JP4250964B2 - 有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法 - Google Patents

有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、1960年代までは耐熱性、化学的安定性、高絶縁性などの優れた特性を有し、コンデンサーなどの電気部品の絶縁体や装置の熱媒体などに使用されていたが、その毒性が問題となり世界的に使用が規制されている。
しかしながら、PCBを実用的で安全に分解し、無害化する技術は未だ確立されておらず、廃棄すると生態系に重大な影響を及ぼすことから、大量のPCBが保管され廃棄できないでいる状態にあり、その処理技術が強く望まれている。
【0003】
このようなPCBの廃棄問題に対して、多くの研究機関、研究者がPCB分解技術の開発に取り組んでおり、以下に示す種々の技術が検討されているがそれぞれ問題を有しており実用化には至っていない状況である。
【0004】
(1)焼却法
処理自体は容易であるが、低温(200〜700℃)での焼却はダイオキシン類の発生を招くため、800℃以上の高温で所定の滞留時間での完全燃焼が必要とされている。しかし、炉内の温度管理が困難であり、運転開始と終了時には必ずダイオキシン類の発生温度を通過するため、その対策技術の開発が必要である。
【0005】
(2)アルカリ触媒化学分解法
例えば、有機塩素化合物中の塩素を水素と置換させ、ビフェニルやビフェニル誘導体などの無害な有機化合物と無機塩、水に分解する方法であるが、脱塩素、分解の条件が実用的な域に達していない。
【0006】
(3)超臨界水酸化分解法
超臨界水のもつ酸化分解反応に対する溶媒としての特性を利用してPCBを二酸化炭素、水、塩酸に分解する方法である。処理条件(374℃、220気圧)が大量処理に向いていない。
この他に化学抽出分解法、有機アルカリ金属分解法、触媒水素化脱塩素化法など化学的な反応利用した脱塩素処理であるが、いずれも管理の困難な薬品、生成物があるため、実用化のための管理技術の開発が必要である。
【0007】
(4)バイオレメディエーション
微生物の浄化作用を利用した分解処理であるが、現状は浄化に長時間を要し、能力不足である。これを改善するために紫外線分解との組み合せた処理があるが検討段階である。
【0008】
(5)爆薬による分解
爆薬による爆発によってPCB類似骨格をもつ有機ハロゲン化合物を瞬時に分解させる方法であるが、大量処理が困難である。
【0009】
(6)金属Na法
金属ナトリウムを使用して、比較的低温、常圧下でPCBを分解できる処理であるが、金属ナトリウムを扱うため大量処理が困難である。
【0010】
また、この他に近年大量に生産された有機ハロゲン化合物を含む各種プラスチック製品などを廃棄処理しようとした場合、焼却処理や埋め立て処理等が考えられるが、これらは二次汚染や有害ガスの発生等、環境への被害が深刻な悪影響を与えるおそれがあるため採用することができず、PCB問題と同様に、安全な処理技術が望まれている。
さらに、有機ハロゲン化合物の1種であるダイオキシン類、有機塩素系有機溶剤などによる土壌汚染が社会問題となっており、それらを分解し浄化する安全な処理技術も望まれている。
【0011】
そのような状況の中で、PCBを含む有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化方法として、有機ハロゲン化合物を含有する物質を酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムを含有する物質と混合し、常温でメカノケミカル処理した後、水洗濾過する方法が提案され、有望な処理方法として注目されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−70401号公報(段落[0021]〜[0024])
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法においては、有機ハロゲン化合物からハロゲン元素を取り出して完全に無毒化するためにはかなりの長時間メカノケミカル処理を行わなければならず、またメカノケミカル処理後には水洗濾過工程を必須の工程とすることから、実用上コスト高を招来するおそれがある。
【0014】
そこで本発明においては、安全で二次汚染の心配がなく、処理効率が極めて良好で処理時間が短く、かつ大量処理が可能な有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、メカノケミカル処理の効率化を目的として処理条件を検討していたところ、有機ハロゲン化合物を脱ハロゲン剤として希土類元素の酸化物を含有させると従来になく飛躍的に脱ハロゲン化反応が進む事実を掴み、さらにその技術に基づいた工業的に実用化可能な処理方法について鋭意検討することによって、本発明を成すに至った。
【0016】
すなわち、前記課題を解決するために提供する請求項1の発明に係る有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法は、有機ハロゲン化合物を含む材料をLa,Gd,Y,Ndのいずれかの希土類元素の酸化物と混合し、次いでメカノケミカル処理する工程を備えたことを特徴とする。
【0017】
これにより、前記希土類元素の酸化物には脱ハロゲン剤として酸化カルシウムよりも格段に優れた分解能力があるため、従来よりもメカノケミカル処理の反応時間の短縮が可能である。例えば、従来6〜7時間の反応時間を要していたメカノケミカル処理が2時間程度にまで短縮できる。
また、有機ハロゲン化合物からハロゲンを離脱させるだけではなく、ビフェニル環、ベンゼン環などの結合も切断され、最終的に希土類ハロゲン化合物と低分子量のハイドロカーボン、アモルファスカーボンなどの無害な物質とすることもでき、有機ハロゲン化合物を完璧に分解することも可能である。
ここで、前記希土類元素の酸化物として、分解の効率がよいLa 2 3 、Nd 2 3 、Gd 2 3 、Y 2 3 が好ましく、それを脱ハロゲン剤として適宜投入する。なお、脱ハロゲン剤は必ずしも精製された純度の高い希土類酸化物である必要はなく、前記希土類酸化物を含有するミッシュメタルやその他の鉱物であればよい。
【0018】
また、本発明に係る有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法はつぎのような特徴を有する。
(1)有害物質から塩素やハロゲンの離脱が起こり、ビフェニル環、ベンゼン環などの結合も切断され、最終的には希土類塩化物などと低分子量のハイドロカーボン、アモルファスカーボンなどの無害な物質となる。
(2)非加熱法であり、温暖化ガスの二酸化炭素やNOXやSOXなどの有害ガスの発生や加熱に伴う有害物質の二次的な生成物質のない、安全性の高いプロセスである。
(3)従来のメカノケミカル処理で使用される酸化カルシウム(CaO)と比較して、格段に優れた分解能力があり、反応時間(分解無害化操作時間)の短縮が可能であると共に、100%の完璧な分解が可能である。
(4)密閉系での反応であるため、有害物質の外部への漏洩がない。
【0019】
前記課題を解決するために提供する請求項2の発明に係る有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法は、請求項1の発明において、前記希土類元素の酸化物が、ランタンの酸化物であることを特徴とする。
【0020】
これにより、ランタンの酸化物(La23)は脱ハロゲン剤としてとくに優れた分解能力があるため、希土類酸化物を混合物とするもののうち、最もメカノケミカル処理の反応時間を短縮することが可能である。なお、脱ハロゲン剤としては必ずしも精製された純度の高いLa23である必要はなく、La23を含有するミッシュメタルやその他の鉱物であればよい。
【0021】
前記課題を解決するために提供する請求項3の発明に係る有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法は、請求項1の発明において、前記メカノケミカル処理をした後、水洗濾過処理を行い、ハロゲン化合物を除去することを特徴とする。
【0022】
これにより、メカノケミカル処理による有機ハロゲン化合物分解時に脱ハロゲン剤によって固定されたハロゲンを水溶性の塩として分離し除去することが可能である。このとき、水洗濾過後の残渣は無害化された上に炭素や炭化水素を含有しているため、乾燥させて固体燃料として有効利用してもよい。
【0023】
前記課題を解決するために提供する請求項4の発明に係る有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法は、請求項1の発明において、メカノケミカル処理した後の前記希土類元素の酸化物は、酸に溶解した後、アルカリを加え、次いで加熱脱水して再利用されることを特徴とする。
【0024】
これにより、メカノケミカル処理した後の希土類酸化物ハライドからハロゲンが取り除かれて前記希土類元素の酸化物が再生されるため、メカノケミカル処理に再利用することが可能であり、ハロゲンを回収しつつ脱ハロゲン剤として循環利用ができる。
なお、有機ハロゲン化合物が脱ハロゲン化され分解された結果である炭素や低分子量の炭化水素は、酸溶解の段階で炭酸塩として溶解されたり、焼成などによる加熱脱水の段階で二酸化炭素や低分子量の炭化水素ガスとなるため系外に除去可能である。また、脱ハロゲン化後の炭素化合物が高分子である時には、上記請求項3記載の方法で水洗濾過処理する際に酸を加えて処理し、ろ液にアルカリを加え、次いで加熱脱水処理して前記希土類元素の酸化物を再生することができる。
このとき使用する酸としては塩酸、硝酸、硫酸などがあり、ハロゲンを固定化した前記希土類元素の化合物は微小粒子であるために希酸でも溶解するが、工業的には1N以上の酸であることが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法について、具体的な実施形態を挙げて説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0026】
本発明に係る有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法は、メカノケミカル処理と希土類酸化物の再生処理とからなる。
(メカノケミカル処理)
まず、メカノケミカル処理工程について説明する。この工程は粉砕法を基本としたメカノケミカル法であり、有機ハロゲン化合物を含む材料中のハロゲンを固定化するために脱ハロゲン剤(反応促進剤)となる希土類酸化物を含む材料を添加して乾式で粉砕し、その過程で固相反応を発生させて脱ハロゲン化を図るものである。
【0027】
処理に当って原料となる有機ハロゲン化合物を含む材料を任意の大きさにした後、脱ハロゲン剤とともに所定の混合粉砕装置に投入してメカノケミカル処理を行う(s1)。
ここでメカノケミカル処理とは、一般的に原料物質に対して機械的エネルギー、例えばせん断、圧縮、衝撃、粉砕、曲げ延伸等を施し、処理物質表面に物理化学的変化を生じせしめて、その周囲に存在する気体、液体、固体との化学的変化を誘起促進するなどして、処理物質の化学的状態に影響をおよぼす処理をいう。
【0028】
メカノケミカル処理に用いる混合粉砕装置としては、ボールなどの媒体を使用する、遊星ボールミル、ボールミルなどの高エネルギー装置が望ましいが、混合・粉砕効果を有する装置ならば、これらに限定されるものではない。例えばボールミル、振動ミル、遊星ミル、媒体攪拌型ミル等の、衝撃、摩擦、圧縮、せん断等が複合したボール媒体ミルや、ジェット粉砕装置等が挙げられる。なお、装置内の水分は、脱ハロゲン剤を構成する希土類と反応して、その水酸化物を形成させてメカノケミカル反応の効率を低下させるので除去されていることが望ましい。
【0029】
メカノケミカル処理において原料と共に混合される脱ハロゲン剤とは、Yとランタノイド類であるLa、N、Gdの希土類元素の少なくともいずれか一種の酸化物であり、それを適宜投入する。これらの脱ハロゲン剤は従来のメカノケミカル処理で使用されていた酸化カルシウム(CaO)よりも格段に優れた有機ハロゲン化合物の分解能力があり、処理時間の大幅な短縮が可能である。例えば、従来6〜7時間の反応時間を要していたメカノケミカル処理が2時間程度にまで短縮できる。
このうち、La23 、N23、Gd23、Y23が分解の効率がよいため好ましく、その中でLa23、Gd23がとくに分解効率がよく好ましい。なお、原料とともに混合される脱ハロゲン剤は必ずしも精製された純度の高い希土類酸化物である必要はなく、希土類酸化物を含有するミッシュメタルやその他の鉱物であればよい。また、脱ハロゲン剤の添加量は混合される原料のハロゲンと反応する化学当量を考慮して決定すればよい。
【0030】
上記脱ハロゲン剤の添加とともに、粉砕助剤として酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)などを加えればメカノケミカル反応をさらに速くすることができるため好ましい。
【0031】
ステップs1のメカノケミカル処理において、例えば、原料(PCB)にランタンの酸化物(La23)を添加し、これを空気中で粉砕させると、メカノケミカル反応によってPCBは完全に分解され、反応終点時にはPCB中の塩素はLaOClとして固定され、その他に炭素や低分子量の炭化水素が生成している。このとき、メカノケミカル処理による原料の分解反応の進行度は処理時間に依存しているので、好適なメカノケミカル処理時間を選定することによって脱ハロゲン化物率を制御することができる。
【0032】
上記処理では1回のメカノケミカル処理を行う態様であるが、硬い処理原料や大きな処理原料などは、最初にそのまま混合粉砕装置に投入して粉砕したり、あるいは酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)などの粉砕助剤のみを添加して粉砕したりして処理原料を微細化した後に、上記で示したメカノケミカル処理を行って分解・無害化する2段階粉砕法としてもよい。
【0033】
(希土類酸化物の再生処理)
原料(PCB)にランタンの酸化物(La23)を添加してメカノケミカル処理した場合を例にとり、以下に説明する。また、以下の再生処理はその他の希土類酸化物でも同様の処理が可能である。
【0034】
ステップs1のメカノケミカル処理による生成物を塩酸などの酸に溶解させる(s2)。この段階で、LaOClは以下〔化1〕に示す反応で酸に溶解する。
【0035】
【化1】
LaOCl+HCl → La+3+2Cl-+OH-
【0036】
このとき使用する酸としては塩酸、硝酸、硫酸などがあり、LaOClは微小粒子であるために希酸でも溶解するが、工業的には1N以上の酸であることが好ましい。
【0037】
ついで、下記〔化2〕に示す反応のように、上記酸溶解液に水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加して中和させ、ランタンと塩素それぞれを水酸化ランタン、塩化ナトリウムとする(s3)。このアルカリ処理はステップs2で酸性となった液を中和するためのものであり、廃液処理としてpH7程度に中和できればよい。
【0038】
【化2】
La+3+3Cl-+3NaOH → La(OH)3↓+3NaCl↓
【0039】
ついで、以下〔化3〕に示す反応式のようにランタンの沈殿物について加熱脱水して、ランタンの酸化物とする(s4)。このときの反応温度は400〜600℃とすることが好ましい。このランタンの酸化物をステップs1のメカノケミカル処理に再利用することが可能であり、ハロゲンを回収しつつ脱ハロゲン剤の循環利用ができる。
【0040】
【化3】
2La(OH)3 → La23+3H2O↑
【0041】
なお、炭素や低分子量の炭化水素はステップs2の段階で炭酸塩として溶解したり、ステップs4の焼成の段階で二酸化炭素や低分子量の炭化水素ガスとなるため系外に除去可能である。
【0042】
希土類酸化物の再生処理として、上記のように酸で溶解する方法以外に、メカノケミカル処理後の生成物を直接焼成して下記〔化4〕に示す反応により再生する方法があるが、塩素ガスが発生するため、スクラバー処理などによって塩素ガスを除去することを考慮する必要がある。なお、炭素や低分子量の炭化水素は二酸化炭素や低分子量のガスとなり系外に除去可能である。
【0043】
【化4】
2LaOCl+O2 → La23+Cl2
【0044】
なお、ステップs1のメカノケミカル処理後、上記再生処理を行わずに、メカノケミカル処理によって得られた生成物を水洗濾過処理してもよい。
すなわち、その生成物を水によって洗浄することによって、生成物のうちLaOClを水に溶解させて水溶性の塩とし、カーボン(固相)と相分離させる(s12)。ついで、生成物を洗浄したものを先浄水とともにろ過する(s13)。これによって、LaOClがろ液としてカーボンと分離されて除去される(s14)。すなわち、これによりLaOClなどの無機ハロゲン化物を含む液相物質とカーボンを主とする固相物質を含む残渣とが分離される。
【0045】
また、ステップs13のろ過後の残渣を乾燥して固体残渣とすると(s15)、乾燥したものを焼却処理してもよいが、炭化水素が多く含まれているので固体燃料とすることができる。あるいは、固体残渣は脱ハロゲン化されているので、焼却処理や埋め立ての材料としてリサイクルする等、適宜処理してもよい。
【0046】
上記プロセスにおいて固相反応の達成度は予備実験によって予測可能であり、その生成物はすべて安全な物質であり、操作も室温下で実施され、単純かつ確実に処理が達成できる点が本発明に係る脱ハロゲン化方法の特徴である。
【0047】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
各実施例において、次に示す条件を標準条件とし、実施例ごとに添加する脱ハロゲン剤を変えて本発明のメカノケミカル処理を行った。
・混合粉砕装置:遊星ボールミル(Fritsh Pulverrisette-7)
・回転数:700rpm
・反応容器:ジルコニア製密閉ポット(45cm3)、空気雰囲気
・媒体:ジルコニア製ボールφ15mm、7個
・投入試料:5g
うち、処理原料:3-Chlorobiphenyl(以下、PCB)5wt%とし、それに化学量論的に適当量の脱ハロゲン剤を添加した。本実施例では95wt%を脱ハロゲン剤とした。
・粉砕時間:6時間
【0048】
〔実施例1〕
先ず、試料全体で5g、かつPCB 5wt%となるようにPCBと脱ハロゲン剤であるLa23とを計量した。
ついで、合計5gの計量したPCBとLa23とを混合粉砕用のポットにジルコニア製ボール7個とともに投入し、遊星ボールミルを用いて、所定条件のメカノケミカル処理を行った。
この遊星ボールミルは、例えば内容量が45cm3の2個のジルコニア製ポットが水平回転円盤上に取り付けられた構成を有している。この水平回転円盤は、回転半径70mmで時計回りに回転するようになされ、ポット自体も円盤と同一回転速度で半時計回りに回転するようになっている。
【0049】
〔実施例2〕
実施例1のLa23に代えて、脱ハロゲン剤をGd23として試料全体で5g、かつPCB 5wt%となるように計量し、以降は実施例1と同一条件でメカノケミカル処理を実施した。
【0050】
〔実施例3〕
実施例1のLa23に代えて、脱ハロゲン剤をY23として試料全体で5g、かつPCB 5wt%となるように計量し、以降は実施例1と同一条件でメカノケミカル処理を実施した。
【0051】
〔実施例4〕
実施例1のLa23に代えて、脱ハロゲン剤をNd23として試料全体で5g、かつPCB 5wt%となるように計量し、以降は実施例1と同一条件でメカノケミカル処理を実施した。
【0052】
参考例1
実施例1のLa23に代えて、脱ハロゲン剤をCeO2として試料全体で5g、かつPCB 5wt%となるように計量し、以降は実施例1と同一条件でメカノケミカル処理を実施した。
【0053】
〔比較例1〕
実施例1のLa23に代えて、脱ハロゲン剤をCaOとして試料全体で5g、かつPCB 5wt%となるように計量し、以降は実施例1と同一条件でメカノケミカル処理を実施した。
【0054】
〔比較例2〕
実施例1のLa23に代えて、添加物を水酸化ランタン(La(OH)3)として試料全体で5g、かつPCB 5wt%となるように計量し、以降は実施例1と同一条件でメカノケミカル処理を実施した。
【0055】
(調査方法)
上記実施例1〜4、参考例1、比較例1、2において、メカノケミカル処理よる生成物について、つぎの方法で調査を行った。
(1)PCB匂い:生成物についてPCBの匂いの有無を人の嗅覚で確認した。
(2)ガスクロマトグラフィー質量分析:生成物を水洗ろ過した後に、ろ過後の残渣を酢酸エチルに溶解し、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(HP model 3890 & model 5973)によりPCBの残留率と有機化合物の存在を分析した。
(3)生成物色調:生成物の色調を目視にて観察した。
(4)ラマン分光分析:生成物についてラマン分光分析装置(堀場製作所製)によりアモルファスカーボン生成の有無を確認した。
【0056】
(調査結果)
実施例1〜4、参考例1、比較例1、2におけるメカノケミカル処理よる生成物についての調査結果のまとめを表1に示す。以下にその内容を説明する。
【0057】
【表1】
Figure 0004250964
【0058】
(1)PCB匂い
比較例2にPCB特有の強い匂いがあり、比較例1でもその匂いが残っていたが、実施例1〜4ではいずれもその匂いはなかった。参考例1では微小の匂いが残っていた。
【0059】
(2)ガスクロマトグラフィー質量分析結果
実施例1〜4、参考例1のガスクロマトグラフィー質量分析結果をそれぞれ図1〜5に、比較例2の結果を図6に示す。ここで、各図において検出物特定のために縦軸スケールを調整しており、図1の縦軸スケールを1とすると、図2は0.7、図3は0.2、図4は0.1、図5は6、図6は1とした。また、図1〜5(実施例1〜4、参考例1)は所定の処理を行った原液について分析した結果を示しているが、図6(比較例2)ではその原液を21倍に希釈した液を分析した結果を示している。
【0060】
PCB残留率に関して、ガスクロマトグラフィー質量分析結果はPCB匂いの調査結果の傾向に対応しており、実施例1ではPCBは検出されず、実施例2ではPCBの残留率は0.01%であり、実施例3、4ではPCBの残留率は0.1%前後であった。また、参考例1(CeO2)では図5に示すようにPCBのピークは検出されたが、PCB分解生成物としての有機化合物が認められることからPCBの分解がある程度進んでおり、残留率としては15%であった。
これに対して、比較例1(CaO)でもPCBは分解されていたが残留率1.5%であった。また、比較例2(La(OH)3)ではPCBがほとんど分解されておらず、残留率としてほぼ100%であった。
【0061】
つぎに、PCB分解生成物としての有機化合物の存在に関して、実施例1(La23)、実施例2(Gd23)はそれぞれ図1、2に示すように検出物はなかった。本発明のメカノケミカル処理による反応は脱ハロゲン反応であり、PCBから塩素原子が脱離する反応であるが、処理が進行するに従い、さらに炭素原子に関わる化学的な結合が切断され、PCBが各種の中間体を経て完全に分解されていると推察される。
実施例3(Y23)、実施例4(Nd23)ではそれぞれ図3、4に示すようにビフェニルと水酸化ビフェニルとがごくわずかに検出されたが、それ以外には分解生成物の検出物はなく、PCBがほぼ完全に分解されていることが推察された。また、参考例1(CeO2)では図5に示すようにメカノケミカル反応の中間体としてビフェニル、水酸化ビフェニルが検出された。
これに対して、比較例1(CaO)でもメカノケミカル反応の中間体としてビフェニル、水酸化ビフェニル、ビフェニル誘導体等が検出された。また、比較例2(La(OH)3)では21倍希釈液の分析結果(図6)に示すようにPCB分解生成物の検出物は認められず、ランタンの水酸化物(La(OH)3)には分解能はほとんどないことがわかった。
以上のように、実施例1〜4においてはPCBはほぼ完全に分解された結果、塩素を含有する有機化合物はほとんど検出されず、有害な物質が生成されていないことがわかった。このうち、実施例1(La23)及び実施例2(Gd23)のPCB分解効果がとくに顕著であった。また、参考例1においては、PCBの分解が進んでいることが分かった。
【0062】
(3)生成物色調
メカノケミカル処理の生成物を目視にて観察したところ、実施例1〜4、参考例1において黒色を呈していることが確認された。これに対して、比較例1、2ともに白色であり、分解の程度が異なることをうかがわせた。
【0063】
(4)ラマン分光分析
実施例1〜4、参考例1と比較例2のメカノケミカル処理の生成物についてそれぞれラマン分光分析したところ、図7に示す結果が得られた。
図7に示すように実施例1〜4、参考例1において、波数が1312(cm 1)と1570(cm 1)の近辺にピークが確認された。これによりPCBの分解が進行しアモルファスカーボンが形成されたことがわかった。これに対して、比較例2においては、アモルファスカーボンのピークは認められなかった。生成物の色調として炭素レベルまで分解されると黒色を呈し、分解がそこまでに至らない場合には白色を呈していると考えられる。
【0064】
以上のように、希土類元素の酸化物を脱ハロゲン剤としたメカノケミカル処理によれば、PCBなどの有機ハロゲン化合物を分解して効率的に脱ハロゲン化を達成することができる。このうち、La23、Gd23がとくに分解効率がよく短時間の処理が期待できる。また、脱ハロゲン化とともに有機化合物についても低分子量化でき、場合によっては炭素レベルにまで分解することも可能である。なお、本実施例では脱ハロゲン剤として純度の高い希土類酸化物を使用したが、必ずしも高純度である必要はなく、希土類酸化物を含有するミッシュメタルやその他の鉱物であれば同様の脱ハロゲン化の効果を得ることができる。
【0065】
なお、上述した実施例1〜4、参考例1のメカノケミカル処理によって得られた生成物をそれぞれ1Nの塩酸で溶解し、ついでその溶液を水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、加熱脱水したところ、実施例1の生成物からはLa23を、実施例2の生成物からはGd23を、実施例3の生成物からはY23を、実施例4の生成物からはNd23を、参考例1の生成物からはCeO2を得ることができ、それぞれ再使用可能であることを確認した。
【0066】
また、上記実施例1〜4、参考例1のメカノケミカル処理によって得られた生成物を水洗濾過処理し、水溶性物質と残渣とを分離し適宜処理した。この水洗濾過処理により、ハロゲン化物をより確実に除去することができた。
【0067】
なお、本実施例では処理原料として3-Chlorobiphenylを使用したが、本発明に係る脱ハロゲン化方法は、その他のPCBの処理はもちろんのこと、ダイオキシン類や有機塩素系有機溶剤等の各種有機塩素化合物や有機ハロゲン化合物の処理にも有効である。
【0068】
上述したように、本発明の有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法によれば、有機ハロゲン化合物を含む材料をメカノケミカル処理して、脱ハロゲン化、低分子量化し、原料の無害化を簡易に行いつつ、効率的で有害物質の発生も回避することができた。
【0069】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、La,Gd,Y,Ndのいずれかの希土類元素の酸化物を脱ハロゲン剤として用いることにより、従来よりもメカノケミカル処理の反応時間を短縮できると共に、脱ハロゲン後の物質はビフェニル環、ベンゼン環等の結合も切断可能で、より低分子の無害物質とすることができる。
請求項2の発明によれば、Laの酸化物(La23)の脱ハロゲン剤としてとくに優れた分解能力により、アモルファスカーボン等のより低分子量の物質にまで分解することが可能である。
請求項3の発明によれば、メカノケミカル処理による有機ハロゲン化合物分解時に脱ハロゲン剤によって固定されたハロゲンを水溶性の塩とすることにより、分離し除去することができる。
請求項4の発明によれば、メカノケミカル処理した後の前記希土類元素の酸化物からハロゲンが取り除かれて再生されることにより、メカノケミカル処理に再利用することが可能であり、ハロゲンを回収しつつ脱ハロゲン剤として循環利用ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1(La23)のメカノケミカル処理を行った試料のガスクロマトグラフィー質量分析結果である。
【図2】 実施例2(Gd23)のメカノケミカル処理を行った試料のガスクロマトグラフィー質量分析結果である。
【図3】 実施例3(Y23)のメカノケミカル処理を行った試料のガスクロマトグラフィー質量分析結果である。
【図4】 実施例4(Nd23)のメカノケミカル処理を行った試料のガスクロマトグラフィー質量分析結果である。
【図5】 参考例1(CeO2)のメカノケミカル処理を行った試料のガスクロマトグラフィー質量分析結果である。
【図6】 比較例2(La(OH)3)のメカノケミカル処理を行った試料のガスクロマトグラフィー質量分析結果である。
【図7】 本実施例のメカノケミカル処理を行った試料のラマン分光分析結果である。

Claims (4)

  1. 有機ハロゲン化合物を含む材料をLa,Gd,Y,Ndのいずれかの希土類元素の酸化物と混合し、次いでメカノケミカル処理する工程を備えた有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法。
  2. 前記希土類元素の酸化物が、Laの酸化物である請求項1に記載の有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法。
  3. 前記メカノケミカル処理をした後、水洗濾過処理を行い、ハロゲン化合物を除去する請求項1に記載の有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法。
  4. メカノケミカル処理した後の前記希土類元素の酸化物は、酸に溶解した後、アルカリを加え、次いで加熱脱水して再利用される請求項1に記載の有機ハロゲン化合物を含む材料の脱ハロゲン化方法。
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