JP4252804B2 - 動力伝達装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンベアや生ごみ処理機等に適用される動力伝達装置に関し、特に、装置の小型化、省スペース化を実現しながら、同時に、伝達容量の増大、騒音や振動の低減等について被駆動装置から受ける負荷に応じた適切な制御が可能な動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、入力される動力を相手機械に伝達可能な動力伝達装置が多く知られており、これら動力伝達装置は、コンベアや生ごみ処理機の駆動等の用途に幅広く適用されている。
【0003】
このような動力伝達装置の一つとして、例えば特許文献1に示すような内接噛合遊星歯車減速機が提案されている。この従来公知の内接噛合遊星歯車減速機は、内歯歯車と外歯歯車との歯数差を複数としたトロコイド系歯形歯車を採用することにより、装置の伝達容量の向上を実現したものである。
【0004】
ところで、このような動力伝達装置がコンベアの駆動用途に適用された場合を例にとると、動力伝達装置は、特にコンベアの起動時や大きな搬送物を搬送する際に大きな反作用トルクをうけるため、コンベアの駆動には大きな伝達容量が必要とされるが、このようなコンベアの起動時や加速時等の中・重負荷時における騒音や振動は一般にはあまり問題とはならない。一方、コンベアが一度起動され、定常運転状態になった場合には、コンベア起動時等の半分にも満たない小さな伝達容量があればコンベアを駆動可能であるが、このような無・軽負荷時においては騒音や振動の低減が要求される。
【0005】
【特許文献1】
特許第1208548号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の動力伝達装置は、内歯歯車と外歯歯車の歯数差を1に設定した場合には、外歯歯車の歯形は連続したトロコイド歯形となり、全周において内歯歯車と外歯歯車を接触させることができ、騒音や振動を低減することが可能となるが、内歯歯車と外歯歯車の有効噛合本数が少ないため、伝達容量が小さくなり、特に中・重負荷時に必要十分な伝達容量を得るのが難しいといった問題があった。
【0007】
一方、内歯歯車と外歯歯車の歯数差を複数(2以上)に設定した場合には、内歯歯車と外歯歯車の有効噛合本数が増えるため、伝達容量の増大が実現可能となるものの、外歯歯車の歯形が連続したトロコイド曲線で無くなり、全周において内歯歯車と外歯歯車を接触させておくことができず、その結果、低騒音化や低振動化の為の高精度の加工が必要となる問題があった。
【0008】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであって、装置の小型化、省スペース化を実現しながら、同時に、伝達容量の増大、騒音や振動の低減等について被駆動装置から受ける負荷に応じた適切な制御が可能な動力伝達装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、入力される動力を相手機械に伝達可能な動力伝達装置において、該動力伝達装置の動力伝達機構を、僅少の歯数差を有する第1外歯歯車及び第1内歯歯車を備え、該第1外歯歯車を、前記第1内歯歯車の内側で偏心内接噛合回転自在に組み込んだ第1内接噛合遊星歯車機構と、同じ入力軸と出力軸との間に該第1内接噛合遊星歯車機構と動力伝達経路上で並列に配置され、且つ僅少の歯数差を有する第2外歯歯車及び第2内歯歯車を備え、該第2外歯歯車を、前記第2内歯歯車の内側で偏心内接噛合回転自在に組み込んだ第2内接噛合遊星歯車機構とで構成すると共に、前記第1外歯歯車と前記第1内歯歯車の歯数差と、前記第2外歯歯車と前記第2内歯歯車の歯数差に差異を持たせることによって、前記第1、2内接噛合遊星歯車機構の動力伝達特性を相異ならせたことにより、上記課題を解決したものである。
【0010】
本発明によれば、動力伝達装置に入力される動力を、歯数差に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた第1、2内接噛合遊星歯車機構を介して相手機械に伝達することが可能となり、組み合わせる内接噛合遊星歯車機構の各々の特性によって、動力伝達装置全体の特性を変えることができる。
【0011】
従って、例えば、前記第1外歯歯車と前記第1内歯歯車の歯数差、及び前記第2外歯歯車と前記第2内歯歯車の歯数差の一方を1枚差にすると共に、他方を2枚差以上にすれば、剛性が低いが騒音や振動の低減が可能な第1内接噛合遊星歯車機構と、回転効率が高く、剛性が高い(伝達容量が大きい)第2内接噛合遊星歯車機構を介して動力伝達することが可能となる。その結果、無・軽負荷時には主として第1内接噛合遊星歯車機構によって、低騒音・低振動での動力伝達が可能となると共に、中・重負荷時には主として第2内接噛合遊星歯車機構によって、伝達容量の増大が可能となり、伝達容量の増大、騒音や振動の低減等について被駆動装置から受ける負荷に応じた適切な制御が可能となる。
【0012】
なお、前記第1、2内接噛合遊星歯車機構の動力伝達特性の差異の具現化については他の手段を用いても良く、例えば、前記第1外歯歯車と第2外歯歯車の歯数に差異を持たせかつ第1内歯歯車と第2内歯歯車の歯数に差異を持たせることによって、前記第1、2内接噛合遊星歯車機構の動力伝達特性を相異ならせてもよい。この場合には、各々の外歯歯車と内歯歯車との噛合い本数の違いによって、第1、2内接噛合遊星歯車機構の剛性(伝達容量)等に差異を持たせることが可能となり、上記と同様の効果を得ることができる。
【0013】
同様に、前記第1、第2外歯歯車の前記入力軸に対する偏心量に差異を持たせることによって、前記第1、2内接噛合遊星歯車機構の動力伝達特性を相異ならせることも可能である。
【0014】
更に、前記第1及び第2外歯歯車にそれぞれ形成された内ピン孔に遊嵌され、且つ、自身の一端が前記出力軸又は該出力軸と一体化された部材によって片持ち支持された内ピンを介して、前記第1及び第2外歯歯車の自転成分を該出力軸に伝達可能な構成とすることにより、前記出力軸側に配置された方の外歯歯車の剛性を高くするか、又、前記第1内接噛合遊星歯車機構の全部又は一部の材質と、前記第2内接噛合遊星歯車機構の全部又は一部の材質にそれぞれ差異を持たせることによって、前記第1、第2内接噛合遊星歯車機構の動力伝達特性を相異ならせてもよい。
【0015】
なお、前記入力軸及び前記出力軸に対する前記第1内接噛合遊星歯車機構のバックラッシ量及び前記第2内接噛合遊星歯車機構のバックラッシ量にそれぞれ差異を持たせることによって、前記第1、第2内接噛合遊星歯車機構の動力伝達特性を相異ならせてもよく、例えば、第1、第2内接噛合遊星歯車機構のうち、剛性の低い方のバックラッシ量を剛性の高い方のバックラッシ量よりも小さくしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態の例に係る動力伝達装置300の側断面図である。
【0018】
動力伝達装置300は、入力軸302と出力軸306と、第1内接噛合遊星歯車機構100と、第2内接噛合遊星歯車機構200と、を備えている。該動力伝達装置300は、入力軸302から入力される動力を、前記第1、第2内接噛合遊星歯車機構100、200及び出力軸306を介して図示せぬ相手機械に伝達が可能である。
【0019】
前記入力軸302は、軸受330、332によって回転自在に両持ち支持されており、軸心L1を中心に回転可能である。
【0020】
前記出力軸306は、軸受334、336によって回転自在に支持されており、前記入力軸302と同じ軸心L1を中心に回転可能である。
【0021】
又、これら入力軸302及び出力軸306の間には、動力伝達特性を相異ならせた第1内接噛合遊星歯車機構100と第2内接噛合遊星歯車機構200が動力伝達経路上、並列に配置されている。なお、「動力伝達経路上で並列に配置」とは、共通の部材である入力軸302及び出力軸306の間に、動力の伝達され得る経路が2つ(第1、第2内接噛合遊星歯車機構100、200)配置されていることを意味する。ちなみに、「動力伝達経路上で直列に備える」とは、ある系路を経た後に他の経路を通ることをいう。
【0022】
図2、図3は、それぞれ第1内接噛合遊星歯車機構100及び第2内接噛合遊星歯車機構200を示した図であり、図2は図1中におけるII−II線に沿う断面図、図3は図1中におけるIII−III線に沿う断面図である。
【0023】
図1、図2に示すように、第1内接噛合遊星歯車機構100は、僅少の歯数差を有する第1外歯歯車102及び第1内歯歯車104と、偏心体106と、ころ軸受110とを備えている。
【0024】
該偏心体106は、入力軸302の軸心L1に対してe1だけ偏心した外周を有している。又、偏心体106は、前記入力軸302の軸受330、332間の外周に、後述する第2内接噛合遊星歯車機構200の偏心体206と所定位相差(この例では180°)をもって設けられている。
【0025】
前記第1内歯歯車104は、ケーシング312の内周側に複数形成された円筒状の外ピン104aに外ローラ104bが挿嵌した構造で、これら外ローラ104bが内歯を形成している。なお、この例では、外ローラ104b(内歯)は12歯設けられている。
【0026】
前記第1外歯歯車102は、外周に滑らかなトロコイド歯形の外歯を有しており、前記第1内歯歯車104の内側に偏心内接噛合回転自在に組み込まれている。なお、この例では、第1外歯歯車102の外歯は11歯設けられており、第1内歯歯車104と第1外歯歯車102の歯数差は1枚差(=12(内歯)−11(外歯))に設定されている。
【0027】
又、該第1外歯歯車102は、該第1外歯歯車102と偏心体106の間に設けられたころ軸受110を介して偏心体106に嵌合され、該偏心体106の回転に伴って揺動回転可能である。更に、第1外歯歯車102には内ローラ孔102aが複数個設けられ、内ピン308及び内ローラ310が、各ローラ孔102aを貫通している。なお、図1に示すように該内ピン308の一端308aは、前記出力軸306によって片持ち支持されている。
【0028】
一方、図1、図3に示すように、第2内接噛合遊星歯車機構200は、僅少の歯数差を有する第2外歯歯車202及び第2内歯歯車204と、偏心体206と、ころ軸受210とを備えている。
【0029】
該偏心体206は、入力軸302の軸心L1に対してe2だけ偏心した外周を有している。又、偏心体206は、前記入力軸302の軸受330、332間の外周に前記第1内接噛合遊星歯車機構100の偏心体106と所定位相差をもって設けられている。
【0030】
前記第2内歯歯車204は、ケーシング312の内周側に複数形成された外ピン204aに外ローラ204bが挿嵌した構造で、これら外ローラ204bが内歯を形成している。なお、この例では、外ローラ204b(内歯)は24歯設けられている。
【0031】
前記第2外歯歯車202は、外周にトロコイド歯形の外歯を有しており、前記第2内歯歯車204の円筒状の外ローラ204bの内側に偏心内接噛合回転自在に組み込まれている。なお、この例では、第1外歯歯車202の外歯は22歯設けられており、第2内歯歯車204と第2外歯歯車202の歯数差は2枚差(=24(内歯)−22(外歯))に設定されている。
【0032】
又、該第2外歯歯車202は、該第2外歯歯車202と偏心体206の間に設けられたころ軸受210を介して偏心体206に嵌合され、該偏心体206の回転に伴って揺動回転可能である。更に、第2外歯歯車202には内ローラ孔202aが複数個設けられ、内ピン308及び内ローラ310が、各ローラ孔202aを貫通している。
【0033】
図1に示すように、内ピン308及び内ローラ310は、第1外歯歯車102の各ローラ孔102a及び第2外歯歯車202の各ローラ孔202aをそれぞれ貫通しており、第1外歯歯車102及び第2外歯歯車202の自転成分を該内ピン308を介して前記出力軸306に伝達可能である。なお、第2外歯歯車202は第1外歯歯車102よりも出力軸306側、即ち、該出力軸306に片持ち支持された内ピン308の一端308aに近い位置に配置されている。
【0034】
又、第1内接噛合遊星歯車機構100における偏心体106ところ軸受110との隙間S11、ころ軸受110と第1外歯歯車102との隙間S12、内ピン308と内ローラ310との隙間S13、内ローラ310と第1外歯歯車102との隙間S14、第1外歯歯車102と第1内歯歯車104との隙間S15は、第2内接噛合遊星歯車機構200における偏心体206ところ軸受210との隙間S21、ころ軸受210と第2外歯歯車202との隙間S22、内ピン308と内ローラ310との隙間S23、内ローラ310と第2外歯歯車202との隙間S24、第2外歯歯車202と第2内歯歯車204との隙間S25よりもそれぞれ小さく設計されている(S11<S21,S12<S22,S13<S23,S14<S24,S15<S25)。なお、必ずしも全ての隙間の大小関係はこうである必要がなく和がそうなっていれば良い。
【0035】
即ち、入力軸302及び出力軸306に対する第1内接噛合遊星歯車機構100のバックラッシ量は、第2内接噛合遊星歯車機構200のバックラッシ量よりも小さくなっている。
【0036】
次に、動力伝達装置300の作用について説明する。
【0037】
入力軸302が軸心L1を中心に回転すると、該入力軸302の外周に設けられた偏心体106、206がそれぞれ回転する。該偏心体106、206の回転により、第1、第2外歯歯車102、202も入力軸302の周りで揺動回転を行なおうとするが、第1、第2内歯歯車104、204によってその自転が拘束されているため、第1、第2外歯歯車102、202は、第1、第2内歯歯車104、204に内接しながらほとんど揺動のみを行なうことになる。
【0038】
この第1、第2外歯歯車の回転は、内ローラ孔102a、202a及び内ピン308の隙間によってその揺動成分が吸収され、自転成分のみが出力軸306を介して相手機械へと伝達される。
【0039】
本発明の実施形態の例における動力伝達装置300では、第1内接噛合遊星歯車機構100の第1内歯歯車104と第1外歯歯車102の歯数差を1枚差に設定する一方で、第2内接噛合遊星歯車機構200の第2内歯歯車204と第2外歯歯車202の歯数差を2枚差に設定することで、双方の内歯歯車と外歯歯車との歯数差に差異を持たせ、第1内接噛合遊星歯車機構100と第2内接噛合遊星歯車機構200の動力伝達特性に差異を設けている。
【0040】
又、第1内接噛合遊星歯車機構100の第1内歯歯車104の歯数を12歯、第1外歯歯車102の歯数を11歯に設定する一方で、第2内接噛合遊星歯車機構200の第2内歯歯車204の歯数を24歯、第2外歯歯車202の歯数を22歯に設定することで、双方の内歯歯車及び外歯歯車の歯数に差異を持たせ、第1内接噛合遊星歯車機構100と第2内接噛合遊星歯車機構200の動力伝達特性に差異を設けている。
【0041】
更に、第1内接噛合遊星歯車機構100の第1外歯歯車102の入力軸302に対する偏心量をe1とする一方で、第2内接噛合遊星歯車機構200の第2外歯歯車202の入力軸302に対する偏心量をe2とし、双方の外歯歯車の入力軸302に対する偏心量に差異を持たせ、第1内接噛合遊星歯車機構100と第2内接噛合遊星歯車機構200の動力伝達特性に差異を設けている。
【0042】
即ち、第1内接噛合遊星歯車機構100は、第1内歯歯車104と第1外歯歯車102の歯数差を1枚差に設定しているため、第1外歯歯車102の歯形は連続したトロコイド歯形となり、全周において第1内歯歯車104と第1外歯歯車102を接触させることができる。又、第1外歯歯車102の偏心量e1を、第2外歯歯車202の偏心量e2よりも小さく設定しているため、第1外歯歯車102の歯形はなだらかな曲線となり、第1内歯歯車104と第1外歯歯車102との噛合いを極めて安定的なものとすることができる。
【0043】
従って、第1内接噛合遊星歯車機構100は、歯車の接触時間の増大等により、駆動時の騒音や振動を大幅に低減することが可能である。
【0044】
又、第1内歯歯車104及び第1外歯歯車102の歯数を少なくしているため、第1内歯歯車104と第1外歯歯車102との噛合い本数が少なく、又、噛合いのピッチ円径が小さいことから、全体的に伝達トルクに対する各部材の変形量が大きい(剛性が低い)。
【0045】
一方、第2内接噛合遊星歯車機構200は、第2内歯歯車204と第2外歯歯車202の歯数差を2枚差に設定しているため、第2内歯歯車204と第2外歯歯車202との有効噛合本数が増える。従って、第1内接噛合遊星歯車機構100に比べ、伝達容量の増大が実現可能となると共に、全体的に伝達トルクに対する各部材の変形量が小さくなる(剛性が高くなる)。
【0046】
なお、第2内接噛合遊星歯車機構200の第2外歯歯車202は、第1外歯歯車102よりも出力軸306側、即ち、該出力軸306に片持ち支持された内ピン308の一端308aに近い位置に配置されているため、この点においても第2内接噛合遊星歯車機構200は第1内接噛合遊星歯車機構100よりも剛性が高くなっている。
【0047】
又、動力伝達装置300では、第1内接噛合遊星歯車機構100における偏心体106ところ軸受110との隙間S11、ころ軸受110と第1外歯歯車102との隙間S12、内ピン308と内ローラ310との隙間S13、内ローラ310と第1外歯歯車102との隙間S14、第1外歯歯車102と第1内歯歯車104との隙間S15は、第2内接噛合遊星歯車機構200における偏心体206ところ軸受210との隙間S21、ころ軸受210と第2外歯歯車202との隙間S22、内ピン308と内ローラ310との隙間S23、内ローラ310と第2外歯歯車202との隙間S24、第2外歯歯車202と第2内歯歯車204との隙間S25よりもそれぞれ小さく設計することにより、第1内接噛合遊星歯車機構100と第2内接噛合遊星歯車機構200のバックラッシ量に差異を設けている。
【0048】
このように、第1、第2内接噛合遊星歯車機構100、200のバックラッシ量に差異を設けているため、第1内接噛合遊星歯車機構100は、該入力軸302の動き(トルクの変動)に対しても、又、出力軸306の動き(トルクの変動)に対する反応が早いという特性を有するのに対して、第2内接噛合遊星歯車機構200は、当該バックラッシ量が大きく、入力軸302及び出力軸306の双方の動き(トルクの変動)に対して反応が遅いという特性を有する。
【0049】
従って、動力伝達装置300は、剛性が低いが騒音や振動が少なく、バックラッシ量の小さい第1内接噛合遊星歯車機構100と、回転効率及び剛性が高く(伝達容量が大きく)、バックラッシ量の大きい第2内接噛合遊星歯車機構200とを動力伝達経路上に並列に備えていることになる。その結果、動力伝達装置300の起動直後には、入力軸302に対するバックラッシ量の小さい第1内接噛合遊星歯車機構100が早く反応して動力の伝達を行う。その後、作用するトルクが大きくなり、動力の伝達に必要なトルクが出ない場合には、変形して第2内接噛合遊星歯車機構200も働き始める。
【0050】
即ち、作用するトルクが大きい、加速時等の中・重負荷時においては、第2内接噛合遊星歯車機構200も動力伝達を行うことになる結果、伝達容量の増大が可能である。しかも、第2内接噛合遊星歯車機構200は、第1内接噛合遊星歯車機構100に比べ回転効率が高いため、動力伝達装置300全体の回転効率の向上を図ることができる。
【0051】
一方、作用するトルクが小さい無・軽負荷時においては、第1内接噛合遊星歯車機構100が主として動力伝達を行うか、もしくは第2内接噛合遊星歯車機構200は働かないため、低騒音、低振動での動力伝達が可能である。
【0052】
上記実施形態の例においては、第2内接噛合遊星歯車機構200の第2内歯歯車204と第2外歯歯車202の歯数差を2に設定したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
従って、例えば、図4〜6に示すような、第1内歯歯車154と第1外歯歯車152の歯数差が1枚差(=12(内歯)−11(外歯))に設定された第1内接噛合遊星歯車機構150と、第2内歯歯車254と第2外歯歯車252の歯数差が3枚差(=36(内歯)−33(外歯))に設定された第2内接噛合遊星歯車機構250とを、動力伝達系路上並列に備えた動力伝達装置350としてもよい。
【0054】
すなわち、2つの内接噛合遊星歯車機構の歯数差の具現化方法については、上記実施形態の例に示したものに限定されず、一方の内接噛合遊星歯車機構の歯数差を1枚差にすると共に、他方の内接噛合遊星歯車機構の歯数差を2枚差以上としてもよく、一方を2枚差、他方を3枚差としてもよい。なお、2つの内接噛合遊星歯車機構のうち、剛性の低い方の歯数差を小さく設定することが好ましい。
【0055】
なお、図4は、上記図1に対応する、本発明の実施形態の第2例に係る動力伝達装置350の側断面図、図5及び図6は、それぞれ上記図2及び図3に対応する、V−V線に沿う断面図、及びVI−VI線に沿う断面図である。
【0056】
又、前記動力伝達装置300にモータ400を連結・一体化し、図7に示すようなギヤドモータ500とすれば、装置の小型化、省スペース化を実現しながら、同時に、伝達容量の増大、騒音や振動の低減等について被駆動装置から受ける負荷に応じた適切な制御が可能なギヤドモータ500が提供可能となる。
【0057】
本発明に係る動力伝達装置の減速機構は、僅少の歯数差を有する第1外歯歯車及び第1内歯歯車を備え、該第1外歯歯車を、前記第1内歯歯車の内側で偏心内接噛合回転自在に組み込んだ第1内接噛合遊星歯車機構と、同じ入力軸と出力軸との間に該第1内接噛合遊星歯車機構と動力伝達経路上で並列に配置され、且つ僅少の歯数差を有する第2外歯歯車及び第2内歯歯車を備え、該第2外歯歯車を、前記第2内歯歯車の内側で偏心内接噛合回転自在に組み込んだ第2内接噛合遊星歯車機構とで構成されているものであればよく、上記実施形態における内接噛合遊星歯車機構に限定されるものではない。従って、例えば、動力伝達装置の減速機構として、歯車等で入力軸(中心軸)と平行する軸に入力回転が振り分けられるようにし、その軸に偏心体を設けることによって、外歯歯車が中心軸に対して偏心回転するようにした、いわゆる振り分けタイプの内接噛合遊星歯車機構等を適用してもよい。
【0058】
なお、上記実施形態の例においては、外歯歯車と内歯歯車との歯数差等によって第1、第2内接噛合遊星歯車機構100、200の動力伝達特性の差異を具現化したが、第1内接噛合遊星歯車機構100の全部又は一部の材質と、第2内接噛合遊星歯車機構200の全部又は一部の材質とにそれぞれ差異を持たせ、一方のヤング率を他方のヤング率より小さくする(剛性を小さくする)ことにより前記第1、第2内接噛合遊星歯車機構100、200の動力伝達特性を相異ならせた動力伝達装置としても良い。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、装置の小型化、省スペース化を実現しながら、同時に、伝達容量の増大、騒音や振動の低減等について被駆動装置から受ける負荷に応じた適切な制御が可能な動力伝達装置が提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の例に係る動力伝達装置の側断面図
【図2】図1におけるII−II線に沿う断面図
【図3】図1におけるIII−III線に沿う断面図
【図4】本発明の実施形態の第2例に係る動力伝達装置の側断面図
【図5】図4におけるV−V線に沿う断面図
【図6】図4におけるVI−VI線に沿う断面図
【図7】本発明の実施形態の例に係る動力伝達装置を適用したギヤドモータの側断面図
【符号の説明】
100、150…第1内接噛合遊星歯車機構
102、152…第1外歯歯車
102a、202a…内ローラ孔
104、154…第1内歯歯車
104a、204a…外ピン
104b、204b…外ローラ
106、206…偏心体
110、210…ころ軸受
200、250…第2内接噛合遊星歯車機構
202、252…第2外歯歯車
204、254…第2内歯歯車
300…動力伝達装置
302…入力軸
306…出力軸
308…内ピン
310…内ローラ
312…ケーシング
400…モータ
500…ギヤドモータ
Claims (7)
- 入力される動力を相手機械に伝達可能な動力伝達装置において、
該動力伝達装置の動力伝達機構を、僅少の歯数差を有する第1外歯歯車及び第1内歯歯車を備え、該第1外歯歯車を、前記第1内歯歯車の内側で偏心内接噛合回転自在に組み込んだ第1内接噛合遊星歯車機構と、同じ入力軸と出力軸との間に該第1内接噛合遊星歯車機構と動力伝達経路上で並列に配置され、且つ僅少の歯数差を有する第2外歯歯車及び第2内歯歯車を備え、該第2外歯歯車を、前記第2内歯歯車の内側で偏心内接噛合回転自在に組み込んだ第2内接噛合遊星歯車機構とで構成すると共に、
前記第1外歯歯車と前記第1内歯歯車の歯数差と、前記第2外歯歯車と前記第2内歯歯車の歯数差に差異を持たせることによって、前記第1、2内接噛合遊星歯車機構の動力伝達特性を相異ならせた
ことを特徴とする動力伝達装置。 - 請求項1において、
前記第1外歯歯車と前記第1内歯歯車の歯数差、及び前記第2外歯歯車と前記第2内歯歯車の歯数差の一方を1枚差にすると共に、他方を2枚差以上にした
ことを特徴とする動力伝達装置。 - 入力される動力を相手機械に伝達可能な動力伝達装置において、
該動力伝達装置の動力伝達機構を、僅少の歯数差を有する第1外歯歯車及び第1内歯歯車を備え、該第1外歯歯車を、前記第1内歯歯車の内側で偏心内接噛合回転自在に組み込んだ第1内接噛合遊星歯車機構と、同じ入力軸と出力軸との間に該第1内接噛合遊星歯車機構と動力伝達経路上で並列に配置され、且つ僅少の歯数差を有する第2外歯歯車及び第2内歯歯車を備え、該第2外歯歯車を、前記第2内歯歯車の内側で偏心内接噛合回転自在に組み込んだ第2内接噛合遊星歯車機構とで構成すると共に、
前記第1外歯歯車と第2外歯歯車の歯数に差異を持たせかつ第1内歯歯車と第2内歯歯車の歯数に差異を持たせることによって、前記第1、2内接噛合遊星歯車機構の動力伝達特性を相異ならせた
ことを特徴とする動力伝達装置。 - 入力される動力を相手機械に伝達可能な動力伝達装置において、
該動力伝達装置の動力伝達機構を、僅少の歯数差を有する第1外歯歯車及び第1内歯歯車を備え、該第1外歯歯車を、前記第1内歯歯車の内側で偏心内接噛合回転自在に組み込んだ第1内接噛合遊星歯車機構と、同じ入力軸と出力軸との間に該第1内接噛合遊星歯車機構と動力伝達経路上で並列に配置され、且つ僅少の歯数差を有する第2外歯歯車及び第2内歯歯車を備え、該第2外歯歯車を、前記第2内歯歯車の内側で偏心内接噛合回転自在に組み込んだ第2内接噛合遊星歯車機構とで構成すると共に、
前記第1、第2外歯歯車の前記入力軸に対する偏心量に差異を持たせることによって、前記第1、第2内接噛合遊星歯車機構の動力伝達特性を相異ならせた
ことを特徴とする動力伝達装置。 - 請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第1及び第2外歯歯車にそれぞれ形成された内ピン孔に遊嵌され、且つ、自身の一端が前記出力軸又は該出力軸と一体化された部材によって片持ち支持された内ピンを介して、前記第1及び第2外歯歯車の自転成分を該出力軸に伝達可能な構成とすることにより、前記出力軸側に配置された方の外歯歯車の剛性を高くし、前記第1、第2内接噛合遊星歯車機構の動力伝達特性を相異ならせた
ことを特徴とする動力伝達装置。 - 請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記第1内接噛合遊星歯車機構の全部又は一部の材質と、前記第2内接噛合遊星歯車機構の全部又は一部の材質にそれぞれ差異を持たせることによって、該第1、第2内接噛合遊星歯車機構の動力伝達特性を相異ならせた
ことを特徴とする動力伝達装置。 - 請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記第1、第2内接噛合遊星歯車機構のうち、剛性の低い方のバックラッシ量を剛性の高い方のバックラッシ量よりも小さくした
ことを特徴とする動力伝達装置。
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