JP4247354B2 - 表面微細凹凸組織の低温形成法および当該組織を有する基体 - Google Patents

表面微細凹凸組織の低温形成法および当該組織を有する基体 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明によって得られる表面微細凹凸組織を有する薄膜は、超親水性と高い光透過性を有している。また、疎水性を有する第2層を設けることによって超撥水性を付与することができる。従って、表示用、輸送機材用、建築装飾用などの各種基体に適用することができる。また、基体表面に超親水-超撥水パターンを形成したものは、印刷分野へ応用できる。
【0002】
【従来技術】
基体上に微細凹凸組織を形成する手法として、いくつかの方法が既に知られている。ガラスなどの脆性材料に対しては、サンドブラスト、粗研磨などによる機械的手法あるいはフッ化水素酸などによるエッチングに代表される化学的手法、さらに気相法や液相法によって微細凹凸組織を有する薄膜を基体に直接形成する方法などが多く提案されている。また、有機高分子などの塑性材料に対しては、射出成形やエンボス加工などが実施されている。
【0003】
前記手法によって形成された微細凹凸組織と撥水膜或いは親水膜を組み合わせ、その相乗効果により、超撥水性あるいは超親水性等の特性を提供する技術が多く提案されている。
【0004】
例えば、下地層に微細な凹凸を形成させた撥水皮膜として特開平4−124047号公報、特開平4−239633号公報、特開平6−16455号公報、特開平7−267684号公報、特開平10−1333号公報などが知られている。また、ジメチルシリコンアルコキシドを含む塗布液で成膜した、表面層が凹凸形状を有する撥水膜に関して特開平10−259037号公報も知られている。
【0005】
また、親水性被膜に関しても、凹凸を有する被膜に関する出願としては、例えば下地層に微細な凹凸を形成させたものとして特開平7−164971号公報、特開平8−227006号公報等が知られている。
【0006】
特に最近ゾル−ゲル法を用いた優れた性能を有する超撥水、超親水膜が注目されている、例えば、アセト酢酸エチルで安定化したアルミニウムブトキシドの塗布溶液から薄膜を作製し、400℃で熱処理を行った後沸騰水に浸漬して花弁状アルミナ微細凹凸組織を形成し、フルオロアルコキシランを塗布した超撥水薄膜がJournal of American Ceramic Society、80巻、4号、1040−1042頁 1997年.に公表されている。さらに、ジメチルジエトキシシランやフェニルトリエトキシシランを含む塗布溶液から薄膜を作製し、500℃で熱処理することにより微細凹凸組織が形成され超撥水膜、600℃で熱処理することにより有機官能基が完全に燃焼し超親水膜となることが第39回ガラスおよびフォトニクス材料討論会講演予稿集、講演番号A−34、105−106頁 1998年.に公表されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
種々の基体表面に微細凹凸組織を有する薄膜を形成すことで、基体の親水性・疎水性を制御することができる。特に、接触角が150°以上のいわゆる超撥水性を示す膜は、従来の撥水性薄膜が利用されている分野においてその特性を大幅に改善したり、さらに全く新しい分野に応用できる可能性が高いことから注目を集めている。
【0008】
しかしながら、アセト酢酸エチルで安定化したアルミニウムブトキシドの塗布溶液やジメチルジエトキシシランやフェニルトリエトキシシランを含む塗布溶液から微細凹凸組織を有する薄膜を作製するためには、通常400℃以上の熱処理を必要とする。即ち、有機高分子をはじめとする耐熱性の比較的低い基体には、その表面に微細凹凸組織を付与できず、もって超撥水?超親水表面は形成できないという極めて大きな問題点があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アルミニウムアルコキシドの安定化剤や有機添加物を、従来の熱処理による燃焼?分解で除去するのではなく、温水処理によって溶出させ除去している。さらに溶出させる温水の温度を制御することによって、溶出と同時にベーマイトよりなる微細凹凸組織の形成を可能にしている。
【0010】
すなわち、本発明は、アルミニウム化合物を含む溶液を基体に塗布して、アルミニウム化合物の皮膜を形成し、これを特に熱処理することなく温水に浸漬することを特徴とする表面微細凹凸組織の低温形成法とその凹凸組織を有する基体を提供する。
【0011】
特に、塗布溶液がアルミニウム化合物としてアルミニウムアルコキシドとさらにその安定化剤を含むことを特徴とする表面微細凹凸組織の低温形成法と前記溶液が水溶性有機高分子を含む表面微細凹凸組織の低温形成法とその凹凸組織を有する基体に関し、該表面微細凹凸組織を下地層として、疎水層をさらに1層設けた、もしくは光触媒層1層と疎水層1層を設けた基体に関するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
前記アルミニウム化合物としては、アルミニウムアルコキシド、アルミニウム錯体、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムが挙げられる。なかでもアルミニウムアルコキシドが好ましい。アルコキシドとしては、例えば、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム-n-ブトキシド、アルミニウム-sec-ブトキシド、アルミニウム-tert-ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナートなどが挙げられる。
【0013】
また、前記安定化剤としては、例えば、アセチルアセトン、ジピロバイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタンなどのβ−ジケトン化合物類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸−iso−プロピル、アセト酢酸−tert−ブチル、アセト酢酸−iso−ブチル、アセト酢酸−2−メトキシエチル、3−ケト−n−バレリック酸メチルなどの、β−ケトエステル化合物類;さらには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの、アルカノールアミン類等を挙げることができる。
【0014】
また、塗布溶液には必要に応じて希釈溶媒を用いる。希釈溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコールもしくはエチレングリコール−モノ−n−プロピルエーテルなどのアルコール類;n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタンのような各種の脂肪族系ないしは脂環族系の炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの各種の芳香族炭化水素類;ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどの各種のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの各種のケトン類;ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテルのような各種のエーテル類;クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素。テトラクロロエタンのような、各種の塩素化炭化水素類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネートのような、非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。
【0015】
本発明で使用される塗布溶液を調製するに当たり、溶液の安定性の点から上述した各種の溶剤類のうちアルコール類を使用することが好ましい。また、アルミニウムアルコキシドと安定化剤を塗布溶液を調製する際には、必要に応じて水を添加して、金属に結合したアルコキシ基を部分的に加水分解してもよい。水を添加する際の添加量は比較的自由に設定できるが、アルミニウムアルコキシド1モルあたり1から4程度にすることが好ましい。
【0016】
一方、アルミニウムアルコキシドを含み安定化剤を含まない塗布溶液を調製する際には、アルミニウムアルコキシドが急激に加水分解され溶液の白濁、沈殿を生じるので水は直接添加しないことが好ましい。
【0017】
アルミニウムアルコキシドと安定化剤を含有する塗布溶液には、アルコキシ基の加水分解を促進したり、脱水縮合反応を促進するための触媒を添加することができる。
【0018】
触媒の代表的なものとしては、硝酸、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、アンモニアなどが挙げられる。
【0019】
触媒類の添加量としては、幅広く設定できるが、アルミニウム化合物1モルに対して、0.0001−1モルになる範囲内が好ましい。
【0020】
アルミニウム化合物を含む溶液に、必要に応じて水溶性有機高分子を添加することができる。有機高分子は、温水への浸漬によってゲル膜中か容易に溶出し、これにより温水との反応表面積が増大し低温かつ短時間での微細凹凸(花弁状)組織の形成を可能にする。また、添加する有機高分子の種類や分子量を変化させることにより、形成される微細凹凸組織の形状を制御することが可能になる。
【0021】
前記有機高分子には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルグリコール類が温水浸漬によって容易にゲル膜から溶出するので好ましい。ポリエーテルグリコールの添加量は、アルミニウムがすべてアルミナになったと仮定して求められる酸化物重量に対して重量比で0.1から10の範囲にすることが好ましい。
【0022】
安定化剤を含まない塗布溶液を用いて薄膜を形成する際には、塗布を行う雰囲気を乾燥空気もしくは乾燥窒素等の不活性気体雰囲気とすることが好ましい。乾燥雰囲気の相対湿度は30%以下にすることが好ましい。
【0023】
さらに、薄膜を形成する溶液塗布法としては、例えばディッピング法、スピンコート法、スプレー法、印刷法、フローコート法、ならびにこれらの併用等、既知の塗布手段が適宜採用することができる。膜厚は、ディッピング法における引き上げ速度やスピンコート法における基板回転速度などを変化させることと塗布溶液の濃度を変えることにより制御することができる。
【0024】
微細凹凸組織を有する薄膜を形成する際に使用される基材としては、各種の金属基材、無機質基材、プラスチック基材、紙、木質系基材など各種のものが挙げられる。特に、基材に耐熱性の低いプラスチック基材、紙、木質系基材を選んだ場合には、熱処理することなく低温で微細凹凸組織が形成できる本発明の効果か十分発揮されて好ましい。
【0025】
プラスチック基材の代表的なものとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂のフィルムや成形品;不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、架橋型ポリウレタン、架橋型のアクリル樹脂、架橋型の飽和ポリエステル樹脂など各種の熱硬化性樹脂から得られる架橋フィルムや架橋した成形品等が挙げられる。
【0026】
金属基材の代表的なものとしては、鉄、ニッケル、アルミニウム、クロム、亜鉛、錫、銅など各種の金属類;ステンレススチール、真鍮のような各種金属の合金類が挙げられる。また、無機質基材とは、セメント系、ガラス系、セラミックス系等で代表される無機質の材料が挙げられる。
【0027】
前記手法によって作製したアルミニウム化合物のゲル膜は、室温で30分程度乾燥させればよい。また、必要に応じてさらに高い温度で乾燥させることも可能である。
【0028】
次いで、前記アルミニウム化合物のゲル膜を温水に浸漬処理することにより微細凹凸組織を有する薄膜を基体に形成する。温水の温度は50℃から100℃とすることが好ましい。温水の温度は、基体の耐熱性等を鑑みて決定されるが、温度が低いほど微細凹凸組織を完全に形成するためには長い時間を要するようになる。
【0029】
温水に該アルミニウム化合物ゲル膜付き基体を浸漬することで、該アルミニウム化合物ゲル膜の表層表面が解膠作用等を受ける。これにより、、後述する図1ないし図2に示すように、特異な微小な孔状の空隙を持って特異な花弁状の形物がランダムに集合体化した表層表面を有するものと成り、目的とする特異な空隙と形状の微細凹凸を形成することができ、その機能や性能をより発揮する膜とすることができる。なお、熱水処理時間としては約5分間ないし24時間程度である。
【0030】
さらに、例えば約100℃以下で乾燥を行う。または該乾燥後、基体の耐熱性に応じて焼成を行うこともできる。高分解能透過型電子顕微鏡による観察結果、温水処理によって形成される凹凸組織は、主にベーマイト層の生成に起因していることがわかった。なお、該花弁状透明アルミナ膜の膜厚としては、任意に設定できるが約50nm以上400nm以下程度が好ましい。
【0031】
さらにまた、得られた微細凹凸組織の評価方法の一つとしては、走査型電子顕微鏡(SEM)による微細凹凸組織の上面からの観察と微細凹凸組織断面の観察、ならびにサイクリックコンタクトモード原子力間顕微鏡(CC-AFM)による微細凹凸組織表面の観察、ならびに該観察による該膜の中心線平均粗さRa を面拡張した平均面粗さRa'値と比表面積SRを求めた。
【0032】
その結果、図1ないし図3に示すようになり、例えば空隙が約20nmないし150nm程度で凹凸が約10nm乃至100nm程度となり、なかでも前記平均面粗さRa'値が約12nm以上、かつ比表面積SRが1.3程度以上となることであり、好ましくはRa'値が約18nm程度以上、かつ比表面積SRが1.6程度以上である。なお、該両者の値が極端に大きくなればヘイズ等の問題が発現し、透明性が低下する。
【0033】
前記微細凹凸組織を有する薄膜を下地層とし、この上に疎水性を有するオルガノポリシロキサン皮膜を形成することにより、水接触角150゜以上の超撥水表面が形成できる。使用されるシラン化合物としては、珪素原子に結合した加水分解性基の少なくとも1個と珪素原子に結合した有機基の少なくとも1個を併有するオルガノシラン化合物とか各種のシリケート化合物が挙げられる。
【0034】
前記オルガノシラン化合物において、珪素原子に結合した加水分解性基とは、アルコキシ基、置換アルコキシ基、ハロゲン原子などの加水分解によりシラノール基を形成する基を指称するものである。そして、珪素原子に結合した有機基の代表的なものとしては、珪素−炭素結合を介して、アルキル基、各種の置換基が結合した置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基の如き各種の有機基が挙げられる。
【0035】
本発明の方法において、基材上に設けられた微細凹凸組織を有する薄膜の上に第二層として光分解触媒としての機能を有する金属酸化物の皮膜を形成し、さらに第三層として疎水性を有するオルガノポリシロキサン皮膜を形成し他基板は、紫外光等の活性エネルギー線を部分的に照射することによって超撥水−超親水パターンを形成することができる。このような光分解触媒としての機能を有する金属酸化物の代表的なものとしては、アナターゼ型の酸化チタン、ルチル型の酸化チタンが挙げられる。
【0036】
基材上に、結晶性酸化チタンの皮膜を形成するには、予め調製した、微粒子状の結晶性酸化チタンを必須成分として含むコーティング剤を塗布して成膜させる方法等を適用することができる。
【0037】
本発明は、アルミニウムアルコキシドの安定化剤や有機添加物を、従来の熱処理による燃焼?分解で除去するのではなく、温水処理によって溶出させ除去している。さらに溶出させる温水の温度を制御することによって、溶出と同時にベーマイトよりなる微細凹凸組織の形成を可能にしている。
【0038】
以上のように本発明は、基体上にアルミニウム化合物を含む溶液を基体に塗布して、アルミニウム化合物の皮膜を形成し、これを特に熱処理することなく温水に浸漬することを特徴とする表面微細凹凸組織の低温形成法とその凹凸組織を有する基体に関し、特にその基板の超撥水基板あるいは超撥水−超親水パターン形成基板としての応用に関するものである。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
各実施例の被膜の評価を下記の方法で行った。
Figure 0004247354
被膜の表層表面および断面を写真観察し、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さRa値と表面積比 SRを求めた。
【0040】
実施例1
大きさ約25mm×25mm、厚さ約1mmのポリカーボネート基板を中性洗剤、水すすぎ、アルコールで順次洗浄し、乾燥したあとコーティング用基板とした。
【0041】
アルミニウム−sec−ブトキシド〔Al(O−sec−Bu)3〕を2プロパノール〔IPA〕とアセト酢酸エチル〔EAcAc〕に添加し、さらに0.01M希硝酸〔H2O〕と〔IPA〕を加えた。ここで溶液のモル比は、 Al(O−sec−Bu)3:IPA:EAcAc:H2O=1:20:1:1の割合とした。これを約1時間室温で撹拌し Al2O3ゾルである塗布液を調製した。
【0042】
次いで、コーティング用ポリカーボネート基板を、該塗布液中に浸漬した後、ディッピング法(約1mm/秒の引き上げスピード)で、コーティング用基板の表面に塗布膜を形成した。
【0043】
続いて、室温で30分乾燥して、透明なアモルファスアルミナ膜を被膜した。次に、約60℃の温水中に所定時間浸漬する温水処理を行い、室温で再び乾燥した。得られた薄膜は可視域で高い透過率を示し、膜厚は約200nmであった。
【0044】
得られた透明アルミナ薄膜付きポリカーボネート基板の透明アルミナ薄膜について、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、原子間力顕微鏡(AFM)観察、および赤外吸収スペクトル測定を行った。
【0045】
図1に、約60℃の温水中に5分間浸漬した薄膜の表面SEM像を示す。該微細凹凸組織の中心線平均粗さを面拡張した平均面粗さRa’値は19(nm)と比表面積1.7(SR)であった。
【0046】
赤外吸収スペクトル測定より、温水処理後EAcAcに帰属されるピークが消失し、EAcAcが完全に溶出していることが分かった。
【0047】
実施例2
実施例1で得られた微細凹凸組織を有する樹脂基板にヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(FAS)を蒸着により数ナノメートル形成し、水の接触角測定と光透過率測定を行った。
【0048】
接触角150゜以上の超撥水状態と可視域で透過率90%以上の高い透明性を示すことが分かった。
【0049】
実施例3
実施例1で得られた微細凹凸組織を有する樹脂基板にアナターゼゾルを数ナノメートル形成し、さらに実施例2同様ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(FAS)を蒸着により数ナノメートル形成し、樹脂基板上に微細凹凸組織/アナターゼ/FASの三層構造を形成した。次いでマスクを介して基板に高圧水銀灯を用いて紫外光を照射し、照射部および未照射部の接触角測定と光透過率測定を行った。エネルギー分散組成分析より、光照射部分のF原子がほぼ消失していることが分かった。
【0050】
光照射部は接触角4゜以下の超親水状態と光未照射部は接触角150゜以上の超撥水状態を示し、超撥水?超親水パターンが形成されていることが分かった。さらに可視域で透過率90%程度の高い透明性を示すことが分かった。
【0051】
実施例4
アルミニウム−sec−ブトキシド〔Al(O−sec−Bu)3〕と2プロパノール〔IPA〕と平均分子量600のポリエチレングリコールPEG600を約60分間室温で撹拌した。ここでモル比は、 Al(O−sec−Bu)3:IPA:PEG=1:30:0.1の割合としAl2O3ゾル塗布液を調製した。
【0052】
次いで、相対湿度20%の乾燥雰囲気下でコーティング用ポリカーボネート基板を、該塗布液中に浸漬した後、ディッピング法(約1mm/秒の引き上げスピード)でコーティング用基板の表面に塗布膜を形成した。
【0053】
続いて、室温で30分乾燥して、透明なアモルファスアルミナ膜を被膜した。
次に、約60℃の温水中に所定時間浸漬する温水処理を行い、室温で再び乾燥した。得られた薄膜は可視域で高い透過率を示し、膜厚は約100nmであった。
【0054】
図2に、約60℃の温水中に5分間浸漬した薄膜の表面SEM像を示す。該微細凹凸組織の中心線平均粗さを面拡張した平均面粗さRa’値は22(nm)と比表面積1.7(SR)で、実施例1とほぼ同じ微細凹凸組織が形成されていることが分かった。
【0055】
赤外吸収スペクトル測定より、温水処理後PEGに帰属されるピークが消失し、PEGが完全に溶出していることが分かった。
【0056】
実施例5
実施例4で得られた微細凹凸組織を有する樹脂基板にヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(FAS)を蒸着により数ナノメートル形成し、水の接触角測定と光透過率測定を行った。
【0057】
接触角150゜以上の超撥水状態と可視域で透過率90%以上の高い透明性を示すことが分かった。
【0058】
実施例6
実施例4で得られた微細凹凸組織を有する樹脂基板にアナターゼゾルを数ナノメートル形成し、さらに実施例5同様ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(FAS)を蒸着により数ナノメートル形成し、樹脂基板上に微細凹凸組織/アナターゼ/FASの三層構造を形成した。次いでマスクを介して基板に高圧水銀灯を用いて紫外光を照射し、照射部および未照射部の接触角測定と光透過率測定を行った。エネルギー分散組成分析より、光照射部分のF原子がほぼ消失していることが分かった。
【0059】
光照射部は接触角4゜以下の超親水状態と光未照射部は接触角150゜以上の超撥水状態を示し、超撥水?超親水パターンが形成されていることが分かった。さらに可視域で透過率90%程度の高い透明性を示すことが分かった。
【0060】
【発明の効果】
以上のように本発明は、アルミニウムアルコキシドのアセト酢酸エチルに代表される安定化剤やポリエチレングリコールに代表される有機添加物を、従来の熱処理による燃焼?分解で除去するのではなく、温水処理によって溶出させ除去している。さらに溶出させる温水の温度を制御することによって、溶出と同時にベーマイトよりなる微細凹凸組織の形成を可能にしている。
【0061】
すなわち、本発明は、基体上にアルミニウム化合物を含む溶液を基体に塗布して、アルミニウム化合物の皮膜を形成し、これを特に熱処理することなく温水に浸漬することを特徴とする表面微細凹凸組織の低温形成法とその凹凸組織を有する基体を提供するものであり。従来の微細凹凸組織の形成温度(約500℃)を400℃以上も低減するものである。
【0062】
特に、本発明の表面微細凹凸組織を下地層として、疎水層をさらに1層設けた基板および光触媒層1層と疎水層1層の薄膜を形成した基体は、表示用、輸送機材用、建築装飾用などの各種基体に適用することができる。印刷分野へ応用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミニウム−sec−ブトキシとアセト酢酸エチルを含む溶液から作製したゲル膜を乾燥後約60℃の温水中に5分間浸漬した薄膜(実施例1)の表面SEM像。
【図2】アルミニウム−sec−ブトキシドと平均分子量600のポリエチレングリコールを含む溶液から作製したゲル膜を乾燥後約60℃の温水中に5分間浸漬した薄膜(実施例4)の表面SEM像。

Claims (10)

  1. アルミニウムアルコキシドと、β−ジケトン化合物、β−ケトエステル化合物、アルカノールアミンから選ばれる安定化剤と、アルコール類の溶媒とを含有する溶液からアルミナゾル溶液を形成する工程、
    該ゾル溶液を基材に塗布する工程、
    該ゾル溶液塗布膜をゲル化する工程、および
    得られたゲル膜を50〜100℃の温水に浸漬する工程
    からなり、400℃以上の熱処理工程を必要としないことを特徴とする、空隙が20 nm ないし150 nm で凹凸が10 nm 乃至100 nm の表面微細凹凸組織を有する透明アルミナ薄膜の低温製造方法。
  2. アルミニウムアルコキシドと、アルコール類の溶媒とを含有する溶液からアルミナゾル溶液を形成する工程、
    該ゾル溶液を基材に、相対湿度30%以下の乾燥雰囲気下で塗布する工程、
    該ゾル溶液塗布膜をゲル化する工程、および
    得られたゲル膜を50〜100℃の温水に浸漬する工程
    からなり、400℃以上の熱処理工程を必要としないことを特徴とする、空隙が20 nm ないし150 nm で凹凸が10 nm 乃至100 nm の表面微細凹凸組織を有する透明アルミナ薄膜の低温製造方法。
  3. アルミナゾル溶液が水溶性有機高分子を含む請求項1または2に記載の透明アルミナ薄膜の低温製造方法。
  4. 前記水溶性有機高分子がポリエチレングリコールである請求項3記載の透明アルミナ薄膜の低温製造方法。
  5. プラスチック基材、木質系基材または紙の上に、請求項1からのいずれか1項に記載の製造方法により形成された、空隙が20 nm ないし150 nm で凹凸が10 nm 乃至100 nm 表面微細凹凸組織を有する透明アルミナ薄膜を最上層として有する積層体。
  6. 透明アルミナ薄膜を下地層として、光触媒層または光触媒層と疎水層をさらに設けた請求項5に記載の積層体。
  7. アルミニウムアルコキシドがアルミニウム− sec- ブトキシドである、請求項1〜4いずれかに記載の透明アルミナ薄膜の低温製造方法。
  8. 安定化剤がアセト酢酸エチルである、請求項1、3、4、7いずれかに記載の透明アルミナ薄膜の低温製造方法。
  9. アルコール類が、2−プロパノールである、請求項1〜4、7、8いずれかに記載の透明アルミナ薄膜の低温製造方法。
  10. 基材が、プラスチック基材、木質系基材または紙である請求項1〜4、7〜9いずれかに記載の透明アルミナ薄膜の低温製造方法。
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