JP4263269B2 - 多層成形品の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表皮材が部分的に貼合された多層成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂からなる基材の表面に表皮材が部分的に貼合された多層成形品は自動車内装部品(たとえばドアトリムやインストルメントパネル)、家電製品の内外装部品その他の広い分野で多く使用されている。
【0003】
このような多層成形品の製造法としては、例えば、熱可塑性樹脂を射出成形等の種々の方法により予め所望の形状に成形した成形品(基材)の上に、部分的に表皮材を接着剤等を使用して接着積層する方法や、雌雄一対の金型間に表皮材を供給したのち溶融熱可塑性樹脂を供給し、両金型を型締めして溶融熱可塑性樹脂を所望の形状に賦型すると同時にその表面に表皮材を貼合する射出プレス法による方法(特公平5−83058号公報)などが知られている。
【0004】
しかし、のような方法において、前者の方法は工程が複雑なうえに、接着剤に含まれる溶剤による人体や環境等への問題があり、また、後者の方法は、基材を形成すると同時にその表面に表皮材が貼合できるという利点はあるが、表皮材部分も他の樹脂部分と全く同条件で成形圧が加わるため、得られた成形品における表皮材の風合いが損なわれ、特に表皮材として起毛を有するファブリック表皮材を使用した場合には型締め時の圧力により毛倒れが生じて外観が著しく損なわれ、また、発泡層を裏打ちした表皮材を用いるような場合には型締め時の温度と成形圧により発泡層が潰れてクッション性が損なわれるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなことから、本発明者らは、基材を形成すると同時にその表面に部分的に表皮材が貼合できるという射出プレス法の利点を活かしつつ、起毛を有するファブリック表皮材や発泡層を裏打ちした表皮材を使用する場合であっても、毛倒れや発泡層の潰れにより外観が損なわれたりクッション性が損なわれることのない多層成形品の製造法について検討の結果、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、雌雄一対からなり、製品の表皮材貼合面に対応する金型成形面のうちの表皮材と接する金型部分が金型内を金型の開閉方向に進退可能に摺動する可動ブロックからなる金型を使用して、熱可塑性樹脂からなる基材の表面に表皮材が部分的に貼合されてなる多層成形品を製造する方法において、
(1)開放状態にある雌雄両金型間の所定の位置に表皮材を供給する工程、
(2)表皮材と金型面との間に溶融熱可塑性樹脂を供給する工程、
(3)溶融熱可塑性樹脂を供給後あるいは供給しながら型締めする工程、
(4)金型内で溶融熱可塑性樹脂を、少なくともその表面部分が固化状態になるまで一次冷却する工程、
(5)表皮材と接している可動ブロックを金型内に後退させ、表皮材表面と可動ブロックの成形面との間に隙間を形成させる工程、
(6)前記(5)の状態で溶融熱可塑性樹脂を二次冷却する工程、
(7)溶融熱可塑性樹脂が固化したのち両金型を開き、成形品を取り出す工程、
からなることを特徴とする多層成形品の製造方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明を説明する。尚、以下の説明は本発明の一例であり、本発明がこれに限定されるものでないことはいうまでもない。
【0008】
【実施例】
図1は本発明に使用する金型の例をその断面で概略的に示したものである。この金型は雄金型(1)および雌金型(2)の雌雄一対からなっており、製品の表皮材貼合面に対応する金型成形面(この図の例では雌金型の成形面(9))のうちの表皮材と接する金型部分に、可動ブロック(3)が設けられている。この可動ブロック(3)は、その成形面(10)の大きさが貼合される表皮材面とほぼ同等であって、表皮材側の金型(この例では雌金型)内に埋め込まれ、油圧シリンダー(4)などの移動手段により金型内を金型の開閉方向に進退可能に摺動する構造となっている。尚、この可動ブロック(3)は、通常は、該ブロックが最も前進した状態においては、図1に示されるように可動ブロック(3)の成形面(10)とこれが埋め込まれた雌金型(2)の成形面(9)とで連続した一つの成形面を形成するようになっている。
【0009】
可動ブロック(3)が埋め込まれた金型と対向する他の金型(この例では雄金型)内には溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に供給するための溶融樹脂通路(5)が設けられている。溶融樹脂通路の一端は成形面に開口する樹脂供給口(11)と連結し、他端は金型外の可塑化装置(図示せず)と接続されている。樹脂供給口(11)の数は製品形状やその大きさ等により1つでもよいし2以上の複数であってもよく、その配置も適宜決定されるが、樹脂供給口の少なくとも1つは可動ブロック(3)の成形面に対向するような位置に設けることが好ましい。
【0010】
かかる雌雄両金型を使用して多層成形品を製造するにあたり、先ず雌雄両金型を開放状態とし、両金型間の所定の位置に表皮材(6)を供給する。(工程(1))(図2)
このとき、表皮材(6)は可動ブロック(3)の成形面(10)に対応する位置に供給されるが、図2では、雄金型(1)の成形面上の可動ブロック(3)の成形面に対向する位置に表皮材を載置した状態を示している。このとき、表皮材は雄金型の成形面上に単に載置したままでもよいし、表皮材の位置決めのための固定具などを利用してもよい。また、雌雄両金型の位置関係や表皮材の種類等によっては、表皮材を可動ブロック(3)の成形面(10)上に直接載置したり、両面テ−プ等を用いて表皮材の表面側を可動ブロックの成形面に仮り止め、固定してもよい。
【0011】
前記工程(1)の後、表皮材と金型面との間に溶融熱可塑性樹脂(7)を供給する。(工程(2))(図3)
このときの雌雄両金型間のキャビティクリアランスは、具体的には使用する表皮材の種類、厚みなどによって適宜決定されるが、両金型が開放状態にあることは必要である。
【0012】
尚、溶融熱可塑性樹脂の供給時には、通常は、可動ブロック(3)の成形面(10)とこれが埋め込まれた雌金型の成形面(9)とが連続した成形面を形成するように、予め可動ブロックの位置調整が行われる。
【0013】
次いで、雌雄両金型を閉じて型締めを行う。(工程(3))(図4)
この型締めは、溶融熱可塑性樹脂の供給完了後に開始してもよいし、前記工程(2)と同時に、すなわち溶融熱可塑性樹脂を供給しながら並行的に行ってもよい。尚、溶融熱可塑性樹脂の供給完了後に型締めを行う際には、溶融熱可塑性樹脂の供給完了後速やかに型締めを開始することが好ましい。型締めにより、表皮材(6)の表面は溶融熱可塑性樹脂層の表面に部分的に貼合されると同時に可動ブロック(3)の成形面に接触した状態となる。
【0014】
型締めの後、型締め状態を保持しつつ一次冷却を行い(工程(4))、その後直ちに表皮材と接している可動ブロック(3)を油圧シリンダー(4)により金型内に後退させ、表皮材表面と可動ブロックの成形面(10)との間に隙間Aを設け(工程(5))、表皮材部分以外は先の型締め状態を維持しつつ二次冷却を行う。(工程(6))(図5)
【0015】
ここで、可動ブロックを金型内に後退させて表皮材表面と可動ブロックの成形面(10)との間に隙間を設けるまでの一次冷却とは、型締め状態においてその表面部分が固化状態にあればよく、熱可塑性樹脂の厚み方向の中心部まで完全に固化している必要はない。この一次冷却時間は、それが短すぎると製品の変形が大きく、長すぎる場合は表皮材へのダメ−ジが大きくなって毛倒れや発泡層のつぶれが生じるため、使用する表皮材の種類や製品厚み、成形時の樹脂温度、型締め圧力等によって最適の時間が選択される。例えば、金型温度30℃で、樹脂温度200℃のポリプロピレン樹脂を使用し、2.5mm厚の基材に起毛のあるファブリック表皮材を部分的に貼合した多層成形品を製造する場合には、一次冷却時間はおよそ5秒から10秒程度である。
【0016】
可動ブロック(3)を金型内に後退させて表皮材表面と可動ブロックの成形面(10)との間に隙間Aを設ける際の後退量は、それが少なすぎると、例えば表皮材が発泡層を有している場合には圧縮された発泡層の回復量が少なく、また起毛のあるファブリック表皮材の場合には、圧縮により倒れた起毛部が十分に回復できず、成形後においても外観の悪いものとなり、一方、可動ブロックの後退量が多すぎると、基材の表皮材貼合部が冷却不足となって変形等の問題が生じるため、その後退量は、表皮材の成形前の原反厚みtと型締めにより圧縮された状態での表皮材厚みt0 との関係において、(t−t0 )/2〜(t−t0 )の範囲が一般的である。尚、ここでいう隙間Aとは、図5に示すように、可動ブロック(3)が後退することにより形成される、可動ブロック(3)の成形面(10)とこれが埋め込まれた金型の成形面(9)との面間における垂直方向の距離を示すものである。
【0017】
可動ブロック(3)を後退させた状態での二次冷却は、通常の成形方法と同様に、型締めされている溶融熱可塑性樹脂が完全に固化されるまで行われる。溶融熱可塑性樹脂が固化した後、両金型を開き(図6)、基材表面に表皮材が部分的に貼合された多層成形品が取り出される。(図7)(工程(7))
【0018】
かかる方法において、基材全体の表面積に対する表皮材貼合部の面積が大きい場合には、表皮材が貼合された部分の基材部が表皮材の断熱効果による冷却不足によって他の部分と冷却の程度が異なり、製品の変形が問題とされることがある。このような場合には、基材の裏面側にリブ(8)等を設ける(図8)ことにより変形を抑制することができる。
【0019】
以上の説明においては、金型の開閉方向が上下である雌雄両金型を用いた例について述べたが、金型の開閉方向は何ら本質ではなく、開閉方向が左右の横方向である雌雄両金型を用いても全く同様に実施することができる。
【0020】
本発明の方法に適用される表皮材としてはファブリック表皮材が好んで用いられ、特に起毛のあるモケット、トリコット等の織物や編物、ニードルパンチカーペット等の不織布などが好適に使用される。このような表皮材はそれ単独で使用されるのみならず、2種以上を接着剤等で接着した複合表皮材として使用することもでき、特にポリプロピレン発泡シートなどのポリオレフィン系樹脂発泡シートやウレタン発泡シートなどを裏打ち材としたファブリック表皮材は好んで用いられる。また、熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性エラストマーのシートまたはフィルム、紙、金属箔、ネット状物などに前記したような発泡シートを裏打ち材とした複合表皮材も好んで使用される。尚、前記したポリプロピレン発泡シートなどのポリオレフィン系樹脂発泡シートは架橋タイプだけではなく非架橋タイプの発泡シートも用いることができ、その発泡倍率は特に限定されない。また、これら表皮材の使用にあたっては、貼合すべき表皮材形状に応じて予備賦型を行っていてもよい。
【0021】
また、本発明の方法に適用される熱可塑性樹脂としては、一般の射出成形、射出圧縮成形、押出成形、スタンピング成形などで通常使用されているものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ナイロンなどのポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカ−ボネ−ト、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などの一般的な熱可塑性樹脂の他、EPMやEPDMなどの熱可塑性エラストマー、これらの混合物、あるいはこれらを用いたポリマーアロイなどが挙げられ、これらは発泡性であっても非発泡性であってもよい。本発明でいう熱可塑性樹脂とはこれらのすべてを含むものである。また、これらの熱可塑性樹脂には必要に応じてガラス繊維などの強化繊維、タルク、ワラストナイトなどの各種の無機もしくは有機フィラーなどの充填材を含有していてもよく、もちろん、通常使用される各種の顔料、滑材、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤などが適宜配合されていてもよい。
【0022】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、基材を形成すると同時にその表面に部分的に表皮材が貼合できるという射出プレス法の利点を活かしつつ、起毛を有するファブリック表皮材や発泡層を裏打ちした表皮材を使用する場合であっても、毛倒れや発泡層の潰れにより外観が損なわれたりクッション性が損なわれることがなく、しかも変形の少ない外観の良好な表皮材が部分的に貼合された多層成形体を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に使用される金型例を断面概略図で示したものである。
【図2】本発明の方法による製造工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図3】本発明の方法による製造工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図4】本発明の方法による製造工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図5】本発明の方法による製造工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図6】本発明の方法による製造工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図7】本発明の方法による得られる多層成形品の例を断面図で示したものである。
【図8】本発明の方法による得られるリブ付の多層成形品の例を断面図で示したものである。
【符号の説明】
1:雄金型
2:雌金型
3:可動ブロック
4:油圧シリンダー
5:溶融樹脂通路
6:表皮材
7:溶融熱可塑性樹脂
8:リブ
9:雌金型成形面
10:可動ブロック成形面
11:樹脂供給口
A:隙間

Claims (3)

  1. 雌雄一対からなり、製品の表皮材貼合面に対応する金型成形面のうちの表皮材と接する金型部分が金型内を金型の開閉方向に進退可能に摺動する可動ブロックからなる金型を使用して、基材を形成すると同時にその表面に部分的に表皮材を貼合し、熱可塑性樹脂からなる基材の表面に表皮材が部分的に貼合されてなる多層成形品を製造する方法において、
    (1)開放状態にある雌雄両金型間の所定の位置に表皮材を供給する工程、
    (2)表皮材と金型面との間に溶融ポリプロピレン樹脂を供給する工程、
    (3)溶融ポリプロピレン樹脂を供給後あるいは供給しながら型締めする工程、
    (4)金型内で溶融ポリプロピレン樹脂を、少なくともその表面部分が固化状態になるまで5〜10秒間、型締め状態を保持しつつ一次冷却する工程、
    (5)表皮材と接している可動ブロックを金型内に後退させ、表皮材表面と可動ブロックの成形面との間に隙間を形成させる工程、
    (6)前記(5)の状態で溶融ポリプロピレン樹脂を二次冷却する工程、
    (7)溶融ポリプロピレン樹脂が固化したのち両金型を開き、成形品を取り出す工程、
    からなることを特徴とする多層成形品の製造方法。
  2. 前記工程(5)における隙間が、使用する表皮材の成形前の原反の厚みと前記工程(3)の型締めにより圧縮された状態における表皮材厚みの差の1/2以上である請求項1に記載の多層成形品の製造方法。
  3. 表皮材が起毛を有するファブリック表皮である請求項1又は2に記載の多層成形品の製造方法。
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