JP4249881B2 - J1c試験装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属材料の低速安定き裂成長が発生する近傍での破壊靱性の評価等に供されるJ1C値(引張限界J積分値)を求めるための試験、つまりJ1C試験を行うための試験装置に関し、更に詳しくは、除荷コンプライアンス法に基づくJ1C試験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
除荷コンプライアンス法に基づくJ1C試験においては、一般に、図3に示すように、疲労予き裂と称されるき裂Cをあらかじめ形成した試験片Wを用い、その試験片Wに対して引張荷重Pを加え、その引張荷重Pと荷重点変位とをそれぞれ計測しながら、図4に荷重−荷重点変位曲線を示すように、所定の荷重点変位に達するごとに例えば10%程度の除荷を行う。
【0003】
また、その各除荷点における荷重−荷重点変位曲線の傾きであるコンプライアンスを算出して各除荷点におけるき裂進展量Δaを求めるとともに、その各除荷点までに試験片Wに加えたエネルギ(各除荷点までの荷重の積分値)を上記曲線下の面積から算出してJ値を求め、これら両者の関係を表すJ−Δaカーブを求める。そして、そのJ−Δaカーブ上の点で、かつ、0.15mm臨界線と1.5mm臨界線の間にある点を用いて、Rカーブ(べき乗則回帰線)の近似式である、
J=C1 (Δa)C2 ・・・・(1)
のC1 とC2 を最小二乗法により決定する。更に、そのRカーブと鈍化直線との交点からJ1C値を求める。
【0004】
従来のこの種の試験装置においては、各除荷点におけるJ値とΔaの算出、それらを用いたRカーブにおけるC1 およびC2 の決定、並びにJ1C値の決定を自動的に行うデータ処理装置を備えたものが実用化されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、除荷コンプライアンス法に基づくJ1C試験では、除荷ごとにJ値とき裂進展量Δaを求める各ステップにおいて、突然のき裂伝播が発生して荷重が急激に減少したり、あるいは除荷開始点と除荷終了点付近のコンプライアンスの変化などに起因して、J値もしくはΔaの値に大きな計測誤差が含まれるステップが生じる可能性がある。
【0006】
従来のJ1C試験装置においては、前記した臨界線の間にあるデータの全てを用いてRカーブの係数を算出する関係上、上記のような計測誤差が含まれているJ値もしくはΔaが存在している場合には、最終的に求められたJ1C値の精度が悪化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、J値もしくはΔaの計測結果に誤差が含まれるものがあっても、高い精度でRカーブの演算を行うことができ、最終的なJ1C値の精度を悪化させることを防止することのできるJ1C試験装置の提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のJ1C試験装置は、疲労予き裂が付与された試験片に負荷機構により引張荷重を加え、荷重点変位の複数のレベルにおいてそれぞれ所要の率だけ除荷を繰り返しつつ、試験片に作用する荷重および荷重点変位を刻々と計測し、その各計測結果から各除荷点におけるJ値とき裂進展量Δaを算出し、その各J−Δaデータ対からRカーブを求めてJ1C値を求めるデータ処理部を備えたJ1C試験装置において、上記データ処理部は、上記J値とき裂進展量Δaの算出結果を示す数値データ対を記した表と、その各数値データ対をグラフ上にプロットしたJ−Δaカーブとを表示器の同一の画面上にに表示するとともに、上記表には、各データ対の有効/無効を指定するための欄が設けられ、その欄で無効である旨の指定がなされたデータ対については、上記Rカーブの算出に供さないように構成されていることによって特徴づけられる。
【0009】
本発明は、除荷の各ステップにおいて求められたJ値とΔa値のデータ対のうち、オペレータが表示器に表示されたプロットもしくは数値データを参照して計測誤差が含まれていると思われる任意のものを指定することにより、そのデータ対を無効としてRカーブの演算に供さないようにすることで、所期の目的を達成しようとするものである。
【0010】
すなわち、突然のき裂伝播やコンプライアンスの変化等の何らかの原因によって、J値もしくはΔa値に計測誤差が含まれた場合、そのデータ対は一連のデータ対からなるJ−Δaカーブ上で特異な位置に位置する。従って、各除荷ステップにおいて求められたJ値とΔa値のデータ対によって形成されたJ−Δaカーブを表示器の画面上で参照することにより、計測誤差が含まれているデータ対を容易に見いだすことができ、そのようなデータ対については、J−Δaカーブが表示されている画面に併せて表示されているデータ対の表に設けられている有効/無効を指定するための欄において、無効である旨指定してRカーブの演算に供さないようにすれば、得られるRカーブは誤差の含まない精度の高いものとなり、ひいては高精度のJ1C値を求めることが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の構成を示すブロック図である。
疲労予き裂が導入された試験片Wには、負荷機構1によって引張荷重が加えられる。その試験片Wに作用する荷重はロードセル2によって検出され、荷重アンプ3で増幅された後、A−D変換器4によってデジタル化されて、データ処理・制御部5に刻々と取り込まれる。また、その引張荷重による試験片Wの荷重点変位はクリップゲージ6によって検出され、その検出出力は変位アンプ7によって増幅された後、A−D変換器8によってデジタル化されて刻々とデータ処理・制御部5に取り込まれる。
【0012】
データ処理・制御部5はコンピュータとその周辺機器を主体として構成されており、各種指令やデータを入力するためのキーボード10と、試験結果や後述するJ−Δaカーブ等を表示する表示器11が接続されているとともに、表示器11上の画面上の任意のポイントを指定してデータ処理・演算部5に各種処理を行わせるためのマウス12を備えている。また、このデータ処理・演算部5では、試験時における制御用プログラムに従い、刻々と取り込んだ荷重データと荷重点変位データを用いて、前記した図4に例示した荷重−荷重点変位曲線に沿って試験片Wが負荷されるように、D−A変換器9を介して負荷機構1に制御信号を供給する。
【0013】
更に、このデータ処理・制御部5では、演算プログラムに従い、試験中に取り込んだ荷重データと荷重点変位データを用いて、各除荷点における荷重−荷重点変位の傾きからコンプライアンスを求めてき裂進展量Δaを算出するとともに、その各時点における荷重−荷重点変位曲線下の面積を計算することによってエネルギを求めてJ値を得る。この各除荷点におけるJ値とΔaのデータ対はデータ処理・制御部5のメモリ内に記憶されていく。そして、データ処理・制御部5では、あらかじめ定められた一連の負荷動作を終了すると、メモリ内に記憶しているJ−Δaの数値データ対を、表示器11の画面上に表示するとともに、そのデータ対をグラフ上にプロットしたJ−Δaカーブを画面上に表示する。
【0014】
その表示の例を図2に示す。この例においては、各J−Δaデータ対をプロットしたグラフGと、各J−Δaの数値データ対からなる表Tとを同じ画面上に同時に表示している。また、グラフGのプロットには、表Tの数値データ対に付されている番号と共通の番号を付して両者の対応関係を明確化している。更に、このグラフGには、0.15mm臨界線と1.5mm臨界線、鈍化直線、および0.15mm臨界線と1.5mm臨界線の間にあるJ−Δaデータ対を用いて前記した(1)式を用いて近似演算したRカーブを併せて表示している。なお、当初に表示するRカーブは、2つの臨界線間のJ−Δaデータ対の全てを用いて演算したRカーブである。
【0015】
そして、この例においては、各J−Δaの数値データ対を記した表Tには、それぞれのデータ対が有効であるか無効であるかを指定するための欄TCが設けられており、オペレータがマウス12を用いてこの欄TCに無効である旨の指定を行うと、データ処理・制御部5は、そのデータ対についてはRカーブの演算に用いず、残りの有効なデータ対を用いて(1)式の各係数を再演算してRカーブを求め、グラフG上のRカーブの表示を変更する。同時に、無効の指定を受けたJ−Δaデータ対については、グラフ上のプロットの色を変更する等によって、その旨を表示する。そして、変更後のRカーブと鈍化直線の交点からJ1C値を算出する。
【0016】
このような無効データ対の指定後に、有効データ対のみを使用して演算されたRカーブと鈍化直線とから求められたJ1C値は、計測誤差のない正確なものとなる。
【0017】
すなわち、試験中の各除荷ステップにおいて求められたJ値およびΔaには、前記したように突然のき裂の伝播や除荷開始点,除荷終了点近傍のコンプライアンス変化等に起因して大きな計測誤差が含まれる場合があるが、そのような誤差を含むデータ対は、誤差を含まないデータ対からなるJ−Δaカーブから逸脱することになり、従って、オペレータは表示器11に表示されているグラフGから容易にそのような計測誤差を含むデータ対を見いだすことができる。従って、グラフGから逸脱しているデータ対があれば、そのデータ対については表Tの有効/無効欄TCに無効である旨の指定を行うことで、そのデータ対を除いたJ−Δaデータ対を用いて、誤差の少ないRカーブの演算が行われ、そのRカーブと鈍化直線との交点から求められるJ1C値は、計測誤差に影響されない正確なものとなる。
【0018】
なお、J−Δaデータ対の有効/無効の指定方法については、以上の実施の形態のように表Tに設けた欄TCで行う方法に限定されないことは勿論であり、例えばグラフ上の任意のプロットを例えばダブルクリックするといった方法等を採用することができる。
【0019】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、試験中の各除荷点において計測されたJ値とき裂進展量Δaの数値データ対と、そのデータ対をプロットしたグラフとを、試験後に表示器に表示し、オペレータがその表示に基づいて計測誤差が大きいと判断して無効と指定したものがあれば、その指定されたデータ対を除外した残りのデータ対を用いてRカーブを演算してJ1C値を求めるため、突然のき裂の進展等の何らかの原因によって計測誤差の大きなデータ対があった場合、オペレータは表示器に表示されたJ−Δaカーブから容易にその誤差の大きなデータ対を見いだすことができるとともに、そのデータ対を除外した正確なRカーブを容易に計算させることができ、常に正確なJ1C値を求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の表示器11による表示例の説明図である。
【図3】J1C試験において用いられる試験片の説明図である。
【図4】J1C試験において試験片に対して付与される荷重−荷重点変位曲線の例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 負荷機構
2 ロードセル
3 荷重アンプ
4,8 A−D変換器
5 データ処理・制御部
6 クリップゲージ
7 変位アンプ
9 D−A変換器
10 キーボード
11 表示器
12 マウス
W 試験片
Claims (1)
- 疲労予き裂が付与された試験片に負荷機構により引張荷重を加え、荷重点変位の複数のレベルにおいてそれぞれ所要の率だけ除荷を繰り返しつつ、試験片に作用する荷重および荷重点変位を刻々と計測し、その各計測結果から各除荷点におけるJ値とき裂進展量Δaを算出し、その各J−Δaデータ対からRカーブを求めてJ1C値を求めるデータ処理部を備えたJ1C試験装置において、
上記データ処理部は、上記J値とき裂進展量Δaの算出結果を示す数値データ対を記した表と、その各数値データ対をグラフ上にプロットしたJ−Δaカーブとを表示器の同一の画面上に表示するとともに、上記表には、各データ対の有効/無効を指定するための欄が設けられ、その欄で無効である旨の指定がなされたデータ対については、上記Rカーブの算出に供さないように構成されていることを特徴とするJ1C試験装置。
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Publications (2)
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JP2000156145A Expired - Lifetime JP4249881B2 (ja) | 2000-05-26 | 2000-05-26 | J1c試験装置 |
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