JP4252097B2 - 直動転がり案内ユニット - Google Patents
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Description
このように、スライダがレールを跨る構成の直動転がり案内ユニットにおいては、レール側面とスライダとの間に隙間が形成される。そして、このレール側面とスライダとの間に形成される隙間から、ダストが侵入してしまうと、転動体の転動に伴って当該ダストをスライダ内に巻き込んでしまう。このようにダストがスライダ内に入り込んでしまうと、スライダのスムーズな摺動を長期に亘って維持することができなくなってしまう。
このように、ダストの侵入を防ぐ下面シールは、次のようにしてスライダに固定される。すなわち、下面シールの長手方向両端面近傍には挿入孔を形成する。一方、ケーシングの両端に設けたエンドキャップには、スライダをレールに跨がせたときに当該レール側面の近傍に位置する部分に、嵌合凸部を突出させる。そして、この嵌合凸部に下面シールの挿入孔を嵌合させることによって、下面シールをスライダの摺動方向に沿って保持するようにしている。
ところが、上記のように挿入孔と嵌合凸部とをきつく嵌合させようとすると、両者を嵌合させる際の圧入力を大きくしなければならない。具体的には、嵌合凸部を挿入孔に臨ませた状態で、下面シールを力強く押し込んで、当該嵌合凸部を挿入孔に貫通させる。
例えば、大型の直動転がり案内ユニットにおいて、スライダをレールに組み込む場合には、当然のこととしてスライダの重量も増す。こうした重量の大きなスライダを運搬する際に、当該スライダを持ち上げようとして下面シールに大きな外力が作用すると、やはり嵌合凸部を破損させてしまうことがある。
さらに、下面シールを取付ける際に嵌合凸部に傷がつかないとしても、下面シールは嵌合凸部に対して応力を作用し続ける状態で固定されているので、この応力によって、徐々に嵌合凸部が劣化してしまう。
したがって、多くの場合、下面シールがスライダから脱落した後に、エンドキャップやスライダを交換することとなるが、下面シールがスライダから脱落すると、この脱落した下面シールによってさまざまな悪影響がもたらされる。
例えば、直動転がり案内ユニットを上下方向に何段も設置している装置において、その装置の稼働中に下面シールが脱落すると、脱落した下面シールが、その下方のスライダに噛みこんでしまい、スライダやレールが故障するおそれがある。
このように、下面シールがスライダから脱落すると、脱落したスライダによって装置が故障したり、脱落した下面シールを除去するために装置の稼動を停止したりしなければならないという問題があった。
また、下面シールをスライダに固定した状態で、保持部と脱落防止突起の外周との間に隙間を保つようにしたので、嵌合凸部の嵌合に脱落防止突起が干渉することがない。したがって、通常状態においては、嵌合凸部が下面シールをしっかりと保持することができ、また脱落防止突起と保持部との寸法関係をある程度ラフにすることができる。
特に、第4の発明によれば、下面シールに対して、それをケーシング側に押し付けるように応力が作用しても、弾性突部がケーシングに接触することによって、嵌合凸部に作用する力を軽減することができる。したがって、レールへのスライダ組み込み時における外力等によって、嵌合凸部が劣化するのを防止することができる。
図1に示すように、この実施形態の直動転がり案内ユニットは、軌道面r,rを側面に形成したレールR上をスライダSが摺動する。
このスライダSは、ケーシング1の両端にエンドキャップ2,2を固定しており、これらケーシング1とエンドキャップ2,2とには、ころからなる複数の転動体3が無限に循環する無限循環路が形成されている。具体的には、ケーシング1は、本体部1aと、この本体部1aの両端から直角に突出する一対の側部1b,1bとからなる。また、上記エンドキャップ2も、上記ケーシング1と同様、本体部2aと、この本体部2aの両端から直角に突出する一対の側部2b,2bとからなる。つまり、スライダS全体としても、本体部と、この本体部の両端から直角に突出する側部を備えることとなる。
なお、上記無限循環路には潤滑油を含有した含油スリーブ4が組み込まれており、上記転動体3が含油スリーブ4内を転動することによって、当該転動体3が潤滑される。
また、スライダSの摺動方向両端面、つまり、エンドキャップ2,2におけるケーシング1とは反対側の面には、当該エンドキャップ2,2と別体からなる側面シール5,5を固定している。この側面シール5,5は、レールRの軌道面r,rに接触するリップ部を備えており、転動体3を介して軌道面r,rに塗布された油がスライダSの摺動範囲内から漏れ出さないように、また、軌道面r,r上のダストがスライダS内に入り込まないようにシール機能を果たす。
この下面シール6は、図2、図3に示すように、金属製の芯金7の外周にゴム等の弾性部材8をコーティングしてなる。芯金7は、平坦部7aと、この平坦部7aの幅方向に傾斜する傾斜部7bとからなる。そして、この芯金7の平坦部7aには、その長手方向の中ほどにおいて、図3(a)に示すようなゴム注入孔7cが3箇所形成されている。
芯金7をコーティングする弾性部材8は、上記ゴム注入孔7cを貫通して弾性突部8aを形成する。つまり、下面シール6は、芯金7の外周に弾性部材8をコーティングしているが、一方の面(図中上側の面)には弾性部材8を薄くコーティングし、この薄くコーティングした面側に、ゴム注入孔7cを介して弾性突部8aが部分的に突出するようにしている。これに対して、上記弾性突部8aが突出する側の面とは反対側の面(図中下側の面)には、弾性部材8を所定の厚さにコーティングし、下面シール6全体として平板状になるようにしている。
なお、図中符号8dは弾性部材8によって形成される圧接部である。この圧接部8dは、下面シール6の両端部近傍において、芯金7の傾斜部7b先端に位置するが、その詳細についても後述することとする。
上記の構成からなる下面シール6は、挿入孔10を介してスライダSに固定されるが、その詳細は次の通りである。
上記平坦部11cには、側部2bの先端面側に向かって嵌合凸部12を突出させている。この嵌合凸部12は、その先端から基端側に徐々に幅広になる掛止部12aを形成するとともに、この掛止部12aを下面シール6の挿入孔10に貫通させて、当該掛止部12aに下面シール6を保持するようにしている。
図6に示すように、下面シール6は、弾性突部8aを形成した面をスライダS側(ケーシング1およびエンドキャップ2側)に向けるとともに、エンドキャップ2の側部2bから突出する嵌合凸部12先端に、下面シール6の挿入孔10を臨ませる。
このまま下面シール6を図中x方向に移動させると、嵌合凸部12の掛止部12aが、ガイド部10aを弾性変形させながら挿入孔10に進入する。この状態からさらに下面シール6の端部を、エンドキャップ2の段差部11に押し付けると、図7に示すように、掛止部12aが、芯金7の掛止面7dに引っ掛かるようにして下面シール6を保持する。
したがって、下面シール6は、掛止部12aが掛止面7dに引っ掛かることと、圧接部8dが圧接面11aに圧接する圧接力とによって、段差部11の平坦部11cに密着し、その両端がエンドキャップ2にしっかりと固定される。
なお、図6,7中に点線で示すケーシング1は、その側部1b,1bの先端であって、当該一対の側部1b,1bの対向面側に傾斜面13を形成している。言い換えれば、ケーシング1には、エンドキャップ2の段差部11に対応する部分に傾斜面13を形成している。そして、図からも明らかなように、ケーシング1とエンドキャップ2とを固定したとき、段差部11が傾斜面13よりも側部2b先端側に突出するようにしている。
そして、下面シール6に形成した弾性突部8aは、上記傾斜面13に向かって突出することとなるが、このように弾性突部8aが突出することによって、傾斜面13と下面シール6との間に形成される隙間hを小さくするようにしている。
このように、弾性突部8aによって、隙間hを部分的に小さくしたのは、下面シール6を図中上方に押し上げる力が作用しても、嵌合凸部12が折れたり、あるいは亀裂が入ったりしないようにするためである。
このとき、下面シール6は、その両端部近傍、すなわちエンドキャップ2,2に対応する部分において、嵌合凸部12と、圧接部8dとによってスライダSに圧接保持されている。しかし、下面シール6のケーシング1に対応する部分では、第2リップ部8cがケーシング1に接しているだけの状態にある。そのため、弾性突部8aが形成されていないと、ケーシング1と下面シール6との対向間隔が大きくなってしまう。
このように、ケーシング1と下面シール6との対向間隔が大きい状態で、上記の如く下面シール6を図中上方に押し上げる力が作用すると、下面シール6のケーシング1に対応する部分に大きな変形が生じ、その変形がエンドキャップ2の嵌合凸部12に亀裂を発生させたり、あるいは掛止部12aを欠けさせたりしてしまう。
また、上記のように、下面シール6をスライダSに固定すると、第1リップ部8bの先端が、レールRの側面に僅かに接触するとともに、第2リップ部8c先端がケーシング1の傾斜面13に接触する。したがって、レールRの側面とスライダSの側部との間に形成される隙間を、スライダSの摺動方向全域に亘って防ぐことができる。
この側面シール5,5も、ケーシング1およびエンドキャップ2,2と同様、本体部5aと、この本体部5aの両端から直角に突出する一対の側部5b、5bとを備えている。そして、上記保持部14,14は、側部5b,5b先端であって、当該一対の側部5b,5bの対向面側に形成されている。
また、図10に示すように、保持部14を構成する凹みに脱落防止突起9が入り込んだとき、当該凹みと脱落防止突起9の外周との間に隙間が維持される寸法関係にしている。
すなわち、仮に、脱落防止突起9を保持部14に圧入させて、脱落防止突起9に嵌合凸部12と同じ役割を持たせてしまうと、下面シール6は、嵌合凸部12と脱落防止突起9との双方で固定されてしまう。このように、2箇所で下面シール6を保持してしまうと、下面シール6に外力が作用したときに、その外力を逃がしにくくなってしまい、嵌合凸部12や脱落防止突起9が破損しやすくなってしまう。そこで、脱落防止突起9の外周と保持部14との間に隙間を維持することで、下面シール6に作用する外力を逃がすようにしたのである。
なお、脱落防止突起9外周と保持部14との隙間の大きさは、特に限定されるものではないため、脱落防止突起9や保持部14の寸法関係をある程度ラフにすることができる。
したがって、下面シールの形状は必ずしも平板状にしなければならないわけではなく、その断面形状等は特に限定されない。
また、エンドキャップや、下面シールを保持するための嵌合凸部、さらには下面シールに形成する挿入孔の形状も上記実施形態に限らない。いずれにしても、エンドキャップに形成した嵌合凸部と、下面シールに形成した挿入孔とによって、下面シールをスライダにしっかりと固定できればよい。
また、上記実施形態においては、弾性突部が下面シールの長手方向に断片的に形成されているが、一つの弾性突部をケーシングと対面する範囲で下面シールの長手方向に連続的に形成しても構わない。
さらには、上記実施形態においては、下面シールの脱落を防止するための保持部を側面シールに形成したが、この保持部はエンドキャップに一体に形成してもよく、また、凹みではなく孔で形成してもよい。いずれにしても、下面シールの両端面に形成した脱落防止突起が入り込むとともに、当該脱落防止突起の外周との間に隙間ができる寸法関係であればよい。
1a,2a 本体部
1b、2b 側部
2 エンドキャップ
5 側面シール
6 下面シール
8a 弾性突部
9 脱落防止突起
10 挿入孔
11 段差部
12 嵌合凸部
13 傾斜面
14 保持部
スライダ S
h 隙間
Claims (4)
- ケーシングの両端に一対のエンドキャップを固定したスライダと、上記一対のエンドキャップ間に掛け渡すとともに、ダストの侵入を防止する機能を備えた下面シールとからなり、上記エンドキャップには嵌合凸部を設ける一方、上記下面シールには挿入孔を形成し、この挿入孔に上記嵌合凸部を嵌合させて下面シールをスライダに固定する直動転がり案内ユニットにおいて、上記下面シールの長手方向両端面には脱落防止突起を設ける一方、上記スライダには、下面シールをスライダに固定した状態で、脱落防止突起が入り込む孔または凹みからなる保持部を設け、この保持部を構成する孔または凹みと、上記脱落防止突起の外周との間に隙間を維持する構成にした直動転がり案内ユニット。
- スライダの摺動方向両端面には、エンドキャップと別体からなる側面シールを固定するとともに、この側面シールに上記保持部を形成した請求項1記載の直動転がり案内ユニット。
- 上記ケーシングおよびエンドキャップからなるスライダは、本体部と、この本体部の両端から直角に突出する一対の側部とを備えてなる一方、上記下面シールは平板状にしてなり、上記ケーシングにおける側部先端であって、当該一対の側部の対向面側には傾斜面を形成する一方、上記エンドキャップにおける側部先端であって、当該一対の側部の対向面側には段差部を形成し、しかも、この段差部は上記傾斜面よりも側部先端側に突出する寸法関係を維持してなり、かつ、この段差部に上記嵌合凸部を形成するとともに、この嵌合凸部に上記下面シールの挿入孔を嵌合させたとき、下面シールが段差部に圧接するとともに、上記傾斜面と下面シールとの間に隙間を維持する構成にした請求項1または2に記載の直動転がり案内ユニット。
- 下面シールには、ケーシングの傾斜面に対向する部分に弾性突部を形成するとともに、この弾性突部によって傾斜面と下面シールとの隙間を小さくする構成にした請求項3記載の直動転がり案内ユニット。
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