JP4258229B2 - 水性顔料分散液の製造方法および該方法で製造された水性顔料分散液を含むインクジェット用記録液 - Google Patents

水性顔料分散液の製造方法および該方法で製造された水性顔料分散液を含むインクジェット用記録液 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散安定性が良好な水性顔料分散液の製造方法、および該方法で製造された水性顔料分散液を含むインクジェット用記録液に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、顔料を水に分散するために、界面活性剤が分散剤のひとつとして用いられている。界面活性剤は疎水性基と親水性基を併せ持ち、疎水性基の顔料表面に対する吸着と、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の陰イオン解離性を有する親水性基の電荷反発によって安定化している。しかし、界面活性剤の顔料に対する吸着は、物理的な相互作用によるものであり、いかに安定な分散状態を保持するかが課題であった。この界面活性剤を用いた顔料分散体をインクジェットインキとして使用する場合、分散体が細かいノズルを通って吐出される際に強いシェアがかかり、吸着した分散剤が脱離して顔料の分散性が劣化し、吐出不安定になる傾向がある。
また、顔料分散体の長期の保存安定性が不十分な場合には、その対策として分散剤の量を増やす手法が取られるが、系中に存在する未吸着の界面活性剤はインキを製造する上で、粘性ならびに表面張力や泡立ち、耐水性など印刷物の画像品質に影響を及ぼすことがあり、未だ十分な性能を得られるまでには至っていない。
【0003】
これらの問題を解決するために、顔料の分散安定性を確保するだけでなく、同時に吐出安定性、印字濃度、発色性等を高めることを目的とし、顔料表面を酸化処理する手法、顔料表面にポリマーをグラフト化する手法、顔料をマイクロカプセル化する手法などが提案されている。
顔料をマイクロカプセル化する手法としては、疎水性粉体や顔料微粒子をそれぞれ顔料の分散液中でモノマーを重合させてカプセル化する方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。また、分散剤の脱離を防ぐとことを目的とし、顔料を重合性の界面活性剤を用いて分散し、顔料表面に強固に分散剤を固着させ、カプセル化する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
一方、記録紙やOHPシートなどの記録媒体への定着性を向上させ、同時に耐水性、耐光性が良好で、顔料に分散安定性を良好にすることを目的とし、顔料とバインダー樹脂を併用することが従来から行われている。
例えば、顔料と樹脂エマルジョンとを水中に分散させたインク、ポリマーエマルジョンが添加されたインク、転相乳化法により室温で被膜形成性を有する樹脂を顔料に被覆して、その被覆された顔料を用いたインク、架橋エマルジョンを含有させたインクなどが、それぞれ提案されている。同様に、重合性界面活性剤と金属イオンとキレートし得る配位子構造を有するモノマーとの共重合体により顔料を包含した顔料ディズパーションにポリマー微粒子を組み合わせることが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−320276号公報
【特許文献2】
特開平8−59715号公報
【特許文献3】
特開平10−316909号公報
【特許文献4】
特開2002−161223号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平5−320276号公報には両親媒性グラフトポリマーを用いて疎水性粉体をマイクロカプセル化する方法が提案されているものの、マイクロカプセル化にあらかじめ重合したポリマーを用いると、カプセル化後の粒子径が大きくなる過ぎるという問題があった。一方、顔料を水系媒体中に分散するために用いられる界面活性剤はファンデルワールス力により顔料に吸着しているため、界面活性剤の脱離がおきやすく、その未吸着の界面活性剤から発生する分散安定性の劣化、耐水性の不良、およびインキとしての吐出不安定化等を防ぐことができない。そのため、特開平10−316909号公報に記載されるような重合性界面活性剤を用いて強固に分散剤を顔料に固着させることが提案されたが、ここで得られたカプセル化顔料は、耐溶剤性が不十分であり、水溶性有機溶剤の添加により分散安定性が崩れる問題が見られた。
【0007】
さらに、インクの記録媒体への定着性や、耐水性等を向上させるために従来から添加されているポリマーエマルジョンは、印字物の耐水性、定着性は向上するものの、吐出安定性、目詰まり性等、インクジェット印刷における信頼性を満足するものではなかった。また、特開2002−161223号公報に記載されているカプセル化した顔料と組み合わせるポリマー微粒子は、添加することで耐擦過性および耐水性に優れたインク組成物が得られるものの、保存安定性に問題があった。
そこで本発明は、長期の分散安定性が良好で、インクジェット用記録液として用いた場合の吐出安定性および印字品位に優れた水性顔料分散液の製造方法の提供を目的とする。また、本発明は、長期の保存安定性が良好で、吐出安定性および印字品位に優れたインクジェット用記録液の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の水性顔料分散液の製造方法は、重合性界面活性剤を用いて顔料を水中に分散し、顔料表面に重合性界面活性剤を吸着させた分散液内において、シランカップリング剤の存在下で、重合開始剤を用いて顔料表面に存在する前記重合性界面活性剤を重合させることにより、顔料表面に界面活性剤を固定化して界面活性剤の脱離を防止し、未吸着の界面活性剤を低減させた水性顔料分散液を製造する方法である。なお、シランカップリング剤が系内に存在することで、顔料表面を被覆する重合体が強靭となり、得られる水性顔料分散液をインクジェット用記録液に用いた場合に、記録媒体への定着性の向上や耐水性、耐溶剤性が向上する。
【0009】
すなわち、本発明の水性顔料分散液の製造方法は、顔料が重合性界面活性剤の存在下で水に分散された分散液内において、シランカップリング剤および重合開始剤の存在下で前記重合性界面活性剤を重合することを特徴とする水性顔料分散液の製造方法である。
また、本発明のインクジェット用記録液は、上記方法で製造された水性顔料分散液を含むものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の顔料分散液の製造方法では、重合性界面活性剤を用いて顔料を水中に分散させた後に、シランカップリング剤および重合開始剤の存在下で前記重合性界面活性剤の重合を行なうことにより、顔料表面に重合性界面活性剤を固定化している。
顔料分散液の製造において、重合性界面活性剤は、水中で顔料表面に吸着し、前記重合性界面活性剤と共重合可能なモノマーと共重合する場合にはその吸着層に共重合可能なモノマーが溶解し、次いで重合開始剤がその吸着層に溶解し、ミセル中で重合性界面活性剤が重合または共重合して顔料粒子の表面を被覆しているものと考えられる。
また、シランカップリグ剤は、加水分解および自己縮合反応をすることにより架橋してシリコーンポリマーを生成し、そのポリマーが重合性界面活性剤の重合体または共重合体と絡み合う形で顔料表面を被覆しているものと考えられる。
【0011】
より詳しくは、重合性界面活性剤は、顔料粒子表面に吸着し、その後の重合条件下でも顔料の分散安定性を保持するよう、顔料を安定して水に分散させる働きをしており、水に微細に分散された顔料のまわりで均一に重合性界面活性剤が存在することで、安定な重合反応が進行するものと考えられる。さらに、重合性界面活性剤の重合中および重合後の顔料の分散性は非常に良好であり、安定性に優れているため、この手法により顔料粒子同士の凝集を防止するような粒子表面が形成されていると考えられる。つまり、顔料粒子表面には、分散剤である界面活性剤が粒子表面に単にファンデルワールス力により吸着している場合に比べて、より強固に重合性界面活性剤の重合体が固着しており、界面活性剤の脱離が抑えられている。また、重合性界面活性剤だけでなく、重合性基を有するシランカップリング剤やその他の共重合可能なモノマーを共重合させる場合には、重合体の立体障害を利用し、顔料粒子間の凝集を防止し、安定性がより良好な水性顔料分散液が得られる。
【0012】
水性顔料分散液の製造に用いられる重合性界面活性剤は、エチレン性不飽和二重結合を有する界面活性剤であり、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。重合性界面活性剤は、顔料の水分散液内において、シランカップリング剤および重合開始剤の存在下で単独重合させることもできるが、該重合性界面活性剤と共重合可能なモノマーと共重合させることが好ましい。
【化2】
Figure 0004258229
[式中、Rは炭素数8~18のアルキル基またはアルコキシ基を表し、mは1〜200の整数を表し、MはNa、K、またはNH4を表す。]
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルコキシエーテル硫酸エステルが挙げられる。
【0013】
前記重合性界面活性剤と共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類や、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ピロピオン酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、グリシジルメタクリレート等が挙げられるが、重合性界面活性剤との共重合性があれば、これらに限定されるものではない。
【0014】
シランカップリング剤は、有機官能基および加水分解反応性基を有する有機ケイ素化合物であり、水の存在下で加水分解反応性基が分解され、分子中の加水分解反応性基がシラノール基に変わる。続けて、シラノール基が互いに自己縮合(脱水縮合)をすることで、シランカップリング剤が架橋して樹脂状のシリコーンポリマーを生成する。この架橋反応により生成する結合は、耐水性、耐薬品性、可とう性に優れた−Si−O−Si−結合であり、架橋物でシリコーンポリマーは重合性界面活性剤の重合体と絡み合うため、顔料粒子表面に形成される重合性界面活性剤の重合体層が強靭となり、結果として耐水性、耐溶剤性、および顔料の分散安定性の優れた水性顔料分散液が得られる。
【0015】
シランカップリング剤としては、下記一般式(2)で表される化合物が好適に用いられる。
Y−(CH2)n − SiX3 (2)
[式中、Yは有機官能基を表し、Xは加水分解反応性基を表し、nは1〜20の整数を表す。]
上記一般式(2)中の有機官能基としては、アミノ基、アミド基、エポキシ基、グリシジル基、メルカプト基、ビニル基、イソシアネート基、アルキル基、フェニル基などの樹脂と親和性の高い官能基が挙げられる。また、加水分解反応性基としては、メトキシ基やエトキシ基などのアルコキシ基が挙げられる。
【0016】
特に、シランカップリング剤は、重合性基および加水分解反応性基を有する有機ケイ素化合物であることが好ましい。重合性基を有するシランカップリング剤を用いる場合には、重合性界面活性剤や、必要に応じて用いられる前記重合性界面活性剤と共重合可能なモノマーと共重合することで、顔料表面により強靭な重合性界面活性剤の重合体層が形成されるためである。
重合性基を有するシランカップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、重合性部位を有さないシランカップリング剤としては、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤は、顔料の重量を基準として1〜50重量%の範囲で用いられる。
【0017】
水性顔料分散液の製造に用いられる重合開始剤は、熱または還元性物質によってラジカル分解して、重合性界面活性剤やモノマーの付加重合を起こさせるもので、水溶性または油溶性の過硫酸塩、過酸化物およびアゾビス化合物である。過硫酸塩としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。過酸化物としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等が挙げられる。アゾビス化合物としては、例えば、4,4'アゾビス−(4シアノ吉草酸)、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)等が挙げられる。また、還元性物質としては、ロンガリット、メタ重亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0018】
顔料としては、無機顔料および有機顔料を使用することができる。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。
また、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料など)、多環式顔料(フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラノン顔料など)、染料キレート(塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。
【0019】
なお、カーボンブラックについては、酸性カーボンを使用することが好ましい。酸性カーボンとは、カーボンブラックを気相酸化や液相酸化などの一般的な方法により酸化処理したもので、表面のpHが約2〜5であるカーボンブラックを示す。
カーボンブラックの表面には、カーボンブラック粒子形成後の空気接触により結合する塩基性酸化物と、二酸化窒素やオゾン、硝酸等との反応により二次的に生成する酸性酸化物が存在していると考えられている。この酸性酸化物の官能基として、一般的にカルボキシル基、キノン基、水酸基、ラクトン基などの官能基が存在するといわれており、中でも特にキノン基がラジカルの働きを阻害し、重合禁止剤として作用することがある。
【0020】
水性顔料分散液の製造に、酸化処理していない中性カーボンを用いた場合には、ラジカルが阻害され、反応が十分に進行せず、転化率が低くなってしまう。その結果、未反応の重合性界面活性剤や必要に応じて用いられるモノマーが顔料分散液中に残り、臭気や安全性に問題があるだけでなく、インクジェットインキとして用いた場合に残モノマー等がプリンター内部の配管等を腐食するなど、機械安定性を劣化させ、吐出が安定に行なえなくなる。そのため、本発明では重合禁止剤として作用してしまうキノン基が極力低減された酸性カーボンを用いることが好ましい。
【0021】
水性顔料分散液を製造するには、始めに重合性界面活性剤を用いて顔料を水に分散した顔料の水分散液を用意する。顔料の水分散液を製造する際には、凝集している顔料粒子を水中に混合して、一次粒子あるいは小さな粒度分布を持つようにほぐし、その状態を維持させる分散工程が必要となる。この分散工程を介することにより微細な顔料分散液とすることができる。
重合性界面活性剤の使用量は、顔料を基準として、10〜50重量%、特に15〜30重量%であることが好ましい。重合性界面活性剤の使用量が10重量%より少ないと、顔料が微細に分散し難く、分散安定性が得られないことがあり、50重量%を越えると、顔料表面に吸着しない未吸着の重合性界面活性剤が多量に存在し、分散の安定性を損なう場合があるためである。
【0022】
また、顔料の水分散液の顔料濃度は、水分散液を基準として50重量%以下であることが好ましく、特に25重量%以下であることが好ましい。顔料濃度が50重量%よりより高いと、顔料を水に分散するために要する重合性界面活性剤の量が多くなって顔料の水分散液の粘度が高くなりすぎ、分散効率が低下し、安定な水性顔料分散液を得にくいためである。また、顔料濃度は、得られる水性顔料分散液をインクジェット用記録液として用いる際に、充分な濃度を実現するため、10重量%以上であることが好ましい 。
【0023】
分散工程に使用する分散機としては、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」)等を用いることができる。分散メディアとしては、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズを用いることができる。
【0024】
水性顔料分散液の製造は、上記のようにして製造された顔料の分散液に、シランカップリング剤および必要に応じて重合性界面活性剤と共重合可能なモノマーを添加し、さらに重合開始剤を加えて、50℃〜100℃で3〜5時間、前記重合性界面活性剤等を重合することにより行う。これによって顔料表面に重合性界面活性剤が固定化される。
【0025】
本発明の方法により製造される水性顔料分散液は、水を媒体とするが、水混和性有機溶剤を添加して用いても良い。水混和性有機溶剤は、得られる水性顔料分散液をインクジェット用記録液として使用する場合に、ノズル部分での記録液の乾燥、固化を防止し、安定な記録液の噴射およびノズルでの経時の記録液の乾燥を防止するものであり、単独ないし混合して用いることができる。
本発明の方法により製造される水性顔料分散液は、重合性界面活性剤の重合体とシラ ンカップリング剤の架橋物であるシリコーンポリマーとが絡み合った被膜で覆われている顔料が水に分散されたものであり、顔料表面を覆っている被膜が強靭なため、水混和性有機溶剤等を添加しても顔料に影響を与えにくい。
【0026】
従来は、耐溶剤性の低いアゾ顔料は、溶剤との接触により顔料の粒子が成長し、この成長した粒子が分散安定性を悪くするため、水混和性有機溶剤を含む水性インクジェット用記録液に使用することが難しかった。しかし、本発明の方法で水性顔料分散液を製造することにより、耐溶剤性の悪い顔料、例えばアゾ顔料を用いたインクジェット用記録液を製造することができるようになり、記録液中ではアゾ顔料の粒子成長が抑制されていることが認められた。
本発明の方法により製造される水性顔料分散液は、インクジェット用記録液だけでなく、塗料、グラビアインキ、その他の印刷インキに用いることができる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。実施例中、部および%は、重量部および重量%を表す。
(実施例1)
不溶性アゾ系イエロー顔料(東洋インキ製造社製「リオノールイエローGGTN」)20部、重合性界面活性剤(第一工業製薬社製「アクアロンKH−10」:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩)6部、およびイオン交換水74部をディスパーで予備攪拌をした後に、ジルコニアビーズで充填したサンドミルを用いて約2時間分散し、顔料分約20%のイエロー顔料の水分散液(a)を得た。
攪拌機、温度計、滴下漏斗、還流器を備えた反応容器に、表1に示す反応釜量のイエロー顔料水分散液および精製水を仕込み、窒素ガスで飽和させた。表1に示すアクリルアミドを除いた滴下量分のモノマーはあらかじめ混合し、滴下漏斗に入れた。反応容器内の温度を62℃に昇温させた後、滴下漏斗からモノマーの滴下を開始し、同時に重合開始剤(過硫酸カリウムおよび「エルビットN」)の総量の5分の1およびアクリルアミドの滴下量の5分の1を混合し、添加した。さらに、重合開始剤およびアクリルアミドを30分おきに総量の5分の1ずつ添加しながら、滴下量分のモノマーは2時間かけて滴下した。全モノマーの滴下終了後、さらに1時間加熱熟成させた。最後に、残りのモノマーを完全に反応させるために重合開始剤(「パーブチルH−69」および「エルビットN」)の総量の4分の1ずつを15分おきに添加し、重合開始剤の添加終了後、30分加熱熟成させた。得られた分散液を冷却し、ジエチルアミノエタノールでpH8付近に調整し、180メッシュのろ布を通過させて、粗大粒子を取り除き、水性イエロー顔料分散液(1)を得た。
【0028】
(実施例2)
イエロー顔料をフタロシアニン系シアン顔料(東洋インキ製造社製「リオノールブルーFG−7351」)に変えた以外は、実施例1と同様にしてシアン顔料の水分散液(b)を得た後、表2に従って重合反応を行い、水性シアン顔料分散液(2)を得た。
(実施例3)
イエロー顔料を不溶性アゾ系マゼンタ顔料(クラリアント社製「パーマネントカーミンFBB02」)に変えた以外は、実施例1と同様にしてマゼンタ顔料の水分散液(c)を得た後、表2に従って重合反応を行い、水性マゼンタ顔料分散液(3)を得た。
【0029】
(実施例4)
イエロー顔料をpH4の酸性カーボンブラック(デグサ製「ナイペックス150」)に変えた以外は、実施例1記載と同様にしてブラック顔料の水分散液(d)を得た後、表2に従って重合反応を行い、水性ブラック顔料分散液(4)を得た。
(実施例5)
重合性界面活性剤「アクアロンKH−10」を旭電化工業社製「アデカノールSR−20N」(ポリオキシエチレンアルコキシエーテル硫酸エステル塩)に変えた以外は、実施例4と同様にしてブラック顔料の水分散液(e)を得た後、表2に従って重合反応を行い、水性ブラック顔料分散液(5)を得た。
【0030】
【表1】
Figure 0004258229
「サイラエースS−220」:ビニルトリエトキシシラン(チッソ社製)
「KBE3063」:ヘキシルトリエトキシシラン(信越化学工業社製)
「エルビットN」::エリソルビン酸ナトリウム(藤沢薬品工業社製)
「パーブチルH−69」:t−ブチルヒドロパーオキサイド(日本油脂社製)
【0031】
【表2】
Figure 0004258229
【0032】
(比較例1)
実施例1で得られたイエロー顔料の水分散液(a)を用い、シランカップリング剤を除いた以外は実施例1と同様にして重合反応を行い、水性イエロー顔料分散液(6)を得た。
(比較例2)
実施例4で得られたブラック顔料の水分散液(d)を用い、シランカップリング剤を除いた以外は実施例4と同様にして重合反応を行い、水性ブラック顔料分散液(7)を得た。
(比較例3)
実施例5で得られたブラック顔料の水分散液(e)を用い、シランカップリング剤を除いた以外は実施例5と同様にして重合反応を行い、水性ブラック顔料分散液(8)を得た。
【0033】
各例で得られた水性顔料分散液のpH、粘度、および分散粒径を下記の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
(1)pH
pHイオンメーター(メトラー・トレド社製「MPC227」)を用いて25℃におけるpHを測定した。
(2)粘度
振動式粘度計(山一電気社製「VM−1A」)を用いて25℃における粘度を測定した。
(3)分散粒径
レーザー回折方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用いて、D50およびD99を測定した。
【0034】
【表3】
Figure 0004258229
【0035】
(評価例1〜5、評価比較例1〜3)
表4、5に示す組成の原料を撹拌槽に仕込み、ディスパーにより撹拌、混合を行った後、最終0.8μmのメンブランフィルターで濾過し、記録液を得た。得られた記録液について、水性顔料分散液と同様の方法で分散粒径(D50)および粘度を測定し、下記の方法で保存安定性、吐出安定性、耐水性、耐擦性、耐目詰まり性を評価した。結果を表4、5に示す。
(1)保存安定性
記録液を50℃で3ヶ月保存前後の粒径および粘度の変化から保存安定性を評価した(○:粒径変化20nm未満かつ粘度の変化1mPa・s未満、×:粒径変化20nm以上または粘度の変化1mPa・s以上)。
【0036】
(2)吐出安定性
記録液をインクジェットプリンター「EM−900C」(エプソン社製)のカートリッジに詰めて上質普通紙(エプソン社製)に印字を行い、吐出安定性を評価した。(○:ノズルから120分以上安定に吐出する、△:連続吐出120分以内で液滴の着弾位置に乱れが生ずる、×:ノズルから安定に吐出できない)。
(3)耐水性
(2)で得られた印字物を水に湿した綿棒で擦り、印字物の変化を目視で評価した(○:インキの滲み、剥がれが認められない、×:インキの滲み、剥がれが認められる)。
【0037】
(4)耐擦性
(2)で得られた印字物を乾いた綿棒で擦り、印字物の変化を目視で評価した(○:印字物にインキの剥がれが認められない、×:印字物にインキの剥がれが認められる)。
(5)耐目詰まり性
(2)と同様にして印字後、プリンターのキャップを外し、1時間後に再度印字を行い、目詰まりの有無を評価した(○:ノズルの目詰まり無し、×:ノズルの目詰まり有り)。
【0038】
【表4】
Figure 0004258229
【0039】
消泡剤:「サーフィノールDF−58」(エアープロダクツジャパン社製)
pH調製剤:「アミノアルコールMMA」(日本乳化剤社製)
【0040】
【表5】
Figure 0004258229
【0041】
消泡剤:「サーフィノールDF−58」(エアープロダクツジャパン社製)
pH調製剤:「アミノアルコールMMA」(日本乳化剤社製)
【0042】
【発明の効果】
顔料を重合性界面活性剤の存在下で水に分散し、その分散液内でシランカップリング剤および重合開始剤の存在下で前記重合性界面活性剤を重合する本発明の方法によって、顔料表面から分散剤の脱離が起きにくく、かつシランカップリング剤の架橋反応により得られる強靭な被膜を顔料表面に有する水性顔料分散液を製造することが出できるようになった。
本発明の方法で製造された水性顔料分散液は、各種印刷インキに用いることができる。
その一例として、本発明の方法で製造された水性顔料分散液を用いたインクジェット用記録液は、ノズルの目詰まりを生じることなく、耐水性、耐擦性の良好な記録物を与える。これにより、プリンターメンテナンス機構への負荷や被記録体の制約が非常に少なくなり、高速印刷の分野や従来は被記録体の影響により耐水、耐擦性の不足を生じることが多かった分野への用途拡大ができる。

Claims (7)

  1. 顔料が重合性界面活性剤の存在下で水に分散された分散液内において、シランカップリング剤および重合開始剤の存在下で前記重合性界面活性剤を重合することを特徴とする水性顔料分散液の製造方法。
  2. 重合開始剤の存在下で、重合性界面活性剤および該重合性界面活性剤と共重合可能なモノマーを共重合する請求項1記載の水性顔料分散液の製造方法。
  3. 重合性界面活性剤が下記一般式(1)で示される化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の水性顔料分散液の製造方法。
    Figure 0004258229
    [式中、Rは炭素数8~18のアルキル基またはアルコキシ基を表し、mは1〜200の整数を表し、MはNa、K、またはNH4を表す。]
  4. シランカップリング剤が、重合性基と加水分解反応性基とを有する有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか記載の水性顔料分散液の製造方法。
  5. 顔料が酸性カーボンブラックであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の水性顔料分散液の製造方法。
  6. 請求項1ないし5いずれか記載の方法で製造される水性顔料分散液。
  7. 請求項6記載の水性顔料分散液を含むことを特徴とするインクジェット用記録液。
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