JP4250822B2 - 炭化珪素半導体装置の製造方法 - Google Patents

炭化珪素半導体装置の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化珪素半導体装置の製造方法に関し、特に絶縁ゲート型電界効果トランジスタ、とりわけ大電力用の縦型パワーMOSFETに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プレーナ型のMOSFETとして特開平10−308510号公報に示されるものが知られている。
【0003】
このプレーナ型MOSFETの断面図を図8に示す。この図に基づいてプレーナ型MOSFETの構造について説明する。
【0004】
+ 型炭化珪素半導体基板(以下、n+型基板という)1は上面を主表面1aとし、主表面の反対面である下面を裏面1bとしている。このn+ 型基板1の主表面1a上には、基板1よりも低いドーパント濃度を有するn- 型炭化珪素エピタキシャル層(以下、n- 型エピ層という)2が積層されている。
【0005】
- 型エピ層2の表層部における所定領域には、所定深さを有するp- 型炭化珪素ベース領域3aおよびp- 型炭化珪素ベース領域3b(以下、p-型ベース領域3a、3bという)が離間して形成されている。また、p- 型ベース領域3aの表層部における所定領域には、p- 型ベース領域3aよりも浅いn+ 型ソース領域4aが、また、p- 型ベース領域3bの表層部における所定領域には、p- 型ベース領域3bよりも浅いn+ 型ソース領域4bがそれぞれ形成されている。
【0006】
さらに、n+ 型ソース領域4aとn+ 型ソース領域4bとの間におけるn- 型エピ層2およびp- 型ベース領域3a、3bの表面部にはn-型層5a及びn+ 型層5bからなるn- 型SiC層5が延設されている。つまり、p- 型ベース領域3a、3bの表面部においてソース領域4a、4bとn- 型エピ層2とを繋ぐようにn- 型SiC層5が配置されている。このn- 型SiC層5は、デバイスの動作時にデバイス表面においてチャネル形成層として機能する。以下、n- 型SiC層5を表面チャネル層という。
【0007】
表面チャネル層5のうちp- 型ベース領域3a、3bの上部に配置されたn-型層5aのドーパント濃度は、1×1015cm-3〜1×1017cm-3程度の低濃度となっており、かつ、n- 型エピ層2及びp- 型ベース領域3a、3bのドーパント濃度以下となっている。これにより、低オン抵抗化が図られている。
【0008】
また、p- 型ベース領域3a、3b、n+ 型ソース領域4a、4bの表面部には凹部6a、6bが形成されている。
【0009】
表面チャネル層5の上面およびn+ 型ソース領域4a、4bの上面にはゲート絶縁膜(シリコン酸化膜)7が形成されている。さらに、ゲート絶縁膜7の上にはゲート電極8が形成されている。ゲート電極8は絶縁膜9にて覆われている。絶縁膜9としてLTO(Low Temperature Oxide)膜が用いられている。その上にはソース電極10が形成され、ソース電極10はn+ 型ソース領域4a、4bおよびp- 型ベース領域3a、3bと接している。また、n+ 型基板1の裏面1bには、ドレイン電極層11が形成されている。
【0010】
このように構成された蓄積モードで動作し、チャネル移動度を向上させることによってオン抵抗の低減が図られている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
一方、パワーデバイスとしてさらなる高耐圧化が要望されている。このため、オフ状態において、ドレイン電圧を印加した場合においても、常にオフ状態が維持されるようにする必要がある。特に、数百V以上のドレイン電圧が印加された場合において、そのドレイン電圧は、n-型エピ層(ドリフト領域)2とp-型ベース領域3a、3bとで形成されるPN接合の逆バイアス状態にて保持される。従って、上記要望は、n-型エピ層2並びにp-型ベース領域3a、3bを厚く設けたり、またはp-型ベース領域3a、3bでは層厚を厚くする代わりにドーピング濃度を高くすることにより達成される。
【0012】
ここで、p-型ベース領域3a、3bでは層厚を厚くするには、SiC内の不純物の拡散係数がSiに比して1〜2桁小さく、Siのような不純物の熱拡散が利用できないために、数MeV程度の高い加速エネルギーによるイオン注入技術が必要となる。このイオン注入技術によるp-型ベース領域3a、3bの形成工程を図9(a)〜(c)に示す。
【0013】
図9(a)のようにイオン注入を行った後、注入されたイオン種の再結晶化及び活性化のための熱処理を、SiCでは、1000〜1800℃の範囲にて行っている。従って、イオン注入領域が厚くなると、再結晶化及び活性化のための熱処理時に、図9(b)の矢印で示すように、イオン注入層の上部及び下部では隣接する層の結晶形を継承するが、中央部においては、図9(c)に示すように、1000〜1800℃において安定構造である3C−SiCが形成され、イオン注入領域全体を単一の結晶形とすることが困難である。特に、6H、4H−SiCを基板に用いた場合には、イオン注入領域と基板との境界近傍では、基板の結晶形(Poly−type)を継承した結晶構造となるが、イオン注入領域中央では熱的に安定な3C−SiCとなる。このように、3C−SiCが形成されると、3C−SiCとなった部分においてバンドギャップが狭くなり、MOSFETの耐圧を低下させるという問題がある。また、結晶形が異なる部位との界面で結晶欠陥が蓄積され、さらにMOSFETの耐圧を下げる可能性もある。
【0014】
本発明は上記点に鑑みて成され、高耐圧構造を形成するにあたり、イオン注入領域を単一結晶形とする再結晶及び活性化熱処理技術を提供し、炭化珪素半導体装置の耐圧を向上させることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、ベース領域(3a、3b)形成工程は、第2導電型の不純物を1MeV以上の加速エネルギーで注入する工程と、レーザによって熱処理するレーザ熱処理工程を施し、注入された不純物を活性化させると共に該ベース領域(3a、3b)を再結晶化させる工程と、を含むことを特徴としている。
【0016】
このように、ベース領域が深く注入されるような場合において、レーザによって熱処理を行い、ベース領域を再結晶化させることにより、レーザによって直接熱処理を行えるため、ベース領域が部分的に異なる結晶形となることを防止し、同じ多型で形成されるようにすることができる。これにより、炭化珪素半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0017】
さらに、請求項に記載の発明においては、レーザ熱処理工程では、ベース領域(3a、3b)の下方側端から上方側端へ向かって順に、もしくは上方側端から下方側端に向かって順にレーザ照射を行うことを特徴としている。
【0018】
これにより、ベース領域の下方側もしくは上方側からベース領域が接する部分の結晶形を継承させ、ベース領域すべてがその結晶形で形成されるようにすることができる。
【0019】
例えば、請求項に示すように、レーザ熱処理工程では、レーザを集光した集光部で熱処理が行われるようにして熱処理を行うことができる。また、請求項に示すように、レーザ熱処理工程では、複数のレーザが互いに交差するようにレーザ照射を行い、該レーザの交差する部分で熱処理が行われるようにすることもできる。
【0020】
具体的には、請求項に示すように、レーザとしてエキシマレーザを用いることができる。そして、ベース領域の上部に炭化珪素が介在する場合には、請求項に示すように、エキシマレーザの波長を、その炭化珪素のバンドギャップのエネルギーより一意にλ=1239.9/Eg(eV)の式より得られる波長よりも長くすれば、かつ、イオン注入にてアモルファス化した部分にて吸収される波長とすることにより、熱処理を行いたい領域でエネルギーが吸収されるようにできる。なぜなら、アモルファス化した場合には、バンドギャップが単結晶でのバンドギャップよりも小さくなるからである。
【0021】
また、請求項に示すように、レーザとして、He−Cdレーザ、He−Neレーザ、Ar+レーザのいずれかを用いることもできる。これらのレーザは4H−SiCのバンドギャップよりも波長が狭いため、ベース領域の上に4H−SiCが配置されている場合に特に有効である。また、請求項に示すように、レーザ光に代えてX−rayを用いる場合においても請求項と同様のことが言える。
【0022】
さらに、請求項に示すように、レーザに代えて、電子線、中性子線、陽電子線のいずれかを用いることもできる。
【0023】
この場合、中性子等が原子と衝突するまで注入されるため、アモルファス化しているベース領域と衝突し、ベース領域を熱処理することができる。
【0025】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。
【0027】
図1に、本実施の形態におけるノーマリオフ型のnチャネルタイププレーナ型MOSFET(縦型パワーMOSFET)の断面図を示す。本デバイスは、インバータや車両用オルタネータのレクチファイヤに適用すると好適なものである。
【0028】
図1に基づいて縦型パワーMOSFETの構造について説明する。但し、本実施形態における縦型パワーMOSFETは、上述した図8に示すMOSFETとほぼ同様の構造を有しているため、異なる部分についてのみ説明する。なお、本実施形態における縦型パワーMOSFETのうち、図8に示すMOSFETと同様の部分については同様の符号を付してある。
【0029】
本実施形態におけるMOSFETでは、p-型ベース領域3a、3bを加速エネルギーが1〜8MeVのイオン注入にて形成している。これに対して、図8に示すMOSFETでは、p-型ベース領域3a、3bを1MeV以下で形成しているため、本実施形態におけるMOSFETの方が図8に示すMOSFETよりも層厚が厚くなっている。具体的には、本実施形態では、ドーパントとしてAlを用いた場合にはp-型ベース領域3a、3bの層厚が約4μm程度となり、B(ボロン)を用いた場合には約6μmとなる。
【0030】
そして、本実施形態におけるMOSFETでは、p-型ベース領域3a、3bがすべて同一のpoly−typeの結晶形(例えば、4H)をしており、p-型ベース領域3a、3bの下層に位置するn−型エピ層2の結晶形を承継している。
【0031】
このように、すべて同一の結晶形でp-型ベース領域3a、3bが構成されている。従来のように、p-型ベース領域3a、3bの中央位置に結晶形が異なる3C−SiCが形成された場合には、その部位のバンドギャップが狭くなること、結晶形が異なる部位との界面で結晶欠陥が蓄積されること、を理由にMOSFETの耐圧が下がってしまうが、本実施形態では、そのような問題を無くすことができる。
【0032】
次に、図1に示す縦型パワーMOSFETの製造工程を、図2〜図4を用いて説明する。
【0033】
〔図2(a)に示す工程〕
まず、n型4Hまたは6Hまたは3C−SiC基板、すなわちn+ 型基板1を用意する。ここで、n+ 型基板1はその厚さが400μmであり、主表面1aが(0001)Si面、又は、(112−0)a面である。この基板1の主表面1aに厚さ5μmのn- 型エピ層2をエピタキシャル成長する。本例では、n- 型エピ層2は下地の基板1と同様の結晶が得られ、n型4Hまたは6Hまたは3C−SiC層となる。
【0034】
〔図2(b)に示す工程〕
- 型エピ層2の上の所定領域にMo(モリブデン)膜20を配置し、これをマスクとしてB+ (若しくはアルミニウム)をイオン注入して、p- 型ベース領域3a、3bを形成する。このときのイオン注入条件は、加速エネルギーが1〜8MeV、温度が700℃で、ドーズ量が1×1016cm-2としている。このため、ドーパントとしてAlを用いた場合にはp-型ベース領域3a、3bの層厚が約4μm程度となり、B(ボロン)を用いた場合には約6μmとなる。
【0035】
この後、p-型ベース領域3a、3bの再結晶化及び活性化熱処理工程を行う。この工程の様子を図5に示して説明する。まず、上述したイオン注入を行った時点では、図5(a)に示すように、p-型ベース領域3a、3bは、n+ 型基板1の表面から所定深さの位置までイオンが注入され、イオン注入された部分がアモルファス化した状態(図中に点々で示す)となっている。このアモルファス化しているp-型ベース領域3a、3bに対して図5(b)に示すような熱処理を行う。
【0036】
この熱処理工程では、レーザを用いて熱処理を行っている。このレーザとしては、レーザ波長を調整可能なエキシマレーザを用いている。そして、エキシマレーザの波長が4H−SiCのバンドギャップで決まる波長よりも長くなるようにしている。これは、レーザ波長が4H−SiCのバンドギャップよりも短いと、アモルファス化しているp-型ベース領域3a、3bよりも上層に介在する4H−SiCにレーザのエネルギーが吸収されてしまうためである。なお、図2(b)においては、p-型ベース領域3a、3bがn+ 型基板1の表面から形成されているように記載されているが、実際には、その表面から所定深さの位置までイオンが注入されるため、p-型ベース領域3a、3bよりも上層に4H−SiCが介在することになる。
【0037】
このエキシマレーザのレーザ光50を集光レンズ51を用いて集光し、集光部のみ熱処理に適したエネルギー状態となるように配置している。これにより、集光部近傍のみ熱処理が進行するようにしている。
【0038】
そして、まず、レーザ50の集光部をイオン注入領域の基板側、つまりp-型ベース領域3a、3bの下方側端に位置させた後、レーザ光50をスキャンしながらイオン注入領域全体をカバーするように集光部を基板平面方向に走査する。これにより、イオン注入領域のうちp-型ベース領域3a、3bの下方側端から所定の高さまで熱処理が行われ、p-型ベース領域3a、3bの下層に位置するn-型エピ層2のpoly−typeの結晶形(多型)の情報を継承して再結晶化が行われる(図中にハッチングで示す)。
【0039】
このとき、p-型ベース領域3a、3bの下方側端から熱処理を行っているため、p-型ベース領域3a、3bのうちのそれよりも上方に位置する部分にレーザ光50のエネルギーが吸収され得るが、そのエネルギー吸収率を見込んでレーザ光50のパワーを設定すればよい。
【0040】
その後、集光部を基板側から内部(p-型ベース領域3a、3bの上方側端)に向かって、例えば再結晶化されていない位置まで移動させたのち、イオン注入領域全体をカバーするように集光部を基板平面方向に走査する。以下、このような処理を繰り返すことにより、p-型ベース領域3a、3bの下層から順に、n-型エピ層2の結晶形の情報が継承され、図5(c)に示すように、すべて同一のpoly−typeの結晶形を有するp-型ベース領域3a、3bが形成される。なお、参考として図5(b)中の矢印で集光部の走査経路を示す。
【0041】
〔図2(c)に示す工程〕
Mo膜20を除去した後、基板1の上面からN+ をイオン注入して、n- 型エピ層2の表層部及びp- 型ベース領域3a、3bの表面部(表層部)にn- 型層5a及びn+ 型層5bからなる表面チャネル層5を形成する。このときのイオン注入条件は、温度が700℃、ドーズ量が1×1016cm-2としている。これにより、表面チャネル層5は、p- 型ベース領域3a、3bの表面部では補償されてn型の不純物濃度が薄いn- 型層として形成され、n- 型エピ層2の表面部ではn型の不純物濃度が濃いn+ 型層として形成される。
【0042】
また、縦型パワーMOSFETをノーマリオフ型にするために、表面チャネル層5の厚み(膜厚)は以下の数式に基づいて決定している。縦型パワーMOSFETをノーマリオフ型とするためには、ゲート電圧を印加していない状態の際に、n- 型層5aに広がる空乏層が電気伝導を妨げるように十分なバリア高さを有している必要がある。この条件は次式にて示される。
【0043】
【数式1】
Figure 0004250822
但し、Tepi はn- 型層に広がる空乏層の高さ、φmsは金属と半導体の仕事関数差(電子のエネルギー差)、Qsはゲート絶縁膜(酸化膜)7中の空間電荷、Qfcはゲート酸化膜(SiO2)とn-型層5aとの間の界面(以下SiO2/SiC界面という)の固定電荷、Qiは酸化膜中の可動イオン、QssはSiO2/SiC界面の表面電荷、Coxはゲート絶縁膜7の容量である。
【0044】
この数式1に示される右辺第1項は表面チャネル層5とp- 型ベース領域3a、3bとのPN接合のビルトイン電圧Vbuilt による空乏層の伸び量、すなわちp- 型ベース領域3a、3bから表面チャネル層5に広がる空乏層の伸び量であり、第2項はゲート絶縁膜7の電荷とφmsによる空乏層の伸び量、すなわちゲート絶縁膜7から表面チャネル層5に広がる空乏層の伸び量である。従って、p- 型ベース領域3a、3bから広がる空乏層の伸び量と、ゲート絶縁膜7から広がる空乏層の伸び量との和が表面チャネル層5の厚み以上となるようにすれば縦型パワーMOSFETをノーマリオフ型にすることができるため、この条件を満たすようなイオン注入条件で表面チャネル層5を形成している。
【0045】
このようなノーマリオフ型の縦型パワーMOSFETは、故障などによってゲート電極に電圧が印加できないような状態となっても、電流が流れないようにすることができるため、ノーマリオン型のものと比べて安全性を確保することができる。
【0046】
また、図1に示すように、p- 型ベース領域3a、3bは、ソース電極10と接触していて接地状態となっている。このため、表面チャネル層5とp- 型ベース領域3a、3bとのPN接合のビルトイン電圧Vbuilt を利用して表面チャネル層5をピンチオフすることができる。例えば、p- 型ベース領域3a、3bが接地されてなくてフローティング状態となっている場合には、ビルトイン電圧Vbuilt を利用してp- 型ベース領域3a、3bから空乏層を延ばすということができないため、p- 型ベース領域3a、3bをソース電極10と接触させることは、表面チャネル層5をピンチオフするのに有効な構造であるといえる。
【0047】
また、ノーマリオフ型の縦型パワーMOSFETにするためには、上記数式2の条件を満たすように表面チャネル層5の厚みを設定する必要があるが、シリコンを用いた場合にはVbuilt が低いため、表面チャネル層5の厚みを薄くしたり不純物濃度を薄くして形成しなければならず、不純物イオンの拡散量の制御が困難なことを考慮すると、非常に製造が困難であるといえる。しかしながら、SiCを用いた場合にはVbuilt がシリコンの約3倍と高く、n- 型層の厚みを厚くしたり不純物濃度を濃くして形成できるため、ノーマリオフ型の蓄積型MOSFETを製造することが容易であるといえる。
【0048】
〔図3(a)に示す工程〕
表面チャネル層5の上の所定領域にLTO膜21を配置し、これをマスクとしてN+ をイオン注入し、n+ 型ソース領域4a、4bを形成する。このときのイオン注入条件は、700℃、ドーズ量は1×1015cm-2としている。
【0049】
〔図3(b)に示す工程〕
そして、LTO膜21を除去した後、フォトレジスト法を用いて表面チャネル層5の上の所定領域にMo膜22を配置し、これをマスクとしてRIEによりp- 型ベース領域3a、3b上の表面チャネル層5を部分的にエッチング除去する。
【0050】
〔図3(c)に示す工程〕
さらに、Mo膜22をマスクにしてB+ をイオン注入し、ディープベース層30a、30bを形成する。これにより、ベース領域3a、3bの一部が厚くなったものとなる。このディープベース層30a、30bは、n+ 型ソース領域4a、4bに重ならない部分に形成されると共に、p- 型ベース領域3a、3bのうちディープベース層30a、30bが形成された厚みが厚くなった部分が、ディープベース層30aが形成されていない厚みの薄い部分よりも不純物濃度が濃く形成される。
【0051】
〔図4(a)に示す工程〕
Mo膜22を除去した後、基板の上にウェット酸化によりゲート絶縁膜(ゲート酸化膜)7を形成する。このとき、雰囲気温度は1080℃とする。
【0052】
その後、ゲート絶縁膜7の上にポリシリコンからなるゲート電極8をLPCVDにより堆積する。このときの成膜温度は600℃とする。
【0053】
〔図4(b)に示す工程〕
引き続き、ゲート絶縁膜7の不要部分を除去した後、LTOよりなる絶縁膜9を形成しゲート絶縁膜7を覆う。より詳しくは、成膜温度は425℃であり、成膜後に1000℃のアニールを行う。
【0054】
〔図4(c)に示す工程〕
そして、室温での金属スパッタリングによりソース電極10及びドレイン電極11を配置する。また、成膜後に1000℃のアニールを行う。
【0055】
このようにして、図1に示す縦型パワーMOSFETが完成する。
【0056】
次に、この縦型パワーMOSFETの作用(動作)を説明する。
【0057】
本MOSFETはノーマリオフ型の蓄積モードで動作するものであって、ゲート電極に電圧を印加しない場合は、表面チャネル層5においてキャリアは、p- 型ベース領域3a、3bと表面チャネル層5との間の静電ポテンシャルの差、及び表面チャネル層5とゲート電極8との間の仕事関数の差により生じた電位によって全域空乏化される。ゲート電極8に電圧を印加することにより、表面チャネル層5とゲート電極8との間の仕事関数の差と外部からの印加電圧の和により生じる電位差を変化させる。このことにより、チャネルの状態を制御することができる。
【0058】
また、オフ状態において、空乏領域は、p- 型ベース領域3a、3b及びゲート電極8により作られた電界によって、表面チャネル層5内に形成される。この状態からゲート電極8に対して正のバイアスを供給すると、ゲート絶縁膜(SiO2 )7と表面チャネル層5との間の界面においてn+ 型ソース領域4a、4bからn- 型ドリフト領域2方向へ延びるチャネル領域が形成され、オン状態にスイッチングされる。このとき、電子は、n+ 型ソース領域4a、4bから表面チャネル層5を経由し表面チャネル層5からn- 型エピ層2に流れる。そして、n- 型エピ層2(ドリフト領域)に達すると、電子は、n+ 型基板1(n+ ドレイン)へ垂直に流れる。
【0059】
このようにゲート電極8に正の電圧を印加することにより、表面チャネル層5に蓄積型チャネルを誘起させ、ソース電極10とドレイン電極11との間にキャリアが流れる。
【0060】
(他の実施形態)
上記実施形態では、レーザを集光させ、その集光させたポイントにエネルギーを発生させて再結晶化させるようにしているが、以下のようにしてもよい。
【0061】
図6に、レーザの照射の様子を示す。この図に示されるように、複数のレーザ60、61を用い、複数のレーザが互いに交差するようにし、この交差する領域62で熱処理が行われるようにすることができる。
【0062】
このような熱処理によれば、交差する広い面で大きなエネルギーを発生させることができるため、上記実施形態よりも広範囲で熱処理を行うことができる。このため、半導体装置の製造の容易化が図れ、生産効率を向上することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、p-型ベース領域3a、3bの基板側から表面側(p-型ベース領域3a、3bの下方側端から上方側端)に向かって順に再結晶化させているが、図7に示すように、表面側から基板側(上方側端から下方側端)に向かって順に再結晶化させることもできる。この場合には、p-型ベース領域3a、3bは、p-型ベース領域3a、3bよりも表面側に位置する4H−SiCの結晶形の情報を承継することになる。
【0064】
ただし、この場合にも、p-型ベース領域3a、3bの上層に位置する4H−SiCにレーザのエネルギーが吸収されないように、4H−SiCのバンドギャップよりも波長の長いレーザとする必要がある。このため、この場合にはエキシマレーザの波長を調整し、波長が4H−SiCのバンドギャップよりも長くなるように熱処理を行う。
【0065】
また、上記実施形態では、エキシマレーザを用いているが、他のレーザを用いることも可能である。例えば、He−Cdレーザ、He−Neレーザ、Ar+レーザを用いても良い。また、レーザに代えて、X−ray、電子線、中性子線、陽電子線等を用いても良い。
【0066】
例えば、He−Cdレーザ、He−Neレーザ、Ar+レーザ、X−rayの場合、波長が4H−SiCのバンドギャップよりも長くなっているため、4H−SiCを透過させて4H−SiCの下層に位置するp-型ベース領域3a、3bにレーザを照射する場合にも、上層の4H−SiCにエネルギーが吸収されることなく、p-型ベース領域3a、3bの再結晶化を行うことができる。
【0067】
また、中性子線の場合には、原子と衝突するまで中性子が注入されるため、p-型ベース領域3a、3bの上層に位置す4H−SiCのチャネリングの方向に合わせて中性子線を入射すると、アモルファス化しているp-型ベース領域3a、3bの所で中性子が原子と衝突しエネルギーを発生させ、p-型ベース領域3a、3bを再結晶化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における縦型パワーMOSFETの断面図である。
【図2】図1に示す縦型パワーMOSFETの製造工程を示す図である。
【図3】図2に続く縦型パワーMOSFETの製造工程を示す図である。
【図4】図3に続く縦型パワーMOSFETの製造工程を示す図である。
【図5】レーザによる熱処理工程の様子を示した図である。
【図6】他の実施形態におけるレーザによる熱処理工程の様子を示した図である。
【図7】他の実施形態におけるレーザによる熱処理工程の様子を示した図である。
【図8】従来の縦型パワーMOSFETの断面図である。
【図9】ベース領域の再結晶化の様子を説明するための図である。
【符号の説明】
1…n+ 型基板、2…n- 型エピタキシャル層、
3a、3b…p- 型ベース領域、4a、4b…n+ 型ソース領域、
5…表面チャネル層(n- 型SiC層)、5a…n- 型層、5b…n+ 型層、
7…ゲート絶縁膜、8…ゲート電極、9…絶縁膜、10…ソース電極、
11…ドレイン電極、50…レーザ光、51…集光レンズ。

Claims (8)

  1. 第1導電型の半導体基板(1)の主表面上に、この半導体基板(1)よりも高抵抗な炭化珪素よりなる第1導電型の半導体層(2)を形成する工程と、
    前記半導体層(2)の表層部の所定領域に、所定深さを有する第2導電型のベース領域(3a、3b)をイオン注入によって形成する工程と、
    前記半導体層(2)及び前記ベース領域(3a、3b)の上部に表面チャネル層を形成する工程と、
    前記ベース領域(3a、3b)の表層部の所定領域に、前記表面チャネル層(5)に接すると共に該ベース領域(3a、3b)の深さよりも浅い第1導電型のソース領域(4a、4b)を形成する工程とを備えた炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
    前記ベース領域(3a、3b)形成工程は、
    第2導電型の不純物を1MeV以上の加速エネルギーで注入する工程と、
    レーザによって熱処理するレーザ熱処理工程を施し、注入された不純物を活性化させると共に該ベース領域(3a、3b)を再結晶化させる工程と、を含み
    前記レーザ熱処理工程では、前記ベース領域(3a、3b)の下方側端から上方側端へ向かって順に、もしくは上方側端から下方側端に向かって順にレーザ照射を行うことを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
  2. 前記レーザ熱処理工程では、前記レーザを集光した集光部で前記熱処理が行われるようにすることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
  3. 前記レーザ熱処理工程では、複数のレーザが互いに交差するようにレーザ照射を行い、該レーザの交差する部分で前記熱処理が行われるようにすることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
  4. 前記レーザとしてエキシマレーザを用いることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
  5. 前記エキシマレーザの波長を4H−SiCのバンドギャップから決められる波長よりも長くすることを特徴とする請求項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
  6. 前記レーザとして、He−Cdレーザ、He−Neレーザ、Ar+レーザのいずれかを用いることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
  7. 前記レーザに代えて、X−rayを用いることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
  8. 前記レーザに代えて、電子線、中性子線、陽電子線のいずれかを用いることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
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