JP4266054B2 - ポリマー電解質及びそれを用いた非水系電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水系電池、特にリチウムイオン電池、を形成するに適したポリマー電解質及び該電解質を含む非水系電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年電子技術の発展はめざましく、各種の機器が小型軽量化されてきている。この電子機器の小型軽量化と相まって、その電源となる電池の小型軽量化の要望も非常に大きくなってきている。少ない容積及び重量でより大きなエネルギーを得ることが出来る電池として、リチウムを用いた非水系二次電池が、主として携帯電話やパーソナルコンピュータ、ビデオカムコーダーなどの家庭で用いられる小型電子機器の電源として用いられてきた。このリチウム非水系二次電池の0.5mm程度の超薄型化などの形状自由度を高めることを目的に、ポリマー電解質電池の開発が活発に行われている。
【0003】
電解液を含まないポリマー電解質は、イオン伝導率が低く電池の放電容量が小さくなるなど電池への応用に要求される特性を満たしがたい。これに対し、電解液を含んだポリマーゲル電解質は、イオン伝導率が高いことから注目されている。このようなポリマー電解質として、米国特許5296318号明細書に、8重量%以上25重量%以下の6フッ化プロピレンを共重合したフッ化ビニリデン系共重合体を用いたポリマー電解質が報告されている。また、前記共重合体により多くの電解液を含浸する技術として、米国特許5456000号明細書に、前記共重合体と可塑剤を混合後、可塑剤を抽出し、非水系電解液を含浸する技術が開示されている。この技術によれば、非水系電解液を多く含浸することが可能であるが、非水系電解液を多く含浸した場合、ポリマー電解質の強度が低下し、超薄型化などの形状自由度が失われる問題点があった。また、この技術では、可塑剤抽出工程が必須であり、生産性に劣る問題がある。さらに、可塑剤を完全に抽出することは困難であり、ポリマー電解質中に残存した可塑剤が、それを用いて作製した電池の性能に悪影響を与えるという問題もあった。
【0004】
形状自由度の高いポリマー電解質電池を得るためには、イオン伝導率を高めるために多くの電解液を含有することが出来、かつ強度の強いポリマーゲル電解質が必須である。しかしながら、ゲルの強度は多くの電解液を含有すると低下し、ゲル強度と電解液の含有量を両立することが出来ず、形状自由度の高いポリマー電解質電池を得るための適したポリマーゲル電解質は知られていなかった。
【0005】
ゲルの強度を高めるためには、弾性率を高めることが重要と考えられる。ゲルの弾性率の支配因子に関しては、ポリマー濃度を高くすると高弾性率化すること(この場合、ポリマー電解質中の非水系電解液量が減るので実用的でない)以外は不明な点が多く、Rochas C.et al CarbohydratePolymers 12,255−266(1990)ではκ.carrageenanns ゲルで、ポリマーの分子量を高めても弾性率が変わらない事が報告されている。このように、ゲル強度を上げる一般的指導原理としては、ポリマー濃度を高くすること以外知られていないのが実情である。したがって、実用的な、非水系電解液を多く含浸することができ、かつ強度が優れたポリマー電解質は知られていなかった。
【0006】
更に多量の非水系電解液を含浸した場合には、これを安定に保持して、ポリマー電解質外に漏出することを防止する必要がある。もし非水系電解液を安定に保持できずに漏液が多量に起るとすれば、周辺機器の損傷並びに電気的特性の悪化が避けられないからである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、非水系電解液を多く含浸して安定に保持することができ、かつ強度が優れたポリマー電解質を提供し、更にこれを用いて形状自由度が大きな非水系電池を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、上述の目的達成のためには、組成、分子量および結晶化度を特定した少なくとも二種のフッ化ビニリデン共重合体からなるフッ化ビニリデン系重合体組成物を用いて、ポリマー電解質を形成することが極めて好ましいことが見出された。すなわち、本発明のポリマー電解質は、下記フッ化ビニリデン共重合体(A)30〜95重量%と下記フッ化ビニリデン共重合体(B)70〜5重量%とからなるフッ化ビニリデン系重合体組成物と、非水系電解液とからなることを特徴とするものである。
【0009】
フッ化ビニリデン共重合体(A):フッ化ビニリデン単量体を70〜97重量%含み、フッ化ビニリデンと共重合可能な少なくとも一種の単量体を3〜30重量%含み、インヘレント粘度が1.0〜10dl/gであり、且つ溶融結晶化熱量が24J/g以上であるフッ化ビニリデン共重合体、および
フッ化ビニリデン共重合体(B):フッ化ビニリデン単量体を50〜95重量%含み、フッ化ビニリデンと共重合可能な少なくとも一種の単量体を5〜50重量%含み、インヘレント粘度が1.0〜20dl/gであり、且つ溶融結晶化熱量が20J/g以下であるフッ化ビニリデン共重合体。
ここでいうインヘレント粘度とは、ポリマーの分子量の目安として用いるものであり、試料樹脂ないしは共重合体4gを1リットルのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の30℃における対数粘度をいう。また、溶融結晶化熱量とは、試料樹脂ないしフッ化ビニリデン共重合体を200℃の溶融状態から20℃/分で冷却して固化した際の結晶化に伴う単位重量当りの放出熱量をいい、大なる程高い結晶化度であることを示す。
【0010】
【発明の実施の形態】
非水系電解液を含浸保持して、本発明のポリマー電解質のマトリクス樹脂として機能するフッ化ビニリデン系重合体組成物は、上記したような特定のフッ化ビニリデン共重合体(A)と(B)とから形成される。
【0011】
ここで共重合体(A)は、得られるポリマー電解質の機械強度向上のために必須の成分であり、フッ化ビニリデン単量体を70重量%以上97重量%以下含み、かつフッ化ビニリデン単量体と共重合可能な一種または複数種からなる単量体を3重量%以上30重量%以下含み、かつインヘレント粘度が1.0dl/g以上10dl/g以下、かつ溶融結晶化熱量が24J/g以上であるフッ化ビニリデン系共重合体である。(なお、共重合体中における、単量体とは、当然に重合された形態での単量体単位のことであるが、本明細書では、便宜上、単に単量体と表現する。)共重合体(A)中のフッ化ビニリデン単量体量が、70重量%未満では得られるポリマー電解質の機械強度が弱くなる傾向にあり、97重量%を超えると得られるポリマー電解質の柔軟性が欠ける傾向にあり、好ましくない。インヘレント粘度が高い方が強度の強いポリマー電解質が得られる傾向にあるが、ある程度以上のインヘレント粘度で強度は飽和傾向にあり、またインヘレント粘度が10dl/gを越えると揮発性溶媒に溶解して濃厚溶液にし難いという、ポリマー電解質作製上の問題が生じる。共重合体(A)のインヘレント粘度が1.0dl/g未満であると、ゲル強度が弱く、薄型電池にして折り曲げた場合に正極・負極の短絡の恐れがあり、また液保持性が悪くなり、液の滲みだしの恐れがある。溶融結晶化熱量が24J/g未満では得られるポリマー電解質の機械強度が弱くなる傾向にある。
【0012】
共重合体(B)は、ポリマー電解質の電解液保持性向上のために必須の成分であり、フッ化ビニリデン単量体を50重量%以上95重量%以下含み、かつフッ化ビニリデン単量体と共重合可能な一種または複数種からなる単量体を5重量%以上50重量%以下含み、かつインヘレント粘度が1.0dl/g以上20dl/g以下、かつ溶融結晶化熱量が20J/g以下であるフッ化ビニリデン共重合体である。共重合体(B)中のフッ化ビニリデン単量体が、50重量%未満では得られるポリマー電解質の機械強度が弱くなる傾向にあり、95重量%を超えると、得られるポリマー電解質の柔軟性が欠ける傾向にあり、好ましくない。インヘレント粘度が高い方が強度の強いポリマー電解質が得られる傾向にあるが、ある程度以上のインヘレント粘度で強度は飽和傾向にあり、またインヘレント粘度が20dl/gを越えると比較的結晶化度の低い共重合体(B)であっても揮発性溶媒に溶解して濃厚溶液にし難いという、ポリマー電解質作製上の問題が生じる。共重合体(B)のインヘレント粘度が1.0dl/g未満であると、ゲル強度が弱く、薄型電池にして折り曲げた場合に正極・負極の短絡の恐れがあり、また液保持性が悪くなり、液の滲みだしの恐れがある。溶融結晶化熱量が20J/gを超えると、液保持性が悪くなり、液の滲みだしの恐れがある。
【0013】
本発明のポリマー電解質では上記共重合体(A)30〜95重量%と、上記共重合体(B)70〜5重量%とからなるフッ化ビニリデン系重合体組成物を使用することが必須である。A成分量が30重量%未満では得られるポリマー電解質の機械強度が弱くなる傾向にあり、95重量%を超えると、得られるポリマー電解質の電解液保持性が欠ける傾向にあり、好ましくない。本発明のポリマー電解質を構成するフッ化ビニリデン系重合体組成物は、上記共重合体(A)および(B)のみからなることが好ましいが、これら共重合体の個々の組成を満たす範囲で比較的少量(例えば全量の30重量%まで)のフッ化ビニリデン単独重合体または/および他のフッ化ビニリデン共重合体等の他の樹脂を使用することは差し支えない。
【0014】
このようにして得られる本発明のフッ化ビニリデン共重合体は、ゲル膜の作製が容易な上、例えばポリマーの300重量%以上という多量の電解液を保持したゲル状態(ゲル中の電解液量75重量%以上)でも、液保持性が良くかつ強い膜強度を示すので、ポリマー電解質を有する非水系電池に好適に用いることができる。本発明のポリマー電解質は通常50重量%から85重量%の多量の電解液を保持した状態で使用可能なものである。
【0015】
ポリマー電解質中のリチウムイオン導電率は、電解液量が増えるほど高くなる傾向があり、例えば前記米国特許5296318号明細書中の記載を例に挙げれば、ゲル中の電解液量が20重量%から70重量%、実質的には40重量%から60重量%の範囲においては10-5S/cmから10-3S/cmを示すことが明らかにされている。したがって電解液量がポリマー電解質中の50重量%から85重量%というより高い電解液含浸量が得られる本発明のポリマー電解質のゲルが実電池材料として十分に機能するイオン導電率が保証される。特に本発明では実施例に示すように75重量%もの電解液量を安定に保持した上に、十分なゲル強度を実現できるという利点がある。
【0016】
フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、等の炭化水素系単量体、フッ化ビニル、3フッ化エチレン、3フッ化塩化エチレン、4フッ化エチレン、6フッ化プロピレン、フルオロアルキルビニルエーテル、等の含フッ素単量体、マレイン酸モノメチル、シトラコン酸モノメチル、等のカルボキシル基含有単量体、またはアリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエステル、等のエポキシ基含有ビニル単量体、が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。中でも6フッ化プロピレンや3フッ化塩化エチレンを含むフッ化ビニリデン系共重合体が好ましく用いられる。
【0017】
上記フッ化ビニリデン系重合体組成物からなるマトリックス樹脂とともに本発明のゲル状ポリマー電解質を形成する非水系電解液としては、例えばリチウム塩などの電解質を、非水系溶媒(有機溶媒)100重量部に対し、5〜30重量部の割合で溶解させたものを用いることができる。
【0018】
ここで電解質としては、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiBF4、LiCl、LiBr、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、等がある。また、電解質の有機溶媒としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、及びこれらの混合溶媒などが用いられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0019】
本発明のポリマー電解質は、上記フッ化ビニリデン系重合体組成物と、非水電解液とから、例えば以下のようにして形成される。まず、前記のように電解質を有機溶媒に溶解して非水電解液を形成する。次にフッ化ビニリデン系重合体組成物あるいはその成分樹脂を、揮発性の有機溶媒に溶解した溶液を調製し、上記非水電解液と混合する。更に前記揮発性の有機溶媒を揮発させる工程を経てフィルム状のポリマー電解質を得る。このとき用いる揮発性の有機溶媒としては、比較的低い温度で高い蒸気圧を有し、揮発しやすく且つフッ化ビニリデン系共重合体をよく溶解するものが好ましい。テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、1,3−ジオキソラン、シクロヘキサノン、等が用いられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0020】
また、電解質を溶解する有機溶媒としてよく用いられるプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどはそれ自身がフッ化ビニリデン系共重合体の溶媒として用いることが可能であるので、揮発性の有機溶媒を用いることなくポリマー電解質を構成することが可能である。この場合は、予めフッ化ビニリデン系共重合体を有機溶媒で溶解した溶液の中に電解質を加えて更に溶解することも可能であるし、フッ化ビニリデン系共重合体と電解質を同時に有機溶媒で溶解することも可能である。フッ化ビニリデン系共重合体と電解質を溶解させた溶液を室温に冷やしてゲル化させフィルム状のポリマー電解質からなる膜構造物を得る。
【0021】
本発明の非水系電池の基本構造は、図1に断面図を示すように、一般的にはシート状に形成されたポリマー電解質1を一対の正極2(2a:集電基体、2b:正極合剤層)および負極3(3a:集電基体、3b:負極合剤層)間に挾持された形態で配置することにより得られる。
【0022】
リチウムイオン電池としての構成を例にとった場合、シート状ポリマー電解質1は、厚さ2〜1000μm、特に10〜200μm程度であることが好ましく、フッ化ビニリデン系共重合体100重量部に対して、10〜1000重量部、特に100〜500重量部の割合で非水電解液を含浸させたものが好ましく用いられる。
【0023】
更に耐熱性を向上するために上記ポリマー電解質を架橋することが可能である。化学的に架橋する手段としては、フッ化ビニリデン系と他の単量体を共重合して得られたフッ素ゴムの加硫法が好適に用いられる。即ち、より具体的にはポリアミン類や、ポリオール類や、多官能性架橋剤と、ラジカル発生剤を添加して行うことが可能である。
【0024】
前記ポリマー電解質を架橋するその他の方法としては、電子線やガンマー線を照射して架橋構造を導入する手段が好適に用いられる。このときの放射線量としては10〜500kGy程度が好適である。また、この放射線架橋の効果を増大するために、予め、ポリマー電解質の中に多官能性架橋剤を添加することも好適に用いられる。
【0025】
正極2及び負極3は、鉄、ステンレス綱、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属箔あるいは金属網等からなり、厚さが5〜100μm、小規模の場合には例えば5〜20μmとなるような集電基体2a、3aの例えば一面に、例えば厚さが10〜1000μmの正極合剤層2b、負極合剤層3bを形成することにより得られる。
【0026】
正極合剤層2b及び負極合剤層3bの形成方法の一例としては、上述したフッ化ビニリデン系共重合体を含む一般的なフッ化ビニリデン系重合体と電解液を揮発性の有機溶媒に溶解した溶液、例えば100重量部に対し、粉末電極材料(正極または負極活物質及び必要に応じて加えられる導電助剤、その他の助剤)1〜20重量部を分散させて得られた電極合剤スラリーを塗布乾燥する方法を挙げることができる。
【0027】
リチウムイオン二次電池用の活物質としては、正極の場合は、一般式LiMY2(Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr、V等の遷移金属の少なくとも一種:YはO、S等のカルコゲン元素)で表わされる複合金属カルコゲン化合物、特にLiNixCo1-xO2(0≦x≦1)をはじめとする複合金属酸化物やLiMn2O4などのスピネル構造をとる複合金属酸化物が好ましい。
【0028】
負極の活物質としては、黒鉛、活性炭、あるいはフェノール樹脂やピッチ等を焼成炭化したもの、さらには椰子殻活性炭等の炭素質物質に加えて、金属酸化物系のGeO、GeO2、SnO、SnO2、PbO、PbO2、SiO、SiO2等、或いはこれらの複合金属酸化物等が用いられる。
【0029】
このようにして得られた図1に示す構造の積層シート状電池体は、必要に応じて、捲回し、折り返し等により更に積層して、容積当たりの電極面積を増大させ、さらには比較的簡単な容器に収容して取り出し電極を形成する等の処理により、例えば、角形、円筒型、コイン型、ペーパー型等の全体構造を有する非水系電池が形成される。
【0030】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明を更に具体的に説明する。
<特性の評価方法>
[溶融結晶化熱量]
Mettler社製「DSC30」で試料樹脂を200℃から20℃/分で冷却したときの結晶化熱量を測定した。
[強度]
ASTM D882に準じて、試験長さ20mm、試験幅10mmでTOYOBALDWIN製TENSILON UTM−III−100を用いて引張速度100mm/minで引っ張り強度を測定した。
[電解液保持性]
50mm×50mmの試験片を切り取り秤量後、−18℃で2週間保存した後、室温に戻し膜表面を軽く拭いて膜表面の電解液を除去し秤量することにより、滲み出しによる重量減少率を求め、電解液保持性を評価した。ここで重量減少率とは、((保存前重量−保存後重量)/保存前重量)×100であり、数値が小さいほど電解液保持性が経時的に安定であることを示す。
【0031】
<フッ化ビニリデン系共重合体の調製>
(重合体調製例−A)
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1075g、メチルセルロース0.21g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート2.94g、フッ化ビニリデン382g及び6フッ化プロピレン38gを仕込み、29℃で9時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥して重合体粉末を得た。重合率は、89重量%で、得られた重合体のインヘレント粘度は1.9であり、溶融結晶化熱量は、26.1J/gであった。以下、上記で得られたフッ化ビニリデン共重合体(A)相当のポリマーをポリマーAと呼ぶ。
【0032】
ポリマーAの性状を、後記重合体調製例−B〜Eで得られたポリマーB〜Eのそれとともにまとめて後記表1に示す。
【0033】
(重合体調製例−B)
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1075g、メチルセルロース0.42g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート3.15g、フッ化ビニリデン336g及び6フッ化プロピレン84gを仕込み、29℃で18時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥して重合体粉末を得た。重合率は、88重量%で、得られた重合体のインヘレント粘度は1.9であり、溶融結晶化熱量は、18.6J/gであった。以下、上記で得られたフッ化ビニリデン共重合体(B)相当のポリマーをポリマーBと呼ぶ。
【0034】
(重合体調製例−C)
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1075g、メチルセルロース0.42g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート2.52g、フッ化ビニリデン294g及び6フッ化プロピレン126gを仕込み、28℃で27時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥して重合体粉末を得た。重合率は、81重量%で、得られた重合体のインヘレント粘度は1.6であり、溶融結晶化熱量は、12.5J/gであった。以下、上記で得られた共重合体(B)相当のポリマーをポリマーCと呼ぶ。
【0035】
(重合体調製例−D)
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1075g、メチルセルロース0.42g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート3.78g、フッ化ビニリデン252g及び6フッ化プロピレン168gを仕込み、29℃で42時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥して重合体粉末を得た。重合率は、89重量%で、得られた重合体のインヘレント粘度は1.0であり、溶融結晶化熱量は、10.2J/gであった。以下、上記で得られた共重合体(B)相当のポリマーをポリマーDと呼ぶ。
【0036】
(重合体調製例−E)
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1140g、メチルセルロース1.16g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート2.0g、フッ化ビニリデン314g及び6フッ化プロピレン64gを仕込み、更にフッ化ビニリデン204gを連続的に添加しながら26℃で18時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥して重合体粉末を得た。重合率は、88重量%で、得られた重合体のインヘレント粘度は1.9であり、溶融結晶化熱量は、25.0J/gであった。以下、上記で得られた共重合体(A)と共重合体(B)の中間的溶融結晶化熱量を有するポリマーをポリマーEと呼ぶ。
【0037】
【表1】
【0038】
(実施例1)
重合体調製例−Aで得られたポリマーAを9gと重合体調製例−Bで得られたポリマーBを1gと、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフランの混合溶液100g(混合重量比で15:15:70)を加えて溶液を作り、この溶液をキャストし、テトラヒドロフランを風乾することにより、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートを約75重量%含む厚さ約100μmのゲル状膜を得た。得られたゲル状膜を秤量したところ使用したテトラヒドロフランに見合った重量減少が確認された。
【0039】
このゲル状膜から試験片を切り取り、引っ張り強度を測定したところ、2.54MPaと強いものであった。
【0040】
露点が−70℃以下の窒素雰囲気下で、重合体調製例−Aで得られたポリマーAを9gと重合体調製例−Bで得られたポリマーBを1gと、LiPF65gにエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフランの混合溶液100g(混合重量比で15:15:70)を加えて溶液を作り、この溶液をキャストし、テトラヒドロフランを風乾することにより厚さ約80μmのゲル状のポリマー電解質膜を得た。得られたゲル状のポリマー電解質膜を秤量したところ使用したテトラヒドロフランに見合った重量減少が確認された。
【0041】
このゲル状のポリマー電解質膜は、電解液の滲み出しがなく、また手で引っ張ったところ、柔軟で延伸性のある強いものであった。このゲル状のポリマー電解質膜から試験片を切り取り、電解液保持性を評価したところ重量減少率は0.38%と小さく、電解液保持性に優れるものであった。
【0042】
ゲル状のポリマー電解質膜の特性評価結果を、以下の例のそれとともにまとめて後記表2に示す。
【0043】
(実施例2〜4)
ポリマーとして表2に示すブレンド比のポリマーを用いた以外は、実施例1と同様にして、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートを約75重量%含む厚さ約100μmのゲル状膜を得た。得られたゲル状膜を秤量したところいずれも使用したテトラヒドロフランに見合った重量減少が確認された。ゲル状膜から試験片を切り取り、引っ張り強度を測定したところ、結果は表2に示すようにいずれも強いものであった。
【0044】
ポリマーに表2に示すポリマーを用いた以外は、実施例1と同様にして、約80μmのゲル状のポリマー電解質膜を得た。得られたゲル状のポリマー電解質膜を秤量したところいずれも使用したテトラヒドロフランに見合った重量減少が確認された。ゲル状のポリマー電解質膜はいずれも、電解液の滲み出しがなく、また手で引っ張ったところ、柔軟で延伸性のある強いものであった。ゲル状のポリマー電解質膜から試験片を切り取り、電解液保持性を評価したところ、結果は表2に示すようにいずれも重量減少率が小さく、電解液保持性に優れるものであった。
【0045】
(比較例1)
ポリマーに表2に示すようにポリマーAを用いた以外は、実施例1と同様にして、強度、電解液保持性を調べたところ、強度は優れるものの、電解液保持性の劣るものであった。
【0046】
(比較例2)
ポリマーに表2に示すようにポリマーEを用いた以外は、実施例1と同様にして、強度、電解液保持性を調べたところ、強度、電解液保持性、何れにおいても実施例1〜4に比べ劣るものであった。ポリマーEは、共重合組成比、インヘレント粘度、溶融結晶化熱量において、実施例1〜4で用いたポリマーの平均と同等のものである。
【0047】
【表2】
【0048】
【発明の効果】
上記実施例及び比較例の結果より明らかなように、本発明によれば、組成、分子量レベルおよび結晶化度レベルを特定した2種のフッ化ビニリデン共重合体の混合物からなるフッ化ビニリデン系重合体を用いることにより非水系電解液を多く含んだ状態で安定に存在し、且つこの状態で強度の優れたポリマー電解質が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のポリマー電解質を用いる非水系電池の基本的積層構造を示す厚さ方向断面図。
【符号の説明】
1 シート状ポリマー電解質
2 正極
2a 導電性基体
2b 正極合剤層
3a 導電性基体
3b 負極合剤層
Claims (4)
- 下記フッ化ビニリデン共重合体(A)30〜95重量%と下記フッ化ビニリデン共重合体(B)70〜5重量%とからなるフッ化ビニリデン系重合体組成物と、非水系電解液とからなるポリマー電解質;
フッ化ビニリデン共重合体(A):フッ化ビニリデン単量体を70〜97重量%含み、フッ化ビニリデンと共重合可能な少なくとも一種の単量体を3〜30重量%含み、インヘレント粘度が1.0〜10dl/gであり、且つ溶融結晶化熱量(200℃の溶融状態から20℃/分で冷却して固化した際の結晶化に伴う単位重量当りの放出熱量をいう、以下同じ)が24J/g以上であるフッ化ビニリデン共重合体、および
フッ化ビニリデン共重合体(B):フッ化ビニリデン単量体を50〜95重量%含み、フッ化ビニリデンと共重合可能な少なくとも一種の単量体を5〜50重量%含み、インヘレント粘度が1.0〜20dl/gであり、且つ溶融結晶化熱量が20J/g以下であるフッ化ビニリデン共重合体。 - フッ化ビニリデン共重合体(A)および(B)におけるフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体が6フッ化プロピレンと3フッ化塩化エチレンから選ばれる少なくとも一種の単量体である請求項1のポリマー電解質。
- 非水系電解液を50重量%以上含む請求項1または2のポリマー電解質。
- リチウムを吸蔵放出する正極材料からなる正極と、同じくリチウムを吸蔵放出する負極材料または金属リチウムからなる負極との間に請求項1〜3のいずれかのポリマー電解質を有する非水系電池。
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