JP2004235125A - 電解質膜、該電解質膜形成用塗料および該電解質膜を用いた燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】100℃以上の高温で長期に使用しても、イオン電導度が低下したり、あるいは電圧が降下したりすることがなく、電池の性能(電圧、電流密度等)を高く維持することが可能な電解質膜、該電解質膜形成用塗料および該電解質膜を用いた燃料電池を提供する。
【解決手段】プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物マトリックスと屈折率が1.20〜1.45の範囲にあるシリカ系粒子とを含み、
該シリカ系粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、
電解質膜中のシリカ系粒子の含有量が酸化物として5〜95重量%の範囲にあることを特徴とする電解質膜。
【選択図】 なし
【解決手段】プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物マトリックスと屈折率が1.20〜1.45の範囲にあるシリカ系粒子とを含み、
該シリカ系粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、
電解質膜中のシリカ系粒子の含有量が酸化物として5〜95重量%の範囲にあることを特徴とする電解質膜。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、新規な電解質膜および該電解質膜形成用塗料および該電解質膜を具備してなる燃料電池に関する。
さらに詳しくは、電解質膜の誘電率を低くすることができるので、電圧保持特性に優れた燃料電池セルの製造に好適に使用可能な電解質膜、該電解質膜形成用塗料および該電解質膜膜を具備してなる燃料電池に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
近年、クリーンな水素をエネルギー源とする高効率、無公害でCO2等温暖化ガスを発生しない発電システムとして燃料電池が注目されている。このような燃料電池は、家庭や事業所など固定設備、自動車などの移動設備などでの使用を目的に本格的な開発研究が行われている。
【0003】
燃料電池は使用する電解質によって分類され、アルカリ電解質型、固体高分子電解質型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型に分けられる。このとき固体高分子電解質型およびリン酸型は電荷移動体がプロトンであり、プロトン型燃料電池ともいわれる。
この燃料電池に用いる燃料としては、天然ガス、LPガス、都市ガス、アルコール、ガソリン、灯油、軽油などの炭化水素系燃料が挙げられる。
【0004】
このような炭化水素系燃料を、まず水蒸気改質、部分酸化などの反応により水素ガス、COガスに変換し、COガスを除去して水素ガスを得る。この水素は、アノードに供給され、アノードの金属触媒によってプロトン(水素イオン)と電子に解離し、電子は回路を通じて仕事をしながらカソードに流れ、プロトン(水素イオン)は電解質膜を拡散してカソードに流れ、カソードで電子と水素イオン供給される酸素とから反応して水となって電解質膜に拡散する。すなわち、酸素と燃料ガスに由来する水素とを供給して水を生成する過程で電流を取り出すメカニズムになっている。
【0005】
電解質膜中のプロトンの移動、すなわち膜のイオン伝導度は膜の含水率に大きく依存し、含水率が低下するに従ってイオン抵抗が著しく大きくなる。このため、常に一定の水分を供給する必要がある。
このような燃料電池に用いられる電解質膜としてはスルホン酸基を有するポリスチレン系の陽イオン交換膜、フルオロカーボンスルホン酸とポリビニリデンフルオライドとの混合膜、フルオロカーボンマトリックスにトリフルオロエチレンをグラフト化した膜、パーフルオロカーボンスルホン酸膜等が用いられている。
【0006】
このような有機樹脂膜では長期運転した場合、あるいは概ね80℃以上の高温になって膜中の含水率が低下したりするとイオン電導度が低下し、電圧が低下してしまうという問題があった。
このため、特開平6−103983号公報(特許文献1)には、高分子膜に保水性能を具備させるために、高分子膜にリン酸基を持つ化合物を含有させることで、80℃あるいはそれ以上の高温で好適に使用可能な固体高分子電解質型燃料電池が提案されている。
【0007】
また、特開2001−143723号公報(特許文献2)には、室温から200℃程度の温度範囲で使用可能な燃料電池用電解質膜として五酸化リンを特定の量比で含む非晶質シリカ成形体からなるものが開示されている。
しかしながら、特許文献1および2に記載の高温で使用可能な電解質をもってしても、100℃以上の高温で長期にわたり使用すると、含水率が低下してイオン伝導度が低下してしまい、その結果、電圧が降下し、電池の性能が低下するという問題があった。
【0008】
さらに、比較的高温での使用に耐える固体高分子電解質膜としてプロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物マトリックスとケイタングステン酸26水和物等のプロトン供与体とからなる無機または無機有機複合の固体高分子電解質膜が知られている。しかしながら、このような固体高分子電解質膜は膜の形成性、膜の強度、膜の伝導度等の点で不充分であったり、燃料の不透過性(クロスオーバー耐性と言うことがある)が不充分であったり、さらに電圧が低下し電流密度が大きく低下する等の多くの問題があった。
【0009】
本発明者等はこのような従来技術に伴う問題点を解消すべく鋭意検討した結果、電解質膜に低屈折率シリカ系粒子を配合することにより、高温運転した場合に、あるいは長期運転した場合にも電圧の低下が抑制されることを見出して本発明を完成するに至った。
【0010】
【特許文献1】
特開平6−103983号公報
【特許文献2】
特開2001−143723号公報
【0011】
【発明の目的】
本発明は、100℃以上の高温で長期に使用しても、イオン電導度が低下したり、あるいは電圧が降下したりすることがなく、電池の性能(電圧、電流密度等)を高く維持することが可能な電解質膜、該電解質膜形成用塗料および該電解質膜を用いた燃料電池を提供することを目的としている。
【0012】
【発明の概要】
本発明に係る電解質膜は、
プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物マトリックスと屈折率が1.20〜1.45の範囲にあるシリカ系粒子とを含み、
該シリカ系粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、
電解質膜中のシリカ系粒子の含有量が酸化物として5〜95重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0013】
前記シリカ系粒子が内部に空洞を有することが好ましい。
前記プロトン伝導性を有する有機珪素化合物としては、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物から選択される1種以上が好ましい。
RnSiX4−n (1)
〔ただし、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素、n:0〜3〕
前記置換炭化水素基が酸素を含む開環性官能基である有機珪素化合物を含むことが好ましい。
【0014】
本発明では、電解質膜は、さらに、プロトン供与体を含んでいてもよい。
本発明に係る電解質膜形成用塗料は、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物および/または有機珪素化合物加水分解物の水および/または有機溶媒溶液とシリカ系粒子有機溶媒分散液と、必要に応じてプロトン供与体との混合物とからなることを特徴としている。また、本発明に係る燃料電池は、前記電解質膜を具備してなることを特徴としている。
【0015】
【発明の具体的説明】
以下、先ず、本発明に係る電解質膜について説明する。
電解質膜
本発明に係る電解質膜は、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物マトリックスと屈折率が1.20〜1.45の範囲にあるシリカ系粒子とからなり、該シリカ系粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、電解質膜中のシリカ系粒子の含有量が酸化物として5〜95重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0016】
マトリックス
本発明の電解質膜に用いるマトリックスは、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物からなっている。このようなマトリックスは有機珪素化合物の加水分解物がシロキサン結合により3次元網目構造をしており、一部結合の末端にOH基が存在し、このOH基によりプロトン導電性を発現することができる。
【0017】
有機ケイ素化合物としては下記式(1)で表される有機ケイ素化合物から選択される1種以上が好ましい。
RnSiX4−n (1)
〔ただし、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、Rが複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素、n:0〜3〕
式(1)で表される有機珪素化合物としては、具体的に、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロルシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン等が挙げられる。
【0018】
これらの中でも、少なくとも1つのRが置換炭化水素基であり、かつ、該置換炭化水素基が酸素を含む開環性官能基である有機珪素化合物を含むことが好ましい。このような有機珪素化合物として、例えばγ−グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0019】
このような酸素を含む開環性官能基を有する有機珪素化合物は酸素を含む置換炭化水素基が開環してOH基を生成するので高いプロトン伝導性を有する電解質膜が得られる。
マトリックスとしては、このような有機珪素化合物の加水分解物が使用される。
【0020】
この加水分解物は、前記した有機ケイ素化合物の有機溶媒溶液に水を加えて、必要に応じて酸またはアルカリを加えて、加水分解して得られる加水分解物であり、部分加水分解物、加水分解・重縮合したものであってもよい。
この加水分解物は、必要に応じて洗浄、熟成等したものが用いられる。
マトリックスとして有機珪素化合物加水分解物を調製する際には、前記した有機ケイ素化合物の有機溶媒溶液に後述するシリカ系粒子の有機溶媒分散ゾルを混合し、これに水を加えて、加水分解して加水分解物とすれば、膜強度や燃料分子の不透過性、プロトン伝導性等に優れた電解質膜を得ることができる。
【0021】
有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。このようなマトリックスは電解質膜中に5〜95重量%、さらには10〜80重量%の範囲にあることが好ましい。
【0022】
シリカ系粒子
つぎに、本発明に用いるシリカ系粒子は屈折率が1.20〜1.45、さらには1.20〜1.40の範囲にあることが好ましい。
このような低屈折率のシリカ系粒子を前記マトリックスに配合することで、高温運転した場合に、あるいは長期運転した場合にも電圧の低下を著しく抑制することができる。その理由については明確ではないものの、低屈折率のシリカ系粒子を配合することによって得られる電解質膜の屈折率が低くなる、すなわち誘電率が低くなり、このことが電圧降下抑制と関連あるものと思料される。
【0023】
なお、シリカ系粒子の屈折率が1.2未満のシリカ系粒子は得ることが困難であり、屈折率が1.45を越えると得られるマトリックスの屈折率と変わらず、得られる電解質膜の電圧降下抑制効果が得られない。
なお、上記したマトリックスの屈折率は、1.45より大きい。1.45より小さいマトリックスは未だ出現していない。
【0024】
シリカ系粒子は、シリカ単独から構成されるものであっても、アルミナ、チタニア、セリア、ジルコニア、酸化ホウ素などとの複合酸化物であってもよい。
また、シリカ系粒子の平均粒子径が5〜500nm、さらには10〜200nmの範囲にあることが好ましい。
シリカ系粒子の平均粒子径が前記範囲にあれば、プロトン伝導度が高く、また膜強度の高い電解質膜を形成することができる。また、このような平均粒子径の範囲にあれば、電解質膜の細孔径が小さいので、水素やメタノール等の燃料分子の不透過性も高くなる。
【0025】
シリカ系粒子の平均粒子径が小さすぎると、得られる電解質膜の伝導度が不充分となることがある。
シリカ系粒子の平均粒子径が大きすぎると、電解質膜の伝導度が不充分となったり、シリカ系粒子の含有量によっては膜の強度が低下することがあり、特に得られる電解質膜の細孔径が大きくなり水素やメタノール等の燃料分子の不透過性が低下することがある。
【0026】
特に、シリカ系粒子としては、多孔質のシリカ系粒子であることが好ましい。多孔質のシリカ粒子の場合、マトリックス成分が細孔を埋めない限り空隙ができ、中空内部に入らないので低屈折率を維持できる。殻が緻密でなく孔があると、マトリックスが内部に入るので屈折率低下への寄与が小さくなる。
このようなシリカ粒子としては、例えば本願出願人の出願による特開平7−133105号公報あるいは特開2001−233611号公報に開示した低屈折率の複合酸化物微粒子あるいはシリカ系微粒子は好適に用いることができる。これらの各粒子は、粒子径分布が均一であり、分散安定性等にも優れているために得られる電解質膜は均一な微細孔を有し、燃料分子の不透過性に優れている。
【0027】
特に、特開2001−233611号公報に開示した低屈折率のシリカ系微粒子は、内部に空洞を有する構造で、殻が緻密であるため、電解質膜の形成の際にシリカ系微粒子は内部の空洞を維持することができ、得られる電解質膜は誘電率が低く、高温で長期に使用しても高い電圧、電流密度を維持することができる。なお、シリカのみからなる粒子、例えば通常のシリカゾルは多孔性がなく、屈折率が1.45未満の低屈折率粒子が得られず、一方、多孔性を有するシリカゲル粒子は粒子径が不均一であるため、電解質膜の強度が低下したり、燃料分子の不透過性が低下することがあり、また、大きな細孔も有しているため細孔をマトリックス成分が埋めることがあり、得られる電解質膜の誘電率の低下が不充分となることがある。
【0028】
特開2001−233611号公報に開示した低屈折率のシリカ系微粒子の製造方法は、具体的には、下記工程(a)〜工程(c)に示す通りである。
(a)珪酸塩の水溶液および/または酸性珪酸液と、アルカリ可溶の無機化合物水溶液とを、pH10以上のアルカリ水溶液または、必要に応じて種粒子が分散したpH10以上のアルカリ水溶液中に同時に添加し、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物をMOXで表したときのモル比MOX/SiO2が0.3〜1.0の範囲にある核粒子分散液を調製する工程
(b)前記核粒子分散液にシリカ源を添加して、核粒子に第1シリカ被覆層を形成する工程
(c)前記分散液に酸を加え、前記核粒子を構成する元素の一部または全部を除去する工程
上記(c)において、核粒子を構成する元素の一部または全部の除去を、核粒子分散液中の核粒子の濃度が酸化物に換算して0.1〜50重量%の範囲で行うことが好ましい。
【0029】
さらに、工程(c)で得られた微粒子分散液に、アルカリ水溶液と、化学式(1)で表される有機珪素化合物および/またはその部分加水分解物とを添加し、該微粒子に第2シリカ被覆層を形成することが好ましい。
RnSiX(4−n) ・・・(1)
〔但し、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基、X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲンまたは水素、n:0〜3の整数〕
さらに、必要に応じて、得られた微粒子分散液を50〜350℃で水熱処理したり、微粒子分散液を乾燥した後、大気圧下または減圧下、400〜1200℃で加熱処理することもできる。
【0030】
このようなシリカ系粒子は電解質膜中にSiO2として5〜95重量%、さらには20〜90重量%の範囲にあることが好ましい。
シリカ系粒子の重量が上記範囲にあれば、高い膜強度を有するとともに、燃料ガス不透過性が高く、またプロトン伝導性や電圧降下抑制効果に優れた電解質膜を得ることができる。
【0031】
電解質膜中のシリカ系粒子の含有量が5重量%未満の場合は、膜の形成性を向上させたり膜の強度を向上させたり、さらに燃料ガス不透過性を向上させる効果が充分得られず、またプロトン伝導性や電圧降下抑制効果が不充分となることがある。
電解質膜中のシリカ系粒子の含有量が95重量%を越えると、マトリックス成分が少なすぎて膜の強度が低下したり、プロトン伝導性が不充分となることがある。
【0032】
電解質膜
本発明に係る電解質膜は、膜厚が0.01〜10mm、さらには0.05〜5mmの範囲にあることが好ましい。
電解質膜の膜厚が0.01mm 未満の場合は、充分な膜の強度が得られず、加工の際にクラックが入ったり、ピンホールが生じることがあり、さらに不透過性が低下することがある。
【0033】
電解質膜の膜厚が10mmを越えると、プロトン伝導性が低下するとともに、充分な膜の強度が得られないことがある。
このような電解質膜には、さらに、必要に応じてプロトン供与体を含んでいてもよい。このようなプロトン供与体としては特に制限はなく従来公知のプロトン供与体を用いることができる。例えば、H3PW12O40・29H2O、H3PMo12O40・29H2O、HUO2PO4・4H2O、HUO2AsO4・4H2O、H4SiW12O40・26H2O、Zr(HPO4) 2・H2O、As(HPO4)2・H2O等が挙げられる。
【0034】
このようなプロトン供与体を含んでいるとプロトン伝導性が向上する。
プロトン供与体を含む場合、電解質膜中の含有量は0より多く60重量%以下、さらには0.0001〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
プロトン供与体の含有量が少ないと、電解質膜中の他の成分、すなわちマトリックス成分およびシリカ系粒子の含有量によってはプロトン伝導性が不充分となることがある。
【0035】
プロトン供与体の含有量が60重量%を越えても、マトリックス成分およびシリカ粒子の含有量によってはプロトン伝導性がさらに向上する効果は得られないことがある。
なお、プロトン供与体を含む場合も、マトリックス成分およびシリカ系粒子の含有量は前記した範囲にあることが望ましい。
【0036】
電解質膜の形成
本発明に係る電解質膜の形成方法としては、上記成分からなる膜を形成できれば特に制限される物ではないが、マトリックスとシリカ系粒子と、有機溶媒と必要に応じてプロトン供与体との混合物からなるプロトン伝導膜形成用塗料を用いて形成されたものであることが好ましい。
【0037】
有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0038】
このような塗料は、マトリックスとシリカ系粒子と有機溶媒とプロトン供与体とを混合すれば調製することができるが、さらに、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の有機溶媒分散液にシリカ系粒子の有機溶媒分散ゾル、および必要に応じてプロトン供与体とを混合し、これに水を加えて、加水分解して得られる加水分解物を用いると膜の強度や燃料分子の不透過性、プロトン伝導性等に優れた電解質膜を得ることができる。
【0039】
なお、本発明ではシリカ系粒子水分散ゾルを用いることもできる。但し、シリカ系粒子の有機溶媒分散ゾルを用いると、プロトン伝導性を有するマトリックス成分中での分散が向上し、プロトン伝導性に優れた電解質膜を得ることができる。
電解質膜形成用塗料の合計固形分濃度(マトリックス、シリカ系粒子、プロトン供与体)は2〜50重量%、さらには5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば均一の膜を一回の塗布で形成することができる。電解質膜形成用塗料の濃度が少ないと、1回の塗布で所望の膜厚の電解質膜が得られないことがあり、電解質膜形成用塗料の濃度が多くても塗料の粘度が高くなり塗料化が困難であり、得られたとしても塗布法が制限されたり、得られる電解質膜の強度が不充分となることがある。
【0040】
また本発明で使用される塗料は、脱イオン処理を行ったり、必要に応じて濃縮あるいは希釈して用いることもできる。
上記した電解質膜形成用塗料を用いて電解質膜を形成する際に、形成方法としては、充分な発電性能および膜の強度等を有していれば特に制限はないが、例えば剥離性の良い型枠、例えばテフロン(R)製の型枠に塗料を充填した後、乾燥、加熱処理等を施すことによって得ることができる。
【0041】
また、後述するガス拡散層および触媒層としての機能を有する一対の多孔質電極、つまり燃料極または酸化剤極基板上に電解質膜形成用塗料をスプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法などの方法で、基板上に塗布した後、乾燥、加熱処理等を施すことによっても得ることができる。
このようにして得られる電解質膜は、膜厚が0.01〜10mm、さらには0.05〜5mmの範囲にあることが好ましい。
【0042】
燃料電池
本発明に係る燃料電池は、上記した電解質膜を具備してなることを特徴としている。
具体的には、上記した電解質膜と、この両側に配置される一対のガス拡散電極(燃料極および酸化剤極)とから構成され、燃料極と酸化剤極とで電解質膜を狭持するとともに、両極の外側に燃料室および酸化室を構成する溝付きの集電体を配したものを単セルとし、このような単セルを、必要に応じて冷却板等を介して複数層積層することによって構成される。
【0043】
ガス拡散電極は、通常、触媒粒子を担持させた導電性材料をPTFEなどの疎水性樹脂結着剤で保持させた多孔質体シートからなる。また、導電性材料とPTFEなどの疎水性樹脂結着剤とからなる多孔質体シートの電解質膜接触面に触媒粒子層を設けたものであってもよい。
このようなガス拡散電極の一対で、電解質膜を狭持し、ホットプレスなどの公知の圧着手段により、圧着される。
【0044】
触媒としては、水素の酸化反応および酸素の還元反応の触媒作用を有するものであれば良く、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属またはそれらの合金から選択することができる。
【0045】
導電性材料としては電子伝導性物質であればよく、例えば炭素材料として公知のファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックの他、活性炭、黒鉛、また各種金属も使用可能である。
疎水性樹脂結着剤としては、例えばフッ素を含む各種樹脂が挙げられ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、パーフルオロスルホン酸等が挙げられる。
【0046】
また、電解質膜と接する反対の面に、前記疎水性樹脂結着剤からなるガス拡散層が設けられていてもよい。
触媒の担持量は、シートを形成した状態で0.01〜5mg/cm2であり、より好ましくは0.1〜1mg/cm2であればよい。
電気伝導性多孔質材料は、比表面積として、100〜2000m2/gで有ることが、充分な透過性を得る上で好ましい。また、ガス拡散電極の平均細孔直径は、0.01〜1μmであることが好ましい。
【0047】
本発明に係る燃料電池では、燃料室に例えば水素などのプロトンを生成可能な物質を流通し、酸化室にプロトンを反応の消費する空気(酸素)などを供給し、下記電極反応により電気を発生させる。
燃料極(アノード):H2 → 2H+ + 2e−
酸化剤極(カソード):2H+ +1/2O2 + 2e− → 2H2O
【0048】
【発明の効果】
本発明によると、電解質膜が、プロトン導電性を有する有機珪素化合物マトリックスとともに、低屈折率の多孔質シリカ系粒子を含んでいるので、膜の強度、プロトン伝導性、燃料分子の不透過性、熱的安定性、耐久性等の他、特に高温で長期運転した場合の電圧維持特性に優れた電解質膜および該電解質膜形成用塗料および該電解質膜を用いた発電性能に優れた燃料電池を提供することができる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
【実施例1】
シリカ系粒子 (A) の調製
平均粒径5nm、SiO2濃度20重量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として1.17重量%の珪酸ナトリウム水溶液9000gとAl2O3として0.83重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のSiO2・Al2O3核粒子分散液を調製した。(工程(a))
この核粒子分散液500gに純水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、珪酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られた珪酸液(SiO2濃度3.5重量%)3,000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b))
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13重量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換して、固形分濃度20重量%の第1シリカ被覆層を形成したシリカ系微粒子(A)の分散液を調製した。(工程(c))
このシリカ系微粒子(A)の第1シリカ被覆層の厚さは2nm、平均粒径は30nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0021、および屈折率は1.31であった。また、内部は中空のシリカ外殻粒子であった。
【0051】
なお、平均粒径は動的光散乱法により測定し、屈折率は標準屈折液としてCARGILL 製のSeriesA、AAを用い、以下の方法で測定した。
粒子の屈折率の測定方法
(1)複合酸化物分散液をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させる。
(2)これを120℃で乾燥し、粉末とする。
(3)屈折率が既知の標準屈折液を2、3滴ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合する。
(4)上記(3)の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液が透明になったときの標準屈折液の屈折率を微粒子の屈折率とする。
【0052】
電解質膜形成用塗料 (A) の調製
上記シリカ系微粒子(A)の分散液をイソプロピルアルコールで溶媒置換して得たシリカ系粒子有機溶媒分散液(固形分濃度20重量%)1.47gにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)1.19gを加え、室温で30分攪拌した。これにプロトン供与体としてケイタングステン酸26水和物(STA)0.15gを添加し、ついで水2.66gを加えて加水分解し、3時間攪拌して、電解質膜形成用塗料(A)を調製した。
【0053】
電解質膜 (A) の調製
電解質膜形成用塗料(A)を10cm×10cmのテフロン(R)製枠型に充填し、60℃で3日間乾燥した後、2×2cm(厚さ0.7mm)で切り出し、温度150℃、プレス圧力5MPa、30秒間の条件でホットプレスし、厚さが約0.33mmの電解質膜(A)を得た。
【0054】
膜の形成性の評価
電解質膜(A)を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表に示した。
膜の厚さが均一で、表面は平滑でクラックがない : ○
膜の厚さは均一で、表面にザラツキがあるがクラックがない : △
膜の厚さが不均一で、クラックが認められる : ×
イオン導電性の評価
電解質膜(A)を温度80℃、相対湿度(RH)80%の環境下に置き、インピーダンスアナライザーを用いて周波数を5〜106Hzの範囲で変化させて測定した。
【0055】
単位セル(A)の作成
白金含有量がPtとして40重量%の白金担持カーボン粒子にエチルアルコールおよび水(50:50)を加えペースト状にし、これをテトラフルオロエチレンで撥水処理したカーボン紙(東レ(株)製)2枚に、各々白金担持カーボン粒子が0.50mg/cm2になるように塗布し、100℃で12時間乾燥してガス拡散電極2枚を作製した。この2枚の拡散電極を、正極および負極とし、両極の間に電解質膜(A)を挟み、プレス圧力50Mpa、150℃で30秒間ホットプレスし、ガス拡散電極と電解質膜(A)とを張り合わせて単位セル(A)を作製した。
【0056】
評価
単位セル(A)とセパレーターを燃料電池単セル評価装置に組み込み、さらに恒温・恒湿装置の中に入れ、燃料極に200ml/minの水素ガス、酸化剤極に200ml/minの空気ガスを流入し、常圧、湿度80%、アノード加湿温度90℃、カソード加湿温度80℃の雰囲気中で単セルのV−I特性試験(電圧−電流密度の相関関係)を行い、電流密度10mA/cm2、40mA/cm2、80/cm2のと基の電圧を測定した。V−1試験は、V=I・Rに基づき、インピーダンスアナライザーを用いて、電圧と電流密度(出力)の関係を測定する。
【0057】
結果を表1に示す。
【0058】
【実施例2】
電解質膜 (B) の調製
実施例1において、電解質膜中のシリカ系粒子(A)の含有量が40重量%となり、プロトン供与体の含有量が9重量%となるように、シリカ系粒子有機溶媒分散液(固形分濃度20重量%)3.25g、ケイタングステン酸26水和物(STA)0.15gを用いた以外は実施例1と同様にして電解質膜形成用塗料(B)を調製し、ついで電解質膜(B)を得た。
【0059】
単位セル (B) の作成
電解質膜(B)を用いた以外は実施例1と同様にして単位セル(B)を作製した。
評価
単位セル(B)について、V−I特性試験および耐熱性試験を行った。
結果を表1に示した。
【0060】
【実施例3】
電解質膜 (C) の調製
実施例1において、電解質膜中のシリカ系粒子(A)の含有量が70重量%となり、プロトン供与体の含有量が9重量%となるように、シリカ系粒子有機溶媒分散液(固形分濃度20重量%)5.7g、ケイタングステン酸26水和物(STA)0.15gを用いた以外は実施例1と同様にして電解質膜形成用塗料(C)を調製し、ついで電解質膜(C)を得た。
【0061】
単位セル (C) の作成
電解質膜(C)を用いた以外は実施例1と同様にして単位セル(C)を作製した。
評価
単位セル(C)について、V−I特性試験および耐熱性試験を行った。
結果を表1に示した。
【0062】
【実施例4】
シリカ系粒子 (B) の調製
実施例1のシリカ系微粒子(A)の調製と同様にして、工程(a)を経て、第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液を得た(工程(b))後、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13重量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。
【0063】
次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al2O3多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。
上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750gおよび28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228重量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。
【0064】
次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(B)の分散液を調製した。
このシリカ系微粒子(B)の第1シリカ被覆層の厚さは2nm、第2シリカ被覆層の厚さは8nm、平均粒径は46nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0019、および屈折率は1.31であった。
【0065】
電解質膜 (D) の調製
上記シリカ系微粒子(B)の分散液をイソプロピルアルコールで溶媒置換して得たシリカ系粒子有機溶媒分散液(固形分濃度20重量%)18gを用いた以外は実施例1と同様にして電解質膜形成用塗料(D)を調製し、ついで電解質膜(D)を得た。
【0066】
単位セル (D) の作成
電解質膜(D)を用いた以外は実施例1と同様にして単位セル(D)を作製した。
評価
単位セル(D)について、V−I特性試験および耐熱性試験を行い、結果を表1に示した。
【0067】
【実施例5】
シリカ系粒子 (C) の調製
実施例4の工程(a) において、SiO2として0.98重量%の珪酸ナトリウム水溶液と、Al2O3として1.02重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液とを使用した以外は実施例4と同様にして、第1シリカ被覆層および第2シリカ被覆層を形成した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(C)の分散液を調製した。
【0068】
このシリカ系微粒子(C)の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、第2シリカ被覆層の厚さは5nm、平均粒径は47nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0017、および屈折率は1.28であった。
電解質膜 (E) の調製
上記シリカ系微粒子(C)の分散液をイソプロピルアルコールで溶媒置換して得たシリカ系粒子有機溶媒分散液(固形分濃度20重量%)を用いた以外は実施例1と同様にして電解質膜形成用塗料(E)を調製し、ついで電解質膜(E)を得た。
【0069】
単位セル (E) の作成
電解質膜(E)を用いた以外は実施例1と同様にして単位セル(E)を作製した。
評価
単位セル(E)について、V−I特性試験および耐熱性試験を行い、結果を表1に示した。
【0070】
【比較例1】
電解質膜 (F) の調製
イソプロピルアルコール2.0gにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)1.52gを加え、室温で30分攪拌した。これにプロトン供与体としてケイタングステン酸26水和物(STA)0.15gを添加し、ついで水2.66gを加えて加水分解し、3時間攪拌して、プロトン伝導膜形成用塗料(F)を調製し、ついで電解質膜(F)を得た。
【0071】
単位セル (F) の作成
電解質膜(F)を用いた以外は実施例1と同様にして単位セル(F)を作製した。
評価
単位セル(F)について、V−I特性試験および耐熱性試験を行い、結果を表1に示した。
【0072】
【比較例2】
電解質膜 (G) の調製
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SN−50、SiO2濃度20.6重量%、平均粒子径25nm、屈折率1.46)をイソプロピルアルコールで溶媒置換して得たシリカオルガノゾル(SiO2濃度20重量%)1.47gにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)1.19gを加え、室温で30分攪拌した。これにプロトン供与体としてケイタングステン酸26水和物(STA)0.15gを添加し、ついで水2.66gを加えて加水分解し、3時間攪拌して、電解質膜形成用塗料(G)を調製し、ついで電解質膜(G)を得た。
【0073】
単位セル (G) の作成
電解質膜(G)を用いた以外は実施例1と同様にして単位セル(G)を作製した。
評価
単位セル(G)について、V−I特性試験および耐熱性試験を行い、結果を表1に示した。
【0074】
【表1】
【発明の技術分野】
本発明は、新規な電解質膜および該電解質膜形成用塗料および該電解質膜を具備してなる燃料電池に関する。
さらに詳しくは、電解質膜の誘電率を低くすることができるので、電圧保持特性に優れた燃料電池セルの製造に好適に使用可能な電解質膜、該電解質膜形成用塗料および該電解質膜膜を具備してなる燃料電池に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
近年、クリーンな水素をエネルギー源とする高効率、無公害でCO2等温暖化ガスを発生しない発電システムとして燃料電池が注目されている。このような燃料電池は、家庭や事業所など固定設備、自動車などの移動設備などでの使用を目的に本格的な開発研究が行われている。
【0003】
燃料電池は使用する電解質によって分類され、アルカリ電解質型、固体高分子電解質型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型に分けられる。このとき固体高分子電解質型およびリン酸型は電荷移動体がプロトンであり、プロトン型燃料電池ともいわれる。
この燃料電池に用いる燃料としては、天然ガス、LPガス、都市ガス、アルコール、ガソリン、灯油、軽油などの炭化水素系燃料が挙げられる。
【0004】
このような炭化水素系燃料を、まず水蒸気改質、部分酸化などの反応により水素ガス、COガスに変換し、COガスを除去して水素ガスを得る。この水素は、アノードに供給され、アノードの金属触媒によってプロトン(水素イオン)と電子に解離し、電子は回路を通じて仕事をしながらカソードに流れ、プロトン(水素イオン)は電解質膜を拡散してカソードに流れ、カソードで電子と水素イオン供給される酸素とから反応して水となって電解質膜に拡散する。すなわち、酸素と燃料ガスに由来する水素とを供給して水を生成する過程で電流を取り出すメカニズムになっている。
【0005】
電解質膜中のプロトンの移動、すなわち膜のイオン伝導度は膜の含水率に大きく依存し、含水率が低下するに従ってイオン抵抗が著しく大きくなる。このため、常に一定の水分を供給する必要がある。
このような燃料電池に用いられる電解質膜としてはスルホン酸基を有するポリスチレン系の陽イオン交換膜、フルオロカーボンスルホン酸とポリビニリデンフルオライドとの混合膜、フルオロカーボンマトリックスにトリフルオロエチレンをグラフト化した膜、パーフルオロカーボンスルホン酸膜等が用いられている。
【0006】
このような有機樹脂膜では長期運転した場合、あるいは概ね80℃以上の高温になって膜中の含水率が低下したりするとイオン電導度が低下し、電圧が低下してしまうという問題があった。
このため、特開平6−103983号公報(特許文献1)には、高分子膜に保水性能を具備させるために、高分子膜にリン酸基を持つ化合物を含有させることで、80℃あるいはそれ以上の高温で好適に使用可能な固体高分子電解質型燃料電池が提案されている。
【0007】
また、特開2001−143723号公報(特許文献2)には、室温から200℃程度の温度範囲で使用可能な燃料電池用電解質膜として五酸化リンを特定の量比で含む非晶質シリカ成形体からなるものが開示されている。
しかしながら、特許文献1および2に記載の高温で使用可能な電解質をもってしても、100℃以上の高温で長期にわたり使用すると、含水率が低下してイオン伝導度が低下してしまい、その結果、電圧が降下し、電池の性能が低下するという問題があった。
【0008】
さらに、比較的高温での使用に耐える固体高分子電解質膜としてプロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物マトリックスとケイタングステン酸26水和物等のプロトン供与体とからなる無機または無機有機複合の固体高分子電解質膜が知られている。しかしながら、このような固体高分子電解質膜は膜の形成性、膜の強度、膜の伝導度等の点で不充分であったり、燃料の不透過性(クロスオーバー耐性と言うことがある)が不充分であったり、さらに電圧が低下し電流密度が大きく低下する等の多くの問題があった。
【0009】
本発明者等はこのような従来技術に伴う問題点を解消すべく鋭意検討した結果、電解質膜に低屈折率シリカ系粒子を配合することにより、高温運転した場合に、あるいは長期運転した場合にも電圧の低下が抑制されることを見出して本発明を完成するに至った。
【0010】
【特許文献1】
特開平6−103983号公報
【特許文献2】
特開2001−143723号公報
【0011】
【発明の目的】
本発明は、100℃以上の高温で長期に使用しても、イオン電導度が低下したり、あるいは電圧が降下したりすることがなく、電池の性能(電圧、電流密度等)を高く維持することが可能な電解質膜、該電解質膜形成用塗料および該電解質膜を用いた燃料電池を提供することを目的としている。
【0012】
【発明の概要】
本発明に係る電解質膜は、
プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物マトリックスと屈折率が1.20〜1.45の範囲にあるシリカ系粒子とを含み、
該シリカ系粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、
電解質膜中のシリカ系粒子の含有量が酸化物として5〜95重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0013】
前記シリカ系粒子が内部に空洞を有することが好ましい。
前記プロトン伝導性を有する有機珪素化合物としては、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物から選択される1種以上が好ましい。
RnSiX4−n (1)
〔ただし、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素、n:0〜3〕
前記置換炭化水素基が酸素を含む開環性官能基である有機珪素化合物を含むことが好ましい。
【0014】
本発明では、電解質膜は、さらに、プロトン供与体を含んでいてもよい。
本発明に係る電解質膜形成用塗料は、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物および/または有機珪素化合物加水分解物の水および/または有機溶媒溶液とシリカ系粒子有機溶媒分散液と、必要に応じてプロトン供与体との混合物とからなることを特徴としている。また、本発明に係る燃料電池は、前記電解質膜を具備してなることを特徴としている。
【0015】
【発明の具体的説明】
以下、先ず、本発明に係る電解質膜について説明する。
電解質膜
本発明に係る電解質膜は、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物マトリックスと屈折率が1.20〜1.45の範囲にあるシリカ系粒子とからなり、該シリカ系粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、電解質膜中のシリカ系粒子の含有量が酸化物として5〜95重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0016】
マトリックス
本発明の電解質膜に用いるマトリックスは、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物からなっている。このようなマトリックスは有機珪素化合物の加水分解物がシロキサン結合により3次元網目構造をしており、一部結合の末端にOH基が存在し、このOH基によりプロトン導電性を発現することができる。
【0017】
有機ケイ素化合物としては下記式(1)で表される有機ケイ素化合物から選択される1種以上が好ましい。
RnSiX4−n (1)
〔ただし、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、Rが複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素、n:0〜3〕
式(1)で表される有機珪素化合物としては、具体的に、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロルシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン等が挙げられる。
【0018】
これらの中でも、少なくとも1つのRが置換炭化水素基であり、かつ、該置換炭化水素基が酸素を含む開環性官能基である有機珪素化合物を含むことが好ましい。このような有機珪素化合物として、例えばγ−グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0019】
このような酸素を含む開環性官能基を有する有機珪素化合物は酸素を含む置換炭化水素基が開環してOH基を生成するので高いプロトン伝導性を有する電解質膜が得られる。
マトリックスとしては、このような有機珪素化合物の加水分解物が使用される。
【0020】
この加水分解物は、前記した有機ケイ素化合物の有機溶媒溶液に水を加えて、必要に応じて酸またはアルカリを加えて、加水分解して得られる加水分解物であり、部分加水分解物、加水分解・重縮合したものであってもよい。
この加水分解物は、必要に応じて洗浄、熟成等したものが用いられる。
マトリックスとして有機珪素化合物加水分解物を調製する際には、前記した有機ケイ素化合物の有機溶媒溶液に後述するシリカ系粒子の有機溶媒分散ゾルを混合し、これに水を加えて、加水分解して加水分解物とすれば、膜強度や燃料分子の不透過性、プロトン伝導性等に優れた電解質膜を得ることができる。
【0021】
有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。このようなマトリックスは電解質膜中に5〜95重量%、さらには10〜80重量%の範囲にあることが好ましい。
【0022】
シリカ系粒子
つぎに、本発明に用いるシリカ系粒子は屈折率が1.20〜1.45、さらには1.20〜1.40の範囲にあることが好ましい。
このような低屈折率のシリカ系粒子を前記マトリックスに配合することで、高温運転した場合に、あるいは長期運転した場合にも電圧の低下を著しく抑制することができる。その理由については明確ではないものの、低屈折率のシリカ系粒子を配合することによって得られる電解質膜の屈折率が低くなる、すなわち誘電率が低くなり、このことが電圧降下抑制と関連あるものと思料される。
【0023】
なお、シリカ系粒子の屈折率が1.2未満のシリカ系粒子は得ることが困難であり、屈折率が1.45を越えると得られるマトリックスの屈折率と変わらず、得られる電解質膜の電圧降下抑制効果が得られない。
なお、上記したマトリックスの屈折率は、1.45より大きい。1.45より小さいマトリックスは未だ出現していない。
【0024】
シリカ系粒子は、シリカ単独から構成されるものであっても、アルミナ、チタニア、セリア、ジルコニア、酸化ホウ素などとの複合酸化物であってもよい。
また、シリカ系粒子の平均粒子径が5〜500nm、さらには10〜200nmの範囲にあることが好ましい。
シリカ系粒子の平均粒子径が前記範囲にあれば、プロトン伝導度が高く、また膜強度の高い電解質膜を形成することができる。また、このような平均粒子径の範囲にあれば、電解質膜の細孔径が小さいので、水素やメタノール等の燃料分子の不透過性も高くなる。
【0025】
シリカ系粒子の平均粒子径が小さすぎると、得られる電解質膜の伝導度が不充分となることがある。
シリカ系粒子の平均粒子径が大きすぎると、電解質膜の伝導度が不充分となったり、シリカ系粒子の含有量によっては膜の強度が低下することがあり、特に得られる電解質膜の細孔径が大きくなり水素やメタノール等の燃料分子の不透過性が低下することがある。
【0026】
特に、シリカ系粒子としては、多孔質のシリカ系粒子であることが好ましい。多孔質のシリカ粒子の場合、マトリックス成分が細孔を埋めない限り空隙ができ、中空内部に入らないので低屈折率を維持できる。殻が緻密でなく孔があると、マトリックスが内部に入るので屈折率低下への寄与が小さくなる。
このようなシリカ粒子としては、例えば本願出願人の出願による特開平7−133105号公報あるいは特開2001−233611号公報に開示した低屈折率の複合酸化物微粒子あるいはシリカ系微粒子は好適に用いることができる。これらの各粒子は、粒子径分布が均一であり、分散安定性等にも優れているために得られる電解質膜は均一な微細孔を有し、燃料分子の不透過性に優れている。
【0027】
特に、特開2001−233611号公報に開示した低屈折率のシリカ系微粒子は、内部に空洞を有する構造で、殻が緻密であるため、電解質膜の形成の際にシリカ系微粒子は内部の空洞を維持することができ、得られる電解質膜は誘電率が低く、高温で長期に使用しても高い電圧、電流密度を維持することができる。なお、シリカのみからなる粒子、例えば通常のシリカゾルは多孔性がなく、屈折率が1.45未満の低屈折率粒子が得られず、一方、多孔性を有するシリカゲル粒子は粒子径が不均一であるため、電解質膜の強度が低下したり、燃料分子の不透過性が低下することがあり、また、大きな細孔も有しているため細孔をマトリックス成分が埋めることがあり、得られる電解質膜の誘電率の低下が不充分となることがある。
【0028】
特開2001−233611号公報に開示した低屈折率のシリカ系微粒子の製造方法は、具体的には、下記工程(a)〜工程(c)に示す通りである。
(a)珪酸塩の水溶液および/または酸性珪酸液と、アルカリ可溶の無機化合物水溶液とを、pH10以上のアルカリ水溶液または、必要に応じて種粒子が分散したpH10以上のアルカリ水溶液中に同時に添加し、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物をMOXで表したときのモル比MOX/SiO2が0.3〜1.0の範囲にある核粒子分散液を調製する工程
(b)前記核粒子分散液にシリカ源を添加して、核粒子に第1シリカ被覆層を形成する工程
(c)前記分散液に酸を加え、前記核粒子を構成する元素の一部または全部を除去する工程
上記(c)において、核粒子を構成する元素の一部または全部の除去を、核粒子分散液中の核粒子の濃度が酸化物に換算して0.1〜50重量%の範囲で行うことが好ましい。
【0029】
さらに、工程(c)で得られた微粒子分散液に、アルカリ水溶液と、化学式(1)で表される有機珪素化合物および/またはその部分加水分解物とを添加し、該微粒子に第2シリカ被覆層を形成することが好ましい。
RnSiX(4−n) ・・・(1)
〔但し、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基、X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲンまたは水素、n:0〜3の整数〕
さらに、必要に応じて、得られた微粒子分散液を50〜350℃で水熱処理したり、微粒子分散液を乾燥した後、大気圧下または減圧下、400〜1200℃で加熱処理することもできる。
【0030】
このようなシリカ系粒子は電解質膜中にSiO2として5〜95重量%、さらには20〜90重量%の範囲にあることが好ましい。
シリカ系粒子の重量が上記範囲にあれば、高い膜強度を有するとともに、燃料ガス不透過性が高く、またプロトン伝導性や電圧降下抑制効果に優れた電解質膜を得ることができる。
【0031】
電解質膜中のシリカ系粒子の含有量が5重量%未満の場合は、膜の形成性を向上させたり膜の強度を向上させたり、さらに燃料ガス不透過性を向上させる効果が充分得られず、またプロトン伝導性や電圧降下抑制効果が不充分となることがある。
電解質膜中のシリカ系粒子の含有量が95重量%を越えると、マトリックス成分が少なすぎて膜の強度が低下したり、プロトン伝導性が不充分となることがある。
【0032】
電解質膜
本発明に係る電解質膜は、膜厚が0.01〜10mm、さらには0.05〜5mmの範囲にあることが好ましい。
電解質膜の膜厚が0.01mm 未満の場合は、充分な膜の強度が得られず、加工の際にクラックが入ったり、ピンホールが生じることがあり、さらに不透過性が低下することがある。
【0033】
電解質膜の膜厚が10mmを越えると、プロトン伝導性が低下するとともに、充分な膜の強度が得られないことがある。
このような電解質膜には、さらに、必要に応じてプロトン供与体を含んでいてもよい。このようなプロトン供与体としては特に制限はなく従来公知のプロトン供与体を用いることができる。例えば、H3PW12O40・29H2O、H3PMo12O40・29H2O、HUO2PO4・4H2O、HUO2AsO4・4H2O、H4SiW12O40・26H2O、Zr(HPO4) 2・H2O、As(HPO4)2・H2O等が挙げられる。
【0034】
このようなプロトン供与体を含んでいるとプロトン伝導性が向上する。
プロトン供与体を含む場合、電解質膜中の含有量は0より多く60重量%以下、さらには0.0001〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
プロトン供与体の含有量が少ないと、電解質膜中の他の成分、すなわちマトリックス成分およびシリカ系粒子の含有量によってはプロトン伝導性が不充分となることがある。
【0035】
プロトン供与体の含有量が60重量%を越えても、マトリックス成分およびシリカ粒子の含有量によってはプロトン伝導性がさらに向上する効果は得られないことがある。
なお、プロトン供与体を含む場合も、マトリックス成分およびシリカ系粒子の含有量は前記した範囲にあることが望ましい。
【0036】
電解質膜の形成
本発明に係る電解質膜の形成方法としては、上記成分からなる膜を形成できれば特に制限される物ではないが、マトリックスとシリカ系粒子と、有機溶媒と必要に応じてプロトン供与体との混合物からなるプロトン伝導膜形成用塗料を用いて形成されたものであることが好ましい。
【0037】
有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0038】
このような塗料は、マトリックスとシリカ系粒子と有機溶媒とプロトン供与体とを混合すれば調製することができるが、さらに、プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の有機溶媒分散液にシリカ系粒子の有機溶媒分散ゾル、および必要に応じてプロトン供与体とを混合し、これに水を加えて、加水分解して得られる加水分解物を用いると膜の強度や燃料分子の不透過性、プロトン伝導性等に優れた電解質膜を得ることができる。
【0039】
なお、本発明ではシリカ系粒子水分散ゾルを用いることもできる。但し、シリカ系粒子の有機溶媒分散ゾルを用いると、プロトン伝導性を有するマトリックス成分中での分散が向上し、プロトン伝導性に優れた電解質膜を得ることができる。
電解質膜形成用塗料の合計固形分濃度(マトリックス、シリカ系粒子、プロトン供与体)は2〜50重量%、さらには5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば均一の膜を一回の塗布で形成することができる。電解質膜形成用塗料の濃度が少ないと、1回の塗布で所望の膜厚の電解質膜が得られないことがあり、電解質膜形成用塗料の濃度が多くても塗料の粘度が高くなり塗料化が困難であり、得られたとしても塗布法が制限されたり、得られる電解質膜の強度が不充分となることがある。
【0040】
また本発明で使用される塗料は、脱イオン処理を行ったり、必要に応じて濃縮あるいは希釈して用いることもできる。
上記した電解質膜形成用塗料を用いて電解質膜を形成する際に、形成方法としては、充分な発電性能および膜の強度等を有していれば特に制限はないが、例えば剥離性の良い型枠、例えばテフロン(R)製の型枠に塗料を充填した後、乾燥、加熱処理等を施すことによって得ることができる。
【0041】
また、後述するガス拡散層および触媒層としての機能を有する一対の多孔質電極、つまり燃料極または酸化剤極基板上に電解質膜形成用塗料をスプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法などの方法で、基板上に塗布した後、乾燥、加熱処理等を施すことによっても得ることができる。
このようにして得られる電解質膜は、膜厚が0.01〜10mm、さらには0.05〜5mmの範囲にあることが好ましい。
【0042】
燃料電池
本発明に係る燃料電池は、上記した電解質膜を具備してなることを特徴としている。
具体的には、上記した電解質膜と、この両側に配置される一対のガス拡散電極(燃料極および酸化剤極)とから構成され、燃料極と酸化剤極とで電解質膜を狭持するとともに、両極の外側に燃料室および酸化室を構成する溝付きの集電体を配したものを単セルとし、このような単セルを、必要に応じて冷却板等を介して複数層積層することによって構成される。
【0043】
ガス拡散電極は、通常、触媒粒子を担持させた導電性材料をPTFEなどの疎水性樹脂結着剤で保持させた多孔質体シートからなる。また、導電性材料とPTFEなどの疎水性樹脂結着剤とからなる多孔質体シートの電解質膜接触面に触媒粒子層を設けたものであってもよい。
このようなガス拡散電極の一対で、電解質膜を狭持し、ホットプレスなどの公知の圧着手段により、圧着される。
【0044】
触媒としては、水素の酸化反応および酸素の還元反応の触媒作用を有するものであれば良く、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属またはそれらの合金から選択することができる。
【0045】
導電性材料としては電子伝導性物質であればよく、例えば炭素材料として公知のファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックの他、活性炭、黒鉛、また各種金属も使用可能である。
疎水性樹脂結着剤としては、例えばフッ素を含む各種樹脂が挙げられ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、パーフルオロスルホン酸等が挙げられる。
【0046】
また、電解質膜と接する反対の面に、前記疎水性樹脂結着剤からなるガス拡散層が設けられていてもよい。
触媒の担持量は、シートを形成した状態で0.01〜5mg/cm2であり、より好ましくは0.1〜1mg/cm2であればよい。
電気伝導性多孔質材料は、比表面積として、100〜2000m2/gで有ることが、充分な透過性を得る上で好ましい。また、ガス拡散電極の平均細孔直径は、0.01〜1μmであることが好ましい。
【0047】
本発明に係る燃料電池では、燃料室に例えば水素などのプロトンを生成可能な物質を流通し、酸化室にプロトンを反応の消費する空気(酸素)などを供給し、下記電極反応により電気を発生させる。
燃料極(アノード):H2 → 2H+ + 2e−
酸化剤極(カソード):2H+ +1/2O2 + 2e− → 2H2O
【0048】
【発明の効果】
本発明によると、電解質膜が、プロトン導電性を有する有機珪素化合物マトリックスとともに、低屈折率の多孔質シリカ系粒子を含んでいるので、膜の強度、プロトン伝導性、燃料分子の不透過性、熱的安定性、耐久性等の他、特に高温で長期運転した場合の電圧維持特性に優れた電解質膜および該電解質膜形成用塗料および該電解質膜を用いた発電性能に優れた燃料電池を提供することができる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
【実施例1】
シリカ系粒子 (A) の調製
平均粒径5nm、SiO2濃度20重量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として1.17重量%の珪酸ナトリウム水溶液9000gとAl2O3として0.83重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のSiO2・Al2O3核粒子分散液を調製した。(工程(a))
この核粒子分散液500gに純水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、珪酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られた珪酸液(SiO2濃度3.5重量%)3,000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b))
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13重量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換して、固形分濃度20重量%の第1シリカ被覆層を形成したシリカ系微粒子(A)の分散液を調製した。(工程(c))
このシリカ系微粒子(A)の第1シリカ被覆層の厚さは2nm、平均粒径は30nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0021、および屈折率は1.31であった。また、内部は中空のシリカ外殻粒子であった。
【0051】
なお、平均粒径は動的光散乱法により測定し、屈折率は標準屈折液としてCARGILL 製のSeriesA、AAを用い、以下の方法で測定した。
粒子の屈折率の測定方法
(1)複合酸化物分散液をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させる。
(2)これを120℃で乾燥し、粉末とする。
(3)屈折率が既知の標準屈折液を2、3滴ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合する。
(4)上記(3)の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液が透明になったときの標準屈折液の屈折率を微粒子の屈折率とする。
【0052】
電解質膜形成用塗料 (A) の調製
上記シリカ系微粒子(A)の分散液をイソプロピルアルコールで溶媒置換して得たシリカ系粒子有機溶媒分散液(固形分濃度20重量%)1.47gにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)1.19gを加え、室温で30分攪拌した。これにプロトン供与体としてケイタングステン酸26水和物(STA)0.15gを添加し、ついで水2.66gを加えて加水分解し、3時間攪拌して、電解質膜形成用塗料(A)を調製した。
【0053】
電解質膜 (A) の調製
電解質膜形成用塗料(A)を10cm×10cmのテフロン(R)製枠型に充填し、60℃で3日間乾燥した後、2×2cm(厚さ0.7mm)で切り出し、温度150℃、プレス圧力5MPa、30秒間の条件でホットプレスし、厚さが約0.33mmの電解質膜(A)を得た。
【0054】
膜の形成性の評価
電解質膜(A)を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表に示した。
膜の厚さが均一で、表面は平滑でクラックがない : ○
膜の厚さは均一で、表面にザラツキがあるがクラックがない : △
膜の厚さが不均一で、クラックが認められる : ×
イオン導電性の評価
電解質膜(A)を温度80℃、相対湿度(RH)80%の環境下に置き、インピーダンスアナライザーを用いて周波数を5〜106Hzの範囲で変化させて測定した。
【0055】
単位セル(A)の作成
白金含有量がPtとして40重量%の白金担持カーボン粒子にエチルアルコールおよび水(50:50)を加えペースト状にし、これをテトラフルオロエチレンで撥水処理したカーボン紙(東レ(株)製)2枚に、各々白金担持カーボン粒子が0.50mg/cm2になるように塗布し、100℃で12時間乾燥してガス拡散電極2枚を作製した。この2枚の拡散電極を、正極および負極とし、両極の間に電解質膜(A)を挟み、プレス圧力50Mpa、150℃で30秒間ホットプレスし、ガス拡散電極と電解質膜(A)とを張り合わせて単位セル(A)を作製した。
【0056】
評価
単位セル(A)とセパレーターを燃料電池単セル評価装置に組み込み、さらに恒温・恒湿装置の中に入れ、燃料極に200ml/minの水素ガス、酸化剤極に200ml/minの空気ガスを流入し、常圧、湿度80%、アノード加湿温度90℃、カソード加湿温度80℃の雰囲気中で単セルのV−I特性試験(電圧−電流密度の相関関係)を行い、電流密度10mA/cm2、40mA/cm2、80/cm2のと基の電圧を測定した。V−1試験は、V=I・Rに基づき、インピーダンスアナライザーを用いて、電圧と電流密度(出力)の関係を測定する。
【0057】
結果を表1に示す。
【0058】
【実施例2】
電解質膜 (B) の調製
実施例1において、電解質膜中のシリカ系粒子(A)の含有量が40重量%となり、プロトン供与体の含有量が9重量%となるように、シリカ系粒子有機溶媒分散液(固形分濃度20重量%)3.25g、ケイタングステン酸26水和物(STA)0.15gを用いた以外は実施例1と同様にして電解質膜形成用塗料(B)を調製し、ついで電解質膜(B)を得た。
【0059】
単位セル (B) の作成
電解質膜(B)を用いた以外は実施例1と同様にして単位セル(B)を作製した。
評価
単位セル(B)について、V−I特性試験および耐熱性試験を行った。
結果を表1に示した。
【0060】
【実施例3】
電解質膜 (C) の調製
実施例1において、電解質膜中のシリカ系粒子(A)の含有量が70重量%となり、プロトン供与体の含有量が9重量%となるように、シリカ系粒子有機溶媒分散液(固形分濃度20重量%)5.7g、ケイタングステン酸26水和物(STA)0.15gを用いた以外は実施例1と同様にして電解質膜形成用塗料(C)を調製し、ついで電解質膜(C)を得た。
【0061】
単位セル (C) の作成
電解質膜(C)を用いた以外は実施例1と同様にして単位セル(C)を作製した。
評価
単位セル(C)について、V−I特性試験および耐熱性試験を行った。
結果を表1に示した。
【0062】
【実施例4】
シリカ系粒子 (B) の調製
実施例1のシリカ系微粒子(A)の調製と同様にして、工程(a)を経て、第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液を得た(工程(b))後、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13重量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。
【0063】
次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al2O3多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。
上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750gおよび28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228重量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。
【0064】
次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(B)の分散液を調製した。
このシリカ系微粒子(B)の第1シリカ被覆層の厚さは2nm、第2シリカ被覆層の厚さは8nm、平均粒径は46nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0019、および屈折率は1.31であった。
【0065】
電解質膜 (D) の調製
上記シリカ系微粒子(B)の分散液をイソプロピルアルコールで溶媒置換して得たシリカ系粒子有機溶媒分散液(固形分濃度20重量%)18gを用いた以外は実施例1と同様にして電解質膜形成用塗料(D)を調製し、ついで電解質膜(D)を得た。
【0066】
単位セル (D) の作成
電解質膜(D)を用いた以外は実施例1と同様にして単位セル(D)を作製した。
評価
単位セル(D)について、V−I特性試験および耐熱性試験を行い、結果を表1に示した。
【0067】
【実施例5】
シリカ系粒子 (C) の調製
実施例4の工程(a) において、SiO2として0.98重量%の珪酸ナトリウム水溶液と、Al2O3として1.02重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液とを使用した以外は実施例4と同様にして、第1シリカ被覆層および第2シリカ被覆層を形成した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子(C)の分散液を調製した。
【0068】
このシリカ系微粒子(C)の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、第2シリカ被覆層の厚さは5nm、平均粒径は47nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0017、および屈折率は1.28であった。
電解質膜 (E) の調製
上記シリカ系微粒子(C)の分散液をイソプロピルアルコールで溶媒置換して得たシリカ系粒子有機溶媒分散液(固形分濃度20重量%)を用いた以外は実施例1と同様にして電解質膜形成用塗料(E)を調製し、ついで電解質膜(E)を得た。
【0069】
単位セル (E) の作成
電解質膜(E)を用いた以外は実施例1と同様にして単位セル(E)を作製した。
評価
単位セル(E)について、V−I特性試験および耐熱性試験を行い、結果を表1に示した。
【0070】
【比較例1】
電解質膜 (F) の調製
イソプロピルアルコール2.0gにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)1.52gを加え、室温で30分攪拌した。これにプロトン供与体としてケイタングステン酸26水和物(STA)0.15gを添加し、ついで水2.66gを加えて加水分解し、3時間攪拌して、プロトン伝導膜形成用塗料(F)を調製し、ついで電解質膜(F)を得た。
【0071】
単位セル (F) の作成
電解質膜(F)を用いた以外は実施例1と同様にして単位セル(F)を作製した。
評価
単位セル(F)について、V−I特性試験および耐熱性試験を行い、結果を表1に示した。
【0072】
【比較例2】
電解質膜 (G) の調製
シリカゾル(触媒化成工業(株)製:SN−50、SiO2濃度20.6重量%、平均粒子径25nm、屈折率1.46)をイソプロピルアルコールで溶媒置換して得たシリカオルガノゾル(SiO2濃度20重量%)1.47gにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)1.19gを加え、室温で30分攪拌した。これにプロトン供与体としてケイタングステン酸26水和物(STA)0.15gを添加し、ついで水2.66gを加えて加水分解し、3時間攪拌して、電解質膜形成用塗料(G)を調製し、ついで電解質膜(G)を得た。
【0073】
単位セル (G) の作成
電解質膜(G)を用いた以外は実施例1と同様にして単位セル(G)を作製した。
評価
単位セル(G)について、V−I特性試験および耐熱性試験を行い、結果を表1に示した。
【0074】
【表1】
Claims (7)
- プロトン伝導性を有する有機珪素化合物の加水分解物マトリックスと屈折率が1.20〜1.45の範囲にあるシリカ系粒子とを含み、
該シリカ系粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、
電解質膜中のシリカ系粒子の含有量が酸化物として5〜95重量%の範囲にあることを特徴とする電解質膜。 - 前記シリカ系粒子が内部に空洞を有することを特徴とする請求項1に記載の電解質膜。
- 前記プロトン伝導性を有する有機珪素化合物が、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電解質膜。
RnSiX4−n (1)
〔ただし、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素、n:0〜3〕 - 前記置換炭化水素基が酸素を含む開環性官能基である有機珪素化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電解質膜。
- さらに、プロトン供与体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電解質膜。
- プロトン伝導性を有する有機珪素化合物および/または有機珪素化合物加水分解物の水および/または有機溶媒溶液とシリカ系粒子有機溶媒分散液と、必要に応じてプロトン供与体との混合物とからなる電解質膜形成用塗料。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の電解質膜を具備してなることを特徴とする燃料電池。
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Family Applications (1)
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
2003
- 2003-02-03 JP JP2003025621A patent/JP2004235125A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009076399A (ja) * | 2007-09-21 | 2009-04-09 | National Univ Corp Shizuoka Univ | プロトン伝導性材料、及びその製造方法 |
JP4485558B2 (ja) * | 2007-09-21 | 2010-06-23 | 国立大学法人静岡大学 | プロトン伝導性材料、及びその製造方法 |
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CN114335695B (zh) * | 2021-12-24 | 2023-09-26 | 上海工程技术大学 | 原位生成二氧化硅复合固态聚合物电解质及其在锂电池中的应用 |
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