JP5245697B2 - 多孔質アルミニウム酸化物膜を有する積層体 - Google Patents
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Description
まず、本発明の積層体について説明する。本発明の積層体は、基材と、上記基材上に形成され、平均細孔径500nm以下の三次元連結孔を有する多孔質アルミニウム酸化物膜と、を有することを特徴とするものである。
以下、本発明の積層体について、構成ごとに説明する。
まず、本発明における多孔質アルミニウム酸化物膜について説明する。本発明における多孔質アルミニウム酸化物膜は、基材上に形成され、平均細孔径500nm以下の三次元連結孔を有するものである。中でも、本発明においては、上記平均細孔径が、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。ここで、多孔質アルミニウム酸化物膜の平均細孔径は、多孔質アルミニウム酸化物膜の断面図のSEM写真を用い、画像解析を行うことにより算出することができる。具体的には、なるべく大きさの異なる細孔径を100点測定し、その平均値を求めることにより算出することができる。
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材の材料としては、上述した多孔質アルミニウム酸化物膜を保持することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えばガラス、SUS等の金属板、セラミック基材、耐熱性プラスチック等を挙げることができ、中でもガラス、SUS等の金属板、セラミック基材が好ましく、特にSUS等の金属板が好ましい。
次に、本発明の積層体の製造方法について説明する。本発明の積層体の製造方法は、気相成長法またはスプレー熱分解法により、基材上に、アルミニウム酸化物膜を形成するアルミニウム酸化物膜形成工程と、上記アルミニウム酸化物膜に対して、上記アルミニウム酸化物膜を溶出させる溶出液を接触させることにより、三次元連結孔を有する多孔質アルミニウム酸化物膜を形成する多孔質アルミニウム酸化物膜形成工程と、を有することを特徴とするものである。
以下、本発明の積層体の製造方法について、工程ごとに説明する。
本発明におけるアルミニウム酸化物膜形成工程は、気相成長法またはスプレー熱分解法により、基材上に、アルミニウム酸化物膜を形成する工程である。本発明においては、得られるアルミニウム酸化物膜が、アモルファス状であることが好ましい。得られるアルミニウム酸化物膜がアモルファス状であるか否かについては、アルミニウム酸化物膜のX線回折(XRD)測定を行うことで判断することができる。
まず、気相成長法を用いてアルミニウム酸化物膜を形成する場合について説明する。本発明に用いられる気相成長法としては、所望のアルミニウム酸化物膜を形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば化学気相成長法(CVD法)および物理気相成長法(PVD法)等を挙げることができる。さらに、上記CVD法としては、例えば熱CVD法およびプラズマCVD法等を挙げることができる。一方、上記PVD法としては、例えばスパッタリング法およびイオンプレーティング法等を挙げることができる。
次に、スプレー熱分解法を用いてアルミニウム酸化物膜を形成する場合について説明する。スプレー熱分解法は、通常、アルミニウム源を含有するアルミニウム酸化物膜形成用溶液を、アルミニウム酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基材に接触させることにより、基材上にアルミニウム酸化物膜を形成する方法である。
スプレー熱分解法に用いられるアルミニウム酸化物膜形成用溶液は、通常、アルミニウム源および溶媒を含有する。また、本発明においては、アルミニウム酸化物膜形成用溶液を、アモルファス状のアルミニウム酸化物膜を得られる組成とすることが好ましい。
アルミニウム酸化物膜形成用溶液に用いられるアルミニウム源は、アルミニウム元素を含有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば無機アルミニウム化合物および有機アルミニウム錯体等を挙げることができる。上記無機アルミニウム化合物としては、例えば塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等を挙げることができる。一方、上記有機アルミニウム錯体としては、例えばアルミニウムトリエトキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムプロポキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等を挙げることができ、中でもアルミニウムトリスアセチルアセトナートが好ましい。
アルミニウム酸化物膜形成用溶液に用いられる溶媒は、アルミニウム源を溶解でき、所望のアルミニウム酸化物膜を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール;トルエン;アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類;アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類;およびこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
アルミニウム酸化物膜形成用溶液は、界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。上記界面活性剤は、上記アルミニウム酸化物膜形成用溶液と上記基材表面との界面に作用するものである。上記界面活性剤を用いることにより、アルミニウム酸化物膜形成用溶液と基材表面との接触面積を向上させることができ、均一なアルミニウム酸化物膜を得ることができる。特に、アルミニウム酸化物膜形成用溶液を噴霧により接触させる場合、上記界面活性剤の効果により、アルミニウム酸化物膜形成用溶液の液滴と、基材表面とを充分に接触させることができる。なお、上記界面活性剤の使用量は、使用するアルミニウム源等に合わせて適宜選択することが好ましい。
次に、スプレー熱分解法における基材とアルミニウム酸化物膜形成用溶液との接触方法について説明する。上記接触方法としては、上述した基材と上述したアルミニウム酸化物膜形成用溶液とを接触させる方法であれば特に限定されるものではないが、基材およびアルミニウム酸化物膜形成用溶液を接触させた際に、基材の温度を低下させない方法であることが好ましい。基材の温度が低下すると成膜反応が起こらず、所望のアルミニウム酸化物膜を得ることができない可能性があるからである。このような基材の温度を低下させない方法としては、例えば、アルミニウム酸化物膜形成用溶液を液滴として基材に接触させる方法等が挙げられ、中でも上記液滴の径が小さいことが好ましい。上記液滴の径が小さければ、アルミニウム酸化物膜形成用溶液の溶媒が瞬時に蒸発し、基材温度の低下をより抑制することができ、さらに液滴の径が小さいことで、均一な膜厚のアルミニウム酸化物膜を得ることができるからである。
本発明に用いられる基材については、上記「A.積層体」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、得られるアルミニウム酸化物膜の膜厚は、上記「A.積層体」に記載した多孔質アルミニウム酸化物膜の膜厚が得られる程度の膜厚であることが好ましい。
次に、本発明における多孔質アルミニウム酸化物膜形成工程について説明する。本発明における多孔質アルミニウム酸化物膜形成工程は、上記アルミニウム酸化物膜に対して、上記アルミニウム酸化物膜を溶出させる溶出液を接触させることにより、三次元連結孔を有する多孔質アルミニウム酸化物膜を形成する工程である。
まず、ステンレス基材を用意した。次に、このステンレス基材上に、スパッタリング法により、膜厚1μmのアモルファス状の酸化アルミニウム膜を形成した。具体的には、成膜室内にステンレス基材をセットし、成膜室の圧力を0.6Pa、アルゴンガス流量を29sccm、酸素ガス流量を20sccmに調整した。ターゲットにはアルミニウムを使用し、投入電力2000W、成膜時間2hの条件で反応性スパッタリングにて成膜した。得られた酸化アルミニウム膜のXRD測定の結果を図7に示す。
酸化アルミニウム膜を純水に浸漬させる時間を、32時間とし、浸漬中に超音波処理を施したこと以外は、実施例1−1と同様にして、多孔質酸化アルミニウム膜を有する積層体を得た。
まず、ステンレス基材を用意した。次に、このステンレス基材上に、イオンプレーティング法により、膜厚1μmのアモルファス状の酸化アルミニウム膜を形成した。具体的には、真空反応槽内にステンレス基材をセット後、槽内を1×10-3Paまで真空に排気した。目標真空度に到達後、300℃に加熱保持し、溶解アルミナを9kV、400mAの電子ビームで加熱溶解した。溶解アルミナの溶融面が安定したところで、酸素ガスを導入し、圧力を1.5×10-2Paとして、15分間成膜した。得られた酸化アルミニウム膜のXRD測定の結果を図10に示す。
まず、ステンレス基材を用意した。次に、このステンレス基材上に、スプレー熱分解法により、膜厚1μmのアモルファス状の酸化アルミニウム膜を形成した。具体的な手順は以下の通りである。まず、アルミニウムアセチルアセトナート(川研ファインケミカル社製)64gを、メタノール(純正化学社製)1000mLに溶解させて、アルミニウム酸化物膜形成用溶液を得た。次に、ステンレス基材をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に対し、アルミニウム酸化物膜形成用溶液を、エアレススプレー(A74エアレスオートガン、クロスカットノズル1/15、液圧2MPa、ノードソン社製)を用いて500回走査しながらスプレーし、基材上に酸化アルミニウム膜を得た。得られた酸化アルミニウム膜のXRD測定の結果を図12に示す。
2 … 多孔質アルミニウム酸化物膜
2a … アルミニウム酸化物膜
3 … 溶出液
4 … アルミニウム酸化物膜形成用溶液
5 … スプレー装置
6、7、8 … ローラー
Claims (1)
- アルミニウム源、溶媒、および界面活性剤を有するアルミニウム酸化物膜形成用溶液を、アルミニウム酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基材に接触させることにより、前記基材上に、アルミニウム酸化物膜を形成するアルミニウム酸化物膜形成工程と、
前記アルミニウム酸化物膜を、水に浸漬させることにより、三次元連結孔を有する多孔質アルミニウム酸化物膜を形成する多孔質アルミニウム酸化物膜形成工程と、
を有することを特徴とする積層体の製造方法。
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