JP4267272B2 - 生体物質の単離方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁性担体を用いて生体物質を含有する試料から目的の生体物質を単離する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、核酸、タンパク質、糖質などの生体物質を含有する試料から、目的とする生体物質を単離する方法が種々検討されている。かかる方法としては、有機溶媒を用いて抽出分離する方法、分子ふるい(フィルター)を用いて分子の大きさを基に目的物質を単離する方法、特定の生体物質が可逆的に結合し得る担体を利用して単離する方法などが知られている。上記中でも担体を利用して単離する方法は、多数の試料を同時に扱う際に利点が多く、特に、磁性を有する担体(磁性担体)は、遠心分離機などの生体物質と担体の複合体を捕集するための装置が不要であり、磁場を与えることで捕集でき、利便性に優れている。
【0003】
磁性担体を使用して生体物質を単離する方法は、従来技術として核酸結合用磁性担体を使用する各種核酸の単離方法が発展してきた。核酸結合用磁性担体を使用する核酸単離方法としては、生親和性分子(例えば核酸など)が共有結合し得る重合性シラン被膜により覆われた酸化鉄を有する、磁気応答粒子を使用することが知られている(特開昭60−1564号公報)。この方法では、磁気応答粒子に核酸を結合させるために、生親和性分子(例えば核酸)と結合するシラン被膜が必要である。また、上記方法の改良法として超常磁性金属酸化物を含む球状の磁性シリカ粒子が公知である(特開平9−19292号公報、特開2001−78761号公報)。この磁性シリカ粒子は、超常磁性金属酸化物を微小なシリカ粒子で構成される無機多孔質壁物質で複合しており、100m2/g〜800m2/gの比表面積を有している。また超常磁性金属酸化物の含有量として、10重量%〜60重量%が、また粒子径として0.5μm〜15μmが好ましい範囲として示されている。
【0004】
さらに、磁界に対し感受性を有する物質に結合した生体物質を使用する分析法および装置についても公知である(国際出願公開番号WO86/05815)。この方法では、一本鎖核酸と結合し得る物質で被覆された磁気または磁気可能な粒子を使用し、一本鎖核酸を分離および検出する。具体的には、セルロース誘導体の1種であるニトロセルロースで磁気粒子表面を被覆し、ニトロセルロースとDNAまたはRNAの一本鎖核酸を特異的に結合させる。この方法では、磁性担体にDNAまたはRNAの1本鎖核酸を特異的に結合させるために、ニトロセルロースなどのセルロース誘導体で磁気粒子表面を被覆する必要がある。
【0005】
生体物質の精製、単離のためにポリカチオン性支持体を使用すること、特に核酸の精製および単離のためにポリカチオン支持体を使用することもまた公知である(特表平1−502319号公報)。支持体としては、金属酸化物、ガラス、ポリアミドなどが例示され、ポリカチオン性磁気応答粒子としては、粒子サイズが約1μmの磁気アミンマイクロスフェア(磁性微小球)などが使用されている。核酸と支持体との結合は、正電荷を有する磁気アミンマイクロスフェアと核酸の負電荷を有する糖リン酸塩主鎖との間のイオン結合に基づくとされている。
【0006】
さらに、内部コアポリマー粒子と、その粒子に均一に被覆している磁気的に応答する金属酸化物/ポリマーコーテイングとからなる磁性応答粒子を使用することによる純粋な生物材料の単離法もまた公知である(特表平2−501753号公報)。
【0007】
一般に、生体物質の単離を行うために表面を被覆した磁性粒子を固相担体として使用する場合、大きな粒子(例えば直径が20μm以上)は、弱い磁界においても応答し易い利点がある反面、沈降が早く、操作性に劣る欠点がある。また大きな粒子は、比表面積も小さくなるため、生体物質の結合効率も低くなる。一方、小さな粒子(例えば直径が0.1μm以下)では、比表面積が大きくなるため、核酸などの結合効率が向上し、かつ沈殿しにくい操作性も良好になるが、磁界に対する応答性が低下するため、磁界により担体を捕集するために大きな磁界が必要になる。
【0008】
このように、磁性担体を用いる公知の生体物質の単離方法は技術的に解決しなくてはならない要素を依然として多く含んでいる。とりわけ、目的とする生体物質を含有する試料の水溶液中における磁性担体の分散性は、生体物質との接触機会に直接関係し、磁性担体と目的とする生体物質との結合の効率、ひいては生体物質の分離効率に関わる重要な要素である。また磁性担体の磁場による捕集性は、磁気分離技術を応用した生体物質の単離方法において、固液分離の効率と時間短縮に直接影響を与える。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、磁性担体を用いて生体物質を含有する試料から目的の生体物質を単離する方法であって、従来と比較して水溶液中での分散性と磁場による捕集性に優れ、かつ生体物質との可逆的結合能および結合した生体物質の溶離性に優れ、生体物質の単離、精製効率が向上された生体物質の単離方法を提供することをその目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、生体物質、特に核酸精製の分野において、これまで考慮されることのなかった磁性担体の磁気特性について、核酸単離性能との関連を詳細に検討した。結果、強磁性酸化鉄粒子を含有する磁性担体において、生体物質の結合性および磁界による捕集性と、水溶液中での分散性および生体物質の溶離性とを両立させるためには、磁性担体の磁気特性の制御が極めて重要であることを見出した。すなわち、磁気特性の中で保磁力と飽和磁化が特定の範囲内にあり、かつ特定範囲内の平均粒子サイズを有する磁性担体が、生体物質の結合性および磁界による捕集性と、水溶液中での分散性および生体物質の溶離性とが両立し、優れた生体物質の単離性能を示すことを知見した。かかる知見に基づき、上記目的を達成する生体物質の単離方法を確立し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、以下のとおりである。
(1)30A・m2/kg〜80A・m2/kgの飽和磁化および2.39kA/m〜11.94kA/mの保磁力を有し、かつ平均粒子サイズが0.1μm〜10μmである磁性担体を、生体物質を含有する試料の水溶液中で該生体物質に接触させて、生体物質と該磁性担体とが結合された複合体を形成させる工程と、
外部磁場によって上記複合体を試料から分離させる工程と、
試料から分離した複合体より生体物質を溶出させる工程とを含む生体物質の単離方法。
(2)上記磁性担体が、以下の(a)〜(c)の能力を有することを特徴とする上記(1)に記載の方法。
(a)生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る、
(b)2000ガウス〜3000ガウスの磁場の存在下にて3秒以内にその90重量%以上が捕集され得る、
(c)1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る。
(3)上記磁性担体が、強磁性酸化鉄粒子をシリカにて被覆したものである上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)上記強磁性酸化鉄粒子がマグネタイト粒子である、上記(3)に記載の方法。
(5)上記磁性担体が、強磁性酸化鉄粒子をシリカで被覆処理後、200℃〜800℃で熱処理を施したものである上記(3)または(4)に記載の方法。
(6)上記熱処理の際の雰囲気ガスが、不活性ガスまたは還元性ガスである上記(5)に記載の方法。
(7)上記磁性担体が、水溶液中での酸化反応により合成した強磁性酸化鉄粒子を、乾燥させることなくシリカ被覆処理を行ったものである、上記(5)または(6)に記載の方法。
(8)生体物質が核酸である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)(a)生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得、(b)2000ガウス〜3000ガウスの磁場の存在下にて3秒以内にその90重量%以上が捕集され得、かつ(c)1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を有する磁性担体を、生体物質を含有する試料の水溶液中で該生体物質に接触させて、生体物質と該磁性担体とが結合された複合体を形成させる工程と、
外部磁場によって上記複合体を試料から分離させる工程と、
試料から分離した複合体より生体物質を溶出させる工程とを含む生体物質の単離方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の生体物質の単離方法は、▲1▼生体物質を含有する試料の水溶液中で、該生体物質と特定の磁性担体とを接触させて、生体物質と該磁性担体とが結合された複合体を形成させる工程と、▲2▼外部磁場によって上記複合体を試料から分離させる工程と、▲3▼試料から分離した複合体より生体物質を溶出させる工程とを経て、試料から生体物質を単離する方法であって、用いる磁性担体にその大きな特徴を有する。
すなわち、本発明に用いる磁性担体は、〔1〕飽和磁化が30A・m2/kg〜80A・m2/kgであり、〔2〕保磁力が2.39kA/m〜11.94kA/mであり、かつ〔3〕平均粒子サイズが0.1μm〜10μmであることを特徴とするものである。以下、まずはこの本発明に用いる磁性担体について詳述する。
【0013】
〔1〕飽和磁化が30A・m 2 /kg〜80A・m 2 /kgであること
本発明に用いる磁性担体の第一の特徴は、その飽和磁化が30A・m2/kg〜80A・m2/kg(30emu/g〜80emu/g)、好ましくは35A・m2/kg〜75A・m2/kg(35emu/g〜75emu/g)の範囲内であることである。
飽和磁化は、磁性担体の捕集性に関係し、一般に飽和磁化が大きいほど、磁界に対する応答性が向上し、磁性担体を懸濁液中で捕集する際に短時間で効率良く捕集できる。本発明者らは、最適な飽和磁化の範囲を詳細に検討したところ、飽和磁化が上記範囲内である場合に、後述する生体物質への結合性を損わない範囲で磁性担体の捕集力が最も向上するものであることを突き止めた。すなわち、保磁力および平均粒子サイズが上記範囲であったとしても、飽和磁化が30A・m2/kg(30emu/g)未満であると、磁性担体の磁界に対する応答性が低下し、凝集し難くなってしまう。また、保磁力および平均粒子サイズが上記範囲であったとしても、飽和磁化が80A・m2/kg(80emu/g)を超えるためには、シリカの被覆量を少なくする必要があり、シリカの均一被覆が困難となってしまい、生体物質への結合能力が低下してしまう。
なお磁性担体の飽和磁化は、たとえば振動試料型磁力計(東英工業(株)製)を用いて、796.5kA・m(10キロエルステッド)の磁界を印加したときの磁化量を測定することによって求めることができる。
【0014】
〔2〕保磁力が2.39kA/m〜11.94kA/mであること
本発明に用いる磁性担体の第二の特徴は、その保磁力が2.39kA/m〜11.94kA/m(30エルステッド〜150エルステッド)、好ましくは3.19kA/m〜10.35kA/m(40エルステッド〜130エルステッド)の範囲内であることである。
本発明者らは、磁性担体からの生体物質の溶離性について検討したところ、保磁力と密接な関係にあることを見出した。磁性担体は、捕集する際に印加する磁界によってある程度磁化されるが、保磁力が大きくなるほど、磁性担体間の凝集力が大きくなり、磁性担体から生体物質を溶離する際の磁性担体の分散性が低下する。結果、結合した生体物質の溶液中での溶離性が低下し、生体物質の単離性能も低下する。また保磁力の小さな磁性担体を得るためには、使用する強磁性酸化鉄粒子の種類や、磁性担体の合成方法まで制約を受けてしまう。本発明者らは、生体物質、特に核酸精製に影響を与えない最適の保磁力の範囲について検討したところ、保磁力が上記範囲内である場合に、実用上問題が起こらないことを突き止めた。すなわち、飽和磁化および平均粒子サイズが上記範囲内であったとしても、保磁力が2.39kA/m未満の磁性担体を得るためには、低保磁力化のために鉄以外の特殊な元素をさらに添加せねばならず、そのため、粒子の形状を好ましい形状である球状としにくくなったり、さらに粒子サイズ分布が広くなる不具合があったり、また、磁性担体の合成方法として後述する本発明におけるような方法(湿式法)が適用できなくなり、たとえば、焼結体を機械的な手段で粉砕して微粒子化するなどの手段を採らねばならず、そのために粒子の粒子サイズ分布が広くなってしまうのみならず、磁気特性において再現性のよいものが得られないという不具合がある。また、飽和磁化および平均粒子サイズが上記範囲内であったとしても、保磁力が11.94kA/mを超えると、磁界によりある程度着磁した磁性担体が、この保磁力の存在により磁気的に凝集し、所望の分散性を得ることができないという不具合がある。保磁力が11.94kA/m以下の磁性担体を用いると何故上記不具合が起こらないか、その理由は明らかではないが、上記保磁力を実現するためには強磁性酸化鉄粒子がある程度の厚みのシリカの層で被覆されていることになり、かかる非磁性のシリカの層が磁性担体間の磁気的相互作用を遮断し、磁性担体の凝集を防止するためであると考えられる。
なお磁性担体の保磁力は、たとえば振動試料型磁力計(東英工業(株)製)を用いて、796.5kA/m(10キロエルステッド)の磁界を印加して飽和磁化した後、磁界をゼロに戻し、さらに逆方向に磁界を徐々に増加させながら印加して、磁化の値がゼロになる印加磁界の強さから求めることができる。
【0015】
〔3〕平均粒子サイズが0.1μm〜10μmであること
本発明に用いる磁性担体はさらに、平均粒子サイズが0.1μm〜10μm、好ましくは0.2μm〜8μmのものである。飽和磁化および保磁力が上記範囲内であったとしても、磁性担体の平均粒子サイズが0.1μm未満であると、磁界による磁性担体の捕集性が低下し、また磁界除去時の再分散性が低下してしまう不具合がある。また、飽和磁化および保磁力が上記範囲内であったとしても、磁性担体の平均粒子サイズが10μmを超えると、磁性担体が沈降し易くなってしまい、また、比表面積が小さくなり過ぎて生体物質への結合能力が低下してしまう。
ここで、磁性担体の「粒子サイズ」とは、当該磁性担体のあらゆる方向に関する長さのうち最大となる長さをいい、上記磁性担体の平均粒子サイズは、たとえば、透過型電子顕微鏡写真上で各粒子300個の粒子サイズを測定し、その数平均として算出する。
【0016】
本発明に用いる磁性担体は、上述した〔1〕〜〔3〕を同時に兼ね備えることで、優れた単離性能を備える磁性担体として実現される。具体的には、従来の磁性担体と比較して格段に優れた、以下の(a)〜(c)の能力を示す磁性担体を実現することができる。
(a)生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る。
(b)2000ガウス〜3000ガウスの磁場の存在下にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得る。
(c)1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る。
【0017】
本発明に用いる磁性担体は、(a)生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る能力を示す。従来、当分野にて用いられていた典型的な磁性担体として、超常磁性を示す磁性担体が知られている。この超常磁性を示す磁性担体は、本発明のような強磁性酸化鉄粒子を使用したものと根本的に異なり、飽和磁化および保磁力は、それぞれ10A・m2/kg以下および0.80kA/m以下である。このような超常磁性は、通常、飽和磁化と保磁力の非常に小さい物質を使用するか、あるいは、粒子サイズを0.1μm以下と小さくすることにより実現される。
分散性に関しては、通常、粒子サイズが小さくなるほど良好になる。なおここでいう「分散」とは、生体物質を含有する試料の水溶液中で、磁性担体が沈降しないで水溶液中に安定して浮遊していると目視にて観察される状態を指す。かかる磁性担体の能力は、たとえば、磁性担体を含む水溶液を一定時間放置後の、沈降液と上澄み液との界面の位置を観察することによって確認することができる。すなわち、長時間放置後も、上澄み液が分離してこない状態が分散性が良好な状態ということになる。粒子サイズが0.1μm以下と小さい超常磁性粒子を用いた磁性担体は、通常良好な分散性を示す。
【0018】
また本発明に用いる磁性担体は、(b)2000ガウス〜3000ガウスの磁場の存在下にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得る能力を示す。従来、当分野にて用いられていた典型的な磁性担体である上記の超常磁性を示す磁性担体では、2000ガウス〜3000ガウスの磁場の存在下でその90重量%を捕集するためには、10秒以上かかってしまう。またかかる従来の磁性担体では、上記磁場の存在下に3秒間置いても、1重量%〜50重量%程度しか捕集できない。かかる磁性担体の能力は、たとえば磁性担体を含む溶液を、2000ガウス〜3000ガウスの磁場を発生する磁石の上に3秒間放置し、磁場で捕集されなかった溶液を除去後、磁場で捕集された磁性担体の重量を測定するというような方法にて確認することができる。飽和磁化および保磁力が、それぞれ10A・m2/kgおよび0.80kA/m以下である超常磁性を示す従来の磁性担体を使用した場合には、磁場に対する感応性が低いため、2000ガウス〜3000ガウスの磁場の存在下で、3秒以内に90重量%以上捕集することはできず、また粒子サイズが0.1μm以下と小さい超常磁性を有する磁性担体を使用した場合には、溶液中の分散性が高すぎるため、磁場による分離性が不良になり、3秒以内に90重量%以上捕集することはできない。
なお2000ガウス〜3000ガウスという外部磁場の範囲は、生体物質を含む試料より、磁性担体を用いて生体物質を単離する分野において、磁性担体と生体物質とを結合させて複合体を形成した後、かかる複合体を試料より分離する際にかける外部磁場として、通常好適に使用される範囲である。すなわち、2000ガウス未満の磁場であると、磁場に対する感応性が弱くなる傾向があり、また、3000ガウスを超える磁場であると、磁場を発生するための装置が大がかりになって高価になるので、2000ガウス〜3000ガウスの範囲内の磁場を用いることでかかる不具合を解消することができる。
【0019】
さらに、本発明に用いる磁性担体は、(c)1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示す。従来、当分野にて用いられていた典型的な磁性担体である上記の超常磁性を示す磁性担体では、1mgあたり0.3μg程度の生体物質としか可逆的に結合し得ない。ここで「可逆的に結合し得る」とは、磁性担体と生体物質とが、その性状を変化させることなく、再現性のある手法にて人為的に互いに結合させ得、また分離させ得ることを指す。かかる磁性担体の能力は、たとえば、後述の実施例に記載した生体物質を含む試料からの生体物質の単離方法にて確認することができる。
【0020】
上記(a)〜(c)の能力は、本発明に用いる磁性担体が、飽和磁化、保磁力および平均粒子サイズがそれぞれ特定の範囲内であることにより、生体物質の結合性/磁性担体の磁界による捕集性と、磁性担体の分散性/生体物質の溶離性が両立することによって達成される。このような本発明に用いる磁性担体によれば、従来の方法に比べて水溶液中での分散性と磁場による捕集性に優れ、かつ生体物質との可逆的結合能および結合した生体物質の溶離性に優れた、生体物質の単離、精製効率をさらに向上させ得る磁性担体を実現することができる。
なお、上記(a)〜(c)の能力を有する磁性担体は、たとえば、上記飽和磁化、保磁力および平均粒子サイズがそれぞれ特定の範囲を満たすことにより達成されるが、かかる能力を示す磁性担体であれば、上記飽和磁化、保磁力および平均粒子サイズがそれぞれ特定の範囲を満たすものでなくても、本発明に包含される。
【0021】
本発明に用いる磁性担体は、強磁性酸化鉄粒子と、該強磁性酸化鉄粒子を被覆するシリカとを基本的に備えるのが好ましい。ここで「被覆」とは、強磁性酸化鉄粒子の外側を覆って、磁性担体の最外層にシリカの層が形成されていることを指す。当該シリカの層は、強磁性酸化鉄粒子を完全に覆うように形成されていてもよく、また、後述の目的とする生体物質とシリカとの結合性を阻害しない範囲であれば強磁性酸化鉄粒子の一部が露出してなるように形成されていてもよい。強磁性酸化鉄粒子1個をシリカにて被覆されて1個の磁性担体が形成されても、強磁性酸化鉄粒子が2個〜100個集結した塊状物をシリカにて被覆されることで1個の磁性担体が形成されても特性が損なわれることはない。なお本発明におけるシリカは、SiO2結晶および他の形態の酸化ケイ素分子、SiO2から構成されるケイソウ植物の骨格ならびに無定型酸化ケイ素を含む。
【0022】
本明細書中における「強磁性酸化鉄粒子」は、金属製の粒子を酸化反応させて得られた磁気応答性(磁界に対する感応性)を有する粒状物であり、具体的には、マグヘマイト粒子(γ−Fe23)、マグネタイト粒子(Fe34)、マンガン亜鉛フェライト粒子(Mn1-xZnxFe24)、金属鉄粒子(α−Fe)、鉄−コバルト合金粒子(FeCo)、バリウムフェライト粒子(BaFe1219)などが挙げられるが、金属鉄や鉄−コバルト合金粒子などの金属磁性粒子は水分に対して不安定であり、長時間水に浸漬すると飽和磁化が低下する傾向にあり、マンガン亜鉛フェライト粒子は鉄のみからなる強磁性酸化鉄粒子と比較して飽和磁化が低い傾向にあるためである。また、バリウムフェライト粒子では保磁力が大き過ぎるため、磁石などで捕集した後、結合した核酸を溶離するときに磁性担体が磁気的に凝集し易く、核酸の溶離性が低下する傾向にある。なお、上記「磁気応答性を有する」とは、磁石等による外部磁界が存在するとき、磁界により磁化する、あるいは磁石に吸着するなど、磁界に対して感応性を示すことを指す。
【0023】
本発明者らは、各種磁性粒子をシリカで被覆し、後述するような生体物質の単離のための磁性担体としての適合性を検討した結果、上述したマグヘマイト粒子(γ−Fe23)とマグネタイト粒子(Fe34)、さらにこの中間酸化鉄粒子が、上記本発明における磁性担体の飽和磁化を達成するために最適であり、また特性的にも優れたバランスを有していることを突き止めた。中でもマグネタイト粒子は、マグヘマイト粒子より飽和磁化が15%程度大きく、かつ保磁力も低いことから、本発明における強磁性酸化鉄粒子として特に好適である。
【0024】
本発明における強磁性酸化鉄粒子は、その形状に特に制限はなく、球状、楕円体状、粒状、板状、針状などの多面体状などが挙げられるが、針状や板状であると形状異方性による保磁力が発現してしまう虞があることから、このような形状異方性が起こり得ない球状、粒状または楕円体状であることが好ましく、球状であるのが特に好ましい。ここで、「球状」とは、アスペクト比(あらゆる方向で測定した場合の最大長さと最小長さとの比)が1.0〜1.2(1.0以上1.2以下)の範囲内である形状を指し、「楕円体状」とは、アスペクト比が1.2を超えて1.5以下の範囲内である形状を指す。また、「粒状」とは、球状のように粒子の長さが全方向で概ね揃っているものや、楕円体状のように一方向の長さのみ大きいもの以外の方向による長さの差異はあるが、全体として異方性がない形状を指す。
【0025】
本発明に用いる磁性担体における強磁性酸化鉄粒子の含有量に制限はないが、磁性担体の50重量%〜95重量%であるのが好ましく、60重量%〜90重量%であるのが好ましい。磁性担体中、強磁性酸化鉄粒子が50重量%未満であると、磁性担体としての飽和磁化が小さくなり、磁場に対する感応性が低くなる傾向にあるためであり、また磁性担体中、強磁性酸化鉄粒子が95重量%を超えると、強磁性酸化鉄粒子を被覆するシリカの量が少なくなり、核酸の単離性能が低下する傾向にあるためである。
【0026】
本発明に用いる磁性担体は、たとえば、常法にしたがって強磁性酸化鉄粒子をシリカにて被覆処理した後、これを200℃〜800℃、好ましくは250℃〜500℃で熱処理を施すことで、得ることができる。熱条件が200℃未満であると、後述する熱処理の効果を充分に得ることができないためであり、また800℃を超えると、強磁性酸化鉄粒子を被覆するシリカ間で焼結が生じてしまい、得られた磁性担体が凝集体として得られやすくなり、溶液中での磁性担体の分散性が低下して、核酸の単離性能が低下する不具合が起こるためである。
上記温度範囲内で熱処理を行うと、上述したような磁性担体が得られる理由については明らかではないが、本発明者らは以下のように考えている。すなわち、強磁性酸化鉄粒子の飽和磁化や保磁力などの磁気特性は、強磁性酸化鉄粒子をシリカ被覆処理した後の熱処理条件によって大きく変化する。これは、強磁性酸化鉄粒子をシリカ被覆した後、種々の条件での熱処理を経て得られた磁性担体が、見かけの粒子サイズは同じでも、強磁性酸化鉄粒子の結晶性および結晶子サイズが異なり、強磁性酸化鉄粒子の磁気特性はこの結晶性および結晶子サイズに大いに依存するためであると考えられる。一般的には、強磁性酸化鉄粒子の結晶性が向上すると、飽和磁化および保磁力は共に増加する傾向にある。また、強磁性酸化鉄粒子の結晶子が成長すると(結晶子サイズが大きくなると)、飽和磁化は増加するが、保磁力は低下する傾向にある。
さらに、上記熱処理によって、強磁性酸化鉄粒子の表面近傍にシリカがより強固に結合し、またシリカの結晶性も向上する結果、核酸との結合性が向上する、ということも考えられる。
【0027】
ここで、磁性担体における強磁性酸化鉄粒子の結晶性は、粒子が有する結晶構造の完全性を意味し、定量的に求めることは困難であるが、たとえばX線回折法によって、測定して回折ピークの幅から定性的に求めることができ、粒子の結晶性が良好になるほど、ピーク幅が狭くなる。上記条件での熱処理を経て得られた磁性担体における強磁性酸化鉄粒子は、上記熱処理を経ずに得られた従来の磁性担体に比べて結晶性が良好であり、これは上記のX線回折法で求めた回折ピーク幅から調べることができる。すなわち、上記条件で熱処理を経て得られた磁性担体は、経ないものに比べて、ピーク幅が狭く、結晶性が良好であることが判る。
【0028】
また、磁性担体における強磁性酸化鉄粒子の結晶子サイズは、1個の強磁性酸化鉄粒子を構成する個々の結晶のサイズを意味し、X線回折法によって得られた回折ピークの半減値からシェラーの式を使って求めることができる。上記条件での熱処理を経て得られた磁性担体における強磁性酸化鉄粒子は、上記X線回折法によって求められた結晶子サイズが、上記熱処理を経ずに得られた従来の磁性担体の結晶子サイズに比べて1.1倍〜1.5倍程度あり、大きく異なる。
【0029】
上記熱処理の時間については、特に制限はなく、上記熱処理の温度条件に応じて適宜選択すればよい(通常、熱処理温度が高くなるほど、また熱処理時間が長くなるほど、結晶性が向上し、結晶子が成長する)が、0.5時間〜10時間の熱処理を行うのが好ましく、1時間〜5時間の熱処理を行うのがより好ましい。熱処理時間が0.5時間未満であると、上述した熱処理の効果を充分に得ることができない傾向にあるためであり、また熱処理時間が10時間を超えると、強磁性酸化鉄粒子を被覆するシリカ間で焼結が生じ易くなり、得られた磁性担体が凝集体として得られやすい傾向にあるためである。
【0030】
また上記熱処理は、不活性ガスまたは還元性ガスの雰囲気下で行われるのが好ましい。空気中や酸素ガス中などの酸化性ガス雰囲気下で上記熱処理を行っても、ある程度の効果は得ることができるが、シリカで被覆されていても微細な欠陥などを通して酸素が侵入し、たとえば強磁性酸化鉄粒子がマグネタイト粒子である場合には、これが酸化されてマグネタイトより飽和磁化の低いマグヘマイト(γ−Fe23)になったり、あるいは過度に酸化されて非磁性のヘマタイト(α−Fe23)になったりしてしまう虞がある。不活性ガスまたは還元性ガスの雰囲気下で上記熱処理を行うことによって、上記酸化性ガス雰囲気下で熱処理を行う場合に生じ得る不具合を確実に回避することができる。
【0031】
上記不活性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガスが好ましく、中でも窒素ガスは安価で取扱いが簡便であるという利点があることから、窒素ガスを用いるのが好ましい。
上記還元性ガスとしては、水素ガスや一酸化炭素ガス、都市ガスなどが挙げられる。なお、還元性雰囲気下で上記熱処理を行うときには、過度に還元されて金属の状態にまで還元されるのを防止するため、水蒸気を含ませながら熱処理することが好ましい。
また、上記酸化を防止し得る観点からは、真空雰囲気下で上記熱処理を行ってもよい。
【0032】
本発明に用いる磁性担体を得るにあたって、上記熱処理前までの、強磁性酸化鉄粒子の調製や、強磁性酸化鉄粒子のシリカによる被覆などは、従来公知の種々の手法および条件にしたがって行えばよく、特に制限はされない。しかしながら、上述のように特定範囲の飽和磁化および保磁力を有する本発明に用いる磁性担体は、強磁性酸化鉄粒子の結晶性および結晶子サイズを制御することで得ることができるが、この結晶性および結晶子サイズは、強磁性酸化鉄粒子の調製の条件によっても異なってくる。また、本発明者らの知見によれば、強磁性酸化鉄粒子を被覆するシリカの態様は、得られた磁性担体の飽和磁化に影響を及ぼすことが判っている。
かかる観点からは、次の条件にて強磁性酸化粒子を調製し、シリカによる強磁性酸化鉄粒子の被覆を行うのが好ましい。以下、強磁性酸化鉄粒子としてマグネタイト粒子を用いた場合を例に挙げて、好適な方法について具体的に詳述する。
【0033】
鉄塩の水溶液の酸化反応を利用して、マグネタイト粒子を調製する。
まず、硫酸第一鉄(FeSO4・6H2O)を溶解した2価のFeイオン水溶液に、NaOH水溶液を滴下し、水酸化第一鉄(Fe(OH)2)を析出させる。この水酸化第一鉄の懸濁液のpHを9〜10に調整した後、空気を吹き込むことにより酸化して、マグネタイト粒子を成長させる。上記pHが9未満であると、マグネタイトの析出が遅くなる傾向にあるためであり、また上記pHが10を超えると、ゲーサイト(α-FeOOH)が生成し易くなる傾向にあるためである。
【0034】
上記マグネタイト粒子の成長において、空気を吹き込む速度と、懸濁液の保持温度は、マグネタイト粒子の粒子サイズに大いに影響を与える。
上記空気の吹き込み速度は、通常、大きくなるとマグネタイトの結晶成長が早くなり、得られるマグネタイト粒子は粒子サイズの小さなものとなる。しかし空気吹き込み速度が小さ過ぎるか、あるいは大き過ぎると、マグネタイト以外の物質が混在析出し易くなるため、かかる観点より空気吹き込み速度は、100L/hr〜400L/hrに調整されるのが好ましい。
また、懸濁液の保持温度は、50℃〜90℃に調整されるのが好ましい。上記保持温度が50℃未満であると、ゲーサイト(α-FeOOH)が生成し易くなる傾向にあるためである。また、懸濁液の保持温度が高いほどマグネタイト粒子は成長し易くなり粒子サイズは大きくなるが、90℃を超えると、本発明の目的を達成するためには好ましくない粒子サイズにまで大きくなるだけでなく、粒子サイズ分布も広くなる傾向にあるためである。
【0035】
上述したような方法によって、平均粒子サイズが0.1μm〜0.5μmのマグネタイト粒子を調製する。マグネタイト粒子をかかる平均粒子サイズとするのは、上述したように通常、1個〜100個の強磁性酸化鉄粒子が集結した塊状物をシリカにて被覆することで1個の磁性担体が得られるが、この際に0.1μm〜10μmという平均粒子サイズを実現し易いためである。
なおマグネタイト粒子(強磁性酸化鉄粒子)の「粒子サイズ」は、上述した磁性担体の粒子サイズと同義であり、マグネタイト粒子(強磁性酸化鉄粒子)の平均粒子サイズも上述した磁性担体の平均粒子サイズと同様にして算出することができる。
【0036】
本発明においては、上述のようにして得られた強磁性酸化鉄粒子を、乾燥工程を経ることなく、シリカ被覆に供するのが好ましい。なお、強磁性酸化鉄粒子は、別途得られた乾燥状態のものを水に分散させて使用することもできるが、上述した方法にて得た強磁性酸化鉄粒子を、乾燥工程を経ることなく、水を含んだ懸濁液の状態のままで使用した方が分散性がよく、またシリカに対する濡れ性も良好であり、シリカにて強磁性酸化鉄粒子を均一に被覆できるためである。
シリカ被覆の方法は、以下の二つの方法のいずれが挙げられる。
【0037】
シリカ被覆の第一の方法は、上記で得たマグネタイト粒子を純水で十分水洗した後、乾燥させることなく、水を含んだ懸濁液状としたところに、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)を所定量添加し、溶解させる。ケイ酸ナトリウムの添加量は、シリカ(SiO2)に換算して、マグネタイト粒子に対して10重量%〜300重量%であるのが好ましく、15重量%〜250重量%であるのがより好ましい。マグネタイト粒子に対し10重量%未満であると、大きな飽和磁化が得られ易いものの、マグネタイト粒子をシリカにて均一に被覆することが困難となる傾向にあるためである。またマグネタイト粒子に対し300重量%を超えると、飽和磁化が本発明に用いる磁性担体における飽和磁化の範囲より小さくなり過ぎてしまい、磁性担体としたときに磁界に対する応答性が低下する虞があるためである。
【0038】
次に、別途調製した界面活性剤を有機溶媒に溶解させた界面活性剤溶液を、上記ケイ酸ナトリウムを溶解したマグネタイト粒子懸濁液に混合させる。
用いる界面活性剤としては、特には制限はないが、親水性と疎水性とを併せもつことから、ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤が好ましい。ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤は、具体的には、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレートなどが例示され、中でも親水性と疎水性とのバランスが本発明の目的を達成するのに最適であることから、ソルビタンモノオレートが特に好ましい。
また、有機溶媒としては、エマルジョン状態を作り出す必要があることから、水に対する溶解度が低いものが好ましく、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。中でもシリカ被覆後の磁性担体の反応液からの取り出し、洗浄などの操作性がよいことから、n−ヘキサンが特に好ましい。
【0039】
上記界面活性剤溶液を混合した混合液を、ホモミキサ、ホモジナイザーなどの攪拌機を用いて攪拌し、エマルジョン粒子を含有するW/O型の懸濁液を調製する。上記エマルジョン粒子は、有機溶媒中で、マグネタイト粒子とケイ酸ナトリウム水溶液が界面活性剤によって包み込まれた構造を有する。
攪拌時間は、用いる攪拌機にもよるが、1分間〜30分間程度であるのが好ましい。攪拌時間が短すぎると、均一なサイズのエマルジョン粒子が得られにくくなる傾向にあるためであり、また攪拌時間が長すぎると、攪拌エネルギーによってマグネタイト粒子(強磁性酸化鉄粒子)とシリカが反応して、上述した構造を有さないエマルジョン粒子が生成し易くなる傾向にあるためである。
【0040】
次に、上記で得られたエマルジョン粒子を含有する懸濁液を、アンモニウム塩を溶解した水溶液に滴下する。上記ケイ酸ナトリウム水溶液は、アルカリ性であるため、ケイ酸ナトリウムはアルカリ領域では水に溶解してなるが、中性領域では不溶性となる。したがって、上記滴下によって、アンモニウム塩にて中和され、シリカとなって析出する。結果、マグネタイト粒子をシリカで被覆してなる球状の粒子が生成する。上記アンモニウム塩としては、硫酸塩や炭酸塩が好ましいものとして使用でき、例えば炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウムなどが好適なものとして使用できる。
【0041】
上記懸濁液のアンモニウム塩水溶液への滴下は、シリカを徐々に析出させるように行うのが好ましい。滴下時間は、10分間〜3時間であるのが好ましい。滴下時間が10分間未満であると、得られたシリカの層に欠陥(たとえば、シリカの層中に大きな空孔)が生じたり、また磁性担体の表面に凹凸が生じ易くなる傾向にあるためである。また、滴下時間が3時間を超えたとしても、特性上特に問題となることはないが、合成時間が長くなるだけで意味がない。
【0042】
このようにして合成された粒子を、純水で充分水洗した後、濾過し、空気中、乾燥させる。乾燥の条件としては、温度が40℃〜120℃であるのが好ましく、60℃〜100℃であるのがより好ましい。乾燥の温度が40℃未満であると、磁性担体中に取り込まれた水が十分に除去しきれない傾向にあるためであり、また、乾燥の温度が120℃を超えると、強磁性酸化鉄粒子の酸化により飽和磁化が低下する傾向にあるためである。また、磁性担体の特性に影響を与えない範囲で充分に乾燥させるためには、乾燥の時間は1時間〜24時間であるのが好ましく、2時間〜20時間であるのがより好ましい。
このようにして、強磁性酸化鉄粒子がシリカにて被覆されてなり、平均粒子サイズが0.1μm〜10μmの粒子を得ることができる。こうして得られた粒子に上述した熱処理を施すことで、飽和磁化が30A・m2/kg〜80A・m2/kgの範囲内、かつ保磁力が2.39kA/m〜11.94kA/mの範囲内に実現された本発明に用いる磁性担体を得ることができる。
【0043】
シリカ被覆の第二の方法では、まず、上述したように調製したマグネタイト粒子(強磁性酸化鉄粒子)を純水で充分に水洗した後、乾燥させることなく、水に懸濁させて懸濁液を調製する。この際、水に対するマグネタイト粒子の含有量が1重量%〜10重量%となるように、水とマグネタイト粒子の含有割合を調製する。かかる水に対するマグネタイト粒子の含有量は、シリカをマグネタイト粒子の表面近傍に被着形成するときの均一性に影響し、この範囲内のときに最も均一にシリカが被着形成される。すなわち、水に対するマグネタイト粒子の含有量が1重量%未満である場合には、濃度が希薄すぎて、シリカがマグネタイト粒子の表面以外の部分で析出し易くなる傾向にあり、また、水に対するマグネタイト粒子の含有量が10重量%を超えると、濃度が高すぎて、マグネタイト粒子が凝集し易くなり、個々のマグネタイト粒子の表面近傍に均一にシリカを被着形成することが困難となる傾向にあるためである。
【0044】
次に、上記懸濁液に、シリカ(SiO2)に換算して、マグネタイト粒子に対して3重量%〜50重量%となるように、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)を添加する。ケイ酸ナトリウムの添加量が上記3重量%未満であると、マグネタイト粒子の表面に被着形成されるシリカの量が不充分となるため、生体物質に結合しにくくなる傾向にある。また、ケイ酸ナトリウムの添加量が上記50重量%を超えると、シリカを個々のマグネタイト粒子の表面近傍に均一に被着形成することが困難になり、核酸の結合量増加の効果は少なくなる傾向にあり、また、磁性担体としての飽和磁化量は減少するため、磁界による捕集性が低下する傾向にある。
【0045】
上記ケイ酸ナトリウムの添加量は、シリカ(SiO2)に換算して、水に対して0.5重量%〜2重量%となるように調製することが好ましい。さらに、水に対するマグネタイト粒子の含有量が1重量%〜10重量%となるように、マグネタイト粒子、ケイ酸ナトリウムおよび水の量を調製するのが好ましい。かかる第二の方法においても、上述の第一の方法と同様に中和反応によるシリカの析出により強磁性酸化鉄粒子のシリカによる被覆を行うが、このシリカ析出の際、液の粘度が高くなる。この粘度が高すぎると、個々のマグネタイト粒子の表面近傍にシリカを均一に被着形成することが困難となってしまう。一方、上記粘度が低すぎると、シリカが析出しにくくなってしまう。
かかる第二の方法におけるマグネタイト粒子、ケイ酸ナトリウムおよび水の添加量の条件は、上記シリカ析出の際の不具合が起こらない範囲に粘度を調整し、個々のマグネタイト粒子の表面近傍にシリカが被着形成されるような好適な条件にて強磁性酸化鉄粒子のシリカ被覆を行うことができる。
【0046】
このようにして合成された粒子を、純水で充分水洗した後、濾過し、空気中、乾燥させる。乾燥の条件としては、温度が40℃〜120℃であるのが好ましく、60℃〜100℃であるのがより好ましい。乾燥の温度が40℃未満であると、シリカ層の内部に取り込まれた水が充分に除去されにくい傾向にあるためであり、また、乾燥の温度が120℃を超えると、強磁性酸化鉄粒子の酸化により飽和磁化が低下する傾向にあるためである。また、磁性担体の特性に影響を与えない範囲で充分に乾燥させるためには、乾燥の時間は1時間〜24時間であるのが好ましく、2時間〜20時間であるのがより好ましい。
この第二の方法は、上述の第一の方法と比較して、平均粒子サイズの小さな磁性担体、特に平均粒子サイズが1μm以下の磁性担体を製造するのに適した方法である。こうして得られた粒子に上述した熱処理を施すことで、飽和磁化が30A・m2/kg〜80A・m2/kgの範囲内、かつ保磁力が2.39kA/m〜11.94kA/mの範囲内に実現された本発明に用いる磁性担体を得ることができる。
【0047】
なお、上述した本発明に用いる磁性担体を製造する方法は、好適な例を挙げたものであって、本発明に用いる磁性担体は、上記製造方法を経て得られたものに限定されるものではない。
【0048】
本発明の生体物質の単離方法においては、上述してきた磁性担体の中でも、以下の(1)〜(5)を同時に満たす磁性担体を使用することが、特に好ましい。
(1)強磁性酸化鉄粒子と、これを被覆するシリカとを備える磁性担体であって、
(2)強磁性酸化鉄粒子がマグネタイト、マグヘマイト、あるいはその中間酸化鉄粒子の内のいずれか、特に好ましくはマグネタイト粒子であって、
(3)この強磁性酸化鉄粒子が鉄塩の水溶液中での酸化反応により合成された後、乾燥工程を経ないで、水を含んだ懸濁状態でシリカ被覆処理されたものであり、
(4)シリカ被覆後、水洗、乾燥し、さらに不活性ガスあるいは還元性ガス雰囲気下で200℃〜800℃の熱処理を施されたものであり、
(5)飽和磁化が30A・m2/kg〜80A・m2/kg(30emu/g〜75emu/g)であり、保磁力が2.39kA/m〜11.94kA/m(30エルステッド〜150エルステッド)であり、かつ平均粒子サイズが0.1μm〜10μmである磁性担体。
【0049】
本発明の単離方法は、▲1▼生体物質を含有する試料の水溶液中で該生体物質と上述してきた特定の磁性担体とを接触させて、生体物質と該磁性担体とが結合された複合体を形成させる工程と、▲2▼外部磁場によって上記複合体を試料から分離させる工程と、▲3▼試料から分離した複合体より生体物質を溶出させる工程とを経て、試料から生体物質を単離することを特徴とする方法である。
なお、本発明でいう「生体物質」とは、たとえば細菌、酵母、カビ、昆虫細胞、動物細胞、動物組織、植物組織、始原菌などの生体由来の試料に含有される物質を指し、たとえば、DNAやRNAというような核酸、酵素や抗体などの各種タンパク質、あるいは各種の多糖類が挙げられる。上記中でも、核酸は高度のカオトロピックイオンの存在下でシリカに結合する性質を有するため、本発明の単離方法にて試料から単離する生体物質として特に好適である。
以下、生体物質として核酸を用いた場合を例に挙げて、本発明方法について詳述する。
【0050】
上記▲1▼の工程では、まず、目的の核酸を含有する試料を含む水溶液に、上述した特定の磁性担体を混合し、核酸と磁性担体とを接触させる。ここで、核酸を含有する試料を含む水溶液は、試料が完全に水に溶解していない状態の液をも含む。核酸と磁性担体との結合の方法は、適宜のバッファ中でこれらが互いに接触し得る程度に混合させるならば、特に制限はない。この混合は、たとえばチューブを軽く転倒攪拌あるいは振盪することにより充分であり、たとえば市販のボルテックスミキサ等を用いて行うことができる。この▲1▼の工程にて、核酸と磁性担体とが結合した複合体が形成される。
【0051】
上記▲1▼の工程において、磁性担体は、カオトロピック物質、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、トリス塩酸などを含有するバッファ中に分散された核酸抽出用液の形態で予め調製されてなるのが好ましい。かかる核酸抽出用液は、磁性担体の濃度が0.02g/mL〜0.5g/mLとなるように調製されるのが好ましく、0.2g/mL〜0.45g/mLとなるように調製されるのがより好ましい。上記磁性担体の濃度が0.02g/mL未満であると、核酸を多く保持させることができず、また集磁性も悪くなる傾向にあるためである。また上記磁性担体の濃度が0.5g/mLを超えると、核酸抽出用液の分散性も保存安定性も悪くなる傾向にあるためである。該核酸抽出用液に含有されるカオトロピック物質としては、グアニジン塩、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、(イソ)チオシアン酸ナトリウム、尿素などから選ばれる少なくともいずれかが挙げられる。核酸抽出用液中のカオトロピック物質の濃度は、1モル/L〜10モル/Lであるのが好ましい。
試料を含有する水溶液への磁性担体の混合の割合は、磁性担体と試料を含有する水溶液との体積比が1:100〜1:10となるような割合であるのが好ましい。
【0052】
続く▲2▼の工程では、上記▲1▼の工程で磁気担体と結合させた核酸を、磁気担体と核酸との複合体として、試料中から分離する。かかる分離には、外部磁場を利用する。具体的には、生体物質を結合した磁性担体を含有する水溶液を含むチューブの側壁に磁石を近づけ、生体物質を結合した磁性担体を側壁に集め、溶液と固液分離する方法がある。
外部磁場として使用される磁石としては、磁束密度が2000ガウス〜3000ガウスの磁石を用いることが好ましい。磁束密度が2000ガウス未満の磁石にて外部磁場をかけると、磁場に対する感応性が弱くなって磁性担体の捕集力が低下する傾向にあるためであり、また磁束密度が3000ガウスを超える磁石にて外部磁場をかけると、磁場を発生するため装置が大がかりとなって高価となるためである。
【0053】
▲3▼の工程では、上記試料から分離した磁性担体と核酸との複合体より、核酸を溶出させる。この工程は、たとえば、カオトロピック物質を洗い流し得る洗浄液で数回洗浄した後、磁性担体を乾燥し、その後、TE緩衝液などの低イオン濃度の溶液や滅菌水といった核酸を溶解し得る遊離液を添加することによって磁性担体に保持された核酸を遊離液へ遊離し、核酸を最終的に回収することができる。上記洗浄液としては、カオトロピック物質を溶解できる液体であれば特に制限はなく、従来より使用されているアセトンや、水で希釈されたアルコールなどが例示され、価格と安全性の点から、70%アルコールを用いるのが好ましい。また、上記遊離液としては、核酸を溶解することができる液体であれば特に制限はなく、滅菌水、TE緩衝液、トリス塩酸緩衝液などが例示されるが、利便性の点から、滅菌水、TE緩衝液(20mM トリス塩酸、1mM EDTA、pH7.5)を使用するのが好ましい。
【0054】
ここで、上述したように本発明に用いる磁性担体は、(a)生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得、(b)2000ガウス〜3000ガウスの磁場の存在下にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得、さらに(c)1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る、という従来と比較して格段に優れた能力を発揮するものである。
かかる磁性担体を用いる本発明の方法によれば、上記(a)の能力の発揮によって、上記▲1▼の工程において、試料の水溶液中で磁性担体を効率的に生体物質と接触させることができ、これによって磁性担体と生体物質とが結合した複合体を効率的に形成させることができる。この効果は、上記(c)の能力の発揮によって相乗的に高められ、複合体の形成の効率はさらに高められる。また上記(b)の能力の発揮によって、上記▲2▼の工程において、外部磁場によって複合体を確実にかつ迅速に捕集することができる。さらに、上記(c)の能力の発揮によって、上記▲3▼の工程において、試料から分離した複合体から、生体物質を効率的に溶離させることができる。
このように本発明によれば、磁性担体の上記(a)〜(c)の能力が同時に達成されることによって、従来の方法に比べて水溶液中での分散性と磁場による捕集性に優れ、かつ生体物質との可逆的結合能および結合した生体物質の溶離性に優れ、生体物質の単離、精製効率が格段に向上された生体物質の単離方法を実現することができる。
【0055】
なお上述の単離方法は、生体物質が核酸である場合として説明したが、本発明の単離方法にて試料から単離することができる生体物質は核酸に限定されるものではない。目的とする生体物質がタンパク質や多糖類である場合には、たとえば、従来公知のようにシランカップリング剤を用いて磁性担体表面(シリカ層の外表面)に適宜の官能基(アミノ基やカルボキシル基、リン酸基など)を形成することで磁性担体に結合させることができる。また▲3▼の工程においては、生体物質がタンパク質である場合には、タンパク質が結合した磁性担体をリン酸緩衝液やトリス塩酸緩衝液などで数回洗浄した後、さらにタンパク質のリガンドを含む緩衝液を添加することにより溶離させることができ、生体物質が多糖類である場合には、溶離液のイオン強度を低下させたり、加温処理を行うことで溶離させることができる。
【0056】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
実施例1
(1)マグネタイト粒子の合成
まず、100gの硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)を1000ccの純水に溶解した。この硫酸第一鉄と等倍モルになるように、28.8gの水酸化ナトリウムを500ccの純水に溶解して、硫酸第一鉄水溶液を調製した。次に、上記硫酸第一鉄水溶液を攪拌しながら、1時間かけて水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、水酸化第一鉄の沈殿物を生成させた。滴下終了後、攪拌しながら、水酸化第一鉄の沈殿物を含む懸濁液の温度を85℃まで昇温した。懸濁液の温度が85℃に達した後、200L/hrの速度で、エアーポンプを使用して空気を吹き込みながら、8時間酸化して、マグネタイト粒子を生成させた。このマグネタイト粒子は、ほぼ球形で、平均粒子サイズは、約0.28μmであった。なおマグネタイト粒子の粒子サイズは、透過型電子顕微鏡写真上、約300個の粒子サイズを測定し、その平均粒子サイズから求めた。
【0057】
(2)シリカ被覆処理
マグネタイト粒子懸濁液を、純水を用いて十分に水洗した後、乾燥させることなくこの懸濁液の全重量が468gになるように純水を加えた。この分散液に、70gのケイ酸ナトリウムを溶解した。ケイ酸ナトリウム溶解マグネタイト粒子分散液とは別に、界面活性剤として22.5gのソルビタンモノラウレートを溶解した1500ccのヘキサン溶液を、上記懸濁液へ投入して混合液とした。この混合液をホモミキサ(特殊機化工業社製)を使用して、10分間攪拌分散し、エマルジョン分散液を作製した。次に、1000gの硫酸アンモニウムを4500ccの純水に溶解した。この硫酸アンモニウム溶解液を攪拌しながら、上記エマルジョン分散液を、約1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌することで中和反応を行った。この硫酸アンモニウムによる中和反応により、マグネタイト粒子を包含するようにシリカが析出して、被膜(シリカの層)が形成された。
【0058】
(3)熱処理
上記で得られたシリカで被覆されたマグネタイト粒子を、純水で十分に水洗した後、濾過し、空気中、60℃で8時間乾燥した。上述したようにマグネタイト粒子は、粒子の結晶性および結晶子サイズによって磁気特性は異なる。この磁気特性を制御するため、さらに熱処理を行った。熱処理条件としては、窒素ガス気流中、管状炉を使って、600℃で2時間加熱した。熱処理後、窒素ガスを流しながら、室温まで冷却し、取り出し、磁性担体を作成した。上記のマグネタイト粒子の際と同様に測定した磁性担体の平均粒子サイズは、5μmであった。観察された磁性担体の形状は、球状であった。また、得られた磁性担体について、振動式試料型磁力計(東英工業(株)製)を用いて、796.5kA/m(10キロエルステッド)の磁界を印加して測定された飽和磁化が47.1A・m2/kg(47.1emu/g)、保磁力が5.18kA/m(65エルステッド)であった。
かかる磁性担体について、目的とする生体物質を含有する試料の水溶液の所定量の磁性担体を添加し、ボルテックスミキサーで分散後、均一な懸濁液状態になり得るかどうか確認したところ、生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る性状を有し、また、この懸濁液を磁石上に乗せ、一定時間内に磁石で捕集される磁性担体の重量を測定したところ、上記分散状態において2000ガウス〜3000ガウスの磁力にて3秒以内にその90重量%以上が捕集され得る能力を示した。さらに、生体物質として核酸を用い、結合、分散の前後における核酸の定量分析によって確認したところ、磁性担体1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示した。
【0059】
実施例2
マグネタイト粒子合成の際に水酸化第一鉄の沈殿物懸濁液を60℃まで昇温した以外は、実施例1と同様にして磁性担体を作製した。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが4μm(マグネタイト粒子の平均粒子サイズは0.13μm)、飽和磁化が45.3A・m2/kg(45.3emu/g)、保磁力が6.53kA/m(82エルステッド)であった。
かかる磁性担体は、実施例1と同様にして、生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る性状を有し、かつ分散状態において2000ガウス〜3000ガウスの磁力にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得、さらに、磁性担体1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示すことが確認された。
【0060】
実施例3
マグネタイト粒子合成の際に水酸化第一鉄の沈殿物懸濁液を98℃まで昇温した以外は、実施例1と同様にして磁性担体を作製した。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが7μm(マグネタイト粒子の平均粒子サイズは0.42μm)、飽和磁化が47.5A・m2/kg(47.5emu/g)、保磁力が3.66kA/m(46エルステッド)であった。
かかる磁性担体は、実施例1と同様にして、生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る性状を有し、かつ分散状態において2000ガウス〜3000ガウスの磁力にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得、さらに、磁性担体1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示すことが確認された。
【0061】
実施例4
シリカ被覆処理の際に、マグネタイト粒子分散液へのケイ酸ナトリウムの溶解量を58gとした以外は、実施例1と同様にして磁性担体を作製した。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが4μm、飽和磁化が51.2A・m2/kg(51.2emu/g)、保磁力が5.42kA/m(68エルステッド)であった。
かかる磁性担体は、実施例1と同様にして、生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る性状を有し、かつ分散状態において2000ガウス〜3000ガウスの磁力にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得、さらに、磁性担体1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示すことが確認された。
【0062】
実施例5
シリカ被覆処理の際に、マグネタイト粒子分散液へのケイ酸ナトリウムの溶解量を90gとした以外は、実施例1と同様にして磁性担体を作製した。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが6μm、飽和磁化が40.3A・m2/kg(40.3emu/g)、保磁力が4.86kA/m(61エルステッド)であった。
かかる磁性担体は、実施例1と同様にして、生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る性状を有し、かつ分散状態において2000ガウス〜3000ガウスの磁力にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得、さらに、磁性担体1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示すことが確認された。
【0063】
実施例6
窒素ガス気流中、800℃、2時間という条件で熱処理を行った以外は、実施例1と同様にして磁性担体を作製した。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが5μm、飽和磁化が47.8A・m2/kg(47.8emu/g)、保磁力が2.63kA/m(33エルステッド)であった。
かかる磁性担体は、実施例1と同様にして、生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る性状を有し、かつ分散状態において2000ガウス〜3000ガウスの磁力にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得、さらに、磁性担体1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示すことが確認された。
【0064】
実施例7
窒素ガス気流中、400℃、2時間という条件で熱処理を行った以外は、実施例1と同様にして磁性担体を作製した。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが5μm、飽和磁化が43.0A・m2/kg(43.0emu/g)、保磁力が8.37kA/m(105エルステッド)であった。
かかる磁性担体は、実施例1と同様にして、生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る性状を有し、かつ分散状態において2000ガウス〜3000ガウスの磁力にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得、さらに、磁性担体1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示すことが確認された。
【0065】
実施例8
熱処理の際の雰囲気ガスとしてアルゴンガスを使用した以外は、実施例1と同様にして磁性担体を作製した。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが5μm、飽和磁化が47.9A・m2/kg(47.9emu/g)、保磁力が5.34kA/m(67エルステッド)であった。
かかる磁性担体は、実施例1と同様にして、生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る性状を有し、かつ分散状態において2000ガウス〜3000ガウスの磁力にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得、さらに、磁性担体1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示すことが確認された。
【0066】
実施例9
雰囲気ガスとして水素ガスを使用し、かつ300℃、2時間の条件で熱処理を行った以外は、実施例1と同様にして磁性担体を作製した。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが5μm、飽和磁化が50.3A・m2/kg(50.3emu/g)、保磁力が4.06kA/m(51エルステッド)であった。
かかる磁性担体は、実施例1と同様にして、生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る性状を有し、かつ分散状態において2000ガウス〜3000ガウスの磁力にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得、さらに、磁性担体1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示すことが確認された。
【0067】
実施例10
マグネタイト粒子として、市販の乾燥状態のもの(戸田工業社製)を用いた。かかるマグネタイト粒子は、飽和磁化が83.5A・m2/kg(83.5emu/g)、保磁力が8.76kA/m(110エルステッド)、平均粒子サイズが0.26μmのものであった。上記マグネタイト粒子に、全体の重量が468gとなるまで純水を加えてマグネタイト粒子懸濁液を調製した。
以下、70gのケイ酸ナトリウムを添加し、超音波分散機を用いて分散させて、マグネタイト粒子が分散したケイ酸ナトリウム溶液を調製した以外は、実施例1と同様にシリカ被覆処理および熱処理を行い、磁性担体を作製した。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが6μm、飽和磁化が40.1A・m2/kg(40.1emu/g)、保磁力が9.56kA/m(120エルステッド)であった。
かかる磁性担体は、実施例1と同様にして、生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る性状を有し、かつ分散状態において2000ガウス〜3000ガウスの磁力にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得、さらに、磁性担体1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示すことが確認された。
【0068】
実施例11
実施例1と同様にしてマグネタイト粒子の合成、シリカ被覆処理を行った後、得られたシリカで被覆されたマグネタイト粒子を、純水で十分に水洗した後、濾過し、空気中、60℃で8時間乾燥したのみで、その後の熱処理は行わず、磁性担体とした。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが5μm、飽和磁化が38.8A・m2/kg(38.8emu/g)、保磁力が7.81kA/m(98エルステッド)であった。
かかる磁性担体は、実施例1と同様にして、生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る性状を有し、かつ分散状態において2000ガウス〜3000ガウスの磁力にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得、さらに、磁性担体1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示すことが確認された。
【0069】
実施例12
実施例5と同様にしてマグネタイト粒子の合成、シリカ被覆処理を行った後、得られたシリカで被覆されたマグネタイト粒子を、純水で十分に水洗した後、濾過し、空気中、60℃で8時間乾燥したのみで、その後の熱処理は行わず、磁性担体とした。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが6μm、飽和磁化が32.8A・m2/kg(32.8emu/g)、保磁力が8.76kA/m(110エルステッド)であった。
かかる磁性担体は、実施例1と同様にして、生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る性状を有し、かつ分散状態において2000ガウス〜3000ガウスの磁力にて3秒以内に90重量%以上が捕集され得、さらに、磁性担体1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示すことが確認された。
【0070】
比較例1
熱処理の際の雰囲気ガスとして空気ガスを使用した以外は、実施例1と同様にして磁性担体を作製した。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが5μm、飽和磁化が25.3A・m2/kg(25.3emu/g)、保磁力が10.76kA/m(135エルステッド)であった。なお熱処理によって、マグネタイト粒子は酸化され、マグヘマイト(γ−Fe23)に変化していた(X線回折法による回折ピーク位置から確認)。
【0071】
比較例2
市販の乾燥状態のマグヘマイト(γ−Fe23)粒子(戸田工業社製)を用いて、磁性担体を作製した。かかるマグヘマイト粒子は、飽和磁化が74.2A・m2/kg(74.2emu/g)、保磁力が12.75kA/m(160エルステッド)、平均粒子サイズが0.21μmのものであった。上記マグヘマイト粒子に、全体の重量が468gとなるまで純水を加えてマグネタイト粒子懸濁液を調製した。
以下、70gのケイ酸ナトリウムを添加し、超音波分散機を用いて分散させて、マグネタイト粒子が分散したケイ酸ナトリウム溶液を調製した以外は、実施例1と同様にシリカ被覆処理および熱処理を行い、磁性担体を作製した。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが5μm、飽和磁化が34.0A・m2/kg(34.0emu/g)、保磁力が12.75kA/m(160エルステッド)であった。
【0072】
比較例3
シリカ被覆処理の際に、マグネタイト粒子分散液へのケイ酸ナトリウムの溶解量を120gとした以外は、実施例1と同様にして磁性担体を作製した。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが6μm、飽和磁化が29.8A・m2/kg(29.8emu/g)、保磁力が4.54kA/m(57エルステッド)であった。
【0073】
比較例4
熱処理工程を行わなかった以外は、比較例3と同様にして磁性担体を作製した。得られた磁性担体は球状であり、実施例1と同様に測定された平均粒子サイズが6μm、飽和磁化が20.4A・m2/kg(20.4emu/g)、保磁力が2.39kA/m(90エルステッド)であった。
【0074】
上記実施例1〜12および比較例1〜4で得られた磁性担体の主要な作製条件を表1に、また得られた各磁性担体の主要な特性を表2に示す。
【0075】
【表1】
Figure 0004267272
【0076】
【表2】
Figure 0004267272
【0077】
実験例
実施例1〜12および比較例1〜4でそれぞれ得られた磁性担体を用い、以下の手順で生体物質を含む試料からの生体物質の単離を行った。生体物質としては核酸を用いた。
まず、磁性担体を、0.2g/mLになるように減菌水に分散させて、磁性担体の分散液とした。核酸を単離するための生物試料としては、大腸菌(Escherichia coli JM109(東洋紡績、宝酒造、インビトロジェンなどより販売されている))を3mL TB培地/試験管にて37℃,20時間培養した菌体を用いた。核酸抽出用溶液としては、カオトロピック物質を含む緩衝液としてバッファーA(7Mグアニジン塩酸塩(ナカライテスク社),50mM Tris−HCl(シグマ社),pH7.5)を用いた。洗浄液も、カオトロピック物質を含む緩衝液としてバッファーA(7Mグアニジン塩酸塩(ナカライテスク社),50mMTris−HCl(シグマ社),pH7.5)を使用した。高濃度の塩を除去するために70%エタノール溶液およびアセトン溶液を使用し、磁性担体に結合した核酸を回収するための溶離液として減菌水を使用した。
【0078】
さらに、具体的な操作としては、以下のとおりである。
(1)菌体濁度(OD660)を測定し、1.5cc用エッペンドルフチューブにてOD660;1.0の菌体を遠心分離により調製した。次に核酸抽出用溶液1000μLを注入し、混合した。
(2)その後、磁性担体の分散液20μLを加えた。
(3)約2分毎に混合しながら、室温で10分間放置した。
(4)1.5cc用エッペンドルフチューブの形状に合った磁石スタンドに、上記チューブを設置することにより、磁性担体を磁石側のチューブ側に集めた。
(5)フィルターチップで溶液を吸引し、排出した。
(6)チューブを磁石スタンドより取りはずし、グアニジン塩酸塩を含む洗浄液を1cc注入した。
(7)磁性担体と十分混合した後、再度磁石スタンドに設置し、上記と同様にして溶液を廃棄した。
(8)洗浄操作を再度繰り返した。
(9)1ccの70%エタノールで上記と同様の方法により、核酸を結合した磁性担体を洗浄し、高濃度のグアニジン塩酸塩を取り除いた。
(10)再度、1ccの70%エタノールおよび1ccアセトンで洗浄した。
(11)約56℃のヒートブロックに上記チューブを設置し、約10分間放置してチューブ内、および磁性担体内のアセトンを完全に蒸発させて除去した。
(12)核酸を結合させた磁性担体に、100μLの減菌水を加え、約56℃のヒートブロックに上記チューブを設置し、2分毎に混合操作しながら10分間放置した。次に、磁石スタンドに設置し、回収する溶液をフィルターチップで吸引し、別の新しいチューブに移した。通常回収量は70μL程度である。保存する場合は、−70℃で行った。
【0079】
上記の操作は、(1)〜(3)が磁性担体と生体物質とが結合された複合体を形成させる工程に、(4)〜(5)が複合体を試料から分離させる工程に、(6)〜(12)が複合体より生体物質を溶出させる工程に、それぞれ相当する。
【0080】
実施例1〜12、比較例1〜4で得られた各磁性担体について、それぞれ上記方法にて回収した核酸の濃度を、吸光度計により、その吸光度(OD:260nm)を測定して求めた。核酸の回収量は、これに回収容積を掛けて求めた。
結果を表3に示す。
【0081】
【表3】
Figure 0004267272
【0082】
上記結果より、強磁性酸化鉄粒子と、該強磁性酸化鉄粒子の表面を被覆するシリカとを備え、30A・m2/kg〜80A・m2/kgの飽和磁化および2.39kA/m〜11.94kA/mの保磁力を有し、かつ平均粒子サイズが0.1μm〜10μmである磁性担体は、生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る性状を有し、かつ分散状態において2000ガウス〜3000ガウスの磁力にて3秒以内に99%以上が捕集され得、さらに、磁性担体1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を示し、生体物質の単離、精製効率が従来よりも格段に向上された生体物質の単離方法が確立できたことが判る。これは、上記特定の範囲の特性を有する磁性担体を用いることで、おいて、生体物質の結合性/磁性担体の磁界による捕集性と、磁性担体の分散性/生体物質の溶離性が両立したためである。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、従来と比較して水溶液中での分散性と磁場による捕集性に優れ、かつ生体物質との可逆的結合能および結合した生体物質の溶離性に優れ、生体物質の単離、精製効率が向上された生体物質の単離方法を提供することができる。

Claims (8)

  1. 30A・m2/kg〜80A・m2/kgの飽和磁化および2.39kA/m〜11.94kA/mの保磁力を有し、かつ平均粒子サイズが0.1μm〜10μmである磁性担体を、生体物質を含有する試料の水溶液中で該生体物質に接触させて、生体物質と該磁性担体とが結合された複合体を形成させる工程と、
    外部磁場によって上記複合体を試料から分離させる工程と、
    試料から分離した複合体より生体物質を溶出させる工程とを含む生体物質の単離方法であって、該磁性担体が、強磁性酸化鉄粒子をシリカにて被覆したものである、生体物質の単離方法
  2. 上記磁性担体が、以下の(a)〜(c)の能力を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
    (a)生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得る、
    (b)2000ガウス〜3000ガウスの磁場の存在下にて3秒以内にその90重量%以上が捕集され得る、
    (c)1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る。
  3. 上記強磁性酸化鉄粒子がマグネタイト粒子である、請求項に記載の方法。
  4. 上記磁性担体が、強磁性酸化鉄粒子をシリカで被覆処理後、200℃〜800℃で熱処理を施したものである請求項に記載の方法。
  5. 上記熱処理の際の雰囲気ガスが、不活性ガスまたは還元性ガスである請求項に記載の方法。
  6. 上記磁性担体が、水溶液中での酸化反応により合成した強磁性酸化鉄粒子を、乾燥させることなくシリカ被覆処理を行ったものである、請求項またはに記載の方法。
  7. 生体物質が核酸である、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  8. (a)生体物質を含有する試料の水溶液1mL中で少なくとも20mgが分散し得、(b)2000ガウス〜3000ガウスの磁場の存在下にて3秒以内にその90重量%以上が捕集され得、かつ(c)1mgあたり少なくとも0.4μgの生体物質と可逆的に結合し得る能力を有する磁性担体を、生体物質を含有する試料の水溶液中で該生体物質に接触させて、生体物質と該磁性担体とが結合された複合体を形成させる工程と、
    外部磁場によって上記複合体を試料から分離させる工程と、
    試料から分離した複合体より生体物質を溶出させる工程とを含む生体物質の単離方法であって、該磁性担体が、強磁性酸化鉄粒子をシリカにて被覆したものである、生体物質の単離方法
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