JP4266836B2 - タイヤ成形用金型 - Google Patents
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図4(a)はタイヤ加硫用金型1をその閉止した状態で示す図である。図4(a)に示すように、この金型1は、固定された環状の下部サイドピース10と、上下動して金型1の閉止(キャビティ78を形成)、開放を可能にする、環状の上部サイドピース20と、放射方向に移動可能な複数のディスタンスピース30とにより構成されている。複数のディスタンスピース30は周方向に組み合わさって環状をなすもので、トレッドの中央に深い溝を形成するための型である。
図4(b)は上部サイドピース20が上昇し、金型を開放している状態を示したものである。上部サイドピース20が上昇するとディスタンスピース30のカムフォロア面35は金型の中心軸から遠ざかることができるので、ディスタンスピース30は、下部サイドピース10との間に働く付勢手段40により放射方向に押し出され、ガイドの案内でスライドする。
図5はディスタンスピース30の下部サイドピース10への取り付け状態を説明する平面図である。ディスタンスピース30は環状物を八等分した弧の形状をなしている。上部サイドピース20のカム面と当接するカムフォア面35はこのディスタンスピース30の中央部の区間Lに設けたフラット面により構成される。また、ディスタンスピース30は、各片に上記の閉止、開放動作に必要な手段として二個の放射方向移動ガイド部50と二個の付勢手段40を個別に設けている。
図7は図5のV−V’ 矢視を金型閉止時の状態で示した断面図である。図7において、ディスタンスピース30に設けた段付長穴52が、下部サイドピース10に設けたヘッド付ピン51に滑合して設けられていて、金型閉止時は、ヘッド付ピン51は、段付長穴52の最も外側の位置で係合する。ディスタンスピース30の金型の中心軸に対する接近、離隔に際しては、これらの滑合が、もう一つの放射方向のガイド手段を構成している。また、長穴の段付面53はヘッド付ピン51のヘッドの下面と係合してディスタンスピース30の上下方向の動きを拘束する。
上記のように構成した複数のディスタンスピースを分割金型の1つとして用い、開放時に放射方向の引き抜きを行う、センタースライド式を採用することにより、二つ割モールド金型法によってタイヤセンター部に周方向溝を成形する場合に生じることがあったブロック欠けを防止することを可能にしている。
上記したディスタンスピースを広幅にした場合に起きるカジリは、ディスタンスピースが広くなることにより、金型閉止時に上型(上部サイドピース)から閉まる力を受けるときに、前に倒れようとするモーメントが大きくなることが原因であり、上記特許文献1に示された構成をそのまま広幅に適用しても、この前倒れのモーメントは抑制できない、ということを示している。
本発明は、トレッドの中央部に深くて細い溝を形成する場合に適応し得る上記した従来のセンタースライド式を採用する分割金型を広幅としたときにカジリが生じるという問題点に鑑み、これを解決するためになされたもので、金型が倒れを起こすモーメントを抑制することによりカジリの原因を発生させないようにして、センタースライド式を採用する分割金型におけるディスタンスピースの広幅化を実現することを目的とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載されたタイヤ成型用金型において、前記ディスタンスピースが前記上型サイドピースの下降に伴い金型の放射方向内方に移動する時に、前記ディスタンスピースの内端部エッジが下型サイドピースに触れないように、下型サイドピースの前記ディスタンスピースの内端部エッジに対応する面を逃げ面としたことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載されたタイヤ成型用金型において、前記下型サイドピースの前記ディスタンスピースとの摺動面に摺動性を高める合成樹脂材を設けたことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1に記載されたタイヤ成形用金型において、前記スロットは、その内部スペース中央部に前記付勢手段を、またその両側にガイド部材を配置したことを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1又は4に記載されたタイヤ成形用金型において、前記付勢手段は、下型サイドピースに固定すると共にディスタンスピースに挿通したガイドピンと、下型サイドピースとディスタンスピース間に働くスプリングを有することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1、4、5のいずれかに記載されたタイヤ成形用金型において、前記ガイド部材は、下型サイドピースに固定したボルトと、これに係合するディスタンスピース側に設けた放射方向の案内面を持つガイド部を有することを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1、4〜6のいずれかに記載されたタイヤ成形用金型において、前記スロットは、各ディスタンスピースに対して2箇所対称性を持って設けたことを特徴とする。
本発明に係わるタイヤ成形用金型は、センタースライド式の分割金型構造を備えるという点で上記従来例(特許文献1に関する上記説明、参照)と基本的に変わりがない。従って、この実施形態においても両サイドピース(トレッド側部に対する金型)とディスタンスピース(トレッド中央部に対する金型)の3つのピースによりなる分割金型構造をもつ。上型サイドピースには動力が与えられ、閉止、開放状態の間で移動可能な構成である。ディスタンスピースは固定部(下型サイドピース)との間に働く開放用ばねにより付勢され、このばねの弾力によりディスタンスピースを上型サイドピースにカムフォロア面で接触させてディスタンスピースを上型サイドピースに従動して閉止、開放(引き抜き動作)させるという方式のものである。
図1は、この実施形態のタイヤ成形用金型の概略構成を示す図である。同図はタイヤ成形用金型100をその閉止した状態で示す図である。この金型100は、固定された環状の下型サイドピース110と、上下動(図中、矢示)する環状の上型サイドピース120と、放射方向に移動(図中、矢示)可能な複数のディスタンスピース130とにより構成されている。
図1に示す閉止状態、即ちキャビティ178を形成する状態から上型サイドピース120が上昇すると、ディスタンスピース130のカムフォロア面134が係合状態を解かれて付勢手段140によりディスタンスピース130が放射方向に押し出され、金型の中心軸から遠ざかることができ、開放状態に移行する。
そこで、この実施形態では、カジリの発生をなくための第1の解決方法として、発生するモーメントを抑制する方法をとる。このために、まずディスタンスピース130をスライドさせるため必要なガイド手段や付勢手段を組み込むために設けるスロットをできるだけ小さくする。このようにして、スロットを設けたために減る受圧面積(ディスタンスピース130を受ける下型サイドピース110の面積)をできるだけ小さくし、発生するモーメントが大きくなるのを抑制する。
また、力が作用する点を一致させることによってもモーメントを抑制できるので、ディスタンスピース130に加わる力が作用するガイド手段と開放時に引き抜き力を与える付勢手段を同じ場所に配置する。
本実施形態では、この条件を満たす構成として、Tスロット構造を採用する。Tスロット構造は、ガイド手段と付勢手段を一緒に組み込むことが可能なスロットを実現するものである。
図2は、Tスロット構造を採用したディスタンスピースの一例を示すものである。また、図3は、図2の矢視I-I'を示す図である。
図2は、ディスタンスピース130の金型内面を正面から見た図で、トレッド中央のパターン部132に深い溝を形成するための型を持っている。なお、図2中、Tスロット160の部分は断面図として示している。また、図3についてもTスロットの部分を断面図として示しており、図にはスロット内に組み込まれた付勢手段140の部分を示している。
Tスロット160は下型サイドピース110側のディスタンスピース130に設ける。ディスタンスピース130は、その摺動面135で下型サイドピース110上面に接してスライド(図2の面に垂直、図3の面に平行に摺動)するが、その摺動面の一部に摺動ストロークの長さでTスロット160を開口し、開口部以外の面で下型サイドピース110に摺接し、そこがディスタンスピース130を支える支持面、即ちディスタンスピース130に加わる力を受ける受圧面となる。
したがって、この面積を大きくすることにより、モーメントが大きくなるのを抑制することができ、ここに、Tスロット構造を採用した理由がある。
各Tスロット160のT型のスペースに組み込む要素の1つは、ディスタンスピース130のガイド手段であり、ガイド手段は下型サイドピース110に固設した六角穴付きボルト151とこれに係合するディスタンスピース側に設けた放射方向の案内面(段部)を持つガイド部153よりなる。図示の例では、Tスロット160内の両側にそれぞれ立てた六角穴付きボルト151の片側でガイド部153の案内面(段部)に該ボルトのヘッド上下面と軸側面が係合する形態をとる。この機構がガイド及びストッパーとして働き、ディスタンスピース130を放射方向にガイドしながら移動させ、所定位置で停止させる役目を果たすことにより、ディスタンスピース130の閉止、開放(引き抜き)時のスライド動作を確保する。
本例では図3に示すように、付勢手段140を組み込んだ部材143を下型サイドピース110上に固設するという方法を採用するが、この場合、部材143に組み込まれた付勢手段140がTスロット160内で所定位置に配設されるように位置決めをする必要がある。部材143には、その基部にガイドピン142を固定し、基部から延長する筒部をスプリング141のケースとしている。また、ガイドピン142にはディスタンスピース130側のリング部133を挿通する。リング部133には、開放(引き抜き)方向に働くスプリング141の端部を取り付け、スプリング力によりリング部133をストッパとして働くガイドピン142のヘッド部に向けて付勢する。なお、部材143においてリング部133の動作範囲にはスペースがあるが、それを除く部分はディスタンスピース130と接するので、その面は摺動面となる。
付勢手段140の動作は、図3に示す開放状態、即ちスプリング141により付勢されたリング部133がガイドピン142のヘッド部に当接した状態から、上型サイドピース120が下降すると、ディスタンスピース130のカムフォロア面137の係合により上型サイドピース120からの動力を受けスプリング141の力に抗してディスタンスピース130が金型の中心軸に向けてスライドし、閉止状態に移行する。また、開放時には、上型サイドピース120が上昇し、上型サイドピース120からの動力が解除されると、開放用スプリング141の力により開放(引き抜き)方向に移動する。
この方法による対応を必要とするのは、次のような場合である。即ち、スライドするディスタンスピース130のモーメントを大きくしないためには、摺動性を高めることが必要である。そのために摺動部分に給油をすることが可能で有効な方法であり、下型サイドピース110上をスライドするディスタンスピースの摺動面135には、給油をすることができるので、この方法を用いる。しかし、タイヤと接触する可能性のある金型部分には、タイヤに少しでも油がつくと不良品となってしまうので、金型同士が接触する可能性があるディスタンスピース130の先端エッジ138と下型サイドピース110の側面115には給油をすることができない、という理由による。
したがって、閉止、開放(引き抜き)動作において、モーメントの影響によりディスタンスピース130の先端エッジ138がカジル可能性のある下型サイドピース110側面115に、図3に示すように、角度を付けて(テーパ状にして)逃げ面とすることにより、多少の前倒れが発生しても金型の金属同士がカジラないようにする。このようにすれば、タイヤと接触する可能性がある金型への給油を避けてもカジリが生じることがなく、タイヤへの油の付着も起きないので、不良品の発生を防ぐことができる。
そこで、ディスタンスピース130がスライドする下型サイドピース110の摺動面に、摺動性が高い材料を用いる。この場合、タイヤ加硫用の金型に用いる材料であるから、耐熱性も要求されることになり、摺動性が高くかつ耐熱性に優れた材料が適している。この樹脂をプレート材として金属摺動面に固定する。
摺動性が高い樹脂を用いる場合には、摺動性を高めるために行う給油をしなくても良いので、特に給油をするとタイヤへの油の付着の心配がある摺動部分に用いることが有効である。本実施形態においては、図3に示すように、Tスロット160を受ける下型サイドピース110側の部材143上面の摺動面に高摺動性樹脂プレート162を設ける例を示している。
以上のように、Tスロット構造を採用し、またカジリの発生をなくすことを可能にする上記した第2及び第3の方法に従う手段を組み合わせて用いることにより、広幅のディスタンスピース130において発生するモーメントを最小限に抑制し、カジリのない広幅センタースライド式の連続生産における耐久性を飛躍的に向上させることが可能になる。
連続生産の実験結果においてもカジリの発生がないことが確かめられており、また、広幅化の実現により、パターン制約がより少なくなるので、細くて深い溝を有したセンターブロックにおいて広く多様な種類のパターンの部分割モールドでの生産を可能にする。
120…上型サイドピース、 130…ディスタンスピース、
132…パターン部、 133…リング部、
134…カムフォロア面、 135…摺動面、
140…付勢手段、 141…開放用ばね、
142…ガイドピン、 151…六角穴付きボルト、
153…ガイド部、 160…Tスロット、
162…高摺動性樹脂プレート、 178…キャビティ。
Claims (7)
- タイヤを成形するための金型であって、それぞれ分割された複数のタイヤのトレッド部の外側領域を成形する上下型サイドピースと、両サイドピース間に配置されると共に前記上型サイドピースとカム係合し、前記上型サイドピースの上下動に伴い前記金型の放射方向に移動可能なトレッド部の中央領域を成形するディスタンスピースから成り、
前記ディスタンスピースの前記下型サイドピースとの摺動面に、前記ディスタンスピースの摺動ストロークの長さで開口するスロットを設け、前記スロット中に前記ディスタンスピースを放射方向外方に付勢する付勢手段と、前記ディスタンスピースを案内するガイド手段を配置したことを特徴とするタイヤ成形用金型。 - 請求項1に記載されたタイヤ成型用金型において、
前記ディスタンスピースが前記上型サイドピースの下降に伴い金型の放射方向内方に移動する時に、前記ディスタンスピースの内端部エッジが下型サイドピースに触れないように、下型サイドピースの前記ディスタンスピースの内端部エッジに対応する面を逃げ面としたことを特徴とするタイヤ成形用金型。 - 請求項1又は2に記載されたタイヤ成型用金型において、
前記下型サイドピースの前記ディスタンスピースとの摺動面に摺動性を高める合成樹脂材を設けたことを特徴とするタイヤ成形用金型。 - 請求項1に記載されたタイヤ成形用金型において、
前記スロットは、その内部スペース中央部に前記付勢手段を、またその両側にガイド部材を配置したことを特徴とするタイヤ成形金型。 - 請求項1又は4に記載されたタイヤ成形用金型において、
前記付勢手段は、下型サイドピースに固定すると共にディスタンスピースに挿通したガイドピンと、下型サイドピースとディスタンスピース間に働くスプリングを有することを特徴とするタイヤ成形用金型。 - 請求項1、4、5のいずれかに記載されたタイヤ成形用金型において、
前記ガイド部材は、下型サイドピースに固定したボルトと、これに係合するディスタンスピース側に設けた放射方向の案内面を持つガイド部を有することを特徴とするタイヤ成形用金型。 - 請求項1、4〜6のいずれかに記載されたタイヤ成形用金型において、
前記スロットは、各ディスタンスピースに対して2箇所対称性を持って設けたことを特徴とするタイヤ成形用金型。
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