JP4252334B2 - 電解質膜および該電解質膜を用いた燃料電池 - Google Patents
電解質膜および該電解質膜を用いた燃料電池 Download PDFInfo
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、フラーレンを担持してなる多孔質粒子とマトリックスとからなる電解質膜および該電解質膜を具備してなる燃料電池に関する。
さらに詳しくは、プロトン伝導性に優れるとともに低水分または水分がなくても運転可能で、水素、メタノール等の燃料のクロスオーバー(透過)の抑制された燃料電池の製造に好適に用いることのできる電解質膜および該電解質膜を具備してなる燃料電池に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
近年、クリーンな水素をエネルギー源とする高効率、無公害でCO2等温暖化ガスを発生しない発電システムとして燃料電池が注目されている。このような燃料電池は、家庭や事業所など固定設備、自動車などの移動設備などでの使用を目的に本格的な開発研究が行われている。
【0003】
燃料電池は使用する電解質によって分類され、アルカリ電解質型、固体高分子電解質型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型に分けられる。このとき固体高分子電解質型およびリン酸型は電荷移動体がプロトンであり、プロトン型燃料電池ともいわれる。
この燃料電池に用いる燃料としては、天然ガス、LPガス、都市ガス、アルコール、ガソリン、灯油、軽油などの炭化水素系燃料が挙げられる。
【0004】
このような炭化水素系燃料を、まず改質器を通すことで、水蒸気改質、部分酸化などの反応により水素ガス、COガスに変換し、COガスを除去して水素ガスを得る。この水素は、アノードに供給され、アノードの金属触媒によってプロトン(水素イオン)と電子に解離し、電子は回路を通じて仕事をしながらカソードに流れ、プロトン(水素イオン)は電解質膜を拡散してカソードに流れ、カソードにてこの電子、水素イオンとカソードに供給される酸素とから水となって電解質膜に拡散する。すなわち、酸素と燃料ガスに由来する水素とを供給して水を生成する過程で電流を取り出すメカニズムになっている。
【0005】
また、最近では、改質を行わずにメタノールやガソリンから水素を取り出すことなく、直接発電すると言うことも試みられている。すなわち、メタノール分子から水素を分離し、水素イオンと電子にして発電するものであり、メタノールから水素が全部離れると最後は炭素と酸素が残り、一酸化炭素の状態となり、これと水を反応させ、水素イオンおよび電子と、二酸化炭素に変換させる。
【0006】
このような燃料電池に用いられる電解質膜としてはスルホン酸基を有するポリスチレン系の陽イオン交換膜、フルオロカーボンスルホン酸とポリビニリデンフルオライドとの混合膜、フルオロカーボンマトリックスにトリフルオロエチレンをグラフト化した膜、パーフルオロカーボンスルホン酸膜等が用いられている。
このような有機樹脂膜からなる電解質膜中のプロトンの移動、すなわち膜のイオン伝導度は膜の含水率に依存し、長期運転した場合、あるいは概ね80℃以上の高温になって含水率が低下するとイオン伝導度が低下する問題があった。すなわち、80℃以上の高温になると電圧の低下をきたすなどの問題があった。
【0007】
このため、特開平6−103983号公報には、高分子膜に良好な保水性能を発揮させるために、高分子膜にリン酸基を持つ化合物を含有させ、80℃あるいはそれ以上の高温で好適に使用可能な固体高分子電解質型燃料電池が開示されている。
また、特開2001−143723号公報には、80℃以上で使用可能な5酸化リンを含む非晶質シリカ成形体からなる燃料電池用電解質が開示されている。しかしながら、100℃以上の高温で長期に使用すると、高温のため膜の含水率が低下したり、樹脂成分を用いた電解質膜では樹脂成分の劣化によりプロトン伝導性が低下し、このため電圧が降下し、電池の性能が低下する問題があった。
【0008】
さらに、比較的高温での使用に耐える固体高分子電解質膜としてプロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物マトリックスとケイタングステン酸26水和物等のプロトン供与体とからなる無機または無機有機複合の固体高分子電解質膜が知られている。
しかしながら、この固体高分子電解質膜は膜の形成性、膜の強度、膜の伝導度等が不充分であったり、燃料の不透過性(クロスオーバー耐性と言うことがある)が不充分であったり、さらに電圧が低下し電流密度が大きく低下する等の問題があった。
【0009】
本願発明者等は鋭意検討した結果、電解質膜にフラーレンを担持してなる無機酸化物粒子を配合することにより、プロトン伝導性に優れるとともに低水分または水分がなくても(さらに別途用いるプロトン供与体が少なくてもあるいは無くても)運転可能であることを見出して本願発明を完成するに至った。
【0010】
【発明の目的】
本発明は、フラーレンを担持してなる多孔質粒子とマトリックスとからなることを特徴とする電解質膜および該電解質膜を具備してなる燃料電池を提供することを目的としている。
【0011】
【発明の概要】
本発明に係る電解質膜は、
フラーレンを担持してなる多孔質粒子とマトリックスとからなり、
前記多孔質粒子が、ZrO2、SiO2、TiO2、Al2O3、SiO2・Al2O3、Sb2O5からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物粒子、ゼオライト粉末、活性炭、繊維状酸化チタン、繊維状カーボン、繊維状シリカ、管状酸化チタン、カーボンナノチューブ、シリカナノチューブから選ばれる1種以上の多孔質粒子である。
【0012】
前記マトリックスが、無機酸化物マトリックス、有機樹脂マトリックス、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物からなるマトリックスであり、
多孔質粒子中のフラーレンの担持量が0.01〜20質量%の範囲にあり、
前記フラーレンを担持してなる多孔質粒子の電解質膜中の含有量が5〜95質量%の範囲にある。
【0013】
本発明に係る燃料電池は、前記電解質膜を具備してなることを特徴としている。
【0014】
【発明の具体的説明】
以下、まず、本発明に係る電解質膜について説明する。
[電解質膜]
本発明に係る電解質膜は、フラーレンを担持してなる多孔質粒子とマトリックスとからなることを特徴としている。
【0015】
多孔質粒子
本発明に用いるフラーレンとしては、後述の多孔質粒子に担持することができれば特に制限はなく、たとえばC36、C60、C70、C76、C78、C80、C82、C84等が挙げられる。かかるフラーレンは、公知のものを特に制限無く使用することが可能である(たとえば特開2002-151094号公報参照)。
【0016】
このようなフラーレンを担持していると水分が少なくも(場合によっては水分が存在しなくとも)、プロトン伝導性を有し、またプロトン供与体がなくてもプロトン供与することができる。
このようなフラーレンはさらに、フラーレンを構成する炭素原子にプロトン供与性の基が導入されたものが好ましい。プロトン供与性の基としては、たとえば−OH、−COOH、−OSO3H、−SO3H、−OPO(OH)2などが挙げられる。
【0017】
多孔質粒子としては、表面に細孔を有する多孔質粒子、管状粒子、さらには繊維状粒子も使用可能である。なお多孔質粒子とは幾何学的形状から計算される表面積よりガス吸着から求められる比表面積が大きいものをいい、通常ガス吸着から求められる平均粒径が幾何学的平均粒径の1.2倍以上のものが望ましい。
このような多孔質粒子の比表面積としては、100m2/g以上、さらには150m2/g以上のものが好ましく、また、比表面積の上限としては、1000m2/g以下であることが好ましい。
【0018】
フラーレンは、粒子表面、細孔、チューブ内壁内に担持されている。担持されたフラーレンはプロトンを供与し、プロトンは、細孔内、粒子表面、内壁内に担持されたフラーレンを介して伝導する。さらにフラーレンは、プロトン供与および伝導に水分子の介在を必要としないので、高温下で、高いプロトン伝導性を有している。
【0019】
このような多孔質粒子としては、ZrO2、SiO2、TiO2、Al2O3、SiO2・Al2O3、Sb2O5からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物粒子、ゼオライト粉末、活性炭、繊維状酸化チタン、繊維状カーボン、繊維状シリカ、管状酸化チタン、カーボンナノチューブ、シリカナノチューブが好適である。
電解質膜が、このような多孔質粒子を含んでいると、電解質膜の形成性が向上し、かつ水素やメタノール等燃料のクロスオーバーを抑制することができる。さらにこのような多孔質粒子は、フラーレンを多く担持することができるのでプロトン伝導性を著しく向上させることも可能である。さらにまた、プロトン伝導性を高められれば、保水性を有するプロトン供与体の電解質膜への配合および運転時の水の供給を行う必要がなくなり、100℃以上の高温運転および長期運転が可能となり、電圧降下の抑制された電解質膜を得ることができる。
【0020】
これらの多孔質粒子のなかでも繊維状酸化チタン、繊維状カーボン、繊維状シリカ、管状酸化チタン、カーボンナノチューブ、シリカナノチューブから選ばれる1種以上の多孔質粒子が好ましい。これらの繊維状粒子、ナノチューブは、電解質膜中で一定方向に配向するので、表面を最短でプロトンが伝導する効果、すなわちプロトン伝導性の向上効果が高く、また燃料のクロスオーバーも極めて抑制される。特にナノチューブでは、外壁表面だけではなく内壁内にフラーレンが担持されるので担持量を増やすことが可能であるとともに、特に内壁内に担持されたフラーレンは脱離されにくくいので、プロトン伝導性を非常に高めることが可能である。また繊維状粒子でも網目構造を形成するものはフラーレンの担持量を高めることができるので、プロトン伝導性を高めることができる。
【0021】
これらの繊維状粒子、ナノチューブでは概ね長さが10〜1000nm、さらには20〜500nmの範囲にあり、外径が2〜50nm、さらには4〜20nmの範囲にあることが好ましい。なお、管状酸化チタン、カーボンナノチューブ、シリカナノチューブについては内径が1〜40nm、さらには2〜10nmの範囲にあり、管厚が1〜20nm、さらには2〜15nmの範囲にあることが好ましい。
【0022】
このような大きさの繊維状粒子、ナノチューブであれば、上記したように電解質膜中で、一定方向、具体的には、電極に対して垂直に配向しやすくなり、その結果、表面(内管壁も含む)を最短でプロトンが伝導する効果が高く、燃料のクロスオーバーも極めて抑制することができる。
繊維状粒子、ナノチューブの長さが10nm未満の場合は、電解質膜中での繊維状粒子、ナノチューブの配向がランダムとなり、繊維状粒子表面を最短でプロトンが伝導する効果、すなわちプロトン伝導性の向上効果が不充分となる。繊維状粒子、ナノチューブの長さが1000nmを越える場合は、電解質膜の形成性が低下し、また水素やメタノール等燃料のクロスオーバーが増加することがある。
【0023】
また、繊維状粒子、ナノチューブの外径が2nm未満の場合は、繊維状粒子、ナノチューブの長さにもよるが、繊維状粒子、ナノチューブが互いに絡み合い、配向がランダムとなり、緻密な電解質膜が得られず、水素やメタノール等燃料のクロスオーバーが増加することがある。また、繊維状粒子、ナノチューブの外径が50nmを越えると、電解質膜中でのフラーレンが担持された繊維状粒子、ナノチューブ有効表面が低下し、プロトン伝導性を向上させる効果が不充分となる。
【0024】
また、ナノチューブの内径が1nm未満の場合は、フラーレンの担持が困難となり、管状であることの効果が得られず、単に繊維状の粒子との違いがなくなる。また、ナノチューブの内径が40nmを越えると、電解質膜中でのフラーレンが担持されたナノチューブ有効表面が低下し、プロトン伝導性を向上させる効果が不充分となる。
【0025】
前記多孔質粒子で、繊維状酸化チタン、繊維状カーボン、繊維状シリカ、管状酸化チタン、カーボンナノチューブ、シリカナノチューブ以外のものは通常、球状、立方体、直方体等であるが、この場合の平均粒子径は5〜500nm、さらには10〜300nmの範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、プロトンの生成効率を高めることが可能であるとともに、燃料ガスの拡散もしやすく、さらに、強度も高い電解質膜を形成することが可能である。平均粒子径が小さい場合は、電解質膜が緻密になりすぎて燃料ガスの拡散が不充分となり、プロトンの生成効率が低下する。平均粒子径を大きくしても、多孔質粒子の含有量あるいはプロトン伝導膜の製造方法によっては、電解質膜に大きな細孔が形成され、クロスオーバーが増加し、また得られる電解質膜の強度が不充分となることがある。
【0026】
なお、本発明では、繊維状粒子、ナノチューブおよびそれ以外の多孔質粒子を混合して使用しても良い。
多孔質粒子へのフラーレン担持量は、多孔質粒子の種類によっても異なるが0.01〜20質量%、さらには0.1〜20質量%の範囲にあることが好ましい。この範囲内にあれば高いプロトン伝導性を維持できる。なお、フラーレンの担持量が少ないと、プロトン伝導性を向上させる効果が充分得られず、フラーレンの担持量が多くしても、多孔質粒子の表面に有効に担持できないフラーレンが増加し、プロトン伝導性をさらに向上させることもない。
【0027】
以上のようなフラーレンが担持された多孔質粒子の電解質膜中の含有量は、5〜95質量%、さらには10〜80質量%の範囲にあることが好ましい。このような含有量であれば、高いプロトン伝導性を有する電解質膜を形成することができる。電解質膜中の多孔質粒子の含有量が少ないと、プロトン伝導性を向上させる効果が充分得られないことがあり、多孔質粒子の含有量が多くしすぎると、マトリックスが少なすぎて電解質膜の強度が不充分となったり、マトリックスによって粒子間隙を緻密にできないためにクロスオーバーが増加することがある。
【0028】
このようなフラーレンの多孔質粒子への担持方法は、前記多孔質粒子に前記した量のフラーレンを担持できれば特に制限はなく、たとえば多孔質粒子分散液(好ましくは多孔質粒子の有機溶媒分散液)と、フラーレンのアルコール分散液とを混合することによって得ることができる。このとき、必要に応じて所要時間撹拌したり、加熱することができ、ついで、必要に応じて濾過、限外濾過、遠心分離等の方法で分離したり濃縮することもできる。また、好ましい溶媒に置換して用いることもできる。
【0029】
マトリックス
本発明に用いるマトリックスとしては、無機酸化物マトリックス、有機樹脂マトリックス、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物からなるマトリックスなどが挙げられる。
無機酸化物マトリックスとしてはZrO2、SiO2、TiO2、Al2O3から選ばれる1種以上の無機酸化物からなることが好ましい。これらの無機マトリックスを用いると多孔質で、膜の強度、保水性等に優れるとともに熱安定性、耐久性に優れた無機電解質膜が得られる。
【0030】
有機樹脂マトリックスとしては、スルホン酸基を有するポリスチレン系の陽イオン交換膜、フルオロカーボンスルホン酸とポリビニリデンフルオライドとの混合膜、フルオロカーボンマトリックスにトリフルオロエチレンをグラフト化した膜、パーフルオロカーボンスルホン酸膜、フッ化ビニリデン樹脂膜、2−ジクロロエチレン樹脂膜、ポリエチレン樹脂膜、塩化ビニル樹脂膜、ABS樹脂膜、AS樹脂膜、ポリカーボネート樹脂膜、ポリアミド樹脂膜、ポリイミド樹脂膜、メタクリル樹脂膜等は好適に用いることができる。
【0031】
また、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物からなるマトリックスは、有機珪素化合物の加水分解物がシロキサン結合により3次元網目構造をしており、一部結合の末端にOH基が存在し、このOH基によりプロトン導電性を発現される。
本発明ではマトリックスとしてプロトン伝導性を有する有機ケイ素化合物の加水分解物を使用することが好ましい。
【0032】
有機ケイ素化合物としては下記式(1)で表される有機ケイ素化合物から選択される1種以上が好ましい。
RnSiX4-n (1)
〔ただし、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素、n:0〜3〕
式(1)で表される有機珪素化合物としては、具体的に、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロルシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン等が挙げられる。
【0033】
これらの中でも、少なくとも1つのRが置換炭化水素基であり、かつ、該置換炭化水素基が酸素を含む開環性官能基である有機珪素化合物を含むことが好ましい。このような有機珪素化合物として、たとえばγ−グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0034】
このような酸素を含む開環性官能基を有する有機珪素化合物は、酸素を含む置換炭化水素基が開環してOH基を生成するので、高いプロトン伝導性を有する電解質膜が得られる。
このようなマトリックスの電解質膜中の含有量は5〜95重量%、さらには20〜90重量%の範囲にあることが好ましい。このようなマトリックス含有量であれば、強度に優れた電解質膜を形成することができる。
【0035】
マトリックス含有量が少ないと、電解質膜の強度が不充分となったり、多孔質粒子間隙をマトリックスで埋めることができないためにクロスオーバーが増加することがある。マトリックスの含有量が多くしすぎると、充分なプロトン伝導性が得られないことがある。
本発明に係る電解質膜はフラーレンを含んでいるので、それ自体がプロトン供与性を有している。このため、必ずしもプロトン供与体を含んでいる必要はないが、本発明の電解質膜には、必要に応じてプロトン供与体を含んでいてもよい。このようなプロトン供与体としては特に制限はなく従来公知のプロトン供与体を用いることができる。たとえば、H3PW12O40・29H2O、H3PMo12O40・29H2O、HUO2PO4・4H2O、HUO2AsO4・4H2O、H4SiW12O40・26H2O、Zr(HPO4) 2・H2O、As(HPO4)2・H2O等が挙げられる。電解質膜中のプロトン供与体の含有量は0より多く60重量%以下、さらには0.0001〜50重量%の範囲にあることが好ましい。このような範囲でプロトン供与体が含まれていれば、プロトン伝導性を高める効果を充分に発現することが可能となる。
【0036】
なお、プロトン供与体を含む場合も、マトリックス成分およびフラーレン担持多孔質粒子の含有量は前記した範囲にあることが好ましい。
さらに、本発明に係る電解質膜は、水分含有量が少なくとも、さらには水分を含んでいなくとも高いプロトン伝導性を有している。しかしながら、必要に応じて保水性能を有する成分が配合されていてもよい。
【0037】
保水性能を有する成分としては、シリカ・アルミナ、ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)、粘土鉱物などの多孔性無機酸化物等の他これらにあるいは他の高比表面積を有する多孔性無機化合物にスルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基などで修飾した無機化合物の微粒子等を好適に用いることができる。
このような保水性能を有する成分の配合量は電解質膜中に概ね30重量%以下の範囲にあることが好ましい。
【0038】
また、本発明に用いる電解質膜は、膜厚が0.01〜10mm、さらには0.05〜5mmの範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、プロトン伝導性が高く、充分な強度の膜が得られ、加工時にクラックが入ることもピンホールが生じることもない。電解質膜の膜厚が薄くすると、充分な膜の強度が得られず、加工の際にクラックが入ったり、ピンホールが生じることがある。電解質膜の膜厚を厚くしすぎると、かえってプロトン伝導性が低下するとともに、塗布液法で膜を形成する場合には充分な膜の強度が得られないことがある。
【0039】
つぎに、上記電解質膜の製造方法について説明する。
これらの無機酸化物マトリックスを使用して電解質膜を形成する場合、たとえば、無機化合物塩の加水分解物の水および/または有機溶媒分散液と、フラーレンを担持してなる多孔質粒子と、必要に応じてプロトン供与体との混合物からなる電解質膜形成用塗料を調製する。無機化合物塩としては、塩化ジルコニウム、塩化ジルコニル、四塩化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、四塩化チタン、硫酸チタン、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等が用いられる。これらの無機化合物塩水溶液に、酸またはアルカリを加えて加水分解して得られる加水分解物を、洗浄、熟成などを行い、必要に応じて有機溶媒置換して使用される。有機溶媒としては、後述する有機溶媒を使用することができる。
【0040】
有機樹脂マトリックスを使用して電解質膜を形成する場合、これらの有機樹脂マトリックスを溶剤に溶解し、フラーレンを担持してなる多孔質粒子が分散された懸濁液を、型枠を設けられたフィルム表面に塗布し乾燥して溶媒を除去すれば電解質膜を形成できる。得られた電解質膜を電極表面に転写してもよい。また、懸濁液を直接電極表面に塗布し乾燥して電解質膜を形成することも可能である。また、有機樹脂マトリックが熱可塑性樹脂の場合、有機マトリックス粉末とフラーレン担持多孔質粒子とを混合し、混合粉末を所定の金型内に装填し、加熱して溶融して膜状に成型してもよく、また加熱時に加圧してもよい。
【0041】
プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物をマトリックスとして使用する場合では、まず、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物および/または有機珪素化合物加水分解物の水および/または有機溶媒溶液とフラーレンを担持してなる多孔質粒子と、必要に応じてプロトン供与体との混合物からなる電解質膜形成用塗料を調製する。有機珪素化合物加水分解物は、前記した有機珪素化合物の有機溶媒溶液に水を加えて、必要に応じて酸またはアルカリを加えて、加水分解して得られる加水分解物(部分加水分解物、加水分解・重縮合したものを含む)が、必要に応じて洗浄、熟成等したものが用いられる。有機珪素化合物を加水分解する際に、前記した有機珪素化合物の有機溶媒溶液に前記フラーレンを担持してなる多孔質粒子の水および/または有機溶媒分散液(好ましくは有機溶媒分散液)を混合し、これに水を加えて、有機珪素化合物を加水分解すると、膜の強度や燃料分子の不透過性、プロトン伝導性等に優れた電解質膜を得ることができる。
【0042】
有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0043】
また、電解質膜形成用塗料には、必要に応じて前記プロトン供与体が含まれていてもよい。電解質膜形成用塗料中の有機珪素化合物および/または有機珪素化合物加水分解物、フラーレンを担持してなる多孔質粒子分散液および必要に応じて用いるプロトン供与体の配合割合は、得られる電解質膜中の各成分の含有量が前記した範囲となるように配合して用いる。
【0044】
電解質膜形成用塗料の合計固形分濃度は2〜50重量%、さらには5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。固形分濃度がこのような範囲にあれば、1液で、所望の膜厚の電解質膜を形成することが可能である。
電解質膜形成用塗料の濃度が少ないと、1回の塗布で所望の膜厚の電解質膜が得られないことがあり、電解質膜形成用塗料の濃度が多くても塗料の粘度が高くなり塗料化が困難であり、得られたとしても塗布法が制限されたり、得られる電解質膜の強度が不充分となることがある。
【0045】
また本発明で使用される塗料は、脱イオン処理を行ったり、必要に応じて濃縮あるいは希釈して用いることもできる。
上記した電解質膜形成用塗料を用いて電解質膜を形成する際に、形成方法としては、充分な発電性能および膜の強度等を有していれば特に制限はないが、たとえば剥離性の良い型枠、たとえばテフロン(R)製の型枠に塗料を充填した後、乾燥、加熱処理等を施すことによって得ることができる。
【0046】
また、後述するガス拡散層および触媒層としての機能を有する一対の多孔質電極、つまり燃料極または酸化剤極基板上に電解質膜形成用塗料をスプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法などの方法で、基板上に塗布した後、乾燥、加熱処理等を施すことによっても得ることができる。
つぎに、本発明に係る燃料電池について説明する。
【0047】
[燃料電池]
本発明に係る燃料電池は、上記した電解質膜を具備してなることを特徴としている。
具体的には、上記した電解質膜と、この両側に配置される一対のガス拡散電極(燃料極および酸化剤極)とから構成され、燃料極と酸化剤極とで電解質膜を狭持するとともに、両極の外側に燃料室および酸化室を構成する溝付きの集電体を配したものを単セルとし、このような単セルを、必要に応じて冷却板等を介して複数層積層することによって構成される。
【0048】
ガス拡散電極は、通常、触媒粒子を担持させた導電性材料をPTFEなどの疎水性樹脂結着剤で保持させた多孔質体シートからなる。また、導電性材料とPTFEなどの疎水性樹脂結着剤とからなる多孔質体シートの電解質膜接触面に触媒粒子層を設けたものであってもよい。
このようなガス拡散電極の一対で、電解質膜を狭持し、ホットプレスなどの公知の圧着手段により、圧着される。
【0049】
触媒としては、水素の酸化反応および酸素の還元反応の触媒作用を有するものであれば良く、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属またはそれらの合金から選択することができる。
【0050】
導電性材料としては電子伝導性物質であればよく、たとえば炭素材料として公知のファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックの他、活性炭、黒鉛、また各種金属も使用可能である。
疎水性樹脂結着剤としては、たとえばフッ素を含む各種樹脂が挙げられ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、パーフルオロスルホン酸等が挙げられる。
【0051】
また、電解質膜と接する反対の面に、前記疎水性樹脂結着剤からなるガス拡散層が設けられていてもよい。
触媒の担持量は、シートを形成した状態で0.01〜5mg/cm2であり、より好ましくは0.1〜1mg/cm2であればよい。
電気伝導性多孔質材料は、比表面積として、100〜2000m2/gであることが、充分な透過性を得る上で好ましい。また、ガス拡散電極の平均細孔直径は、0.01〜1μmであることが好ましい。
【0052】
本発明に係る燃料電池では、燃料室にたとえば水素などのプロトンを生成可能な物質を流通し、酸化室にプロトンを反応の消費する空気(酸素)などを供給し、下記電極反応により電気を発生させる。
燃料極(アノード):H2 → 2H+ + 2e-
酸化剤極(カソード):2H+ +1/2O2 + 2e- → 2H2O
また、燃料としてメタノールを供給して、直接発電する場合は、以下の反応により電気を発生させる。
【0053】
燃料極(アノード): CH3OH + H2O → CO2 + 6H+ + 6e-
酸素極(カソード): 6H+ + 3/2O2 + 6e- → 3H2O
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、電解質膜が、フラーレンを担持してなる多孔質粒子を含有しているためにプロトン伝導性に優れるとともに低水分または水分がなくても(さらに別途用いるプロトン供与体が少なくてもあるいは無くても)運転可能であり、しかも多孔質粒子を使用しているので、プロトン伝導性が高く、高温運転性能、耐久性等にも優れ、さらに水素、メタノール等の燃料のクロスオーバー(透過性)の抑制された燃料電池を提供することができる。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
【実施例1】
フラーレン担持多孔質粒子(A)分散液の調製
シリカ・アルミナコロイド溶液(触媒化成工業(株)製:USBB−120、平均粒子径15nm、比表面積600m2/g、SiO2・Al2O3濃度1質量%、水分散媒)500gをメタノールに溶媒置換し(SiO2・Al2O3濃度1質量%)、これに濃度が0.19質量%のフラーレン(サイエンスラボラトリーズ(株)製:C−60フラーレン)のイソプロピルアルコール分散液100gを混合し、20分間撹拌した。つぎに、限外濾過膜法で洗浄し、ついで分散媒(エチルアルコール:水/50:50)で置換するとともに濃縮して固形分濃度が20質量%の多孔質粒子(A)分散液を調製した。フラーレンの担持量は3.7質量%であった。
【0057】
電解質膜形成用塗料 (A) の調製
フラーレン担持多孔質粒子(A)分散液1.47gにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)1.19gを加え、室温で30分攪拌した。ついで水2.66gを加えて加水分解し、3時間攪拌して、電解質膜形成用塗料(A)を調製した。
【0058】
電解質膜 (A) の調製
電解質膜形成用塗料(A)を10cm×10cmのテフロン(R)製枠型に充填し、60℃で3日間乾燥した後、2×2cm(厚さ0.7mm)で切り出し、温度150℃、プレス圧力5MPa、30秒間の条件でホットプレスし、厚さが約0.33mmの電解質膜(A)を得た。このとき、膜の形成性およびイオン伝導性を評価し、結果を表1に示した。
【0059】
膜の形成性の評価
電解質膜(A)を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表に示した。
膜の厚さが均一で、表面は平滑でクラックがない : ○
膜の厚さは均一で、表面にザラツキがあるがクラックがない : △
膜の厚さが不均一で、クラックが認められる : ×
イオン伝導性の評価
電解質膜(A)を温度80℃、相対湿度(RH)80%の環境下に置き、インピーダンスアナライザーを用いて周波数を5〜106Hzの範囲で変化させて測定し、結果を表に示した。
【0060】
単位セル (A) の作成
ついで、白金含有量がPtとして40重量%の白金担持カーボン粒子にエチルアルコールおよび水(50:50)を加えペースト状にし、これをテトラフルオロエチレンで撥水処理したカーボン紙(東レ(株)製)2枚に、各々白金担持カーボン粒子が0.50mg/cm2になるように塗布し、100℃で12時間乾燥てしガス拡散電極2枚を作製した。この2枚の拡散電極を、正極および負極とし、両極の間に電解質膜(A)を挟み、プレス圧力50Mpa、150℃で30秒間ホットプレスし、ガス拡散電極と電解質膜(A)とを張り合わせて単位セル(A)を作製した。
【0061】
評価
単位セル(A)とセパレーターを燃料電池単セル評価装置に組み込み、さらに恒温・恒湿装置の中に入れ、燃料極に200ml/minの水素ガス、酸化剤極に200ml/minの空気ガスを流入し、常圧、湿度80%、アノード加湿温度90℃、カソード加湿温度80℃の雰囲気中で単セルのV-I特性試験(電圧-電流密度の相関関係)を行い、電流密度10mA/cm2、40mA/cm2、80mA /cm2のときの電圧を測定した。また湿度30%、電流密度80mA/cm2の時の電圧を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
さらに耐熱性試験として、湿度80%、アノード加湿温度、カソード加湿温度を120℃に上げて、V-I特性試験を行い、電流密度80mA/cm2の時の電圧を測定した。結果をあわせて表1に示す。
V-I特性試験は、V=I×Rに基づき、インピーダンスアナライザーを用いて、電圧と電流密度(出力)の関係を測定した。
【0063】
【実施例2】
フラーレン担持多孔質粒子(B)分散液の調製
ゼオライト(触媒化成工業(株)製:CZSゼライト、平均粒径0.5μm、比表面積600m2/g)の水分散液(ゼオライト濃度1質量%)を用いた以外は実施例1と同様にしてフラーレン担持ゼオライト粒子(B)分散液を調製した。フラーレンの担持量は4.2質量%であった。
【0064】
電解質膜形成用塗料 (B) および電解質膜 (B) の調製
フラーレン担持ゼオライト粒子(B)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして電解質膜形成用塗料(B)を調製し、ついで電解質膜(B)を調製した。膜の形成性およびイオン伝導性を評価し、結果を表1に示した。
単位セル (B) の作成
実施例1において、電解質膜(B)を用いた以外は同様にして単位セル(B)を作成し、評価結果を表1に示した。
【0065】
【実施例3】
フラーレン担持多孔質粒子(C)分散液の調製
まず、以下のようにして管状酸化チタン粒子を調製した。
塩化チタン水溶液を純水で希釈してTiO2として濃度5質量%の塩化チタン水溶液を調製した。この水溶液を、温度を5℃に調節した濃度15質量%のアンモニア水に添加して中和・加水分解した。塩化チタン水溶液添加後のpHは10.5であった。ついで、生成したゲルを濾過洗浄し、TiO2として濃度9質量%のオルソチタン酸のゲルを得た。
【0066】
このオルソチタン酸のゲル100gを純水2900gに分散させた後、濃度35質量%の過酸化水素水800gを加え、攪拌しながら、85℃で3時間加熱し、ペルオキソチタン酸水溶液を調製した。得られたペルオキソチタン酸水溶液のTiO2として濃度は0.5質量%であった。
ついで95℃で10時間加熱して酸化チタン粒子分散液とし、この酸化チタン粒子分散液に分散液中のTiO2に対するモル比が0.016となるようにテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH MW=149.2)を添加した。このときの分散液のpHは11であった。ついで、230℃で5時間水熱処理して酸化チタン粒子分散液を調製した。酸化チタン粒子の平均粒子径は30nmであった。
【0067】
ついで、酸化チタン粒子分散液に、濃度40質量%のKOH水溶液70gを、TiO2のモル数(TM)とアルカリ金属水酸化物のモル数(AM)とのモル比(AM)/(TM)が10となるように添加し、150℃で2時間水熱処理した。得られた粒子は純水にて充分洗浄した。このときのK2O残存量は0.9質量%であった。純水で洗浄した後、粒子の水分散液(TiO2としての濃度5質量%)とし、これに粒子と同量の陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを添加し、60℃で24時間処理してアルカリの除去等高純度化を行った。ついで、凍結乾燥して管状酸化チタン粒子(平均粒子外径10nm、平均粒子内径7.5nm、平均粒子長さ180nm)を調製した。
【0068】
管状酸化チタン粒子水分散液(TiO2濃度1質量%)500gをメタノールに溶媒置換し(TiO2濃度1質量%)、これに濃度が0.19質量%のフラーレン(サイエンスラボラトリーズ(株)製:C−60フラーレン)のイソプロピルアルコール分散液100gを混合し、20分間撹拌した。つぎに、限外濾過膜法で洗浄し、ついで分散媒(エチルアルコール:水/50:50)で置換するとともに濃縮して固形分濃度が20質量%のフラーレン担持管状酸化チタン粒子(C)分散液を調製した。フラーレンの担持量は1.4質量%であった。
【0069】
電解質膜形成用塗料 (C) および電解質膜 (C) の調製
実施例1において、フラーレン担持管状酸化チタン粒子(C)分散液を用いた以外は同様にして電解質膜形成用塗料(C)を調製し、ついで電解質膜(C)を調製した。膜の形成性およびイオン伝導性を評価し、結果を表1に示した。
単位セル (C) の作成
実施例1において、電解質膜(C)を用いた以外は同様にして単位セル(C)を作成し、評価結果を表1に示した。
【0070】
【実施例4】
電解質膜形成用塗料(D)および電解質膜(D)の調製
管状酸化チタン粒子(C)分散液を500g、濃度が0.25質量%のフラーレンのイソプロピルアルコール分散液100gを用いて、実施例3と同様にしてフラーレンを担持させ、当該フラーレン担持管状酸化チタン粒子分散液(D)を用いて、電解質膜形成用塗料(D)を調製し、ついで電解質膜(D)を調製した。膜の形成性およびイオン伝導性を評価し、結果を表1に示した。
【0071】
単位セル (D) の作成
実施例1において、電解質膜(D)を用いた以外は同様にして単位セル(D)を作成し、評価結果を表に示した。
【0072】
【実施例5】
電解質膜形成用塗料 (E) および電解質膜 (E) の調製
フラーレン担持管状酸化チタン粒子(C)分散液1.47gにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)1.19gを加え、室温で30分攪拌した。これにプロトン供与体としてケイタングステン酸26水和物(STA)0.15gを添加し、ついで水2.66gを加えて加水分解し、3時間攪拌して、電解質膜形成用塗料(E)を調製し、ついで電解質膜(E)を調製した。膜の形成性およびイオン導電性を評価し、結果を表1に示した。
【0073】
単位セル (E) の作成
実施例1において、電解質膜(E)を用いた以外は同様にして単位セル(E)を作成し、評価結果を表1に示した。
【0074】
【実施例6】
電解質膜形成用塗料(F)および電解質膜(F)の調製
管状酸化チタン粒子(C)分散液を500g、濃度が0.41質量%のフラーレンのイソプロピルアルコール分散液100gを用いて、実施例3と同様にしてフラーレンを担持させ、当該フラーレン担持管状酸化チタン粒子分散液(F)を用いて、電解質膜形成用塗料(F)を調製し、ついで電解質膜(F)を調製した。膜の形成性およびイオン伝導性を評価し、結果を表1に示した。
【0075】
単位セル (F) の作成
実施例1において、電解質膜(F)を用いた以外は同様にして単位セル(F)を作成し、評価結果を表1に示した。
【0076】
【実施例7】
フラーレン担持多孔質粒子 (G) 分散液の調製
実施例3と同様にして、管状酸化チタン粒子(平均粒子外径10nm、平均粒子内径7.5nm、平均粒子長さ180nm)を調製した。これを80℃で10時間乾燥し、ついで450℃で2時間焼成して繊維状酸化チタン粒子を得た。得られた繊維状酸化チタン粒子は平均粒子長さ170nm、平均外径7nmであった。
【0077】
ついで、固形分濃度1質量%の繊維状酸化チタン粒子のメタノール分散液を調製し、これを用いた以外は実施例1と土曜にしてフラーレン担持繊維状酸化チタン粒子(G)分散液を調製した、フラーレンの担持量は4.0質量%であった。
電解質膜形成用塗料(G)および電解質膜(G)の調製
実施例1において、フラーレン担持繊維状酸化チタン粒子(G)分散液を用いた以外は同様にして電解質膜形成用塗料(G)を調製し、ついで電解質膜(G)を調製した。膜の形成性およびイオン伝導性を評価した。
【0078】
結果を表1に示す。
単位セル (G) の作成
実施例1において、電解質膜(G)を使用した以外は同様にして単位セル(G)を作成し、評価した。
結果を表1に示す。
【0079】
【比較例1】
電解質膜形成用塗料 (R1) の調製
イソプロピルアルコール1.47gにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)1.19gを加え、室温で30分攪拌した。これにプロトン供与体としてケイタングステン酸26水和物(STA)0.15gを添加し、ついで水2.66gを加えて加水分解し、3時間攪拌して、電解質膜形成用塗料(R1)を調製した。
【0080】
電解質膜 (R1) の調製
実施例1において、電解質膜形成用塗料(R1)を用いた以外は同様にして電解質膜(R1)を調製した。膜の形成性およびイオン伝導性を評価し、結果を表に示した。
単位セル (R1) の作成
実施例1において、電解質膜(R1)を用いた以外は同様にして単位セル(R1)を作成し、評価結果を表1に示した。
【0081】
【比較例2】
多孔質粒子(A1)分散液の調製
実施例1と同様に、シリカ・アルミナコロイド溶液を用い、分散媒(エチルアルコール:水/50:50)で置換するとともに濃縮して固形分濃度が20質量%の多孔質粒子(A1)分散液を調製した。この多孔質粒子(A1)分散液にフラーレンを担持することなく使用した。
【0082】
電解質膜形成用塗料 (R2) および電解質膜 (R2) の調製
実施例5において、フラーレン担持管状酸化チタン粒子(C)分散液1.47gの代わりに多孔質粒子(A1)分散液1.46gを用いた以外は同様にして電解質膜形成用塗料(R2)を調製し、ついで電解質膜(R2)を調製した。膜の形成性およびイオン伝導性を評価し、結果を表1に示した。
【0083】
単位セル (R2) の作成
実施例1において、電解質膜(R2)を用いた以外は同様にして単位セル(R2)を作成し、評価結果を表1に示した。
【0084】
【比較例3】
多孔質粒子(B1)分散液の調製
実施例1と同様に、ゼオライト(触媒化成工業(株)製:CZSゼライト、平均粒径0.5μm、比表面積600m2/g)を用いゼオライト濃度20質量%の多孔質粒子(B1)分散液を調製した。この多孔質粒子(B1)分散液にフラーレンを担持することなく使用した。
【0085】
電解質膜形成用塗料 (R3) および電解質膜 (R3) の調製
実施例5において、フラーレン担持管状酸化チタン粒子(C)分散液1.47gの代わりに多孔質粒子(B1)分散液1.46gを用いた以外は同様にして電解質膜形成用塗料(R3)を調製し、ついで電解質膜(R3)を調製した。膜の形成性およびイオン伝導性を評価し、結果を表1に示した。
【0086】
単位セル (R3) の作成
実施例1において、電解質膜(R3)を用いた以外は同様にして単位セル(R3)を作成し、評価結果を表に示した。
【0087】
【比較例4】
多孔質粒子(C1)分散液の調製
実施例3と同様にして、固形分濃度が20質量%の管状酸化チタン粒子(C1)分散液を調製した。かかる管状酸化チタン粒子分散液(C1)にフラーレンを担持することなく使用した。
【0088】
電解質膜形成用塗料 (R4) および電解質膜 (R4) の調製
実施例5において、フラーレン担持管状酸化チタン粒子(C)分散液1.47gの代わりに管状酸化チタン粒子(C1)分散液1.46gを用いた以外は同様にして電解質膜形成用塗料(R4)を調製し、ついで電解質膜(R4)を調製した。膜の形成性およびイオン伝導性を評価し、結果を表1に示した。
【0089】
単位セル (R4) の作成
実施例1において、電解質膜(R4)を用いた以外は同様にして単位セル(R4)を作成し、評価結果を表1に示した。
【0090】
【比較例5】
多孔質粒子(C2)分散液の調製
実施例3と同様にして、固形分濃度が20質量%の管状酸化チタン粒子(C2)分散液を調製した。
電解質膜形成用塗料(R5)および電解質膜(R5)の調製
実施例1において、管状酸化チタン粒子(C2)分散液を用いた以外は同様にして電解質膜形成用塗料(R5)を調製し、ついで電解質膜(R5)を調製した。膜の形成性およびイオン伝導性を評価し、結果を表1に示した。
【0091】
単位セル (R5) の作成
実施例1において、電解質膜(R5)を用いた以外は同様にして単位セル(R5)を作成し、評価結果を表1に示した。
【0092】
【表1】
Claims (5)
- フラーレンを担持してなる多孔質粒子とマトリックスとからなり、
前記多孔質粒子が、ZrO2、SiO2、TiO2、Al2O3、SiO2・Al2O3、Sb2O5からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物粒子、ゼオライト粉末、活性炭、繊維状酸化チタン、繊維状カーボン、繊維状シリカ、管状酸化チタン、カーボンナノチューブ、シリカナノチューブから選ばれる1種以上の多孔質粒子であり、
前記マトリックスが、無機酸化物マトリックス、有機樹脂マトリックス、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物からなるマトリックスであり、
多孔質粒子中のフラーレンの担持量が0.01〜20質量%の範囲にあり、
前記フラーレンを担持してなる多孔質粒子の電解質膜中の含有量が5〜95質量%の範囲にあることを特徴とする電解質膜。 - 前記無機酸化物マトリックスが、ZrO2、SiO2、TiO2、Al2O3から選ばれる1種以上の無機酸化物からなるものであり、
前記有機樹脂マトリックスが、スルホン酸基を有するポリスチレン系の陽イオン交換膜、フルオロカーボンスルホン酸とポリビニリデンフルオライドとの混合膜、フルオロカーボンマトリックスにトリフルオロエチレンをグラフト化した膜、パーフルオロカーボンスルホン酸膜、フッ化ビニリデン樹脂膜、2−ジクロロエチレン樹脂膜、ポリエチレン樹脂膜、塩化ビニル樹脂膜、ABS樹脂膜、AS樹脂膜、ポリカーボネート樹脂膜、ポリアミド樹脂膜、ポリイミド樹脂膜、メタクリル樹脂膜からなるものであり、
前記プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物からなるマトリックスは、式(1):RnSiX4-n で表される有機珪素化合物の加水分解物〔ただし、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素、n:0〜3〕であることを特徴とする請求項1に記載の電解質膜。 - 前記多孔質粒子が、繊維状酸化チタン、繊維状カーボン、繊維状シリカ、管状酸化チタン、カーボンナノチューブ、シリカナノチューブから選ばれる1種以上の多孔質粒子であることを特徴とする請求項2に記載の電解質膜。
- マトリックスが、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物マトリックスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電解質膜。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の電解質膜を具備してなることを特徴とする燃料電池。
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