JP2005069955A - 生体物質結合用磁性担体 - Google Patents

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Abstract


【課題】 磁性担体の色調により、DNAやタンパク質などの生体物質の結合機能を識別化できる磁性担体を提供する。

【解決手段】 平均粒子サイズが0.02〜10μmで、保磁力が2.39〜23.88kA/m(30〜300エルステッド)、飽和磁化が0.5〜40A・m2 /kg(0.5〜40emu/g)の範囲にある赤色または赤茶色の色調を有する酸化鉄粒子からなることを特徴とする生体物質結合用磁性担体、とくに、上記の酸化鉄粒子が、ガンマヘマタイト(γ−Fe2 3 )相とアルファヘマタイト(α−Fe2 3 )相が混在した酸化鉄またはマグネタイト(Fe3 4 )相とアルファヘマタイト相が混在した酸化鉄からなる上記構成の生体物質結合用磁性担体。

【選択図】 なし

Description

本発明は、赤色または赤茶色の色調を有する生体物質結合用磁性担体に関し、さらに詳しくは、磁性担体の色調による生体物質結合機能や単離、検出の識別化を可能にする上記磁性担体に関するものである。
試料中から生親和性分子(たとえば核酸など)を単離するために、酸化鉄粒子の磁気応答性を利用した磁性担体が使用されている。たとえば、共有結合し得る重合性シラン被膜により覆われた超常磁性酸化鉄を有する磁気応答粒子を使用することが知られている(特許文献1参照)。

また、多磁区からなる金属または金属酸化物を用いた核酸結合用の磁性シリカ粒子が公知である(特許文献2参照)。この磁性シリカ粒子は、実施例より、磁性粒子としてフェライト(酸化鉄)が使用されている。
また、核酸の精製、分離およびハイブリダイゼーションのために、支持体として、金属酸化物、ガラス、ポリアミドなどが例示され、ポリカチオン性磁気応答粒子が公知である(特許文献3参照)。磁気応答粒子としては、粒子サイズが約1μmの磁気アミンマイクロスフェア(磁性微小球)などが使用されており、磁性体マトリックスとして、磁気反応性酸化鉄が例示されている。

さらに、内部コアポリマー粒子とその粒子に均一に被覆している磁気的に応答する金属酸化物/ポリマーコーティングとよりなる磁性応答粒子を用いた、純粋な生物材料の単離法もまた公知である(特許文献4参照)。この磁気応答粒子に使用される金属酸化物は、硫酸鉄から製造されることが実施例に記載されており、酸化鉄である。
また、超常磁性金属酸化物を含む球状の磁性シリカ粒子が知られている(特許文献5,6参照)。この例では、磁性シリカ粒子として、超常磁性金属酸化物を微小なシリカ粒子で構成される無機多孔質壁物質で複合化している。上記の超常磁性金属酸化物としては、マグネタイト(Fe3 4 )またはガンマヘマタイト(γ−Fe2 3 )が使用されることが記載されている。
このように、従来の磁気応答粒子としての磁性担体は、磁界応答性を持たせるための磁性粒子として、酸化鉄粒子を使用している。酸化鉄粒子は、化学的に安定であり、かつ製造も容易であるため、この分野における磁性担体として汎用されている。この酸化鉄粒子の表面を各種の無機化合物や有機化合物で被覆して、各種の機能を付加することにより、DNAやRNAなどの核酸や、各種の蛋白質の抽出、精製が行われている。
しかし、酸化鉄粒子の色調は酸化状態により異なるが、この分野において磁気応答粒子として使用される酸化鉄粒子の色調はたいてい黒色または黒茶色である。このため、この酸化鉄粒子の表面を各種の無機化合物や有機化合物で被覆しても、磁性担体としての色調は黒色または黒茶色となる。したがって、黒色または黒茶色の酸化鉄粒子を用いた場合、磁性担体の色調による用途の識別化は不可能である。また、酸化鉄粒子を各種の顔料で被覆し着色することも考えられるが、酸化鉄粒子そのものが黒色または黒茶色であるため、彩度の高い着色粒子を得ることは困難である。
特開昭 60−1564号公報(第20〜23頁) 特開2000−256388号公報(第3〜4頁) 特表平1−502319号公報(第7〜10頁) 特表平2−501753号公報(第4〜5頁) 特開平9−19292号公報(第3〜4頁) 特開2001−78761号公報(第3〜4頁)
このように、磁気応答粒子としては、従来では酸化鉄粒子が磁性担体として汎用されているが、その結果として、磁性担体としての色調が黒色または黒茶色である状況においては、磁性担体に各種の色調を付与することにより、磁性担体の色調によりその機能を識別化するという発想自体、これまでに存在しなかった。

本発明は、このような状況に鑑み、磁性担体を着色化して、色調によるその機能の識別を可能にする磁性担体を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記目的に対し、まず、酸化鉄の色調がその酸化状態により異なることに着目し、酸化鉄が過酸化状態であるときに赤色または赤茶色の色調を呈することを利用すれば、従来の黒色または黒茶色の磁性担体とは異なる、赤色または赤茶色の磁性担体が得られるとともに、これを核にして各種の色調に着色することも可能となり、色調によりその機能を識別化できる磁性担体が得られるものと考えた。
この考えに基づいて、鋭意検討した結果、磁性粒子として、ガンマヘマタイト(γ−Fe2 3 )相とアルファヘマタイト(α−Fe2 3 )相が混在した酸化鉄粒子か、マグネタイト(Fe3 4 )相とアルファヘマタイト相が混在した酸化鉄粒子を使用すると、従来の黒色または黒茶色の磁性粒子とは異なる、赤色または赤茶色の色調を有する磁性担体が得られること、またこの赤色または赤茶色の色調を基本にして、各種の顔料で着色化することにより、各種の色調を有する磁性担体が得られることがわかった。その結果、磁性担体の色調による機能の識別化が可能となることがわかった。
ここで言う機能の識別化とは、核酸などの抽出、精製機能だけでなく、検出機能などの各種機能を、磁性担体が有する色調により識別できることを意味する。
従来の酸化鉄粒子を用いた磁性担体では、DNAやRNAさらには酵素や抗体などの蛋白質の抽出・精製のため、磁性担体の表面に各種の物質を被着形成させ、この表面被着物質により、各種の用途に使い分けている。しかしながら、この場合、磁性担体としては、磁性担体そのものは黒色または黒茶色であり、見た目にはすべて同一色であり、磁性担体の色調による機能の識別化はほとんど不可能であった。
これに対して、本発明の上記の酸化鉄粒子では、この粒子が有する赤色または赤茶色の色調により機能の識別化が可能であり、またこの色調を基本にして各種の色調に着色できるので、各色調に対応するように磁性粒子の表面に各種の物質を被着形成させると、この磁性担体が有する色調により、この磁性担体が有する各種機能を識別できるようになる。
このように、本発明では、酸化鉄の色調がその酸化状態により異なることに着目して、酸化鉄が過酸化状態であるときに赤色または赤茶色の色調を呈することを利用して、磁性担体の色調による機能の識別化をはかり得たものである。
本発明に用いられる酸化鉄粒子は、上述のように、従来の黒色または黒茶色の色調とは全く異なる、赤色または赤茶色の色調を呈するものであり、このような酸化鉄粒子には、ガンマヘマタイト(γ−Fe2 3 )相とアルファヘマタイト(α−Fe2 3 )相が混在した酸化鉄粒子か、マグネタイト(Fe3 4 )相とアルファヘマタイト相が混在した酸化鉄粒子が挙げられ、そのいずれであってもよい。
この酸化鉄粒子の平均粒子サイズとしては、0.02〜10μmが好適である。平均粒子サイズが0.02μmより小さいと、比表面積が大きくなり、生体物質の結合効率は高いが、磁石による捕集性が低下する傾向にあり、操作上好ましくない。平均粒子サイズが10μmより大きくなると、比表面積が小さくなり、生体物質の結合量が減少する傾向にある。酸化鉄粒子の平均粒子サイズが0.02〜10μmの範囲のとき、生体物質の結合性/磁界による捕集性のバランスの取れた最適な磁性担体となる。
また、酸化鉄粒子の形状としては、針状、板状、球状、粒状、楕円状、立方状などの各種の形状のものを使用できるが、粒子形状が球状ないし粒状のものが、磁石による捕集性が最も良好であり、好ましい。

ここで言う球状とは、粒子の長軸方向と短軸方向の長さの比が2以下のものを示し、粒状とは、粒子の形状に異方性のないものを示す。粒子表面に凹凸があるものでも、粒子全体としてとくに形状に異方性のないものであれば、粒状と定義する。
この酸化鉄粒子の磁気特性としては、保磁力が2.39〜23.88kA/m(30〜300エルステッド)、飽和磁化が0.5〜40A・m2 /kg(0.5〜40emu/g)の範囲にあるものが好適である。

保磁力は、生体物質を結合させた磁性担体からの懸濁液中での生体物質の溶離性に影響し、捕集するときに印加された磁界により磁性担体はある程度磁化されるため、保磁力が大きくなると磁性担体間の凝集力が大きくなり、磁性担体から生体物質を溶離するときの磁性担体の分散性が低下する。保磁力は、低くてもとくに問題とならないが、上述の範囲以下にするには、平均粒子サイズを極めて大きくする必要があり、粒子サイズの面から好ましくない。したがって、2.39〜23.88kA/m(30〜300エルステッド)の範囲の保磁力において、最もすぐれた生体物質の単離性が得られる。
また、飽和磁化は、核酸を結合した磁性担体の捕集性と密接に関係し、一般に飽和磁化が大きいほど、磁界に対する応答性が向上し、磁性担体を懸濁液中で捕集する際に、短時間で効率良く捕集できる。しかし、赤色または赤茶色の色調を得るという点で、40A・m2 /kg以上のものを得ることは困難であり、40A・m2 /kg以下のときに、赤色または赤茶色の酸化鉄となる。飽和磁化が0.5A・m2 /kg以下となっても色調の面からは問題とならないが、飽和磁化が低すぎるため、磁界に対する応答性が低下し、捕集性が劣化する。したがって、0.5〜40A・m2 /kg(0.5〜40emu/g)の範囲のとき、上記色調を有する最もすぐれた生体物質の単離性が得られる。
本発明の酸化鉄粒子は、生体物質結合用磁性担体として、このままの状態でも使用できるが、各種の無機化合物や有機化合物で磁性担体の表面を被着または被覆することにより、各種目的に適合した生体物質結合用磁性担体としての機能を発揮させることができる。たとえば、生体物質としてDNAやRNAなどの核酸を結合させる目的においては、粒子表面にシリカを被着形成することが有効である。
このシリカ層の形成方法は、とくに限定されない。酸化鉄粒子に直接シリカを被着形成してもよいし、酸化鉄粒子の集合体をマイクロカプセル化してシリカの被膜を形成してもよい。シリカの被着量としては、酸化鉄粒子に対して3〜300重量%が好ましい。シリカの被着量が3重量%より少ないと、核酸の結合効率が低く、抽出効率が低くなる。シリカの被着量が300重量%より多いと、磁性担体としての飽和磁化量は減少し、磁界による捕集性が低下するため、好ましくない。
また、生体物質として抗体や酵素などの蛋白質を結合させる場合には、酸化鉄粒子にこれらの蛋白質を直接結合させることもできる。また、グルタルアルデヒド、アルブミン、カルボジイミド、ストレプトアビジン、ビオチン、官能基を有するシランカップリング剤、官能基を有する有機ポリマーの中から選ばれた1種の有機化合物、または2種以上組み合わせた複合体からなる有機化合物を、酸化鉄粒子の粒子表面に結合させておくと、より効率良く蛋白質を結合させることができるので、望ましい。
粒子表面に官能基を付与することは、特定の蛋白質を結合させる目的において、とくに有効な手段である。この官能基の付与方法は、とくに限定されないが、たとえば官能基を有するシランカップリング剤や官能基を有する有機ポリマーを粒子表面に被着することにより、官能基を付与することができる。官能基の種類としては、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、メルカプト基などが好ましく、中でも、アミノ基は蛋白質に対する結合性がすぐれているため、とくに好ましい。
さらに、酸化鉄粒子を糖質層で被覆すると、融合蛋白質を結合するために適した磁性担体となる。この糖質には、グルコースを単位とするオリゴ糖または多糖が好適であるが、中でも糖質がアミロースを主成分とする多糖であるときに、融合蛋白質を抽出、精製する目的において、最適な磁性担体となる。
このような酸化鉄粒子は、上述のように、過酸化状態で赤色または赤茶色となる。この赤色または赤茶色の色調を持つ粒子は、さらに各種色調の顔料を被着または混合することにより、各種色調を有する磁性担体とすることができる。

従来の酸化鉄粒子を用いた磁性担体では、酸化鉄粒子が黒色または黒茶色であるため、各種色調の顔料を被着または混合しても、色調は黒色または黒茶色であり、他の色調を付与することは困難である。上記本発明の赤色または赤茶色の酸化鉄粒子を用いると、各種の色調を付与でき、色調による磁性担体の識別化が可能となる。
このように、従来の磁性担体では黒色または黒茶色の色調を有する酸化鉄粒子を用いていたのに対し、本発明では、赤色または赤茶色の色調を有する酸化鉄粒子を用いることにより、各種の色調を有する磁性担体を得ることを可能にしたものである。本発明により、磁性担体の色調による生体物質結合機能の識別化が可能となる。また、蛍光体でラベル化することにより、大きな発光強度が得られるなどの利点もある。
本発明の生体物質結合磁性担体は、既述のとおり、平均粒子サイズが0.02〜10μmで、保磁力が2.39〜23.88kA/m(30〜300エルステッド)、飽和磁化が0.5〜40A・m2 /kg(0.5〜40emu/g)の範囲にある赤色または赤茶色の酸化鉄粒子からなることを特徴としている。

このような酸化鉄粒子は、上記色調を有しているため、これをさらに各種の顔料で被覆したり、各種の顔料と混合することにより、各種の色調を有する磁性担体を得ることが可能である。その結果、色調による磁性担体の核酸や蛋白質の抽出、精製、検出さらには分析などの各種機能の識別化が可能になる。
また、この酸化鉄粒子にシリカやアパタイトなどの無機酸化物を被着形成したり、有機化合物を被覆結合させることにより、核酸や蛋白質などの各種の生体物質の抽出、精製、分析に対応できるようになる。

有機化合物としては、グルタルアルデヒド、アルブミン、カルボジイミド、ストレプトアビジン、ビオチン、またアミノ基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、メルカプト基などの官能基を有するシランカップリング剤、上記同様の官能基を有する有機ポリマーが挙げられる。これらの有機化合物を複合使用することも、上述の無機化合物を被着形成したのち、この上にこれらの有機化合物を結合させてもよい。
さらに、酸化鉄粒子に糖質層を被覆形成することも可能である。糖質層としては、グルコースを単位とするオリゴ糖または多糖が挙げられ、とくにこの糖質がアミロースを主成分とする多糖であるとき、より良好な生体物質結合用磁性担体が得られる。
<酸化鉄粒子の製造方法>
以下に、本発明の酸化鉄粒子の製造方法について、説明する。

なお、ここでは、一例として、マグネタイト粒子を酸化処理することにより、本発明の赤色または赤茶色の色調を有する酸化鉄粒子を製造する方法について説明するが、本方法に限定されないものであることは言うまでもない。
マグネタイト粒子は、鉄塩水溶液中の酸化反応により、合成できる。
硫酸第一鉄(FeSO4 ・6H2 O)を溶解した2価のFeイオン水溶液に、NaOH水溶液を滴下して、水酸化第一鉄〔Fe( OH)2 〕を析出させる。この水酸化第一鉄の懸濁液のpHを9〜10に調整し、空気を吹き込んで酸化して、マグネタイト粒子を成長させる。pHが上記範囲より小さいとマグネタイトの析出が遅くなり、上記範囲より大きいとゲーサイト(α−FeOOH)が生成しやすくなる。
空気吹き込み速度と懸濁液の保持温度はマグネタイト粒子の粒子サイズに大いに影響を与える。空気吹き込み速度は100〜400リットル/時間に、懸濁液の保持温度は50〜90℃に調整するのがよい。通常、空気吹き込み速度が大きくなると、マグネタイトの結晶成長が速くなり、粒子サイズは小さくなる。空気吹き込み速度が小さすぎるかまたは大きすぎると、マグネタイト以外の物質が混在析出しやすくなる。保持温度が高くなるほど、マグネタイトの結晶が成長しやすくなり、粒子サイズが大きくなる。保持温度が低すぎると、ゲーサイト(α−FeOOH)粒子が生成しやくなる。
このような方法により、平均粒子サイズが0.02〜10μmの黒色または黒茶色の色調を有するマグネタイト粒子が得られる。平均粒子サイズは、走査型電子顕微鏡写真上で300個の粒子のサイズを測定し、その平均値から求められる。

本発明においては、このようなマグタイト粒子を空気中で加熱して、酸化処理を施し、赤色または赤茶色の色調を有する酸化鉄粒子とする。最適加熱温度は、粒子サイズが小さくなるほど低くなるが、通常300〜800℃の範囲とするのが好ましい。また、加熱時間は、通常1〜10時間の範囲であるのが好ましい。
加熱温度が300℃より低いと、酸化が不十分となり、ガンマへマタイト(γ−Fe2 3 )による茶色または黒茶色の粒子となる。また、加熱温度が800℃よりも高いと、赤色または赤茶色の粒子となるが、酸化が進行しすぎ、磁性を持たないアルファヘマタイト(α−Fe2 3 )が生成する。また、加熱時間が短すぎると、酸化が不十分となり、鮮やかな赤色の色調を有する酸化鉄粒子が得られにくい。また、加熱時間が長すぎると、酸化が進行しすぎて、飽和磁化の低い酸化鉄粒子となる。
このような方法により、平均粒子サイズが0.02〜10μmで、保磁力が2.39〜23.88kA/m(30〜300エルステッド)、飽和磁化が0.5〜40A・m2 /kg(0.5〜40emu/g)の範囲にある、赤色または赤茶色の色調を有する酸化鉄粒子が得られる。この酸化鉄粒子を使用することにより、色調により生体物質結合機能の識別化をはかれる磁性担体を提供することが可能となる。
上記の例では、マグネタイト粒子を出発原料として、赤色または赤茶色の酸化鉄粒子を得る方法について説明したが、これとは逆に、赤色または赤茶色のアルファヘマタイト粒子を出発原料として、これを適度に還元することにより、赤色または赤茶色の色調を保持した状態で飽和磁化を付与した酸化鉄粒子を得ることもできる。
本発明の酸化鉄粒子は、生体物質結合用磁性担体として、このままの状態でも使用できるが、シリカやアパタイトなど各種の無機化合物を粒子表面に被着または被覆すると、生体物質結合用磁性担体として、その機能をより向上できる。
たとえば、生体物質として、DNAやRNAなどの核酸を結合させる場合には、粒子表面にシリカを被着形成することが有効であり、また蛋白質を結合させるには、粒子表面にアパタイトを被着形成することが有効である。

これらの無機化合物を被着形成する方法については、とくに限定されるものではないが、たとえば、無機化合物としてシリカを被着形成する場合は、以下のようなふたつの方法を挙げることができる。
<酸化鉄粒子へのシリカの被着形成(I)>
上述のようにして得た酸化鉄粒子を、水に対する粒子の含有量が1〜10重量%になるように、水と粒子の含有量割合を調整する。この水に対する粒子の含有量は、シリカを個々の粒子の表面近傍に被着形成するときの均一性に影響し、上記範囲内のときに最も均一にシリカが被着形成される。すなわち、水に対する粒子の含有量が1重量%未満の場合は、濃度が希薄すぎて、シリカが粒子の表面以外の場所で析出しやすくなる。一方、水に対する粒子の含有量が10重量%を超えると、濃度が高すぎて、粒子が凝集しやすくなり、個々の粒子の表面近傍に均一にシリカを被着形成することが困難になる。
つぎに、この懸濁液に、SiO2 に換算して、酸化鉄粒子に対して3〜50重量%になように珪酸ナトリウム(水ガラス)を添加する。添加量が3重量%より少ないと、粒子の表面近傍に被着形成されるシリカの量が不十分になるため、核酸の結合量が少なくなり、抽出効率が低下する。添加量が50重量%より多いと、シリカを個々の粒子の表面近傍に均一に被着形成することが困難になり、核酸の結合量増加の効果は少なく、また磁性担体としての飽和磁化量が過度に減少し、磁界による捕集性が低下する。

珪酸ナトリウムの添加は、水に対してSiO2 に換算して0.5〜2重量%となるように調整するのが好ましい。珪酸ナトリウム水溶液から中和反応によりシリカを析出させると液の粘度が高くなるが、この粘度が高すぎると個々の粒子の表面近傍にシリカを均一に被着形成するのが困難になり、低すぎるとシリカが析出しにくくなる。
このように酸化鉄粒子に対してSiO2 に換算して3〜50重量%になるように珪酸ナトリウムを添加し、かつこのときの水に対する珪酸ナトリウムの添加量がSiO2 に換算して0.5〜2重量%になるように調整し、さらに水に対する粒子の含有量が1〜10重量%になるように、酸化鉄粒子、珪酸ナトリウムおよび水の量を調整するのが好ましい。このように調整された液に対して、希塩酸などの酸を加えて中和反応させることにより、粒子表面にシリカが被着形成される。この粒子を純水で十分水洗し、ろ過したのち、空気中、たとえば、60℃で4時間乾燥させる。
このような方法により、個々の酸化鉄粒子の表面にシリカを被着形成した、核酸の抽出精製または核酸増幅産物の精製に最適な磁性担体が得られる。この方法は、シリカを被着形成したのちの平均粒子サイズとして、元の酸化鉄粒子と同程度か、あるいは多少大きい0.02〜1μmのものを得るのに適している。
<酸化鉄粒子へのシリカの被着形成(II)>
つぎに、酸化鉄粒子の集合体をマイクロカプセル化して、シリカの被膜を形成する方法について、説明する。
酸化鉄粒子の懸濁液に、珪酸ナトリウムを所定量添加し、溶解させる。珪酸ナトリウの添加量は、SiO2 に換算して、酸化鉄粒子に対して10〜300重量%が好ましく、より好ましくは15〜250重量%である。添加量が少ないと、大きな飽和磁化が得られやすい反面、粒子を均一に被覆することが困難になる。一方、添加量が多いと、飽和磁化が低下し、磁性担体としたときに、磁界に対する応答性が低下する。
上記の珪酸ナトリウムを溶解した酸化鉄粒子の懸濁液とは別に、有機溶媒に所定量の界面活性剤を溶解する。有機溶媒としては、水に対する溶解度が低いものが好ましく、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが好ましい有機溶媒として使用できる。

また、乳化剤として使用する界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル系の界面活性剤が好ましく、たとえば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルジタンモノパルミレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレートなどが好適なものとして使用できる。
つぎに、上記の珪酸ナトリウムを溶解した酸化鉄粒子の懸濁液に、上記の界面活性剤を溶解した有機溶媒を混合し、ホモミキサー、ホモジナイザーなどの強力な攪拌機を用いて攪拌し、W/O型のエマルジョンを調製する。攪拌時間は、攪拌機の能力によるが、通常1〜30分程度が好ましい。攪拌時間が短いと、均一なサイズのエマルジョン粒子を得にくくなり、逆に長すぎると、攪拌エネルギーにより強磁性粒子とシリカが反応して、目的とは異なる構造の粒子が生成しやすくなる。
このように調製されるエマルジョン粒子は、有機溶媒中で酸化鉄粒子と珪酸ナトリウム水溶液が界面活性剤により包み込まれた構造を有している。つぎに、このエマルジョン粒子の懸濁液を、アンモニウム塩を溶解した水溶液に滴下する。珪酸ナトリウムはアルカリ性領域では水に溶解しているが、中性領域では不溶性となる。このため、アンモニウム塩を加えて中和させると、シリカとなって析出する。その結果、酸化鉄粒子を含有するようにシリカの被膜で覆われた球状粒子が生成する。
このシリカ析出工程において、エマルジョン粒子の懸濁液は、アンモニウム塩水溶液に滴下することにより、徐々に析出させるのが好ましい。滴下時間は10分〜3時間が好ましい。短すぎるとシリカ被膜に欠陥が生じたり、表面に凹凸が生じやすくなり、長すぎると特性上とくに問題はないが、合成時間が長くなるだけで意味がない。

アンモニウム塩には硫酸塩や炭酸塩が好ましい。たとえば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウムなどが好適なものとして使用できる。
このようにして得られる粒子は、純水で十分水洗したのち、ろ過し、空気中、たとえば60℃で4時間乾燥させる。これにより、酸化鉄粒子がシリカで被覆された構造の磁性担体が得られる。この方法は、シリカ被覆後の平均粒子サイズとして0.5〜10μmのものを得るのに適している。
本発明において、上記ふたつのシリカの被覆方法を実施するにあたり、酸化鉄粒子にさらに各種の顔料を添加してシリカで被覆するようにすることもできる。この方法により、酸化鉄粒子と顔料を包み込むようにシリカの被膜で覆われた、各種の色調を有する球状粒子を生成させることができる。
本発明の酸化鉄粒子は、生体物質として抗体や酵素などの蛋白質を結合させることを目的として使用する場合、上記酸化鉄粒子により直接これらの蛋白質を結合させることも可能である。しかし、グルタルアルデヒド、アルブミン、カルボジイミド、ストレプトアジピン、ビオチン、アミノ基などの各種の官能基を有するシランカップリング剤、上記同様の官能基を有する有機ポリマー、さらにはこれらの有機化合物を複数組み合わせた複合体からなる有機化合物を、酸化鉄粒子の粒子表面に結合させておくことにより、より効率良く蛋白質を結合させることができるので、望ましい。

以下に、酸化鉄粒子に、有機化合物の例として官能基を有するシランカップリング剤を結合させ、これにより粒子表面に官能基を導入する方法について、説明する。
<酸化鉄粒子への官能基の導入>
酸化鉄粒子を水に対して1〜40重量%になるように水中に分散し、この分散液にシランカップリング剤溶液を添加する。シランカップリング剤溶液は、そのままでもよいし、水やアルコール、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはこれらの混合溶媒などで希釈して用いてもよい。
シランカップリング剤には、生理活性物質に対して親和性のある官能基、たとえば、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ビニル基、メタクリル基を有するものが用いられる。このようなシランカップリング剤としては、たとえば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
シランカップリング剤の添加量としては、酸化鉄粒子に対して、0.01〜20重量%の範囲とするのが好ましい。シランカップリング剤の添加量が上記の範囲より少ないと、固定化できる生理活性物質の量が減少する。また、シランカップリング剤の添加量が上記の範囲より多いと、シランカップリング剤が粒子の表面に均一に結合しにくくなり、生理活性物質の固定化効率が逆に劣る傾向にある。
シランカップリング剤の処理時間は通常1〜4時間程度が好ましい。処理時間が短すぎると、シランカップリング剤の結合が不十分になり、逆に長すぎると、反応時に生成するアルコールなどが悪影響を及ぼすためか、酸化鉄粒子表面のシランカップリング剤に未反応のアルコキシ基が残存することになり、好ましくない。このようにしてシランカップリング処理したのち、反応混合物を水洗し、ろ過、乾燥する。
このような方法により、酸化鉄粒子表面に官能基を有するシランカップリング剤を結合でき、これにより粒子表面に所望の官能基を導入できる。

また、シランカップリング剤による上記官能基の導入は、酸化鉄粒子の粒子表面に直接結合させる方法で行ってもよいが、より好ましくは、酸化鉄粒子にシリカの層を被着形成したのちに、行ってもよい。シリカの層を形成しておく方が、シランカップリング剤とシリカが結合しやすいため、より効率良く官能基を導入できる。
本発明の酸化鉄粒子は、これを糖質層で被覆すると、融合蛋白質を結合するのに適した磁性担体とすることができる。この糖質には、グルコースを単位とするオリゴ糖または多糖が好適であり、中でも糖質がアミロースを主成分とする多糖であるとき、融合蛋白質を抽出、精製する目的において、最適な磁性担体とすることができる。また、このような糖質層を被覆する場合にも、用途に応じて、既述したような各種の無機化合物や有機化合物と組み合わせて使用することも可能である。以下に、一例として、酸化鉄粒子に糖質としてアミロースを結合させる方法について、説明する。
<酸化鉄粒子への糖質結合>
常温(20℃)で、酸化鉄粒子を分散媒中に分散させる。分散媒としては、とくに制限はなく、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられるが、製造コストを低くできる理由から、水を用いるのが好ましい。分散媒に添加する酸化鉄粒子の量にもとくに制限はないが、均一な分散液が得られやすいため、1〜50重量%の濃度になるように添加するのが好ましい。
つぎに、常温で攪拌しながら分散媒にアミロースを添加し、90℃程度まで加熱する。アミロースの酸化鉄粒子に対する添加量は、0.1〜30重量%とするのが好ましい。アミロースの水に対する溶解量は通常数重量%程度であるため、この濃度以下になるように酸化鉄粒子を分散させる水の量を選択するのが好ましい。たとえば、酸化鉄粒子10gを水500gに分散させ、0.1〜3g程度のアミロースを添加すればよい。
アミロースの添加後、10分間〜1時間程度常温で攪拌したのち、上記温度に加熱し、さらに加熱した状態で10分間〜1時間攪拌を行うと、アミロースも均一に分散され、均一な糖質層を形成しやすくなるため、好ましい。つづいて、アミロースの溶解分散液を攪拌しながら、常温まで冷却する。これにより、溶解していたアミロースが徐々に析出してきて、酸化鉄粒子の表面に被着結合する。
上記アミロースの結合方法は、有機化合物として、グルタルアルデヒド、アルブミン、カルボジイミド、有機ポリマーなどを結合させる場合にも、適用できる。つまり、これらの有機化合物を上記と同様の手法により被着結合させることができる。

これらの有機化合物を複数組み合わせた複合体を酸化鉄粒子表面に結合させると、より効率良く蛋白質を結合させることができるので、複数組み合わせて用いるのが好ましい。また、シリカなどの無機化合物と有機化合物とを複数組み合わせた複合体を酸化鉄粒子表面に結合させる方法も、用途に応じて好ましい方法となる。
つぎに、本発明の酸化鉄粒子またはこの粒子に上記のようにシリカなどの無機化合物を被着形成したり、グルタルアルデヒド、アルブミン、ストレプトアビジン、ビオチン、官能基を有するシランカップリング剤、官能基を有する有機ポリマー、糖質などの有機化合物を結合させたり、さらには上記の無機化合物を被着形成したのちに上記の有機化合物を結合させた磁性担体を用いて、核酸や蛋白質などの生体物質の抽出および/または精製、さらには検出(分析)を行う方法について。説明する。
この方法は、たとえば、抽出および/または精製では、(イ)DNAやRNAなどの核酸、酵素や抗体などの蛋白質などの生体物質を含有する生物試料から、上記生体物質を磁性担体に結合させる工程と、(ロ)磁性担体に結合させた生体物質を、生物試料から単離させる工程と、(ハ)−a 生物試料から単離された磁性担体に結合した生体物質を、磁性担体から分離させる工程とからなっており、また検出(分析)では、上記(ハ)−aに代えて、(ハ)−bとして、生物試料から単離された生体物質を、この生体物質が核酸の場合は必要により増幅させたのち、検出する工程を含むものである。
(イ)の工程では、生体物質を含有する生物試料と、磁性担体とを混合し、生体物質を磁性担体に結合させる。この結合の方法は、適宜のバッファー中で生体物質と磁性担体とが互いに接触し得る程度に混合させる方法であれば、とくに制限はない。混合は、チューブを軽く転倒攪拌または振盪する程度で十分であり、たとえば、市販のボルテックスミキサーなどを用いて行うことができる。
(イ)の工程を行うに際し、磁性担体を適宜の分散媒中に分散させて、生体物質の抽出・精製用試薬キットまたは検出用試薬キットなどからなる生体物質抽出用液として調製しておくのが望ましい。磁性担体を分散させる分散媒としては、とくに制限はない。たとえば、核酸の精製には、カオトロピック物質、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、トリス塩酸などの緩衝液が、また蛋白質の精製には、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、トリス塩酸、PIPES、ホウ酸などの緩衝液が、それぞれ好ましく用いられる。
生体物質抽出用液の調製に際し、磁性担体は、分散液中の濃度が0.02〜1.0g/mlとなるように、添加するのが望ましい。0.02g/ml未満では、生体物質を多く保持させることができず、集磁性も悪くなる傾向にある。また、1.0g/mlを超えると、分散液の分散性も保存安定性も悪くなる傾向にある。

また、生体物質を含有する生物試料の水溶液に対する磁性担体の混合割合としては、磁性担体と生物試料の水溶液との体積比が通常1:100〜1:10となるような割合とするのが望ましい。
(ロ)の工程では、上記(イ)の工程で磁性担体と結合させた生体物質を、生物試料中から磁性担体ごと単離する。この単離は、遠心分離やフィルター分離によって行ってもよいが、操作が容易でかつ短時間で特異的な単離が可能であり、また精製装置全体の小型化や連続的な処理、自動化処理が容易であることから、磁場、すなわち磁石を使用して行うのが望ましい。磁石としては、たとえば、磁束密度が0.3T(3,000ガウス)程度の磁石が好適に用いられる。具体的には、上記(イ)の工程を適宜のチューブ中で行い、磁性担体と生体物質との結合後、チューブの側壁に磁石を近づけて生体物質が結合した磁性担体をチューブ側壁近傍に集め、この状態でチューブ内から残りの液を排出することにより、磁性体を単離すればよい。
(ハ)−aの工程では、上述のようにして生物試料より単離した生体物質を、磁性担体より分離する。この工程では、たとえば、生体物質を溶離させうる溶出用液を、(ロ)の工程後のチューブ内に注入し、生体物質を磁性担体より溶離させる。その後、磁性担体を再び磁石で捕集して、チューブ内から除去することにより、生体物質を磁性担体より分離させる。また、(ハ)−bの工程では、上述のように生物試料より単離した生体物質を、この生体物質が核酸の場合は必要により増幅させたのち、検出する。もちろん、この検出工程を、上述の分離工程を行ったのちに、実施してもよい。
生体物質を結合した磁性担体から生体物質を溶離する工程は、たとえば、生体物質が核酸である場合は、核酸が結合した磁性担体を約70%エタノールにて数回洗浄したのち、磁性担体を乾燥し、その後、減菌水やTE緩衝液などの低イオン濃度の溶液を添加して、磁性担体に結合した核酸を低イオン濃度の溶液に溶離させる。生体物質が蛋白質である場合は、蛋白質が結合した磁性担体をリン酸緩衝液やトリス塩酸緩衝液などで数回洗浄したのち、蛋白質のリガンドを含む緩衝液を添加して、溶離させる。
本発明においては、上記した生体物質の抽出および/または精製方法、さらには検出方法において、磁性担体として上記本発明の磁性担体を用いることにより、それぞれ、磁性担体の色調による上記用途の識別化方法を提供することができる。

最後に、本発明の生体物質結合用磁性担体について、その特徴点などを箇条書きにすると、下記(1)〜(11)のとおりである。
(1)平均粒子サイズが0.02〜10μmで、保磁力が2.39〜23.88kA/m(30〜300エルステッド)、飽和磁化が0.5〜40A・m2 /kg(0.5〜40emu/g)の範囲にある赤色または赤茶色の色調を有する酸化鉄粒子からなる生体物質結合用磁性担体であって、

(2)上記の酸化鉄粒子は、ガンマヘマタイト(γ−Fe2 3 )相とアルファヘマタイト(α−Fe2 3 )相が混在した酸化鉄またはマグネタイト(Fe3 4 )相とアルファヘマタイト相が混在した酸化鉄からなり、

(3)この酸化鉄粒子は、目的に応じて無機化合物を被着形成するのが好ましく、

(4)無機酸化物としてはシリカが好ましく

(5)また、この酸化鉄粒子に各種の顔料を添加してから、シリカなどの無機化合物で被覆すると、各種の色調を有するものとなる。

(6)また、この酸化鉄粒子は、目的に応じて有機化合物を結合させるのが好ましく、

(7)有機化合物としては、グルタルアルデヒド、アルブミン、カルボジイミド、ストレプトアビジン、ビオチン、官能基を有するシランカップリング剤、官能基を有する有機ポリマーの中から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましく、

(8)上記のシランカップリング剤や有機ポリマーにおける官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、メルカプト基の中から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
(9)また、有機化合物には糖質層が含まれ、この糖質層を形成する糖質がグルコースを単位とするオリゴ糖または多糖であるのが好ましく、

(10)糖質層を形成する糖質がアミロースを主成分とする多糖であるのが好ましい。

(11)さらに、上記の酸化鉄粒子は、無機化合物を被着形成したのち、この上に有機化合物を結合させたものであるのが好ましい。
以下に、実施例を記載して、本発明をより具体的に説明する。
ただし、本発明は、以下の実施例にのみ限定されるものではない。
<酸化鉄粒子の製造>
100gの硫酸第一鉄(FeSO4 ・7H2 O)を1,000ccの純水に溶解した。この硫酸第一鉄と等倍モルになるように、28.8gの水酸化ナトリウムを500ccの純水に溶解した。つぎに、硫酸第一鉄水溶液を攪拌しながら、1時間かけて水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、水酸化第一鉄の沈殿物を生成させた。滴下終了後、攪拌しながら、水酸化第一鉄の沈殿物を含む懸濁液の温度を85℃まで昇温した。懸濁液の温度が85℃に達したのち、200リットル/時間の速度で、エアーポンプを使用して空気を吹き込みながら、8時間酸化して、マグネタイト粒子を生成した。

このマグネタイト粒子はほぼ球形であり、平均粒子サイズは約0.28μmであった。なお、マグネタイト粒子の粒子サイズは、透過型電子顕微鏡写真上、約300個の粒子サイズを測定し、その平均粒子サイズから求めた。
つぎに、上記の方法で得たマグネタイト粒子10gをルツボに入れ、空気中400℃で2時間加熱したのち、500℃で3時間加熱処理を施して、赤色の色調を有する酸化鉄粒子を製造した。

この酸化鉄粒子は、平均粒子サイズが0.28μmのほぼ球形であり、保磁力は12.74kA/m (160エルステッド)、飽和磁化は27.0A・m2 /kg(27.0emu/g)であり、赤色の色調を有していた。また、この酸化鉄粒子は、粉末X線回折により、ガンマヘマタイト(γ−Fe2 3 )相とアルファヘマタイト(α−Fe2 3 )相が混在した酸化鉄であることがわかった。
<酸化鉄粒子へのシリカ被覆処理(I)>
実施例1で得た酸化鉄粒子10gに純水を200g加え、分散させた。この分散液に、2gの珪酸ナトリウムを溶解した。上記珪酸ナトリウムは、溶解状態ではアルカリ性であるが、中和して中性付近になると、シリカとして析出する。そこで、この珪酸ナトリウム溶解酸化鉄粒子分散液を攪拌しながら、約1時間かけて希塩酸を滴下することにより、中性付近まで中和した。滴下終了後、さらに1時間、攪拌を継続した。この工程において、個々の酸化鉄粒子の表面近傍にシリカを被覆形成した。
つぎに、攪拌を停止して自然沈降させた。上澄み液を除去し、水洗したのち、ろ過し、60℃で4時間乾燥して、シリカを被覆形成した酸化鉄粒子を得た。

このシリカ被覆酸化鉄粒子は、平均粒子サイズが0.35μmの球状ないし楕円状で、保磁力は12.34kA/m(155エルステッド)、飽和磁化は22.5A・m2 /kg(22.5emu/g)であり、赤色の色調を有していた。走査電子顕微鏡写真から、個々の酸化鉄粒子の表面にシリカが被覆形成していることが認められた。また、この酸化鉄粒子は、粉末X線回折により、ガンマヘマタイト(γ−Fe2 3 )相とアルファヘマタイト(α−Fe2 3 )相が混在した酸化鉄であることがわかった。
このようにして得たシリカ被覆酸化鉄粒子を使用して、以下の方法により、核酸の結合および溶離性を調べた。

<核酸の結合および溶離処理>
シリカ被覆酸化鉄粒子を、0.2mg/mlになるように滅菌水に分散させた。核酸を単離するための生物試料としては、大腸菌〔Escherichia coil JM109(東洋紡績,宝酒造,インビトロジェンなどより販売されている)〕を3ml、TB培地/試験管にて37℃,20時間培養した菌体を用いた。

核酸抽出用溶液としては、カオトロピック物質を含む緩衝液としてバッファーA〔7Mグアニジン塩酸塩(ナカライテスク社)、50mM Tris−HCl(シグマ社)、pH7.5〕を用いた。洗浄液も、カオトロピック物質を含む緩衝液としてバッファーA〔7Mグアニジン塩酸塩(ナカライテスク社)、50mM Tris−HCl(シグマ社)、pH7.5〕を使用した。また、高濃度の塩を除去するために、70%エタノール溶液およびアセトン溶液を使用し、シリカ被覆酸化鉄粒子に結合した核酸を回収するための溶離液として滅菌水を使用した。
具体的な操作としては、
(1)菌体濁度(OD660)を測定し、1.5cc用エッペンドルフチューブにてOD660;1.0の菌体を遠心分離により調製した。つぎに、核酸抽出用溶液1,000μlを注入し、混合した。

(2)その後、シリカ被覆酸化鉄粒子の分散液20μlを加えた。

(3)約2分毎に混合しながら、室温で10分間放置した。

(4)1.5cc用エッペンドルフチューブの形状に合った磁石スタンドに、上記チューブを設置することにより、シリカ被覆酸化鉄粒子を磁石側のチューブ側に集めた。

(5)フィルターチップで溶液を吸引し、排出した。

(6)チューブを磁石スタンドより取りはずし、グアニジン塩酸塩を含む洗浄液を1cc注入した。

(7)シリカ被覆酸化鉄粒子と十分混合したのち、再度、磁石スタンドに設置し、上記と同様にして溶液を廃棄した。

(8)洗浄操作を再度繰り返した。

(9)1ccの70%エタノールで上記と同様の方法により、核酸を結合したシリカ被覆酸化鉄粒子を洗浄し、高濃度のグアニジン塩酸塩を取り除いた。

(10)再度、1ccの70%エタノールと、1ccのアセトンで洗浄した。

(11)約56℃のヒートブロックに上記チューブを設置し、約10分間放置してチューブ内、およびシリカ被覆酸化鉄粒子のアセトンを完全に蒸発させて除去した。
<核酸の回収>
上記の方法で核酸を結合させたシリカ被覆酸化鉄粒子に、100μlの滅菌水を加え、約56℃のヒートブロックに上記チューブを設置し、2分毎に混合操作しながら10分間放置した。つぎに、磁石スタンドに設置し、回収する溶液をフィルターチップで吸引し、別の新しいチューブに移した。通常、回収量は70μl程度である。保存する場合は、−70℃で行った。
<核酸の回収量測定>
上記の方法で回収された核酸は、吸光度計により、その吸光度(OD 260nm)を測定して、核酸の濃度を求めた。その結果、従来の酸化鉄磁性粒子にシリカを被覆形成した磁性担体と遜色のない回収量であることが確認された。

従来、酸化鉄粒子に各種の無機化合物や有機化合物を被膜形成した磁性担体が各種用途に使用されているが、この磁性担体の色調は、酸化鉄の色調である黒色または黒茶色になり、色調による磁性担体の機能の識別は不可能であった。

これに対して、上記本発明の酸化鉄粒子では、従来の酸化鉄粒子を用いた磁性担体とは全く異なり、赤色の色調を有するため、色調による機能の識別化が可能になり、本実施例のようにシリカを被覆形成したものでは、核酸の抽出精製用としての機能を有することを色調により識別できるようになる。
<酸化鉄粒子へのシリカ被覆処理(II)>
実施例1で得た酸化鉄粒子10gを、純水130g中に分散させた。この分散液中に、21.9gのケイ酸ナトリウムを溶解した。これとは別に、470ccのヘキサンに、界面活性剤として7.0gのソルビタンモノラウレートを溶解し、これと上記のケイ酸ナトリウムを溶解した酸化鉄粒子の分散液と混合した。この混合液をホモミキサーを使用して、10分間攪拌分散し、エマルジョン分散液を作製した。

つぎに、300gの硫酸アンモニウムを1,500ccの純水に溶解した。この硫酸アンニウム溶解液を攪拌しながら、上記のエマルジョン分散液を、約30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間攪拌を行った。この硫酸アンモニウムによる中和反応により、酸化鉄粒子を包含するようにシリカが析出して、被膜が形成された。
このシリカ被覆酸化鉄粒子は、平均粒子サイズが約6μmの球状で、保磁力は13.53kA/m(170エルステッド)、飽和磁化は10.6A・m2 /kg(10.6emu/g)であり、赤色の色調を有していた。走査電子顕微鏡写真から、酸化鉄粒子の集合体がシリカで被覆された構造を有していることが認められた。また、この酸化鉄粒子は、粉末X線回折により、ガンマヘマタイト(γ−Fe2 3 )相とアルファヘマタイト(α−Fe2 3 )相が混在した酸化鉄であることがわかった。

このシリカ被覆酸化鉄粒子についても、実施例2と同様の方法により、核酸の結合および溶離性を調べた。その結果、従来の酸化鉄粒子を用いた磁性担体と遜色のない性能を示すものであることが確認された。
<酸化鉄粒子の色調調整およびこの粒子へのシリカ被覆処理(I)>
実施例1で得た酸化鉄粒子は、赤色の色調を有するが、この色調をベースにして、各種の色調の磁性担体を得ることができる。従来の酸化鉄粒子を用いた磁性担体では、基本となる色調が黒色または黒茶色であるため、顔料などで処理しても色調はほとんど変化しない。本実施例では、青色顔料であるコバルト−アルミニウム系複合酸化物顔料を用いて、青色の色調を有する磁性担体を得る例について、説明する。
実施例1で得た酸化鉄粒子5gを、純水130g中に分散させた。この分散液中に、21.9gのケイ酸ナトリウムを溶解した。さらにこの分散液に、ダイピロキサイドブルー〔大日精化(株)製〕を5g添加し、分散させた。この顔料とケイ酸ナトリウムを含む酸化鉄粒子分散液とは別に、470ccのヘキサンに、界面活性剤として7.0gのソルビタンモノラウレートを溶解し、これと上記分散液とを混合した。この混合液をホモミキサーを使用して、10分間攪拌分散し、エマルジョン分散液を作製した。

つぎに、300gの硫酸アンモニウムを1,500ccの純水に溶解した。この硫酸アンニウム溶解液を攪拌しながら、上記のエマルジョン分散液を、約30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間攪拌を行った。この硫酸アンモニウムによる中和反応により、青色顔料および酸化鉄粒子を包含するようにシリカが析出して、被膜が形成された。このシリカ被覆酸化鉄粒子を、上澄液が透明になるまで、十分に水洗した。
このシリカ被覆酸化鉄粒子は、平均粒子サイズが約5μmの球状で、保磁力は11.14kA/m(140エルステッド)、飽和磁化は6.8A・m2 /kg(6.8emu/g)であり、やや赤色を帯びた青色に近い色調を有していた。

また、走査電子顕微鏡写真から、青色顔料および酸化鉄粒子の集合体がシリカで被覆された構造を有していることが認められた。さらに、この酸化鉄粒子は、粉末X線回折により、ガンマヘマタイト(γ−Fe2 3 )相とアルファヘマタイト(α−Fe2 3 )相が混在した酸化鉄であることがわかった。

このようにやや赤色を帯びた青色の色調を有するシリカ被覆酸化鉄粒子についても、実施例2と同様の方法により、核酸の核酸の結合および溶離性を調べてみた。その結果、従来の黒色または黒茶色の色調を有する酸化鉄粒子を使用した磁性担体と遜色のない性能を示すものであることが確認された。
<酸化鉄粒子の色調調整およびこの粒子へのシリカ被覆処理(II)>
酸化鉄粒子の色調調整の他の例として、白色顔料であるTiO2 粒子を用い、ほぼ白色の色調を有する磁性担体を得る例について、説明する。

すなわち、実施例4において、実施例1で得た酸化鉄粒子の量を5gから4gに、ダイピロキサイドブルー5gをTiO2 粒子6gに、それぞれ変更した以外は、実施例4と同様にして、シリカ被覆酸化鉄粒子を得た。
このシリカ被覆酸化鉄粒子は、平均粒子サイズが約7μmの球状で、保磁力は10.35kA/m(130エルステッド)、飽和磁化は6.5A・m2 /kg(6.5emu/g)であり、やや赤色を帯びた白色に近い色調を有していた。

また、走査電子顕微鏡写真から、TiO2 粒子および酸化鉄粒子の集合体がシリカで被覆された構造を有していることが認められた。また、この酸化鉄粒子は、粉末X線回折により、ガンマヘマタイト(γ−Fe2 3 )相とアルファヘマタイト(α−Fe2 3 )相が混在した酸化鉄であることがわかった。

このようにやや赤色を帯びた白色の色調を有するシリカ被覆酸化鉄粒子についても、実施例2と同様の方法により、核酸の結合および溶離性を調べてみた。その結果、従来の黒色または黒茶色の色調を有する酸化鉄粒子を用いた磁性担体と遜色のない性能を示すものであることが確認された。
なお、上記の実施例4および実施例5では、青色顔料や白色顔料を用いることにより、青色や白色の色調を有する磁性担体を製造する方法について説明したが、このほかにも、各種の色調の顔料を被着または添加することにより、各種の色調を有する磁性担体を得ることができることは言うまでもない。
<酸化鉄粒子への有機化合物の被着処理(I)>
つぎに、本発明の酸化鉄粒子への有機化合物の被着処理の例として、糖質であるアミローを被着処理する例について、説明する。

実施例1で得た酸化鉄粒子10gを50ccの純水中に分散させた。この分散液中に、アミロースを0.2g添加して、30分間攪拌したのち、攪拌しながら、分散液を90℃まで加熱した。さらに90℃で1時間保持したのち、攪拌しながら室温まで徐冷した。アミロースは、加熱すると溶解しやすくなり、冷却すると溶解しにくくなるため、この冷却過程において、アミロースが酸化鉄粒子の表面に析出した。
このアミロース被着酸化鉄粒子は、平均粒子サイズが0.32μmの球状ないし楕円状で、保磁力は11.14kA/m(140エルステッド)、飽和磁化は25.9A・m2 /kg(25.9emu/g)であり、赤色の色調を有していた。また、この酸化鉄粒子は、粉末X線回折により、ガンマヘマタイト(γ−Fe2 3 )相とアルファヘマタイト(α−Fe2 3 )相が混在した酸化鉄であることがわかった。

このアミロース被着酸化鉄粒子を用いて、以下の手順により、生物試料中から蛋白質を抽出・精製した。
蛋白質を単離するための生物試料としては、プラスミドpMALc2E〔β−ガラトシダーゼα鎖のアミノ末端にマルトース結合タンパク質が結合している融合タンパク質MBP−LacZαを発現するプラスミド(New England Biolab社より販売されている)〕を保持する大腸菌(Escherichia coil JM109(東洋紡、宝酒造、インビトロジェンなどより販売されている)〕を50mL、TB培地/500mLフラスコにて37℃、20時間培養した菌体を用いた。

菌体を菌体濁度(OD660nm)が20となるように50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.5)に懸濁し、超音波にて9分間間欠破砕後、上澄みを遠心分離して調整し、これを蛋白質精製用の生物試料として用いた。
上記のアミロース被着酸化鉄粒子を0.2g/mlになるように50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.5)中に分散させた。このアミロース被着酸化鉄粒子分散液100μlを生物試料1mlと混合して、混合液とした。固液分離後、洗浄液(50mMリン酸カリウムバッファー、pH7.5)にて洗浄し、アミロース被着酸化鉄粒子に結合した蛋白質を回収するための溶離液として、10mMマルトースを含む50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.5)を加え、約5分間混合した。つぎに、実施例2の核酸の抽出・精製において説明した方法と同様に、磁石スタンドに設置し、回収する溶液をフィルターチップで吸引し、別の新しいチューブに移した。回収量は40μlとした。
この方法により回収した蛋白質について、吸光度計により吸光度(OD:280nm)を測定して、濃度を求めた。蛋白質の回収量は、上記の濃度と回収容積の積から求めた。その結果、本実施例のアミロース被着酸化鉄粒子が蛋白質を効率良く抽出・精製できる磁性担体であることが確認された。

本実施例のように、酸化鉄粒子に糖質であるアミロースを被着したものは、赤色の色調を有するため、この赤色の色調により、この磁性担体が蛋白質の抽出精製用としての機能を有することを識別することができる。
<酸化鉄粒子への有機化合物の被着処理(II)>
酸化鉄粒子への有機化合物の被着処理の他の例として、官能基としてアミノ基を有するシランカップリング剤で処理する例について、説明する。

実施例2で得たシリカ被覆処理酸化鉄粒子10gを、純水25g中に分散した。この分散液を撹拌しながら、末端にアミノ基を有するN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.2gを添加した。添加後、さらに3時間撹拌した。水洗後、ろ過し、110℃で4時間乾燥して、アミノ基を導入した酸化鉄粒子を得た。
このアミノ基を導入したシリカ被覆処理酸化鉄粒子は、酵素、抗体、補酵素などの機能を持つ蛋白質、糖蛋白質、糖類などの生理活性物質を固定化するための磁性担体として適しており、中でも、酵素を固定化するための磁性担体として最適である。

また、本実施例では、官能基としてシランカップリング剤が有するアミノ基を導入する例を示したが、シランカップリング剤の選択により、生理活性物質に対して親和性のあるエポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、水酸基、ビニル基、メタクリル基などの各種の官能基を導入することも可能である。
このように、シリカ被覆処理酸化鉄粒子では、シランカップリング剤のシラノール基と粒子表面のシリカとの間に化学結合を形成し、上記官能基が磁性粒子の外側に向くように効率良く官能基を導入することができる。
<酸化鉄粒子への蛍光色素処理>
磁性担体が赤色を有することによる物理的現象の利点のひとつとして、蛍光体でラベル化したときの高い発光強度が得られる例について、説明する。

実施例6で得たアミノ基を導入したシリカ被覆処理酸化鉄粒子を、蛍光ラベル化剤で処理した。ラベル化剤としては、同仁化学社製のNBD−Fを使用し、このラベル化剤に添付されている調整方法にしたがって、調整した。すなわち、アミノ基を導入したシリカ被覆処理酸化鉄粒子を、EDTA−2Naを含むホウ酸緩衝液に分散させ、この分散液の一部にNBD−F溶液を添加し、攪拌した。加熱放置したのち、冷却することにより、アミノ基導入シリカ被覆処理酸化鉄粒子を蛍光ラベルでラベル化した。

このようにしてラベル化した酸化鉄粒子を分散液から取り出し、乾燥したのち、一定重量の粒子に470nmの波長で励起し、530nmの波長での蛍光強度を分光光度計の積分球を使って測定した。
比較例1
実施例2において、本発明の酸化鉄粒子に代えて、平均粒子サイズが0.28μmの球状マグネタイト粒子を使用した。なお、このマグネタイト粒子は、実施例1と同様の方法により、製造したものである。

このマグネタイト粒子に、実施例2と同様の方法でシリカを被覆した。つぎに、実施例7と同様の方法でシランカップリング剤を用いてアミノ基を導入した。このアミノ基導入シリカ被覆マグネタイト粒子の色調は、黒色であった。

ついで、このアミノ基導入シリカ被覆マグネタイト粒子に、実施例8と同様の方法で、蛍光試薬でラベル化し、励起蛍光強度を測定した。
上記の実施例8と比較例1の測定結果は、実施例8のアミノ基導入シリカ被覆処理酸化鉄粒子の蛍光強度が、比較例1のアミノ基導入シリカ被覆マグネタイト粒子の蛍光強度の約2.5倍となった。これは、実施例8の磁性担体が赤色の色調を有するため、蛍光試薬から発した蛍光が、この試薬を固定している粒子に吸収されにくく、その結果、効率良く散乱するためである。これに対し、比較例1のマグネタイト粒子を用いた磁性担体では、色調が黒色であるため、ラベル化剤からの蛍光が粒子に吸収されやすく、蛍光強度が低くなったものと思われる。

このように、磁性担体を黒色または黒茶色以外の色調にすることにより、色調による磁性担体の機能の識別化だけでなく、発光強度も大きくなり、高感度で発光分析できるという利点が得られるものである。

Claims (19)

  1. 平均粒子サイズが0.02〜10μmで、保磁力が2.39〜23.88kA/m(30〜300エルステッド)、飽和磁化が0.5〜40A・m2 /kg(0.5〜40emu/g)の範囲にある赤色または赤茶色の色調を有する酸化鉄粒子からなることを特徴とする生体物質結合用磁性担体。
  2. 酸化鉄粒子が、ガンマヘマタイト(γ−Fe2 3 )相とアルファヘマタイト(α−Fe2 3 )相が混在した酸化鉄またはマグネタイト(Fe3 4 )相とアルファヘマタイト相が混在した酸化鉄からなる請求項1に記載の生体物質結合用磁性担体。
  3. 酸化鉄粒子に無機化合物を被着形成した請求項1または2に記載の生体物質結合用磁性担体。
  4. 無機化合物がシリカである請求項3に記載の生体物質結合用磁性担体。
  5. 酸化鉄粒子に有機化合物を結合させた請求項1または2に記載の生体物質結合用磁性担体。
  6. 有機化合物が、グルタルアルデヒド、アルブミン、カルボジイミド、ストレプトアビジン、ビオチン、官能基を有するシランカップリング剤、官能基を有する有機ポリマーの中から選ばれた少なくとも1種である請求項5に記載の生体物質結合用磁性担体。
  7. 官能基を有するシランカップリング剤が、官能基としてカルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、メルカプト基の中から選ばれた少なくとも1種を有する請求項6に記載の生体物質結合用磁性担体。
  8. 官能基を有する有機ポリマーが、官能基としてカルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、メルカプト基の中から選ばれた少なくとも1種を有する請求項6に記載の生体物質結合用磁性担体。
  9. 有機化合物が糖質層である請求項5に記載の生体物質結合用磁性担体。
  10. 糖質層を形成する糖質が、グルコースを単位とするオリゴ糖または多糖である請求項9記載の生体物質結合用磁性担体。
  11. 糖質層を形成する糖質が、アミロースを主成分とする多糖である請求項9に記載の生体質結合用磁性担体。
  12. 酸化鉄粒子に無機化合物を被着形成し、この上にグルタルアルデヒド、アルブミン、カルボジイミド、ストレプトアビジン、ビオチン、官能基を有するシランカップリング剤、官能基を有する有機ポリマーの中から選ばれた少なくとも1種の有機化合物を結合させた請求項1または2に記載の生体物質結合用磁性担体。
  13. 無機化合物がシリカであり、この上に結合させた有機化合物が官能基としてアミノ基を有するシランカップリング剤である請求項12に記載の生体物質結合用磁性担体。
  14. 下記の(イ)〜(ハ)−aの工程を含む生体物質の抽出および/または精製方法において、磁性担体として請求項1〜13のいずれかに記載の生体物質結合用磁性担体を用いることを特徴とする生体物質の抽出・精製方法。
    (イ) 生体物質を含有する試料と磁性担体とを混合して、生体物質を磁性担体に結合 させる工程
    (ロ) 磁性担体に結合させた生体物質を、試料から単離させる工程
    (ハ)−a 試料から単離された生体物質を、磁性担体から分離する工程
  15. 請求項14に記載の生体物質の抽出および/または精製方法において、磁性担体として請求項1〜13のいずれかに記載の生体物質結合用磁性担体を用いることを特徴とする磁性担体の色調による用途の識別化方法。
  16. 下記の(イ)〜(ハ)−bの工程を含む生体物質の検出方法において、磁性担体として請求項1〜13のいずれかに記載の生体物質結合用磁性担体を用いることを特徴とする生体物質の検出方法。
    (イ) 生体物質を含有する試料と磁性担体とを混合して、生体物質を磁性担体に結合 させる工程
    (ロ) 磁性担体に結合させた生体物質を、試料から単離させる工程
    (ハ)−a 試料から単離された生体物質を、この生体物質が核酸の場合は必要により 増幅させたのち、検出する工程
  17. 請求項16に記載の生体物質の検出方法において、磁性担体として請求項1〜13のいずれかに記載の生体物質結合用磁性担体を用いることを特徴とする磁性担体の色調による用途の識別化方法。
  18. 請求項1〜13のいずれかに記載の生体物質結合用磁性担体を含む生体物質の抽出・精製用試薬キット。
  19. 請求項1〜13のいずれかに記載の生体物質結合用磁性担体を含む生体物質の検出用試薬キット。
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