まれていることを特徴とする偽造防止用紙、にある
【0006】
上記課題を解決するための本発明の要旨の第3は、上記要旨の第2に記載のスレッドが、ホログラムスレッド、光輝性スレッド、印刷加工スレッド、印刷加工ホログラムスレッド、示温スレッド、蛍光スレッド、磁気スレッド、模様または文字入りスレッド、から選ばれた同種または2種以上のスレッドの組み合わせからなることを特徴とする偽造防止用紙、にある
【0011】
【発明の実施の形態】
スレッドを窓部に表出するように入れた偽造防止用紙は、例えば基紙に光輝性スレッド等を抄き込んだタイプの用紙であって、基紙が光輝性スレッドを間欠的に露出する表出部(ウィンド)と、該表出部間で光輝性スレッドを間欠的に覆う被覆部とを備えたものが知られている。この構成の偽造防止用紙は、多筒式抄紙機の一つの抄き網部上に、スレッドと同じ幅かそれより広幅の小さな凸部を設け、この凸部の上にスレッドを載せた状態で紙料液を供給することによって製造できる。つまり、このようにすれば、凸部のない位置ではスレッドが紙料液で挟まれるので被覆部が形成され、凸部の位置ではスレッドが紙料液の下面側から露出するので表出部が形成される。
【0012】
上記の構成のようなウィンド付きスレッド用紙においては、光輝性スレッド等が表出部において間欠的に露出しているので、コピーした場合でも金属色が再現されないことから偽造防止できる。また、偽造品かどうかを見るために用紙の端面を確認する必要がなく、しかも、光輝性スレッド等が基紙からはがれてしまうのを防止できる。
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明することにする。
図1は、本発明の偽造防止用紙の第1の実施形態を示す図である。図1(A)はその平面図、図1(B)は、図1(A)のA−A線における断面を示している。図1のように、本発明の偽造防止用紙の第1の実施形態では、基紙2にスレッド3を複数本抄き込んだ構成であって、基紙2には、スレッド3を間欠的に露出する複数の表出部6と、各表出部間でスレッド3を間欠的に覆う被覆部7とを備えている。表出部6はスレッドと同幅でもよいが、それより広幅としてスレッド3の両サイドを透かし部8となるようにすることで、抄造時に発生するスレッドの公差(ブレ)を透かし部により吸収することができる。
【0014】
この第1の実施形態では、表出部6と被覆部7とが複数本のスレッドに対してスレッド端における用紙の端部からの同一位置において同一状態に現れている特徴がある。すなわち、紙端からxの位置においてはスレッド3aに対してもスレッド3bに対しても共に表出部であり、紙端からyの位置においてはスレッド3aに対してもスレッド3bに対しても共に被覆部となっている。
ただし、基紙2は、スレッド3の両端部分がいずれのスレッドに対しても被覆部7として構成されていることが好ましい。スレッドの端部が露出しているとスレッドの剥離が生じるからである。使用するスレッドの幅は用紙の使用目的にもより特に制限されないが、0.2mm〜5mm程度のものが通常使用される。
複数のスレッドの幅は同幅である必要はなく、また色調、光学特性、発色特性、磁気特性等をそれぞれ変えることも任意である。
このように、セキュリティ媒体に2本以上の複数のスレッドを導入することにより、偽造スレッドを単純に貼り付けるような方法は偽造コストが増大し、工程が複雑となるため、偽造抑制効果が増大する。
【0015】
図2は、本発明の偽造防止用紙の第2の実施形態を示す図である。図2(A)はその平面図、図2(B)は、図2(A)のA−A線における断面を示している。図2のように、本発明の偽造防止用紙の第2の実施形態では、基紙2にスレッド3を複数本抄き込んだ構成であって、基紙2は、スレッド3を間欠的に露出する複数の表出部6と、各表出部間でスレッド3を間欠的に覆う被覆部7とを備えていることは第1の実施形態と同一ある。
この第2の実施形態では、表出部6と被覆部7とが複数本のスレッドのうちの少なくとも隣接する2本のスレッド間において、スレッド端における用紙の端部からの同一位置において異なる状態に現れている特徴がある。すなわち、紙端からxの位置においてはスレッド3aに対しては表出部、スレッド3bに対しては被覆部となっている。ただし、基紙2は、スレッド3の両端部分が被覆部7として構成されていることが好ましいのは第1の実施形態と同一であり、以下の実施形態においても同様である。
このように、表出部をいわゆる千鳥状に設ける場合は、用紙を積み重ねた場合のスレッド部の盛り上がりを低減することができ、印刷加工を容易にし、巻き取り用紙の取扱い時における巻崩れを防止することができる。
【0016】
図3は、本発明の偽造防止用紙の第3の実施形態を示す図である。図3(A)はその平面図、図3(B)は、図3(A)のA−A線における断面を示している。図3のように、本発明の偽造防止用紙の第3の実施形態では、基紙2にスレッド3を複数本抄き込んだ構成であって、基紙2は、スレッド3を間欠的に露出する複数の表出部6と、各表出部間でスレッド3を間欠的に覆う被覆部7とを備えることは第1の実施形態と同一あるが、この第3の実施形態では、1つの表出部6と被覆部7には2本以上のスレッド3a,3bが含まれている特徴がある。
このように、1つの表出部に複数のスレッドを設ける場合、表出部の折り曲げ強度低下を補うことができる。
【0017】
図4は、本発明の偽造防止用紙の第4の実施形態を示す図である。図4(A)はその平面図、図4(B)は、図4(A)のA−A線における断面を示している。図4のように、本発明の偽造防止用紙の第4の実施形態では、基紙2にスレッド3を複数本抄き込んだ構成であるが、基紙2は、スレッド3を間欠的に露出する表出部を持たず、スレッドはその模様または文字が紙層を透して視認できる程度の紙料21によって基紙に埋めこまれている特徴がある。このような埋め込みスレッドに印刷模様または文字を設けておけばスレッド上の紙料の調整により、スレッドの模様等を視認することができる。
スレッドに対する印刷模様の印刷面は、偽造防止用紙券面の表面からでも裏面からでもさらには両面からでも視認できるように適宜選択すればよい。
このように複数のスレッドを全て用紙内に埋め込むとスレッドを構成する材料を外観から識別することが困難となるため、1本のスレッドを機械認識型とした場合、もしくは種類の異なる機械認識型スレッドを併用した場合、どのスレッドがどのような機械認識されるかを解析することが困難となる効果がある。
【0018】
偽造防止用紙は、通常白色等の明るい基紙が使用されるので、本来光の透過性がある。したがって紙の表面から入射した光がスレッドまで到達すれば、スレッドからの反射光が生じ、スレッドの表面に着色剤による模様または文字があれば着色剤による吸収が生じ、吸収のあった反射光は他の部分と分光特性が異なるので人の目でも判別することができる。
通常、偽造防止用紙には、104g/m2 程度の紙が使用され、薄い紙料21側が35g/m2 程度であれば、スレッド上の模様を十分に観察したり判別することができる。また、厚い紙料側が70g/m2 程度であってもスレッド上の模様または文字は、明瞭さは劣るが観察したり判別することはできる。
【0019】
図5は、本発明の偽造防止用紙の第5の実施形態を示す図である。図5(A)はその平面図、図5(B)は、図5(A)のA−A線における断面を示している。図5のように、本発明の偽造防止用紙の第5の実施形態では、基紙2にスレッド3を複数本抄き込んだ構成であるが、少なくとも隣接する2本のスレッド3a,3bのうちの1本のスレッドは、基紙を間欠的に露出する表出部6と該表出部間であって該スレッドを間欠的に覆う被覆部7とにより交互に基紙表面に現れ、他の1本のスレッドはその表面模様が紙層を透して表面または裏面から視認できる程度の薄い紙料21によって全体が基紙に埋めこまれている特徴がある。
この場合は、偽造スレッドを単純に貼り付けるような手法で偽造する場合に、外観上異なる状態のスレッドをそれぞれ再現する必要があり、偽造コストの増大、工程複雑化により偽造防止効果が増大する。
【0020】
図6は、本発明の偽造防止用紙の第6の実施形態を示す図である。図6(A)はその平面図、図6(B)は、図6(A)のA−A線における断面を示している。図6のように、本発明の偽造防止用紙の第6の実施形態では、基紙2にスレッド3を複数本抄き込んだ構成であるが、複数のスレッド間あるいはその周辺に透かし模様5が設けられていることを特徴とする。
この場合、少なくとも隣接する2本のスレッド3a,3bのうちの1本のスレッドは、基紙を間欠的に露出する表出部6と該表出部間であって該スレッドを間欠的に覆う被覆部7とにより交互に基紙表面に現れる状態となっていることが偽造、改ざんを困難にする点で好ましい。
偽造防止用紙にこのように透かし模様5を設けることにより、スレッドに似せた偽造スレッドを単純に貼り付けただけの方法では偽造することができず、透かし模様を形成するような手のかかる偽造、改ざんを行う意欲を減退させる効果がある。
【0021】
次に、本発明の偽造防止用紙の製造状態を説明する。
図7は、スレッド入り偽造防止用紙を抄き込む状態を示す図である。図7(A)はスレッドに平行な断面、図7(B)は、図7(A)においてスレッドに直角なC−C線における断面、図7(C)は、同様D−D線における断面を示している。図示のように、このスレッド入り用紙は、スレッド3と同幅あるいはそれよりも広幅のすき網部の凸部9aを抄紙機のすき網部9に適宜な間隔で設け、この凸部9aの上にスレッド3を載せた状態で紙料液2aを供給することによって製造できる。つまり、このようにすれば、凸部9aと凸部9aの間の位置ではスレッド3が紙料液2aで挟まれるので被覆部7が形成され、凸部9aの位置ではスレッド3が最下面となるので、抄紙機のすき網から用紙を剥離した際には、スレッド3が表面に現れて表出部6が形成される。
すき網部の凸部9aを図7(D)のように、スレッド3と同幅にする場合はスレッド3の両側に透かし部8が入らないことになる。また、スレッドをまたぐような広幅とする場合は、透かし部が入り装飾的効果を高め、前記のようにスレッドのブレを吸収することができる。
また、複数のスレッド間あるいはその周辺に透かし模様5を設ける場合は、凸部9aと同様にすき網部に模様状の凸部を形成すれば良い。
【0022】
次に、本発明に使用する偽造防止用紙用スレッドの各種について説明する。
<ホログラムスレッド>
ホログラムスレッド3とは、スレッドの表面または裏面にホログラム(または光回折格子)パターンを有するスレッドをいう。
基材フィルム上に設けるホログラム層(または光回折格子層であってもよい)は、基材フィルム上に、紫外線硬化型樹脂組成物等のホログラム形成層を塗布した後、別の工程でレジスト樹脂にホログラム露光を行いエッチングによりパターン形成したホログラム型版をニッケルメッキしてメッキ面にホログラムマイクロエンボスを移し取って作製したホログラム型版を押しつけてホログラムを複製することが行われる。ホログラム型取りした塗工樹脂に対しては紫外線を照射して硬化させる。連続した工程では、ホログラム型版はロール状に形成される。
【0023】
なお、紫外線硬化型樹脂組成物としては、不飽和エチレン系モノマーと不飽和エチレン系オリゴマーを適宜混合したものに増感剤を添加した組成物等が使用される。ホログラム層形成は光硬化以外の工程でも可能であり、この場合には、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂も使用される。ホログラム層自体は5μm以下の厚みに形成するのが通常である。
このような、ホログラムパターンを有するスレッドは複製が困難であるため、偽造防止効果がより高いと言える。
【0024】
<光輝性スレッド>
光輝性スレッド3としては、アルミ箔等の金属箔を用いたりあるいは基材フィルムにアルミやニッケル、クロム、銀等の光輝性の金属蒸着をしたり、ホログラム(または光回折格子)パターンを有するスレッドを用いたりすることができる。アルミ箔を用いた場合、カラーコピーすると光輝性スレッド3の部分が黒く複写され、ホログラムパターンを用いた場合、光輝性スレッド3の部分が虹色に写るので、それぞれ偽造防止を図ることができる。さらに、ホログラムパターンを有する光輝性スレッド3は、フィルム基材上に、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂またはエチレン−ビニルアルコール共重合体等の透明性を有する樹脂からなるホログラムパターンを形成し、その上にアルミニュウム等の金属蒸着層を形成したものを細幅にスリットして用いることができる。
【0025】
<印刷加工スレッド>
印刷加工スレッド3は、プラスチックフィルムや金属箔フィルムあるいは光輝性フィルムの表面または透明な基材の裏面に模様や文字の印刷を施してから、細幅に裁断してスレッドにしたものである。このようにスレッドにあらかじめ印刷加工を施しておくことにより、表出部においては直接模様や文字を鮮明に観察することができ、被覆部では被覆している紙料を透してスレッドに印刷された模様、文字を異なる色調、濃度で観察することができるので、その色調、濃度の違いにより真偽をより確実に判断することができる。このように模様または文字入りスレッドは、通常のスレッドと異なり印刷パターンを有することから偽造、改ざんを一層困難にする効果がある。
【0026】
図8は、印刷加工スレッドの実施形態を示す図である。印刷加工スレッドは、基材フィルム、着色印刷、オーバープリントの積層順を適宜選択することができるので各種の実施形態があるが、主な実施形態を挙げれば図8のようになる。
図8(A)は、透明基材フィルム31tの一方の面にプライマー層31pを介して着色印刷32を裏刷りし、さらに着色オーバープリント32pを施した実施形態、図8(B)は、透明基材フィルム31tの一方の面に着色印刷32を直接裏刷りし、さらに透明オーバープリント32pを施した実施形態、図8(C)は、着色基材フィルム31cの一方の面に着色印刷32を直接表刷りし、さらに透明オーバープリント32pを施した実施形態であり、それぞれ断面図を示している。いずれも矢印側が偽造防止用紙の表面側となり、例えば小文字で「ABC」と印刷した場合は、表面から観察した場合はいずれの場合も図8(D)のように見えることになる。なお、オーバープリント32pは設けなくても良いが、着色印刷層が最外層となる場合は、耐久性がやや弱くなることになる。着色印刷32とオーバープリント32pまたは基材フィルム31の色の組み合わせにより独自の色彩効果を発揮することができる。
このような細かい模様や文字の印刷パターンが形成されたスレッドを「模様または文字入りスレッド」と呼ぶことにする。
【0027】
基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムを始めとするポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリカーボネートフィルム、セルロース系樹脂フィルム、これら各種の樹脂フィルムに金属蒸着を施したフィルムなどのほか、コンデンサー用紙やアルミ箔フィルムあるいはアルミ箔との積層フィルムを使用することができる。
基材フィルムの厚さとしては、1〜200μm、抄き込み部に凹凸を生じないためには薄い基材が良く、好ましくは、10〜50μmの厚さが推奨できる。
【0028】
これらの基材に印刷を施すためには、グラビア、オフセット、シルクスクリーン印刷等が行われる。連続した巻き取り状のフィルムに連続的な工程で印刷を施す場合には輪転グラビア、オフセット輪転、輪転シルクスクリーン印刷が好ましく行われる。
使用する印刷インキとしては抄紙工程における耐水性と偽造防止用紙を各種の目的に使用した場合におけるある程度の耐熱性等を備えるものであればよく、着色剤としても耐水性等の要件を満たせば顔料系、染料系のいずれであってもよい。基材フィルムへの直接の印刷では十分な接着力が得られない場合は、前記のようにプライマー層を介して印刷することが行われる。さらに印刷層の保護のために印刷パターン上にオーバープリントを設けることも通常行われる。
なお、模様または文字は直接印刷以外の類似の手段で施すこともでき、例えば転写印刷方法や感熱転写印刷、エンボス方法等があり、これらが本発明の実施形態から除外されるものではない。
【0029】
<印刷加工ホロスレッド>
ホログラムを有するフィルムに印刷を施したスレッドで、ホログラムと印刷とによる複合した偽造、改ざん防止効果が生じる特徴がある。
図9は、印刷加工ホロスレッドの実施形態を示す図である。印刷加工ホロスレッドにも各種の実施形態があり、図9(A)は、基材フィルム31の一方の面に着色印刷32を表刷りした後、他方の面にホログラム層33の加工を施し、さらにホログラム層上にアルミ等の蒸着層34を設けた形態である。ホログラム層は印刷加工前に設けてもよい。この実施形態の場合は、全面アルミ蒸着層34を設けるので、スレッドの光輝性は高くなるが、スレッドの下面は隠蔽されることになる。
【0030】
図9(B)は、基材フィルム31にホログラム層33の加工を施した後、当該ホログラム層上に透明蒸着層35の形成を行い、さらに当該透明蒸着層35上に着色印刷32を裏刷りで設けた形態である。この実施形態の場合は、透明蒸着層35を設けるので、ホログラム層により光の回折光が生じる他、透明蒸着層を透して、その下側の印刷層や紙基材を観察できる効果がある。
図9(C)は、基材フィルム31にプライマー層31pを介して着色印刷32を裏刷りで施した後、当該印刷面にホログラム層33の加工を施し、さらにホログラム層上にアルミ蒸着層34を設けた形態である。この実施形態の場合も、全面アルミ蒸着層34を設けるので、スレッドの光輝性は高くなるがスレッド下面は隠蔽されることになる。また、スレッドが抄き込まれた状態で印刷面が基材フィルムの下面にあるので、印刷部の保護の効果が高くなる。いずれも矢印側が偽造防止用紙の表面側となる。
使用する印刷インキとしては前記の条件を満たすほか、ホログラムの輝きを阻害しないためには、透明性のあるインキが好ましい。
【0031】
蒸着層34は、表面からの光を全反射させる目的の場合は不透明な反射層として形成し、その場合の金属蒸着には、アルミニュウム、クロム、ニッケルあるいは銀、金等の光輝性の単一成分の金属か青銅、真鍮、白銅等の合金等を使用する。アルミ蒸着等の場合は、100Å〜2000Å程度の厚みに形成するが、好ましくは200Å〜1000Å程度の厚みである。
合金は着色もしくは薄膜の反射率を調整する場合に用いられるが、金属化合物を使用する場合は、その選択により透明または半透明の蒸着層にできる効果がある。これには金属あるいは合金の酸化物、硫化物等の金属化合物を使用することができ、硫化亜鉛(ZnS)、酸化チタン(TiO2 )、フッ化マグネシウム(MgF2 )、チタン酸バリウム(BaTiO2 )等が好ましく使用される。
【0032】
<示温スレッド>
基材フィルム上に、温度変化により可逆的に変色する示温材料を塗布または印刷して形成したスレッドであって、加熱や気温の変化あるいは手に持った際の体温で変色し温度が下がればまた元の色に戻るので真正品か偽造品かを容易に識別することができる。このような示温性を示す材料は、電子供与性有機化合物とフェノール性水酸基を有する化合物と、この二化合物の呈色反応を減感する不揮発性の化合物をの三成分を必須成分とし、このような化合物をビヒクル中に直に溶解または分散するか、微小カプセルに内包したものをビヒクル中に分散したものを印刷インキとして使用することができる。
このような示温材料は無色から有色へ、あるいは有色から無色へと顕著な色変化を示すことで従来の熱変色性素材と異なり、透明性があるため下地を視認できる特徴もある。また、このような着色料に一般の染料、顔料等を添加することにより有色から有色へと変化させることもできる。
【0033】
例えば、電子供与性呈色性有機化合物としては、3−ジエチルアミノ,6−メチル,7−クロルフルオラン、フェノール性水酸基を有する化合物として、ビスフェノールA、減感化合物としてステアリルアルコール、ビヒクルとしてマイクロクリスタリンワックスを適宜量加え、100°Cに加熱溶融して均質化した材料による印刷物は、20°Cで赤色を呈し、50°Cに加熱することにより無色に変化し、20°Cに戻すと再び赤色になる可逆性を示す。
また、電子供与性呈色性有機化合物としては、クリスタルバイオレットラクトン、フェノール性水酸基を有する化合物として、没食子酸ラウリルエステル、減感化合物としてミリスチルアルコール、ビヒクルとしてマイクロクリスタリンワックスを適宜量加え、100°Cに加熱溶融して均質化した材料による印刷物は、20°Cで無色を呈し、50°Cに加熱することにより青色に変化し、20°Cに戻すと再び無色になる可逆性を示す。
この他、材料の選択範囲や組み合わせが各種あり、色調や温度範囲を制御することが可能である。
【0034】
<蛍光スレッド>
基材フィルム上に、光の刺激を受けて蛍光を発光する材料を塗布または印刷して形成したスレッドであって、受光時に発光する狭義の蛍光と光を蓄えて刺激停止後に発光する燐光とがある。有機蛍光材料は狭義の蛍光、無機蛍光材料は蓄光に属するものが多い。
ルモゲンLイエロー、ルモゲンブリリアントイエロー、ルモゲンブリリアントグリーンは、ブラックライトの紫外線を受けて、黄色ないし緑色の蛍光を発光する有機蛍光材料として知られている。また無機蛍光材料としては、ZnS:Cu(緑)、(Zn,Cd)S:Cu(黄)、CaS:Bi(青)、(Zn,Cd)S:Cu(橙)、(Zn,Cd)S:Cu(赤)等を使用することができる。
【0035】
<磁気スレッド>
基材フィルム上に、磁性を示す材料を塗材として塗布または印刷して形成したスレッドであって、磁石や鉄粉等に対して反応するため、真正品か偽造品かを容易に識別することができる。
磁性材料の高保持力材料としては、BaFe1 2 1 3 、γ−Fe2 3 、 Co−γ−Fe2 3 、Fe3 4 等があり、低保磁力材料としては、センダスト合金、Ni−Znフェライト、Mn−Znフェライト、Mo−パーマロイ粉等がある。これらの磁性体の粒径が、数十nm〜数μmのものを、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の高分子樹脂バインダー中に溶解分散して使用することができる。
【0036】
なお、上記の各スレッドを抄き込む際は、熱溶解温度60〜80°Cの水可溶性バインダー等からなる接着層を裏面に備えたものを用いることができる。このように構成すれば、偽造防止用紙が完成した状態でスレッド3が基紙2に接着するので、基紙2と光輝性スレッド3の密着性が向上する。
【0037】
【実施例】
(実施例)
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
<印刷加工スレッドの作製>
偽造防止用紙用スレッドの基材フィルム31として、透明な厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製「ルミラーS−28」)に、グラビア印刷で以下の仕様による印刷を施した。
・プライマーコート
プライマー剤(ザ・インクテック株式会社製「THFプライマー」(ポリエステル、塩酢ビ樹脂混合系))を版深の浅いグラビア版を使用して0.6g/m2 にコートした。
・着色パターン印刷
「ABC」の小文字の組み合わせからなるパターンを赤色のインク(ザ・インクテック株式会社製「着色OPニスレッド」(塩酢ビ樹脂系))を使用して裏刷りで印刷した。印刷版にはグラビアダイレクト版を使用した。
・着色パターン印刷後、薄青色の着色オーバープリント用ニス(ザ・インクテック株式会社製「着色OPニスブルー」(塩酢ビ樹脂系))を使用してオーバープリントコート32pを行った(図8(A))。
以上のようにして印刷されたスレッドをスリッター機を使用して、2mm幅に細断して、偽造防止用紙用スレッドとした。
【0038】
<印刷加工ホロスレッドの作製>
偽造防止用紙用スレッドの基材フィルム31として、透明な厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製「ルミラーS−28」)にホログラム層33を形成したものを使用した。
ホログラムパターン形成には、紫外線硬化性アクリル樹脂(三菱化学株式会社製「ユピマーLZ065S」)を使用して、基材フィルム上にグラビアリバースコート法で、1.5g/m2 に塗工した後、ホログラムパターン型版を熱エンボスしてパターンを写し取り、紫外線照射してホログラムの凹凸パターンを完全に保持できるようにした。
その後、酸化チタン(TiO2 )を使用して、ホログラム層33上に、透明蒸着層35を厚み450Åに形成し、さらにその上に「ABC」の小文字のパターンを赤色のインク(ザ・インクテック株式会社製「着色OPニスレッド」(塩酢ビ樹脂系))を使用して裏刷りで印刷を行った(図9(B))。
その後、印刷加工スレッドと同様に、スリッター機を使用して、2mm幅に細断して、偽造防止用紙用スレッドとした。
【0039】
<偽造防止用紙の抄造>
上記で製造した印刷加工スレッドと印刷加工ホロスレッドの1本ずつの2本が図3のように偽造防止用紙に現れるように、表出部6がピッチ10mm×幅30mm、被覆部7がピッチ10mmで繰り返される抄き網パターンの抄紙機で、 90kg/四六版の上質紙に抄造した。なお、被覆部7の上部の紙料が35g/m2 、被覆部の下部の紙料が69g/m2 となるように抄き網部の凸部の高さを調整した。
このようにして完成した偽造防止用紙は、被覆部においても印刷加工スレッド、印刷加工ホロスレッドのいずれの場合も小文字を識別することができ、表出部においては印刷加工ホロスレッドの輝きが見られ、また、ホログラムスレッドの表出部では、ホログラムパターンを通して小文字印刷が見えるため、後刷りで印刷を加えたものと確実に判別が可能であり、偽造防止用紙として有用に使用することができた。
【0040】
【発明の効果】
発明の偽造防止用紙は、(1)当該表出部に現れたスレッドの両サイドに透かし部が設けられているので、抄造時に発生するスレッドの公差(ブレ)を当該透かし部により吸収することができる。(2)単純な手法により偽造するには偽造コストが増大、工程が複雑化するため偽造が困難であるほか、真券の解析もコスト的、作業的に困難となり、従来の偽造防止用紙に比較して格段の偽造、改ざん防止効果を有する
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の偽造防止用紙の第1の実施形態を示す図である。
【図2】 本発明の偽造防止用紙の第2の実施形態を示す図である。
【図3】 本発明の偽造防止用紙の第3の実施形態を示す図である。
【図4】 本発明の偽造防止用紙の第4の実施形態を示す図である。
【図5】 本発明の偽造防止用紙の第5の実施形態を示す図である。
【図6】 本発明の偽造防止用紙の第6の実施形態を示す図である。
【図7】 スレッド入り偽造防止用紙を抄き込む状態を示す図である。
【図8】 印刷加工スレッドの実施形態を示す図である。
【図9】 印刷加工ホロスレッドの実施形態を示す図である。
【符号の説明】
2 基紙
2a 紙料液
3 スレッド
5 透かし模様
6 表出部
7 被覆部
8 透かし部
9 すき網部
9a すき網部の凸部
21 薄い紙料
31 基材フィルム
31c 着色基材フィルム
31t 透明基材フィルム
31p プライマー層
32 着色印刷
32p オーバープリント
33 ホログラム層
34 蒸着層
35 透明蒸着層

Claims (3)

  1. 基紙に樹脂フィルム基材からなるスレッドを抄き込んでなる偽造防止用紙において前記基紙は、該スレッドを該スレッドの幅より広幅として間欠的に露出する表出部と該表出部間であって該スレッドを間欠的に覆う被覆部とを備え、当該表出部に現れたスレッドの両サイドに透かし部が設けられていることを特徴とする偽造防止用紙。
  2. 前記表出部と被覆部に2本以上のスレッドが含まれていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
  3. 記スレッドがホログラムスレッド、光輝性スレッド、印刷加工スレッド、印刷加工ホログラムスレッド、示温スレッド、蛍光スレッド、磁気スレッド、模様または文字入りスレッド、から選ばれた同種または2種以上のスレッドの組み合わせからなることを特徴とする請求項2記載の偽造防止用紙。
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