JP4263398B2 - 化学蒸気浸透法による中空形状の多孔質基体の強化方法 - Google Patents
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Description
(発明の背景)
本発明は、化学蒸気浸透法(CVI)により中空の多孔質基体を強化すること(densifying)であって、特に圧力平衡において、すなわち基体の各面の間に圧力勾配がない状態で、化学蒸気浸透法(CVI)により中空の多孔質基体を強化することに関する。
【0002】
本願の特定の分野は、マトリックスで強化された多孔質基体を含む複合材料から中空部品を作成することであって、特に、耐熱性(thermostructural)複合材料から作製された中空部品である。
【0003】
ここで「中空の多孔質基体」は、基体の多孔質特性に起因する部分以外は連続した(すなわち、穴が空いていない)凹状の内面を有する中空形状の基体を表すのに用いられる。中空形状の例は、球形のキャップ型、円筒型または一方の端が閉じている楕円柱−円錐型、入れ物もしくはボウル型、およびカバー型であり、必ずしも軸対象ではない。このような基体を強化して得られる中空部品の例は、化学産業および冶金産業用の入れ物であって、例えば、るつぼまたはるつぼ-支持ボウル、または熱シールドを形成するノーズコーンのような航空機用の保護ボディである。
【0004】
ここで、「耐熱性(thermostructural)複合材料」は、構造要素を構成し得る優れた機械特性と、この特性を高温で保持する能力の両者を発現する複合材料を表すのに用いられる。耐熱性複合材料の例は、炭素マトリックスで強化された炭素繊維の多孔質基体を含む、炭素/炭素(C/C)複合材料、およびセラミックマトリックスで強化された炭素もしくはセラミック繊維などの耐火性多孔質基体を含む、セラミックマトリックス複合(CMC)材料である。
【0005】
圧力平衡における化学蒸気浸透法による多孔質基体の強化は、周知の方法である。強化しようとする基体をエンクロージャーの中に配置して、反応性ガスをエンクロージャーに導入する。エンクロージャーの温度と圧力条件は、ガスが基体の孔に拡散して、その中で固体堆積物を形成するように制御する。固体堆積物は、前駆体ガスを分解させるか、または前記ガス中に含有されている複数種の前駆体ガス間で反応を生じさせることにより、複合材料のマトリックスを構成する。これは、例えば、ガス状前駆体が一般に、プロパンまたはメタンまたはそれらの混合物のようにアルカン、アルキルまたはアルケンである場合、炭素マトリックスに相当する。シリコンカーバイドから製造されるセラミックマトリックスの場合、例えば、ガス状前駆体は、メチルトリクロロシラン(methyltrichlorosilane)である。
【0006】
一般に、反応性ガスがエンクロージャーの一方の端に導入され、そして導入されたガスの残りと反応生成物とを含む流出ガスが、もう一方の端から抜き取られる。導入は、有利には、導入されたガスを、強化のための基体温度に近い温度まで導くのに役立つ予熱器領域を通して行われる。
【0007】
複数の基体が、一つのエンクロージャー内で同時に強化され得る。ここで、基体は、全ての基体がエンクロージャー内に導入された反応性ガスの流れに露出するのを確実にするように配置される。本願出願人の米国特許第5,904,956号公報には、この目的のために、環状のスタック(stacks)内に特別な方法で配置された同様の基体を開示している。前記ガスを導入してスタックの内側(または外側)に方向付けると、このガスは、スタックの外側(または内側)から吸い上げられるように、基体や基体間のギャップを通って流れる。
【0008】
強化しようとする基体が、上述の通り比較的深い凹状部位を有する中空であって、特に非常に大きな寸法のものである場合、化学蒸気浸透法による強化後に、欠陥が本発明者らによって観察された。この欠陥は、強化された部品の異なる部位間でのマトリックスの材料の微細構造の変化にあり、かつ基体上のすす(soot)または望ましくない突出部の形成にある。
【0009】
前記欠陥は、導入されるガスを過剰に熟成させることがある(すなわち、導入されたガスがエンクロージャー内部での通過に時間がかかり過ぎるためにエージングが生じ、それによってガスの特性が損なわれる)ことから、流出ガスをエンクロージャーからポンプ引きする速度を上げることによって前記ガスの流速を高めることにより、前記問題を取り除こうとする試みが成されている。しかしながら、欠陥を完全に取り除くことはできないどころか、反応性ガスの消費を増加させることにより、コストがかなり高くなっている。
【0010】
(発明の課題および要旨)
本発明の課題は、前記欠陥を発現しない方法を提供すること、すなわち、中空形状の基体を、たとえ大きな寸法のものであっても、比較的均一でかつ欠陥がないように強化することができる方法を提供することである。
【0011】
前記課題は、本発明によれば、エンクロージャーに導入される反応性ガスの流れの一部がツーリングによって(by tooling)中空形状の基体の凹状の内面で表される容積の内側に導かれ、その結果、前記凹状の内面が、導入された反応性ガス流合計のうちのある割合によって全部洗い流される方法によって達成された。
【0012】
有利なことに、エンクロージャーに導入された反応性ガス流は、エンクロージャー内部に配置された基体の面に向かって配送される。好ましくは、エンクロージャー内部に配置された基体の面に伝わる反応性ガス流の合計のうちの前記割合は、5%以上、またはむしろ10%以上である。
【0013】
本発明者らは、エンクロージャー内の前記ガス流のうちのある割合を基体の内側に導くことにより、望ましくない突出物またはすすが形成されずに、中空形状内部の最も深くに位置する領域でさえ、均一な強化が達成されることが分かった。このことは、前記流れを誘導することが、前記ガスの過剰な成熟が生じ得る停滞ポケットまたは混乱領域を形成させずに、基体の凹状の内面に沿って前記ガス全部を流れさせるという事実によって説明される。
【0014】
前記ガス流の一部は、基体の凹状の内面で表される容積への行程の一部に入り込む壁部位(例えば、基体の壁面付近まで延びた、円筒形の壁部位)によって前記容積へ導かれてよい。
【0015】
都合の良いことに、複数の中空形状の基体は、ガス流がエンクロージャーを通過する総体的な方向に、並べて配置することにより、エンクロージャー内で同時に強化され得る。その後、エンクロージャーに導入されたガス流は、基体の面にそれぞれ供給するために、流れの一部を対応させることにより、適当に分配される。
【0016】
本発明のもう一つの課題は、化学蒸気浸透法によって強化して、上述の方法を実行するための装置を提供することである。この装置は、中空形状の基体を強化するのに適合している。
【0017】
前記課題は、側壁、および互いに向かい合った第1および第2壁面を有するエンクロージャー、エンクロージャーに広がる反応性ガスを第1壁面を介して導入する手段、エンクロージャーに広がる流出ガスを第2壁面を介して排出する手段、および強化しようとする基体を支持するための少なくとも1つのトレイを含むタイプの装置であって、前記ガス流を分配および誘導するための手段であって、これにより導入された反応性ガス流のうちのある割合をエンクロージャー内の各基体の位置に運び、そして該位置に運ばれたガス流の一部を、その位置に配置された基体の凹状の内面で表される容積の内側に誘導するためのものを更に含む装置によって達成される。
【0018】
流れを誘導する手段は、複数の通路を含む円筒形の壁部位またはボディを含んで成る。ここで、この壁部位またはボディは、基体の前記容積への行程の少なくとも一部に入り込むように配置されていてよい。
【0019】
前記流れを分配する手段は、エンクロージャーの内部に横断して延びたトレイであって、それらトレイを貫通して作られた開口部と、トレイとエンクロージャーの側壁との間に残された空間によって形成された流れ−分配用通路を表すトレイを1個以上含んでいてよい。
【0020】
(図面の簡単な説明)
本発明は、非限定的な表示のために書かれた以降の説明を読み、そして添付の図面を参照することで、より詳しく理解されよう。
【0021】
(発明の態様の詳細な説明)
図1および2は、化学蒸気浸透装置における反応チャンバーを構成するエンクロージャー10を表す図である。
図示された例において、エンクロージャー10は、一般に、垂直な軸方向の円筒形である。反応性ガスは、例えば、エンクロージャー10の下壁10aの中心を通って開口しているパイプ12を介してエンクロージャーに導入される。流出ガスは、下壁10aから遠く離れたカバーを形成する上壁10bの中心を通って開口しているパイプ14を介してエンクロージャーから引き抜かれる。ここで、パイプ14は、ポンプ引き装置(図示せず)に接続されている。
【0022】
エンクロージャーの底部において、前記ガスは、例えば、上下に配置された、穴の空いた水平なプレート18によって構成される予熱器領域16を通過する。プレート18は、脚とスペーサーを用いて、エンクロージャーの下壁10aに支持されている。
【0023】
予熱器領域は、水平な拡散体プレート20によって反応チャンバーから適当に分離されている。水平な拡散体プレート20は、実質上、エンクロージャー10の断面全体を占めている。拡散体プレート20は、穴が空いており、エンクロージャーの下壁10aに脚を介して立ててある。
【0024】
予熱器領域の前記要素は、耐火材、例えばグラファイトから製造されている。
【0025】
エンクロージャーの内部は、エンクロージャー外部に配置された誘導子(図示せず)と電磁的に連結されたグラファイト加熱台で加熱される。前記加熱台は、エンクロージャー10の側壁10cを形成する。下壁10aとカバー10bも同様にグラファイトから製造されている。
【0026】
簡単に略述した上記装置は、周知のタイプである。
【0027】
図1に示す例には、複数の中空形状の基体がエンクロージャー10内部に、同時に強化されるように配置されており、具体的には、3個の基体S1、S2およびS3がその内部に配置されている。図示された基体は、ボウル型である。例えば、前記基体は、チョクラルスキー法または「CZ」法を用いてシリコン単結晶を引き上げるための装置において液体シリコンを含有するるつぼを受け止めるためのC/C複合材料ボウルのために予備形成されていてよい。そのようなボウルは、850mm程度またはそれ以上の直径を有していてよい。基体またはボウルプレフォームは、例えば炭素繊維から、フィラメントを巻きつけるかまたは繊維層にひだを寄せることによって製造されている。当然、本発明は、このような基体を強化することに限定されるものではなく、また本明細書の導入部に記載したように、中空形状の基体を強化することにも適用される。
【0028】
基体は、前記ガス流がエンクロージャーを通過する総体的に垂直な方向に、上下に並べて配置され、そして基体の中空の凹面は下方に向いている。
【0029】
各基体S1、S2、S3は、基体のエッジとトレイの上面の間に挟まれたブロック24で支持トレイ221、222、223上にそれぞれ置かれている。支持トレイ221は、拡散体プレート20上にスペーサー261を介して置かれており、同様に、トレイ222および223は、トレイ221および222上にスペーサー262および263を介して置かれている。
【0030】
ブロック24同士の間には隙間があるので、前記ガスを流動させることができる。ブロックは、一般には丸い弧の形であってよく、その面は、支持プレートの上面に形成された環状の溝に噛み合わすことができる。各ブロック24は、環の外側のへり24aを有しており、その上に基体のへりを近づけることで、その外側のエッジを介して支えることができる。その上、ブロック24は、基体を膨張によって変形させないことで、シェーパー(shapers)として役立つ。ブロック24は、それぞれ内側のへりも有していてよい。
【0031】
支持トレイ、ブロック、およびトレイを支持するスペーサーはいずれも、耐火性材料、例えば、耐火性金属またはグラファイトから製造される。
【0032】
支持トレイ221、222および223は、エンクロージャーに導入されて、予熱器領域を通り過ぎる前記ガス流を分配する機能も有している。このために、トレイは、ガスプルーフ材料から製造されており、それぞれ中央のオリフィス281、282および283を有すると同時に、各周縁部に、エンクロージャーの側壁10cに対して環状の隙間301、302および303も残している。
【0033】
オリフィス281、282および283と環状の隙間301、302および303とによって表される通路が前記ガス流を分配することにより、エンクロージャーに導入された新しいガスのある割合が、エンクロージャー内の基体の位置にそれぞれ到達し、そしてその位置に配置された各基体の面の上部を通過する。この割合は、少なくとも5体積%であり、好ましくは少なくとも10体積%である。
【0034】
その結果、図示された例では、基体S1、S2およびS3の内面および外面はそれぞれ、好ましくは、エンクロージャーに導入された新しいガス流の少なくとも10%、より好ましくは、むしろ約6分の1を受容する。通路301は、オリフィス281を介して基体S1の内面で受容されるガス流と相対して、導入された全ガス流の捕捉分を受容する。通路302は、通路301を通過した導入されたガス流の一部を受容する。この分量は、基体S1の外面で受容される分、およびオリフィス282を介して基体S2の内面で受容される分と相補的な関係にある。通路303は、通路302を通過した導入されたガス流の一部を受容する。この分量は、基体S2の外面で受容される分、およびオリフィス283を介して基体S3の内面で受容される分と相補的な関係にある。通路303を通過した導入されたガス流の残りの分は、基体S3の外面に供給される。
【0035】
オリフィス281、282または283を通過するガス流の各分量は、エンクロージャー内部の基体の各位置に設けられかつ関連する基体のためのガス流を誘導するツーリングを構成する各ガイドウォール321、322または323を用いて、対応する基体の壁面の内面に向かって誘導される。
【0036】
各ガイドウォールは、オリフィス281、282または283の一方にそれぞれ接続された円筒形またはある長さのパイプである。これは、基体で表される容積の内部において対応する支持トレイの上に突き出ている。これにより、各ガイドウォールは、対応する基体の壁面領域付近に直接、前記の流れの一部を運び込む。各ガイドウォールは、対応する基体の内面から一定の距離で終わっており、その結果、支持トレイを通じて形成されるオリフィスによって提供される流れ区分と少なくとも同程度の大きさの流れ区分を提供する環状の隙間が、前記ガイドウォールに関して残される。
【0037】
ガイドウォールは、好ましくはガスプルーフ特性を有する(gasproof)耐火性材料、例えば、耐火性金属またはグラファイト、あるいはこれ以外に、ドイツの会社であるシグリ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング(SIGRI GmbH)から「シグラフレックス(SIGRAFLEX)( 登録商標 )」という名称で提供されるような熱分解グラファイトシート材料からも作成される。
【0038】
ガイドウォール321、322、323のために、導入されるガス流の一部は、基体S1、S2、S3の内面上を全部洗い流すように、そして動かない容積を残さずかつ乱流を作らないで、内面に沿って流れるように進む。このためガスの通過時間が、全てのポイントにおいてある限界値以下に留まることが保証される。この限界値を超えると、ガスの成熟が過剰になって望ましくない堆積形成を導くことがある。一般には、ガスのエンクロージャー通過時間の合計(すなわち、ガスが導入されて除去されるまでの間に経過する時間)の合計は制限されなければならない。マトリックスが炭素から作成される場合、通過時間は一般に2秒以下となるように制御され、通常は、例えば1秒〜1.5秒の範囲である。
【0039】
基体の内面上を流れるガス流の残りは、ブロック24の間の隙間を通過した後、排出される。流出ガスは全て合わせて、エンクロージャーの上部に集められて、パイプ14を介して排出される。
【0040】
化学蒸気浸透法は、圧力平衡型である。すなわち、基体の内面と外面との間で圧力勾配がない。
【0041】
上述の説明は、3個の基体を同時に強化することに関するが、エンクロージャーに存在する基体の数は当然3個以外であってもよく、例えば、1個であってもよい。それと同時に、ガス流れを組織化する可能性も保持されているので、ガス流のうちのかなりの割合が基体の各面に供給される。
【0042】
エンクロージャー内部に横に並べて配置した複数の基体セットを表すことも可能である。ここで、各セットは、ガスの総体的な流れ方向に並べた1個以上の基体を包含する。さらに、ガスをエンクロージャーに導入する複数のオリフィス、および流出ガスをエンクロージャーから除去する複数のオリフィスは、複数の予熱器領域と共に、対応する基体セットおよび支持トレイとそれぞれ整合して提供されてよい。
【0043】
加えて、単一のエンクロージャー内では、流れを基体の内側に向かって誘導する手段の形状や寸法をできる限り適合させて、互いに寸法が異なる別々の中空形状の基体を強化することも可能である。エンクロージャーは、中空形状でない基体、または特定の流れ誘導手段を必要とするほど中空でない基体を更に含んでいてもよい。
【0044】
図3および4は、本発明の種々の態様を示している。図3および4の装置は、支持トレイ1221、1222、1223がスペーサー上に配置されていないが、その代わりに、エンクロージャーの側壁10cに埋め込まれた棚板−支持体またはペッグ(pegs)1261、1262、1263上に配置されている点で、図1および2の装置とは異なり、その結果、トレイは、棚のように支持されている。
【0045】
この場合、支持トレイは、実質上、エンクロージャー10の断面全体を占めていてよい。
【0046】
図1および2の態様において、各支持トレイは、反応性ガスの流れを誘導するツーリングを有する中央のオリフィス1281、1282、1283を有しており、前記ツーリングはそれぞれ、円筒形の壁1321、1322および1323の形状でオリフィスに接続されている。
【0047】
スロット1301、1032、1303は、トレイを通して、トレイの環状領域の全周辺でかつ基体S1、S2、S3のエッジの外側に形成されているので、エンクロージャーへ導入されたガス流の分流に対してまっすぐな通路となる。これによって、ガスを、トレイが占める平面に、図1および2に示す隙間301、302、303と等量で流すことができる。
【0048】
図5および6は、本発明のもう一つの別の態様を示している。図5および6の装置は、棚板−支持体2261、2262、2263で支持された支持レイ2221、2222、2223が複数の基体、具体的には支持トレイ2223に関して基体S3、S'3およびS''3のように3個の基体をそれぞれ担持している点で、図3および4の装置とは異なる。
【0049】
各トレイ、例えば、前記トレイ2223は、このトレイで支持された基体の凹状の内面それぞれに向かってガス流のある割合を方向付けるための複数のオリフィス2283、228'3および228''3を有している。円筒形の各ガイドウォール2323、232'3、232''3で形成される誘導用ツーリングは、各オリフィスに接続されて、対応する基体で表される容積の内側に突き出ており、これによって、前記割合の流れが基体の壁面付近まで誘導される。スロット2303は、トレイ2223中の、基体S3、S'3およびS''3の位置周辺に形成されており、これによって、ガス流のある割合がエンクロージャーに導入されて、各基体の周辺のトレイ2223の平面を直接通過し得る。
【0050】
支持トレイ2221およびトレイ2222は、前記トレイ2223と同様に作成されており、ガイドウォール2321、232'1および2322、232'2が接続されたオリフィス2281、228'1、2282、228'2と、スロット2301および2302を有している。
【0051】
支持トレイに形成されたオリフィスとスロットの寸法を選択することにより、エンクロージャー10内に新しく導入されたガスの流れが、基体の面に向いて流れるような望ましい分配を示すことを確実にする。
【0052】
複数の流出ガス排気パイプ214、214'および214''が好ましく提供されて、エンクロージャー外部で結合される。この3つのパイプは、一番上のトレイに配置された基体の頂点と整合してエンクロージャー内へ広がっており、それによって、ガス流が前記基体の外面上に十分に伝わるのを確実にする。
【0053】
上述の態様において、基体は、その凹状の内面を下に向けて、浸透エンクロージャー内部に配置される。すなわち、基体は、エンクロージャー内部では、反応性ガス流の総体的な方向に向けられている。
【0054】
基体は、図7に示すように、前記とは逆に向けて配置されてもよい。
【0055】
図7の態様は、特に、基体S1およびS2がエンクロージャー10の内部で、その凹状の内面を上に向けて配置されている点で、図1と相違する。
【0056】
各基体S1、S2は、その壁面の外面が、複数の(少なくとも3個の)ブロックまたはスタッド3241、3242上に置かれている。スタッド3241は、エンクロージャーの底部に開口しているパイプ12によってエンクロージャーに導入されたガスに対して予熱および拡散機能を発揮するトレイ316で支持されている。ガス導入用オリフィスの上には、流れ-分配用キャップ318が配置されている。
【0057】
スタッド3242は、スペーサー3262を介して前記拡散トレイ316上に置かれた各支持トレイ3221上に固定されている。
【0058】
支持トレイ3221は、大きな中央開口部3281を含むと同時に、その周囲に、エンクロージャーの側壁10cに対して環状の隙間3301も残している。
【0059】
加えて、基体S1を覆うトレイ3221は、基体の上部エッジに対して環状の隙間3311を残す。
【0060】
スペーサー3262で支持された一番上のトレイ3222は、前記トレイ3221が基体S1に対して配置されるのと同様に、基体S2上に配置される。前記トレイ3222は、大きな中央の開口部3282を含んでおり、エンクロージャーの側壁に対して環状の隙間3302を、そして基体S2の上部エッジに対して環状の隙間3312を残している。
【0061】
エンクロージャー内に導入される反応性ガス流は、隙間3301、3302および3312を通して分配され、その結果、前記流れの一部が、基体の面にそれぞれ供給される。
【0062】
隙間3311および3312を通過する分流は、各ガイドウォール3321および3322によって形成されるツーリングを用いて、基体S1およびS2の凹状の内面に向かって誘導される。ガイドウォールは、例えば、円筒形またはパイプの扇型区分の形状であり、前記トレイ3221、3222によって支持されており、その頂点は、開口部3281、3282のエッジとつながっている。各ガイドウォールは、対応する基体の内部にある距離だけ入り込んでおり、その結果、その周縁部に導入された流れを、ガイドウォールで表されるパイプを通して上方へ流す前に、基体の底部壁面へ向かって下方へ落とす(図7の矢印を参照)。
【0063】
一番上のトレイの開口部3282を通して流れる残りのガスは、エンクロージャーのカバー10bに開かれたパイプ24により排出される。
【0064】
例えば、ガイドウォール3321、3322は、導入された反応性ガス流の一部を、基体S1、S2の内面上を洗い流すように、かつ動かない容積を残さずまたは乱流を作らないで、前記内面に沿って流れるように仕向ける。
【0065】
図7に示す態様は2個の基体配置のみを示すが、配置の数は当然、2個以上であってよく、例えば、2個以上の基体を上下に配置するか、または図5に示すように上下に配置した複数の基体セットを並列させることによって達成され得る。
【0066】
上述の説明において、反応性ガスの流れを誘導するツーリングは、壁の形である。図8に示すように、これ以外の形のツーリングを採用することも可能である。
この図は、スタッドまたはブロック4241を用いてトレイ4221上に支持された1個の基体S1のみを示している。基体S1は、凹状の内面を下方に向けて配置され、そしてそのエッジを介してブロック4241上に載せられている。ガス流は、基体S1の周囲の環状の隙間4301に流れ込み、そしてトレイ4221を通して流れ込んで、基体S1の内面に供給される。
【0067】
基体S1の内面と向かい合った位置では、トレイ4221が複数の通路または穴4231を有し、誘導用ツーリング4321を支持している。
【0068】
前記ツーリング4321は、基体S1の内部容積の形状と同じでかつ相補的な形の、例えばグラファイトのブロック型であるが、その寸法は基体よりも小さく、それによってブロックの外面と基体の内面の間に隙間が残されている。ブロックには、多数の通路4331が貫通しており、その通路が、トレイ4221を通過した前記ガスを基体の内面付近に運ぶため、基体の内面上には、動かない容積を残さずに移動するガス流がある。
【0069】
上述の説明は、エンクロージャーを通過するガスの総体的な流れ方向が上方に向いている態様に関するが、ガスの総体的な流れ方向が下方を向いた、逆の配置も採用され得る。この場合、予熱器領域は、エンクロージャーの頂点に配置しなければならない。
【0070】
更に、本発明の方法は、当然、エンクロージャー内で同時に受容される異なる寸法の基体についても実行可能である。
【0071】
【実施例】
ボウルプレフォームで構成される基体を、図7に示す種類の装置を用いて強化した。基体は、シェーパーでひだ寄せした平面的な炭素繊維層(plies)から製造され、樹脂で含浸した後、重合して樹脂を炭化することにより固化した。
【0072】
基体は、熱分解性炭素のマトリックスを用い、熱分解性炭素のためのガス状前駆体として天然ガスまたはメタンを含有するガスをエンクロージャーに導入することにより強化した。
【0073】
エンクロージャー内部の温度および圧力は、強化プロセス中、約1000℃および1.5kPaと等しい値において、実質上一定に維持した。
【0074】
強化が完了した時点において、突出物またはすすの形成は観察されなかった。得られたC/C複合材料ボウルの内面は、図9および10に示すように、良好な外観を有していた。ここで、図10は、光学顕微鏡を用い、倍率440倍で得られた画像であって、強化後のボウルの内壁面の表面の一部を表している。
【0075】
比較として、図11に示すように、トレイ3221および3222において、流れを誘導する壁3321および3322と中央開口部3281および3282を省略したこと以外は、同様のプレフォームについて同じ強化プロセスを行った。基体S'1およびS'2は、予熱器プレート316、および図7のブロック3241、3242と類似のブロック321'1、324'2を介して中実のトレイ332'1によって支持されている。前記基体と同じ材料から製造された試料E1、E2を、基体S'2の壁面上と、その側のトレイ3221上にそれぞれ配置した。図12および13は、光学顕微鏡を用い、倍率440倍で得られた画像であり、偏光が、強化後の試料E1およびE2の表面に示されている。試料E1の表面上には、基体に何の予防措置も付けずに配置した状態と比較して、トレイの存在によって与えられた改良にもかかわらず、多数の突出物およびすすの存在がはっきりと観察できる。トレイには中央開口部がなく、しかもガス流を誘導するツーリングを担持していなかったが、それにもかかわらず、トレイは、隙間330'1、330'2および331'2を介してガス流を分配するのに役立っていた。
【0076】
対照して、図10と13は、図12に見られるような種類の突出物またはすすを示していない。これは、本発明の方法が、中空部位を含まない基体に得られたのと同等の品質を、基体の中空部位の壁面の内面で獲得できることを示している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1態様を構成する第1の化学蒸気浸透装置の非常に概略的で断片的な正面−断面図である。
【図2】 図1のII−II平面における、上から見た半面図である。
【図3】 本発明の第2態様を構成する化学蒸気浸透装置の非常に概略的で断片的な正面−断面図である。
【図4】 図3のIV-IV平面における、上から見た半面図である。
【図5】 本発明の第3態様を構成する化学蒸気浸透装置を表す図6のV-V平面における非常に概略的で断片的な正面−断面図である。
【図6】 図5のVI-VI平面における、上から見た半面図である。
【図7】 本発明の第4態様を構成する化学蒸気浸透装置の非常に概略的で断片的な正面−断面図である。
【図8】 基体の凹状の内面に向かって反応性ガス流を誘導するためのツーリングの異なる態様を表す断片的な断面図である。
【図9】 本発明の方法を用いて強化した基体の凹面の表面の総体的な外観を表す写真である。
【図10】 図9に示す強化した基体の凹面の表面の一部を表す、光学顕微鏡写真で得られた写真である。
【図11】 先行技術の化学蒸気浸透装置の非常に概略的な図面である。
【図12】 図11の装置を用いて強化した後の試料の表面状態を表す、光学顕微鏡写真で得られた写真である。
【図13】 図11の装置を用いて強化した後の試料の表面状態を表す、光学顕微鏡写真で得られた写真である。
【符号の説明】
10…エンクロージャー、12、14、24…パイプ、16…予熱器領域、18…プレート、20…拡散体プレート、22、122、222、322、422…支持トレイ、24…ブロック、28、128、228…オリフィス、30、330、331、430…隙間、32、232、332…ガイドウォール、126、226…棚板−支持体またはペッグ(pegs)、130、230…スロット、132、432…反応性ガスの流れを誘導するツーリング、214…流出ガス排気パイプ、316…ガス予熱・拡散トレイまたは予熱器プレート、318…流れ-分配用キャップ、321…ブロック、324、424…ブロックまたはスタッド、326…スペーサー、328…中央開口部、423…通路または穴、433…通路
Claims (6)
- 連続した凹状の内面で表される内部容積および外面を有し、基体の一方の端が閉じている中空ボウル型多孔質基体を化学蒸気浸透法により強化する方法であって、
強化しようとする少なくとも1つの前記ボウル型基体をエンクロージャー内に配置すること、
エンクロージャーの一方の端でエンクロージャーへの反応性ガスの入口である開口部を通って新しい反応性ガスをエンクロージャー内に導入すること、
反応性ガスの入口とエンクロージャーのもう一方の端の流出ガスの出口との間で、エンクロージャーを通過して反応性ガスを流すこと、
前記新しい反応性ガス流の第1分量を少なくとも1つの前記基体の内面に供給し、前記新しい反応性ガス流の第2分量を少なくとも1つの前記基体の外面に直接供給するように、エンクロージャー内に導入される前記新しい反応性ガス流の一部を第1および第2の分量に分配すること、および
エンクロージャー内に導入される反応性ガス流合計のうちの第1分量を、前記基体の凹状の内面全部に沿って流れさせるように、前記反応性ガス流の第1分量を、前記反応性ガスを前記基体の内部容積に向かって基体の内壁面周辺に誘導するツーリングによって、少なくとも1つの前記基体の内面に誘導すること
を含むことを特徴とする中空ボウル型多孔質基体を化学蒸気浸透法により強化する方法。 - エンクロージャー内に配置された基体の面に沿って流れる反応性ガス流全体のうちの前記割合が、5%以上である請求項1記載の方法。
- エンクロージャー内に配置された基体の面に沿って流れる反応性ガス流全体のうちの前記割合が、10%以上である請求項1記載の方法。
- 複数の基体が同時に強化され、該基体が、エンクロージャー内に、エンクロージャーを通過するガスの総体的な流れ方向に、並んで配置されている請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 前記ガス流のうちの第1分量の誘導が、基体の凹状の内面で表される内部容積への行程の一部に入り込む壁部位により与えられる請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 前記ガス流の第1分量の誘導が、基体の凹状の内面で表される内部容積内に収容されるボディ中に形成された通路により提供される請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
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