JP4136715B2 - タンパク質固定化磁性担体およびその製造方法、ならびにその利用 - Google Patents

タンパク質固定化磁性担体およびその製造方法、ならびにその利用 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンパク質固定化磁性担体およびその製造方法、ならびにその利用法に関する。
【0002】
【従来の技術】
タンパク質は生物体を構成し、生命活動を維持するための主要な成分であり、自然界には多種多様なタンパク質が存在することが知られている。タンパク質はそれ自身が生命科学における重要な研究対象となるだけでなく、従来より、多種多様なタンパク質の有する性質を利用して、たとえば物質の改質または合成、目的成分の精製、抽出などを行うための様々な方法、物質およびアプローチが存在する。
【0003】
一般的なアプローチの一例として、あるタンパク質が特定の物質を改質する性質を利用するものが挙げられる。このようなアプローチによるものとして、たとえば、血液、尿などの臨床試料中に存在する物質を定性的または定量的に検出する臨床検査が知られている。当該臨床検査では、臨床試料中の検査対象となる物質について、当該物質の改質に関連する1種類、または2種類以上のタンパク質を作用させ、当該作用中に生じる反応系の物理特性の変化を計測する。当該アプローチは臨床検査法として感度および再現性ともに非常に優れた方法であるが、高価なタンパク質を再利用できないため、特に多数の試料を処理しようとする場合は未だランニングコストの面で難点がある。
【0004】
また一般的なアプローチの他の例として、あるタンパク質が特定の物質に結合する性質を利用するものが挙げられる。このようなアプローチによるものとして、たとえば、アフィニティー精製が知られている。アフィニティー精製では、目的物質に対して特異的に吸着し得るタンパク質を担体に結合させ、当該目的物質を含む試料溶液を当該担体に添加し、担体上で当該タンパク質と当該物質との複合体を形成させる。続いて、当該溶液から単離した当該複合体を、たとえば非常にイオン強度が高い緩衝液、または非常にpHが高いかもしくは低い緩衝液にさらすことにより、複合体を不安定化させて溶出させる。当該アプローチは目的とする物質と固相に固定化されたタンパク質との間の特異的な相互作用を利用する、非常に効果的な精製方法である。当該精製方法は、たとえば、非特許文献1に記載されているように抗体の精製法として知られている。しかし、タンパク質を結合させた担体は非常に高価であるため、上記精製方法は、抗体精製以外の用途について普及しているとは言い難い。
【0005】
以上のようにタンパク質の性質を利用して物質の改質または合成、目的成分の抽出または精製などを行う方法は種々存在しているが、コストや簡便性の面で難点が多く、本来タンパク質が有している利用価値を医療、産業分野で発揮できていなかった。
【0006】
また近年では、磁気粒子をタンパク質など生理活性物質で被覆してなる磁性担体を用いて、タンパク質の性質を利用した物質の改質または合成、目的成分の抽出または精製などを行う方法が提案されている。たとえば、特許文献1には、導電性を有する磁気粒子の表面に直接、又は有機化合物を介して結合させた導電性磁気ビーズが開示されている。しかしながら、磁気粒子の表面にタンパク質を直接結合させたものでは、磁気粒子の表面にタンパク質を単に付着させたのみであるため、結合が緩くタンパク質層が容易に剥離してしまい、これを固定化タンパク質として広範な用途に使用することができないという問題があった。また、磁気粒子の表面に有機化合物を介してタンパク質を結合させたものでは、磁性粒子とタンパク質との間の結合は強固ではあるものの、製造するためには煩雑な工程を経なければならないというような不具合があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−184842号公報
【非特許文献1】
Chenaisら、J. Immunol. Methods誌、18巻、183-192頁、1977年
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、従来と比較して格段に低コスト、簡便、汎用的なタンパク質固定化磁性担体、およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するためにタンパク質固定化磁性担体について種々鋭意検討した結果、タンパク質の溶解特性に着目し、分散状態の強磁性粒子の存在下でタンパク質の溶解性を低下させることにより、活性を保持した状態でタンパク質を強磁性粒子に固定化でき、タンパク質と強磁性粒子表面、ならびに、互いに隣り合うタンパク質同士を、非共有結合させることによってタンパク質層を形成でき、強固に固定化されたタンパク質層を簡便に実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のような構成からなる
)強磁性粒子を分散させた分散液にタンパク質を添加後、当該タンパク質の溶解性を低下させることで強磁性粒子を被覆するタンパク質層を形成することを特徴とするタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
)強磁性粒子が強磁性酸化鉄粒子であることを特徴とする上記()に記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
)強磁性酸化鉄粒子がマグネタイト粒子、マグヘマイト粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間体粒子およびマンガン亜鉛フェライト粒子のうちから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記()に記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
)タンパク質の溶解性を低下させる手段として塩析を用いることを特徴とする上記()〜()のいずれかに記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
)タンパク質の溶解性を低下させる手段としてアルコール沈殿を用いることを特徴とする上記()〜()のいずれかに記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
)強磁性粒子を分散させた分散液にタンパク質を添加後、当該タンパク質の溶解性を低下させることで強磁性粒子をタンパク質で被覆した後、乾燥してタンパク質を安定化させることを特徴とするタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
)強磁性粒子が強磁性酸化鉄粒子であることを特徴とする上記()に記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
)強磁性酸化鉄粒子がマグネタイト粒子、マグヘマイト粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間体粒子およびマンガン亜鉛フェライト粒子のうちから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記()に記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
)タンパク質の溶解性を低下させる手段として塩析を用いることを特徴とする上記()〜()のいずれかに記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
(1)タンパク質の溶解性を低下させる手段としてアルコール沈殿を用いることを特徴とする上記()〜()のいずれかに記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のタンパク質固定化磁性担体(以下、単に「磁性担体」ということがある。)は、強磁性粒子と、強磁性粒子を被覆するタンパク質層とを基本的に備え、タンパク質と強磁性粒子表面、ならびに、互いに隣り合うタンパク質同士が、非共有結合によって結合してタンパク質層が形成された(固定化された)ものであることをその大きな特徴とするものである。
【0012】
なお、本発明における「強磁性粒子」とは、磁気応答性(磁界に対する感応性)を有する粒子を指し、タンパク質層を形成して磁性担体とした場合に磁気応答性を付与し得るものであれば、超常磁性を示す粒子も含む。ここで「磁気応答性を有する」とは、外部磁界が存在するとき、磁界により磁化する、あるいは磁石に吸着するなど、磁界に対して感応性を示すことを指す。
【0013】
本発明における強磁性粒子としては、上記磁気応答性を示す従来公知のものであれば特に制限はなく、鉄、コバルト、ニッケルなどの金属粒子や酸化鉄、二酸化クロムなどの酸化物やこれらの酸化物の複合体、さらには各種の金属間化合物などから選ばれる少なくともいずれかが使用可能である。中でも、酸化鉄を主体にした金属製の粒子を酸化反応させて得られた粒状物(強磁性酸化物粒子)は、各種薬品中に分散させて使用するときの品質面での安定性が優れ、かつ磁界に対する感応性に優れているため好ましい。
強磁性酸化鉄粒子としては、従来公知の種々の強磁性酸化鉄粒子を使用することができるが、中でも化学的安定性に優れることからマグネタイト(Fe34)粒子、マグヘマイト(γ−Fe23)粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間体粒子、マンガン亜鉛フェライト(Mn1-XZnFe24)粒子などのフェライト粒子から選ばれる少なくとも一種であるのが好ましく、中でも大きな磁化量を有しているため磁界に対する感応性に優れるマグネタイト粒子であるのが特に好ましい。
強磁性酸化鉄粒子は、たとえば水中でFe(OH)2などの粒子を酸化反応させる従来公知の方法にて作製することができる。後述する実施例には、一例として、マグネタイト粒子の作製例を記載している。
【0014】
本発明に使用する強磁性粒子は、その形状に特に制限はなく、球状、楕円体状、粒状、板状、針状、立方体状などの多面体状などが挙げられるが、後述の磁性担体とした時点で好適な形状に実現されやすい点から、球状、楕円体状または粒状が好ましい。
また本発明に使用する強磁性粒子の大きさにも特に制限はないが、通常、1個〜100個の粒子が集結した塊状物をタンパク質層にて被覆することで1個の磁性担体が形成され、このように形成された磁性担体として後述のように0.01μm〜20μmという好適な大きさに形成しやすいことから、0.01μm〜0.5μmの平均粒子サイズを有することが望ましい。なお、この強磁性粒子の「粒子サイズ」とは、当該粒子のあらゆる方向に関する長さのうち最大となる長さをいい、上記強磁性粒子の平均粒子サイズは、たとえば、透過型電子顕微鏡写真上で各粒子300個の粒子サイズを測定し、その数平均として算出する。
【0015】
本発明においてタンパク質層を形成する「タンパク質」としては、複数のアミノ酸残基から構成される任意の分子量のペプチド、すなわち低分子量のペプチドから高分子量のいずれをも包含し、また、糖鎖修飾されてなる糖タンパク質も含む。本発明におけるタンパク質は、従来公知のものを特に制限なく用いることができ、たとえば、酵素(たとえば、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、アミラーゼ、制限酵素、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、フォスフォターゼ、キナーゼ、リガーゼ、ヌクレアーゼ、プロテアーゼ、トランスポザーゼなど)、抗体(たとえば、抗ヒスチジンタグ抗体、抗MBP(マルトース結合タンパク質)抗体など)、毒素(たとえば、ベロ毒素、リシン、コリシン、コレラ毒素、エンテロトキシン、BT毒素など)、貯蔵タンパク質(たとえば、カゼイン、アボアルブミン、グリアゾンなど)、輸送タンパク質(たとえば、ヘモグロビン、ミオグロビンなど)、運動性タンパク質(たとえば、アクチン、ミオシンなど)、調節タンパク質(たとえば、インシュリン、成長ホルモンなど)、構造タンパク質(たとえば、ケラチン、コラーゲンなど)、防御タンパク質(たとえば、ボツリヌス毒素、ヘビ毒素など)、およびこれらの混合物などが挙げられ、用途に応じて性能を十分に有するものを適宜選択して使用すればよい。用途に応じたタンパク質の性能とは、たとえば、酵素の場合は当該酵素が触媒する反応の特異性または活性の強さなどを、抗体の場合は当該抗体が目的とする物質に対する特異性または結合の強さなどを指標とすることができる。
【0016】
本発明の磁性担体は、上述した強磁性粒子をタンパク質層にて被覆してなる。ここで「被覆」とは、強磁性粒子の外側を覆って、強磁性粒子の最外にタンパク質層が形成されてなることを指す。当該タンパク質層は、強磁性粒子を完全に覆うように形成されていてもよく、また、目的に対する当該タンパク質の性能を阻害しない範囲であれば強磁性粒子の一部が露出してなるように形成されていてもよい。
またタンパク質層は、磁性担体の最外に形成されていればよく、強磁性粒子により付与される磁気応答性が失われないならば、強磁性粒子とタンパク質層との間に中間の層が形成されていてもよい。具体的には、強磁性粒子をシリカ皮膜で覆った磁性シリカビーズや、強磁性粒子をシリカ中に分散させるなどの加工を施した粒子にタンパク質層を形成してなる磁性担体が例示される(これらの場合において、シリカにて中間の層を形成)。このように強磁性粒子とタンパク質層との間に、シリカにて形成された中間の層を有すると、粒子形状が真球状に近いものが得られるという利点を有する強磁性粒子を実現することができる。なおシリカにて中間層を形成する場合、コンタミネーションを防ぐため、中間層を完全に覆うようにタンパク質層を形成するのが好ましい。
【0017】
本発明の磁性担体においては、タンパク質と強磁性粒子表面、ならびに、互いに隣り合うタンパク質同士が、非共有結合によって結合することによってタンパク質層が形成された(固定化された)ものであることをその大きな特徴とする。本発明においては、かかるタンパク質層を有することで、強磁性粒子とタンパク質層との間、ならびにタンパク質層を形成するタンパク質同士が強固に結合された磁性担体を実現することができる。このような本発明の磁性担体は、磁気粒子の表面にタンパク質を直接付着させた従来の導電性磁気ビーズ、換言すれば、磁気粒子とタンパク質層との間を非共有結合によって結合させたのみである(互いに隣り合うタンパク質同士は非共有結合によって結合していない)従来の導電性磁気ビーズとは異なり、タンパク質層が容易に剥離してしまうことがない。また本発明の磁性担体は、磁気粒子の表面に有機化合物を介してタンパク質を結合させた従来の導電性磁気ビーズとは異なり、たとえば後述する本発明の製造工程によって、煩雑な工程を経ることなく製造することが可能である。
【0018】
本発明の磁性担体において、強磁性粒子を被覆するタンパク質の量(タンパク質層の被着量)は、用いるタンパク質の種類や強磁性粒子の大きさ等によって適宜選択すればよく、特に制限されるものではない。
【0019】
なお本発明の磁性担体は、1個の強磁性粒子をタンパク質層にて被覆して1個の磁性担体として形成されていてもよく、また複数個の強磁性粒子をタンパク質層にて被覆して1個の磁性担体として形成されていてもよいが、通常は、1個〜10個の強磁性粒子をタンパク質層にて被覆した形態で1個の磁性担体として供される。
【0020】
本発明の磁性担体は、その形状に特に制限はなく、針状、球状、板状など各種の形状であってよいが、後述の磁界を用いた磁性担体の捕集や磁性担体の試料からの単離の際に、捕集性と分散性とのバランスがよく、操作性に優れる点から、球状、楕円体状または粒状の形状で実現されるのが好ましい。ここで「球状」とは、アスペクト比(あらゆる方向で測定した場合の最大長さと最小長さとの比)が1.0〜1.2(1.0以上1.2以下)の範囲内である形状を指し、「楕円体状」とは、アスペクト比が1.2を超えて1.5以下の範囲内である形状を指す。また「粒状」とは、球状のように粒子の長さが全方向で揃っているものや、楕円体状のように一方向の長さのみ大きいもの以外の、方向による長さの差異はあるが全体として形状に特に異方性がない形状を指す。
【0021】
磁性担体の大きさも特に制限はないが、上記の形状と同様に操作性が良好である点から、平均粒子サイズが0.01μm〜20μmであるのが好ましく、0.02μm〜10μmであるのがより好ましい。磁性担体の平均粒子サイズが0.01μm未満であると、比表面積が大きくなって、後述する磁性担体を用いた物質の改質、検出、精製または物質固定化磁性担体の製造などの効率は高くなる反面、磁界を利用した磁性担体の捕集が困難となってしまう傾向にある。また磁性担体の平均粒子サイズが20μmを超えると、比表面積が小さくなり、かつ沈降しやすくなるため、後述する磁性担体を用いた物質の改質、検出、精製または物質固定化磁性担体の製造などの効率が低下してしまう傾向にある。
なお磁性担体の「粒子サイズ」は、上述した強磁性粒子の粒子サイズと同義であり、磁性担体の平均粒子サイズも上述した強磁性粒子の平均粒子サイズと同様にして算出すればよい。
【0022】
後述のような、本発明の磁性担体を用いた物質の改質、検出、精製または物質固定化磁性担体の製造を行う場合には、磁性担体の磁気特性が重要である。このような磁気特性として、磁性担体の捕集に主として関与する飽和磁化と、磁性担体の試料からの単離に主として関与する保磁力とが挙げられる。
【0023】
本発明の磁性担体は、その飽和磁化が20A・m2/kg(emu/g)〜100A・m2/kg(emu/g)であるのが好ましく、30A・m2/kg(emu/g)〜80A・m2/kg(emu/g)であるのがより好ましい。一般に、飽和磁化が高ければ高いほど磁界への感応性は大きく、したがって飽和磁化の高い磁性担体は、捕集性が向上される。しかしながら飽和磁化があまりに高いと、磁気的に凝集し易くなってしまう。すなわち、磁性担体の飽和磁化が20A・m2/kg未満であると、磁性担体の磁界に対する感応性が低くなり、捕集性が低下してしまう傾向にある。また磁性担体の飽和磁化が100A・m2/kgを超えると、磁性担体が磁気的に凝集しやすくなって、物質の改質、検出、精製または物質固定化磁性担体の製造の系中での分散性が低下する傾向にある。
上記磁性担体の飽和磁化は、たとえば振動試料型磁力計(東英工業(株)製)を用いて、796.5kA/m(10キロエルステッド)の磁界を印加したときの磁化量を測定することにより求めることができる。
【0024】
上記のような観点より本発明の磁性担体は、その保磁力が15.93kA/m(200エルステッド)以下であるのが好ましく、11.94kA/m(150エルステッド)以下であるのがより好ましい。磁性担体の保磁力が15.93kA/mを越えると、磁性担体間の凝集力が大きくなり過ぎ、磁性担体を利用した物質の改質、検出、精製または物質固定化磁性担体の製造の系中での磁性担体の分散性が低下してしまい、結果として物質の改質、検出、精製または物質固定化磁性担体の製造の効率が低下する傾向にあるためである。また、磁性担体の保磁力は、小さい分には特に問題とはならないが、小さい保磁力を得るためには使用する強磁性粒子の種類や、さらには磁性担体の合成方法までも制約を受けることになる。かかる観点より、磁性担体の保磁力は、2.39kA/m(30エルステッド)以上であるのが好ましい。
上記磁性担体の保磁力は、たとえば振動試料型磁力計(東英工業(株)製)を用いて、796.5kA/m(10キロエルステッド)の磁界を印加して飽和磁化した後、磁界をゼロに戻し、さらに逆方向の磁界を徐々に増加させながら印加して、磁化の値がゼロになる印加磁界の強さから求めることができる。
【0025】
後述する本発明の磁性担体を用いた物質の改質、検出、精製または物質固定化磁性担体の製造を行う際における磁性担体の捕集性と分散性とのバランスが特に良好である磁性担体を提供する観点から、本発明の磁性担体は、その飽和磁化が20A・m2/kg(emu/g)〜100A・m2/kg(emu/g)であって、かつ保磁力が15.93kA/m(200エルステッド)以下であり、かつ平均粒子サイズが0.01μm〜20μmの球状、楕円体状または粒状の形状を有するように実現されることが好ましい。中でもこのような態様において、強磁性粒子がマグネタイト粒子で実現されることが、特に好ましい。
【0026】
なお本発明は、強磁性粒子と、該強磁性粒子を被覆するタンパク質層とを備え、その飽和磁化が20A・m2/kg(emu/g)〜100A・m2/kg(emu/g)であって、かつ保磁力が15.93kA/m(200エルステッド)以下であり、かつ平均粒子サイズが0.01μm〜20μmの球状、楕円体状または粒状の形状を有するように実現されたタンパク質固定化磁性担体をも提供する。かかる磁性担体は新規なものであって、上記飽和磁化、保磁力、粒子形状および平均粒子サイズを同時に兼ね備える磁性担体であれば、タンパク質層を形成するタンパク質がどのような結合形式によって強磁性粒子表面および隣り合うタンパク質に結合しているかを問わず、本発明に包含されるものとする。かかる態様の磁性担体においても、強磁性粒子やタンパク質層などの好適なものは、上述した態様と同様である。
【0027】
また本発明は、上述してきた本発明の磁性担体を製造する、新規な方法をも提供する。すなわち、本発明の製造方法は、強磁性粒子を分散させた分散液にタンパク質を添加後、当該タンパク質の溶解性を低下させることで強磁性粒子を被覆するタンパク質層を形成することを特徴とするものである。このような本発明の製造方法によれば、上述したようなタンパク質と強磁性粒子表面、ならびに、互いに隣り合うタンパク質同士が、非共有結合によって結合することによって形成れたタンパク質層にて強磁性粒子を被覆した、タンパク質固定化磁性担体を、従来と比較して簡便に製造することができる。
【0028】
本発明の製造方法において、タンパク質の溶解性を低下させる手段としては特に制限されるものではなく、塩析、アルコール沈殿、TCA(トリクロロ酢酸)沈殿、水溶性ポリマー(ポリエチレングリコールやデキストランなど)沈殿、等電点沈殿などが挙げられる。中でも、塩析またはアルコール沈殿にて、タンパク質の溶解性を低下させるのが好ましい。塩析にてタンパク質の溶解性を低下させると、タンパク質を変性させずに溶解性を低下させることができ、簡便に効率よくタンパク質層を形成できる利点がある。また、アルコール沈殿にてタンパク質の溶解性を低下させることで、溶解性の高いタンパク質であっても強力な溶解性低下効果が得られる利点がある。上記塩析またはアルコール沈殿によるタンパク質の溶解性の低下に用いる塩、アルコールとしては、用いるタンパク質の種類に応じて、従来公知の種々のものを特に制限なく適宜使用することができる。
【0029】
また上述した本発明の製造方法において、強磁性粒子を分散させた分散液を調製するための分散媒としては特に制限はないが、たとえば、水、または、タンパク質の性状によって水に緩衝液(たとえば、リン酸、トリス、HEPES、MES、酢酸各種緩衝液など)、塩類(たとえば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、酢酸ナトリウム、硫酸マグネシウムなど)、界面活性剤類(たとえば、トリトンX−100、NP−40など)、アルコール類(たとえば、エタノール、メタノール、イソプロパノールなど)などを適宜組み合わせた水溶液などが挙げられる。
【0030】
本発明の製造方法における各条件は、用いる強磁性粒子やタンパク質によって適宜選択でき、特に限定されるものではない。以下、強磁性粒子としてマグネタイト粒子を用い、タンパク質としてペルオキシダーゼを用い、タンパク質の溶解性を低下させる方法として硫酸アンモニウムによる塩析を用いる場合を例に挙げて、具体的に説明する。
【0031】
まず、常温(20℃)でマグネタイト粒子を分散媒中に分散させる。分散媒に添加するマグネタイト粒子の量にも特に制限はないが、均一な分散液が得られやすいことから、1重量%〜50重量%の濃度となるよう添加することが好ましい。
【0032】
次に、常温で攪拌しながら上記分散液にペルオキシダーゼを添加する。ペルオキシダーゼの添加量は、マグネタイト粒子に対し0.001重量%〜10重量%とするのが好ましい。ペルオキシダーゼの添加量がマグネタイト粒子に対し0.001重量%未満であると、マグネタイト粒子を被覆するペルオキシダーゼの量が少なく、目的とする物質の合成や改質を行う際の効果が不充分となる傾向にあるためであり、またペルオキシダーゼの添加量がマグネタイト粒子に対し10重量%を越えると、ペルオキシダーゼによるマグネタイト粒子の被覆が不均一となり多量にペルオキシダーゼで被覆する割には得られる効果が小さい、また、マグネタイト粒子を被覆することなく沈殿してしまうペルオキシダーゼが増加する傾向にあるためである。しかしながら、分散媒として水を使用する場合には、ペルオキシダーゼの水に対する溶解量は通常、数重量%程度(2重量%〜6重量%)であるため、水中におけるペルオキシダーゼが上記範囲の濃度となるよう、マグネタイト粒子を分散させる水の量を選択することが好ましい。たとえば、マグネタイト粒子5gを水25gに分散させ、0.00025g〜1.5g程度のペルオキシダーゼを添加する場合が例示される。ペルオキシダーゼの添加後、10分間〜1時間程度常温で攪拌すると、ペルオキシダーゼも均一に分散され、均一なタンパク質層を形成しやすくなるため好ましい。
【0033】
続いて、常温で攪拌しながらペルオキシダーゼを溶解させた分散液にさらに硫酸アンモニウムを添加する。これにより、溶解していたペルオキシダーゼが徐々に析出してきて、強磁性粒子の表面およびペルオキシダーゼ同士で、非共有結合的に相互作用して互いに結合するようにして被覆し、タンパク質層を形成する。硫酸アンモニウムの添加量は、ペルオキシダーゼ溶液分散液に対し10重量%〜80重量%とするのが好ましい。硫酸アンモニウムの添加量がペルオキシダーゼ溶液分散液に対し10重量%未満であると、ペルオキシダーゼの溶解度低下効果が得られない(ペルオキシダーゼの析出が不充分となる)傾向にあるためであり、また80重量%を越えると、強磁性粒子の表面以外の部分でペルオキシダーゼだけが不所望に析出し易くなり、マグネタイト粒子を被覆することなく沈殿してしまうペルオキシダーゼが増加する傾向にあるためである。なお、ペルオキシダーゼが析出し得る硫酸アンモニウム濃度は、通常、数十重量%程度(30重量%〜50重量%)であるため、この濃度付近となるように添加する硫酸アンモニウムの量を選択することが好ましい。たとえば、マグネタイト粒子5gを水25gに分散させ、0.05gのペルオキシダーゼを添加したペルオキシダーゼ溶液分散液に、7g〜15g程度の硫酸アンモニウムを添加する場合が例示される。なお、硫酸アンモニウムを10分間〜1時間程度かけて徐々に添加すると、ペルオキシダーゼ溶液分散液における硫酸アンモニウム濃度が穏やかに上昇するためペルオキシダーゼが均一に析出し、均一なタンパク質層を形成しやすくなる上で好ましい。
【0034】
上述した手順にて、マグネタイト粒子と、当該マグネタイト粒子を被覆するペルオキシダーゼにて形成されたタンパク質層とを備え、ペルオキシダーゼとマグネタイト粒子表面、ならびに、互いに隣り合うペルオキシダーゼ同士が、非共有結合によって結合することによって形成されたタンパク質層が形成されてなる態様の本発明の磁性担体を製造することができる。
【0035】
本発明の磁性担体の製造方法においては、上述のように強磁性粒子を分散させた分散液にタンパク質を添加後、当該タンパク質の溶解性を低下させることで強磁性粒子をタンパク質で被覆した後に、乾燥して、タンパク質を安定化させる工程をさらに行うのが好ましい。このような工程を追加して行うことで、得られた磁性担体においてマグネタイト粒子とタンパク質層との間、ならびにタンパク質層を形成するタンパク質同士が強固に結合するため、溶液中でタンパク質層がマグネタイト粒子からさらに容易に遊離しにくくなるという利点がある。
すなわち、上述したマグネタイト粒子をペルオキシダーゼで形成したタンパク質層にて被覆した例を続けて説明すると、マグネタイト粒子表面を上記ペルオキシダーゼにて被覆した後、これを乾燥させる。乾燥の温度は、4℃〜80℃から選ぶのが好ましい。4℃未満の温度で乾燥させると、乾燥に要する時間がかかり過ぎる、また乾燥不充分になりマグネタイト粒子表面でのペルオキシダーゼの結合性が低下しやすくなる傾向があり、また、80℃を越える温度で乾燥させると、ペルオキシダーゼの劣化が著しいという傾向があるためである。しかしながら、ペルオキシダーゼは数十℃程度(30℃〜60℃)で劣化が観察されるため、30℃以下で乾燥し得るように、乾燥温度を選択することが好ましい。たとえば、マグネタイト粒子5gを水25gに分散させ、0.05gのペルオキシダーゼを添加したペルオキシダーゼ溶液分散液に、12gの硫酸アンモニウムを添加して得られたペルオキシダーゼ固定化磁性担体を水で洗浄し、15℃〜25℃程度で乾燥すればよい。上記乾燥は、たとえば、インキュベータやデシケータを用いて行えばよい。
【0036】
なお、上述した特定範囲内の飽和磁化、保磁力、形状および平均粒子サイズを兼ね備える磁性担体は、強磁性粒子の結晶性および結晶子サイズを制御することで得ることができるが、この結晶性および結晶子サイズは、強磁性粒子の調製の条件によっても異なってくる。かかる観点からは、次の条件にて強磁性粒子を調製するのが好ましい。以下、強磁性粒子としてマグネタイト粒子を用いた場合を例に挙げて、好適な方法について具体的に詳述する。
【0037】
鉄塩の水溶液の酸化反応を利用して、マグネタイト粒子を調製する。
まず、硫酸第一鉄(FeSO4・6H2O)を溶解した2価のFeイオン水溶液に、NaOH水溶液を滴下し、水酸化第一鉄(Fe(OH)2)を析出させる。この水酸化第一鉄の懸濁液のpHを9〜10に調整した後、空気を吹き込むことにより酸化して、マグネタイト粒子を成長させる。上記pHが9未満であると、マグネタイトの析出が遅くなる傾向にあるためであり、また上記pHが10を超えると、ゲーサイト(α-FeOOH)が生成し易くなる傾向にあるためである。
【0038】
上記マグネタイト粒子の成長において、空気を吹き込む速度と、懸濁液の保持温度は、マグネタイト粒子の粒子サイズに大いに影響を与える。
上記空気の吹き込み速度は、通常、大きくなるとマグネタイトの結晶成長が早くなり、得られるマグネタイト粒子は粒子サイズの小さなものとなる。しかし空気吹き込み速度が小さ過ぎるか、あるいは大き過ぎると、マグネタイト以外の物質が混在析出し易くなるため、かかる観点より空気吹き込み速度は、100L/hr〜400L/hrに調整されるのが好ましい。
また、懸濁液の保持温度は、50℃〜90℃に調整されるのが好ましい。上記保持温度が50℃未満であると、ゲーサイト(α-FeOOH)が生成し易くなる傾向にあるためである。また、懸濁液の保持温度が高いほどマグネタイト粒子は成長し易くなり粒子サイズは大きくなるが、90℃を超えると、本発明の目的を達成するためには好ましくない粒子サイズにまで大きくなるだけでなく、粒子サイズ分布も広くなる傾向にあるためである。
【0039】
上述したような方法によって、平均粒子サイズが0.01μm〜0.5μmのマグネタイト粒子を調製する。マグネタイト粒子をかかる平均粒子サイズとするのは、上述したように通常、1個〜10個の強磁性粒子が集結した塊状物をタンパク質にて被覆することで1個の磁性担体が得られるが、この際に0.01μm〜20μmという平均粒子サイズの磁性担体を実現し易いためである。
【0040】
なお、本発明の磁性担体の製造方法について上述してきたが、本発明の磁性担体は、上述した本発明の製造方法で得られたものに制限されるものではなく、同様の構成を有するならば上記以外の製造方法で得られたものであってもよい。
【0041】
本発明はまた、上述してきた磁性担体を用いて、〔1〕試料中の物質の改質を行う方法、〔2〕試料中の目的物質を検出する方法、〔3〕目的成分の抽出または精製を行う方法、ならびに、〔4〕物質を固定化した磁性担体(物質固定化磁性担体)を製造する方法を提供する。
【0042】
本発明の磁性担体を用いて改質、検出あるいは精製し得る物質、または磁性担体のタンパク質層を形成するタンパク質に結合し得る物質(成分)としては、当該タンパク質層を形成するタンパク質の性能により特異的な作用を受け得るものであれば特に限定されない。ここで本明細書中における「物質」は、天然に存在する各種の物質(成分)は勿論のこと、人工的に合成または改変されたような各種の物質(成分)も包含するものとする。
以下、本発明の磁性担体を利用する、〔1〕〜〔4〕の各方法について詳述する。
【0043】
〔1〕磁性担体を使用して、試料中の物質を改質する方法
上記〔1〕の方法により本発明の磁性担体を利用しようとする場合、タンパク質層を形成するタンパク質としては、たとえば、目的の反応を触媒し得る酵素などを用いればよい。タンパク質層を形成するタンパク質と、該タンパク質によって改質し得る物質との組み合わせとしては、具体的には、ペルオキシダーゼと過酸化水素との組み合わせ、グルコースオキシダーゼとグルコースとの組み合わせ、ウレアーゼと尿素との組み合わせ、カタラーゼと過酸化水素との組み合わせ、コレステロールオキシダーゼとコレステロールとの組み合わせ、クレアチンアミジノハイドロラーゼとクレアチンとの組み合わせ、サルコシンオキシダーゼとサルコシンとの組み合わせなどが例示される。
上記〔1〕の方法は、▲1▼試料中に含有される物質(磁性担体のタンパク質層を形成するタンパク質にて改質し得る物質)を磁性担体に接触させる工程と、▲2▼タンパク質層を形成するタンパク質により物質を改質させる工程とを経て、試料中に含有される物質を改質することを特徴とするものである。
【0044】
まず、上記▲1▼の工程では、物質と磁性担体とを混合し、物質と磁性担体とを接触させる。当該物質と磁性担体とを接触させる方法は、適宜のバッファー中でこれらが互いに接触し得る程度に混合させるならば、特に制限はない。この混合は、たとえばチューブを軽く転倒攪拌あるいは振盪することによる程度で充分であり、たとえば市販のボルテックスミキサーなどを用いて行うことができる。
【0045】
当該▲1▼の工程を行うに際して、磁性担体は、適宜の分散媒中に分散されて、分散液として予め調製されているのが好ましい。分散媒としては、特に制限はなく、たとえば、トリス酢酸、MES、HEPESなどが例示される。
【0046】
分散液の調製に際し、磁性担体の濃度が0.001g/mL〜1g/mLとなるように添加されるのが好ましい。0.001g/mL未満であると、物質と多く接触させることができず、集磁性も悪くなる傾向にあるためであり、1g/mLを越えると、分散液の分散性も保存安定性も悪くなる傾向にあるためである。
【0047】
続く▲2▼の工程では、タンパク質層を形成するタンパク質により物質を改質させる。この物質の改質に際し、タンパク質層を形成するタンパク質および物質に応じ、従来公知の任意の試薬(たとえば、タンパク質層を形成するタンパク質がペルオキシダーゼであり、物質が過酸化水素である場合、TOOS(N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン)、4−AA(4−アミノアンチピリン)など)を添加してもよい。また、かかる方法により物質が改質されたか否かは、各物質に応じ、従来公知の適宜の手法、装置(たとえば、物質が過酸化水素である場合、自動分析装置など)を使用して確認することができる。
【0048】
ペルオキシダーゼで形成したタンパク質層を有する磁性担体(ペルオキシダーゼ固定化磁性担体)を使用して、試料中の過酸化水素を改質する場合を例に挙げて、具体的に説明すると、まず、過酸化水素を含有する試料溶液に、ペルオキシダーゼ固定化磁性担体を混合させる。続いて、試料および磁性担体の混合液を37℃で加温する。これにより、上記試料中の過酸化水素が改質され、水と酸素が生成する。かかるペルオキシダーゼ固定化磁性担体による過酸化水素の改質は、TOOSおよび4−AAの発色反応を利用して確認することができる。
【0049】
なお、物質の改質に換えて、同様の工程にて物質を合成することもでき、この場合も本発明に包含される。物質を合成する場合のタンパク質層を形成するタンパク質と物質との組み合わせとしては、具体的には、DNAポリメラーゼとポリヌクレオチドとの組み合わせなどが例示される。
【0050】
〔2〕磁性担体を使用して、試料中の物質を検出する方法
上記〔2〕の方法により本発明の磁性担体を利用しようとする場合、タンパク質層を形成するタンパク質として、たとえば、目的の物質である抗原に特異的に結合され得る抗体などを用いればよい。タンパク質層を形成するタンパク質と、該タンパク質に特異的に結合し得る物質との組み合わせとしては、具体的には、抗ヒスチジンタグ抗体とヒスチジンタグ融合タンパク質との組み合わせ、抗MBP抗体とMBP融合タンパク質との組み合わせなどが例示される。
上記〔2〕の方法は、▲1▼試料中の上記物質を磁性担体に結合させる工程と、▲2▼磁性担体への物質の結合を確認する工程とを経て、試料中に含有される物質を検出することを特徴とするものである。
【0051】
上記▲1▼の工程では、上述した〔1〕の方法における▲1▼の工程と同様の操作、条件で行い、試料中の物質に磁性担体を結合させる。なお、この磁性担体の物質への結合に際し、タンパク質層を形成するタンパク質および物質に応じ、従来公知の任意の試薬を添加してもよい。
【0052】
続く▲2▼の工程では、磁性担体への物質の結合を確認する。この結合の確認には、各物質に応じ、従来公知の適宜の手法、装置(たとえば、物質がヒスチジンタグ融合タンパク質である場合、ウェスタンブロッティング法など)を使用して確認する。
【0053】
〔3〕磁性担体を使用して、試料中の物質を精製(抽出)する方法
上記〔3〕の方法により本発明の磁性担体を利用しようとする場合、タンパク質層を形成するタンパク質として、たとえば、目的の物質に特異的に結合され得る抗体などを用いればよい。タンパク質層を形成するタンパク質と、該タンパク質に特異的に結合し得る物質との組み合わせとしては、具体的には、プロテインAとIgGとの組み合わせ、プロテインGとIgGとの組み合わせなどが例示される。
上記〔3〕の方法は、▲1▼試料中の上記物質を磁性担体に結合させる工程と、▲2▼磁性担体に結合させた物質を、試料から単離させる工程と、▲3▼試料から単離された上記物質を磁性担体から分離させる工程とを経て、試料中に含有される物質を精製することを特徴とするものである。
【0054】
上記▲1▼の工程では、上述した〔1〕の方法における▲1▼の工程と同様の操作、条件で行い、試料中の物質に磁性担体を結合させる。なお、この磁性担体の物質への結合に際し、タンパク質層を形成するタンパク質および物質に応じ、従来公知の任意の試薬を添加してもよい。
【0055】
続く▲2▼の工程では、上記▲1▼の工程で磁性担体と結合させた目的タンパク質を、磁性担体ごと生物試料中から単離する。当該単離は、遠心分離やフィルター分離によって行ってよいが、操作が容易であり短時間で特異的な単離が可能であることから、精製装置全体の小型化や連続的な処理、自動化処理を容易にし得る観点より、磁場、すなわち磁石を使用して行うのが好ましい。使用する磁石としては、たとえば、磁束密度が0.03T(300ガウス)程度の磁石が好適に使用され得る。具体的には、上記▲1▼の工程を適宜のチューブ中で行い、磁性担体と物質との結合後、チューブの側壁に磁石を近づけて物質が結合した磁性担体をチューブ側壁近傍に集めた状態で、チューブ内から残りの液を排出することによって、単離すればよい。
【0056】
▲3▼の工程では、上述のようにして生物試料より単離した物質を、磁性担体より分離させる。この工程では、たとえば、物質を溶離させ得る溶出用液を、▲2▼の工程後のチューブ内に注入し、物質を磁性担体より溶離させる。その後、磁性担体を再び磁石で捕集して、チューブ内から除去することにより、物質が磁性担体より分離される。
【0057】
上記物質を溶離させ得る溶出用液としては、該タンパク質に親和性をもつ糖質を含有する溶液が好適に使用される。たとえば、物質がIgGである場合には、グリシン塩酸バッファーを含有する溶出用液が例示される。
【0058】
〔4〕磁性担体を利用して、物質を固定化した磁性担体(物質固定化磁性担体)を製造する方法
上記〔4〕の方法により本発明の磁性担体を利用しようとする場合、タンパク質層を形成するタンパク質として、たとえば、目的の物質に特異的に結合され得る抗体などを用いればよい。タンパク質層を形成するタンパク質と、該タンパク質に特異的に結合し得る物質との組み合わせとしては、具体的には、抗エストロジェンレセプター抗体とエストロジェンとの組み合わせ、抗アンドロジェンレセプター抗体とアンドロジェンレセプターとの組み合わせなどが例示される。
上記〔4〕の方法は、▲1▼試料中の上記物質を磁性担体に結合させる工程と、▲2▼磁性担体に結合させた物質を、試料から単離させる工程とを経て、物質固定化磁性担体(物質を固定化した磁性担体)を製造することを特徴とする。
【0059】
上記▲1▼の工程では、上述した〔1〕の方法における▲1▼の工程と同様の操作、条件で行い、試料中の物質に磁性担体を結合させる。なお、この磁性担体の物質への結合に際し、タンパク質層を形成するタンパク質および物質に応じ、従来公知の任意の試薬を添加してもよい。続く▲2▼の工程では、上述した〔3〕の方法における▲2▼の工程と同様の操作、条件で行い、磁性担体に結合させた物質を、試料から単離させる。
【0060】
上記のようにして製造されたタンパク質固定化磁性担体は、たとえば、環境ホルモンのスクリーニングなどに利用することができる。
【0061】
上述してきた〔1〕〜〔4〕の本発明の磁性担体の利用方法によれば、従来と比較してランニングコストを飛躍的に抑えられ、かつ簡便な方法であり、汎用性が高い。また、上記の物質の改質、検出、精製または物質固定化磁性担体の製造を行った後、使用後の磁性担体のタンパク質層を形成するタンパク質については再利用が可能であるという利点もある。
なお、本発明の磁性担体の利用法は、上述した〔1〕〜〔4〕の各方法に限定されるものではない。
【0062】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実施例1
(1)マグネタイト粒子の合成
タンパク質で被着処理を行うマグネタイト粒子を、以下の方法により合成した。100gの硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)を1000ccの純水に溶解した。この硫酸第一鉄と等倍モルになるように、28.8gの水酸化ナトリウムを500ccの純水に溶解した。次に硫酸第一鉄水溶液を攪拌しながら、1時間かけて水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、水酸化第一鉄の沈殿物を生成させた。滴下終了後、攪拌しながら、水酸化第一鉄の沈殿物を含む懸濁液の温度を85℃まで昇温した。懸濁液の温度が85℃に達した後、200L/hrの速度で、エアーポンプを使用して空気を吹き込みながら、8時間酸化して、マグネタイト粒子を生成させた。このマグネタイト粒子は、ほぼ球状で、平均粒子サイズは0.28μmであった。
なおマグネタイト粒子の平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡写真上、300個の粒子サイズを測定し、その数平均として求めた。
【0063】
(2)ペルオキシダーゼの被着処理
上述のようにして合成したマグネタイト粒子5gを、25ccの純水中に分散させた。この分散液中に、常温(20℃)でペルオキシダーゼを0.05g添加して10分間攪拌した後、攪拌を続けながら12gの硫酸アンモニウムを50分間かけて徐々に添加した。ペルオキシダーゼは、溶液中の硫酸アンモニウム濃度が上昇すると溶解しにくくなるため、上記の硫酸アンモニウム添加過程において、ペルオキシダーゼがマグネタイト粒子の表面に析出する。このようにしてマグネタイト粒子がペルオキシダーゼで形成されたタンパク質層にて被覆されてなる磁性担体(ペルオキシダーゼ固定化磁性担体)を作製した。
得られたペルオキシダーゼ固定化磁性担体は、ペルオキシダーゼとマグネタイト粒子表面、ならびに、互いに隣り合うペルオキシダーゼ同士が非共有結合によって結合することによってタンパク質層が形成されたものであった。
また、得られたペルオキシダーゼ固定化磁性担体は、平均粒子サイズが0.29μmの球状あるいは粒状形状であり、振動試料型磁力計(東英工業(株)製)を用いて、796.5kA/m(10キロエルステッド)の磁界を印加して測定された飽和磁化が82.9m2/kg(emu/g)、保磁力が4.68kA/m(59エルステッド)であった。
【0064】
実験例1
実施例1で作製したペルオキシダーゼ固定化磁性担体を用いて、以下の手順にて、試料中の目的物質を改質した。
目的物質としては過酸化水素を用い、試料としては0.9重量%の過酸化水素を含有する水溶液を用いた。
また、過酸化水素が改質されたことを確認するために、TOOS−4−AA系の発色反応を使用した。当該発色反応は、過酸化水素の改質によって生成した酸素と、TOOS(N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン)および4−AA(4−アミノアンチピリン)の反応により、波長546nmに吸収を有する色素が生成することを利用するものであり、当業者間で公知の方法である。
まず、上記過酸化水素含有試料0.1mlに反応液(50mM・トリス塩酸バッファー(pH7.5)、0.6mM・TOOS、0.5mM・4−AA)を3ml添加して攪拌し、測定液を調製した。次に、当該測定液にペルオキシダーゼ固定化磁性担体を100mg添加し、37℃で加温した。当該溶液について、吸光度計により磁性粒子の添加直後から5分間の吸光度(OD:546nm)を30秒間隔で測定して、上記試料中の過酸化水素の改質により生成した色素を定量した。
結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
Figure 0004136715
【0066】
実験例2
実験例1で使用済みのペルオキシダーゼ固定化磁性担体について、以下の手順にて、当該磁性担体を洗浄し、再利用した。
まず、実験例1にて吸光度の測定を終了した溶液を適宜のチューブに移し、チューブの側壁に磁石を近付けてペルオキシダーゼ固定化磁性担体をチューブ側壁近傍に集めた状態で、チューブ内から残りの液を排出した。次に、当該チューブに50mM・トリス塩酸バッファー(pH7.5)を1ml注入して攪拌した後、上記磁性担体を再び磁石で捕集して、チューブ内から残りの液を排出することにより、第1回目再利用磁性担体を得た。当該再利用磁性担体を用いて、実験例1と同様の方法により試料中の過酸化水素を改質し、磁性担体の添加直後から5分後に生成した色素を定量した。
上記と同様の操作を繰り返し、第2回目再利用磁性担体および第3回目再利用磁性担体について、試料中の過酸化水素を改質し、磁性担体の添加直後から5分後に生成した色素を定量した。
結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
Figure 0004136715
【0068】
【発明の効果】
本発明により、従来と比較して格段に低コスト、簡便、汎用的なタンパク質固定化磁性担体、およびその製造方法を提供することにある。

Claims (10)

  1. 強磁性粒子を分散させた分散液にタンパク質を添加後、当該タンパク質の溶解性を低下させることで強磁性粒子を被覆するタンパク質層を形成することを特徴とするタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
  2. 強磁性粒子が強磁性酸化鉄粒子であることを特徴とする請求項に記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
  3. 強磁性酸化鉄粒子がマグネタイト粒子、マグヘマイト粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間体粒子およびマンガン亜鉛フェライト粒子のうちから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項に記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
  4. タンパク質の溶解性を低下させる手段として塩析を用いることを特徴とする請求項のいずれかに記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
  5. タンパク質の溶解性を低下させる手段としてアルコール沈殿を用いることを特徴とする請求項のいずれかに記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
  6. 強磁性粒子を分散させた分散液にタンパク質を添加後、当該タンパク質の溶解性を低下させることで強磁性粒子をタンパク質で被覆した後、乾燥してタンパク質を安定化させることを特徴とするタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
  7. 強磁性粒子が強磁性酸化鉄粒子であることを特徴とする請求項に記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
  8. 強磁性酸化鉄粒子がマグネタイト粒子、マグヘマイト粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間体粒子およびマンガン亜鉛フェライト粒子のうちから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項に記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
  9. タンパク質の溶解性を低下させる手段として塩析を用いることを特徴とする請求項のいずれかに記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
  10. タンパク質の溶解性を低下させる手段としてアルコール沈殿を用いることを特徴とする請求項のいずれかに記載のタンパク質固定化磁性担体の製造方法。
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