JP4257105B2 - インクジェット記録用インクセット、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用インクセット、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及び記録物に関し、さらに詳しくは、被記録媒体（メディア）として、普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成し得るインクジェット記録用インクセット、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及び記録物に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、周知の如く、インクの小滴を飛翔させ、紙等の被記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。
この印刷方法は、安価な装置で高解像度、高品位な画像を高速、且つ簡便に印刷することができ、特に、カラー印刷においては、近年、写真に代わり得る画像形成方法として技術開発が行われている。
【０００３】
ここで、インクジェット記録に使用されるインクは、カラー画像を形成する場合には、ブラックインクに加えてマゼンタ（Ｍａｇｅｎｔａ）、イエロー（Ｙｅｌｌｏｗ）、シアン（Ｃｙａｎ）の各色のインクからなるインクセットを用いることが一般的である。
【０００４】
このインクジェット記録に使用されるインクは、水を主成分とし、これに着色成分、目詰まり防止を目的としたグリセリン等の湿潤剤等を含有したものが一般的である。
【０００５】
そして、インクジェット記録用のインクに用いられる着色剤としては、色材の彩度・色再現性等の画像品質が比較的優れ、利用できる色材の種類が豊富であることや、水への溶解性、目詰まり等の信頼性の点から水溶性染料が多く使用されている。
また、耐光性や耐水性の点から有機顔料が使用されることもある。
【０００６】
しかしながら、一般に、複写機やプリンタにおいて減法混色により記録された画像は、ディスプレイ等の加法混色による出力画像よりも色再現域が狭く、不十分である。
【０００７】
そこで、色再現域を広げたり、色相を改良したりすることを目的として、色材の探索がなされたり、蛍光物質を用いる等の検討がなされている。
【０００８】
上述の目的を達成するための方法としては、例えば、特許文献１に開示されたカラー画像形成方法がある。
【０００９】
上記特許文献１に記載の構成は、減法混色のみで構成されているハードコピーに対し、蛍光物質と非蛍光物質を混合して使用することにある。
【００１０】
【特許文献１】
特開２０００−１８１１７０号公報
【００１１】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献１に記載の構成においては、色相を変えない範囲内で色再現域を広げようとするものであり、色再現域の拡大は不十分である。
【００１２】
また、カラー画像を形成するために用いられるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色の内、視覚的な観点から最も重要と考えられるのが赤系の色を再現するために用いられるＭａｇｅｎｔａインクである。
【００１３】
赤系の色は、人間の視覚に最も影響を及ぼす色であるので、インクジェット記録方式により形成された画像の画質を高めるためには、赤系の色が十分に、且つ安定して発色していることが重要となる。
【００１４】
ここで、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクからなるインクセットとして、カラーバランスの良い染料のみの組み合わせ、あるいはカラーバランスの良い顔料のみの組み合わせを選択することは非常に困難であるという問題点がある。
【００１５】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、マゼンタ、イエロー、シアンの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の面積が従来のインクジェット記録用インクセットと比較して大きくなり、色再現域を大きく広げることが可能であり、且つ、マゼンタ、イエロー、シアンの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の内角のばらつきが従来のインクジェット記録用インクセットと比較して小さくなり、カラーバランスを向上させることが可能なインクジェット記録用インクセットを提供することを第１番目の目的とする。
【００１６】
また、本発明は、極めて品質の高い記録が実現でき、被記録媒体として普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成することが可能なインクジェット記録装置を提供することを第２番目の目的とする。
【００１７】
また、本発明は、極めて品質の高い記録が実現でき、被記録媒体として普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成することが可能なインクジェット記録方法を提供することを第３番目の目的とする。
【００１９】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなるインクジェット記録用インクセットであって、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つ少なくとも１色のマゼンタインクを有し、マゼンタインクが、蛍光インクを含有することを特徴とすることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【００２０】
すなわち、本発明は、少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなるインクジェット記録用インクセットであって、前記カラーインクは、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つマゼンタインクと、４００〜５００ｎｍに吸収波長を持ち、５００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つイエローインクと、５５０〜７００ｎｍに吸収波長を持ち、４００〜５５０ｎｍに主な反射波長を持つシアンインクとを有し、前記マゼンタインクのみが蛍光インクを含有し、前記イエローインクと前記シアンインクは、前記蛍光インクに比べて褪色しにくいカラー顔料又は水溶性カラー染料を使用し、前記マゼンタインクと前記イエローインクと前記シアンインクで形成される色相の色三角形の内角のばらつきを３２°よりも小さくしたことを特徴とするインクジェット記録用インクセットである。
【００２１】
本発明のインクジェット記録用インクセットは、少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなるインクジェット記録用インクセットであって、前記カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つ少なくとも１色のマゼンタインクを有し、前記マゼンタインクが、蛍光インクを含有していることを特徴とするものである。
【００２２】
本発明によれば、マゼンタ、イエロー、シアンの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の面積が従来のインクジェット記録用インクセットと比較して大きくなり、色再現域が大きく広がる。
【００２３】
本発明のインクジェット記録用インクセットは、上記カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つマゼンタインクと、４００〜５００ｎｍに吸収波長を持ち、５００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つイエローインクと、５５０〜７００ｎｍに吸収波長を持ち、４００〜５５０ｎｍに主な反射波長を持つシアンインクとを有し、前記マゼンタインクが、蛍光インクを含有し、前記マゼンタインクと前記イエローインクと前記シアンインクで形成される色相の色三角形の内角のばらつきを３２°よりも小さくしてある。
【００２４】
本発明によれば、色三角形の内角のばらつきが従来のインクジェット記録用インクセットと比較して小さくなり、カラーバランスが向上する。
【００２５】
第２の本発明は、少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなるインクセットと、前記カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録部とを備えたインクジェット記録装置において、前記インクセットが、上記に記載のインクジェット記録用インクセットであり、前記インクジェット記録部が、上記に記載のインクジェット記録用インクセットのカラーインクを被記録媒体に付着させて記録を行う装置である。
【００２６】
本発明によれば、極めて品質の高い記録が実現でき、被記録媒体として普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成することが可能である。
【００２７】
第３の本発明は、カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法において、前記カラーインクとして上記に記載のインクジェット記録用インクセットを用いる方法である。
【００２８】
本発明によれば、極めて品質の高い記録が実現でき、被記録媒体として普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成することが可能である。
【００３１】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るインクジェット記録用インクセットは、少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなり、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つ少なくとも１色のマゼンタインクを有し、マゼンタインクが、蛍光インクを含有している。
【００３２】
本発明の実施形態に係るインクジェット記録用インクセットは、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つマゼンタインクと、４００〜５００ｎｍに吸収波長を持ち、５００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つイエローインクと、５５０〜７００ｎｍに吸収波長を持ち、４００〜５５０ｎｍに主な反射波長を持つシアンインクとを有し、マゼンタインクが、蛍光インクを含有し、マゼンタインクとイエローインクとシアンインクで形成される色相の色三角形の内角のばらつきを３２°よりも小さくしてある。
【００３３】
本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置は、少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなるインクセットと、カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録部とを備え、インクセットが、上記に記載のインクジェット記録用インクセットであり、インクジェット記録部が、上記に記載のインクジェット記録用インクセットのカラーインクを被記録媒体に付着させて記録を行う記録装置である。
【００３４】
本発明の実施形態に係るインクジェット記録方法は、カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行い、カラーインクとして上記に記載のインクジェット記録用インクセットを使用する記録方法である。
【００３５】
本発明の実施形態に係る記録物は、カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法により印刷され、上記に記載のインクジェット記録用インクセットを使用するものである。
【００３６】
本発明の比較に係るインクジェット記録用インクセットの比較例１、比較例２及び本発明の実施の形態に係るインクジェット記録用インクセットの実施例１、実施例２を次の表１に示す。
【００３７】
【表１】
【００３８】
次に、上記表１に示した比較例１のインクジェット記録用インクセットについて説明する。
本発明の比較に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない顔料のインクセットである。
【００３９】
次に、上記表１に示した比較例２のインクジェット記録用インクセットについて説明する。
本発明の比較に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない染料のインクセットである。
【００４０】
次に、上記表１に示した実施例１のインクジェット記録用インクセットについて説明する。
本発明の実施の形態に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａインクが着色剤として蛍光インクであり、他のＹｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない顔料のインクセットである。
【００４１】
次に、上記表１に示した実施例２のインクジェット記録用インクセットについて説明する。
本発明の実施の形態に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａインクが着色剤として蛍光インクであり、他のＹｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない顔料のインクセットである。
【００４２】
以下、本発明を具体的に説明する。
（１）インク組成物
本発明によるインク組成物は、インク組成物を用いた記録方式に用いられる。
インク組成物を用いた記録方式とは、例えば、インクジェット記録方式、ペン等による筆記具による記録方式、その他各種の印字方式が挙げられる。
特に、本発明によるインク組成物は、インクジェット記録方法に好ましく用いられる。
【００４３】
（２）蛍光インク
本発明によるインク組成物に含まれる蛍光インクとは、励起光を照射することにより蛍光を発生するインクを意味し、蛍光インクは、蛍光染料、蛍光顔料のいずれのものであっても良い。
【００４４】
蛍光インクの例としては、ジアミノスチルベンスルホン酸、ジスチルベン等のスチルベン系着色剤、ベンジジン、ベンジンスルホン酸、ジアミノフルオレン等のジアミノジフェニル系着色剤、イミダゾロン、トリアゾール等のイミダゾール系着色剤、チアゾール系着色剤、オキサゾール系着色剤、クマリン系着色剤、カルボスチル系着色剤、ナフタールイミド系着色剤、ピラゾロン系着色剤、ジヒドロピリジン系着色剤等の蛍光染料が挙げられ、これら具体例としては、Ｃ．Ｉ．Ｆｌｕｏｒｅｓｃｅｎｔ Ｂｒｉｇｈｔｅｎｉｎｇ Ａｇｅｎｔ１４、２４、３０、３２、５２、５４、６９、７９、８４、８５、８６、８７、９０、１０４、１１２、１１３、１１４、１１９、１２１、１３４、１３５、１５２、１６６、１６７、１６８、１６９、１９１、１９２、２０１、２０４、２１４、２１６、２１７、２１８、２２３、２２６、２２９、２３４、２３６、２３９、２４０、２４２、２５７、２６０、２７１、２９０、３１０、３１１、３１２、３１４、３１５、Ｃ．Ｉ．Ｂａｓｉｃ Ｒｅｄ１、１−１、Ｃ．Ｉ．Ｂａｓｉｃ Ｖｉｏｌｅｔ１０、１１：１、ｐ−クオータフェニル、ｐ−テルフェニル、２，５−ジフェニルオキサゾール、２−（１−ナフチル）−５−フェニルオキサゾール、２−フェニル−５−（４−ビフェニル）−１，３，４−オキサジアゾール、３−フェニル−７−（１，２−２Ｈ−ナフトトリアゾリル）−クマリン、３，７−ビス（ジエチルアミノ）フェノキサゾニウム硝酸塩、３，７−ビス（ジエチルアミノ）フェノキサゾニウムナイトレート、ユーロピウム−テノイルトリフルオロアセトンキレート体、ＤＴＴＣＩ、ＨＤＩＴＣＩ、ＩＲ−１２５、ＩＲ−１３２、ＩＲ−１４０、Ｈ．Ｉ．Ｄ．Ｃ．Ｉｏｄｉｄｅ等が挙げられる。
【００４５】
また、本発明の蛍光インクとして市販品を利用することも可能であり、その具体例としては、カチオンブリリアントレッド（発光色赤）、カチオンブリリアントピンク（発光色桃）、スパイロンレッド（発光色赤）（以上、いずれも保土ヶ谷化学株式会社製）やＦＺ２００１（発光色赤橙）、ＦＺ２００３（発光色赤）、ＦＺ２００４（発光色橙）、ＦＺ６０１１（発光色赤橙）、ＦＺ６０１３（発光色赤）、ＦＺ６０１４（発光色橙）、ＦＺ６０３７（発光色桃）（以上、いずれもシンロイヒ製）等が挙げられる。
【００４６】
本発明によるインク組成物における蛍光インクの含有量は、０．００１〜５０重量％程度が好ましく、より好ましくは１０〜３０重量％程度である。
【００４７】
（３）蛍光インクでないカラー顔料インク
本発明において用いられるカラー顔料の具体例を示す。
イエローインク用の顔料としては、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー７４のモノアゾイエロー顔料、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１２８の縮合アゾ顔料、並びに、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１５１、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１８０及びＣ．Ｉ．ピグメントイエロー１９４のベンズイミダゾロン顔料等が挙げられる。
【００４８】
シアンインク用の顔料及びブルーインク用の顔料としては、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：３及びＣ．Ｉ．ピグメントブルー１５：４のフタロシアニン顔料等が挙げられる。
【００４９】
グリーンインク用の顔料としては、Ｃ．Ｉ．ピグメントグリーン７及びＣ．Ｉ．ピグメントグリーン３６のフタロシアニン顔料等が挙げられる。
【００５０】
レッドインク用の顔料としては、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド２３８のナフトールＡＳ顔料、及びＣ．Ｉ．ピグメントレッド２２１の縮合アゾ顔料等が挙げられる。
【００５１】
比較用のマゼンタインク用の顔料としては、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１２２及びＣ．Ｉ．ピグメントレッド２０２のキナクリドン顔料、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１４９、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１９０及びＣ．Ｉ．ピグメントレッド２２４のペリレン顔料、並びに、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１７５、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１７６及びＣ．Ｉ．ピグメントレッド１８５のナフトールＡＳ−ベンズイミダゾロン顔料等が挙げられる。
【００５２】
本発明のインク組成物には、上記のカラー顔料の含有量は、２〜１５重量％が好ましく、３〜８重量％がより好ましい。
上記のカラー顔料の含有量が２重量％未満の場合には、インクの印字濃度が低くなるので好ましくない。
また、上記のカラー顔料の含有量が１５重量％を超える場合には、インクの粘度が高く、インクの分散安定性に劣るので好ましくない。
【００５３】
（４）蛍光インクでないカラー染料インク
本発明において用いられる水溶性カラー染料の具体例を示す。
イエローインク用の染料としては、Ｃ．Ｉ．アシッドイエロー１７、Ｃ．Ｉ．アシッドイエロー２３、Ｃ．Ｉ．ダイレクトイエロー８６、Ｃ．Ｉ．ダイレクトイエロー１３２、Ｃ．Ｉ．ダイレクトイエロー１４２等が挙げられる。
【００５４】
シアンインク用の染料としては、Ｃ．Ｉ．アシッドブルー７、Ｃ．Ｉ．アシッドブルー９、Ｃ．Ｉ．ダイレクトブルー１９９等が挙げられる。
【００５５】
比較用のマゼンタインク用の染料としては、Ｃ．Ｉ．アシッドレッド５２、Ｃ．Ｉ．リアクティブレッド５８、Ｃ．Ｉ．リアクティブレッド１８０、Ｃ．Ｉ．ダイレクトレッド２２７、Ｃ．Ｉ．アシッドレッド２８９等が挙げられる。
【００５６】
本発明のインク組成物には、上記の水溶性カラー染料の含有量は、２〜１５重量％が好ましく、３〜８重量％がより好ましい。
上記の水溶性カラー染料の含有量が２重量％未満の場合には、インクの印字濃度が低くなるので好ましくない。
また、上記の水溶性カラー染料の含有量が１５重量％を超える場合には、インクの粘度が高く、インクの分散安定性に劣るので好ましくない。
【００５７】
（５）ブラックインク
ブラックインクとしては、フードブラック２、ダイレクトブラック６２、ダイレクトブラック１６８、ダイレクトブラック１９６、ダイレクトブラック１５４、カーボンブラック等が用いられる。
【００５８】
（６）水溶性ポリマー
本発明において用いられる水溶性ポリマーは、特に、定着後の着色剤の高彩度発色に重要な役割を担うと同時に、耐擦過性を確保するのにも大きく寄与する。
また、有機顔料の親水性が充分でない場合には、分散剤としても機能する。
【００５９】
このことから、好ましい水溶性ポリマーとしては、カルボキシル基を有する酸価５０〜３００（好ましくは８０〜２５０）の樹脂、スチレン単位及び／又はα−メチルスチレン単位を３５％以上含有する重量平均分子量が２０００〜２００００（好ましくは２５００〜１５０００）の重合体が挙げられる。
【００６０】
好ましい水溶性ポリマーの例としては、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル（Ｃ１〜Ｃ４程度のアルキルエステル）共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル（Ｃ１〜Ｃ４程度のアルキルエステル）共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【００６１】
また、水溶性ポリマーとしては、顔料や水溶性染料又は蛍光インク色素の官能基と水素結合又は共有結合が可能な官能基を分子の末端あるいは中間に有する部分と分子末端に親水基とを有し、分子が規則正しく配列する構造で、交互共重合やブロック共重合が含まれる規制重合型水溶性樹脂を用いることもできる。
【００６２】
規制重合型水溶性樹脂としては、ソルスパース（登録商標）Ｓ２００００、Ｓ２７０００、Ｓ１２０００、Ｓ２２０００、Ｓ２４０００ＧＲ、Ｓ２６０００、Ｓ２８０００、Ｓ１３２４０、Ｓ５０００〔ゼネカ社製〕等が挙げられる。
【００６３】
水溶性ポリマーとしては、顔料や水溶性染料又は蛍光インク色素と強い相互作用を示し、高彩度発色と被記録メディアへの定着性に優れたものであれば、上記のものに限定されない。
これらは１種を単独で、又は２種以上を適宜組み合わせて用いられる。
【００６４】
水溶性ポリマーの含有量は、１〜１５重量％が好ましく、２〜８重量％がより好ましい。
水溶性ポリマーの含有量が１重量％未満の場合には、インクの定着性が劣化するので好ましくない。
また、水溶性ポリマーの含有量が１５重量％を超える場合には、インクの粘度が高くなり、分散安定性に劣るので好ましくない。
【００６５】
（７）浸透剤
本発明において用いられる浸透剤は、インクの乾燥性を速めるだけではなく、インクを被記録メディア表面に効率的に定着させたり、あるいは普通紙において滲みを防止するといった重要な役割を果たす。
【００６６】
浸透剤の好ましい例としては、エチレングリコール−ｎ−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−ｎ−ブチルエーテル、トリエチレングリコール−ｎ−ブチルエーテル、プロピレングリコール−ｎ−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール−Ｎ−ブチルエーテル等のグリコールエーテル類、アニオン型であるパーフルオロアルキルスルホン酸アンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸カリウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸カリウム塩、ないしは、ノニオン型であるパーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、パーフルオロアルキルアルコキシレート、フッ素化アルキルエステル等のフッ素系界面活性剤等が挙げられるが、表面張力を低下させる機能を持つものであれば、これらに限定されるものではない。
【００６７】
本発明のインク組成物には、上記の浸透剤の１種を単独で、又は２種以上を適宜組み合わせて用いられる。
【００６８】
浸透剤の含有量は、０．１〜５重量％が好ましく、０．５〜４重量％がより好ましい。
浸透剤の含有量が０．１重量％未満の場合には、インクの乾燥が遅くなるので好ましくない。
また、浸透剤の含有量が５重量％を超える場合には、インクの滲み防止効果が劣化するので好ましくない。
【００６９】
本発明のインク組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常インク組成物に用いられるｐＨ調整剤、湿潤剤等の公知の添加剤を含んでいても良い。
【００７０】
（８）ｐＨ調整剤
ｐＨ調整剤の好ましい例としては、尿素、２−ピロリドン、Ｎ−メチル−２−ピロリドン、１，３−ジメチル−イミダゾリジノン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の窒素含有化合物が挙げられる。
【００７１】
これらの窒素含有化合物は、インクの乾燥に伴うインクジェット記録装置におけるノズルやオリフィスでの目詰まり防止剤としても機能し、目詰まり防止剤として有効に用いられる。
【００７２】
インク組成物への窒素含有化合物の添加量としては、１〜１０重量％が好適である。
【００７３】
（９）湿潤剤
湿潤剤の好ましい例としては、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、１，２，６−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【００７４】
湿潤剤は、インク組成物の保存安定性、記録特性及び被記録メディアに対する定着性の向上にも寄与する。
また、窒素含有化合物と同様に、インクの乾燥によるインクジェット記録装置におけるノズルやオリフィスでの目詰まり防止剤としても機能する。
【００７５】
インク組成物への湿潤剤の添加量としては、０．５〜４０重量％程度が好ましい。
【００７６】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のインク組成物には、例えば、グリセリン、ジグリセリン等の３価以上の多価アルコール、ポリグリセリンのような親水親油バランス（ｈｙｄｒｏｐｈｉｌｅ−ｌｉｐｏｐｈｉｌｅ ｂａｌａｎｃｅ；ＨＬＢ）の高いものを添加することができる。
【００７７】
その添加量としては、２〜２０重量％程度が好ましい。
【００７８】
（１０）インク溶剤
本発明のインク組成物には、さらにインク溶剤として低沸点有機溶剤を添加するのが好ましく、一価アルコールが特に好ましい。
【００７９】
低沸点有機溶剤の好ましい例としては、メタノール、エタノール、ｎ−プロパノール、ｉｓｏ−プロパノール、ｎ−ブタノール、ｓｅｃ−ブタノール、ｔｅｒｔ−ブタノール、ｉｓｏ−ブタノール、Ｎ−ペンタノール等の１級、２級、３級アルコールが挙げられる。
【００８０】
インク組成物への低沸点有機溶剤の添加量は、０．５〜１０重量％が好ましく、より好ましくは、１．５〜６重量％の範囲である。
【００８１】
（１１）調整剤
本発明のインク組成物には、さらにインクの諸物性を改善するために必要に応じて適当な調整剤を添加することができる。
【００８２】
物性調整剤の好ましい例としては、例えば、粘度調整剤、防カビ剤、防腐剤等が挙げられる。
【００８３】
本発明のインク組成物は、上記の各成分を適宜、適当な方法で水に分散あるいは混合することによって調製することができる。
【００８４】
本発明のインク組成物を用いることにより、極めて品質の高い記録が実現でき、かつそれを用いたインクジェット記録装置が得られる。
【００８５】
また、イエロー、マゼンタ、シアンの３色のカラーインク以外に、補色であるブルー、グリーン、レッドの３色のカラーインクを加えて６色とすることで、より高彩色な記録が達成できる。
【００８６】
インクジェット記録装置としては、インクジェットプリンタのような公知の装置を用いることができる。
【００８７】
次に、マゼンタ（Ｍａｇｅｎｔａ）のカラーインクについて説明する。
本発明の少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなり、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つ少なくとも１色のマゼンタインクを有し、マゼンタインクが、蛍光インクを含有していることを特徴とするインクジェット記録用インクセットによれば、マゼンタ（Ｍａｇｅｎｔａ）のカラーインクは、カラー顔料や水溶性カラー染料に蛍光インクを混合して使用してもかまわないが、蛍光インクだけで使用する方がより好ましい。
【００８８】
一般に、蛍光インクは、カラー顔料や水溶性カラー染料に比べて、彩度（Ｃ*＝（（ａ*）2+（ｂ*）2）1/2）が大きく、色再現域が広くなることが特徴であるが、カラー顔料や水溶性カラー染料と混合し、その添加量を増やすと共に、彩度も小さくなる傾向にある。
【００８９】
Ｍａｇｅｎｔａのカラーインクを蛍光インクだけで使用することにより、色再現域を広げる効果がより大きくなるのである。
【００９０】
次に、イエロー（Ｙｅｌｌｏｗ）、シアン（Ｃｙａｎ）の２色のカラーインクについて説明する。
本発明の少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなり、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つ少なくとも１色のマゼンタインクを有し、マゼンタインクが、蛍光インクを含有していることを特徴とするインクジェット記録用インクセットによれば、イエロー（Ｙｅｌｌｏｗ）、シアン（Ｃｙａｎ）の２色のカラーインクは、マゼンタ（Ｍａｇｅｎｔａ）のカラーインクと同時に蛍光インクを使用しても良いが、Ｍａｇｅｎｔａのカラーインクと同時に蛍光インクを使用しない方がより好ましい。
【００９１】
一般に、蛍光インクは、カラー顔料や水溶性カラー染料に比べて、褪色しやすい欠点があり、基材上に多孔質のインク受容層を有するインクジェット用被記録媒体に蛍光インクを吐出することにより得られた記録物は、インク受容層が多孔質であるため、インク中の蛍光インクが外気と接触することで、空気中に含まれるオゾン、窒素酸化物、硫黄酸化物等のガスにより褪色することがある。
【００９２】
しかしながら、Ｍａｇｅｎｔａのカラーインクだけを蛍光インク、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの２色のカラーインクをカラー顔料や水溶性カラー染料といった耐ガス性のある色材を使用することで、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクの組み合わせで作られるＧｒｅｅｎ、Ｒｅｄ、Ｂｌｕｅといったいわゆる２次色は、蛍光Ｍａｇｅｎｔａの上にＹｅｌｌｏｗやＣｙａｎがカバーリングされ、褪色が抑えられるという効果が期待できる。
【００９３】
次に、評価方法について説明する。
Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のインク組成物を、一定量（１．０ｍｌ）採取し、専用コート紙上にアプリケータ塗布したものを乾燥後、分光測色計Ｘ−Ｒｉｔｅ９３８（日本平版機材（株）製）で、色相（ａ*、ｂ*）を測定し、色相図として評価した。
【００９４】
この時の色再現域の広さの計算は、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積の大きさを比較することで行った。
つまり、色三角形の面積が大きいほど、色再現域が広いと考えられる。
【００９５】
また、カラーバランスの良さは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきで評価した。
つまり、色三角形の内角のばらつき（内角の最大値−内角の最小値）が小さいほど、カラーバランスが良いと考えられ、色三角形が正三角形（内角全てが６０°）を示し、色三角形の内角のばらつきが０であることが理想的である。
【００９６】
次に、色三角形の面積について説明する。
Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が大きいほど、色再現域が広いと考えられる。
【００９７】
次に、カラーバランスについて説明する。
Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつき（内角の最大値−内角の最小値）が小さいほど、カラーバランスが良いと考えられ、色三角形が正三角形（内角全てが６０°）を示し、色三角形の内角のばらつきが０であることが理想的である。
【００９８】
しかしながら、現実には、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクからなるインクセットとして、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相図上の色三角形の内角のばらつきが０であるようなカラーバランスの良い組み合わせを選択することは非常に困難で、本発明によれば、好ましくは色三角形の内角のばらつきを３２°よりも小さくすることで、カラーバランスを著しく向上することができる。
【００９９】
（実施例）
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、特に限定されるものではない。
【０１００】
比較例１：
本発明の比較に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光色素を有する蛍光インクではない顔料のインクセットである。
【０１０１】
Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクとして、下記混合比でインクを作成した。
【０１０２】
Ｍａｇｅｎｔａ（顔料）：
Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１２２ ３．５重量％
ソルスパース２７０００ ２．５重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１０３】
Ｙｅｌｌｏｗ（顔料）：
Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー７４ ４．５重量％
ソルスパース２７０００ ３重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１０４】
Ｃｙａｎ（顔料）：
Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：３ ３．５重量％
ソルスパース２７０００ ２．５重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１０５】
このＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のインク組成物を、一定量（１．０ｍｌ）採取し、専用コート紙上にアプリケータ塗布したものを乾燥後、分光測色計Ｘ−Ｒｉｔｅ９３８（日本平版機材（株）製）で、色相（ａ*、ｂ*）を評価した。
【０１０６】
実施例１：
本発明の実施の形態に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａインクが着色剤として蛍光インクであり、他のＹｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない顔料のインクセットである。
【０１０７】
本発明のインクジェット記録用インクセットとして、蛍光インクであるＭａｇｅｎｔａは、シンロイヒ製ＩＪＢ−３０３７（固形分濃度２５％）の水分散体に下記混合比で溶剤を添加して作成したものを使用し、顔料インクであるＹｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎは、前記比較例１と同様の下記混合比で作成したものを使用した。
【０１０８】
Ｍａｇｅｎｔａ（蛍光インク）：
シンロイヒＩＪＢ−３０３７（固形分濃度２５％） ８０．５重量％
ソルスパース２７０００ ２．５重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
【０１０９】
Ｙｅｌｌｏｗ（顔料）：
Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー７４ ４．５重量％
ソルスパース２７０００ ３重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１１０】
Ｃｙａｎ（顔料）：
Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：３ ３．５重量％
ソルスパース２７０００ ２．５重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１１１】
このＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のインク組成物を、一定量（１．０ｍｌ）採取し、専用コート紙上にアプリケータ塗布したものを乾燥後、分光測色計Ｘ−Ｒｉｔｅ９３８（日本平版機材（株）製）で、色相（ａ*、ｂ*）を評価した。
【０１１２】
比較例１と実施例１の色相（ａ*、ｂ*）を評価した結果を図１、図２に示す。
【０１１３】
従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図１の点線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が５３３０であった。
【０１１４】
本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図１の実線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が６７６３であった。
【０１１５】
本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積は、従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積よりも図１に示す▲１▼の部分だけ増加している。
【０１１６】
図１に示すように、Ｍａｇｅｎｔａを顔料インクから蛍光色素を有する蛍光インクに変更することで、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が大きく広がることがわかる。
【０１１７】
従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図２の点線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきが３６°（８１°（内角の最大角度）−４５°（内角の最小角度））であった。
【０１１８】
本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図２の実線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきが２５°（７０°（内角の最大角度）−４５°（内角の最小角度））であった。
【０１１９】
本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきは、図２に示すように、従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきよりも１１°だけ減少している。
【０１２０】
また、図２に示すように、Ｍａｇｅｎｔａを顔料インクから蛍光色素を有する蛍光インクに変更することで、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつき（内角の最大角度−内角の最小角度）が小さくなり、カラーバランスは良化することがわかる。
【０１２１】
以上のように、本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットと従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットについて、色三角形の面積（色面積）の大きさと色三角形の内角のばらつきを比較すると、次の表２に記載した値になる。
【０１２２】
【表２】
【０１２３】
表２から明らかなように、本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットは、従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットと比較して、色三角形の面積（色面積）は約３０％大きくなると共に、色三角形の内角のばらつきも減少し、カラーバランスについても良化していることがわかる。
【０１２４】
比較例２：
本発明の比較に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない染料のインクセットである。
【０１２５】
Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクとして、下記混合比でインクを作成した。
【０１２６】
Ｍａｇｅｎｔａ（染料）：
Ｃ．Ｉ．アシッドレッド２８９ ５重量％
表面張力調整剤
３，６−ジメチル−４−オクチル−３，６−ジオール ３重量％
ポリエチレングリコール １０重量％
１，４−ジオキサン ５重量％
イオン交換水 残量
【０１２７】
Ｙｅｌｌｏｗ（染料）：
Ｃ．Ｉ．ダイレクトイエロー８６ ４．５重量％
表面張力調整剤
３，６−ジメチル−４−オクチル−３，６−ジオール ３重量％
グリセリン １０重量％
トリエチレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１２８】
Ｃｙａｎ（染料）：
Ｃ．Ｉ．ダイレクトブルー１９９ ３重量％
表面張力調整剤
３，６−ジメチル−４−オクチル−３，６−ジオール ３重量％
グリセリン １０重量％
ジメチルスルホキシド １０重量％
イオン交換水 残量
【０１２９】
このＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のインク組成物を、一定量（１．０ｍｌ）採取し、専用コート紙上にアプリケータ塗布したものを乾燥後、分光測色計Ｘ−Ｒｉｔｅ９３８（日本平版機材（株）製）で、色相（ａ*、ｂ*）を評価した。
【０１３０】
実施例２：
本発明の実施の形態に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａインクが着色剤として蛍光インクであり、他のＹｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない染料のインクセットである。
【０１３１】
本発明のインクセットとして、蛍光インクであるＭａｇｅｎｔａは、シンロイヒ製ＩＪＢ−３０３７（固形分濃度２５％）の水分散体に下記混合比で溶剤を添加して作成したものを使用し、染料インクであるＹｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎは、前記比較例２と同様の下記混合比で作成したものを使用した。
【０１３２】
Ｍａｇｅｎｔａ（蛍光インク）：
シンロイヒＩＪＢ−３０３７（固形分濃度２５％） ８０．５重量％
ソルスパース２７０００ ２．５重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
【０１３３】
Ｙｅｌｌｏｗ（染料）：
Ｃ．Ｉ．ダイレクトイエロー８６ ４．５重量％
表面張力調整剤
３，６−ジメチル−４−オクチル−３，６−ジオール ３重量％
グリセリン １０重量％
トリエチレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１３４】
Ｃｙａｎ（染料）：
Ｃ．Ｉ．ダイレクトブルー１９９ ３重量％
表面張力調整剤
３，６−ジメチル−４−オクチル−３，６−ジオール ３重量％
グリセリン １０重量％
ジメチルスルホキシド １０重量％
イオン交換水 残量
【０１３５】
このＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のインク組成物を、一定量（１．０ｍｌ）採取し、専用コート紙上にアプリケータ塗布したものを乾燥後、分光測色計Ｘ−Ｒｉｔｅ９３８（日本平版機材（株）製）で、色相（ａ*、ｂ*）を評価した。
【０１３６】
比較例２と実施例２の色相（ａ*、ｂ*）を評価した結果を図３、図４に示す。
【０１３７】
従来の比較例２のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図３の点線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が５７２９であった。
【０１３８】
本発明の実施例２のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図３の実線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が７２４９であった。
【０１３９】
本発明の実施例２のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積は、従来の比較例２のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積よりも図３に示す▲２▼−▲３▼の部分だけ増加している。
【０１４０】
図３に示すように、Ｍａｇｅｎｔａを染料インクから蛍光色素を有する蛍光インクに変更することで、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が大きく広がることがわかる。
【０１４１】
従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図４の点線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきが４９°（９０°（内角の最大角度）−４１°（内角の最小角度））であった。
【０１４２】
本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図４の実線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきが３２°（７３°（内角の最大角度）−４１°（内角の最小角度））であった。
【０１４３】
本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきは、図４に示すように、従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきよりも１７°だけ減少している。
【０１４４】
また、図４に示すように、Ｍａｇｅｎｔａを染料インクから蛍光色素を有する蛍光インクに変更することで、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつき（内角の最大角度−内角の最小角度）が小さくなり、カラーバランスは良化することがわかる。
【０１４５】
以上のように、本発明の実施例２のインクジェット記録用インクセットと従来の比較例２のインクジェット記録用インクセットについて、色三角形の面積（色面積）の大きさと色三角形の内角のばらつきを比較すると、次の表３に記載した値になる。
【０１４６】
【表３】
【０１４７】
表３から明らかなように、本発明の実施例２のインクジェット記録用インクセットは、従来の比較例２のインクジェット記録用インクセットと比較して、色三角形の面積（色面積）は約３０％大きくなると共に、色三角形の内角のばらつきも減少し、カラーバランスについても良化していることがわかる。
【０１４８】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のインクジェット記録用インクセットによれば、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つ少なくとも１色のマゼンタインクを有し、マゼンタインクが蛍光インクを含有しているので、マゼンタ、イエロー、シアンの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の面積が従来のインクジェット記録用インクセットと比較して大きくなり、従って、色再現域を大きく広げることができる。
【０１４９】
また、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つマゼンタインクと、４００〜５００ｎｍに吸収波長を持ち、５００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つイエローインクと、５５０〜７００ｎｍに吸収波長を持ち、４００〜５５０ｎｍに主な反射波長を持つシアンインクとを有し、マゼンタインクが、蛍光インクを含有し、マゼンタ、イエロー、シアンの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の内角のばらつきを３２°よりも小さくしたので、色三角形の内角のばらつきが従来のインクジェット記録用インクセットと比較して小さくなり、従って、カラーバランスを向上させることができる。
【０１５０】
本発明のインクジェット記録装置によれば、インクセットが上記に記載のインクジェット記録用インクセットであり、インクジェット記録部が上記に記載のインクジェット記録用インクセットのカラーインクを被記録媒体に付着させて記録を行うので、極めて品質の高い記録が実現でき、被記録媒体として普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成することができ、しかも、高解像度、高品位な画像を高速且つ簡便に印刷することができる。
【０１５１】
本発明のインクジェット記録方法によれば、カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行い、カラーインクとして上記に記載のインクジェット記録用インクセットを使用するので、極めて品質の高い記録が実現でき、被記録媒体として普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成することができ、しかも、高解像度、高品位な画像を高速且つ簡便に印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】比較例１と実施例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の面積を評価した結果を示す色相図。
【図２】比較例１と実施例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の内角のばらつきを評価した結果を示す色相図。
【図３】比較例２と実施例２のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の面積を評価した結果を示す色相図。
【図４】比較例２と実施例２のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の内角のばらつきを評価した結果を示す色相図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用インクセット、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及び記録物に関し、さらに詳しくは、被記録媒体（メディア）として、普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成し得るインクジェット記録用インクセット、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及び記録物に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、周知の如く、インクの小滴を飛翔させ、紙等の被記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。
この印刷方法は、安価な装置で高解像度、高品位な画像を高速、且つ簡便に印刷することができ、特に、カラー印刷においては、近年、写真に代わり得る画像形成方法として技術開発が行われている。
【０００３】
ここで、インクジェット記録に使用されるインクは、カラー画像を形成する場合には、ブラックインクに加えてマゼンタ（Ｍａｇｅｎｔａ）、イエロー（Ｙｅｌｌｏｗ）、シアン（Ｃｙａｎ）の各色のインクからなるインクセットを用いることが一般的である。
【０００４】
このインクジェット記録に使用されるインクは、水を主成分とし、これに着色成分、目詰まり防止を目的としたグリセリン等の湿潤剤等を含有したものが一般的である。
【０００５】
そして、インクジェット記録用のインクに用いられる着色剤としては、色材の彩度・色再現性等の画像品質が比較的優れ、利用できる色材の種類が豊富であることや、水への溶解性、目詰まり等の信頼性の点から水溶性染料が多く使用されている。
また、耐光性や耐水性の点から有機顔料が使用されることもある。
【０００６】
しかしながら、一般に、複写機やプリンタにおいて減法混色により記録された画像は、ディスプレイ等の加法混色による出力画像よりも色再現域が狭く、不十分である。
【０００７】
そこで、色再現域を広げたり、色相を改良したりすることを目的として、色材の探索がなされたり、蛍光物質を用いる等の検討がなされている。
【０００８】
上述の目的を達成するための方法としては、例えば、特許文献１に開示されたカラー画像形成方法がある。
【０００９】
上記特許文献１に記載の構成は、減法混色のみで構成されているハードコピーに対し、蛍光物質と非蛍光物質を混合して使用することにある。
【００１０】
【特許文献１】
特開２０００−１８１１７０号公報
【００１１】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献１に記載の構成においては、色相を変えない範囲内で色再現域を広げようとするものであり、色再現域の拡大は不十分である。
【００１２】
また、カラー画像を形成するために用いられるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色の内、視覚的な観点から最も重要と考えられるのが赤系の色を再現するために用いられるＭａｇｅｎｔａインクである。
【００１３】
赤系の色は、人間の視覚に最も影響を及ぼす色であるので、インクジェット記録方式により形成された画像の画質を高めるためには、赤系の色が十分に、且つ安定して発色していることが重要となる。
【００１４】
ここで、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクからなるインクセットとして、カラーバランスの良い染料のみの組み合わせ、あるいはカラーバランスの良い顔料のみの組み合わせを選択することは非常に困難であるという問題点がある。
【００１５】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、マゼンタ、イエロー、シアンの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の面積が従来のインクジェット記録用インクセットと比較して大きくなり、色再現域を大きく広げることが可能であり、且つ、マゼンタ、イエロー、シアンの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の内角のばらつきが従来のインクジェット記録用インクセットと比較して小さくなり、カラーバランスを向上させることが可能なインクジェット記録用インクセットを提供することを第１番目の目的とする。
【００１６】
また、本発明は、極めて品質の高い記録が実現でき、被記録媒体として普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成することが可能なインクジェット記録装置を提供することを第２番目の目的とする。
【００１７】
また、本発明は、極めて品質の高い記録が実現でき、被記録媒体として普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成することが可能なインクジェット記録方法を提供することを第３番目の目的とする。
【００１９】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなるインクジェット記録用インクセットであって、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つ少なくとも１色のマゼンタインクを有し、マゼンタインクが、蛍光インクを含有することを特徴とすることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【００２０】
すなわち、本発明は、少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなるインクジェット記録用インクセットであって、前記カラーインクは、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つマゼンタインクと、４００〜５００ｎｍに吸収波長を持ち、５００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つイエローインクと、５５０〜７００ｎｍに吸収波長を持ち、４００〜５５０ｎｍに主な反射波長を持つシアンインクとを有し、前記マゼンタインクのみが蛍光インクを含有し、前記イエローインクと前記シアンインクは、前記蛍光インクに比べて褪色しにくいカラー顔料又は水溶性カラー染料を使用し、前記マゼンタインクと前記イエローインクと前記シアンインクで形成される色相の色三角形の内角のばらつきを３２°よりも小さくしたことを特徴とするインクジェット記録用インクセットである。
【００２１】
本発明のインクジェット記録用インクセットは、少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなるインクジェット記録用インクセットであって、前記カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つ少なくとも１色のマゼンタインクを有し、前記マゼンタインクが、蛍光インクを含有していることを特徴とするものである。
【００２２】
本発明によれば、マゼンタ、イエロー、シアンの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の面積が従来のインクジェット記録用インクセットと比較して大きくなり、色再現域が大きく広がる。
【００２３】
本発明のインクジェット記録用インクセットは、上記カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つマゼンタインクと、４００〜５００ｎｍに吸収波長を持ち、５００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つイエローインクと、５５０〜７００ｎｍに吸収波長を持ち、４００〜５５０ｎｍに主な反射波長を持つシアンインクとを有し、前記マゼンタインクが、蛍光インクを含有し、前記マゼンタインクと前記イエローインクと前記シアンインクで形成される色相の色三角形の内角のばらつきを３２°よりも小さくしてある。
【００２４】
本発明によれば、色三角形の内角のばらつきが従来のインクジェット記録用インクセットと比較して小さくなり、カラーバランスが向上する。
【００２５】
第２の本発明は、少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなるインクセットと、前記カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録部とを備えたインクジェット記録装置において、前記インクセットが、上記に記載のインクジェット記録用インクセットであり、前記インクジェット記録部が、上記に記載のインクジェット記録用インクセットのカラーインクを被記録媒体に付着させて記録を行う装置である。
【００２６】
本発明によれば、極めて品質の高い記録が実現でき、被記録媒体として普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成することが可能である。
【００２７】
第３の本発明は、カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法において、前記カラーインクとして上記に記載のインクジェット記録用インクセットを用いる方法である。
【００２８】
本発明によれば、極めて品質の高い記録が実現でき、被記録媒体として普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成することが可能である。
【００３１】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るインクジェット記録用インクセットは、少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなり、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つ少なくとも１色のマゼンタインクを有し、マゼンタインクが、蛍光インクを含有している。
【００３２】
本発明の実施形態に係るインクジェット記録用インクセットは、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つマゼンタインクと、４００〜５００ｎｍに吸収波長を持ち、５００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つイエローインクと、５５０〜７００ｎｍに吸収波長を持ち、４００〜５５０ｎｍに主な反射波長を持つシアンインクとを有し、マゼンタインクが、蛍光インクを含有し、マゼンタインクとイエローインクとシアンインクで形成される色相の色三角形の内角のばらつきを３２°よりも小さくしてある。
【００３３】
本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置は、少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなるインクセットと、カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録部とを備え、インクセットが、上記に記載のインクジェット記録用インクセットであり、インクジェット記録部が、上記に記載のインクジェット記録用インクセットのカラーインクを被記録媒体に付着させて記録を行う記録装置である。
【００３４】
本発明の実施形態に係るインクジェット記録方法は、カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行い、カラーインクとして上記に記載のインクジェット記録用インクセットを使用する記録方法である。
【００３５】
本発明の実施形態に係る記録物は、カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法により印刷され、上記に記載のインクジェット記録用インクセットを使用するものである。
【００３６】
本発明の比較に係るインクジェット記録用インクセットの比較例１、比較例２及び本発明の実施の形態に係るインクジェット記録用インクセットの実施例１、実施例２を次の表１に示す。
【００３７】
【表１】
次に、上記表１に示した比較例１のインクジェット記録用インクセットについて説明する。
本発明の比較に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない顔料のインクセットである。
【００３９】
次に、上記表１に示した比較例２のインクジェット記録用インクセットについて説明する。
本発明の比較に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない染料のインクセットである。
【００４０】
次に、上記表１に示した実施例１のインクジェット記録用インクセットについて説明する。
本発明の実施の形態に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａインクが着色剤として蛍光インクであり、他のＹｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない顔料のインクセットである。
【００４１】
次に、上記表１に示した実施例２のインクジェット記録用インクセットについて説明する。
本発明の実施の形態に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａインクが着色剤として蛍光インクであり、他のＹｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない顔料のインクセットである。
【００４２】
以下、本発明を具体的に説明する。
（１）インク組成物
本発明によるインク組成物は、インク組成物を用いた記録方式に用いられる。
インク組成物を用いた記録方式とは、例えば、インクジェット記録方式、ペン等による筆記具による記録方式、その他各種の印字方式が挙げられる。
特に、本発明によるインク組成物は、インクジェット記録方法に好ましく用いられる。
【００４３】
（２）蛍光インク
本発明によるインク組成物に含まれる蛍光インクとは、励起光を照射することにより蛍光を発生するインクを意味し、蛍光インクは、蛍光染料、蛍光顔料のいずれのものであっても良い。
【００４４】
蛍光インクの例としては、ジアミノスチルベンスルホン酸、ジスチルベン等のスチルベン系着色剤、ベンジジン、ベンジンスルホン酸、ジアミノフルオレン等のジアミノジフェニル系着色剤、イミダゾロン、トリアゾール等のイミダゾール系着色剤、チアゾール系着色剤、オキサゾール系着色剤、クマリン系着色剤、カルボスチル系着色剤、ナフタールイミド系着色剤、ピラゾロン系着色剤、ジヒドロピリジン系着色剤等の蛍光染料が挙げられ、これら具体例としては、Ｃ．Ｉ．Ｆｌｕｏｒｅｓｃｅｎｔ Ｂｒｉｇｈｔｅｎｉｎｇ Ａｇｅｎｔ１４、２４、３０、３２、５２、５４、６９、７９、８４、８５、８６、８７、９０、１０４、１１２、１１３、１１４、１１９、１２１、１３４、１３５、１５２、１６６、１６７、１６８、１６９、１９１、１９２、２０１、２０４、２１４、２１６、２１７、２１８、２２３、２２６、２２９、２３４、２３６、２３９、２４０、２４２、２５７、２６０、２７１、２９０、３１０、３１１、３１２、３１４、３１５、Ｃ．Ｉ．Ｂａｓｉｃ Ｒｅｄ１、１−１、Ｃ．Ｉ．Ｂａｓｉｃ Ｖｉｏｌｅｔ１０、１１：１、ｐ−クオータフェニル、ｐ−テルフェニル、２，５−ジフェニルオキサゾール、２−（１−ナフチル）−５−フェニルオキサゾール、２−フェニル−５−（４−ビフェニル）−１，３，４−オキサジアゾール、３−フェニル−７−（１，２−２Ｈ−ナフトトリアゾリル）−クマリン、３，７−ビス（ジエチルアミノ）フェノキサゾニウム硝酸塩、３，７−ビス（ジエチルアミノ）フェノキサゾニウムナイトレート、ユーロピウム−テノイルトリフルオロアセトンキレート体、ＤＴＴＣＩ、ＨＤＩＴＣＩ、ＩＲ−１２５、ＩＲ−１３２、ＩＲ−１４０、Ｈ．Ｉ．Ｄ．Ｃ．Ｉｏｄｉｄｅ等が挙げられる。
【００４５】
また、本発明の蛍光インクとして市販品を利用することも可能であり、その具体例としては、カチオンブリリアントレッド（発光色赤）、カチオンブリリアントピンク（発光色桃）、スパイロンレッド（発光色赤）（以上、いずれも保土ヶ谷化学株式会社製）やＦＺ２００１（発光色赤橙）、ＦＺ２００３（発光色赤）、ＦＺ２００４（発光色橙）、ＦＺ６０１１（発光色赤橙）、ＦＺ６０１３（発光色赤）、ＦＺ６０１４（発光色橙）、ＦＺ６０３７（発光色桃）（以上、いずれもシンロイヒ製）等が挙げられる。
【００４６】
本発明によるインク組成物における蛍光インクの含有量は、０．００１〜５０重量％程度が好ましく、より好ましくは１０〜３０重量％程度である。
【００４７】
（３）蛍光インクでないカラー顔料インク
本発明において用いられるカラー顔料の具体例を示す。
イエローインク用の顔料としては、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー７４のモノアゾイエロー顔料、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１２８の縮合アゾ顔料、並びに、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１５１、Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１８０及びＣ．Ｉ．ピグメントイエロー１９４のベンズイミダゾロン顔料等が挙げられる。
【００４８】
シアンインク用の顔料及びブルーインク用の顔料としては、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５、Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：３及びＣ．Ｉ．ピグメントブルー１５：４のフタロシアニン顔料等が挙げられる。
【００４９】
グリーンインク用の顔料としては、Ｃ．Ｉ．ピグメントグリーン７及びＣ．Ｉ．ピグメントグリーン３６のフタロシアニン顔料等が挙げられる。
【００５０】
レッドインク用の顔料としては、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド２３８のナフトールＡＳ顔料、及びＣ．Ｉ．ピグメントレッド２２１の縮合アゾ顔料等が挙げられる。
【００５１】
比較用のマゼンタインク用の顔料としては、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１２２及びＣ．Ｉ．ピグメントレッド２０２のキナクリドン顔料、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１４９、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１９０及びＣ．Ｉ．ピグメントレッド２２４のペリレン顔料、並びに、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１７５、Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１７６及びＣ．Ｉ．ピグメントレッド１８５のナフトールＡＳ−ベンズイミダゾロン顔料等が挙げられる。
【００５２】
本発明のインク組成物には、上記のカラー顔料の含有量は、２〜１５重量％が好ましく、３〜８重量％がより好ましい。
上記のカラー顔料の含有量が２重量％未満の場合には、インクの印字濃度が低くなるので好ましくない。
また、上記のカラー顔料の含有量が１５重量％を超える場合には、インクの粘度が高く、インクの分散安定性に劣るので好ましくない。
【００５３】
（４）蛍光インクでないカラー染料インク
本発明において用いられる水溶性カラー染料の具体例を示す。
イエローインク用の染料としては、Ｃ．Ｉ．アシッドイエロー１７、Ｃ．Ｉ．アシッドイエロー２３、Ｃ．Ｉ．ダイレクトイエロー８６、Ｃ．Ｉ．ダイレクトイエロー１３２、Ｃ．Ｉ．ダイレクトイエロー１４２等が挙げられる。
【００５４】
シアンインク用の染料としては、Ｃ．Ｉ．アシッドブルー７、Ｃ．Ｉ．アシッドブルー９、Ｃ．Ｉ．ダイレクトブルー１９９等が挙げられる。
【００５５】
比較用のマゼンタインク用の染料としては、Ｃ．Ｉ．アシッドレッド５２、Ｃ．Ｉ．リアクティブレッド５８、Ｃ．Ｉ．リアクティブレッド１８０、Ｃ．Ｉ．ダイレクトレッド２２７、Ｃ．Ｉ．アシッドレッド２８９等が挙げられる。
【００５６】
本発明のインク組成物には、上記の水溶性カラー染料の含有量は、２〜１５重量％が好ましく、３〜８重量％がより好ましい。
上記の水溶性カラー染料の含有量が２重量％未満の場合には、インクの印字濃度が低くなるので好ましくない。
また、上記の水溶性カラー染料の含有量が１５重量％を超える場合には、インクの粘度が高く、インクの分散安定性に劣るので好ましくない。
【００５７】
（５）ブラックインク
ブラックインクとしては、フードブラック２、ダイレクトブラック６２、ダイレクトブラック１６８、ダイレクトブラック１９６、ダイレクトブラック１５４、カーボンブラック等が用いられる。
【００５８】
（６）水溶性ポリマー
本発明において用いられる水溶性ポリマーは、特に、定着後の着色剤の高彩度発色に重要な役割を担うと同時に、耐擦過性を確保するのにも大きく寄与する。
また、有機顔料の親水性が充分でない場合には、分散剤としても機能する。
【００５９】
このことから、好ましい水溶性ポリマーとしては、カルボキシル基を有する酸価５０〜３００（好ましくは８０〜２５０）の樹脂、スチレン単位及び／又はα−メチルスチレン単位を３５％以上含有する重量平均分子量が２０００〜２００００（好ましくは２５００〜１５０００）の重合体が挙げられる。
【００６０】
好ましい水溶性ポリマーの例としては、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル（Ｃ１〜Ｃ４程度のアルキルエステル）共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル（Ｃ１〜Ｃ４程度のアルキルエステル）共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【００６１】
また、水溶性ポリマーとしては、顔料や水溶性染料又は蛍光インク色素の官能基と水素結合又は共有結合が可能な官能基を分子の末端あるいは中間に有する部分と分子末端に親水基とを有し、分子が規則正しく配列する構造で、交互共重合やブロック共重合が含まれる規制重合型水溶性樹脂を用いることもできる。
【００６２】
規制重合型水溶性樹脂としては、ソルスパース（登録商標）Ｓ２００００、Ｓ２７０００、Ｓ１２０００、Ｓ２２０００、Ｓ２４０００ＧＲ、Ｓ２６０００、Ｓ２８０００、Ｓ１３２４０、Ｓ５０００〔ゼネカ社製〕等が挙げられる。
【００６３】
水溶性ポリマーとしては、顔料や水溶性染料又は蛍光インク色素と強い相互作用を示し、高彩度発色と被記録メディアへの定着性に優れたものであれば、上記のものに限定されない。
これらは１種を単独で、又は２種以上を適宜組み合わせて用いられる。
【００６４】
水溶性ポリマーの含有量は、１〜１５重量％が好ましく、２〜８重量％がより好ましい。
水溶性ポリマーの含有量が１重量％未満の場合には、インクの定着性が劣化するので好ましくない。
また、水溶性ポリマーの含有量が１５重量％を超える場合には、インクの粘度が高くなり、分散安定性に劣るので好ましくない。
【００６５】
（７）浸透剤
本発明において用いられる浸透剤は、インクの乾燥性を速めるだけではなく、インクを被記録メディア表面に効率的に定着させたり、あるいは普通紙において滲みを防止するといった重要な役割を果たす。
【００６６】
浸透剤の好ましい例としては、エチレングリコール−ｎ−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−ｎ−ブチルエーテル、トリエチレングリコール−ｎ−ブチルエーテル、プロピレングリコール−ｎ−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール−Ｎ−ブチルエーテル等のグリコールエーテル類、アニオン型であるパーフルオロアルキルスルホン酸アンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸カリウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸カリウム塩、ないしは、ノニオン型であるパーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、パーフルオロアルキルアルコキシレート、フッ素化アルキルエステル等のフッ素系界面活性剤等が挙げられるが、表面張力を低下させる機能を持つものであれば、これらに限定されるものではない。
【００６７】
本発明のインク組成物には、上記の浸透剤の１種を単独で、又は２種以上を適宜組み合わせて用いられる。
【００６８】
浸透剤の含有量は、０．１〜５重量％が好ましく、０．５〜４重量％がより好ましい。
浸透剤の含有量が０．１重量％未満の場合には、インクの乾燥が遅くなるので好ましくない。
また、浸透剤の含有量が５重量％を超える場合には、インクの滲み防止効果が劣化するので好ましくない。
【００６９】
本発明のインク組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常インク組成物に用いられるｐＨ調整剤、湿潤剤等の公知の添加剤を含んでいても良い。
【００７０】
（８）ｐＨ調整剤
ｐＨ調整剤の好ましい例としては、尿素、２−ピロリドン、Ｎ−メチル−２−ピロリドン、１，３−ジメチル−イミダゾリジノン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の窒素含有化合物が挙げられる。
【００７１】
これらの窒素含有化合物は、インクの乾燥に伴うインクジェット記録装置におけるノズルやオリフィスでの目詰まり防止剤としても機能し、目詰まり防止剤として有効に用いられる。
【００７２】
インク組成物への窒素含有化合物の添加量としては、１〜１０重量％が好適である。
【００７３】
（９）湿潤剤
湿潤剤の好ましい例としては、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、１，２，６−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【００７４】
湿潤剤は、インク組成物の保存安定性、記録特性及び被記録メディアに対する定着性の向上にも寄与する。
また、窒素含有化合物と同様に、インクの乾燥によるインクジェット記録装置におけるノズルやオリフィスでの目詰まり防止剤としても機能する。
【００７５】
インク組成物への湿潤剤の添加量としては、０．５〜４０重量％程度が好ましい。
【００７６】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のインク組成物には、例えば、グリセリン、ジグリセリン等の３価以上の多価アルコール、ポリグリセリンのような親水親油バランス（ｈｙｄｒｏｐｈｉｌｅ−ｌｉｐｏｐｈｉｌｅ ｂａｌａｎｃｅ；ＨＬＢ）の高いものを添加することができる。
【００７７】
その添加量としては、２〜２０重量％程度が好ましい。
【００７８】
（１０）インク溶剤
本発明のインク組成物には、さらにインク溶剤として低沸点有機溶剤を添加するのが好ましく、一価アルコールが特に好ましい。
【００７９】
低沸点有機溶剤の好ましい例としては、メタノール、エタノール、ｎ−プロパノール、ｉｓｏ−プロパノール、ｎ−ブタノール、ｓｅｃ−ブタノール、ｔｅｒｔ−ブタノール、ｉｓｏ−ブタノール、Ｎ−ペンタノール等の１級、２級、３級アルコールが挙げられる。
【００８０】
インク組成物への低沸点有機溶剤の添加量は、０．５〜１０重量％が好ましく、より好ましくは、１．５〜６重量％の範囲である。
【００８１】
（１１）調整剤
本発明のインク組成物には、さらにインクの諸物性を改善するために必要に応じて適当な調整剤を添加することができる。
【００８２】
物性調整剤の好ましい例としては、例えば、粘度調整剤、防カビ剤、防腐剤等が挙げられる。
【００８３】
本発明のインク組成物は、上記の各成分を適宜、適当な方法で水に分散あるいは混合することによって調製することができる。
【００８４】
本発明のインク組成物を用いることにより、極めて品質の高い記録が実現でき、かつそれを用いたインクジェット記録装置が得られる。
【００８５】
また、イエロー、マゼンタ、シアンの３色のカラーインク以外に、補色であるブルー、グリーン、レッドの３色のカラーインクを加えて６色とすることで、より高彩色な記録が達成できる。
【００８６】
インクジェット記録装置としては、インクジェットプリンタのような公知の装置を用いることができる。
【００８７】
次に、マゼンタ（Ｍａｇｅｎｔａ）のカラーインクについて説明する。
本発明の少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなり、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つ少なくとも１色のマゼンタインクを有し、マゼンタインクが、蛍光インクを含有していることを特徴とするインクジェット記録用インクセットによれば、マゼンタ（Ｍａｇｅｎｔａ）のカラーインクは、カラー顔料や水溶性カラー染料に蛍光インクを混合して使用してもかまわないが、蛍光インクだけで使用する方がより好ましい。
【００８８】
一般に、蛍光インクは、カラー顔料や水溶性カラー染料に比べて、彩度（Ｃ*＝（（ａ*）2+（ｂ*）2）1/2）が大きく、色再現域が広くなることが特徴であるが、カラー顔料や水溶性カラー染料と混合し、その添加量を増やすと共に、彩度も小さくなる傾向にある。
【００８９】
Ｍａｇｅｎｔａのカラーインクを蛍光インクだけで使用することにより、色再現域を広げる効果がより大きくなるのである。
【００９０】
次に、イエロー（Ｙｅｌｌｏｗ）、シアン（Ｃｙａｎ）の２色のカラーインクについて説明する。
本発明の少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなり、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つ少なくとも１色のマゼンタインクを有し、マゼンタインクが、蛍光インクを含有していることを特徴とするインクジェット記録用インクセットによれば、イエロー（Ｙｅｌｌｏｗ）、シアン（Ｃｙａｎ）の２色のカラーインクは、マゼンタ（Ｍａｇｅｎｔａ）のカラーインクと同時に蛍光インクを使用しても良いが、Ｍａｇｅｎｔａのカラーインクと同時に蛍光インクを使用しない方がより好ましい。
【００９１】
一般に、蛍光インクは、カラー顔料や水溶性カラー染料に比べて、褪色しやすい欠点があり、基材上に多孔質のインク受容層を有するインクジェット用被記録媒体に蛍光インクを吐出することにより得られた記録物は、インク受容層が多孔質であるため、インク中の蛍光インクが外気と接触することで、空気中に含まれるオゾン、窒素酸化物、硫黄酸化物等のガスにより褪色することがある。
【００９２】
しかしながら、Ｍａｇｅｎｔａのカラーインクだけを蛍光インク、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの２色のカラーインクをカラー顔料や水溶性カラー染料といった耐ガス性のある色材を使用することで、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクの組み合わせで作られるＧｒｅｅｎ、Ｒｅｄ、Ｂｌｕｅといったいわゆる２次色は、蛍光Ｍａｇｅｎｔａの上にＹｅｌｌｏｗやＣｙａｎがカバーリングされ、褪色が抑えられるという効果が期待できる。
【００９３】
次に、評価方法について説明する。
Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のインク組成物を、一定量（１．０ｍｌ）採取し、専用コート紙上にアプリケータ塗布したものを乾燥後、分光測色計Ｘ−Ｒｉｔｅ９３８（日本平版機材（株）製）で、色相（ａ*、ｂ*）を測定し、色相図として評価した。
【００９４】
この時の色再現域の広さの計算は、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積の大きさを比較することで行った。
つまり、色三角形の面積が大きいほど、色再現域が広いと考えられる。
【００９５】
また、カラーバランスの良さは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきで評価した。
つまり、色三角形の内角のばらつき（内角の最大値−内角の最小値）が小さいほど、カラーバランスが良いと考えられ、色三角形が正三角形（内角全てが６０°）を示し、色三角形の内角のばらつきが０であることが理想的である。
【００９６】
次に、色三角形の面積について説明する。
Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が大きいほど、色再現域が広いと考えられる。
【００９７】
次に、カラーバランスについて説明する。
Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつき（内角の最大値−内角の最小値）が小さいほど、カラーバランスが良いと考えられ、色三角形が正三角形（内角全てが６０°）を示し、色三角形の内角のばらつきが０であることが理想的である。
【００９８】
しかしながら、現実には、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクからなるインクセットとして、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相図上の色三角形の内角のばらつきが０であるようなカラーバランスの良い組み合わせを選択することは非常に困難で、本発明によれば、好ましくは色三角形の内角のばらつきを３２°よりも小さくすることで、カラーバランスを著しく向上することができる。
【００９９】
（実施例）
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、特に限定されるものではない。
【０１００】
比較例１：
本発明の比較に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光色素を有する蛍光インクではない顔料のインクセットである。
【０１０１】
Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクとして、下記混合比でインクを作成した。
【０１０２】
Ｍａｇｅｎｔａ（顔料）：
Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１２２ ３．５重量％
ソルスパース２７０００ ２．５重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１０３】
Ｙｅｌｌｏｗ（顔料）：
Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー７４ ４．５重量％
ソルスパース２７０００ ３重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１０４】
Ｃｙａｎ（顔料）：
Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：３ ３．５重量％
ソルスパース２７０００ ２．５重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１０５】
このＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のインク組成物を、一定量（１．０ｍｌ）採取し、専用コート紙上にアプリケータ塗布したものを乾燥後、分光測色計Ｘ−Ｒｉｔｅ９３８（日本平版機材（株）製）で、色相（ａ*、ｂ*）を評価した。
【０１０６】
実施例１：
本発明の実施の形態に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａインクが着色剤として蛍光インクであり、他のＹｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない顔料のインクセットである。
【０１０７】
本発明のインクジェット記録用インクセットとして、蛍光インクであるＭａｇｅｎｔａは、シンロイヒ製ＩＪＢ−３０３７（固形分濃度２５％）の水分散体に下記混合比で溶剤を添加して作成したものを使用し、顔料インクであるＹｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎは、前記比較例１と同様の下記混合比で作成したものを使用した。
【０１０８】
Ｍａｇｅｎｔａ（蛍光インク）：
シンロイヒＩＪＢ−３０３７（固形分濃度２５％） ８０．５重量％
ソルスパース２７０００ ２．５重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
【０１０９】
Ｙｅｌｌｏｗ（顔料）：
Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー７４ ４．５重量％
ソルスパース２７０００ ３重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１１０】
Ｃｙａｎ（顔料）：
Ｃ．Ｉ．ピグメントブルー１５：３ ３．５重量％
ソルスパース２７０００ ２．５重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１１１】
このＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のインク組成物を、一定量（１．０ｍｌ）採取し、専用コート紙上にアプリケータ塗布したものを乾燥後、分光測色計Ｘ−Ｒｉｔｅ９３８（日本平版機材（株）製）で、色相（ａ*、ｂ*）を評価した。
【０１１２】
比較例１と実施例１の色相（ａ*、ｂ*）を評価した結果を図１、図２に示す。
【０１１３】
従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図１の点線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が５３３０であった。
【０１１４】
本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図１の実線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が６７６３であった。
【０１１５】
本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積は、従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積よりも図１に示す▲１▼の部分だけ増加している。
【０１１６】
図１に示すように、Ｍａｇｅｎｔａを顔料インクから蛍光色素を有する蛍光インクに変更することで、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が大きく広がることがわかる。
【０１１７】
従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図２の点線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきが３６°（８１°（内角の最大角度）−４５°（内角の最小角度））であった。
【０１１８】
本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図２の実線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきが２５°（７０°（内角の最大角度）−４５°（内角の最小角度））であった。
【０１１９】
本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきは、図２に示すように、従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきよりも１１°だけ減少している。
【０１２０】
また、図２に示すように、Ｍａｇｅｎｔａを顔料インクから蛍光色素を有する蛍光インクに変更することで、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつき（内角の最大角度−内角の最小角度）が小さくなり、カラーバランスは良化することがわかる。
【０１２１】
以上のように、本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットと従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットについて、色三角形の面積（色面積）の大きさと色三角形の内角のばらつきを比較すると、次の表２に記載した値になる。
【０１２２】
【表２】
表２から明らかなように、本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットは、従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットと比較して、色三角形の面積（色面積）は約３０％大きくなると共に、色三角形の内角のばらつきも減少し、カラーバランスについても良化していることがわかる。
【０１２４】
比較例２：
本発明の比較に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない染料のインクセットである。
【０１２５】
Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクとして、下記混合比でインクを作成した。
【０１２６】
Ｍａｇｅｎｔａ（染料）：
Ｃ．Ｉ．アシッドレッド２８９ ５重量％
表面張力調整剤
３，６−ジメチル−４−オクチル−３，６−ジオール ３重量％
ポリエチレングリコール １０重量％
１，４−ジオキサン ５重量％
イオン交換水 残量
【０１２７】
Ｙｅｌｌｏｗ（染料）：
Ｃ．Ｉ．ダイレクトイエロー８６ ４．５重量％
表面張力調整剤
３，６−ジメチル−４−オクチル−３，６−ジオール ３重量％
グリセリン １０重量％
トリエチレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１２８】
Ｃｙａｎ（染料）：
Ｃ．Ｉ．ダイレクトブルー１９９ ３重量％
表面張力調整剤
３，６−ジメチル−４−オクチル−３，６−ジオール ３重量％
グリセリン １０重量％
ジメチルスルホキシド １０重量％
イオン交換水 残量
【０１２９】
このＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のインク組成物を、一定量（１．０ｍｌ）採取し、専用コート紙上にアプリケータ塗布したものを乾燥後、分光測色計Ｘ−Ｒｉｔｅ９３８（日本平版機材（株）製）で、色相（ａ*、ｂ*）を評価した。
【０１３０】
実施例２：
本発明の実施の形態に係るインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａインク、Ｙｅｌｌｏｗインク、Ｃｙａｎインクからなるインクセットであって、Ｍａｇｅｎｔａインクが着色剤として蛍光インクであり、他のＹｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎインクの着色剤が蛍光インクではない染料のインクセットである。
【０１３１】
本発明のインクセットとして、蛍光インクであるＭａｇｅｎｔａは、シンロイヒ製ＩＪＢ−３０３７（固形分濃度２５％）の水分散体に下記混合比で溶剤を添加して作成したものを使用し、染料インクであるＹｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎは、前記比較例２と同様の下記混合比で作成したものを使用した。
【０１３２】
Ｍａｇｅｎｔａ（蛍光インク）：
シンロイヒＩＪＢ−３０３７（固形分濃度２５％） ８０．５重量％
ソルスパース２７０００ ２．５重量％
ｎ−プロパノール ２重量％
尿素 ５重量％
ジプロピレングリコール ５重量％
テトラプロピレングリコール ５重量％
【０１３３】
Ｙｅｌｌｏｗ（染料）：
Ｃ．Ｉ．ダイレクトイエロー８６ ４．５重量％
表面張力調整剤
３，６−ジメチル−４−オクチル−３，６−ジオール ３重量％
グリセリン １０重量％
トリエチレングリコール ５重量％
イオン交換水 残量
【０１３４】
Ｃｙａｎ（染料）：
Ｃ．Ｉ．ダイレクトブルー１９９ ３重量％
表面張力調整剤
３，６−ジメチル−４−オクチル−３，６−ジオール ３重量％
グリセリン １０重量％
ジメチルスルホキシド １０重量％
イオン交換水 残量
【０１３５】
このＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のインク組成物を、一定量（１．０ｍｌ）採取し、専用コート紙上にアプリケータ塗布したものを乾燥後、分光測色計Ｘ−Ｒｉｔｅ９３８（日本平版機材（株）製）で、色相（ａ*、ｂ*）を評価した。
【０１３６】
比較例２と実施例２の色相（ａ*、ｂ*）を評価した結果を図３、図４に示す。
【０１３７】
従来の比較例２のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図３の点線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が５７２９であった。
【０１３８】
本発明の実施例２のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図３の実線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が７２４９であった。
【０１３９】
本発明の実施例２のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積は、従来の比較例２のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積よりも図３に示す▲２▼−▲３▼の部分だけ増加している。
【０１４０】
図３に示すように、Ｍａｇｅｎｔａを染料インクから蛍光色素を有する蛍光インクに変更することで、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の面積が大きく広がることがわかる。
【０１４１】
従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図４の点線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきが４９°（９０°（内角の最大角度）−４１°（内角の最小角度））であった。
【０１４２】
本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットは、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形が図４の実線で示す三角形であり、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきが３２°（７３°（内角の最大角度）−４１°（内角の最小角度））であった。
【０１４３】
本発明の実施例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきは、図４に示すように、従来の比較例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつきよりも１７°だけ減少している。
【０１４４】
また、図４に示すように、Ｍａｇｅｎｔａを染料インクから蛍光色素を有する蛍光インクに変更することで、Ｍａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相（ａ*、ｂ*）の色三角形の内角のばらつき（内角の最大角度−内角の最小角度）が小さくなり、カラーバランスは良化することがわかる。
【０１４５】
以上のように、本発明の実施例２のインクジェット記録用インクセットと従来の比較例２のインクジェット記録用インクセットについて、色三角形の面積（色面積）の大きさと色三角形の内角のばらつきを比較すると、次の表３に記載した値になる。
【０１４６】
【表３】
表３から明らかなように、本発明の実施例２のインクジェット記録用インクセットは、従来の比較例２のインクジェット記録用インクセットと比較して、色三角形の面積（色面積）は約３０％大きくなると共に、色三角形の内角のばらつきも減少し、カラーバランスについても良化していることがわかる。
【０１４８】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のインクジェット記録用インクセットによれば、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つ少なくとも１色のマゼンタインクを有し、マゼンタインクが蛍光インクを含有しているので、マゼンタ、イエロー、シアンの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の面積が従来のインクジェット記録用インクセットと比較して大きくなり、従って、色再現域を大きく広げることができる。
【０１４９】
また、カラーインクが、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つマゼンタインクと、４００〜５００ｎｍに吸収波長を持ち、５００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つイエローインクと、５５０〜７００ｎｍに吸収波長を持ち、４００〜５５０ｎｍに主な反射波長を持つシアンインクとを有し、マゼンタインクが、蛍光インクを含有し、マゼンタ、イエロー、シアンの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の内角のばらつきを３２°よりも小さくしたので、色三角形の内角のばらつきが従来のインクジェット記録用インクセットと比較して小さくなり、従って、カラーバランスを向上させることができる。
【０１５０】
本発明のインクジェット記録装置によれば、インクセットが上記に記載のインクジェット記録用インクセットであり、インクジェット記録部が上記に記載のインクジェット記録用インクセットのカラーインクを被記録媒体に付着させて記録を行うので、極めて品質の高い記録が実現でき、被記録媒体として普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成することができ、しかも、高解像度、高品位な画像を高速且つ簡便に印刷することができる。
【０１５１】
本発明のインクジェット記録方法によれば、カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行い、カラーインクとして上記に記載のインクジェット記録用インクセットを使用するので、極めて品質の高い記録が実現でき、被記録媒体として普通紙又はインクジェット記録用紙の何れを用いても、発色性及び耐光性の何れにも優れた文字及び／又は画像を形成することができ、しかも、高解像度、高品位な画像を高速且つ簡便に印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】比較例１と実施例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の面積を評価した結果を示す色相図。
【図２】比較例１と実施例１のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の内角のばらつきを評価した結果を示す色相図。
【図３】比較例２と実施例２のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の面積を評価した結果を示す色相図。
【図４】比較例２と実施例２のインクジェット記録用インクセットにおけるＭａｇｅｎｔａ、Ｙｅｌｌｏｗ、Ｃｙａｎの３色のカラーインクで構成される色相の色三角形の内角のばらつきを評価した結果を示す色相図。
Claims (3)
- 少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなるインクジェット記録用インクセットであって、
前記カラーインクは、５００〜６００ｎｍに吸収波長を持ち、６００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つマゼンタインクと、４００〜５００ｎｍに吸収波長を持ち、５００〜７００ｎｍに主な反射波長を持つイエローインクと、５５０〜７００ｎｍに吸収波長を持ち、４００〜５５０ｎｍに主な反射波長を持つシアンインクとを有し、前記マゼンタインクのみが蛍光インクを含有し、前記イエローインクと前記シアンインクは、前記蛍光インクに比べて褪色しにくいカラー顔料又は水溶性カラー染料を使用し、前記マゼンタインクと前記イエローインクと前記シアンインクで形成される色相の色三角形の内角のばらつきを３２°よりも小さくしたことを特徴とするインクジェット記録用インクセット。 - 少なくとも黒インク以外の３色以上のカラーインクからなるインクセットと、前記カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録部とを備えたインクジェット記録装置において、
前記インクセットは、前記請求項１に記載のインクジェット記録用インクセットであり、前記インクジェット記録部は、前記請求項１記載のインクジェット記録用インクセットのカラーインクを被記録媒体に付着させて記録を行うことを特徴とするインクジェット記録装置。 - カラーインクを吐出口から小液滴として吐出、飛翔させ、被記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法において、
前記カラーインクとして前記請求項１記載のインクジェット記録用インクセットを使用することを特徴とするインクジェット記録方法。
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