図1は、本発明の一実施例である車両に搭載される車間距離制御装置10のシステム構成図を示す。本実施例の車間距離制御装置10は、自車両と自車両の直前に存在する先行車両との車間距離を、低車速域(例えば0km/h〜30km/h)で制御する低速車間距離制御(以下、低速追従制御と称す)、及び、低車速域とは異なりかつ低車速域の上限よりも大きな下限を有する高車速域(例えば40km/h〜100km/h)で制御する高速車間距離制御(以下、ACC制御と称す)の双方を実行し得るクルーズコントロールシステムである。車間距離制御装置10は、図1に示す如く、車間距離制御のための演算を行う電子制御ユニット(以下、車間制御ECUと称す)12を備えており、車間制御ECU12を用いて低速追従制御及びACC制御からなる車間距離制御を実行する。
車間制御ECU12には、車両の例えばフロントグリル近傍に配設されるレーダセンサ14が接続されている。レーダセンサ14は、車両前方の所定領域を所定周期でスキャニングするように構成されており、車両前方の所定領域に照射したレーザ光又はミリ波が対象物に反射した際の反射波を受信することによりその照射から受信までの時間に基づいた対象物の有無及びその対象物までの距離に応じた信号を車間制御ECU12に対して出力する。車間制御ECU12は、レーダセンサ14の出力信号に基づいて、自車両の前方所定領域内に先行車両が存在するか否かを判別すると共に、先行車両が存在する場合には自車両とその先行車両との車間距離Lを検出し、また、その検出した車間距離Lを微分処理することにより自車両と先行車両との相対速度Vrを検出する。
車間制御ECU12には、また、車輪速センサ16及びGセンサ18が接続されている。車輪速センサ16は、自車両の速度に応じた信号を車間制御ECU12に対して出力する。車間制御ECU12は、車輪速センサ16の出力信号に基づいて自車速V1を検出すると共に、また、その自車速V1と上記の相対速度Vrとの関係に基づいて先行車両の速度V2を検出する。また、Gセンサ18は、自車両の加減速度に応じた信号を車間制御ECU12に対して出力する。車間制御ECU12は、Gセンサ18の出力信号に基づいて自車両の加減速度αを検出する。尚、この加減速度αは、加速時にプラスとなり、減速時にマイナスとなる値である。
車間制御ECU12には、また、ブレーキペダルスイッチ20が接続されている。ブレーキペダルスイッチ20は、自車両の運転者が車両を制動させる際に操作するブレーキペダルの近傍に配設されており、ブレーキペダルの踏み込み操作が行われていない場合にオフ状態に維持され、ブレーキペダルの踏み込み操作が行われている場合にオン状態となるスイッチである。ブレーキペダルスイッチ20の出力信号は、車間制御ECU12に供給されている。車間制御ECU12は、ブレーキペダルスイッチ20の状態に基づいて、運転者によるブレーキペダルの操作有無を判別する。
車間制御ECU12には、また、車両運転者に操作され得るクルーズコントロールスイッチ22が接続されている。クルーズコントロールスイッチ22は、例えばステアリングコラムの側部に取り付けられたレバー式のスイッチであり、上記した低速追従制御及びACC制御からなる車間距離制御を実行するクルーズコントロールシステムを起動するためのラッチ式のメインスイッチと、ACC制御を行う際の定常車速をセットするための及び低速追従制御を開始するための自動復帰式のセット操作スイッチと、クルーズコントロールシステムによる制御走行を解除するための自動復帰式のキャンセル操作スイッチと、を一体化して構成されている。尚、セット操作スイッチ及びキャンセル操作スイッチの操作は、メインスイッチがシステム起動のためにオン状態にある場合にのみ有効となる。車間制御ECU12は、クルーズコントロールスイッチ22の各種状態を検知し、後述の如くその状態に応じた車間距離制御を行う。
車間制御ECU12には、また、車両運転者に操作され得るモード切替スイッチ24が接続されている。モード切替スイッチ24は、上記したクルーズコントロールスイッチ22と一体に構成された或いはクルーズコントロールスイッチ22とは別体でステアリングホイールの表面等に取り付けられた自動復帰式のスイッチである。モード切替スイッチ24は、メインスイッチのオン時に、車間距離制御の制御モードを、低速追従制御を実行し得るモード(以下、低速追従モードと称す)とACC制御を実行し得るモード(以下、ACCモードと称す)とに選択的に切り替えて排他的に指定するためのスイッチである。このモード切替スイッチ24のオン操作は、メインスイッチがシステム起動のためにオン状態にある場合にのみ有効となる。車間制御ECU12は、モード切替スイッチ24の状態を検知し、モード切替スイッチ24がオン操作された際に後に詳述する如く車間距離制御の制御モードの切り替えを行う。
車間制御ECU12には、また、車両動力であるエンジンの制御を行うエンジンECU26、及び、車両ブレーキの制御を行うブレーキECU28が接続されている。エンジンECU26には、エンジンの回転駆動により車両を駆動させる駆動力を発生するスロットルアクチュエータ30が接続されており、また、ブレーキECU28には、車両の有する電動式又は油圧式のブレーキ機構及び変速機のシフトダウンによる各車輪の回転抑制により車両を制動させる制動力を発生するブレーキアクチュエータ32が接続されている。車間制御ECU12は、後述の如く、上記した車間距離制御において自車両を先行車両に対して目標車間距離を空けて走行させるべくスロットルアクチュエータ30及びブレーキアクチュエータ32を適当に作動させるようにエンジンECU26及びブレーキECU28に対してそれぞれ指令信号を供給する。エンジンECU26及びブレーキECU28は、車間制御ECU12から供給される指令信号に従って、スロットルアクチュエータ30及びブレーキアクチュエータ32を適当に作動させる。
車間制御ECU12には、更に、警報装置24が接続されている。警報装置24は、クルーズコントロールシステムに異常が生じていること及び自車両が先行車両に衝突する可能性のあること等を車両運転者に対して聴覚的に知らせるべくブザー等の警報音や音声を出力する装置である。車間制御ECU12は、クルーズコントロールシステムに異常が生じ或いは車間距離制御時に自車両が先行車両に衝突する可能性があると判断された際などに警報装置24を駆動する。尚、警報装置24に代えて或いは警報装置24と共に、運転者に対して異常や衝突可能性を視覚的に知らせる警報表示器を設けることとしてもよい。
次に、本実施例の車間距離制御装置10の動作について説明する。図2は本実施例のACC制御を説明するための図を、また、図3は本実施例の低速追従制御を説明するための図を、それぞれ示す。
本実施例において、エンジンECU26及びブレーキECU28は、クルーズコントロールスイッチ22のメインスイッチがオフ状態にありシステム起動がなされていないときは、車間制御ECU12から指令信号の供給を受けず、車両運転者によるアクセルペダルの操作に応じた駆動力が車両に生ずるようにスロットルアクチュエータ30に対して指令信号を供給し、また、車両運転者によるブレーキペダルの操作に応じた制動力が車両に生ずるようにブレーキアクチュエータ32に対して指令信号を供給する。従って、クルーズコントロールシステムの非起動時において、車両は、車両運転者のアクセル操作及びブレーキ操作に従った加減速度で走行することとなる。
かかる状態からクルーズコントロールスイッチ22のメインスイッチがオフ状態からオン状態へ切り替わりシステム起動がなされると、車間制御ECU12は、車間距離制御の制御モードを比較的高車速側に対応したACCモードとする。かかるACCモードにおいて車両運転者が車両の速度調整を行い車両の速度V1がACC制御の対象速度域(例えば40km/h〜100km/h)に達している状態でクルーズコントロールスイッチ22のセット操作スイッチがオン操作されると、その操作時点での速度V1がACC制御を行う際の定常車速としてセットされ、ACC制御が実行の許可されない待機状態から現実に実行される状態へ移行してそのACC制御の実行が開始されることとなる。尚、一旦セットされた定常車速の調整は、車両運転者によるセット操作スイッチの減速側又は加速側への操作により実現可能である。
ACCモードにおいて定常車速がセットされることによりACC制御の実行が開始されると、車間制御ECU12は、レーダセンサ14を用いて自車両と同一車線上で自車両の直前に先行する先行車両が存在するか否かを判別する。そして、かかる先行車両が存在しないと判別する場合には、図2(A)に示す如く、自車両が車両運転者のアクセル操作によらずにそのセット車速(図2においては例えば100km/h)で走行するようにエンジンECU26に対して指令信号を供給する。この場合、自車両は、運転者によるブレーキ操作若しくはアクセル操作を伴うことなく自動的にセット車速で走行するようにACC制御される。
また、ACC制御の実行開始後、車間制御ECU12は、レーダセンサ14を用いて先行車両が存在すると判別する場合において、その先行車両の速度V2(図2(B)においては例えば80km/h)がセット車速(例えば100km/h)より小さいとき、まず、図2(B)に示す如く、自車両が車両運転者のブレーキ操作によらずにセット車速から先行車両の速度V2まで減速して走行するようにブレーキECU28に対して指令信号を供給し、その後は、図2(C)に示す如く、自車両が先行車両に追従して走行するようにエンジンECU26及びブレーキECU28に対して適宜指令信号を供給する。そして、先行車両又は自車両の車線変更等により先行車両が存在しなくなったと判別した場合には、図2(D)に示す如く、自車両が予めセットしておいたセット車速(例えば100km/h)まで加速して走行するようにエンジンECU26に対して指令信号を供給する。従って、先行車両が存在する場合、自車両は、運転者によるブレーキ操作若しくはアクセル操作を伴うことなく自動的にその先行車両の走行に合わせて追従するように、具体的には、先行車両との車間距離が車速V1に比例した目標車間距離に一致するようにACC制御により加減速される。尚、この目標車間距離は、自車速V1が大きいほど長い距離に設定されるが、車両運転者による所定のスイッチ操作によって例えば「長」,「中」,「短」と多段階に切り替え可能となるようにしてもよい。
更に、ACCモードにおけるACC制御の実行中に、ブレーキペダルが踏み込み操作されてブレーキペダルスイッチ20がオン状態になった場合、クルーズコントロールスイッチ22のキャンセル操作スイッチがオン操作された場合、及び、変速機のシフトポジションがドライブレンジ以外へシフトされた場合、車間制御ECU12は、セット車速を消去しつつACC制御の実行を中止する一方で、その後に再度定常車速がセットされればACC制御の実行を再開できるようにACCモードを維持する。尚、ここでは、セット車速を消去したが、セット車速を消去せずにその記憶を継続することとしてもよい。また、ACCの実行中に自車速V1が対象速度域の下限値(例えば40km/h)を下回った場合、車間制御ECU12は、セット車速の記憶を継続しつつACC制御の実行を中断する一方で、ACCモードを維持する。尚、ここでは、セット車速の記憶を継続したが、記憶を継続せずにセット車速を消去することとしてもよい。更に、ACCモードにおいてクルーズコントロールスイッチ22のメインスイッチがオフ操作された場合、車間制御ECU12は、ACC制御が現に実行されている場合はその実行を中止しつつ、ACCモードを解除する。
このようにACC制御によれば、高速域において先行車両が存在しないときには自車両を定常車速で走行させることができ、また、先行車両が存在するときには先行車両との車間距離が車速に応じた目標車間距離に一致するように自車両をその先行車両に追従して走行させることができる。このため、本実施例によれば、特に例えば高速道路や自動車専用道路などでの高速走行時に、運転者の行うべきアクセル操作及びブレーキ操作を支援してその負担軽減を図り、運転者の利便性を向上させることが可能となっている。
一方、クルーズコントロールシステムが起動されてACCモードが実現されている状況においてモード切替スイッチ24がオン操作されると、車間制御ECU12は、車間距離制御の制御モードを比較的低車速側に対応した低速追従モードとする。かかる低速追従モードにおいて自車両の前方に先行車両が存在する状況で車両運転者が車両の速度調整を行い車両の速度V1が低速追従制御の対象速度域(例えば0km/h〜30km/h)に達している状態でクルーズコントロールスイッチ22のセット操作スイッチがオン操作されると、低速追従制御が実行の許可されない待機状態から現実に実行されてその低速追従制御の実行が開始されることとなる。
低速追従モードにおいて現に低速追従制御の実行が開始されると、車間制御ECU12は、図3(A)に示す如く、その低速追従制御の対象速度域の範囲内(図3(A)において20km/h)で自車両が先行車両に追従して走行するようにエンジンECU26及びブレーキECU28に対して適宜指令信号を供給する。この場合、自車両は、運転者によるブレーキ操作若しくはアクセル操作を伴うことなく自動的に先行車両との車間距離が車速V1に比例した目標車間距離に一致するように低速追従制御により加減速される。尚、この目標車間距離は、制御対象である先行車両が急制動により停車した際にも運転者によるブレーキ操作により自車両をその先行車両の直前で停止させることが可能な距離であって、自車速V1が大きいほど長い距離に設定されるが、車両運転者による所定のスイッチ操作によって例えば「長」,「中」,「短」と多段階に切り替え可能となるようにしてもよい。
また、低速追従制御の実行開始後、車間制御ECU12は、先行車両が停車したことを検知した場合、図3(B)に示す如く、その先行車両の停車に伴って自車両も所定の目標車間距離を保って停車するようにブレーキECU28に対して指令信号を供給する。この場合、自車両は、運転者によるブレーキ操作若しくはアクセル操作を伴うことなく自動的に停車される。また、車間制御ECU12は、自車両を先行車両の停車に伴って自動的に停車させた場合、警報装置34を駆動して運転者にブレーキ操作を促しつつ、車両停車後所定時間が経過した際に自動停車を解除して車両をクリープで走行させ、低速追従制御の実行を中止する。そして、先行車両の発進に伴って自車両が発進した後に、再びクルーズコントロールスイッチ22のセット操作スイッチがオン操作されると、上記した低速追従制御の実行を再開する。
更に、低速追従モードにおける低速追従制御の実行中に、ブレーキペダルが踏み込み操作されてブレーキペダルスイッチ20がオン状態になった場合、クルーズコントロールスイッチ22のキャンセル操作スイッチがオン操作された場合、変速機のシフトポジションがドライブレンジ以外へシフトされた場合、先行車両又は自車両の車線変更等により制御対象の先行車両が存在しなくなった場合、パーキングブレーキがオン操作された場合、及び、自車速V1が対象速度域の上限値(例えば30km/h)を上回った場合、車間制御ECU12は、低速追従制御の実行を中止する一方で、その後に再度セット操作が行われれば低速追従制御の実行を再開できるように低速追従モードを維持する。更に、低速追従モードにおいてクルーズコントロールスイッチ22のメインスイッチがオフ操作された場合、車間制御ECU12は、低速追従制御が現に実行されている場合はその実行を中止しつつ、低速追従モードを解除する。
このように低速追従制御によれば、低速域において先行車両が存在するとき、先行車両との車間距離が車速に応じた目標車間距離に一致するように自車両をその先行車両に追従して走行させることができ、また、先行車両が停車した際に自車両を自動的に停車させることができる。このため、本実施例によれば、例えば車両に制動力及び駆動力を交互に繰り返し発生させる必要のある渋滞走行時等において、運転者の行うべきアクセル操作及びブレーキ操作を支援してその負担軽減を図り、運転者の利便性を向上させることが可能となっている。
尚、クルーズコントロールシステムが起動されて低速追従モードが実現されている状況においてモード切替スイッチ24がオン操作されると、車間制御ECU12は、車間距離制御の制御モードを低速追従モードから上記したACCモードへ切り替え、ACC制御の実行を可能とし、上記した処理を行う。
ところで、クルーズコントロールシステムが起動されてACCモード又は低速追従モードが実現されている状況下にも、ACC制御又は低速追従制御が現実には実行されていないときは、自車両において車間距離制御による自動的な加減速が行われていないので、車両運転者が実行させたいACC制御又は低速追従制御の対象速度域に自車速を調整しかつクルーズコントロールスイッチ22のセット操作スイッチをオン操作するまでは、モード切替スイッチ24のオン操作によって自由にACCモードと低速追従モードとを切り替えることとしても、車間距離制御を実行するうえで車両の走行安全性が低下するなどの不都合は生じない。一方、ACCモード又は低速追従モードが実現されている状況下、ACC制御又は低速追従制御が現実に実行されているときは、自車両において車間距離制御による自動的な加減速が行われているので、かかる状態でモード切替スイッチ24のオン操作による自由なACCモードと低速追従モードとの切り替えを許容するものとすると、車間距離制御を実行するうえで車両の走行安全性が低下するなどの不都合は生ずる可能性がある。そこで、本実施例の車間距離制御装置10は、かかる不都合を回避してACCモードと低速追従モードとの切り替えを適切に行うこととしている。
すなわち、図4は、本実施例において、モード切替スイッチ24のスイッチ操作に基づくACC制御を実行し得るACCモードと低速追従制御を実行し得る低速追従モードとの切り替えを説明するための図を示す。本実施例の車間距離制御装置10において、ACCモード時にACC制御が現には実行されていないときは、モード切替スイッチ24のオン操作が許容され、そのスイッチ操作が行われた際には車間距離制御の制御モードがACCモードから低速追従モードへ切り替わる。また逆に、低速追従モード時に低速追従モードが現には実行されていないときも、モード切替スイッチ24のオン操作が許容され、そのスイッチ操作が行われた際には車間距離制御の制御モードが低速追従モードからACCモードへ切り替わる。
また、低速追従モード時に低速追従制御が現に実行されることにより車両が自動的な加減速を行っているときも、モード切替スイッチ24のオン操作が許容され、そのスイッチ操作が行われた際には車間距離制御の制御モードが低速追従モードからACCモードへ切り替わる。一方、ACCモード時にACC制御が現に実行されることにより車両が自動的に加減速されているときは、モード切替スイッチ24のオン操作が許容されず、そのスイッチ操作が行われた際にも車間距離制御の制御モードがACCモードから低速追従モードへ切り替わることはなくACCモードに維持され、また、ACC制御の実行が継続される。
図5は、上記の機能を実現すべく、本実施例において車間制御ECU12が実行する制御ルーチンのフローチャートを示す。図5に示すルーチンは、その処理が終了するごとに繰り返し起動されるルーチンである。図5に示すルーチンが起動されると、まずステップ100の処理が実行される。
ステップ100では、現時点でクルーズコントロールシステムが起動されACC制御を実行し得るACCモードが実現されているか否かが判別される。その結果、ACCモードが実現されていないと判別された場合は、次にステップ102の処理が実行される。一方、ACCモードが実現されていると判別された場合は、次にステップ104の処理が実行される。
ステップ102では、現時点でクルーズコントロールシステムが起動され低速追従制御を実行し得る低速追従モードが実現されているか否かが判別される。その結果、低速追従モードが実現されていないと判別された場合は、クルーズコントロールシステムが何ら起動されていないと判断できるので、以後何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、低速追従モードが実現されていると判別された場合は、次にステップ114の処理が実行される。
ステップ104では、ACC制御が現に実行されているか否か、すなわち、自車両がACC制御による自動的な加減速を行っているか否かが判別される。その結果、ACC制御が現には実行されていないと判別された場合は、次にステップ106の処理が実行される。一方、ACC制御が現に実行されていると判別された場合は、次にステップ110の処理が実行される。
ステップ106では、モード切替スイッチ24がオン操作されたか否かが判別される。その結果、モード切替スイッチがオン操作されていないと判別された場合は、以後、何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、モード切替スイッチがオン操作されたと判別された場合は、次にステップ108の処理が実行される。ステップ108では、先行車両との車間距離を制御する制御モードを、ACCモードから低速追従モードへ切り替える処理が実行される。本ステップ108の処理が実行されると、以後、運転者によるブレーキ操作によって自車速が低速追従制御の対象速度域に達しかつセット操作スイッチがオン操作されるまでは低速追従制御が実行されることはなく、その速度域に自車速が達しかつセット操作スイッチがオン操作された時点で低速追従制御が開始・実行されることとなる。本ステップ108の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
また、ステップ110では、モード切替スイッチ24がオン操作されたか否かが判別される。その結果、モード切替スイッチがオン操作されていないと判別された場合は、以後、何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、モード切替スイッチがオン操作されたと判別された場合は、次にステップ112の処理が実行される。ステップ112では、先行車両との車間距離を制御する制御モードを現状のACCモードに維持すると共に、ACC制御の実行を継続する処理が実行される。本ステップ112の処理が実行されると、以後、先行車両との車間距離を制御する制御モードが低速追従モードへ移行することもなく、また、ACC制御の実行が中止されることもなく、従前どおりACCモードにおいてACC制御が実行されて、自車両が運転者によるアクセル操作及びブレーキ操作を伴うことなく高速域で自動的に加減速される。本ステップ112の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
一方、ステップ114では、低速追従制御が現に実行されているか否か、すなわち、自車両が低速追従制御による車両停止を含む自動的な加減速を行っているか否かが判別される。その結果、低速追従制御が現には実行されていないと判別された場合は、次にステップ116の処理が実行される。一方、低速追従制御が現に実行されていると判別された場合は、次にステップ120の処理が実行される。
ステップ116では、モード切替スイッチ24がオン操作されたか否かが判別される。その結果、モード切替スイッチがオン操作されていないと判別された場合は、以後、何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、モード切替スイッチがオン操作されたと判別された場合は、次にステップ118の処理が実行される。ステップ118では、先行車両との車間距離を制御する制御モードを、低速追従モードからACCモードへ切り替える処理が実行される。本ステップ118の処理が実行されると、以後、運転者によるブレーキ操作によって自車速がACC制御の対象速度域に達しかつセット操作スイッチがオン操作されるまではACC制御が実行されることはなく、その速度域に自車速が達しかつセット操作スイッチがオン操作された時点でACC制御が開始・実行されることとなる。本ステップ118の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
ステップ120では、モード切替スイッチ24がオン操作されたか否かが判別される。その結果、モード切替スイッチがオン操作されていないと判別された場合は、以後、何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。一方、モード切替スイッチがオン操作されたと判別された場合は、次にステップ122の処理が実行される。ステップ122では、低速追従制御の実行を中止すると共に、先行車両との車間距離を制御する制御モードを低速追従モードからACCモードへ切り替える処理が実行される。本ステップ122の処理が実行されると、以後、ステップ118と同様に、運転者によるブレーキ操作によって自車速がACC制御の対象速度域に達しかつセット操作スイッチがオン操作された時点でACC制御が開始・実行されることとなる。本ステップ122の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
上記図5に示すルーチンによれば、ACCモード時又は低速追従モード時においてACC制御の非実行中又は低速追従制御の非実行中にモード切替スイッチ24のオン操作が行われた場合には、先行車両との車間距離を制御する制御モードをACCモードから低速追従モードへ又は低速追従モードからACCモードへ切り替えることができる。ACCモード又は低速追従モードにおいてもACC制御が実際には実行されておらず或いは低速追従制御が実際には実行されていないときは、自車両において車間距離制御による自動的な加減速が行われておらず、通常どおり車両運転者による加減速操作に応じた加減速が行われている。このため、かかる状況でモード切替スイッチ24のスイッチ操作により制御モードの切り替えが行われることとしても、切り替え後の制御モードの車間距離制御に適した車速域に自車速が運転者による車速調整によって達するまでは、その切り替え後の車間距離制御(低速追従制御又はACC制御)の実行が行われることはないので、上記モード切替スイッチ24のスイッチ操作が車両運転者の無意識・誤操作で行われたときにも、通常は車両運転者の知らない間に車間距離制御の実行によって自動的な加減速が行われることはなく、車間距離制御を行ううえでの車両の走行安全性が低下するなどの不都合の発生を回避させることが可能となっている。
また、上記図5に示すルーチンによれば、低速追従モード時において低速追従制御の実行中にモード切替スイッチ24のオン操作が行われた場合には、低速追従制御の実行を中止すると共に、先行車両との車間距離を制御する制御モードを低速追従モードからACCモードへ切り替えることができる。低速追従モードにおいて低速追従制御が現に実行されているときは、自車両において低速追従制御による自動的な加減速が行われている。かかる状況でモード切替スイッチ24のオン操作により低速追従制御の実行が中止されかつ制御モードの切り替えが行われることとしても、通常、低速追従モードからACCモードへのモード切り替えのためのスイッチ操作は自車両が先行車両から相対的に離れていく傾向にある状況でのみ行われるものであって、かかるスイッチ操作後に運転者がACC制御の対象速度域に自車速を到達させるべく加速操作を行う筈であるが、仮に運転者が加速操作を行わなかったときにも低速追従制御の実行中止及びACC制御の実行条件の不成立に伴って自車両と先行車両との車間距離が拡大するだけであるので、例え上記のモード切替のためのスイッチ操作が運転者の意思に基づくものでないときにも、車間距離制御を行ううえでの車両の走行安全性が低下するなどの不都合の発生を回避させることが可能である。
また、低速追従モード時において低速追従制御の実行中にモード切替スイッチ24がオン操作されることによって低速追従制御の実行が中止されかつ制御モードの切り替えが行われれば、そのスイッチ操作後に運転者が車両の加速操作を行うことによってACC制御の実行条件である高速域に自車速が到達したときはそのACC制御の実行が可能になる。このため、低速追従制御が現に実行されている際における低速追従モードからACCモードへの切り替えについて、実行中の低速追従制御を停止・中止するためのクルーズコントロールスイッチ22のキャンセル操作スイッチのオン操作と低速追従モードからACCモードへのモード切替のためのモード切替スイッチ24のオン操作とを別個区別して行う必要はなく、簡易な操作で実現することができ、運転者のモード切替のための操作負担を軽減することが可能である。
更に、上記図5に示すルーチンによれば、ACCモード時においてACC制御の実行中にモード切替スイッチ24のオン操作が行われた場合には、先行車両との車間距離を制御する制御モードを現状のACCモードに維持すると共に、ACC制御の実行を継続することができる。ACCモードにおいてACC制御が現に実行されているときは、自車両においてACC制御による自動的な加減速が行われている。かかる状況でモード切替スイッチ24のオン操作によりACC制御の実行が中止されかつ制御モードの切り替えが行われるものとすると、通常、ACCモードから低速追従モードへのモード切り替えのためのスイッチ操作は自車両が先行車両から相対的に近づく傾向にある状況でのみ行われるものであって、かかるスイッチ操作後に運転者が低速追従制御の対象速度域に自車速を到達させるべく減速操作を行う筈であるが、仮に運転者が減速操作を行わなかったときにはACC制御の実行中止及び低速追従制御の実行条件の不成立に伴って自車両と先行車両との車間距離が小さくなっていくので、例え上記のモード切替のためのスイッチ操作が運転者の意思に基づくものであっても、車間距離制御を行ううえでの車両の走行安全性が低下することとなる。
これに対して、本実施例の構成においては、上記の如く、ACC制御の実行中にモード切替スイッチ24のオン操作が行われても、制御モードがACCモードに維持されかつそのACC制御の実行が継続される。このため、仮に上記のモード切替のためのスイッチ操作が運転者の意思に基づくものであれば、そのスイッチ操作後に運転者が低速追従制御を実行するための車速域に自車速を到達させるべく減速操作を行う筈であるが、仮にその減速操作が行われなかったときにもACC制御の実行が継続されるだけであるので、運転者がモード切替スイッチ24自体の意味を理解していないにもかかわらずそのスイッチ操作が不用意に行われたときにも、車間距離制御を行ううえでの車両の走行安全性が低下するなどの不都合の発生を回避させることが可能である。
このように、本実施例の車間距離制御装置10によれば、モード切替スイッチ24の操作に基づくACCモードと低速追従モードとのモード切替を車両運転者の意思を優先しつつ所定の場合にそのモード切替(具体的には、ACC制御の実行中におけるACCモードから低速追従モードへの切り替えのみ)を制限することで、制御モードのモード切替を適切に実行することが可能となっている。
尚、上記の実施例においては、低速追従制御が特許請求の範囲に記載した「低速車間距離制御」に、ACC制御が特許請求の範囲に記載した「高速車間距離制御」に、モード切替スイッチ24が特許請求の範囲に記載した「排他指定モードスイッチ」に、クルーズコントロールスイッチ22のメインスイッチが特許請求の範囲に記載した「制御実行開始スイッチ」に、それぞれ相当していると共に、車間制御ECU12が上記図5に示すルーチン中ステップ108、112、118、及び122の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「制御手段」が実現されている。
ところで、上記の実施例においては、ACCモードにおいてACC制御が現に実行されている際にモード切替スイッチ24がオン操作された場合には、先行車両との車間距離を制御する制御モードをACCモードに維持すると共に、ACC制御の実行を継続することとしているが、かかる場合においてもその後運転者により車両の減速操作が行われたときに、ACC制御の実行を中止しかつ制御モードをACCモードから低速追従モードへ切り替えることとしてもよい。上述の如く、ACC制御の実行中におけるモード切替スイッチ24のオン操作が車両運転者の意思に基づくものであれば、そのスイッチ操作後に運転者が低速追従制御を実行するための車速域に自車速を到達させるべく減速操作を行う筈であるので、逆に、モード切替スイッチ24のオン操作後に減速操作が行われれば、そのモード切替スイッチ24のオン操作が車両運転者の意思に基づくものであったと判断できる。従って、かかる場合にはACC制御の実行を中止しかつ制御モードをACCモードから低速追従モードへ切り替えることとしても、車両運転者の意思を優先することが可能となるので、かかる変形例によれば、ACC制御の実行中におけるACCモードから低速追従モードへのモード切替を運転者の意思を優先しつつかつ新たなスイッチ操作を伴うことなく簡易な操作で適切に実行することが可能となる。
尚、この変形例においては、モード切替スイッチ24のオン操作にもかかわらず制御モードをACCモードに維持しかつACC制御の実行を継続した後、所定期間(例えば2秒など)内に減速操作が行われたときに限って、制御モードの切り替え及びACC制御の実行中止を行うものであってもよい。かかる構成によれば、所定期間後における減速操作は制御モードの切り替え及びACC制御の実行中止を行ううえでは無効とされるので、モード切替スイッチ24のオン操作に連動しない減速操作を排除して、適切に制御モードのACCモードから低速追従モードへの切り替え及びACC制御の実行中止を実現することが可能となる。
また、上記の実施例においては、低速追従モードにおいて低速追従制御が現に実行されている際にモード切替スイッチ24がオン操作された場合には、低速追従制御の実行を中止すると共に、制御モードの低速追従モードからACCモードへの切り替えを行うこととしているが、かかる場合においても制御モードを低速追従モードに維持すると共に、低速追従制御の実行を継続することとしてもよい。この場合は、その後運転者により車両の加速操作が行われたときに、低速追従制御の実行を中止しかつ制御モードを低速追従モードからACCモードへ切り替えることとすればよい。
低速追従制御の実行中におけるモード切替スイッチ24のオン操作が車両運転者の意思に基づくものであれば、そのスイッチ操作後に運転者がACC制御を実行するための車速域に自車速を到達させるべく加速操作を行う筈であるので、逆に、モード切替スイッチ24のオン操作後に加速操作が行われれば、そのモード切替スイッチ24のオン操作が車両運転者の意思に基づくものであったと判断できる。従って、かかる場合には低速追従制御の実行を中止しかつ制御モードを低速追従モードからACCモードへ切り替えることとしても、車両運転者の意思を優先することが可能となるので、かかる変形例においても、低速追従制御の実行中における低速追従モードからACCモードへのモード切替を運転者の意思を優先しつつかつ新たなスイッチ操作を伴うことなく簡易な操作で適切に実行することが可能となる。
尚、この変形例においては、モード切替スイッチ24のオン操作にもかかわらず制御モードを低速追従モードに維持しかつ低速追従制御の実行を継続した後、所定期間(例えば2秒など)内に加速操作が行われたときに限って、制御モードの切り替え及び低速追従制御の実行中止を行うものであってもよい。かかる構成によれば、所定期間後における加速操作は制御モードの切り替え及び低速追従制御の実行中止を行ううえでは無効とされるので、モード切替スイッチ24のオン操作に連動しない加速操作を排除して、適切に低速追従モードからACCモードへのモード切替及び低速追従制御の実行中止を実現できる。
また、上記の実施例においては、ACCモードにおいてACC制御が現に実行されている際にモード切替スイッチ24がオン操作された場合には、先行車両との車間距離を制御する制御モードをACCモードに維持すると共に、ACC制御の実行を継続することとしているが、スイッチ操作後直ちにACC制御の実行を中止しかつその制御モードをACCモードから低速追従モードへ切り替えるものであってもよい。かかる構成においては、ACC制御の実行中におけるACCモードから低速追従モードへの切り替えについて、実行中のACC制御を停止・中止するためのクルーズコントロールスイッチ22のキャンセル操作スイッチのオン操作とACCモードから低速追従モードへのモード切替のためのモード切替スイッチ24のオン操作とを別個区別して行う必要はなく、スイッチ操作の数を減らして簡易な操作で実現することができ、運転者の操作負担を軽減することができる。
また、上記の実施例において、高速車間距離制御としてのACC制御は、比較的高速域内のセット車速以下で先行車両との車間距離が車速に応じた目標車間距離に一致するように自車両の走行を制御するものであり、また、低速車間距離制御としての低速追従制御は、比較的低速域内で先行車両との車間距離が車速に応じた目標車間距離に一致するようにかつ先行車両が停車した際には自車両も停車するように自車両の走行を制御するものであるが、高速車間距離制御及び低速車間距離制御の定義はこれに限定されるものではなく、少なくとも両者間に制御内容の異なるものが含まれていればよい。
更に、上記の実施例においては、レーザやミリ波によるレーダセンサ14を用いて先行車両を検出することとしているが、レーザやミリ波以外の超音波によるセンサやカメラなどを用いて先行車両を検出することとしてもよい。