JP4394906B2 - 燃料電池用電極、その製造方法およびこれを用いた燃料電池 - Google Patents

燃料電池用電極、その製造方法およびこれを用いた燃料電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池用電極、その製造方法及びそれを用いた燃料電池に係り、特に、高効率で、耐熱性、耐久性、寸法安定性、及び燃料バリア性に優れた燃料電池用電極に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、発電効率が高くかつ環境特性に優れているため、近年、社会的に大きな課題となっている環境問題やエネルギー問題の解決に貢献できる次世代の発電装置として注目されている。
燃料電池は、一般に電解質の種類によりいくつかのタイプに分類されるが、この中でも固体高分子形燃料電池(以下、PEFCと略称する場合がある)は、他のいずれのタイプに比べても小型かつ高出力であり、小規模オンサイト型、例えば、車輌のパワーソースなどの移動体用、携帯用等の電源として次世代の主力とされている。
【0003】
PEFCは、原理的に優れた長所を有しており、実用化に向けた開発が盛んに行われている。このPEFCでは、燃料として通常、水素が用いられる。水素は、PEFCのアノード(燃料極)側に設置された触媒によりプロトン(水素イオン)と電子に分解される。このうち、電子は、外部に供給され、電気として使用され、PEFCのカソード(空気極)側へと循環される。一方、プロトンはプロトン伝導性膜を備えた電解質に供給され、プロトン伝導性膜を通じてカソード側へと移動する。カソード側では、プロトン、循環されてきた電子、および外部から導入される酸素が触媒により結合され、水が生じる。すなわち、PEFC単体で見れば、PEFCは、水素と酸素から水を作る際に電気を取り出す非常にクリーンなエネルギー源である。
【0004】
ここで、アノードで生じたプロトンはプロトン伝導性膜によって、カソード側に伝導せしめられる。上記の通り、このプロトンの移動は、電子の流れと協奏的に起こるものである。すなわち、PEFCにおいて、高い出力すなわち高い電流密度を得るためには、プロトン伝導を十分な量、高速に行う必要がある。
【0005】
そして電極反応を活性化させるためには、プロトン及び電子を伝導し易い電極構造と、電極反応を高めるための触媒が大きな役割をもつ。触媒としては、白金、パラジウムなどの高コストの金属が用いられるため、触媒を反応に有効に活用する必要がある。
【0006】
燃料電池セルを構成する電極には、電解質を介して対極と向かいあう面とは反対側いわゆる背面側から反応ガスを供給する構造のいわゆるガス拡散電極構造が使用される。このガス拡散電極は、例えば、導電性カーボンブラック粒子と撥水兼結着剤としてのフッ素系樹脂粒子の混合層を反応層にするものである。反応性ガスは、反応層内の撥水性を持つ部分の隙間を縫って供給され、反応層に入り込んだ電解質に接している白金等の触媒表面で反応して電子の授受を行う。
【0007】
電子は触媒担体であるカーボンブラック粒子(導電性多孔質粒子)、およびガス集電体層をとおって外部回路とつながり電流となる。
従って、カソードおよびアノードでは、導電性多孔質表面に金属触媒を析出させた電極を用い、電極反応の活性化を図るように構成される。
【0008】
現在、PEFCにおいて使用されている燃料電池用電極としては、例えば、導電性多孔質層と、この導電性多孔質層の表面に設けられた高分子電解質層と、この高分子電解質層および導電性多孔質層の境界に配置された金属触媒とを備え、金属触媒を、金属触媒を含む陽イオンを還元することにより形成したものがある(特許文献1参照)。ここで導電性多孔質層としては、カーボンブラック粒子からなるカーボン成形体、撥水性を付与するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂をバインダとして用いたものなどが用いられている。
【0009】
この構造では、陽イオン交換樹脂の陽イオンを、金属触媒イオンを含む陽イオンに置換し、その金属触媒イオンを還元して導電性多孔質層の表面に金属触媒を析出せしめることにより、余分な触媒を用いる必要がなくなり、コストを低下させることができる。
また、陽イオン交換樹脂を含む溶液を導電性多孔質層の表面に塗布し、この導電性多孔質層表面の陽イオンを、金属触媒イオンを含むイオンに置換した後、この金属触媒イオンを持つイオン交換樹脂を還元させて導電性多孔質の表面に金属粒子を析出させる方法もある(特許文献2参照)。
【0010】
また表面に触媒粒子を担持させた触媒担持粒子とイオン伝導性ポリマーとを混合したシートを金属触媒イオンを含む溶液で処理し、金属触媒イオンをイオン伝導性ポリマーにイオン置換するとともに金属触媒イオンを還元する方法もある(特許文献3参照)。
【0011】
これらの電極においては、いずれも、ナフィオン(Nafion(登録商標)(デュポン:Du Pont社)、フレミオン(Flemion(登録商標)(旭硝子(株)社))膜、アシプレックス(Aciplex(登録商標)膜(旭化成工業(株)社、等の樹脂材料が用いられている(特許文献1参照)。
【0012】
フッ素系樹脂膜は、燃料電池が使用される湿潤状態下において、130℃近辺にガラス転移温度(Tg)を有しているといわれ、この温度近辺より、いわゆるクリープ現象が起こり、その結果、膜中のプロトン伝導構造が変化し、安定的なプロトン伝導性能が発揮できず、さらには膜が膨潤形態に変成し、ゼリー状となって非常に破損しやすくなり、燃料電池の故障につながることがある。
【0013】
以上のような理由により、現在使用されている燃料電池用電極の安定的に長期使用可能な最高温度は通常80℃とされている。
燃料電池は、その原理において化学反応を用いているため、高温で作動させる方が、エネルギー効率が高くなる。すなわち、同じ出力を考えれば、高温で作動可能な装置の方が、より小型で軽量化をはかることができる。また、高温で作動させると、その排熱をも利用することができるため、いわゆるコジェネレーション(熱電併給)が可能となり、トータルエネルギー効率は飛躍的に向上する。従って、燃料電池の作動温度は、ある程度高い方がよいとされ、通常、100℃以上、特に120℃以上が好ましいとされている。
【0014】
また、供給される水素が十分に精製されていない場合、アノード側に使用されている触媒が、燃料の不純物(例えば一酸化炭素)により活性を失う、いわゆる触媒被毒といわれる現象を引き起こす場合があり、PEFCの寿命を左右する大きな課題となっている。この触媒被毒に関しても、高温で燃料電池を作動させることができれば回避できることが知られており、この点からも燃料電池は、より高温で作動させることが好ましいといえる。さらに、より高温での作動が可能となると、触媒自体も従来使用されている白金などの貴金属の純品を使用する必要がなく、種々の金属との合金等を使用することが可能となり、コストの面、あるいは資源の面からも非常に有利である。
【0015】
上述したような課題は、水素を燃料として用いる燃料電池のみならず、DMFC等の水素以外の燃料を直接用いる直接燃料型燃料電池でも、現在、燃料から効率よくプロトンと電子を抽出する種々の検討が行われているが、十分な出力を得るためには、触媒が有効に働く高温での作動が技術的な課題であるとされている。
【0016】
このように、PEFCは、種々の面からより高温で作動させることが好ましいとされているにもかかわらず、プロトン伝導性あるいは燃料電池用電極の耐熱性が前述の通り80℃までであるため、作動温度も80℃までに規制されているのが現状である。
【0017】
ところで、燃料電池作動中に起こる反応は、発熱反応であり、作動させると、PEFC内の温度は自発的に上昇する。しかしながら、現在用いられている代表的な燃料電池用電極であるNafion(登録商標)を使用したものは、80℃程度までの耐熱性しか有しないため、80℃以上にならないようにPEFCを冷却する必要がある。冷却は、通常水冷方式がとられ、PEFCのセパレータ部分にこのような冷却の工夫が入れられる。このような冷却手段をとると、PEFCが装置全体として大きく、重くなり、PEFCの本来の特徴である小型、軽量という特徴を十分に生かすことができない。
【0018】
特に、作動限界温度が80℃とすると、冷却手段として最も簡易な水冷方式では、効果的な冷却が困難である。100℃以上の作動が可能であれば、水の蒸発熱として効果的に冷却することができ、更に水を還流させることにより、冷却時に用いる水の量を劇的に低減できるため、装置の小型化、軽量化が達成できる。特に、車輌のエネルギー源として用いる場合には、80℃で温度制御する場合と、100℃以上で温度制御する場合とを比較すれば、ラジエータ、冷却水の容量が大きく低減できることから、100℃以上で作動可能なPEFC、すなわち100℃以上の耐熱性をもつ電極材料が強く望まれている。
【0019】
以上のように、コスト・資源、発電効率、コジェネレーション効率、冷却効率など、種々の面でPEFCの高温作動、すなわち電極やプロトン伝導性膜の高温耐熱性が望まれているにもかかわらず、十分に金属触媒を活用し、十分な耐熱性と反応性を併せ持つ燃料電池用電極は存在していない。
【0020】
【特許文献1】
特許第3049267号公報、請求項1[0014][0015]
【特許文献2】
特許第3395356号公報
【特許文献3】
特開2002−373665号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、本発明は、電極反応に有効に寄与する部分に(選択的に)金属触媒を析出させ、金属触媒の利用効率を高め、高温でも長期にわたって安定的に作動する燃料電池用電極、その製造方法およびこれを用いた燃料電池を提供することを目的とする。
また、低コストで、耐熱性および寸法安定性の高い燃料電池用電極を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、ケイ素−酸素架橋構造からなる粒子を有し、かつ当該粒子の表面に酸基が導入され、更に当該粒子が連続体を形成した構造体の粒子の表面に金属触媒を含む金属粒子を析出させ、当該粒子表面の酸基の、酸化還元反応が促進されるとともにプロトン伝導性と電子伝導性と耐熱性を両立することを発見し、これに着目してなされたものである。
【0023】
すなわち、本発明の燃料電池用電極は、導電性多孔質体と、少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素結合を含む架橋構造体と、前記架橋構造体の表面に析出せしめられた金属粒子とを含むことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の燃料電池用電極は、連続粒子状体を構成する骨格をもち、ひとつひとつが粒子状である架橋構造体を用いており、この粒子の表面に金属粒子が析出していることから、反応に寄与する表面積が大きくかつ金属粒子が分散し、かつ微粒子自体も大きく成長することなく径の小さい状態で存在するため、反応に寄与する表面積を大きくとることができ、高効率化をはかることができるとともに、粒子構造であるため極めて強固である。
【0025】
また、この金属粒子は、原料となるイオンが架橋構造体の表面に存在する酸基とイオン的に結合した状態から還元され、粒子の表面に析出するため、酸基ときわめて近接した位置に析出することになり、電極反応の活性化をはかることができる。また、粒子が金属−酸素結合を含む架橋構造をもち、連続体を形成しているため、強い酸性条件下で高温にさらされる場合にも長時間の安定性を得ることができ、耐熱性、耐久性および寸法安定性を得ることができる。
【0026】
また本発明の電極は、架橋基の数を選択することにより、適切な架橋密度となるようにすることにより、湿潤状態であっても、非膨潤状態であっても膜の寸法に大きな寸法変化がないようにすることができる。従って、燃料電池作動時にも作動状態変化による燃料電池内部の温湿度変化に応じて電極構成材料が伸びたり縮んだりすることがないため、膜の破断や膜−電極接合体(以下、MEAと略称する場合がある)の破壊が生じたりすることがない。
【0027】
また、本発明の燃料電池用電極の製造方法は、導電性多孔質体と、少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素結合を含む架橋構造体との混合物を形成する第1の工程と、前記酸基のプロトンを金属触媒のイオンを含む少なくとも一種類の陽イオンに置換する第2の工程と、前記金属イオンを還元して前記架橋構造体中に金属粒子を析出させ、金属触媒を含む金属粒子を担持した架橋構造体を形成する第3の工程とを含む。
例えば、メルカプト基を有し、かつ、メルカプト基と共有結合した縮合反応可能な加水分解性シリル基と、及び/又はシラノール基を有するメルカプト基含有化合物(D)とを含有する混合物を調製し、この混合物に含まれる加水分解性シリル基を加水分解及び縮合、及び/又はシラノール基を縮合させることにより、前記ケイ素−酸素架橋構造を含む粒子の連続体を形成し、これに導電性多孔質体を混合し混合物を作成し、成膜する第1の工程と、前記メルカプト基前記メルカプト基を酸化してスルホン酸基とし、前記粒子の表面にスルホン酸基を導入する工程と、前記スルホン酸基のプロトンを金属触媒のイオンを含む少なくとも1種類以上の陽イオンに置換させる第2の工程と、この後、この金属イオンを還元して金属粒子を作成する第3の工程とを含む。
【0028】
この方法では、特に第1の工程における架橋剤などの添加量を調整することにより、得られる膜の架橋度、粒子径、粒子の間隙などを制御することができ、これにより、この粒子に析出する金属粒子の活性度をはじめ、膜強度、可撓性の度合いなど含めて膜特性を良好に制御することが可能となる。
【0029】
また、本発明の燃料電池は、上記の燃料電池用電極をカソード(正極:空気極)およびまたはアノード(負極:燃料極)とし、これらの間に電解質を挟むことによって構成される。
【0030】
すなわち、本発明は、導電性多孔質体と、その導電性多孔質体に接して形成され、少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素結合を含む架橋構造体と、前記酸基の近傍に析出された金属触媒を含む金属粒子とを有し、前記架橋構造体が、下式(1)で表される酸基含有架橋構造体を含むことを特徴とする。
【化4】
Figure 0004394906
(式中、Xは架橋に関与する−O−結合又はOH基であり、R は炭素数20以下の炭化水素基を表し、R はメチル、エチル、プロピル又はフェニル基のいずれかの基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1のとき、R は異なる置換基の混合体でも良い。)
【0031】
また、本発明は、上記燃料電池用電極において、前記金属粒子が、少なくとも前記架橋構造体と導電性多孔質体の接する部分に位置する酸基の近傍に析出されていることを特徴とする。
【0032】
また、本発明は、上記燃料電池用電極において、前記架橋構造体が粒子の連続体を形成すると共に、前記粒子の表面には前記金属粒子が析出せしめられ、前記粒子の間隙にプロトン伝導路が形成されることを特徴とする。
【0033】
また、本発明は、上記燃料電池用電極において、前記金属-酸素結合は、ケイ素−酸素結合を含むことを特徴とする。
【0034】
また、本発明は、上記燃料電池用電極において、前記酸基が、スルホン酸基である。
【0035】
また、本発明は、上記燃料電池用電極において、前記架橋構造体は、ゾルゲル反応により形成された構造体であることを特徴とする。
【0037】
また、本発明は、上記燃料電池用電極において、前記架橋構造体が、下式(2)で表される架橋構造体を含む。
【化5】
Figure 0004394906
(式中、Xは架橋に関与する−O−結合又はOH基であり、R3は炭素数20以下のアルキル基を表し、nは2〜4の整数を表す。)
【0038】
また、本発明は、上記燃料電池用電極において、前記架橋構造体が、下式(3)で表される架橋構造体を含む。
【化6】
Figure 0004394906
(式中、Xは架橋に関与する−O−結合又はOH基であり、R5は炭素数1〜30の炭化原子含有分子鎖を表し、R4はメチル、エチル、プロピル、ブチル又はフェニル基のいずれかの基を表し、nは0〜2の整数を表す。)
【0039】
また、本発明は、上記燃料電池用電極において、前記粒子の平均粒径が、3〜200nmであることを特徴とする。
【0040】
また、本発明は、上記燃料電池用電極において、前記導電性多孔質体は、ゾルゲル反応による金属−酸素結合からなる架橋構造体によって撥水化されていることを特徴とする。
【0041】
また、本発明は、上記燃料電池用電極において、前記金属粒子は、白金または白金を含む合金であることを特徴とする。なお金属粒子として、酸化チタンなどの金属酸化物を含む場合もある。
【0042】
また、本発明は、前記燃料電池用電極において、前記粒子が、ケイ素−酸素結合からなる3次元架橋構造と、前記式(1)で示される構造とを有し、前記式(1)で示される構造を有するケイ素原子が、粒子中の全ケイ素原子中の3%以上であることを特徴とする。
【0043】
また、本発明は、燃料電池用電極の製造方法において、導電性多孔質体と、少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素結合を含む架橋構造体との混合物を作成する第1の工程と、前記酸基のプロトンを金属触媒のイオンを含む少なくとも一種類の陽イオンに置換する第2の工程と、前記金属イオンを還元して前記架橋構造体中に金属粒子を析出させ、金属粒子を含む架橋構造体を形成する第3の工程とを含む。
【0044】
また、本発明は、前記燃料電池用電極の製造方法において、前記架橋構造体が粒子の連続体を形成すると共に、前記粒子の表面には前記金属粒子が析出せしめられ、前記粒子の間隙にプロトン伝導路が形成されている。
【0045】
また、本発明は、前記燃料電池用電極の製造方法において前記金属-酸素結合は、ケイ素−酸素結合を含む。
【0046】
また、本発明は、前記燃料電池用電極の製造方法において前記酸基が、スルホン酸基である。
【0047】
また、本発明は、前記燃料電池用電極の製造方法において、前記混合物を作成する工程は、前記導電性多孔質体にゾルゲル反応による金属−酸素結合からなる架橋構造体と該構造と共有結合で結合した酸基を有する酸基含有構造体を形成する工程を含む。
【0048】
また、本発明は、前記燃料電池用電極の製造方法において、前記架橋構造体が、下式(1)で表される酸基含有架橋構造体を含むことを特徴とする。
【化7】
Figure 0004394906
(式中、Xは架橋に関与する−O−結合又はOH基であり、R1は炭素数20以下の炭化水素基を表し、R2はメチル、エチル、プロピル又はフェニル基のいずれかの基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1のとき、R2は異なる置換基の混合体でも良い。)
【0049】
また、本発明は、前記燃料電池用電極の製造方法において前記架橋構造体が、下式(2)で表される架橋構造体を含む。
【化8】
Figure 0004394906
(式中、Xは架橋に関与する−O−結合又はOH基であり、R3は炭素数20以下のアルキル基を表し、nは2〜4の整数を表す。)
【0050】
また、本発明は、前記燃料電池用電極の製造方法において前記架橋構造体が、下式(3)で表される架橋構造体を含む。
【化9】
Figure 0004394906
(式中、Xは架橋に関与する−O−結合又はOH基であり、R5は炭素数1〜30の炭化原子含有分子鎖を表し、R4はメチル、エチル、プロピル、ブチル又はフェニル基のいずれかの基を表し、nは0〜2の整数を表す。)
【0051】
また、本発明は、前記燃料電池用電極の製造方法において、前記酸基を有する架橋構造体は、メルカプト基を含有する架橋構造体を含み、前記第2の工程は、前記架橋構造体のメルカプト基を酸化し、金属イオンで置換する工程を含む。
【0052】
また、本発明は、前記燃料電池用電極の製造方法において、前記第1の工程は、導電性多孔質体が前記架橋構造体によって撥水化されるように混合する工程を含むことを特徴とする。
【0053】
また、本発明は、前記燃料電池用電極の製造方法において、前記粒子の平均粒径が、3〜200nmであることを特徴とする。
【0054】
また、本発明は、前記燃料電池用電極の製造方法において、前記金属イオンを含む少なくとも一種以上の陽イオンが白金を含む陽イオンであることを特徴とする。
【0055】
また、本発明は、前記燃料電池用電極の製造方法において、メルカプト基を有し、かつ、メルカプト基と共有結合した縮合反応可能な加水分解性シリル基と、及び/又はシラノール基を有するメルカプト基含有化合物(D)と、極性制御剤(E)とを含有する混合物を調製し、前記混合物に含まれる加水分解性シリル基を加水分解及び縮合、及び/又はシラノール基を縮合させることにより、ケイ素−酸素架橋構造からなる粒子の連続体を有する膜を形成する第1の工程と、前記膜中の前記メルカプト基を酸化してスルホン酸基とし、前記粒子の表面にスルホン酸基を導入し、前記スルホン酸基のプロトンの少なくとも一部を、金属イオンを含む陽イオンに置換する第2の工程と、これを還元する第3の工程とを含む。
【0056】
本発明の燃料電池は、上記燃料電池用電極、及び上記燃料電池用電極の製造方法のいずれかを用いて形成される。
なお、本発明において、“酸基の近傍”とは、酸基のプロトンが移動できる範囲をいうものとする。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の燃料電池用電極、その製造方法及びそれを用いた燃料電池について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本実施の形態の燃料電池は、正極(空気極)と負極(燃料極)と、これら2つの燃料電池用電極の間に介在せしめられたプロトン伝導性膜(電解質)とを備え、この燃料電池用電極の構造に特徴を有するものである。この燃料電池用電極100は、例えば、図1に示すように導電性多孔質体4と、少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素結合を含み粒子1の連続体を形成する架橋構造体と、前記架橋構造体の粒子1表面に析出せしめられた白金粒子3などの金属触媒とを含み、前記白金粒子3の近傍に、酸基が存在することを特徴とする。そして一方の側には電解質200が配され、他方の側にはガス拡散層あるいはガス拡散層をかねる集電体300が配される。
【0058】
以下、本発明の燃料電池の構造について各項目毎に順次説明する。
1. 燃料電池用電極
燃料電池用電極は、電解質膜の両側に配置され、触媒が担持された電極であって、その外側に燃料を供給する一対のセパレータが配置され、水素をプロトンと電子に分解する反応(アノード側電極:燃料極側)及び酸素、プロトンおよび電子の反応により水を形成する反応(カソード側電極:酸素極)を行う場所であり、導電性多孔質体と触媒とを含む。そしてこの電極で生成された電子を外部回路に取り出すことにより起電力を得るものである。
【0059】
すなわち、アノード側電極では、燃料として水素を供給すると、H2→2H++2e-の反応が起こり、プロトンと電子が生じ、プロトンは電極に接触している電解質を通して反対極であるカソード側電極に供給される。そして電子はアノード側電極に形成された集電体で集電される。
一方カソード側電極では、供給された酸素、電解質を通過してきたプロトン、電極にとりつけられた集電体から供給される電子とにより、1/2O2+2H++2e-→H2Oの反応が起こる。
これら両電極の反応が白金などの触媒によって促進される。
ここで電解質膜としては、耐熱性のあるものが望ましいが、特に限定するものではない。
【0060】
2. 触媒の量、大きさ、分布、
本発明の燃料電池用電極において、触媒の量、大きさ、分布は、架橋構造とともに重要な構成要素であり、反応の安定性、高度の反応性等を担う役割を果たす。
本発明の燃料電池用電極では、触媒は、スルホン酸などの酸基を有する架橋構造体望ましくは架橋構造体粒子の表面に、析出せしめられており、大表面積の領域に分布しているため、凝集することなく金属粒子(超微粒子)として安定して析出し、分布する。一方、近傍に酸基が存在するため、この触媒によって効率よく、電極反応が促進される。そしてこの架橋構造体の耐熱性、機械的強度、などの安定的な特性によって活発な電極反応が維持される。この金属粒子の粒径については特に限定しないが0.5nm〜10nmが望ましい。これは、小さすぎると触媒活性が低くなり、大きすぎると反応に寄与する表面積が小さくなるためである。特に望ましくは1nm〜5nmが望ましい。
【0061】
また、上述した電極反応を効率よく促進するためには、プロトン伝導路を形成する、酸基を含む架橋構造体、導電性多孔質体、触媒との3者の界面が形成されている必要がある。
上記金属イオンとしては、白金、金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、イリジウム、銀、モリブデン、鉄、クロム、コバルト、マンガン、ニッケルのうちいずれかの金属イオン含むイオンを少なくとも一種類以上含有するようにするのが望ましい。特に望ましくは、白金を含む陽イオンであり、特に、[Pt(NH3)4]2+、[Pt(NH3)6]4+などが好適に用いられる。
【0062】
この金属イオンを酸基のプロトンと置換させる方法については、イオンを含む溶液に架橋構造体を浸漬する方法などが好適に用いられる。また、架橋構造体全体をイオンを含む溶液に浸漬してもよいが、電解質側に相当する面のみにイオンを含む溶液を接触させるようにすることにより、触媒の有効利用を図ることも可能である。
ここで、イオン的に結合していないイオンを洗い落とす工程を加えても良い。
また、置換されたイオンを金属に還元する方法としては、特に限定しないが、水素雰囲気にさらしたり、NaBH4溶液により還元する方法、加熱により還元する方法、紫外光を照射することで還元する方法、あるいはこれらの組み合わせにより実現可能である。
【0063】
ここで、これらの方法を用いて金属触媒のイオンを還元する温度としては、特に限定しないが、架橋構造体に含まれる有機鎖が熱分解しない温度である、250℃以下、好ましくは200℃以下が好ましい。さらに、120℃〜250℃の温度、好ましくは150℃〜200℃の温度で水素ガスによって還元する方法を好適にとることができる。参考文献(K.Amine,M.Mizuhata,K.Oguro,H.Takenaka,J.Chem.Soc.Faraday Trans.,91,4451(1995))によれば、カーボン粒子の表面に吸着した[Pt(NH342+の水素による還元温度は180℃であることが報告されている。この温度は、カーボン粒子表面に吸着していない金属触媒を含むイオンが還元される温度より低いため、本発明においても、水素による還元温度を180℃近辺に制御すれば、カーボン粒子表面に存在する金属触媒を含むイオンのみを選択的に還元することができる。これによって、金属触媒イオンを酸基と導電性粒子との両方の接点に析出させることができ、触媒の有効利用がより実現される。
【0064】
なお、金属触媒を還元後に、酸基をプロトン化する工程を加えても良い。プロトン化の方法は、塩酸、硫酸等の強酸と接触させてもよく、この場合の酸濃度、浸漬時間、浸漬温度等のプロトン化条件は、膜中のスルホン酸基含有濃度、膜の多孔質度、酸との親和性、「金属触媒との反応性」などにより適宜決定される。代表的には、1N硫酸中50℃で1時間、膜を浸漬する方法等がある。
【0065】
3. 金属−酸素架橋構造体
本発明の燃料電池用電極において、架橋構造は、触媒の量、大きさ、分布とともに重要な構成要素であり、膜の機械的強度、耐熱性、耐久性、寸法安定性等を担う役割を果たす。
またこの燃料電池用電極では、金属−酸素結合を含む架橋構造体望ましくは架橋構造体粒子を構成しており、極めて安定で強固な構造を有しており、触媒は、この架橋構造体望ましくは架橋構造体粒子の表面に、析出せしめられており、大表面積の領域に分布しているため、凝集することなく超微粒子として安定して析出し、分布している。一方、触媒となる金属イオンの原料となるイオンが架橋構造体の表面に存在する酸基とイオン的に結合した状態から還元されるため、触媒の近傍に酸基が存在することになり、この触媒によって効率よく、電極反応が促進される。
【0066】
また、上述したように架橋構造体望ましくは粒子状の架橋構造体を構成することにより、膜の機械的強度、耐熱性、耐久性、寸法安定性を得ることができる。即ち、十分な密度の架橋構造となるようにすると、湿潤状態であっても、乾燥状態であっても、大きな寸法変化が見られなくなり、強度変化も生じなくなる。
【0067】
このように、本発明の電極は、乾燥時と湿潤時の膜の寸法に大きな変化がないため、MEAの製造が容易であるばかりではなく、燃料電池作動時にも作動状態変化による燃料電池内部の温湿度変化に応じて常に膜が伸び縮みすることがない。従って、膜の破断やMEAの破壊が生じることはない。さらに、膨潤により膜が弱くなることはないため、前述の寸法変化だけではなく、燃料電池内で差圧が発生した場合などに膜の破れなどが生じる危険性を回避することができる。
【0068】
一方、従来のナフィオン(Nafion登録商標)などのフッ素系樹脂や、芳香族分子構造を主鎖に有する高分子材料からなる電極は、いずれも本発明の金属−酸素結合からなる架橋構造体のように強固な架橋構造を有していない。このため、高温ではクリープ現象などにより、構造が大きく変化し、その結果、高温における燃料電池の動作が不安定となる。
【0069】
また、金属−酸素結合、例えばケイ素−酸素結合、アルミニウム−酸素結合、チタン−酸素結合、ジルコニウム−酸素結合などからなる架橋構造は、燃料電池用電極の様に強い酸性(プロトン存在)条件下で、高温高湿にさらされる場合でも比較的安定であり、燃料電池用電極内部の架橋構造としては好適に用いることができる。特に、ケイ素−酸素結合は、容易に形成することができ、更に安価であるため、特に好適に用いることができる。
【0070】
これに対し、このような架橋構造を形成するためには、例えばエポキシ樹脂、架橋性アクリル樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの有機高分子系材料を用いることもできるが、燃料電池用電極の様に強い酸性条件下で、高温高湿にさらされる場合には長時間の安定性を得ることは困難である。
【0071】
なお、本発明の架橋構造としては、主にケイ素−酸素結合が用いられるのが望ましいが、コストや製造方法の容易さを犠牲にしない範囲で、前述したケイ素以外の金属−酸素結合、或いは、リン−酸素結合、硼素−酸素結合などを併用していてもよい。ケイ素以外の金属−酸素結合等を併用する場合には、架橋構造中におけるケイ素−酸素結合の割合は特に限定されないが、ケイ素と他金属等の原子比率は、全金属原子100mol%とした場合、通常50mol%以上、好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは80mol%以上である。
【0072】
4.プロトン伝導性
本発明の燃料電池用電極は、電極反応を活性化するための要件のほかにプロトン伝導性を必要とするが、次の要件を具備することにより、高プロトン伝導性を達成することができる。
1)酸基が高濃度に存在。
2)連続的に酸が存在するプロトン伝導経路の形成。
燃料電池動作時にはアノード側電極では、水素が酸化され、プロトンと電子が生成されて、プロトンが電解質に供給される。一方、カソード側電極では、膜中のプロトンが消費され、酸素は還元され、水が生成される。
プロトンは、通常、水和物として移動するので、水との親和性が良く、また、プロトンが安定して存在出来る高濃度に酸が集積した、アノードからカソードに至る連続相すなわち電極の外側主表面から電解質の相対向する面に連通したプロトン伝導路を有することが好ましい。プロトン伝導性には、前述した粒子、及び粒子の間隙が重要な因子となる。
【0073】
即ち、本発明の燃料電池用電極は、金属−酸素架橋構造体からなる粒子を有し、当該粒子は表面に酸基を有し、かつ当該粒子が連続体を構成し、高温でも変形しない化学的構造を形成する。
【0074】
5.粒子の詳細
本発明の燃料電池用電極としては、多孔質導電体と、表面に酸基が導入されるとともに金属粒子を析出せしめられ、酸基を有する金属−酸素架橋構造体からなる粒子とで構成されるのが望ましい。
なお、粒子の形態に関しては、球形である場合、若干強度が大きいという利点があるが、必ずしも真球に近い球形である必要はなく、扁平な粒状、柱状など非球形であっても良い。粒子は、明確な構造境界を有するものであれば特に制限はない。
金属(代表例:ケイ素)−酸素結合からなる架橋構造体は、いわゆるガラス構造体であり、前述したように高温でも安定であるために、耐熱性を必要とする燃料電池用電極の基本構造として適している。
【0075】
本発明の燃料電池用電極において、粒子の表面の酸基は、スルホン酸基であることが好ましい。スルホン酸は極めて強い酸であり、酸基としてスルホン酸を用いることにより、プロトンの解離性は極めて良好となる。すなわち、スルホン酸はプロトンの拡散抑制が極めて少なく、本発明に好ましく用いることが出来る。スルホン酸は酸化耐久性も良好であって、また、耐熱性においても180℃まで安定であって、本発明に好ましく用いることが出来る。
【0076】
本発明の燃料電池用電極において、粒子状骨格構造となる粒子の連続体を構成する各粒子の平均粒径は、3〜200nmであることが好ましい。平均粒子径が200nmを超えるとプロトン伝導の主役を担う粒子の表面積が減少し、高い伝導度が得られなくなり、また、粒子の間隙が大きくなりすぎて脆くなり、更に燃料ガスの漏洩(いわゆるケミカルショート)の発生も危惧される。一方、3nm以下では均一層に近くなり、十分なプロトン伝導経路が確保できず、効率的なプロトン伝導が困難となる。従って粒子のより好ましい平均粒径範囲は3〜200nmであり、より好ましくは5〜100nmである。平均粒径範囲を5〜100nmとすることにより、十分な強度を確保しつつも、プロトン伝導経路を十分に確保することができる。
【0077】
また、粒径の分布については、均一な粒径の粒子の連続体であっても、不均一な粒径の粒子の連続体であってもよい。ここで、粒子の粒径分布が均一であると、粒径にもよるが幾何学的に間隙が出来やすく、高いイオン伝導度を発揮できる可能性がある。一方、粒径分布に幅があると、密なパッキングが可能であり、燃料ガスバリア性の向上や膜の強度向上に寄与する。従って使用状況に応じて粒径分布を選ぶようにするのが望ましい。粒子の粒径分布はイオン伝導度、燃料ガスバリア性、膜強度を勘案して適宜決定される。粒径制御は、用いる原料の構造・分子量、溶媒種類・濃度、触媒種類・量、反応温度などの条件調整により可能である。粒径分布は小角X線散乱等から求めることが可能である。
【0078】
前述のように、本発明の燃料電池用電極に含まれる粒子の表面には酸基、好ましくはスルホン酸基が存在する。スルホン酸基は、スルホン酸含有化合物を粒子の間隙に注入(ドープ)された状態であっても良いが、この場合には、長期にわたって燃料電池用電極として使用した場合、電極から散逸(いわゆるドープアウト)する可能性がある。
【0079】
これに対し、スルホン酸基を粒子表面に共有結合にて固定化すると、安定した性能を発揮させることが可能となる。
スルホン酸基が粒子表面に固定化された構造には特に制限はないが、好ましい構造として、次式(1)で示される酸基含有構造(A)があげられる。
【化10】
Figure 0004394906
(式中、Xは架橋に関与する−O−結合、又はOH基を表し、R1は炭素数20以下の炭化水素基を表し、R2はCH3、C25、C37、またはC65のいずれかの基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1のとき、R2は異なる置換基の混合体でもよい。)
【0080】
この酸基含有構造(A)は粒子が有するケイ素−酸素架橋と、更にケイ素−酸素結合を通じて直接共有結合したものである。このように、粒子状構造体中の架橋構造と酸基が直接結合していることから、安定性、耐熱性をえることができ、好ましく用いることが出来る構造である。
粒子は、酸含有構造(A)以外のケイ素−酸素架橋体(例えば後述する架橋剤)を有していても良いが、この場合、酸含有構造(A)中のケイ素原子は、粒子中のケイ素原子全体の3%以上であることが好ましい。3%以下であると表面に存在する酸基の量が少なくなり、十分な伝導度を発現することが出来ない。一方、上限は特になく、出来るだけ多量の酸基を導入することが好ましいが、一方、酸含有構造(A)を多くするとプロトン伝導性膜が脆くなる傾向があるため、適度な含量とすることが望ましく、一例としては80%以下である。
【0081】
酸含有構造(A)は化学式(1)で表される構造であるが、式(1)中、R1の構造としては、式(4)で表される飽和アルキレン基であることが好ましい。
【化11】
Figure 0004394906
(式中、nは1〜20の整数である)
【0082】
ここで、アルキレン基のかわりに、芳香環や種々へテロ原子を有する分子鎖であっても良いが、この場合には耐熱性、耐酸性、耐酸化性などを有する構造である必要がある。一方、アルキレン基の場合には、耐熱性、耐酸性、耐酸化性が良好であり、特に分岐を有さない式(4)の構造体は特に好ましく用いることが出来る。ここで、アルキレン鎖の長さnは、特に制限はないが、長すぎると耐久性が低下するおそれがあり、nは1〜20の範囲が好ましく、特にnが3のものは入手も容易であり好ましく用いることが出来る。
【0083】
また、本発明の粒子としては、酸含有構造(A)だけではなく、種々の架橋剤を用いることが出来る。架橋剤を添加することにより、より強固な架橋が形成され、高温においても更に安定な粒子となり、ひいては燃料電池用電極としての安定性も向上する。
【0084】
粒子を形成する架橋剤としては、例えば、次式(2)で表される架橋構造(B)が好ましく用いることが出来る。
【化12】
Figure 0004394906
(式中、R3は炭素原子20以下のアルキル基を表し、Xは架橋に関与する−O−結合、又はOH基を表し、nは2〜4の整数である。)
ここで、架橋構造(B)は、基本的なシリカ架橋構造であり、耐熱性、耐酸化性に対して非常に安定である。また、原料入手も容易であり、安価な燃料電池用電極を実現することが出来る。
【0085】
ここで、架橋基の数nが4である架橋構造(B)は、強固な架橋構造を形成して高度の耐久性をもつと同時に、酸含有構造(A)を安定に固定化することができるため、好ましく用いることが出来る。また、nが2又は3のものは粒子状構造体に可撓性を付与し、その結果、燃料電池用電極の可撓性をも向上することが出来る。架橋基の数nは、それぞれ役割に応じて混合して用いても良い。
【0086】
さらに、粒子状構造体を形成する架橋剤として、次式(3)で表される橋かけ架橋構造(C)を用いても良い。
【化13】
Figure 0004394906
(式中、Xは架橋に関与する−O−結合、又はOH基を表し、R5は炭素数1〜30の炭素原子含有分子鎖基を表し、R4はCH3、C25、C37、C49、又はC65から選ばれたいずれかの基であり、nは0、1又は2のいずれかの整数である。)
【0087】
この橋かけ状架橋構造(C)は2つの架橋性シリル基を分子鎖R5で橋かけした構造を有する。このような橋かけ状架橋構造(C)は、極めて架橋反応性が高く、強固な架橋構造を形成することが出来、粒子の安定性向上に寄与する。また、橋かけ構造部の分子鎖種類、分子鎖長、あるいは架橋基Xの数(3−n)などにより可撓性などの物性調整も可能であり、好ましく用いることが出来る。
【0088】
たとえば、式(3)で表される橋かけ状架橋構造(C)の架橋基の数(3−n)が、1又は2であって、R4がメチル基である場合、膜全体が可撓性を有し、取り扱いの容易な膜とすることが出来る。
さらに、橋かけ状架橋構造(C)を用いる場合、式(3)中のR5が次式(5)で表される構造を有することが好ましい。
【化14】
Figure 0004394906
(式中、nは1〜30の整数を表す)
【0089】
ここで、アルキレン基のかわりに、芳香環や種々へテロ原子を有する分子鎖であっても良いが、この場合には耐熱性、耐酸性、耐酸化性などを有する構造である必要がある。一方、アルキレン基の場合には、耐熱性、耐酸性、耐酸化性が良好であり、更に、特に分岐を有さない式(5)の構造体が特に好ましく用いることが出来る。ここで、アルキレン鎖の長さnについては、特に制限はないが、長すぎると耐久性が低下するおそれがあるため、nは1〜20の範囲が好ましく、特にnが8のものは入手も容易であり好ましく用いることが出来る。
またさらに、上述した組成物以外にも、例えばチタン酸化物、ジルコニウム酸化物、アルミニウム酸化物などの金属酸化物を含んでいても良い。
【0090】
6.粒子の間隙について
前述したように、本発明の燃料電池用電極は、ケイ素−酸素架橋構造からなる粒子を有し、当該粒子は表面に酸基を有し、かつ当該粒子が連続体を構成している。粒子の連続体は、前述のように幾何学的に粒子の間隙を生じる。特に、この粒子の間隙が、燃料電池用電極の外側主表面から相対向する面に連通している場合、粒子の間隙はプロトンが効率的に拡散・移動するプロトン伝導経路となる。
【0091】
粒子の間隙の間隙幅は特に限定されないが、極端に狭いとプロトン伝導が阻害され、また、広すぎると膜が脆くなるだけでなく、燃料ガスがリークして(いわゆるケミカルショート)発電効率が低下する。具体的な平均間隙幅としては、例えば、0.5nm〜500nmが好ましく、1nm〜200nmがより好ましい。
【0092】
7.燃料電池用電極の製造方法
次に本実施の形態の燃料電池用電極の製造方法について説明する。
ケイ素−酸素架橋構造からなる粒子であって、当該粒子の表面に酸基が導入されるとともに白金などの金属粒子が析出せしめられ、かつ当該粒子が連続体を構成している燃料電池用電極の製造方法は、特に限定されることはないが、例えば以下のような方法で製造することが出来る。
即ち、例えば本発明の燃料電池用電極は、メルカプト基を有し、かつ、メルカプト基と共有結合した縮合反応可能な加水分解性シリル基と、及び/又はシラノール基を有するメルカプト基含有化合物(D)と、極性制御剤(E)とを含有する混合物を調製し、それを導電性多孔質体に成膜し、該成膜された混合物に含まれる加水分解性シリル基を加水分解及び縮合、及び/又はシラノール基を縮合させることにより、前記ケイ素−酸素架橋構造からなる粒子の連続体を構成する膜を形成する第1の工程と、更に前記膜中の前記メルカプト基を酸化してスルホン酸基とし、前記粒子の表面にスルホン酸基を導入し、、スルホン酸基のプロトンを金属触媒のイオンを含む少なくとも1種類以上の陽イオンに置換させる第2の工程と、この後、この金属イオンを還元し、前記粒子の表面に金属粒子として析出せしめる第3の工程とにより製造することが出来る。
例えばスルホン酸基をもつケイ素―酸素結合体としては低分子量のものしか合成が難しいが、メルカプト基をもつケイ素―酸素結合体としては高分子量のものを得ることができる。そこでメルカプト基含有化合物を縮合させることにより高分子量のメルカプト基含有架橋構造体を形成し、このメルカプト基を酸化してスルホン酸基に置換したのち、スルホン酸基のプロトンを金属触媒のイオンを含む陽イオンに置換することにより、高分子量のスルホン酸基をもつケイ素―酸素架橋構造体を得ることができる。
メルカプト基をスルホン酸基に置換する際、白金の存在下では、過酸化水素などの酸化剤を用いるため、爆発などの危険が伴うが、メルカプト基をスルホン酸基に置換した後、白金を含む陽イオンに置換するようにすれば、爆発の危険性もない。
【0093】
以下、各工程について詳細に説明する。
7.1 第1の工程
第1の工程では、メルカプト基を有し、かつ、メルカプト基と共有結合した縮合反応可能な加水分解性シリル基と、及び/又はシラノール基を有するメルカプト基含有化合物(D)と、極性制御剤(E)とを含有する混合物を調製する。
【0094】
7.1.1 メルカプト基含有化合物(D)
メルカプト基含有化合物(D)はメルカプト基を有し、かつ、メルカプト基と共有結合した縮合反応可能な加水分解性シリル基、及び/又はシラノール基を有していれば特に制限はない。
このメルカプト基含有化合物(D)として、以下に例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
メルカプト基含有化合物(D)として、例えば、次式(6)で示されるメルカプト基含有化合物(G)があげられる。
【化15】
Figure 0004394906
(式中、R7はH、CH3、C25、C37、又はC49のいずれかの基を表し、R1は炭素数20以下の炭化水素基を表し、R2はCH3、C25、C37、又はC65のいずれかの基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1のとき、R2は異なる置換基の混合体でもよい。)
【0095】
ここで、R1は、炭素数20以下の炭化水素基であれば特に制限はないが、芳香族環や分岐を含まないメチレン鎖(−CH2−の連鎖)が酸や酸化に対して安定であり好ましく用いることが出来る。特に、炭素数が3(即ち、R1が−CH2CH2CH2−)のものは安価かつ入手が容易で好ましく用いることが出来る。R1に分岐構造や芳香族環が含まれていても、燃料電池作動条件下で安定であれば特に問題はない。
【0096】
また、R7がHの場合には、ポットライフが短くなるため、注意して扱う必要がある。R7がアルキル基の場合には、ポットライフも長く、反応制御も容易であり、好適に用いることが出来る。とくに、R7はCH3、C25のものが安価かつ入手も容易であり、好適に用いることが出来る。
【0097】
アルキル基(R2)は式(6)中にあげられた各置換基を用いることが出来るが、R2がCH3のものが安価かつ入手容易であり、好ましく用いることが出来る。
架橋基(OR7)とアルキル基(R2)の比率は、架橋基が多い程粒子に安定して固定か可能であるが、一方、アルキル基を導入することにより、燃料電池用電極の可撓性が付与できる。他の架橋剤との組み合わせも含め、物性と安定性のバランスの上で、架橋基とアルキル基の比率は適宜選択可能であるが、好ましくは架橋基の数は2、又は3で有り、架橋基が3あるものがより好ましい。
【0098】
この式(6)で示される原料としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリプロポキシシラン、2−メルカプトエチルトリブトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジブトキシシラン、3−メルカプトプロピルエチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルブチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルフェニルジメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン等が例示されるが、本発明はこれに限定されるものではない。
この中でも3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)社製)が大量且つ安価に入手することが出来、好ましく用いることが出来る。
【0099】
また、メルカプト基含有化合物(D)の例として、次式(7)で表されるメルカプト基含有縮合体(H)があげられる。
【化16】
Figure 0004394906
(式中、R7はH、CH3、C25、C36、又はC49のいずれかの基を表し、R1は炭素数20以下の炭化水素基を表し、R2はOH、OCH3、OC25、OC36、OC49、CH3、C25、C37、C49、C65のいずれかの基を表し、mは1〜100の整数を表す。また、R7が−Si、またはR2がO−Si結合となった連鎖構造、環状構造となっても良い)
【0100】
これは、メルカプト基含有化合物(G)の縮合体であり、例えばメルカプト基含有化合物(G)を縮合することにより得ることが出来る。このような縮合体を用いると、酸の連続性が高まり、より高い伝導度が得られると同時に、1分子内の架橋基が増加することにより粒子との結合安定性も向上し、より高い耐久性能を実現することが出来る。
【0101】
1、R2、及びR7はメルカプト基含有化合物(G)に準ずるが、このうち、R7が−Si、またはR2がO−Si結合となった連鎖構造、環状構造を含んでいても良い。
また、重合度(m+1)は2以下であると縮合による酸の連続化、架橋基増加等の効果が見られず、101を超えるとゲル化等が起こり、原料として用いることが困難となる。
【0102】
さらに、メルカプト基含有化合物(D)の例として、次式(8)で表されるメルカプト基含有縮合体(I)があげられる。
【化17】
Figure 0004394906
(式中、R7はH、CH3、C25、C36、又はC49のいずれかの基を表し、R1は炭素数20以下の炭化水素基を表し、R2、R8、R9はそれぞれ独立にOH、OCH3、OC25、OC36、OC49、CH3、C25、C37、C49、C65のいずれかの基を表し、n、mはそれぞれ独立に1〜100の整数を表す。また、R7が−Si結合、またはR2、R8、R9が−O−Si結合となった連鎖構造、環状構造となっても良い)
【0103】
これは、メルカプト基含有化合物(G)と、後に詳述する架橋剤(J)の共縮合物である。架橋剤(J)の実例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。このうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランは汎用品であり、安価であり、大量かつ容易に入手可能であるため、特に好ましく用いることができる。又更に、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ウンデシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等のメトキシ体、及びこれらのエトキシ体、イソプロポキシ体、ブトキシ体等との共重合体であっても良い。本発明はこれに限定されるものではなく、式(8)で示される化合物であれば限定はない。
【0104】
1、R2、及びR7はメルカプト基含有化合物(G)に準し、R8、R9は架橋剤(J)の基本構造に準ずるが、このうち、R7が−Si結合、またはR2、R8、R9が−O−Si結合となった連鎖構造、環状構造を含んでいても良い。
また、重合度(m+n)は2以下であると縮合による酸の連続化、架橋基増加等の効果が見られず、200を超えるとゲル化等が起こり、原料として用いることが困難となる。メルカプト基含有縮合体(I)は、メルカプト基含有縮合体(H)にくらべて置換基の調整範囲が大であるため、より高重合度までゲル化せずに原料化できる。
【0105】
このメルカプト基含有縮合体(I)は、構造設計上自由度が高く、架橋性の高い構造を導入して、粒子との固定化をより強固とし、安定したプロトン伝導性を発揮させたり、架橋度をむしろ低下させて膜に可撓性を付与したり、種々の物性調整が可能となる。また、白金などを含む陽イオンとの置換を、メルカプト基を酸化してスルホン酸基とした後に行うようにしているため、スルホン化に際して酸化剤を用いる場合にも爆発の危険性もない。
【0106】
これらのメルカプト基含有縮合体(H)、(I)は公知の方法で合成することが出来、これらの方法は、例えば、特開平9−40911号公報、特開平8−134219号公報、特開2002−30149号公報、ジャーナルオブポリマーサイエンス パートA:ポリマーケミストリ(Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry、第33巻、第751−754頁、1995)、ジャーナルオブポリマーサイエンス パートA:ポリマーケミストリ(Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry、第37巻、第1017−1026頁、1999)などに開示されている。
これらメルカプト基含有化合物(D)は、あらかじめ後述の第3の工程で用いる酸化剤によりあらかじめ酸化してから用いても良い。この場合には、第3の工程の酸化工程を省略することが可能となる。
【0107】
さらに、調製工程において、更に、次式(10)で表される架橋剤(J)を加えても良い。
【化18】
Figure 0004394906
(式中、R3は炭素原子20以下のアルキル基を表し、R10はOH、OCH3、OC25、OC36、OC49、OCOCH3、またはClを表し、nは2〜4の整数である。)
【0108】
ここで、架橋剤(J)は、Si−O結合を形成する構造体であれば特に制限はなく、(10)式に表される構造であれば用いることが出来る。架橋剤(J)の実例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。このうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランは汎用品であり、安価であり、大量かつ容易に入手可能であるため、特に好ましく用いることができる。又更に、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ウンデシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等のメトキシ体、及びこれらのエトキシ体、イソプロポキシ体、ブトキシ体等であっても良い。
【0109】
また、これと類似した役割を担う材料として、チタン、ジルコニウムを含む加水分解性化合物を用いてもよい。具体例としては、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンn−プロポキシド、チタンi−プロポキシド、チタンn−ブトキシド、チタンi−ブトキシド、チタンt−ブトキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムi−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムi−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、及びそれらのアセチルアセトン、アセト酢酸エステル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン錯体等が挙げられる
【0110】
この架橋剤(J)を用いると、粒子の架橋密度を調整することが可能であり、強度、可撓性を適宜制御することが出来る。
又更に、この第1の工程における調製工程において、更に、次式(11)で表される橋かけ架橋剤(K)を加えても良い。
【化19】
Figure 0004394906
(式中、R10はOH、OCH3、OC25、OC36、OC49、OCOCH3、またはClを表し、R5は炭素数1〜30の炭素原子含有分子鎖基を表し、R4はCH3、C25、C37、C49、又はC65から選ばれたいずれかの基であり、nは0、1又は2のいずれかの整数である。)
【0111】
ここで、式(11)中のR5は、炭素数1〜30の炭素原子含有分子鎖基を表すが、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
式(11)の構造を有する架橋剤(K)の具体例としては、例えば、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)ノナンが該当するが、これらはゲレスト(Gelest)社より市販されている。これ以外の鎖長のもの、あるいはこれ以外の加水分解性基を有する有機無機複合架橋剤(F)も、両末端が不飽和結合となっている直鎖状炭化水素、例えば、1,3−ブタジエンや1,9−デカジエン、1,12−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、1,21―ドコサジエンなどに白金錯体触媒を用いて各種アルコキシシランとヒドロシリル化反応を行うことにより、対応する架橋性化合物である化合物を得ることができる。
【0112】
この架橋剤(K)を用いると、粒子状構造体の架橋密度を調整することが可能であり、強度、可撓性を適宜制御することが出来る。
【0113】
7.1.2 極性制御剤(E)
極性制御剤(E)は、粒子を形成するための構造制御剤であって、本発明において好適に用いることが出来る。
本発明の燃料電池用電極においては、物質(水素イオンあるいはその水和体)が拡散、移動できることが必須であるため、膜の内部にイオンを輸送するプロトン伝導経路を形成することが好ましく、粒子の間隙がその役割を担うことは、前述した。
【0114】
本発明の燃料電池用電極においては、この粒子及び粒子の間隙の効率的な形成のため、極性制御剤(E)を用いる。
通常、テトラエトキシシランのような無機材料などを同様にして加水分解・縮合し、十分な加熱(例えば800℃)を行えば、ガラス状の緻密な架橋体が得られ、イオンチャネルに相当する微細孔は形成されない。このようなアルコキシシランの加水分解、縮合、ゲル化過程(sol−gel反応)は詳細に検討されており、例えばブリンカー(Brinker)らのゾルゲルサイエンス(SOL−GEL SCIENCE)(Academic press,Inc.,1990)、作花の「ゾル−ゲル法の科学」(アグネ承風社、1988)等に記載がある。ゾルゲル反応では粒子成長、粒子結合、緻密化が順に起こる。典型的なアルコキシシラン材料についてはそれらの詳細な解析がなされ、反応条件等も明らかになっている。
【0115】
本発明の燃料電池用電極においては、置換基を有するアルコキシシラン材料を原料とし、更に、粒子の粒径制御、粒子間の結合制御、それに伴う粒子の間隙の制御が必要であり、これを達成するために種々の検討を行った結果、極性制御剤(E)を加えることにより、粒子の連続体形成とそれに伴う粒子の間隙制御が可能であることを見いだした。
【0116】
極性制御剤(E)は有機液体であって、水溶性であることが望ましい。水溶性であると、第1の工程における調製工程で溶媒を用いる場合(後述)、メルカプト基含有化合物(D)の溶媒への溶解性を調整することが可能であり、適度な粒子の粒径、及び粒子の間隙制御が可能となる。又更に、作製後の膜から水洗にて容易に抽出できるという利点もある。
【0117】
また、極性制御剤(E)は、沸点100℃以上であり、融点が25℃以上であることが好ましい。
極性制御剤(E)の沸点が低すぎると、膜を形成する際に行う縮合反応時(主として加熱条件にて行う)に揮発してしまい、粒子の粒径制御、及び粒子の間隙制御が不十分になって十分な伝導度が確保できない。従って、極性制御剤(E)の沸点としては、最低でも第1の工程における調製工程で溶媒が用いられる場合には溶媒の沸点以上であることが好ましく、特に沸点100℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは200℃以上である。
また、極性制御剤(E)の分子間相互作用が大きすぎる場合には極性制御剤(E)が固化して粒子の間隙以外に大きなドメインを形成する可能性があり、この場合、膜の強度が低下したり、膜の燃料ガスバリア性が低下する可能性がある。極性制御剤(E)の分子間相互作用の大きさは、融点とほぼ相関があり、融点を指標とすることが出来る。本発明で用いる極性制御剤(E)の融点は、25℃以下であることが好ましい。融点25℃以下であると適度な分子間相互作用が期待でき、好ましく用いることが出来、より好ましくは15℃以下である。
【0118】
このような有機物としては、水酸基、エーテル基、アミド基、エステル基などの極性置換基を有しているもの、カルボン酸基、スルホン酸基等の酸基又はその塩を有しているもの、アミン等の塩基又はその塩を有しているものなどが挙げられる。このうち、酸、塩基及びその塩類は、加水分解・縮合の際に触媒を用いる場合には、これら触媒との相互作用に気を付ける必要があるため、より好ましくは非イオン性のものが好ましく用いることが出来る。
【0119】
具体的には、グリセリン及びその誘導体、エチレングリコール及びその誘導体、エチレングリコール重合体(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、各種分子量のポリエチレングリコールなど)、グルコース、フルクトース、マンニット、ソルビット、スクロースなどの糖類、ペンタエリスリトールなどの多価水酸基化合物、ポリオキシアルキレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸などの水溶性樹脂、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の炭酸エステル類、ジメチルスルホキシド等のアルキル硫黄酸化物、ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、等があげられるが本発明はこれに限定されるものではない。
【0120】
また、これらのエチレングリコール類の末端OHの一部又は全部が、アルキルエーテルとなったエチレン グリコール(モノ/ジ)アルキルエーテル類も好ましく用いることができる。この例としては、前記エチレングリコール類のモノメチルエーテル、ジメチルエーテル、モノエチル エーテル、ジエチルエーテル、モノプロピルエーテル、 ジプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジブチルエーテル、モノペンチルエーテル、ジペンチルエーテル、モノジシクロペンテニルエーテル、モノグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、モノフェニルエーテル、ジフェニルエーテル、モノビニルエーテルジビニルエーテルがあげられる。また、エチレングリコール類の末端OHの一部又は全部がエステルとなっていても良い。この例としては、前記エチレングリコール類のモノアセテート、ジアセテートがあげられる。
【0121】
また、酸及びその塩を用いても良い場合には、酢酸、プロピオン酸、ドデシル硫酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の酸及びその塩類があげられ、塩基及びその塩を用いても良い場合には塩化トリメチルベンジルアンモニウムなどのアンモニウム塩類、N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン類及びその塩類があげられる。更に、グルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸類などの両性イオン化合物も使用することが出来る。
【0122】
また、極性制御剤(E)として無機塩等も用いることは可能ではあるが、一般的に無機塩は凝集力が強く(融点が高く)、メルカプト基含有化合物(D)を含む混合物に添加しても分子レベルの微細分散は困難で、大きな結晶やアモルファス固体となり、膜物理物性やガスバリア性に不利な大きな凝集体を形成する可能性が高い。
【0123】
また、本発明においては、その他のイオン界面活性剤も好適に用いることが出来、更に触媒との相互作用を勘案してアニオン、カチオン、両性の各界面活性剤なども用いることが出来る。
【0124】
この中でも、液状の水溶性有機物であり、メルカプト基含有化合物(D)に対して適度な相溶性(あるいは適当な非相溶性)を有するポリオキシアルキレンが好ましく、その中でも特にエチレングリコールの重合体が好ましく用いることができる。このポリオキシアルキレン類は以下のような一般式で示すことが出来る。
【化20】
Figure 0004394906
(式中、nは1〜14の整数である。)
【0125】
このようなエチレングリコールの重合体は、2量体(ジエチレングリコール)から各種分子量のポリエチレングリコールまで幅広く市販されており、相溶性、粘度、分子サイズなど、適宜選択可能であり、好ましく用いることができる。特に本発明においては、分子量が約100のジエチレングリコールから平均分子量600のポリエチレングリコールがより好ましく用いることが出来、更に、分子量が200前後のテトラエチレングリコールあるいはポリエチレングリコールが特に好ましく用いることができる。
【0126】
粒子、及び粒子の間隙のサイズは、メルカプト基含有化合物(D)との相溶性と、溶媒や添加剤を含めた膜形成原料系全体との相溶性バランス、及び、極性制御剤(E)の分子量、及び配合量により決定される。本発明の場合、極性制御剤(E)の平均分子量と粒子の間隙の径に相関が見られ、分子量600を超えるポリエチレングリコールを用いた場合には大きな径となってガスバリア性や物性が低下したり、膜が脆くなったりし、一方、分子量100未満であると、緻密な膜となりすぎて、十分な粒子の間隙が形成されない傾向がある。
【0127】
なお、極性制御剤(E)の添加量は用いる極性制御剤(E)の種類や分子量、あるいは膜の構造に依存するために一概に言うことは難しいが、一般的にはメルカプト基含有化合物(D)100重量部に対して3〜150重量部添加する。3重量部未満では、粒子径、及び粒子の間隙制御の効果がほとんど認められず、150重量部を超えると粒子の間隙が大きくなりすぎ、膜が脆くなったり、ガス透過が顕著になる可能性が高い。
【0128】
以上のように、本発明の燃料電池用電極は、極性制御剤(E)を用いることにより、粒子の間隙、即ちプロトン伝導経路の構造をオーダーメイドで設計、形成することができるため、燃料ガス透過性や膜強度などの各種膜物性とバランスの良い膜を形成することが出来る。これが従来のスルホン酸化フッ素樹脂膜のように、分子構造により一義的にプロトン伝導経路が決定されるものとは大きく異なる点である。
【0129】
7.1.3 混合方法
今まで述べてきたように、メルカプト基含有化合物(D)、極性制御剤(E)、さらに任意成分である架橋剤(J)、(K)を適宜調整して用いることにより、プロトン伝導性、耐熱性、耐久性、膜強度など、種々の物性を調整することが可能である。
ここで、任意成分である架橋剤(J)、(K)を加える場合、その添加量は各材料の配合、プロセスにより変動するため一概に言えないが、代表的な値としては、メルカプト基含有化合物(D)100重量部に対して(J)、(K)の合計添加量は900重量部以下である。
【0130】
これを超える配合量の架橋財を添加すると、粒子の表面酸基濃度が低下し、プロトン伝導性が低下するおそれがある。
これらの混合物を調製する場合には、溶媒を用いてもよい。用いる溶媒は、それぞれの材料が均一に混合可能であれば良く、特に制限はない。一般的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒などが好適に用いることができる。
溶媒の比率については特に制限はないが、通常、固形分濃度が90〜10重量%程度の濃度が好ましく用いることができる。
更に、後述するが、触媒(F)をこの工程で同時に混合してもよい。
【0131】
また、加水分解に必要な水を投入してもよい。水は、通常、加水分解性シリル基に対して等mol量加えるが、反応を加速するために多く加えても良く、また、反応を抑制するために少量加えてもよい。
混合には、撹拌、振動など公知の方法を用いて良く、十分な混合が可能であれば特に限定されない。また、必要に応じて加熱や加圧、脱泡、脱気等を行ってもよい。
【0132】
さらに、第1の工程における調製工程において、本発明の目的を損なわない範囲内で、補強材、柔軟化剤、分散剤、反応促進剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤、無機又は有機充填剤などの他の任意成分を添加することができる。
【0133】
7.1.4 成膜工程
本発明の燃料電池用電極の製造方法において、調製工程で得た混合物を膜状に成形(成膜)する。
前記工程で得られた混合物を導電性多孔質体のシートに塗布、含浸したり、導電性多孔質体や撥水剤と混合して成膜する。塗布、含浸させる場合、シート全体に含浸させても良い。また、電解質膜に接する側にのみ塗布するようにしてもよい。さらに、膜状に成形するためには、キャスト、コート、注型など、公知の方法を用いることができる。膜状に成形する方法としては、均一な膜を得ることができる方法であれば特に制限はない。膜の厚みは特に制限されないが、10μmから1mmの間の任意の厚みとなるように形成することができる。燃料電池用電極は、プロトン伝導性、燃料バリア性、膜の機械的強度から膜厚は適宜決定され、通常、膜厚が20〜300μmのものが好ましく用いることができるため、本発明の燃料電池用電極の膜厚もこれに準じて製造する。
【0134】
また、この成膜工程を行う際に、繊維、マット、フィブリルなどの支持体、補強材を添加してもよいし、また、これら支持体に含浸させてもよい。これら支持体、補強材は耐熱性と耐酸性を勘案してガラス材料、シリコーン樹脂材料、フッ素樹脂材料、環状ポリオレフィン材料、超高分子量ポリオレフィン材料等から適宜選択し、用いることができる。含浸する方法としては、ディップ法、ポッティング法、ロールプレス法、真空プレス法など、限定されることなく、公知の方法を用いることが出来、また、加熱、加圧等を行ってもよい。
【0135】
7.1.5 縮合工程
本発明の燃料電池用電極の製造方法において、この第1の工程における縮合工程は、成膜工程を経て成膜した膜状物に含まれる加水分解性シリル基を加水分解及び縮合、及び/又はシラノール基を縮合させることにより、ケイ素−酸素架橋構造からなる粒子の連続体を有する膜を形成する工程である。
本発明における燃料電池用電極は、アルコキシシリル基等の加水分解、縮合により、架橋構造を形成し、高温においても安定的にプロトン伝導性を発揮し、形状変化等も少ないことを特徴とする。このようなアルコキシシリル基等の加水分解、縮合によるケイ素−酸素−ケイ素結合の生成はゾルゲル反応としてよく知られている。
ゾルゲル反応においては、反応加速及び制御のために、触媒が用いられるのが普通である。触媒は、通常、酸又は塩基が用いられる。
【0136】
7.1.6 触媒(F)
本発明の燃料電池用電極の製造方法において用いる触媒(F)は、酸であっても塩基であってもよい。
酸触媒を用いる場合には、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸などのブレンステッド酸を用いる。酸の種類、濃度等は特に限定されず、入手可能な範囲のものであればよい。この中でも塩酸は反応後、酸の残留等が比較的少なく、好適に用いることができる。塩酸を用いた場合、特に濃度等には制限はないが、通常0.01〜12Nのものが用いられる。
一般的に、酸を用いた場合には加水分解と縮合が競争することにより、分岐の少ない直鎖状の架橋構造となることが知られている。
【0137】
一方、塩基を触媒とした場合には、加水分解が一気に起こるために分岐の多い樹状構造となることが知られている。本発明においては、膜物性を勘案していずれの方法もとることが可能であるが、粒子、及びその連続体の形成という観点では、塩基触媒を用いるのが望ましい。
【0138】
塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の水溶液を用いることができる。この中でも、残留塩が生じないアンモニアは好適に用いることが出来る。更に、メルカプト基含有化合物(D)との相溶性等を勘案して、有機アミン類も好ましく用いることができる。
【0139】
有機アミン類は、特に制限無く用いることができるが、通常、沸点が50℃以上のものが好ましく用いられ、この範囲の入手容易な有機アミン類の具体例としては、トリエチルアミン、ジプロピルアミン、イソブチルアミン、ジエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、ピペラジン又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられ、いずれも好適に用いることができる。
【0140】
また、縮合触媒としてフッ化カリウム、フッ化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムフロリド、テトラエチルアンモニウムフロリドなどのフッ化物を用いても良い。
触媒の添加量は、任意に設定することが可能で、反応速度、膜原料との相溶性などを勘案して適宜決定する。
【0141】
触媒を導入する工程は、いずれのタイミングでもよい。最も簡便なのは前記調製工程で混合物を調製する際に導入する方法であるが、この場合には、成膜におけるポットライフやセット時間を勘案する必要がある。
【0142】
7.1.7 縮合反応
縮合反応は室温でも可能であるが、反応時間を短縮し、より効率的な硬化を行うためには加熱を行う方がよい。加熱は公知の方法で良く、オーブンによる加熱やオートクレーブによる加圧加熱、遠赤外線加熱、電磁誘導加熱、マイクロ波加熱などが使用できる。加熱は室温から300℃までの任意の温度で行うことが出来、100〜250℃で行うことが好ましい。この際、減圧下、窒素下、あるいはアルゴン下等、不活性ガス等の元で加熱しても良い。
【0143】
また、加熱は室温である程度時間をかけて硬化させてから、高温に徐々に昇温するなど、急激な環境変化を避ける方法を採用してもよい。
また、加水分解で必要な水を補給するために水蒸気下で行っても良く、また、急激な膜の乾燥を防ぐため、溶媒蒸気下で行ってもよい。
第2の工程を経た膜は、必要に応じて水洗により未反応物や効果触媒を取り除き、更に硫酸などでイオン交換を行ってもよい。
【0144】
7.2 第2の工程
本発明の燃料電池用電極の製造方法において、第2の工程は、膜中の前記メルカプト基を酸化してスルホン酸基とし、前記粒子の表面にスルホン酸基を導入された架橋構造体のスルホン酸基を、触媒を含む金属イオンと置換する工程である。
前述したように、酸化に先立ち、膜を水洗してもよく、又更に、触媒として有機アミン類を用いた場合には、酸化に先立って、塩酸、硫酸等の酸に膜を接触させ、触媒を取り除いてもよい。
【0145】
洗浄する際に用いる水は、蒸留水、イオン交換水など、金属イオンを含まないものが好ましい。水洗においては、加熱しても良く、加圧や振動を与えてより水洗を効率化してもよい。更に、膜中への浸透を促進するために、水にメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン等を加えた混合溶剤を用いてもよい。
【0146】
7.3 第3の工程
本発明の燃料電池用電極の製造方法において、第3の工程は、第2の工程で、スルホン酸基のプロトンを金属触媒のイオンを含む少なくとも1種類以上の陽イオンに置換させ、この後、この金属イオンを還元し、前記粒子の表面に金属粒子として析出せしめる工程である。
【0147】
この陽イオンに置換させる方法については、イオンを含む溶液に架橋構造体を浸漬する方法などが好適に用いられる。また、架橋構造体全体をイオンを含む溶液に浸漬してもよいが、電解質側に相当する面のみにイオンを含む溶液を接触させるようにすることにより、触媒の有効利用を図ることも可能である。
ここで、イオン的に結合していないイオンを洗い落とす工程を加えても良い。
【0148】
上記金属触媒を構成する金属イオンとしては、白金、金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、イリジウム、銀、モリブデン、鉄、クロム、コバルト、マンガン、ニッケルのうちいずれかの金属イオン含むイオンを少なくとも一種類以上含有するようにするのが望ましい。特に望ましくは、前述したように、白金を含む陽イオンであり、特に、[Pt(NH3)4]2+、[Pt(NH3)6]4+などが好適に用いられる。
【0149】
ここで、金属触媒のイオンを還元する方法としては、水素雰囲気にさらしたり、NaBH4溶液により還元する方法、加熱により還元する方法、紫外光を照射することで還元する方法あるいはこれらを併用して用いることができる。この温度については、架橋構造体に含まれる有機鎖が熱分解しない温度である、250℃以下、好ましくは200℃以下とするのが好ましい。水素雰囲気にさらすことによる還元の場合には、120℃〜250℃の温度、好ましくは150℃〜200℃の温度で水素ガスによって還元するのが望ましい。
【0150】
さらに、酸化により得られた膜中スルホン酸基のプロトン化のため、塩酸、硫酸等の強酸と接触させてもよい。この場合の酸濃度、浸せき時間、浸せき温度等のプロトン化条件は、膜中のスルホン酸基含有濃度、膜の多孔質度、酸との親和性などにより適宜決定される。代表例としては、1N硫酸中50℃1時間、膜を浸せきする方法などが挙げられる。
酸処理により、膜中の不純物や不要な金属イオンが洗い流されることが期待できる。酸処理の後、更に水洗を行うことが好ましい。
【0151】
なお、本発明で用いるメルカプト基酸化方法としては、特に制限されないが、一般的な酸化剤を用いることができる。具体的には、例えば、新実験化学講座(丸善、第3版)第15巻、1976において述べられているように、硝酸、過酸化水素、酸素、有機過酸(過カルボン酸)、臭素水、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、過マンガン酸カリウム、クロム酸などの酸化剤を用いることができる。
この中でも過酸化水素及び有機過酸(過酢酸、過安息香酸類)が比較的取扱いが容易で酸化収率も良好であることから好適に用いる事ができる。
【0152】
また、酸化後の電極は水洗して、電極中の酸化剤を取り除くことが好ましい。
【0153】
以上、述べてきた製造方法は一例であって、例えば、あらかじめ好ましい平均粒径を有するシリカ、あるいは金属酸化物粒子を用意し、これらの表面にメルカプト基含有化合物(D)をシランカップリング剤として表面処理した後酸化する方法なども可能である。ただし、このような表面処理法では安定した性能を得にくく、また、高濃度に表面処理することが困難であることもある。
【0154】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。なお、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用する化合物、溶媒等は、全て市販品をそのまま用い、特に記述しないものはいずれも和光純薬(株)社より入手した。また、作製された燃料電池用電極の評価物性値は、それぞれ以下にまとめた評価法によるものである。
[評価法]
【0155】
ナフィオン(Nafion112:登録商標)を電解質膜として用いて単セル燃料電池を作製した。作製した電極シートで電解質膜を挟み込み、これをエレクトロケム(Electrochem)社製単セル(膜面積5.25cm2)に導入して、単セル燃料電池を作製した。このようにして得られた燃料電池に対し、アノード側に水素、カソード側に酸素を導入し、出力に電子負荷を接続して、0〜120℃で、電圧−電流曲線を測定した。
【0156】
[実施例1]
第1の工程: 3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(チッソ製、商品名「サイラエースS−810」)0.4g、テトラエトキシシラン0.1g、ポリエチレングリコール♯200 0.1g、トリエチルアミン0.3g、水0.13gを0.8mLのテトラヒドロフランに溶解し、10分間室温で激しく撹拌した。
そしてこの工程で得られた混合物を15cm×15cmのテフロン(登録商標)製容器に注ぎ入れ、この中に、カーボンブラック粒子と四フッ化エチレン粒子からなる厚さ100ミクロン、10cm×10cmの導電性カーボンシートを浸漬して、10分静置した。
【0157】
このようにして作製したシートを取り出し、テフロン(登録商標)シートを介してプレスし、そのまま室温にて3日間静置した。得られたシートを80℃加湿下で12時間、更に120℃オーブンにて12時間、更に200℃オーブンにて12時間加熱した。得られたシートを取り出し、水、1N硫酸、水でそれぞれ1時間ずつ浸漬し、未反応物、トリエチルアミン、ポリエチレングリコールを膜から抽出した。
【0158】
第2の工程: さらにこのシートを、酢酸125mL、30%過酸化水素水100mlを混合して作製した過酢酸に浸せきし、80℃で1時間加熱した。得られたシートを過酢酸溶液から取り出し、80℃水で各1時間、3回浸せきして過酢酸溶液を十分に抽出した。この後、得られたシートをPt(NH3)4(OH)2水溶液に室温で12時間浸漬してイオン置換を行った。
【0159】
第3の工程: 第2の工程で得られたその後、蒸留水で洗浄、乾燥後、150℃で水素により還元を行い、金属触媒としての白金粒子3を析出させた。さらに、1N硫酸に50℃で1時間浸漬し、酸基をプロトン化したのち、蒸留水で洗浄し、室温で乾燥し、電極シートを得た。このとき、白金の坦持量は、5mg/10cm2であった。
この結果図1に示すように白金粒子3が、架橋構造体の粒子1のスルホン酸基の近傍に分布した燃料電池用電極が形成される。
なお、金属触媒のイオンを還元する温度を調整することにより、白金粒子の分布を調整することができ、図1に示したように金属触媒としての白金粒子3が導電性多孔質体4としてのカーボンブラック粒子および架橋構造体の粒子1のスルホン酸基の近傍に分布した燃料電池用電極を形成することもできる。2はプロトン伝導路を示す。ここでは白金粒子3が、少なくとも架橋構造体の粒子1と導電性多孔質体4との接する界面に位置する酸基の近傍に選択的に析出されるようにするのがのぞましい。
ここで用いる処理温度としては、120℃〜250℃の温度、好ましくは150℃〜200℃の温度で水素ガスによって還元する方法を好適にとることができる。水素による還元温度を180℃近辺に制御すれば、カーボン粒子表面に存在する金属触媒を含むイオンのみを選択的に還元することができる。これによって、金属触媒イオンを酸基と導電性粒子との両方の接点に析出させることができ、触媒をより有効利用することの可能な燃料電池用電極が実現される。
【0160】
このようにして得られた電極を用いて電解質シートをはさみこみ、単セル燃料電池を作成した。
そしてこの単セル燃料電池を前述した評価方法に基づき評価した。
その結果、120℃での発電結果は、最大出力密度:400mW/cm2、限界電流密度:1.5A/cm2であった。
【0161】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2として導電性多孔質体としての導電性カーボンシートにケイ素−酸素結合を有する架橋体を用いて撥水化処理を施した場合について説明する。
実施例1で用いた導電性カーボンシートが、以下の方法により合成されたケイ素−酸素結合を有する架橋体を用いて撥水化されたこと以外は、実施例1と同じ方法により電極シートを得た。
【0162】
(二官能前駆体の合成)
1,7−オクタジエン(和光純薬製)11.0gと、ジエトキシメチルシラン(信越シリコン社製)26.9gのトルエン溶液に、塩化白金酸(和光純薬製)とジビニルテトラメチルジシロキサン(Gelest社製)から調製したカルステッド触媒(Karsted:USP3775452参照)溶液0.05mmolを混合し、30℃の窒素雰囲気下で1昼夜攪拌した。このようにして得られた反応混合物を蒸留にて精製し、1,8−ビス(ジエトキシメチルシリル)オクタンを得た。構造は1H−NMRで確認した。
【0163】
(単官能前駆体の合成)
上記ジエトキシメチルシランに代えてジメチルエトキシシランを用いた以外は前記二官能前駆体の合成工程と同様にして、1,8−ビス(ジメチルエトキシシリル)オクタンを得た。構造はNMRで確認した。
上記方法で合成された、1、8−ビス(ジエトキシメチルシリル)オクタン12gと1、8−ビス(ジメチルエトキシリル)オクタン10gをカーボンブラック粒子30g、イソプロパノール20mlと十分に混合した後、1N塩酸3gを溶解したイソプロパノール溶液20mlと混合し、攪拌した後、ドクターブレードにてシート状に成形した。
【0164】
得られたシートを室温12時間、80℃加湿下で12時間、更に120℃オーブンにて12時間、更に200℃オーブンにて12時間加熱し、厚さ100ミクロンのカーボンシートを得た。これを、80℃水で1時間洗浄し、乾燥後、10×10cm2に切断して、撥水性を有する導電性カーボンシートを得た。
そしてこのようにケイ素−酸素結合を有する架橋構造体を用いて撥水性を得た導電性カーボンシートを用いたほかは実施例1と同様にして単セル燃料電池を形成し、前述した評価方法に基づき評価した。
【0165】
その結果、120℃での発電結果は、最大出力密度:420mW/cm2、限界電流密度:1.5A/cm2であった。このとき、白金の坦持量は、5mg/10cm2であった。
【0166】
[比較例1]
Nafion溶液(5wt% アルドリッチ社製)と白金坦持カーボンブラック(田中貴金属製、TEC10E50E)とイソプロパノールを十分に混合した後、カーボンブラック粒子と四フッ化エチレン粒子からなる厚さ100ミクロン、10cm×10cmの導電性カーボンシートに塗布した。得られたシート中の溶媒を室温乾燥2時間、80℃真空乾燥2時間により蒸発させ、電極シートを得た。
そして単セル燃料電池を形成し、前述した評価方法に基づき評価した。
その結果、120℃での発電結果は、最大出力密度:15mW/cm2、限界電流密度:0.2A/cm2であった。
前記実施例1および2と比較例との比較から、本発明によれば、高温下で高効率の特性を得ることができる。
なお、白金即ち金属触媒としての金属粒子は、スルホン酸が存在するところであれば電極全体に存在しても良いが、好ましくはカーボン粒子(導電性多孔質体)とも接触する部分に存在するように形成するのが望ましい。
また、前記実施例では、白金は架橋構造体粒子表面に析出させるようにしたが、白金を析出させたカーボン粒子を用いても良い。
【0167】
また前記実施例1および2では、燃料電池用電極を形成し、この電極で電解質膜を挟み込むことによって形成したが、前述の方法で形成したカーボンシートの片面に前述したような前駆体溶液を塗布、あるいは含浸させたものを用意し、これを塗布面が内側になるようにして張り合わせて硬化させることにより、特別に電解質膜を形成することなくMEAを形成することが可能となる。
【0168】
例えば、まず、メルカプト基を有し、かつ、メルカプト基と共有結合した縮合反応可能な加水分解性シリル基と、及び/又はシラノール基を有するメルカプト基含有化合物(D)と、極性制御剤(E)とを含有する混合物を調製する。
そして、これを導電性多孔質体を含む第1および第2の基体として多孔質導電体シートなどを用い、この少なくとも片面に前記混合物を供給し、これら第1および第2の基体を前記混合物の供給された面が内側になるようにして張り合わせる。
この後前記混合物に含まれる加水分解性シリル基を加水分解及び縮合、及び/又はシラノール基を縮合させることにより、ケイ素−酸素架橋構造からなる粒子の連続体を有する膜を形成する。
そして更に前記膜中の前記メルカプト基を酸化してスルホン酸基とし、前記粒子の表面にスルホン酸基を導入する。
最後に、このスルホン酸基のプロトンの少なくとも一部を、金属イオンを含む陽イオンに置換し、この金属イオンを還元して金属粒子を析出する。
このようにして燃料電池の電解質―電極接合体(MEA)が形成される。
【0169】
これにより製造が容易となることはいうまでもなく、異物質を張り合わせることなく形成できるため、温度変化や乾燥などの状態変化に対しても剥離を生じることもなく燃料電池としての信頼性の向上をはかることが可能となる。
【0170】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の燃料電池用電極は、白金などの金属粒子が架橋構造体、望ましくは粒状の架橋構造体の表面に析出せしめられてなり、導電性多孔質体と、電解質(酸基を含む)との3者の共存状態が、形成されるため、触媒の利用効率が高く、寸法安定性に優れており、しかも高温でも安定的に機能する。従って、低コスト化が可能となるとともに、高分子固体電解質形燃料電池の動作温度を100℃以上に上げることができ、この結果、発電効率の向上、冷却効率の向上、排熱利用によるトータル効率の飛躍的向上、触媒のCO被毒の低減を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の電極の要部拡大模式図
【符号の説明】
100 電極
200 電解質
300 集電体
1 粒子
2 間隙(プロトン伝導路)
3 白金粒子
4 導電性多孔質体
5 撥水剤

Claims (13)

  1. 導電性多孔質体と、
    その導電性多孔質体に接して形成され、少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素結合を含む架橋構造体と、
    前記酸基の近傍に析出された金属触媒を含む金属粒子とを有し、
    前記架橋構造体が、下式(1)で表される酸基含有架橋構造体を含むことを特徴とする燃料電池用電極。
    Figure 0004394906
    (式中、Xは架橋に関与する−O−結合又はOH基であり、R は炭素数20以下の炭化水素基を表し、R はメチル、エチル、プロピル又はフェニル基のいずれかの基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1のとき、R は異なる置換基の混合体でも良い。)
  2. 前記金属粒子が、少なくとも前記架橋構造体と導電性多孔質体の接する部分に位置する酸基の近傍に析出されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用電極。
  3. 前記架橋構造体が粒子の連続体を形成すると共に、
    前記粒子の表面には前記金属粒子が析出せしめられ、前記粒子の間隙にプロトン伝導路が形成される請求項1または2に記載の燃料電池用電極。
  4. 前記架橋構造体が、下式(2)で表される架橋構造体を含む請求項1乃至のいずれかに記載の燃料電池用電極。
    Figure 0004394906
    (式中、Xは架橋に関与する−O−結合又はOH基であり、Rは炭素数20以下のアルキル基を表し、nは2〜4の整数を表す。)
  5. 前記架橋構造体が、下式(3)で表される架橋構造体を含む請求項1乃至のいずれかに記載の燃料電池用電極。
    Figure 0004394906
    (式中、Xは架橋に関与する−O−結合又はOH基であり、Rは炭素数1〜30の炭化原子含有分子鎖を表し、Rはメチル、エチル、プロピル、ブチル又はフェニル基のいずれかの基を表し、nは0〜2の整数を表す。)
  6. 前記導電性多孔質体は、ゾルゲル反応による金属−酸素結合からなる架橋構造体によって撥水化されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の燃料電池用電極。
  7. 前記粒子が、ケイ素−酸素結合からなる3次元架橋構造と、前記式(1)で示される構造とを有し、前記式(1)で示される構造を有するケイ素原子が、粒子中の全ケイ素原子中の3%以上であることを特徴とする請求項3乃至のいずれかに記載の燃料電池用電極。
  8. 導電性多孔質体と、少なくとも一部に酸基の結合された金属−酸素結合を含む架橋構造体との混合物を作成する第1の工程と、
    前記酸基のプロトンを金属触媒のイオンを含む少なくとも一種類の陽イオンに置換する第2の工程と、
    前記金属イオンを還元して前記架橋構造体中に金属粒子を析出させ、金属粒子を含む架橋構造体を形成する第3の工程とを含む燃料電池用電極の製造方法。
  9. 前記混合物を作成する工程は、前記導電性多孔質体にゾルゲル反応による金属−酸素結合からなる架橋構造体と該構造と共有結合で結合した酸基を有する酸基含有構造体を形成する工程を含む請求項に記載の燃料電池用電極の製造方法。
  10. 前記酸基を有する架橋構造体は、メルカプト基を含有する架橋構造体を含み、
    前記第2の工程に先立ち、前記架橋構造体のメルカプト基を酸化する工程を含む請求項またはに記載の燃料電池用電極の製造方法。
  11. 前記第1の工程は、導電性多孔質体が前記架橋構造体によって撥水化されるように混合する工程を含むことを特徴とする請求項乃至10のいずれかに記載の燃料電池用電極の製造方法。
  12. 前記第1の工程は、メルカプト基を有し、かつ、メルカプト基と共有結合した縮合反応可能な加水分解性シリル基と、及び/又はシラノール基を有するメルカプト基含有化合物(D)と、極性制御剤(E)とを含有する混合物を調製する調製工程と、
    前記混合物に含まれる加水分解性シリル基を加水分解及び縮合、及び/又はシラノール基を縮合させることにより、ケイ素−酸素架橋構造からなる粒子の連続体を有する膜を形成する工程とを含み、
    前記第2の工程に先立ち、更に前記膜中の前記メルカプト基を酸化してスルホン酸基とし、前記粒子の表面にスルホン酸基を導入し、
    前記スルホン酸基のプロトンの少なくとも一部を、金属イオンを含む陽イオンに置換する第2の工程と、
    前記金属イオンを還元して前記架橋構造体中に金属粒子を析出させ、金属粒子を含む架橋構造体を形成する第3の工程とを含む請求項乃至11のいずれかに記載の燃料電池用電極の製造方法。
  13. 請求項1乃至に記載の燃料電池用電極、及び乃至12に記載の燃料電池用電極の製造方法のいずれかを用いてなる燃料電池。
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