JP2003308855A - 固体高分子電解質膜、該固体高分子電解質膜を用いた燃料電池 - Google Patents

固体高分子電解質膜、該固体高分子電解質膜を用いた燃料電池

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JP2003308855A
JP2003308855A JP2002116115A JP2002116115A JP2003308855A JP 2003308855 A JP2003308855 A JP 2003308855A JP 2002116115 A JP2002116115 A JP 2002116115A JP 2002116115 A JP2002116115 A JP 2002116115A JP 2003308855 A JP2003308855 A JP 2003308855A
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polymer electrolyte
electrolyte membrane
solid polymer
proton
silica
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Katsuhiro Kino
野 勝 博 城
Tsuguo Koyanagi
柳 嗣 雄 小
Masayuki Nagai
井 正 幸 永
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Catalysts and Chemicals Industries Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】固体高分子電解質膜の形成性、強度、耐熱性等
に優れ、長期に使用しても高い電池特性を有する燃料電
池が得られる固体高分子電解質を提供する。 【解決手段】プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の
加水分解物マトリックスとシリカ粒子とからなり、該シ
リカ粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、
固体高分子電解質膜中のシリカ粒子の含有量がSiO2
して5〜95重量%の範囲にあることを特徴とする固体
高分子電解質膜。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、プロトン伝導性を有する
有機珪素化合物の加水分解物マトリックスとシリカ粒子
とからなる固体高分子電解質膜および該固体高分子電解
質膜を用いた燃料電池に関する。さらに詳しくは、シリ
カ粒子が含まれているために、固体高分子電解質膜の強
度、プロトン伝導性、メタノール等燃料の不透過性が向
上し、熱的安定性等にも優れた固体高分子電解質膜およ
び該膜を具備してなる燃料電池に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】近年、クリーンな水素をエネルギ
ー源とする高効率、無公害でCO2等温暖化ガスを発生し
ない発電システムとして燃料電池が注目されている。こ
のような燃料電池は、家庭や事業所など固定設備、自動
車などの移動設備などでの使用を目的に本格的な開発研
究が行われている。
【0003】燃料電池は使用する電解質によって分類さ
れ、アルカリ電解質型、固体高分子電解質型、リン酸
型、溶融炭酸塩型、固体電解質型に分けられる。このと
き固体高分子電解質型およびリン酸型は電荷移動体がプ
ロトンであり、プロトン型燃料電池ともいわれる。この
燃料電池に用いる燃料としては、天然ガス、LPガス、
都市ガス、アルコール、ガソリン、灯油、軽油などの炭
化水素系燃料が挙げられる。
【0004】このような炭化水素系燃料を、まず水蒸気
改質、部分酸化などの反応により水素ガス、COガスに
変換し、COガスを除去して水素ガスを得る。この水素
は、アノードに供給され、アノードの金属触媒によって
プロトン(水素イオン)と電子に解離し、電子は回路を
通じて仕事をしながらカソードに流れ、プロトン(水素
イオン)は電解質膜を拡散してカソードに流れ、カソー
ドにてこの電子、水素イオンとカソードに供給される酸
素とから水となって電解質膜に拡散する。すなわち、酸
素と燃料ガスに由来する水素とを供給して水を生成する
過程で電流を取り出すメカニズムになっている。
【0005】このような燃料電池に用いられる電解質膜
としてはスルホン酸基を有するポリスチレン系の陽イオ
ン交換膜、フルオロカーボンスルホン酸とポリビニリデ
ンフルオライドとの混合膜、フルオロカーボンマトリッ
クスにトリフルオロエチレンをグラフト化した膜、パー
フルオロカーボンスルホン酸膜等が用いられている。こ
のような有機樹脂膜からなる電解質膜中のプロトンの移
動、すなわち膜のイオン電導度は膜の含水率に依存し、
長期運転した場合、あるいは概ね80℃以上の高温にな
って含水率が低下するとイオン電導度が低下する問題が
あった。すなわち、80℃以上の高温になると電圧の低
下をきたすなどの問題があった。
【0006】このため、特開平6−103983号公報
には、高分子膜にリン酸基を持つ化合物を含有させるこ
とで、高分子膜に良好な保水性能を発揮させ、これによ
り、80℃あるいはそれ以上の高温において好適に使用
可能な固体高分子電解質型燃料電池が提案されている。
また、特開2001−143723号公報には、80℃
あるいはそれ以上の運転温度において好適に使用可能な
燃料電池用電解質膜として五酸化リンを含む非晶質シリ
カ成形体からなるものが開示されている。
【0007】しかしながら、これらの提案された固体高
分子電解質膜を100℃以上の高温で長期にわたり使用
すると、高温のため膜の含水率が低下したり、樹脂成分
を用いた電解質膜では樹脂成分の劣化によりプロトン伝
導性が低下し、このため電圧が降下し、電池の性能が低
下する問題があった。さらに、比較的高温での使用に耐
える固体高分子電解質膜としてプロトン伝導性を有する
有機珪素化合物の加水分解物マトリックスとケイタング
ステン酸26水和物等のプロトン供与体とからなる無機
または無機有機複合の固体高分子電解質膜が知られてい
る。
【0008】しかしながら、この固体高分子電解質膜は
膜の形成性、膜の強度、膜の電導度等が不充分であった
り、燃料の不透過性(燃料が膜を素通りしないこと:以
下、クロスオーバー耐性と言うことがある)が不充分で
あったり、さらに電圧が低下すると電流密度が大きく低
下する等の問題があった。
【0009】
【発明の目的】本発明は、固体高分子電解質膜の形成
性、強度、耐熱性等に優れ、長期に使用しても高い電池
特性を有する燃料電池が得られる固体高分子電解質を提
供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】本発明に係る固体高分子電解質膜は、プ
ロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物マト
リックスとシリカ粒子とからなり、該シリカ粒子の平均
粒子径が5〜500nmの範囲にあり、固体高分子電解
質膜中のシリカ粒子の含有量が酸化物(SiO2)として
5〜95重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0011】前記プロトン伝導性を有する有機珪素化合
物が、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物から選
択される1種以上であることが好ましい。 RnSiX4-n (1) 〔ただし、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化
水素基であって、互いに同一であっても異なっていても
よい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール
基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3〕 前記置換炭化水素基が酸素を含む開環性官能基であるこ
とが好ましい。
【0012】さらに、必要に応じてプロトン供与体を含
んでいてもよい。プロトン伝導性を有する有機珪素化合
物および/または有機珪素化合物加水分解物の水および
/または有機溶媒溶液とシリカオルガノゾルと、必要に
応じてプロトン供与体との混合物からなるプロトン伝導
膜形成用塗料を用いて形成されたものであることが好ま
しい。
【0013】本発明に係る燃料電池は、前記固体高分子
電解質膜を具備してなることを特徴としている。
【0014】
【発明の具体的説明】以下、まず、本発明に係る固体高
分子電解質膜について説明する。固体高分子電解質膜 本発明に係る固体高分子電解質膜は、プロトン伝導性を
有する有機珪素化合物の加水分解物マトリックスとシリ
カ粒子とからなり、シリカ粒子の平均粒子径が5〜50
0nmの範囲にあり、固体高分子電解質膜中のシリカ粒
子の含有量が酸化物(SiO2)として5〜95重量%の
範囲にある。 [マトリックス]本発明の固体高分子電解質膜に用いる
マトリックスは、プロトン伝導性を有する有機珪素化合
物の加水分解・重縮合物からなっている。このようなマ
トリックスは有機珪素化合物の加水分解物がシロキサン
結合により3次元網目構造をしており、一部結合の末端
にOH基が存在し、このOH基によりプロトン導電性を
発現することができる。
【0015】このとき用いる有機ケイ素化合物としては
下記式(1)で表される有機ケイ素化合物から選択され
る1種以上であることが好ましい。 RnSiX4-n (1) 〔ただし、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化
水素基であって、互いに同一であっても異なっていても
よい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール
基、ハロゲン、水素、n:0〜3〕 式(1)で表される有機珪素化合物としては、具体的
に、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシ
ラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメト
キシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエ
トキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニ
ルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラ
ン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,
3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-
3,3,3-トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−
(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシ
シラン、γ−グリシドキシトリプロピルトリメトキシシ
ラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ
−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ
−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メ
タクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メ
タクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(ア
ミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラ
ン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメト
キシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピル
トリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシ
シラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−
フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ
−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチル
シラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロ
シラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシ
ラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロ
シラン、ビニルトリクロルシラン、トリメチルブロモシ
ラン、ジエチルシラン等が挙げられる。
【0016】このうち、前記置換炭化水素基が酸素を含
む開環性官能基である有機珪素化合物が含まれているこ
とが好ましい。このような有機珪素化合物として、例え
ばγ−グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ
−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタ
クリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタ
クリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリ
ロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリ
ロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエ
チル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ
−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプト
プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0017】このような酸素を含む開環性官能基を有す
る有機珪素化合物は酸素を含む置換炭化水素基が開環し
てOH基を生成するので高いプロトン伝導性を有する固
体高分子電解質膜が得られる。このようなマトリックス
成分は、固体高分子電解質膜中にSiO2として5〜95
重量%、さらには10〜80重量%の範囲にあることが
好ましい。
【0018】[シリカ粒子]つぎに、本発明に用いるシ
リカ粒子は平均粒子径が5〜500nm、さらには10
〜200nmの範囲にあることが好ましい。シリカ粒子
の平均粒子径が、前記下限未満の場合は、得られる固体
高分子電解質膜の伝導度が不充分となることがある。
【0019】シリカ粒子の平均粒子径が前記上限を越え
ると、得られる固体高分子電解質膜の伝導度が不充分と
なることがあり、また得られる固体高分子電解質膜の細
孔径が大きくなり燃料分子の不透過性が低下することが
ある。このようなシリカ粒子は固体高分子電解質膜中に
SiO2として5〜95重量%、さらには20〜90重量
%の範囲にあることが好ましい。
【0020】固体高分子電解質膜中のシリカ粒子の含有
量が前記下限未満の場合は、膜の形成性を向上させたり
膜の強度を向上させたり、さらに不透過性を向上させる
効果が充分得られず、またプロトン伝導性が不充分とな
ることがある。固体高分子電解質膜中のシリカ粒子の含
有量が前記上限を越えると、マトリックス成分が少なす
ぎて膜の強度が低下したり、プロトン伝導性が不充分と
なったりすることがある。 [固体高分子電解質膜]本発明に係る固体高分子電解質
膜は、膜厚が0.01〜10mm、さらには0.05〜5
mmの範囲にあることが好ましい。
【0021】固体高分子電解質膜の膜厚が0.01mm
未満の場合は、充分な膜の強度が得られず、加工の際に
クラックが入ったり、ピンホールが生じたりすることが
ある。固体高分子電解質膜の膜厚が10mmを越える
と、プロトン伝導性が低下するとともに、充分な膜の強
度が得られないことがある。
【0022】このような固体高分子電解質膜には、さら
に、必要に応じてプロトン供与体を含んでいてもよい。
このようなプロトン供与体としては特に制限はなく従来
公知のプロトン供与体を用いることができる。例えば、
3PW1240・29H2O、H 3PMO1240・29H2O、
HUO2PO4・4H2O、HUO2AsO4・4H2O、H4
SiW1240・26H2O、Zr(HPO42・H2O、A
s(HPO42・H2O等が挙げられる。
【0023】固体高分子電解質膜中のプロトン供与体を
含む場合、プロトン供与体の含有量は0より多く60重
量%以下、さらには0.0001〜50重量%の範囲に
あることが好ましい。プロトン供与体の含有量が少ない
と、固体高分子電解質膜中の他の成分、すなわちマトリ
ックス成分およびシリカ粒子の含有量によってはプロト
ン伝導性が不充分となることがある。
【0024】プロトン供与体の含有量が60重量%を越
えても、マトリックス成分およびシリカ粒子の含有量に
よってはプロトン伝導性がさらに向上する効果は得られ
ないことがある。なお、プロトン供与体を含む場合も、
マトリックス成分およびシリカ粒子の含有量は前記した
範囲にあることが好ましい。
【0025】[固体高分子電解質膜の形成]本発明に係
る固体高分子電解質膜は、上記成分からなる膜を形成で
きれば特に制限されるものではないが、プロトン伝導性
を有する有機珪素化合物および/または有機珪素化合物
加水分解物の水および/または有機溶媒溶液と、シリカ
粒子としてのシリカオルガノゾルと、必要に応じてプロ
トン供与体との混合物からなるプロトン伝導膜形成用塗
料を用いて形成されたものであることが好ましい。
【0026】プロトン伝導性を有する有機珪素化合物と
しては前記したと同じ有機ケイ素化合物が用いられる。
有機珪素化合物加水分解物としては、前記した有機ケイ
素化合物の有機溶媒溶液に水を加えて、必要に応じて酸
またはアルカリを加えて、加水分解して得られる加水分
解物(部分加水分解物、加水分解・重縮合したものを含
む)が、必要に応じて洗浄、熟成等したものが用いられ
る。
【0027】このとき、有機珪素化合物加水分解物とし
て、前記した有機ケイ素化合物の有機溶媒溶液に後述す
るシリカオルガノゾルを混合し、これに水を加えて、加
水分解して得られる加水分解物を用いると膜の強度や燃
料分子の不透過性、プロトン伝導性等に優れた固体高分
子電解質膜を得ることができる。有機溶媒としてはメタ
ノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアル
コール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリ
ルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エ
チレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコ
ール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなど
のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコール
モノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエ
ーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエ
チレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリ
コールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセト
ン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢
酸エステルなどのケトン類などが挙げられる。これらは
単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用して
もよい。
【0028】シリカオルガノゾルとしては、前記したシ
リカ粒子を有機溶媒に分散させたシリカオルガノゾルま
たは前記したシリカ粒子が水に分散したシリカ水ゾルの
水を有機溶媒で置換したシリカオルガノゾルが用いられ
る。シリカ水ゾルとしては、本願出願人の出願による特
開昭63−45114号公報、特開昭63−64911
号公報に開示したシリカゾルはシリカ粒子径が均一であ
り、安定性に優れているので好適に用いることができ
る。
【0029】なお、本発明ではシリカ水分散ゾルを用い
ることもできるが、シリカオルガノゾルを用いると、プ
ロトン伝導性を有するマトリックス成分中での分散が向
上し、プロトン伝導性に優れた固体高分子電解質膜を得
ることができる。必要に応じて用いるプロトン供与体と
しては前記したと同様のものが用いられる。
【0030】プロトン伝導膜形成用塗料中の有機珪素化
合物および/または有機珪素化合物加水分解物、シリカ
ゾルおよび必要に応じて用いるプロトン供与体の配合割
合は、得られる固体高分子電解質膜中の各成分の含有量
が前記した範囲となるように配合して用いる。プロトン
伝導膜形成用塗料の合計固形分濃度は2〜50重量%、
さらには5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
【0031】プロトン伝導膜形成用塗料の濃度が2重量
%未満の場合は塗布法にもよるが、1回の塗布で所望の
膜厚の固体高分子電解質膜が得られないことがあり、プ
ロトン伝導膜形成用塗料の濃度が50重量%を越えると
塗料の粘度が高くなり塗料化が困難であり、得られたと
しても塗布法が制限されたり、得られる固体高分子電解
質膜の強度が不充分となることがある。
【0032】また本発明で使用される塗料は、脱イオン
処理を行ったり、必要に応じて濃縮あるいは希釈して用
いることもできる。上記したプロトン伝導膜形成用塗料
を用いて固体高分子電解質膜を形成するが、形成方法と
しては、充分な発電性能および膜の強度等を有していれ
ば特に制限はないが、例えば剥離性の良い型枠、例えば
テフロン(R)製の型枠に塗料を充填した後、乾燥、加
熱処理等を施すことによって得ることができる。
【0033】また、後述するガス拡散層および触媒層と
しての機能を有する一対の多孔質電極、つまり燃料極ま
たは酸化剤極基板上にプロトン伝導膜形成用塗料をスプ
レー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法などの方法
で、基板上に塗布した後、乾燥、加熱処理等を施すこと
によっても固体高分子電解質膜を形成することができ
る。
【0034】このようにして得られる固体高分子電解質
膜は、膜厚が0.01〜10mm、さらには0.05〜5
mmの範囲にあることが好ましい。つぎに、本発明に係
る燃料電池について説明する。燃料電池 本発明に係る燃料電池は、上記した固体高分子電解質膜
を使用することを特徴としている。
【0035】具体的には、上記した固体高分子電解質膜
と、この両側に配置される一対のガス拡散電極(燃料極
および酸化極)とから構成され、燃料極と酸化剤極とで
固体高分子電解質膜を狭持するとともに、両極の外側に
燃料室および酸化剤室を構成する溝付きの集電体を配し
たものを単セルとし、このような単セルを、冷却板等を
介して複数層積層することによって構成される。
【0036】ガス拡散電極は、通常、触媒粒子を担持さ
せた導電性材料をPTFEなどの疎水性樹脂結着剤で保
持させた多孔質体シートからなる。また、導電性材料と
PTFEなどの疎水性樹脂結着剤とからなる多孔質体シ
ートの固体高分子電解質膜接触面に触媒粒子層を設けた
ものであってもよい。このようなガス拡散電極の一対
で、固体高分子電解質膜を狭持し、ホットプレスなどの
公知の圧着手段により、圧着される。
【0037】触媒としては、水素の酸化反応および酸素
の還元反応の触媒作用を有するものであれば良く、白
金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、
オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバル
ト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガ
リウム、アルミニウム等の金属またはそれらの合金から
選択することができる。
【0038】導電性材料としては電子伝導性物質であれ
ばよく、例えば炭素材料として公知のファーネスブラッ
ク、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカー
ボンブラックの他、活性炭、黒鉛、また各種金属も使用
可能である。疎水性樹脂結着剤としては、例えばフッ素
を含む各種樹脂が挙げられ、ポリテトラフルオロエチレ
ン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオ
ロアルキルビニルエーテル共重合体、パーフルオロスル
ホン酸等が挙げられる。
【0039】また、固体高分子電解質膜と接する反対の
面に、前記疎水性樹脂結着剤からなるガス拡散層が設け
られていてもよい。触媒の担持量は、触媒層シートを形
成した状態で0.01〜5mg/cm2であり、より好ま
しくは0.1〜1mg/cm2であればよい。
【0040】電気伝導性多孔質材料は、100〜200
0m2/gの比表面積を有していると、充分な透過性を
得る上で好ましい。また、ガス拡散電極の平均細孔直径
は、0.01〜1μmであることが好ましい。本発明に
係る燃料電池では、燃料室に水素を供給し、酸化剤室に
空気(酸素)を供給し、下記電極反応により電気を発生
させる。
【0041】 燃料極(アノード):H2 → 2H+ + 2e- 酸素極(カソード):2H+ + 1/2O2 + 2e-
→ H2
【0042】
【発明の効果】本発明によると、固体高分子電解質膜
が、プロトン導電性を有する有機珪素化合物の加水分解
物マトリックスとシリカ粒子と、必要に応じてプロトン
供与体とからなっているので、膜の強度、プロトン伝導
性、燃料分子の不透過性、熱的安定性、耐久性等に優れ
た固体高分子電解質膜および該固体高分子電解質膜を用
いた発電性能に優れた燃料電池を提供することができ
る。
【0043】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0044】
【実施例1】固体高分子電解質膜(A)の調製 シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SN-50、SiO
2濃度20.6重量%、平均粒子径25nm)をイソプ
ロピルアルコールで溶媒置換して得たシリカオルガノゾ
ル(SiO2濃度20重量%)1.47gにγ−グリシド
キシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)1.1
9gを加え、室温で30分攪拌した。これにプロトン供
与体としてケイタングステン酸26水和物(STA、H
4SiW1240・26H2O)0.15gを添加し、ついで
水2.66gを加えて加水分解し、3時間攪拌して、プ
ロトン伝導膜形成用塗料(A)を調製した。
【0045】プロトン伝導膜形成用塗料(A)を10cm
×10cmのテフロン(R)製枠型に充填し、60℃で
3日間乾燥した後、2×2cm(厚さ0.7mm)で切
り出し、温度150℃、プレス圧力5MPa、30秒間の
条件でホットプレスし、厚さが約0.33mmの固体高
分子電解質膜(A)を得た。膜の形成性の評価 固体高分子電解質膜(A)を目視観察し、以下の基準で評
価し、結果を表に示した。
【0046】 膜の厚さが均一で、表面は平滑でクラックがない : ○ 膜の厚さは均一で、表面にザラツキがあるがクラックがない : △ 膜の厚さが不均一で、クラックが認められる : ×イオン導電性の評価 固体高分子電解質膜(A)を温度80℃、相対湿度(R
H)80%の環境下に置き、インピーダンスアナライザ
ーを用いて周波数を5〜106Hzの範囲で変化させて
測定した。
【0047】単位セル(A)の作成 白金含有量がPtとして40重量%の白金担時カーボン
粒子にエチルアルコールおよび水(50:50)を加え
ペースト状にし、これをテトラフルオロエチレンで撥水
処理したカーボン紙(東レ(株)製)2枚に、各々白金
担持カーボン粒子が0.50mg/cm2になるように
塗布し、100℃で12時間乾燥てしガス拡散電極2枚
を作製した。この2枚の拡散電極を、正極および負極と
し、両極の間に固体高分子電解質膜(A)を挟み、プレス
圧力50MPa、150℃で30秒間ホットプレスし、ガ
ス拡散電極と固体高分子電解質膜(A)とを張り合わせて
単位セル(A)を作製した。
【0048】評価 単位セル(A)とセパレーターを燃料電池単セル評価装
置に組み込み、さらに恒温・恒湿装置の中に入れ、燃料
極に200ml/minの水素ガス、酸化剤極に200
ml/minの空気をガス流入し、常圧、湿度80%、
アノード加湿温度90℃、カソード加湿温度80℃の雰
囲気中で単セルのV-I特性試験(電圧-電流密度の相関
関係)を行った。結果を表1に示す。また、耐熱性試験
として、アノード加湿温度、カソード加湿温度を120
℃に上げてV-I特性試験を行ない、電流密度80mA
/cm2の時の電圧を求めた。
【0049】結果を表1に示す。
【0050】
【実施例2】固体高分子電解質膜(B)の調製 実施例1において、固体高分子電解質膜中のシリカ粒子
の含有量が40重量%となり、プロトン供与体の含有量
が9重量%となるように、シリカオルガノゾル(SiO2
濃度20重量%)3.25g、ケイタングステン酸26
水和物(STA)0.15gを用いた以外は実施例1と
同様にしてプロトン伝導膜形成用塗料(B)を調製し、つ
いで固体高分子電解質膜(B)を得た。
【0051】単位セル(B)の作成 固体高分子電解質膜(B)を用いた以外は実施例1と同様
にして単位セル(B)を作製した。評価 単位セル(B)について、V-I特性試験および耐熱性試験
を行った。
【0052】結果を表1に示した。
【0053】
【実施例3】固体高分子電解質膜(C)の調製 実施例1において、固体高分子電解質膜中のシリカ粒子
の含有量が70重量%となり、プロトン供与体の含有量
が9重量%となるように、シリカオルガノゾル(SiO2
濃度20重量%)5.7g、ケイタングステン酸26水
和物(STA)0.15gを用いた以外は実施例1と同
様にしてプロトン伝導膜形成用塗料(C)を調製し、つい
で固体高分子電解質膜(C)を得た。
【0054】単位セル(C)の作成 固体高分子電解質膜(C)を用いた以外は実施例1と同様
にして単位セル(C)を作製した。評価 単位セル(C)について、V-I特性試験および耐熱性試験
を行い、結果を表1に示した。
【0055】
【実施例4】固体高分子電解質膜(D)の調製 シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SS-100、Si
2濃度20.5重量%、平均粒子径100nm)をイソ
プロピルアルコールで溶媒置換して得たシリカオルガノ
ゾル(SiO2濃度20重量%)18gを用いた以外は実
施例2と同様にしてプロトン伝導膜形成用塗料(D)を調
製し、ついで固体高分子電解質膜(D)を得た。
【0056】単位セル(D)の作成 固体高分子電解質膜(D)を用いた以外は実施例1と同様
にして単位セル(D)を作製した。評価 単位セル(D)について、V-I特性試験および耐熱性試験
を行い、結果を表1に示した。
【0057】
【実施例5】固体高分子電解質膜(E)の調製 シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SN-50、SiO
2濃度20.6重量%、平均粒子径25nm)をイソプ
ロピルアルコールで溶媒置換して得たシリカオルガノゾ
ル(SiO2濃度20重量%)1.47gにγ−グリシド
キシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)、1.
19gを加え、室温で30分攪拌した。これにプロトン
供与体としてモリブドリン酸29水和物(PMA)0.
15gを添加し、ついで水2.66gを加えて加水分解
し、3時間攪拌して、プロトン伝導膜形成用塗料(E)を
調製した。ついで、実施例1と同様にして固体高分子電
解質膜(E)を得た。
【0058】単位セル(E)の作成 固体高分子電解質膜(E)を用いた以外は実施例1と同様
にして単位セル(E)を作製した。評価 単位セル(E)について、V-I特性試験および耐熱性試験
を行い、結果を表1に示した。
【0059】
【実施例6】固体高分子電解質膜(F)の調製 シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SN-50、SiO
2濃度20.6重量%、平均粒子径25nm)をイソプロ
ピルアルコールで溶媒置換して得たシリカオルガノゾル
(SiO2濃度20重量%)1.47gにγ−グリシドキ
シプロピルトリエトキシシラン(GPTES)1.34
gを加え、室温で30分攪拌した。ついで水2.66g
を加えて加水分解し、3時間攪拌して、プロトン伝導膜
形成用塗料(F)を調製した。ついで、実施例1と同様に
して固体高分子電解質膜(F)を得た。
【0060】単位セル(F)の作成 固体高分子電解質膜(F)を用いた以外は実施例1と同様
にして単位セル(F)を作製した。評価 単位セル(F)について、V-I特性試験および耐熱性試験
を行った。
【0061】結果を表1に示した。
【0062】
【比較例1】固体高分子電解質膜(G)の調製 イソプロピルアルコール2.0gにγ−グリシドキシプ
ロピルトリメトキシシラン(GPTMS)1.52gを
加え、室温で30分攪拌した。これにプロトン供与体と
してケイタングステン酸26水和物(STA)0.15
gを添加し、ついで水2.66gを加えて加水分解し、
3時間攪拌して、プロトン伝導膜形成用塗料(G)を調製
した。
【0063】プロトン伝導膜形成用塗料(G)を10cm
×10cmのテフロン(R)製枠型に充填し、60℃で
3日間乾燥した後、2×2cm(厚さ0.7mm)で切
り出し、温度150℃、プレス圧力50Mpa、30秒間
の条件でホットプレスし、厚さ約0.33mmの固体高
分子電解質膜(G)を得た。単位セル(G)の作成 固体高分子電解質膜(G)を用いた以外は実施例1と同様
にして単位セル(G)を作製した。
【0064】評価 単位セル(G)について、V-I特性試験および耐熱性試験
を行った。結果を表1に示した。
【0065】
【比較例2】固体高分子電解質膜(H)の調製 比較例1において、有機ケイ素化合物としてγ−グリシ
ドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)1.
52g用いた以外は同様にしてプロトン伝導膜形成用塗
料(H)を調製し、ついで固体高分子電解質膜(H)を得た。
【0066】単位セル(H)の作成 固体高分子電解質膜(H)を用いた以外は実施例1と同様
にして単位セル(H)を作製した。評価 単位セル(H)について、V-I特性試験および耐熱性試験
を行った。
【0067】結果を表1に示した。
【0068】
【比較例3】固体高分子電解質膜(I)の調製 比較例2において、プロトン供与体として(PMA)
0.15g用いた以外は同様にしてプロトン伝導膜形成
用塗料(I)を調製し、ついで固体高分子電解質膜(I)を得
た。
【0069】単位セル(I)の作成 固体高分子電解質膜(I)を用いた以外は実施例1と同様
にして単位セル(I)を作製した。評価 単位セル(I)について、V-I特性試験および耐熱性試験
を行った。
【0070】結果を表1に示した。
【0071】
【表1】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 城 野 勝 博 福岡県北九州市若松区北湊町13番2号 触 媒化成工業株式会社若松工場内 (72)発明者 小 柳 嗣 雄 福岡県北九州市若松区北湊町13番2号 触 媒化成工業株式会社若松工場内 (72)発明者 永 井 正 幸 神奈川県横浜市緑区竹山4−1−3 11− 207 Fターム(参考) 4F071 AA67 AB26 AH12 FC01 FD05 5H026 AA06 CX05 EE12 HH01 HH05

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の
    加水分解物マトリックスとシリカ粒子とからなり、該シ
    リカ粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、
    固体高分子電解質膜中のシリカ粒子の含有量がSiO2
    して5〜95重量%の範囲にあることを特徴とする固体
    高分子電解質膜。
  2. 【請求項2】前記プロトン伝導性を有する有機珪素化合
    物が、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物から選
    択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記
    載の固体高分子電解質膜。 RnSiX4-n (1) 〔ただし、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化
    水素基であって、互いに同一であっても異なっていても
    よい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール
    基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3〕
  3. 【請求項3】前記置換炭化水素基が酸素を含む開環性官
    能基であることを特徴とする請求項2に記載の固体高分
    子電解質膜。
  4. 【請求項4】さらに、プロトン供与体を含むことを特徴
    とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子電解
    質膜。
  5. 【請求項5】プロトン伝導性を有する有機珪素化合物お
    よび/または有機珪素化合物加水分解物の水および/ま
    たは有機溶媒溶液とシリカオルガノゾルと、必要に応じ
    てプロトン供与体との混合物からなるプロトン伝導膜形
    成用塗料を用いて形成されたことを特徴とする請求項1
    〜4のいずれかに記載の固体高分子電解質膜。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれかに記載の固体高分
    子電解質膜を具備してなることを特徴とする燃料電池。
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