JP4260293B2 - マルチピースゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飛び性能及び打撃フィーリングに優れたマルチピースゴルフボールに関するもので、更に詳述すると、ツーピースゴルフボールが本来有している低スピンを保持しつつ、打撃時の高い打ち出し角度を保持し、しかも打撃フィーリングを改良したマルチピースゴルフボールに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
現在使用されているゴルフボールとしては、固型のゴム球(ソリッドセンター)又は液体を詰めたゴム袋の球(リキッドセンター)を芯にして、これに糸ゴムを巻付け、更にパラタ等のカバーで被覆してなる糸巻きゴルフボールと、ゴム製のコアをアイオノマーなどの合成樹脂製カバーで被覆してなるツーピースゴルフボールが一般的である。
【0003】
糸巻きゴルフボールは、打撃時の衝撃(打撃フィーリング)及びコントロール性に優れているという特徴を有しているが、本来スピンがかかりやすい構造であるため、アゲインストな風の中では十分な飛距離が確保できず、また耐久性に劣るという欠点を有している。一方、ツーピースゴルフボールは、糸巻きゴルフボールに比べて耐久性に優れ、低スピン、高反発性でアゲインストな風の中にあっても飛距離を確保できるという特徴を有しているが、反発性確保の点から一般に硬く、打撃フィーリングが糸巻きゴルフボールよりも劣っているという欠点がある。
【0004】
ツーピースゴルフボールの飛び性能を確保しつつ、打撃フィーリングを改良したゴルフボールとして、カバーとコアとの間に中間層を設けたり、カバーを2層以上としたり、コアを2層以上としたり、或いはこれらを組合わせたマルチピースゴルフボールが提案されている。例えば、特開平8−33617号、特開平8−336618号、特開平9−56848号、特開平9−248351号、特開平9−266959号、特開平9−299510号公報等に、マルチピースゴルフボールにおいて、各層の硬度を所定範囲とすることにより、優れた飛び性能及び打撃フィーリングの両立を達成したものが提案されている。
【0005】
ここで、上記公報に開示されているマルチピースゴルフボールは、大別すると、カバーの最外層を最も硬く構成し、カバー内側に軟らかい層を設けたもの(例えば、特開平8−33617号)、コアよりも軟らかいコア包囲層をコアとカバーとの間に設けたもの(特開平8−336618号)、コア包囲層を最も硬くしたもの(特開平9−266959号、特開平9−248351号)となる。
【0006】
しかし、更なる打撃フィーリングの向上、飛距離向上の要求がある。特に、打撃フィーリングについては、ドライバーやアイアンで衝撃を減らしても、反発性を高めるために最外層のカバーを硬くしていると、パターでの打撃フィーリングが悪くなるなど、クラブの種類によっては打撃フィーリングが改良されているとは言えない。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ソリッドゴルフボールが本来有している反発性を保持しつつ、ドライバー、アイアン、パターいずれのクラブについても良好な打撃フィーリングを有するゴルフボールを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のマルチピースゴルフボールは、JIS−C硬度55以上65以下のセンターコアと、カバーのJIS−C硬度が90以上94以下の4ピースゴルフボール(ただし、糸巻きゴルフボールを除く)において、JIS−C硬度が40以上45以下のコア被覆層が、前記センターコアを直接被覆するように設けられていて、JIS−C硬度が97以上100以下の反発性低下防止層が、前記カバーの内側に該カバーと接触する層として設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、前記コアの直径は29〜38mmであり、前記コア被覆層の厚みは0.5〜2.0mmであり、前記反発性防止層の厚みは1.0〜2.5mmであり、前記カバーの厚みは1.0〜2.5mmであることが好ましい。
【0011】
尚、本明細書にいう「JIS−C硬度」とは、JIS−K6301に規定するスプリング式硬度計C形で測定した硬度をいう。また、コアの硬度は、形成されたコアの外表面の硬度をいい、コア被覆層、反発性低下防止層、カバーの硬度は、それぞれ各層を形成した状態での硬度をいう。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のゴルフボールは、内側から順に、図1に示すように、センターコア1、コア被覆層2、反発性低下防止層3、カバー4から構成される4ピースゴルフボールである。以下、これらの構成要素について、各順に説明する。
【0013】
まず、センターコア1はゴムを主体とするもので、そのJIS−C硬度は75以下であり、その大きさは、ボールの大きさの規格との関係で直径29〜38mmであることが好ましい。
【0014】
センターコア1は、ドライバー、アイアンといった打撃時の初速度が大きいクラブに対する打撃フィーリングに与える影響が大きい。また、ボールの大部分を占めることになるコアが硬すぎると、打撃によるボールの変形量が抑制されてスピンがかかりやすくなるため、アゲインストな風に対してボールが吹き上がるようになって飛距離が伸びなくなる。このような理由から、センターコア1のJIS−C硬度は65以下である。そして、ソリッドゴルフボールとしての形状保持、本来有する反発性の確保の点から、センターコア1の硬度の下限は55とすることが望ましい。また、センターコア1の直径を29mm以上が好ましい理由は、29mm未満では、打ち出し角度が小さくなって飛距離がでにくいからである。
【0015】
このようなセンターコア1は、一般に基材ゴムに架橋開始剤としての有機過酸化物、共架橋剤としての不飽和カルボン酸若しくはその金属塩を配合してなるゴム組成物の加硫成形体で構成される。
【0016】
ここで、コア用ゴム組成物に用いられる基材ゴムとしては、従来よりソリッドゴルフボールのコアに用いられているジエン系ゴムであれば、天然ゴムでも合成ゴムでもよく、合成ゴムとしては、例えば、エチレンプロピレンジエン3元共重合体(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられ、これらのうち、1種又は2種以上混合して用いてもよい。これらのうち、シス構造を40%以上、好ましくは80%以上有するいわゆるハイシス1,4−ポリブタジエンが好ましく用いられる。
【0017】
有機過酸化物は、主として架橋開始剤として添加され、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1、1―ビス(t―ブチルパーオキシ)―3、5―トリメチルシクロヘキサン、2、5―ジメチルー2、5―ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジーt―ブチルパーオキサイド等が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。有機過酸化物の配合量は、基材ゴム100重量部に対して0.3〜2.0重量部が好ましく、特に0.5〜2.0重量部が好ましい。
【0018】
共架橋剤として配合される不飽和カルボン酸若しくはその金属塩としては、アクリル酸又はメタクリル酸等のような炭素数3〜8のα、β−不飽和カルボン酸、若しくはこれらの亜鉛、マグネシウム塩等の一価又は二価の金属塩が挙げられる。これらのうち高い反発性を付与するアクリル酸亜鉛が好ましく用いられる。不飽和カルボン酸金属塩の配合量は、基材ゴム100重量部に対して10〜25重量部が好ましく、より好ましくは10〜20重量部である。25重量部より多いと架橋構造が緻密になりすぎて、硬度75以下に調整することが困難になるからである。逆に、10重量部より少ないとソリッドゴルフボールが本来有する反発性を確保できなくなるからである。
【0019】
またコア用ゴム組成物には、上記必須成分に加えて、比重調整剤、老化防止剤や可塑剤、分散剤、紫外線吸収剤、着色剤、しゃ解剤など、ゴルフボール用コア材に配合される通常の添加剤を、必要に応じて適宜配合することが可能である。
【0020】
比重調整剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機塩;タングステン、モリブデン粉末等の高比重金属粉末;及びそれらの混合物が挙げられる。
【0021】
コア被覆層2は、本発明のマルチピースゴルフボールを構成する複数層のうち最も軟らかい層である。コア被覆層2は、センターコア1と同様、アイアンやドライバーに対する打撃フィーリングに与える影響が大きいため、軟らかくする程、打撃時の衝撃を小さくすることができる。しかも、コア被覆層2は、センターコア1のように、ボール形状保持等による制限が少ないので、厚みを調整することにより、ボールが大きく変形するドライバーで打っても復元でき、反発性にほとんど影響を与えることなく、クッション性をもたせることができる。このような理由から、コア被覆層2のJIS−C硬度を最も低くして、具体的には45以下である。また、コア被覆層2の厚みは、0.5〜2.0mm程度であることが好ましい。厚すぎると、軟らか過ぎるためにボール変形を助長して復元しにくくなり、逆に薄すぎると、コア被覆層2による打撃フィーリングの改良効果が期待できないからである。尚、打撃フィーリングの改良効果が得られる範囲の厚みを有するコア被覆層2の硬度が極端に小さくなりすぎると、ボールの反発性が極端に低下することになるため、硬度の下限は40以上である。
【0022】
コア被覆層2を構成する材料としては、上記硬度を満足できる材料であれば特に限定せず、ゴムを主体とするゴム組成物の加硫成形体、熱可塑性エラストマー組成物、及びゴムと熱可塑性エラストマーの混合組成物などが用いられる。
【0023】
上記ゴム組成物としては、センターコア1を構成するゴム組成物と同様に、基材ゴムとしてのジエン系ゴム、有機過酸化物、不飽和カルボン酸若しくはその金属塩、その他、必要に応じて比重調整剤、老化防止剤、老化防止剤や可塑剤、分散剤、紫外線吸収剤、着色剤、しゃ解剤など、ゴルフボール用コア材に配合される通常の添加剤を必要に応じて適宜配合した組成物が挙げられる。硬度50未満を達成するためには、ポリブタジエン等の基材ゴム、その架橋用化合物としては、基材ゴム100重量部に対しジクミルパーオキサイド0.5〜2.0重量部及びアクリル酸亜鉛5〜10重量部を用いることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられる熱可塑性エラストマーは、融点以下では凍結相又は結晶相を示すポリマーブロック又は水素結合により分子運動が拘束されているハードセグメントのポリマーブロックとソフトセグメントのポリマーブロックとが結合してなるブロックコポリマーで、結合様式は、ハードブロックをHとし、ソフトブロックをSとして、H−S型、H−S−H型、(H−S)nで表されるマルチブロック型、星型など、いずれも用いることができる。
【0025】
具体的には、ハードセグメントがポリスチレンでソフトセグメントがポリブタジエン、ポリイソプレン、又はこれらの水素添加物であるポリスチレン系エラストマー;ハードセグメントがポリエチレン又はポリプロピレンで、ソフトセグメントがブチルゴムやEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三共重合体)であるポリオレフィン系エラストマー;ハードセグメントがポリアミドでソフトセグメントがポリエステル又はポリエーテルであるポリアミド系エラストマー;ハードセグメントがポリエステルでソフトセグメントがポリエーテルであるポリエステル系エラストマー;ハードセグメントがウレタン結合を有するポリウレタン系ブロックでソフトセグメントがポリエステル又はポリエーテルであるポリウレタン系エラストマー;さらにはポリブタジエンブロックにエポキシ基が含有していたり、末端のポリスチレンブロックにOH基が付加されているものなど;及びこれらのエラストマーの2種類以上の混合物が挙げられる。これらのうち、ポリウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマーが、コア被覆層2の硬度50未満を容易に達成できるエラストマーとして好ましく用いられる。
【0026】
エラストマーを主体とする組成物についても、ゴム組成物と同様に、必要に応じて必要に応じて比重調整剤、老化防止剤、老化防止剤や可塑剤、分散剤、着色剤などの添加剤を適宜配合することができる。
【0027】
反発性低下防止層3は、本発明のマルチピースゴルフボールを構成する複数層のうち最も硬い層であって、カバー4の硬度を下げたことによる反発性の低下を補償するための層である。つまり、パターのように、打撃時のヘッドスピードが非常に遅いクラブの打撃フィーリングについては、ボールの表層であるカバー4の硬度の影響が大きいため、できるだけ軟らかくすることが望ましいが、カバーを軟らかくすることは、反発性の低下、すなわち飛距離の低下につながる。このため、ソリッドゴルフボールが本来有している高反発性を確保すべく、最も硬い反発性低下防止層3をカバー4の内側にカバー4と直接接触するように設けられる。かかる理由から、反発性低下防止層3のJIS−C硬度は、カバー4のJIS−C硬度より高ければよいが、高反発性確保のために硬度97以上とする。一方、カバー4の厚みとの関係から、カバー4に接している反発性低下防止層3の影響を無視できないので、パターに対する打撃フィーリングを確保するために、硬度の上限は100以下とする。また、反発性低下防止層3の厚みは、反発性低下防止という効果を発揮する上で、1.0〜2.5mmであることが好ましい。
【0028】
このような反発性低下防止層3の構成材料は、上記硬度を満足できる材料であれば特に限定せず、ゴムを主体とするゴム組成物、熱可塑性エラストマーを主体とするエラストマー組成物、アイオノマーを主体とするアイオノマー組成物、及びこれらの混合組成物を用いることができる。
【0029】
ゴム組成物としては、センターコア1の構成材料で列挙した基材ゴム及びその架橋系化合物(有機過酸化物と不飽和カルボン酸若しくはその金属塩)を用いることができるが、カバー4の硬度が最も低い場合である85を超える硬度を反発性低下防止層3が有するためには、ポリブタジエンゴム100重量部に対し、ジクミルパーオキサイド0.5〜2.0重量部、アクリル酸亜鉛30〜35重量部とすることが好ましい。
【0030】
エラストマー組成物としては、コア被覆層2で列挙した熱可塑性エラストマーを使用することができるが、硬度85超を達成するためには、ポリアミド系エラストマーのような高硬度のエラストマーを用いることが好ましい。
【0031】
アイオノマーとしては、特に限定せず、α―オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸共重合体の金属イオン中和物が好ましく用いられる。共重合体を中和する金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等の1価金属イオン;亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、銅イオン、マンガンイオンなどの2価金属イオン;アルミニウムイオン、ネオジウムイオンなどの3価金属イオンなどが挙げられるが、特にナトリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオンの場合に高硬度で高反発性の硬質アイオノマーが得られるので、好ましく用いられる。
【0032】
上記硬度が得られれば、ゴム、アイオノマー、熱可塑性エラストマーを適宜割合で混合した組成物を用いることもできるが、硬度85超、好ましくは97以上という高硬度な材料を得るためには、アイオノマーを主体とする材料で構成することが好ましい。
【0033】
カバー4としては、反発性低下防止層3により必要な反発性を確保しているので、ボールの耐久性、耐擦傷性を確保できる程度の硬度で、パターに対する打撃フィーリングを向上させることができる硬度とすればよく、具体的には、JIS−C硬度90以上94以下で、反発性低下防止層3のJIS−C硬度よりも3〜10程度低い硬度とすることが好ましい。また、カバー4の厚みは1.0〜2.5mmであることが好ましい。1.0mm未満では、高硬度な反発性低下防止層3の影響が大きくなって、パター時の打撃フィーリングが硬くなるからである。逆に、厚みが2.5mmを超えると、カバー4が厚くなりすぎて、反発性低下防止層3の効果が十分得られず、ボールの反発性が低下して飛距離が出なくなるからである。
【0034】
カバー4の材料としては、上記要件を満足できる材料であれば特に限定せず、バラタカバー、アイオノマーカバーのいずれでもよいが、強度に優れている点でアイオノマーカバーが好ましく用いられる。アイオノマーとしては、反発性低下防止層3で列挙したアイオノマーを用いることができ、それらのうち、特に亜鉛イオンが金属イオンの凝集体の結合力が大きく、架橋ジエン系ゴム粒子の分散に基づく機械的強度の低下が小さいことから好ましく用いられる。
【0035】
カバー材料は、これらのアイオノマーを主体として、必要に応じて、着色剤、老化防止剤や可塑剤、分散剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0037】
本発明のゴルフボールは、まずコア用組成物をプレス加硫成形してセンタコア1を作成し、次いでコア被覆層2、反発性低下防止層3、カバー4と、内側から順に被覆するように形成していけばよい。コア被覆層2と反発性低下防止層3との間に介在層5が存在している場合には、コア被覆層2を形成した後、反発性低下防止層3で被覆する前に介在層5を形成すればよい。
【0038】
コア被覆層2、反発性低下防止層3、カバー4の形成は、これらの構成材料にもよるが、加硫を必要としない場合には通常の射出成形方法、あるいは予めハーフカップを成形し、これにセンターコア1、あるいはコア1を被覆層で被覆したものを詰め込んで熱プレス成形する方法などが用いられ、加硫を必要とする場合には、後者の方法が好ましく用いられる。
【0039】
尚、カバー成形時には、通常ディンプルと呼ばれる窪みを表面に多数形成し、美観や商品価値を高めるためのペイント仕上げ、マーキングスタンプ等を施すことにより商品とされる。
【0040】
【実施例】
〔評価方法〕
▲1▼打ち出し角度
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製のW#1ドライバーを取り付け、ヘッドスピード40m/secとして打撃し、打ち出し直後の打ち出し角度を測定した。測定は5回行って、平均を求めた。
【0041】
▲2▼スピン量
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製のW#1ドライバーを取り付け、ヘッドスピード40m/secとして打撃し、打ち出し直後のバックスピン量を測定した。測定は5回行って、平均を求めた。
【0042】
▲3▼飛距離
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製のW#1ドライバーを取り付け、ヘッドスピード40m/secとして打撃し、落下点までの距離を測定した。測定は5回行って、平均を求めた。
【0043】
▲4▼打撃フィーリング
プロゴルファー10名により、メタルヘッド製のW#1ドライバー、アイアン、及びパターで実打撃を行なった時の各人の打撃時フィーリングを下記基準で評価し、10人の評価のうち、最も多い評価を、そのボールの打撃フィーリングとした。ドライバーとアイアンについての打撃フィーリングは同じであり、パターについての打撃フィーリングは前記2者とは異なる。
◎:衝撃が非常に少なくても非常に良い
○:衝撃が少なくて良い
△:普通
×:衝撃が大きくて悪い
【0044】
▲5▼硬度の測定
a)センターコアの硬度
センターコア表面の硬度を測定した。
b)コア被覆層の硬度
センターコアの周りにコア被覆層を形成し、かかる状態の外表面の硬度を測定した。
c)反発性低下防止層の硬度
コア被覆層の表面に反発性低下防止層を形成し、その外表面の硬度を測定した。
【0045】
尚、介在層が存在する場合には、コア被覆層を介在層で被覆し、介在層の表面に反発性低下防止層を形成し、その外表面の硬度を測定すればよい。
d)カバーの硬度
反発性低下防止層の周囲に形成されたカバーの外表面、すなわちゴルフボールの表面の硬度を測定した。
【0046】
〔ゴルフボールの製造〕
表1(実施例と参考例)及び表2(比較例)に示すコア用ゴム組成物を混練ロールで均一に混練した後、140℃で25分間加圧成形し、続けて165℃で8分間加圧成形して、直径31.9mm又は33.1mmの球状のソリッドコアを作製した。次いで、コア被覆層用組成物をコア表面に射出成形してコア被覆層を形成し、その後、同様にして反発性低下防止層、カバーの順に射出成形により形成して、直径42.7mmの4ピースゴルフボールを製造した。尚、コア被覆層、反発性低下防止層、カバーの厚みは、表3及び表4に示す通りである。製造した4ピースゴルフボールのカバー上に、ペイントを施して、ボール完成品1〜12とし、このボール1〜12について、上記評価方法に基づいて、打ち出し角度、スピン量、飛距離、打撃フィーリングを評価した評価結果を表3(実施例と参考例)及び表4(比較例)に示す。
【0047】
尚、表1及び表2中、基材ゴムであるBRとしては、日本合成ゴム製のBR11(シス1,4結合の含有率が96%のシス1,4−ポリブタジエン)を用いた。DPDSとあるのは、住友精化株式会社製のジフェニルジスルフィドである。エストランET880及びエストランET890は、武田バーディシェウレタン工業株式会社製のポリウレタン系熱可塑性エラストマー(両者は硬度が異なる)であり、セプトンHG252はクラレ社製のスチレン系熱可塑性エラストマーであり、ハイミラン1605は三井デユポンポリケミカル社のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名、ハイミラン1706は亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名、ハイミラン1855は三井デユポンポリケミカル社の亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名、サーリン8945はデュポン製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名、サーリン9945はデュポン製の亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂の商品名である。ペバックス2533Sは東レ株式会社製の熱可塑性ポリアミド系エラストマーであり、A1010はダイセル化学工業株式会社製のエポキシ基を含有するポリブタジエンブロックを有するSBS構造のブロック共重合体である。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
No.6,7,10のように、コアの硬度が高くなるとドライバー及びアイアンに対する打撃フィーリングが悪くなり、コアが軟らかくても、コア被覆層が硬いNo.11,12の打撃フィーリングは悪かった。また、No.1〜5とNo.8,9の比較から、コアは同程度の軟らかさであっても、硬度45以下という大変軟らかいコア被覆層で被覆されていないと、ドライバー及びアイアンの打撃フィーリングは十分でないことがわかる。
【0053】
一方、パターに対する打撃フィーリングについては、コアが硬くても打撃フィーリングが良い場合もあり(例えばNo.6とNo.7の比較)、専ら表面層であるカバーの硬度に依存し、カバーの硬度が94超のときに打撃フィーリングが低下することがわかる(No.6,9,10)。
【0054】
No.1とNo.9との比較から、硬い反発性低下防止層を有している場合には、カバーの硬度は飛距離にそれ程影響を与えないが、No.11のように反発性低下防止層の硬度が低い場合には、カバーが実施例と同程度であっても、あるいは硬いコア被覆層を有している場合であっても飛距離が伸びない。
【0055】
No.6,7,10のように、コアの硬度が高い場合には、硬い反発性低下防止層を有していも、ボールの変形量が小さく、スピン量が多くなるため、打ち出し角が若干低くなってはいるものの、吹き上がってしまって飛距離がのびていない。また、No.8,12についても、コア硬度はそれ程高くないが、コア被覆層が高くボール変形量が小さくなるため、スピン量が過大になってしまい、打ち出し角が低いにも拘わらず、飛距離が伸びていない。
【0056】
従って、コア及びコア被覆層がある程度軟らかく、しかも表層近くに硬い反発性低下防止層を有することがスピン量を過大にすることなく、キャリーを確保できると考えられる。
【0057】
また、反発性低下防止層の硬度を高く保持したまま、カバーの硬度を本発明の範囲内で下げれば(硬度差7以上)、飛距離を犠牲にすることなく、パター、ドライバー、アイアンいずれのクラブに対しても打撃フィーリングが更に良くなる(No.2,3)。
【0058】
【発明の効果】
本発明のマルチピースゴルフボールは、ツーピースゴルフボールが本来有している高反発性を維持しつつ、しかも、ドライバー、アイアンという初速度の大きいクラブに対しても、パターという初速度の小さいクラブに対しても優れた打撃フィーリングを有している。従って、非力なプレーヤであっても、本発明のマルチピースゴルフボールを用いれば、打撃時に大きな衝撃を受けることなく、優れた飛距離を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態である4ピースゴルフボールの構成を示す概略図である。
【符号の説明】
1 センターコア
2 コア被覆層
3 反発性低下防止層
4 カバー
Claims (2)
- JIS−C硬度55以上65以下のセンターコアと、カバーのJIS−C硬度が90以上94以下の4ピースゴルフボール(ただし、糸巻きゴルフボールを除く)において、
JIS−C硬度が40以上45以下のコア被覆層が、前記センターコアを直接被覆するように設けられていて、
JIS−C硬度が97以上100以下の反発性低下防止層が、前記カバーの内側に該カバーと接触する層として設けられていることを特徴とする4ピースゴルフボール。 - 前記コアの直径は29〜38mmであり、
前記コア被覆層の厚みは0.5〜2.0mmであり、
前記反発性防止層の厚みは1.0〜2.5mmであり、
前記カバーの厚みは1.0〜2.5mmである請求項1に記載の4ピースゴルフボール。
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