JP4253970B2 - Pzt系結晶膜およびその製造方法 - Google Patents

Pzt系結晶膜およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンデンサをはじめとし、赤外線や超音波等の検出器、また、アクチュエーターや圧電ブザー等に使用することができる、水熱合成法によるPZT系結晶膜の絶縁抵抗の増大および誘電損失の低減に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、通信機器、情報処理機器、AV、家電製品等の高性能化と小型化が進むのと並行して、それらの機器を構成する電子部品の小型化、軽量化が検討されており、薄膜化による性能向上が試みられている。
【0003】
しかしながら、従来のセラミックス研磨法による薄膜化では、所望の密度や組成は得られるものの、目的とする厚み(3〜20μm)に形成するためには歩留まりが悪く極度のコストアップとなるという課題があり、また、曲面状等の自由な形状に結晶膜を形成するには適していない。
【0004】
また、スパッタリング法やCVD法等の真空プロセス、ゾル−ゲル法などを用いて薄膜化することもできるが、これらの方法の場合、高温での製膜あるいは製膜後の熱処理が必要であり、組成の制御が難しく、基板の種類が限られ、さらに膜厚を厚くする場合の量産性に乏しい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記課題を解決する手段として、水熱法によるPZT系結晶膜が開発された。水熱法によるPZT系結晶膜は、大きさや形状の制限が少なく、膜形成時点で分極しており、さらにチタン表面に優先的に結晶成長することを利用したパターニングが可能等の特性を有しており、電子材料として幅広い応用分野を有している。
【0006】
しかし、従来公知の水熱法で得られる膜は、PZT系結晶が立方体状であり、粒界に欠陥が発生しやすく、絶縁抵抗および誘電損失等の特性の点で未だ十分でなく、その改善が種々検討されている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決し、さらに各種デバイスに応用可能な優れた特性を有するPZT系結晶膜を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、基板上に水熱合成法により形成したPb(ZrTi1−x)O(ただし、0≦x≦1)からなるPZT系結晶膜において、該PZT系結晶膜の欠陥部を、シリコーンオイル、疎水性基を有するシランカップリング剤、およびトリメチルシリル化剤の中から選ばれる疎水性物質で封止してなることを特徴とするPZT系結晶膜に関する。また、本発明は、基板上に水熱合成法により形成したPb(ZrTi1−x)O(ただし、0≦x≦1)からなるPZT系結晶膜において、該PZT系結晶膜に、シリコーンオイル、疎水性基を有するシランカップリング剤、およびトリメチルシリル化剤の中から選ばれる疎水性物質を塗布することで絶縁処理を施すことを特徴とするPZT系結晶膜の製造方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のPZT系結晶膜は以下のような方法により得られる。
まず、0.1mol/l〜8.0mol/lのアルカリ溶液中、鉛含有化合物が50mmol/l〜500mmol/l、ジルコニウム含有原料化合物が10mmol/l〜500mmol/l、チタン含有原料化合物が0mmol/l〜500mmol/lとなるように調整し、所望によりストロンチウムおよび/またはバリウム含有原料化合物が0.01mmol/l〜500mmol/lとなるように調整された混合溶液中に基板を設置固定し、80℃〜200℃、好ましくは120℃〜160℃で1分以上、好ましくは30分以上反応させ、基板上に初期結晶層を形成する第1工程、および、0.1mol/l〜8.0mol/lのアルカリ溶液中、鉛含有原料化合物が50mmol/l〜500mmol/l、ジルコニウム含有原料化合物が10mmol/l〜500mmol/l、チタン含原料有化合物が10mmol/l〜500mmol/l、およびニオブ含有原料化合物が0.01mmol/l〜10mmol/lの条件で80℃〜200℃、好ましくは10分以上反応させ、結晶成長層を形成する第2工程とからPZT系結晶膜が製造される。
【0010】
次に、水熱合成法により形成されたPZT系結晶膜に疎水性物質を塗布する第3工程からPZT系結晶膜の欠陥部を疎水性物質で封止してなるPZT系結晶膜が製造される。
【0011】
本発明によれば、初期結晶層形成時に鉛成分原料、ジルコニウム成分原料、微量のチタン成分原料化合物を存在させて第1工程の水熱処理を行った後、鉛成分原料、ジルコニウム成分原料、チタン成分原料およびニオブ成分原料化合物を存在させて第2工程の水熱処理を行い、次に、PZT系結晶膜に疎水性物質を塗布し、PZT系結晶膜の欠陥部を疎水性物質で封止することにより、絶縁抵抗、誘電損失に優れたPZT系結晶膜を製造することができる。
【0012】
本発明において、ストロンチウムおよび/またはバリウム成分原料化合物を存在させて第1工程を行うことによりPZT系結晶膜の結晶化を促進させることができるので好ましい。その場合の初期PZT結晶層の組成は、(Pb1-aa)(ZrxTi1-x)O3(ただし、式中、MはSrおよび/またはBaを示し、0<a<1、0<x<1である。)で表される。
【0013】
第2工程の成長反応時に、ニオブ成分原料化合物を含有させること無く水熱反応を行うと、生成するPZT結晶は立方体状になり、粒界に欠陥が形成されやすくなる。一方、第2工程の成長反応時に、鉛成分原料、ジルコニウム成分原料、チタン成分原料とともにニオブ成分原料化合物を存在させて水熱反応を行うと、生成するPZT系結晶は不定形となり、粒界部分の欠陥が減少するので好ましい。
【0014】
本発明で使用される疎水性物質としては、PZT系結晶膜の欠陥部を封止することできる物質である、シリコーンオイル、疎水性基を有するシランカップリング剤、トリメチルシリル化剤が挙げられる。また、PZT系結晶膜の最表面に過度に疎水性物質が存在した場合、静電容量の低下、電極との密着性の低下等のPZT系結晶膜としての特性が低下するため好ましく無い。本発明においては、疎水性物質がPZT系結晶膜の欠陥部を十分に封止できるとともに、疎水性物質がPZT系結晶膜表面に過度に存在しないよう塗布量を調整することが好ましい。
【0015】
本発明で使用される基板は特に限定されないが、結晶核形成時に基板と溶液中の金属イオンとの反応による初期結晶層と基板との密着力を大きくするためにPZT系結晶膜の構成元素を少なくとも一つ以上含有するような基板が好ましい。また、PZT系結晶膜を構成する元素でコーティングした基板を使用することもできる。
【0016】
本発明において水熱反応で利用される鉛、ジルコニウム、チタン、ストロンチウム、バリウム、およびニオブの構成元素を有する原料化合物としては塩化物、オキシ塩化物、硝酸塩、水酸化物、酸化物等が好ましい。
また、水熱反応において使用されるアルカリ化合物として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物を挙げることができる。
【0017】
本発明の製造方法の具体例を以下に詳述する。基板としてチタン基板あるいはチタンをコーティングしたものを用い、前記基板上に水熱合成法によりPZT系結晶膜を形成した後、PZT系結晶膜に疎水性物質を塗布することにより、電気特性の改善されたPZT系結晶膜を製造する。
まず、0.1mol/l〜8.0mol/lのKOH水溶液中、Pb(NO32が50mmol/l〜500mmol/l、ZrOCl2が10mmol/l〜500mmol/l、TiCl4が0mmol/l〜500mmol/l、Sr(NO32および/またはBa(OH)2が0.01mmol/l〜500mmol/lとなるように調整された混合溶液中に基板を設置固定し、80℃〜200℃、好ましくは120℃〜160℃で1分以上、好ましくは30分以上行い、基板上に初期PZT結晶層を形成する。このときの初期PZT結晶層の厚みは0.05μm〜2.0μmとなっている。
【0018】
次に、結晶を成長させるため、Pb(NO32が50mmol/l〜500mmol/l、ZrOCl2が10mmol/l〜500mmol/l、TiCl4が0.02mmol/l〜500mmol/l、NbOCl3が0.01mmol/l〜10mmol/lおよびKOHが0.1mol/l〜8.0mol/lの混合溶液中に、前記の初期PZT結晶層が形成された基板を任意の場所に設定固定し、80℃〜200℃、好ましくは120℃〜160℃で1分以上、好ましくは、30分以上水熱処理を行う。これより基板上にPZT系結晶膜が形成される。水熱処理における加熱方法は油浴や電気炉等による。その後、一般的な洗浄を行う。例えば、純水中で超音波洗浄を行い、100℃〜500℃で30分以上乾燥させる。洗浄には酢酸等の有機酸、硝酸、硫酸等の使用もできる。
【0019】
水熱合成法により形成されたPZT系結晶膜に絶縁処理を施すため、シリコーンオイル類またはトリメチルシリル化剤に浸せき、またはシランカップリング剤が0.1wt%〜50wt%アルコール溶液中に浸せきする。その後、過剰の疎水性物質を除去するために、アルコールまたは純水中で超音波洗浄を行い、100℃〜500℃で30分以上乾燥させる。
【0020】
本発明で得られるPZT系結晶膜を素子化する場合に使用される電極としては、特に限定されないが、コストや量産性を考慮し、最適なものが選定される。
例えば、無電解メッキ法によるニッケル、焼き付けタイプの銀等がある。その他、蒸着法によるアルミニウム、スパッタリング法による白金、チタン、ニッケル、金等も用いられる。
【0021】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
【0022】
実施例1
第1工程の反応原料投入量をPb(NO32水溶液190mmol/l、Sr(NO32水溶液10mmol/l、ZrOCl2水溶液50mmol/l、TiCl4水溶液50mmol/l、およびKOH水溶液2.2mol/lとし、該混合溶液中にチタン基板を設置固定して通常の撹拌操作の下、150℃で1時間の水熱処理を行った。この第1工程で生成した初期PZT結晶膜は組成が(Pb1-aSra)(ZrxTi1-x)O3(ただし、0<a<1、0<x<1である。)のペロブスカイト相からなる膜厚0.3μmの均一な結晶膜であった。
【0023】
このようにして得られた第1工程の初期PZT結晶相に結晶成長のために第2工程の反応原料投入量をPb(NO32水溶液330mmol/l、ZrOCl2水溶液150mmol/l、TiCl4水溶液150mmol/l、NbOCl3水溶液2mmol/l、およびKOH水溶液3.06mol/lとし、該混合溶液中に初期PZT結晶相を形成したチタン基板を設置固定して通常の撹拌操作の下、130℃で4時間の水熱処理を行い、膜厚が13μmのPb(ZrxTi1-x)O3(ただし、0<x<1である。)の膜とした。その後、純水中で超音波洗浄を3分間×2回行い、300℃で1時間乾燥を行った。得られたPZT系結晶膜をシリコーンオイルに浸せきし、12時間放置した後、純水中で超音波洗浄を1時間行い、225℃で1時間乾燥した。
【0024】
得られたPZT系結晶膜にスパッタリング法により、金電極を付与し、バイモルフ素子の構成で、分極処理を施すことなく電圧を印加したところ変位を示し、分極方向が揃っていることが電気的に確認された。この膜の比誘電率は約750で、誘電損失は約0.02、電極面積を11×13mmでPZT系結晶膜一層の絶縁抵抗は4.4×109Ω(厚さ13μmとすると4.8×1012Ω・cm)であった。
【0025】
実施例2
第1工程の反応原料投入量をPb(NO32水溶液190mmol/l、Sr(NO32水溶液10mmol/l、ZrOCl2水溶液50mmol/l、TiCl4水溶液50mmol/l、およびKOH水溶液2.2mol/lとし、該混合溶液中にチタン基板を設置固定して通常の撹拌操作の下、150℃で1時間の水熱処理を行った。この第1工程で生成した初期PZT結晶膜は組成が(Pb1-aSra)(ZrxTi1-x)O3(ただし、0<a<1、0<x<1である。)のペロブスカイト相からなる膜厚0.3μmの均一な結晶膜であった。
【0026】
このようにして得られた第1工程の初期PZT結晶相に結晶成長のために第2工程の反応原料投入量をPb(NO32水溶液330mmol/l、ZrOCl2水溶液150mmol/l、TiCl4水溶液150mmol/l、NbOCl3水溶液2mmol/l、およびKOH水溶液3.06mol/lとし、該混合溶液中に初期PZT結晶相を形成したチタン基板を設置固定して通常の撹拌操作の下、130℃で4時間の水熱処理を行い、膜厚が13μmのPb(ZrxTi1-x)O3(ただし、0<x<1である。)の膜とした。その後、純水中で超音波洗浄を3分間×2回行い、300℃で1時間乾燥を行った。得られたPZT系結晶膜を5wt%メチルトリエトキシシランエタノール溶液に浸せきし、15分間超音波を印加した後、225℃で1時間乾燥した。
【0027】
得られたPZT系結晶膜にスパッタリング法により、金電極を付与し、バイモルフ素子の構成で、分極処理を施すことなく電圧を印加したところ変位を示し、分極方向が揃っていることが電気的に確認された。この膜の比誘電率は約700で、誘電損失は約0.02、電極面積が11×13mmでPZT系結晶膜一層の絶縁抵抗は2.9×109Ω(厚みが13μmとすると3.2×1012Ω・cm)であった。
【0028】
比較例1
第1工程の反応原料投入量をPb(NO32水溶液190mmol/l、Sr(NO32水溶液10mmol/l、ZrOCl2水溶液50mmol/l、TiCl4水溶液50mmol/l、およびKOH水溶液2.2mol/lとし、該混合溶液中にチタン基板を設置固定して通常の撹拌操作の下、150℃で1時間の水熱処理を行った。この第1工程で生成した初期PZT結晶膜は組成が(Pb1-aSra)(ZrxTi1-x)O3(ただし、0<a<1、0<x<1である。)のペロブスカイト相からなる膜厚0.3μmの均一な結晶膜であった。
【0029】
このようにして得られた第1工程の初期PZT結晶相に結晶成長のために第2工程の反応原料投入量をPb(NO32水溶液330mmol/l、ZrOCl2水溶液150mmol/l、TiCl4水溶液150mmol/l、NbOCl3水溶液2mmol/l、およびKOH水溶液3.06mol/lとし、該混合溶液中に初期PZT結晶相を形成したチタン基板を設置固定して通常の撹拌操作の下、130℃で4時間の水熱処理を行い、膜厚が13μmのPb(ZrxTi1-x)O3(ただし、0<x<1である。)の膜とした。その後、純水中で超音波洗浄を3分間×2回行い、300℃で1時間乾燥を行った。
【0030】
得られたPZT系結晶膜にスパッタリング法により、金電極を付与し、バイモルフ素子の構成で、分極処理を施すことなく電圧を印加したところ変位を示し、分極方向が揃っていることが電気的に確認された。この膜の比誘電率は約900で、誘電損失は約0.05、電極面積を11×13mmでPZT系結晶膜一層の絶縁抵抗は3.0×108Ω(厚さ13μmとすると3.3×1011Ω・cm)であった。
【0031】
【発明の効果】
以上のように疎水性物質で絶縁処理を施した本発明によるPZT系結晶膜は、絶縁抵抗および誘電損失に優れ、コンデンサ、アクチュエーター等の電子部品に使用可能である。

Claims (2)

  1. 基板上に水熱合成法により形成したPb(ZrTi1−x)O(ただし、0≦x≦1)からなるPZT系結晶膜において、該PZT系結晶膜の欠陥部を、シリコーンオイル、疎水性基を有するシランカップリング剤、およびトリメチルシリル化剤の中から選ばれる疎水性物質で封止してなることを特徴とするPZT系結晶膜。
  2. 基板上に水熱合成法により形成したPb(ZrTi1−x)O(ただし、0≦x≦1)からなるPZT系結晶膜において、該PZT系結晶膜に、シリコーンオイル、疎水性基を有するシランカップリング剤、およびトリメチルシリル化剤の中から選ばれる疎水性物質を塗布することで絶縁処理を施すことを特徴とするPZT系結晶膜の製造方法。
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