JP4262038B2 - チューブ被覆ベルト及びその製造方法、並びに加熱定着装置 - Google Patents
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Description
また、接着耐久性アップと高精度化を目的として、弾性層と接着層を具備するPFAチューブ被覆定着ローラであって、厚みが3〜100μmの自己接着性シリコーンゴムからなる接着層を有する定着ローラが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、シリコーン弾性層/接着剤層/フッ素樹脂被覆層の構成を有する弾性ローラにおいて、接着性と厚みの均一性を確保するために、選択された官能基を有する有機ケイ素化合物を含む付加型シリコーン組成物の硬化物からなる厚みが0.1〜0.3mmの接着剤層を有するローラが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
さらに、フッ素樹脂製チューブ被覆ローラおよびその製造方法が開示されている。(例えば、特許文献4参照。)。
さらに、芯金の上にシリコーンゴム層を形成し、その上に、アクリルもしくはメタクリル官能性シランカップリング剤が添加された自己接着性シリコーンゴムを塗布し、さらにその上にフッ素樹脂チューブを加熱接着する方法が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。
例えば、予めゴム層を被覆した金属基体ベルトとPFAチューブ間に付加型のシリコーンゴム接着剤を介在させ、次にチューブ外表面から、扱きリングを用いて接着剤を引き伸ばし、接着層の厚みを薄く整えてチューブ被覆定着ベルトを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献5、9参照。)。
熱ローラ方式の場合ニップ巾を広げるにはローラ外径を大きくする方法がとられるが、装置の大型化に繋がる。これに対し、ベルト定着方式の定着装置においては、定着部材がベルト形状であり、その形状自由度の高さにより容易にワイドニップを確保できる構成とすることができる。つまり、ベルト部材はローラ部材に比べ同一外径に対しニップ巾を広く確保できる特徴を有しており、小径化に有利になっているといえる。
例えば、弾性ローラのシリコーンゴム層の上にフッ素樹脂チューブを接着するために、アクリルもしくはメタクリル官能性シランカップリング剤が添加された自己接着性シリコーンゴムを用いる方法が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。
また、シリコーンゴム中に、不飽和基含有シランカップリング剤およびエポキシ基含有シランカップリング剤を併用し、さらにアルミニウム化合物乃至ジルコニウム化合物を添加することでプラスチックとの接着性を向上させる方法が開示示されている(例えば、特許文献7参照。)。
したがって、本発明の目的は、特にカラー画像等の高画質定着に適した、小型化、高速化を指向した加熱定着装置に適した定着ベルト、定着部材に好適に使用することのできるチューブ被覆ベルトおよびその製造方法、並びに加熱定着装置を提供することにある。
該接着層が、
(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する二種類以上のオルガノポリシロキサンで、少なくとも一種類は一般式
(R3SiO1/2)X(SiO4/2)1.0 (I)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、Xは0.65〜1.9の数である)
で表されるレジン状オルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(C)白金系化合物、
および
(D)一分子中に、末端不飽和基、末端エポキシ基、ケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルコキシ基からなる群から選ばれる2種類以上の官能基を有する有機ケイ素化合物、
を含む
オルガノポリシロキサン接着剤組成物の硬化物からなる接着層であることを特徴とするチューブ被覆ベルトである。
さらに、上記本発明のチューブ被覆ベルトは、
前記一般式
(R3SiO1/2)X(SiO4/2)1.0 (I)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、Xは0.65〜1.9の数である)
で表されるレジン状オルガノポリシロキサンの含有量が、前記(A)成分を100質量部としたとき、30質量部以上、60質量部以下であるのが好ましい。
さらに、上記本発明のチューブ被覆ベルトは、前記オルガノポリシロキサン接着剤組成物が、0.2Pa・s以上、5Pa・s以下の粘度を有するものであるのが好ましい。
さらに、上記本発明のチューブ被覆ベルトは、前記シリコーンゴム弾性層が、前記シリコーンゴム弾性層の厚みをt1(μm)とし、熱伝導率をλ1[W/(m・K)]としたとき、下記の関係式(1)
200(μm・m・K/W)≦t1/λ1≦650(μm・m・K/W) (1)
を満足し、
かつ、前記接着層の厚みt2(μm)が、1μm以上、10μm以下であることが好ましい。
200(μm・m・K/W)≦t1/λ1≦420(μm・m・K/W) (2)
を満たすものが好ましい。
さらに、上記本発明のチューブ被覆ベルトは、前記ベルト状基材が、20〜60μmの厚みを有する金属ベルトであるのが好ましい。
さらに、上記本発明のチューブ被覆ベルトは、前記樹脂チューブの厚みt3(μm)が、10μm以上、30μm以下であり、かつ、前記シリコーンゴム弾性層の厚みt1(μm)が、200μm以上であることが好ましい。
さらに、上記本発明のチューブ被覆ベルトは、前記ベルト状基材が、ニッケル電鋳ベルトであるのが好ましい。
さらに、上記本発明のチューブ被覆ベルトは、前記樹脂チューブが、PFAチューブであるのが好ましい。
さらに、上記本発明の加熱定着装置は、前記加熱定着装置が、プロセススピード100mm/sを超える加熱定着装置であって、かつ、前記チューブ被覆ベルトが、該チューブ被覆ベルトが形成するニップ幅の5倍以下の外径を有するものであるのが好ましい。
ベルト基材上に形成したシリコーンゴム弾性層の表面にオルガノポリシロキサン接着剤組成物を塗工し、その上を樹脂チューブで被覆し、該オルガノポリシロキサン接着剤組成物を硬化して接着層を形成する工程を有し、
該該オルガノポリシロキサン接着剤組成物は、
(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する二種類以上のオルガノポリシロキサンで、少なくとも一種類は一般式
(R 3 SiO 1/2 ) X (SiO 4/2 ) 1.0 (I)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、Xは0.65〜1.9の数である)で表されるレジン状オルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(C)白金系化合物、
および
(D)一分子中に、末端不飽和基、末端エポキシ基、ケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルコキシ基からなる群から選ばれる2種類以上の官能基を有する有機ケイ素化合物、を含むことを特徴とするチューブ被覆ベルトの製造方法である。
さらに、前記一般式
(R 3 SiO 1/2 ) X (SiO 4/2 ) 1.0 (I)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、Xは0.65〜1.9の数である)で表されるレジン状オルガノポリシロキサンの含有量が、前記(A)成分を100質量部としたとき、30質量部以上、60質量部以下であることが好ましい。
さらに、前記オルガノポリシロキサン接着剤組成物が、0.2Pa・s以上、5Pa・s以下の粘度を有することが好ましい。
さらに、前記(D)の有機ケイ素化合物が、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、および下記式で表されるオルガノペンタシロキサンから選ばれる少なくとも1つであることが好ましい:
ViMe 2 SiO(Me 2 SiO) 3 Si(Ome) 3
(上記式中、Viはビニル基、Meはメチル基を表す)。
さらに、前記樹脂チューブが、PFAチューブであることが好ましい。
また、チューブ被覆ベルトの熱応答性の向上、接着耐久性の向上により、熱供給遅れに起因する記録紙先端、後端でのグロス差を押え、小型化、高速化を指向した加熱定着装置に適した定着ベルトおよび加熱定着装置を提供することができる。
まず、本発明のチューブ被覆ベルトについて説明する。本発明のチューブ被覆ベルトは、ベルト状基材の外面上にシリコーンゴム弾性層を有し、このシリコーンゴム弾性層上に接着層を介して樹脂チューブを有するチューブ被覆ベルトである。
図1に本発明の一実施形態のチューブ被覆ベルトの一例の層構成模式図を示す。本発明のチューブ被覆ベルト10は、基層となるベルト状基材1と、その外面に積層したシリコーンゴム弾性層2と、接着層3を介してシリコーンゴム弾性層2に被覆された樹脂チューブ層4、さらに、所望の場合には、ベルト状基材1の内面に積層した摺動層5を含む複合構造を有する。
また、シリコーンゴム弾性層2をコーティング法、ディップ法、スプレー法等の塗布成形方法を用いて形成する場合、液状シリコーンゴム材料等のシリコーンゴム原料をそのまま使用してもよいし、あるいは、上記原料をトルエン、キシレン等の溶剤を用いてシリコーンゴム材料を液状化して用いてもよい。
<基層(ベルト状基材)>
本発明のチューブ被覆ベルトは、ベルト状基材1を基層とする。ベルト状基材1は、その内部に設けられた加熱源からの熱エネルギをシリコーンゴム弾性層2に伝達可能な高熱伝導性と定着ベルトとしての可とう性を保有する必要がある。
具体的には、ベルト状基材は、加熱定着装置等による加熱手段に応じて、ポリイミドなどを主成分とする耐熱性樹脂やニッケル、SUS、アルミニウム等の金属およびそれらの合金等からなるものを用いることができる。中でも電鋳法によって得られたニッケル電鋳ベルトの寸法精度は高いことが知られており、定着ベルトのベルト状基材に好適である。
本発明において、シリコーンゴム弾性層2は、ニップ部において被記録材上に保持されたトナー画像を覆ってトナー画像への熱の伝達を確実にするとともに、ベルト状基材の復元力を補って回転・屈曲による疲労を緩和する。また、シリコーンゴム弾性層2は、チューブ被覆ベルト表面の未定着トナー画像表面への追従性を増し、熱を効率よくトナー画像へ伝達させる。特に、未定着トナーののり量が多いカラー画像で良好な加熱定着画像を得るには、シリコーンゴム弾性層2は必須の構成である。
200(μm・m・K/W)≦t1/λ1≦650(μm・m・K/W) (1)
さらに、本発明におけるシリコーンゴム弾性層は、より好ましくは次の関係式(2)を満足する。
200(μm・m・K/W)≦t1/λ1≦420(μm・m・K/W) (2)
シリコーンゴム弾性層2の熱伝導率λ1があまりに小さい場合には、熱抵抗が大きくなってチューブ被覆ベルトの表層における温度上昇が遅くなることがある。一方、シリコーンゴム弾性層2の熱伝導率λ1があまりに大きい場合には、硬度が高くなったり圧縮永久歪みが悪化したりすることがある。
本発明において、接着層は、オルガノポリシロキサン接着剤組成物の硬化物からなる接着層であることが好ましく、特定のオルガノポリシロキサン成分を含むオルガノポリシロキサン接着剤組成物の硬化物からなる接着層であることがより好ましい。
接着層の形成に特定のオルガノポリシロキサン成分を含むオルガノポリシロキサン接着剤組成物を用いると、作業性および形成された接着層が耐久性に優れたものとなる点から好ましい。
付加反応型のオルガノポリシロキサン接着剤組成物は、一般的に(イ)アルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサンと、(ロ)オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(ハ)白金系触媒と、接着成分である(ニ)エポキシ基、アルコキシ基等の官能基を一分子中に有する有機ケイ素化合物を含有することが知られている。
(R3SiO1/2)X(SiO4/2)1.0 (I)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、Xは0.65〜1.9の数である)
で表されるレジン状オルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(C)白金系化合物、
および、
(D)一分子中に、末端不飽和基、末端エポキシ基、ケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルコキシ基からなる群から選ばれる2種類以上の官能基を有する有機ケイ素化合物、
を含むオルガノポリシロキサン接着剤組成物の硬化物からなる接着層であることを特徴とし、上記特定のオルガノポリシロキサン成分を含むオルガノポリシロキサン接着剤組成物を用いて接着層を形成する。
(A)成分が有する前記アルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基が挙げられる。(A)成分は、一分子中に、同一のアルケニル基を含んだものであっても、異なるアルケニル基を含んだものであってもよい。(A)成分としては、50〜3,000Pa・sの粘度(25℃)を有するものを用いるのが好ましい。
(R3SiO1/2)X(SiO4/2)1.0 (I)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、Xは0.65〜1.9の数である)
で表されるレジン状オルガノポリシロキサン((A’)成分と表すことがある)は、得られる接着層の機械的強度、接着強度を向上させるための成分である。
Xの値は、上記レジン状オルガノポリシロキサンにおけるSiO4/2単位(Q単位と表すことがある)に対するR3SiO1/2単位(M単位と表すことがある)のモル比として29Si核磁気共鳴(29Si−NMR)分光分析法により求めることができる。
CH2=CH(CH3)2SiO1/2単位、(CH3)3SiO1/2単位、およびSiO4/2単位からなり、SiO4/2単位に対するCH2=CH(CH3)2SiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位の合計量のモル比が1.8であり、25℃で0.21Pa・sの粘度を有し、15モル%(5.6質量%)のビニル基を含むレジン状オルガノポリシロキサン、CH2=CH(CH3)2SiO1/2単位、(CH3)3SiO1/2単位、およびSiO4/2単位からなり、SiO4/2単位に対するCH2=CH(CH3)2SiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位の合計量のモル比が0.7であり、50Pa・sの粘度を有し、15モル%(5.6質量%)のビニル基を含むレジン状オルガノポリシロキサンを挙げることができる。
(A’)成分は、0.2〜50Pa・sの粘度(25℃)を有するものを用いるのが好ましい。なお、(A’)成分は、前記特許文献8等に開示された方法で製造することができる。
本発明に使用することのできる(B)成分の具体例としては、例えば、H(CH3)2SiO1/2単位、(CH3)3SiO1/2単位、およびSiO4/2単位からなり、1.0質量%のケイ素結合水素原子を含み、0.024Pa・sの粘度を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン等を挙げることができる。
(B)成分は、0.02〜0.03Pa・sの粘度(25℃)を有するものを用いるのが好ましい。なお、(B)成分は、前記特許文献8等に開示された方法で製造することができる。
また、接着層の厚みを10μm以下とすると、本発明のチューブ被覆ベルトを加熱定着装置に組み込み、定着ベルトとして使用した場合等において、内面側に設置されたヒータや電磁誘導加熱によりベルト状基材の金属層で発生させた熱を、内側から表層側へ速やかに供給することができる。これにより、定着装置の起動時間を短くすることができる。また、チューブ被覆ベルトのシリコーンゴム弾性層から受給した熱エネルギの表面層(PFAチューブ層)への伝達に遅れを生じることがなく、これにより表面温度が速やかに回復される。このため加熱定着装置のニップ部内を被記録材が通過する際、チューブ被覆ベルトの表面温度が、二周目、三周目においても低下することがない。これにより、被記録材の先端部と後端部とで定着性の低下が起こることもなくなり、例えば、被記録材上のグロスの均一性が向上する。
樹脂チューブ4としては、例えば、PFAチューブ、FEPチューブ、EPEチューブを挙げることができる。これらの樹脂チューブのなかではPFAチューブが好ましい。
摺動層5は、本発明の必須の構成要件ではないが、定着装置の構成またはチューブ被覆ベルトの構成によっては、定着装置を作動させる際の駆動トルクの低減を図る上で、摺動層5が形成されていることが好ましい。
本発明の加熱定着装置は、本発明のチューブ被覆ベルトを使用することを特徴とし、特に、加熱定着装置が、プロセススピード100mm/sを超える加熱定着装置であって、かつ、用いるチューブ被覆ベルトの外径が、形成されるニップ幅の5倍以下であるチューブ被覆ベルトを使用したものが好ましい。
<加熱定着装置1>
本発明のチューブ被覆ベルトは次に説明するヒーター加熱方式の加熱定着装置に搭載することができる。
図2は本発明の一実施形態の加熱定着装置の横断面を示す模式図である。加熱定着装置200は、加熱体としてセラミックヒータを用いたベルト加熱方式の加熱定着装置である。定着ベルト210は、上記本発明のチューブ被覆ベルトを定着ベルトとしたものである。定着ベルトは、装置のため小径のもの、具体的にはφ35mm以下のものが選ばれる。
加圧用剛性ステイ222は、ベルトガイド216の内側に挿通されている。
<加熱定着装置2>
図3は、本発明の他の実施形態の加熱定着装置の横断面を示す模式図である。加熱定着装置300は、電磁誘導加熱方式の加熱定着装置であり、定着ベルト310は前述の本発明チューブ被覆ベルトを定着ベルトとしたのものである。定着ベルトは装置のため小径のもの、具体的にはφ35mm以下のものが選ばれる。
シリコーンゴム原料組成物を加熱、成形して厚み10mmの板状の試験片を作製し、迅速熱伝導率計QTM−500(京都電子株式会社製;商品名)を用いて測定した。
実施例または比較例のチューブ被覆ベルトを搭載した前記加熱定着装置1(Fu−1と表すことがある)または電磁誘導加熱方式の加熱定着装置2(Fu−2と表すことがある)にシアンの未定着トナー画像を保持した被記録材を通紙して定着し、得られた定着ベタ画像について、被記録材の先端領域と後端領域のそれぞれのグロスを5箇所づつ測定し、その平均値の差を評価するとともに目視により光沢の均一性、光沢ムラを観察し評価した。
なお、(光沢度の差による)光沢の均一性の評価においては、次の基準で評価した。
OK:光沢度の差が5以下であった。
NG:光沢度の差が5を越えた。
OK: 5人の被験者による目視判定の結果、5人全てが光沢ムラが少ないと判断した場合。
NG: 5人の被験者による目視判定の結果、一人以上の被験者が光沢ムラを指摘した場合。
実施例または比較例のチューブ被覆ベルトを上記加熱定着装置1(Fu−1)に搭載し、定着温度を200℃に制御して、チューブ被覆ベルトを空回転し、50時間ごとに回転を止めベルト表面全周を目視観察し、チューブの浮き、破れ等の損傷の発生有無を確認することで接着耐久性を評価した。
接着耐久性は、次の基準で評価した。
500H-OK : 500時間経過時点でベルト表面観察を行ったところ何ら損傷が見受けられなかった。
450H-一部剥離:450時間経過時点でベルト表面観察を行った際、ベルト中央部約5mm巾で半周傾向にチューブの浮きが認められた。
実施例または比較例のチューブ被覆ベルトを、キヤノン株式会社製LBP-2510(商品名)の定着ユニットに搭載し、起動時間(25℃条件で1時間放置した後、プリント信号を送った時からプリントが完了するまでの時間)を測定した。
上記起動時間の評価に用いた装置により、10万枚の通紙テストを行った。10万枚通紙テストの前後におけるチューブ被覆ベルトについて、シリコーンゴム弾性層とPFAチューブ表層の接着剥離テストを行い、接着強度の低下率を求め、接着耐久性を評価した。
接着剥離テストとしては、チューブ被覆ベルトの周方向に10mm間隔で2本のスリットを入れ、PFA表層の一部を引っ張って剥離し、この部分を引張試験機にクランプして90度剥離テストを行った。
ベルトの内径と略同一の金属製芯材上にシリコーンゴム弾性層までを形成した状態で基材を保持し、シリコーンゴム弾性層表面にオルガノポリシロキサン接着剤組成物を薄く略均一に塗布する。一方、PFAチューブの片端を保持した状態でもう片端を広げ、シリコーンゴム弾性層の形成されたベルト基材の片端からオルガノポリシリキサン接着剤組成物を介してPFAチューブを被せる際の被覆しやすさを加工性とした。
なお、加工性の評価においては、次の基準で評価した。
◎:略同一の条件で10本のPFAチューブ被覆を行った際にチューブに生じるテンションの影響による伸びや皺が発生しなかった場合。
○: 同様に10本の被覆を行った際に1本ないしい2本に伸びや皺が発生した場合。
ベルト状基材として、内径24mmおよび30mm、厚み35μmの表1に示すニッケル電鋳無端ベルトを用い、シリコーンゴム弾性層を形成するためのシリコーンゴム原料組成物として、付加型シリコーンゴム(DY35−561A/B、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製;商品名)100質量部(固形分)に対し熱伝導付与剤として酸化マグネシウム(パイロキスマ3320、協和科学工業株式会社製;商品名)を表1に示した量で配合し、混練して得たシリコーンゴム原料組成物を用いた。このシリコーンゴム原料組成物を、リングコート法を用いてベルト状基材に塗工し、硬化してシリコーンゴム弾性層を形成した。
上記塗工ヘッド431と円筒体保持冶具上のベルト状基材441とのギャップ部分に塗工液を供給する供給口は、該塗工ヘッドと一体でも良いし別部材でも良いが図4に記載したものでは別部材の塗工液供給ノズル445として塗工ヘッド進行方向前方に設けてある。また塗工液供給位置は塗工液粘度および塗工厚みの関係で液落ちしない状態であれば円筒体の上方に限らずどの位置でも良い。本実施例においては、円筒体保持冶具411の上方からシリコーンゴム原料組成物(塗工液と表すことがある)の供給を行い、単位時間当り一定量を供給して塗工を行った。
また、塗工液供給ノズル445は、塗工液搬送用のチューブ446で定量(時間当たり)吐出可能な電動式のシリンダポンプ447に接続しておりそこから塗工液448が供給される。シリンダーポンプは液の脈動が起きないため安定した吐出が可能である。
(B)成分として、H(CH3)2SiO1/2単位、(CH3)3SiO1/2単位、およびSiO4/2単位からなり、1.0質量%のケイ素結合水素原子を含み、25℃における粘度が0.024Pa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン30部、
(C)成分として、塩化白金酸の2-エチルヘキシルアルコール溶液(白金量で2質量%含有)0.4部、
(D)成分として、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン15部を順次秤量後、ダルトン社製万能混合攪拌機を用い混合攪拌し、オルガノポリシロキサン接着剤組成物を調製した。得られたオルガノポリシロキサン接着剤組成物の25℃における粘度は4.0Pa・sであった。
得られたチューブ被覆ベルトについて纏め表1に示した。
また、実施例14のチューブ被覆ベルトの接着層の厚みは1μmに調整したが、接着層の厚みが1μm未満のものは接着層の厚みを均一にすることが困難であり、接着不良が認められた。
ベルト状基材として、内径34mm、厚さ50μmのニッケル電鋳ベルトを用い、シリコーンゴム弾性層を形成するためのシリコーンゴム原料組成物として実施例1と同様のシリコーンゴム原料組成物を用いた。このシリコーンゴム原料組成物を、リングコート法を用いてベルト状基材に塗工し、200℃・4時間の条件で加熱硬化して、300μmの厚みを有するシリコーンゴム弾性層を形成した。
このポリオルガノシロキサン接着剤組成物を用い、実施例1-17と同様にして、表5に示すチューブ被覆ベルト(B1)を得た。得られたチューブ被覆ベルトについて上記の評価を行った。得られた結果を表5に示す。
(A)成分として、900Pa・sの粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(a12と表すことがある)60部、レジン状オルガノポリシロキサン(a21と表すことがある)40部、(D)成分として、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(d2と表すことがある)15部を用いた以外は実施例25と同様にしてポリオルガノシロキサン接着剤組成物(Ad2)を調製した。得られたポリオルガノシロキサン接着剤組成物について纏め表4に示した。
このポリオルガノシロキサン接着剤組成物を用いて実施例25と同様にして表5に示すチューブ被覆ベルト(B2)を製造し、その性能を評価した。得られた結果を表5に示す。
なお、上記ポリオルガノシロキサン接着剤組成物の粘度は3.4Pa・sであった。
(A)成分として、ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(a11)を60部およびレジン状オルガノポリシロキサン(a21)を40部を用いた以外は実施例25と同様にして、ポリオルガノシロキサン接着剤組成物(Ad3)を調製した。得られたポリオルガノシロキサン接着剤組成物について纏め表4に示した。
このポリオルガノシロキサン接着剤組成物を用いて実施例25と同様にして表5に示すチューブ被覆ベルト(B3)を製造し、その性能を評価した。得られた結果を表5に示す。
なお、上記ポリオルガノシロキサン接着剤組成物の粘度は5.6Pa・sであった。
(A)成分として、50Pa・sの粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン (a13と表すことがある)70部およびCH2=CH(CH3)2SiO1/2単位、(CH3)3SiO1/2単位、およびSiO4/2単位からなり、SiO4/2単位に対するCH2=CH(CH3)2SiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位の合計量のモル比が0.7であり、50Pa・sの粘度を有し、15モル%(5.6質量%)のビニル基を含むレジン状オルガノポリシロキサン(a22と表すことがある)30部、(D)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(d3と表すことがある)15部を用いた以外は実施例25と同様にして、ポリオルガノシロキサン接着剤組成物(Ad4)を調製した。得られたポリオルガノシロキサン接着剤組成物について纏め表4に示した。
このポリオルガノシロキサン接着剤組成物を用いて実施例25と同様にして表5に示すチューブ被覆ベルト(B4)を製造し、その性能を評価した。得られた結果を表5に示す。
なお、上記ポリオルガノシロキサン接着剤組成物の粘度は4.7Pa・sであった。
(A)成分として、ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(a13)40部およびレジン状オルガノポリシロキサン(a22)60部、(D)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(d3)15部を用いた以外は実施例25と同様にして、ポリオルガノシロキサン接着剤組成物(Ad5)を調製した。得られたポリオルガノシロキサン接着剤組成物について纏め表4に示した。
このポリオルガノシロキサン接着剤組成物を用いて実施例25と同様にして表5に示すチューブ被覆ベルト(B5)を製造し、その性能を評価した。得られた結果を表5に示す。
なお、上記ポリオルガノシロキサン接着剤組成物の粘度は4.7Pa・sであった。
(A)成分として50Pa・sの粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(a13と表すことがある)100部を用いた以外は実施例25と同様にして、ポリオルガノシロキサン接着剤組成物(Ad6)を調製した。得られたポリオルガノシロキサン接着剤組成物について纏め表4に示した。
このポリオルガノシロキサン接着剤組成物を用いて実施例25と同様にして表5に示すチューブ被覆ベルト(B6)を製造し、その性能を評価した。得られた結果を表5に示す。
なお、上記ポリオルガノシロキサン接着剤組成物の粘度は4.7Pa・sであった。
(A)成分として、900Pa・sの粘度を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(a12と表すことがある)100部を用いた以外は実施例25と同様にして、ポリオルガノシロキサン接着剤組成物(Ad7)を調製した。得られたポリオルガノシロキサン接着剤組成物について纏め表4に示した。
このポリオルガノシロキサン接着剤組成物を用いて実施例25と同様にしてチューブ被覆ベルトを製造しようとしたところ、このポリオルガノシロキサン接着剤組成物の粘度が高すぎたためにチューブ挿入の際にチューブに亀裂が生じ挿入することができなかった。
なお、上記ポリオルガノシロキサン接着剤組成物の粘度は34Pa・sであった。
またこの接着剤組成物を用いて得られるチューブ被覆ベルトは、接着耐久性に優れ、熱応答性にも優れ、小型化、高速化を指向した加熱定着装置に適した定着ベルトとして使用することができる。これにより、画像品質に優れる加熱定着装置を提供することができる。
2 シリコーンゴム弾性層
3 接着層
4 樹脂チューブ(樹脂チューブ層)
5 摺動層
10 チューブ被覆ベルト
200、300 加熱定着装置
210、310 定着ベルト
212 セラミックヒータ
216 ベルトガイド
222、322 加圧用剛性ステイ
230、330 加圧部材(加圧ローラ)
240、340 摺動板
N 定着ニップ部
t トナー画像
P 被記録材
317 磁性コア
318 励磁コイル
319 ベルトガイド部材
326 温度センサ
411 円筒体保持冶具
431 塗工ヘッド
441 ベルト状基材
442 塗工台
444 塗工ヘッド保持部
445 塗工液供給ノズル
446 塗工液搬送用チューブ
447 シリンダポンプ
448 塗工液
451−453 モータ
Claims (16)
- ベルト状基材と、該ベルト状基材上に設けられたシリコーンゴム弾性層と、該シリコーンゴム弾性層上に接着層を介して接着されている樹脂チューブとを有するチューブ被覆ベルトにおいて、
該接着層が、
(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する二種類以上のオルガノポリシロキサンで、少なくとも一種類は一般式
(R3SiO1/2)X(SiO4/2)1.0 (I)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、Xは0.65〜1.9の数である)で表されるレジン状オルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(C)白金系化合物、
および
(D)一分子中に、末端不飽和基、末端エポキシ基、ケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルコキシ基からなる群から選ばれる2種類以上の官能基を有する有機ケイ素化合物、
を含むオルガノポリシロキサン接着剤組成物の硬化物からなる接着層であることを特徴とするチューブ被覆ベルト。 - 前記一般式
(R3SiO1/2)X(SiO4/2)1.0 (I)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、Xは0.65〜1.9の数である)で表されるレジン状オルガノポリシロキサンの含有量が、前記(A)成分を100質量部としたとき、30質量部以上、60質量部以下であることを特徴とする請求項1記載のチューブ被覆ベルト。 - 前記オルガノポリシロキサン接着剤組成物が、0.2Pa・s以上、5Pa・s以下の粘度を有するものであることを特徴とする請求項1または2記載のチューブ被覆ベルト。
- 前記シリコーンゴム弾性層が、前記シリコーンゴム弾性層の厚みをt1(μm)とし、熱伝導率をλ1[W/(m・K)]としたとき、下記の関係式(1)
200(μm・m・K/W)≦t1/λ1≦650(μm・m・K/W) (1)
を満足し、
かつ、前記接着層の厚みt2(μm)が、1μm以上、10μm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のチューブ被覆ベルト。 - 前記シリコーンゴム弾性層が、下記の関係式(2)
200(μm・m・K/W)≦t1/λ1≦420(μm・m・K/W) (2)
を満たすものであることを特徴とする請求項4に記載のチューブ被覆ベルト。 - 前記樹脂チューブの厚みt3(μm)が、10μm以上、30μm以下であり、かつ、前記シリコーンゴム弾性層の厚みt1(μm)が、200μm以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のチューブ被覆ベルト。
- 前記ベルト状基材が、20〜60μmの厚みを有する金属ベルトであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のチューブ被覆ベルト。
- 前記ベルト状基材が、ニッケル電鋳ベルトであることを特徴とする請求項7に記載のチューブ被覆ベルト。
- 前記樹脂チューブが、PFAチューブであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のチューブ被覆ベルト。
- 請求項1ないし9のいずれかに記載のチューブ被覆ベルトを使用することを特徴とする加熱定着装置。
- 前記加熱定着装置が、プロセススピード100mm/sを超える加熱定着装置であって、かつ、前記チューブ被覆ベルトが、該チューブ被覆ベルトが形成するニップ幅の5倍以下の外径を有するものであることを特徴とする請求項10記載の加熱定着装置。
- 請求項1に記載のチューブ被覆ベルトの製造方法であって、
ベルト基材上に形成したシリコーンゴム弾性層の表面にオルガノポリシロキサン接着剤組成物を塗工し、その上を樹脂チューブで被覆し、該オルガノポリシロキサン接着剤組成物を硬化して接着層を形成する工程を有し、
該該オルガノポリシロキサン接着剤組成物は、
(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する二種類以上のオルガノポリシロキサンで、少なくとも一種類は一般式
(R 3 SiO 1/2 ) X (SiO 4/2 ) 1.0 (I)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、Xは0.65〜1.9の数である)で表されるレジン状オルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(C)白金系化合物、
および
(D)一分子中に、末端不飽和基、末端エポキシ基、ケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルコキシ基からなる群から選ばれる2種類以上の官能基を有する有機ケイ素化合物、を含むことを特徴とするチューブ被覆ベルトの製造方法。 - 前記一般式
(R 3 SiO 1/2 ) X (SiO 4/2 ) 1.0 (I)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、Xは0.65〜1.9の数である)で表されるレジン状オルガノポリシロキサンの含有量が、前記(A)成分を100質量部としたとき、30質量部以上、60質量部以下であることを特徴とする請求項12記載のチューブ被覆ベルトの製造方法。 - 前記オルガノポリシロキサン接着剤組成物が、0.2Pa・s以上、5Pa・s以下の粘度を有することを特徴とする請求項12または13記載のチューブ被覆ベルトの製造方法。
- 前記(D)の有機ケイ素化合物が、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、および下記式で表されるオルガノペンタシロキサンから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載のチューブ被覆ベルトの製造方法:
ViMe 2 SiO(Me 2 SiO) 3 Si(Ome) 3
(上記式中、Viはビニル基、Meはメチル基を表す)。 - 前記樹脂チューブが、PFAチューブであることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載のチューブ被覆ベルトの製造方法。
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