JP4265147B2 - 巻取り式真空成膜装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は真空中にてPET(ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂フィルム等ウェブ状シート表面などに化学蒸着法(CVD)等の方法により薄膜を形成する巻取り式真空成膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、PETなどの合成樹脂フィルム等ウェブ状シート表面に化学蒸着法(CVD)等の方法により薄膜を形成する場合の巻取り式真空成膜装置は、例えば、図7に示すように、トルクモータ等の一定の張力にて巻取り可能な巻取り手段を持つ巻取り軸1を有し、かつパウダークラッチ等のトルク制御手段により一定のバックテンションをかけつつ合成樹脂フィルム等のウェブ状シート9の巻出しを可能にする巻出し軸2を有する。そして、この二軸1、2の間に前記ウェブ状シート9の走行を規制する複数のアイドルロール3と4および張力を検知して巻取り軸1又は巻出し軸2に適宜フィードバックを行うための張力検出器5と6を具備したテンションロール7と8を備える。そして、前記ウェブ状シート9の温度をコントロールし、ウェブ状シート9表面に膜を形成するための温調ロール10、複数のプロセスガス噴出管17と18及び、電極等からなる成膜手段11を配置している。
【0003】
そして、巻出し軸2から所定の張力を付与されつつ巻き出される前記ウェブ状シート9が、温調ドラム10上で、前記成膜手段11により前記ウェブ状シート9の表面に膜を形成された後、所定の張力を伴いつつ、巻取り軸1にて巻き取られ、表面に薄膜が形成されたウェブ状成膜シート13を得ることができる仕組みになっている。
【0004】
しかしながら、上記の図7にもとづいて説明したような、従来の巻取り式真空成膜装置20では、以下のような問題を生じている。即ち、金属や合成樹脂等の物質は、真空中においては脱ガスを発生するという性質があり、特に合成樹脂フィルム等のウェブ状シートからの脱ガスは非常に大きい値となる。そのため温調ロールとウェブ状シートの間に脱ガスが溜まってしまい、ウェブ状シートと温調ロールの密着性が損なわれ、ウェブ状シート表面が均一な温度分布が得られないという問題がある。
【0005】
更に成膜時の温度変化等によりウェブ状シートが幅方向で伸びたり、縮んだりするため薄膜が損傷するなどの問題もある。
【0006】
脱ガス量は温度のみならず、ウェブ状シートの含水率に大きく依存するため一定ではなく、成膜室の圧力が変動するといった問題があり、更に脱ガスの成分としては水分がほとんどであるが、この水分により成膜プロセスの条件が安定しない、若しくは反応の弊害になるという問題もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、化学蒸着法(CVD)等により、合成樹脂フィルム等のウェブ状シート表面に薄膜を形成する巻取り式真空成膜装置において、脱ガスが発生した場合でもウェブ状シートの温度分布を均一にすることであり、またウェブ状シートの伸縮を抑え、かつ反応の阻害要因である水分の影響を抑えることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、請求項1に係る発明は、ウェブ状シート9の巻出し・巻取り室22と成膜する成膜室23と、巻出し・巻取り室22と成膜室23とを隔てる隔壁21と、隔壁21を跨いで巻出し・巻取り室22と成膜室23の両室に周面が配置されて、ウェブ状シート9と密着し、ウェブ状シート9の加熱・冷却をする温調ロール10とを備え、該ロール10の表面に溝部10aを有しており、且つ溝部10aが等間隔の螺旋状の溝であり、該螺旋状の溝がロール長手方向の中央部を境界として対称的に配置されているおり、該ロール10周面に密着したウェブ状シート9との間に該溝部10aに沿って希ガスを流すことが可能な機構19を持つことを特徴とする巻取り式真空成膜装置20である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明を図1から図6に示す実施の形態にもとづいて詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように温調ロール10に等間隔の溝部10aを温調ロール10の長手幅方向に対してつけることで、脱ガスの排気用通路が形成され、真空成膜装置20内が常に10Torrから10-2 Torrの真空度に排気されているのでウェブ状シート9と温調ロール10間の脱ガスも排気することが可能となり、前記ウェブ状シート9と温調ロール10の密着性が向上し、前記ウェブ状シート9の温度分布を均一化することができる。この溝部10aの幅、深さ及び間隔は前記ウェブ状シート9の熱伝導率とプロセス条件により適宜決定する。
【0017】
また、図2に示すように溝部10aを螺旋状に配置した場合、前記ウェブ状シート9の幅方向での温度分布の均一化を向上させることが可能となる。
【0018】
更に、図3に示すように螺旋状の溝形状を左回り、右回りを重ね合わせることで排気効率を向上させ、前記ウェブ状シート9と温調ロール10の密着性を更に向上させることで温度分布の均一性をより一層向上させることが出来る。
【0019】
次に、図4、図5に示すように温調ロール10周面の螺旋状の溝部10aがロール10長手方向の中央部を境界として左右対称的に配置することで前記ウェブ状シート9に幅方向の伸縮の力を加えることが可能となり、成膜時の前記ウェブ状シート9の伸縮変化を抑えることが可能となる。
【0020】
更に、図6に示すように、ガス導入機構19により、前記溝部10aに沿って前記温調ロール10周面に密着した前記ウェブ状シート9との間にアルゴン等の希ガス10bを幅方向に均一に分布するように流すことで排ガスの主な成分である水分の分圧を下げることができ成膜プロセスを安定化できる。
【0021】
【発明の効果】
本発明により、巻取り式真空成膜装置において、温調ロール表面の溝部から効率よく脱ガスを排気することで温調ロールと合成樹脂フィルム等のウェブ状シートの密着性を上げ、前記ウェブ状シートの温度分布を均一にすることが可能となり、螺旋状の溝形状を左右対称にすることで前記ウェブ状シートの伸縮を抑えることができ、更に前記の溝部にアルゴン等の反応に寄与しない希ガスを流すことで圧力を一定とし、加えて脱ガス等に起因する水の分圧を下げ反応の阻害要因を排し、均一で高品質な薄膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る巻取式真空成膜装置において、等間隔の溝付温調ロールの部分拡大図である。
【図2】本発明に係る巻取式真空成膜装置において、螺旋状の溝付温調ロールの一事例を示す部分拡大図である。
【図3】本発明に係る巻取式真空成膜装置において、螺旋状の溝付温調ロールの溝を左回りと右回りを交差させたときの一事例を示す部分拡大図である。
【図4】本発明に係る巻取式真空成膜装置において、温調ロールの表面に螺旋状の溝があり、その溝がロールの長手方向の中央部を境界として対称的に等間隔に配置されているときの前記ウェブ状シートが縮む場合に設置する一事例を示す部分拡大図である。
【図5】本発明に係る巻取式真空成膜装置において、温調ロールの表面に螺旋状の溝があり、その溝がロールの長手方向の中央部を境界として対称的に等間隔に配置されているときの前記ウェブ状シートが伸びる場合に設置する一事例を示す部分拡大図である。
【図6】本発明に係る巻取式真空成膜装置において、前記ロール周面に密着したウェブ状シートとの間に前記溝部に沿ってガスを流すことが可能なガス導入機構を配置した場合の部分拡大図である。
【図7】従来技術における巻取り式真空成膜装置の全体図を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1・・・巻取り軸
2・・・巻出し軸
3、4・・・アイドルロール
5、6・・・張力検出器
7、8・・・テンションロール
9・・・合成樹脂フィルム等のウェブ状シート
10・・・温調ロール 10a…溝部 10b…アルゴン等の希ガス
11・・・成膜手段(電極、等)
12・・・合成樹脂フィルム等のウェブ状シート原反
13・・・合成樹脂フィルム等のウェブ状成膜済みシート
14、15・・・ニップロール
16・・・ダンサロール
17、18・・・ガス噴出管
19…ガス導入機構
20…真空成膜装置
21…隔壁
22…巻出し・巻取り室
23…成膜室
Claims (1)
- ウェブ状シートの巻出し・巻取り室と成膜する成膜室と、巻出し・巻取り室と成膜室とを隔てる隔壁と、隔壁を跨いで巻出し・巻取り室と成膜室の両室に周面が配置されて、ウェブ状シートと密着し、ウェブ状シートの加熱・冷却をする温調ロールとを備え、該ロールの表面に溝部を有しており、且つ溝部が等間隔の螺旋状の溝であり、該螺旋状の溝がロール長手方向の中央部を境界として対称的に配置されており、該ロール周面に密着したウェブ状シートとの間に該溝部に沿って希ガスを流すことが可能な機構を持つことを特徴とする巻取り式真空成膜装置。
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