JP4245242B2 - 塗工紙用樹脂組成物及び紙用塗工組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗工紙用樹脂組成物並びに、それを顔料及び水性バインダーに混合した紙用塗工組成物に関するものである。さらに詳しくは、ホルムアルデヒドの発生がなく、紙に対して優れた印刷適性及び印刷効果を付与することができる塗工紙用樹脂組成物及び紙用塗工組成物を提供しようとするものである。なお、本明細書で用いる「紙」という語は広義の意味であって、狭義の意味でいう紙のほか、いわゆる板紙をも包含する。
【0002】
【従来の技術】
顔料と水性バインダーを主体とした塗工組成物を紙に塗布し、乾燥、カレンダー処理などの必要な処理を施して得られる塗工紙は、その優れた印刷効果などの特長から、商業印刷物や雑誌・書籍などに広く用いられているが、品質要求の高度化、印刷の高速化などに伴って、塗工紙の品質改良努力が今もなお続けられている。とりわけ印刷の多くを占めるオフセット印刷においては、湿し水の影響下でのインキ受理性、ウェットピックなどの耐水性、及び輪転印刷での耐ブリスター性の改良・向上が、業界の重要な課題となっている。
【0003】
従来よりこうした課題に対して、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、特公昭 44-11667 号公報や特開昭 55-31837号公報(= USP 4,246,153)に示されるようなポリアミドポリ尿素−ホルムアルデヒド樹脂、特開昭 63-120197号公報に示されるようなブロックグリオキザール樹脂などを、耐水化剤やバインダー用添加剤として塗工組成物に添加する手法が知られている。
しかし、これら従来の耐水化剤やバインダー用添加剤は、いずれも有効な長所を有する反面、一部の特性において重大な欠点又は効果の不十分さが認められることから、実用上必ずしも満足しうるものではない。
【0004】
例えば、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂や尿素−ホルムアルデヒド樹脂などのいわゆるアミノプラスト樹脂は、作業時の、あるいは塗工紙からのホルムアルデヒドの発生が多いのみならず、インキ受理性や耐ブリスター性の改良効果がほとんど得られないことや、塗工組成物のpHが高くなると耐水化効果も発揮されにくくなることなどの問題がある。一方、ホルムアルデヒド不含のバインダー用添加剤として知られているブロックグリオキザール樹脂は、湿し水に対する耐水性をある程度付与できるものの、インキ受理性や耐ブリスター性などの塗工紙品質の改良にはほとんど効果がない。
【0005】
このような状況のもとで、本発明者らは先に、塗工紙の高品質化を図るべく、紙用塗工組成物の樹脂成分として、脂肪族アミンと、アルデヒド類、グリシジル化合物及びイソシアナート化合物から選ばれる化合物との反応生成物である架橋アミン化合物を用いることを、特開平 10-77599 号公報で提案した。さらに特開平 11-140792号公報では、脂肪族アミンのなかでも複素環アミンを用い、これをグリシジル化合物と反応させた架橋アミン化合物を紙用塗工組成物の樹脂成分として用いることを提案した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなアミンとグリシジル化合物との反応生成物である架橋アミン化合物を樹脂成分として用いた場合、他の成分との組合せや当該架橋アミン化合物の使用量などによっては、塗工組成物の増粘や流動特性の悪化などが起こり得ることを知見した。そこで、このような問題を解決すべくさらに研究を重ねた結果、本発明に至ったものである。
【0007】
そこで本発明の目的は、塗工紙品質に対する要求に応え、紙に対して高度のインキ受理性及び耐水性が付与できるなど、塗工紙の高品質化を図ることができるとともに、ホルムアルデヒドの発生のない塗工紙用樹脂組成物を提供し、さらにそれを用いた紙用塗工組成物を提供することにある。本発明の別の目的は、顔料及び水性バインダーと混合して紙用塗工組成物としたときにも、増粘や流動特性悪化などの不都合を起こしにくく、したがって取扱いが容易な塗工紙用樹脂組成物を提供し、さらにはそれを用いた紙用塗工組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、脂肪族アミンと、分子内にグリシジル基を少なくとも2個有するグリシジル化合物との反応生成物である架橋アミン化合物、及び多価アルコールを含有する塗工紙用樹脂組成物が提供される。さらには、顔料及び水性バインダーとともに、上記の架橋アミン化合物及び多価アルコールを含有する紙用塗工組成物も提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係る塗工紙用樹脂組成物は、特定の成分を反応させて得られる架橋アミン化合物及び多価アルコールを含有するものである。一方の成分である架橋アミン化合物は、脂肪族アミンと、分子内にグリシジル基を少なくとも2個有するグリシジル化合物とを反応させることにより得られる。
【0010】
ここで用いる脂肪族アミンは、1級又は2級のアミノ基が脂肪族炭素原子に結合する化合物であり、アミノ基が結合する脂肪族炭素原子は、非芳香族の環を形成するものであってもよい。このように脂肪族アミンは、アミノ基が脂肪族炭素原子に結合していればよく、分子内に脂肪族炭化水素基以外の例えば芳香族環を含んでいてもよい。また、アミノ基が分子内に複数あってもよい。具体的には、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、分子内に2個又はそれより多くのアミノ基を有するポリアミン、窒素原子を少なくとも一つの環構成原子とする脂肪族複素環アミンなどを挙げることができる。これらの脂肪族アミンは、それぞれ単独で用いることも、また2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0011】
モノアルキルアミンは、アルキルに1級アミノ基が結合する化合物であって、そのアルキルは炭素数1〜10程度であることができる。具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンなどが挙げられる。ジアルキルアミンは、2個のアルキルを2級アミノ基で結合する化合物であって、それぞれのアルキルは同じでも異なってもよく、それぞれ炭素数1〜10程度であることができる。具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、メチルエチルアミンなどが挙げられる。ポリアミンは、分子内に複数のアミノ基を有する化合物であって、ここでは、後述する複素環アミン以外のものを意味する。その具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミンなどが挙げられる。
【0012】
また、複素環アミンは、炭素原子に加えて少なくとも1個の窒素原子を環構成原子とする環状化合物であり、複素環を構成する原子は炭素と窒素に限られるわけではなく、他に酸素やイオウなどのヘテロ原子も環を構成しうる。この化合物は、窒素を環原子とする複素環を含んでいればよく、この複素環以外に、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、アシル基などを含んでいてもよい。さらには、これらの炭化水素基を介して、環状アミノ基とは別のアミノ基や、その他ハロゲンなどの置換基が結合していてもよい。複素環アミンの具体例としては、ピロリジン、ピペリジン、2−、3−又は4−ピペコリン及び2,4−、2,6−又は3,5−ルペチジンのような複素環モノアミン類、ピペラジン、ホモピペラジン、N−アルキル(例えば、メチル、エチル又はプロピル)ピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アシル(例えば、アセチル)ピペラジン、N−アシル(例えば、アセチル)ホモピペラジン及び1−(クロロフェニル)ピペラジンのような複素環ジアミン類、N−アミノアルキル(例えば、エチル又はプロピル)ピペリジン、N−アミノアルキル(例えば、エチル又はプロピル)ピペラジン、N−アミノアルキル(例えば、エチル又はプロピル)モルホリン、N−アミノプロピル−2−又は−4−ピペコリン、1,4−ビス(アミノエチル)ピペラジン及び1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジンのようなアミノアルキルが結合した複素環アミンなどが挙げられる。
【0013】
これらの脂肪族アミンのなかでは、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、複素環アミンなどが工業的に有利であり、特に複素環アミンが有利である。なかでも好ましい複素環アミンには、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、1,4−ビス(アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジンなどが包含される。
【0014】
本発明で用いる脂肪族アミンは、前述のとおり1級又は2級のアミノ基を少なくとも1個有するが、グリシジル化合物との反応性を考慮すると、複素環アミンの場合は、複素環を構成する2級又は3級アミノ基のほかに1級アミノ基を少なくとも1個有するのが有利である。なかでも、窒素を環原子とする複素環にアミノアルキルが結合した化合物、例えば、N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、1,4−ビス(アミノエチル)ピペラジンや1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジンを、単独で又は他のアミンと組み合わせて用いた場合に、優れた効果が発揮される。
【0015】
脂肪族アミンと反応させるグリシジル化合物は、分子内にグリシジル基を少なくとも2個有するものである。複数のグリシジル基を結ぶ基は特に限定されず、脂肪族、芳香族、脂環式などのいずれでもよい。グリシジル化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル及びプロピレングリコールジグリシジルエーテルのようなアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルのようなポリオキシアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、レゾルシンジグリシジルエーテル及びビスフェノールAジグリシジルエーテルのような芳香族ジグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンジ−又はトリ−グリシジルエーテル、ソルビトールジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−又はヘキサ−グリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジ−、トリ−又はテトラ−グリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのグリシジル化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、芳香族グリシジルエーテルが有利に用いられる。
【0016】
グリシジル化合物は、脂肪族アミン1モルに対し、一般には0.1〜1モルの範囲で、好ましくは0.2〜0.9モル、さらに好ましくは0.3〜0.7モルの範囲で用いられる。脂肪族アミン中に反応性の1級又は2級アミノ基が複数個ある場合でも、グリシジル化合物の量を多くすると、反応生成物がゲル化しやすくなるので、アミノ基の数にかかわらず、脂肪族アミンに対するグリシジル化合物のモル比を1以下にするのが適当である。
【0017】
脂肪族アミンとグリシジル化合物との反応は、無溶媒で又は溶媒中で行うことができる。この反応は、通常30〜100℃程度の温度で行われ、好ましい反応温度は、溶媒の有無や溶媒を用いる場合はその種類などによっても変動するが、溶媒が水/有機溶媒混合系の場合は40〜90℃程度であり、溶媒が水を含まない有機溶媒の場合は40〜70℃程度である。また反応時間は、通常1〜20時間程度である。この反応は、無触媒でも進行するし、アンモニアや苛性ソーダのような塩基性触媒又は塩化アルミニウムのようなルイス酸触媒の存在下で行ってもよい。
【0018】
この反応に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、1−又は2−プロパノール、1−又は2−ブタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−又は2−オクタノール、ラウリルアルコール、シクロヘキサノール及びベンジルアルコールのようなアルコール類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、β,β′−ジクロロジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールジブチルエーテルのようなエーテル類、ブチルアルデヒドのようなアルデヒド類、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン及びo−、m−又はp−キシレンのような炭化水素類、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、1−又は2−ブロモプロパン、1−ブロモブタン、臭化ラウリル、1−ブロモ−3−クロロプロパン、1,3−ジブロモプロパン、1,4−ジブロモブタン、1,5−ジブロモペンタン及び2,3−ジブロモ−1−プロパノールのような有機ハロゲン化合物、アセトン、2,4−ペンタンジオン、メチルエチルケトン、2−又は3−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、シクロヘキサノン、メシチルオキシド、イソホロン及び4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンのようなケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸 sec−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、マロン酸ジエチル、シュウ酸ジエチル、リン酸ブチル及びアセト酢酸エチルのようなエステル類などが挙げられ、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0019】
また、これらの有機溶媒の1種又は2種以上と水との混合物を反応溶媒とすることもできる。ただし、反応系内に存在する水の量があまり多くなると、グリシジル化合物同士の重合により水にも有機溶媒にも不溶なエポキシ樹脂が生成してしまうため、反応系内の水の量は20重量%以下、さらには10重量%以下とするのが好ましい。
【0020】
この反応は、脂肪族アミン中のアミノ基とグリシジル化合物中のグリシジル基との反応が主体となる。そして、脂肪族アミンとグリシジル化合物の使用割合やグリシジル化合物の種類、脂肪族アミンの種類などによって、反応生成物の構造は多岐にわたり、また、ある程度の分子量分布を持った低重合体となることもある。グリシジル化合物がグリシジル基(Gly と略す)を2個有する Gly-R-Glyの構造であるとして、以下に主な反応形態を例示する。
【0021】
脂肪族アミンが1級アミノ基を有する場合、それを R1-NH2 と表すと、主に次のような反応が進行するが、この生成物中の2級アミノ基にグリシジル化合物が付加し、別のアミン分子を結合した構造にもなりうる。
【0022】
R1-NH2 + Gly-R-Gly → R1-NH-CH2CH(OH)CH2-R-Gly
R1-NH-CH2CH(OH)-R-Gly + R1-NH2
→ R1-NH-CH2CH(OH)CH2-R-CH2CH(OH)CH2-NH-R1
【0023】
また、脂肪族アミンが2級アミノ基を有する場合、それを R1-NH-R2 (複素環モノアミンの場合は、R1とR2が結合して環を形成しているとみればよい)と表すと、主に次のような反応が進行する。
【0024】
R1-NH-R2 + Gly-R-Gly → (R1)(R2)N-CH2CH(OH)CH2-R-Gly
(R1)(R2)N-CH2CH(OH)CH2-R-Gly + R1-NH-R2
→ (R1)(R2)N-CH2CH(OH)CH2-R-CH2CH(OH)CH2N(R1)(R2)
【0025】
さらに、脂肪族アミンが複数のアミノ基を有する場合や2種以上の脂肪族アミンを併用した場合、またグリシジル化合物がグリシジル基を3個以上有する場合は、反応はさらに複雑になるが、いずれにしても、アミン分子が複数架橋した化合物が主体的に生成することになる。
【0026】
以上のように、脂肪族アミンとグリシジル化合物との反応により得られる架橋アミン化合物は、原料脂肪族アミンの構造によってはある程度の分子量分布を持った低重合体となりうるが、分子量の目安として、その50重量%水溶液の25℃における粘度は、一般に10〜100,000mPa・sの範囲をとりうる。特にこの粘度は、100mPa・s 以上、さらには1,000mPa・s 以上、また50,000mPa・s以下であるのが、より好ましい。
【0027】
脂肪族アミンとグリシジル化合物との反応生成物である架橋アミン化合物は、液状媒体中に溶解又は分散させた状態で用意するのが好ましい。脂肪族アミンとグリシジル化合物を液状媒体中で反応させるか、又は脂肪族アミンとグリシジル化合物を反応させた後に液状媒体を加えて溶解又は分散させることにより、架橋アミン化合物の溶液又は分散液が得られる。ここで用いる液状媒体は、架橋アミン化合物を溶解又は均一に分散するものであればよく、水及び/又は有機溶媒であることができる。先に架橋アミン化合物を得る際の反応溶媒として例示した各種のものが、この際の液状媒体ともなりうる。
【0028】
架橋アミン化合物の一方の原料であるグリシジル化合物が水だけには溶けにくい場合は、脂肪族アミンとグリシジル化合物の反応時に水と有機溶媒を混合して用い、この液状媒体をそのまま架橋アミン化合物のための液状媒体とすることができる。場合によっては、反応終了後に水を加えて、架橋アミン化合物を溶解又は分散する液状媒体中の有機溶媒の割合を低くすることもできる。架橋アミン化合物を溶解又は分散する液状媒体中の有機溶媒と水の割合は任意であるが、通常は水が1〜100重量%、そして有機溶媒が99〜0重量%の割合で使用され、好ましくは、水5〜100重量%、そして有機溶媒95〜0重量%の割合で使用される。
【0029】
また、脂肪族アミンとグリシジル化合物の反応を有機溶媒中で行い、反応終了後にその有機溶媒を留去してから水を加えるという方法を採用することにより、架橋アミン化合物のための液状媒体を実質的に水のみとすることもできる。この場合は、グリシジル化合物をケトン類に溶解させ、一方で脂肪族アミンをケトン類以外の親水性有機溶媒に溶解させ、両溶液を混合して反応させるのが有利である。グリシジル化合物を溶解させるケトン類は、先に架橋アミン化合物を得る際の反応溶媒として例示した各種のものであることができるが、なかでもアセトンが有利に使用される。一方、脂肪族アミンを溶解させるケトン類以外の親水性有機溶媒も、先に架橋アミン化合物を得る際の反応溶媒として例示したケトン類以外の各種親水性有機溶媒であることができるが、なかでもアルコール類、それもメタノールが工業的には有利に使用される。
【0030】
反応終了後に溶媒の留去を行う場合は、一般に常圧蒸留が採用されるが、減圧蒸留や水蒸気蒸留を採用することもでき、また常圧蒸留の後に水蒸気蒸留を行うなど、2種又はそれ以上の方法を組み合わせてもよい。常圧蒸留の場合、あまり温度を上げすぎると、架橋アミン化合物が着色してしまうため、溶媒の沸点から100℃以内の範囲で、さらには60℃以内の範囲で蒸留を行うのが好ましい。
溶媒留去後の水の添加は、50〜120℃の範囲で行うのが好ましい。有機溶媒を留去した状態では架橋アミン化合物が単独で存在し、粘性が極めて高いので、水を添加する際の温度があまり低いと、溶解不良を起こしやすい。また、水を添加する際の温度があまり高くなると、突沸などの危険があるため、防災上好ましくない。
【0031】
次に、本発明の塗工紙用樹脂組成物のもう一つの成分となる多価アルコールについて説明すると、これは、架橋アミン化合物が本来具備する紙に対して優れた印刷適性及び印刷効果を付与する効果を損なうことなく、当該架橋アミン化合物を塗工組成物の成分として用いた場合に発生することがある増粘や流動特性の悪化といった悪影響を軽減するために用いられる。したがってこの多価アルコールは、それを含む塗工組成物を紙に塗工し、その塗工組成物中の液状媒体(一般には、水であるか、又は水と水溶性有機溶媒の混合物である)を蒸発させた後の塗工層中に、架橋アミン化合物とともに有効成分として残るものであり、通常は、水の沸点よりも高い沸点を有するものが用いられる。
【0032】
多価アルコールは、分子内にアルコール性水酸基を少なくとも2個有する化合物であればよく、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシリレンジオールのようなジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパンのようなトリオール類、 ペンタエリスリトールのようなテトラオール類、グルコース、マンノース、ソルビトール、キシリトール、ショ糖、果糖のような糖類などが例示される。好ましくは、分子量500以下の多価アルコールであり、糖類である場合は、アルデヒド基やケトン基等の還元性基を有しないソルビトールやキシリトールなどが好ましい。工業的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンや、ソルビトール、キシリトール等の還元性を示さない糖類が特に好ましい。
【0033】
前述のとおり、架橋アミン化合物は、液状媒体中に溶解又は分散した状態で用意するのが好ましく、したがって、本発明の塗工紙用樹脂組成物も、架橋アミン化合物と多価アルコールが液状媒体に溶解又は分散された状態になっているのが有利である。そこで、架橋アミン化合物が液状媒体中に溶解又は分散した状態の溶液又は分散液に多価アルコール又はその溶液を混合するのが、操作の簡便さからは好ましいが、両者の混合順序はこれに限られるわけではなく、例えば、予め液状媒体に多価アルコールを分散又は溶解させておき、これを架橋アミン化合物に加える方法、架橋アミン化合物及び多価アルコールをそれぞれ同一又は異なる液状媒体に分散又は溶解させておき、これらを混合して均一化する方法なども採用できる。多価アルコールが液体の場合は、架橋アミン化合物の合成溶媒として当該多価アルコールを用いることもできる。また、架橋アミン化合物と多価アルコールを混合する際の温度も特に制限されないが、使用する液状媒体への両者の溶解性又は混和性が十分でない場合は、必要により液状媒体が揮発しない程度まで加熱してもよく、逆に、架橋アミン化合物及び多価アルコールの一方又は双方が液状媒体と溶媒和して激しく発熱するような場合には、凍結しない程度まで冷却してもよい。
【0034】
本発明の塗工紙用樹脂組成物は、その効果を損なわない範囲で、架橋アミン化合物及び多価アルコール以外の成分を含有することができ、このような第三成分として、多価アルコール以外の非重合体の不揮発性物質を挙げることができる。
この不揮発性物質は、常温で揮発性がなく、この組成物中で架橋アミン化合物及び多価アルコールとともに溶解又は均一に分散した状態をとりうる有機又は無機の非重合体化合物である。ここでいう非重合体とは、一定の分子量を持つことを意味する。この不揮発性物質は、多価アルコールと相俟って、架橋アミン化合物の印刷適性及び印刷効果付与という効果を損なうことなく、当該架橋アミン化合物を塗工組成物の成分として用いた場合に発生することがある増粘や流動特性の悪化といった悪影響を軽減するために用いられるので、このような性質を持っていればよい。
【0035】
不揮発性物質として具体的には、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム及び燐酸アンモニウムのような無機塩類、尿素、メチル尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン及び1−(2−アミノエチル)−2−イミダゾリジノンのような尿素類、グルコース及びフルクトースのような糖類などが挙げられる。ここでいう尿素類とは、上の例からも明らかなように、式 >NC(=Q)N< なる原子団を有する尿素及びその誘導体であり、より具体的には、例えば、式 X1NHC(=Q)NX2X3で表すことができ、ここにQは酸素又はイオウを表し、X1 、X2 及びX3 は互いに独立に、水素、アルキル若しくは置換アルキルを表すか、又はX1 とX2 が結合して、水酸基で置換されていてもよいエチレン鎖を形成する。尿素類のうち、1−(2−アミノエチル)−2−イミダゾリジノンは、ジエチレントリアミンと尿素との脱アンモニア反応によって得ることができ、この反応生成物には、1−(2−アミノエチル)−2−イミダゾリジノン以外の副生物も存在するが、通常、その副生物を含む混合物のまま使用できる。これらの不揮発性物質のなかでも、有機化合物、とりわけ尿素類が、架橋アミン化合物との相容性や種々の溶媒への溶解性などの点で好ましい。尿素類のなかでも好ましいものは、尿素及びイミダゾリジノン類であり、工業的な見地からは、特に尿素が好ましい。
【0036】
本発明の塗工紙用樹脂組成物において、架橋アミン化合物、多価アルコール及び任意に使用される不揮発性物質の割合は、架橋アミン化合物/(多価アルコール+不揮発性物質)の重量比で、一般には1/99〜90/10の範囲、好ましくは5/95〜70/30の範囲とするのが有利である。したがって、不揮発性物質を使用しない場合は、架橋アミン化合物/多価アルコールの重量比を、一般には1/99〜90/10の範囲、好ましくは5/95〜70/30の範囲とすればよい。不揮発性物質を使用する場合は、多価アルコールに対して5重量倍以下程度の範囲で、任意に調整することができる。
【0037】
架橋アミン化合物と多価アルコールを含有し、任意に別の不揮発性物質を含有してもよい樹脂組成物は、顔料及び水性バインダーと混合して、紙用塗工組成物とされる。この紙用塗工組成物は、顔料、水性バインダー、架橋アミン化合物及び多価アルコールを含有していればよく、架橋アミン化合物と多価アルコールを予め混合しておくことは必須ではないが、一般には、架橋アミン化合物と多価アルコール、任意にさらに不揮発性物質を含有する樹脂組成物を調製したうえで、顔料及び水性バインダーに配合するのが有利である。
【0038】
紙用塗工組成物の成分となる顔料は、紙の塗工に従来から一般に用いられているものでよく、白色無機顔料及び白色有機顔料が使用できる。白色無機顔料としては、例えば、カオリン、タルク、炭酸カルシウム(重質又は軽質)、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、酸化チタンなどが挙げられる。また白色有機顔料としては、例えば、ポリスチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。これらの顔料は、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0039】
水性バインダーも、紙の塗工に従来から一般に用いられているものでよく、水溶性のバインダーや水乳化系のバインダーが使用できる。水溶性バインダーとしては、例えば、酸化でんぷんやリン酸エステル化でんぷんをはじめとする無変性の、又は変性されたでんぷん類、ポリビニルアルコール、カゼインやゼラチンをはじめとする水溶性プロテイン、カルボキシメチルセルロースをはじめとする変性セルロース類などが挙げられる。また水乳化系バインダーとしては、例えば、場合によりカルボキシル基やニトリル基を有することもあるスチレン−ブタジエン系樹脂(SBRラテックス)、アクリロニトリル−ブタジエン系樹脂(NBRラテックス)、クロロプレン系樹脂(CRラテックス)、メチルメタクリレート−ブタジエン系樹脂(MBRラテックス)、アクリル系モノマー2種以上の共重合樹脂、アクリル系モノマーと酢酸ビニルとの共重合樹脂、アクリル系モノマーとスチレンとの共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。なお、ここでいうアクリル系モノマーとは、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのメチル、エチル、ブチル等のエステルから選ばれる化合物をいう。これらの水性バインダーは、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0040】
本発明の紙用塗工組成物を調製するにあたり、顔料と水性バインダーの組成割合は、用途や目的に応じて決定され、当業界で一般に採用されている組成と特に異なるところはない。両者の好ましい組成割合は、顔料100重量部に対して、水性バインダーが1〜200重量部程度、より好ましくは5〜50重量部程度である。架橋アミン化合物及び多価アルコール、任意に用いられる他の不揮発性物質は、それらの合計で、顔料100重量部に対し、0.05〜5重量部程度配合するのが好ましく、さらには、0.1重量部以上、また2重量部以下程度にするのが有利である。
【0041】
紙用塗工組成物を調製するにあたり、顔料、水性バインダー並びに、架橋アミン化合物及び多価アルコールを含む樹脂組成物の添加混合順序は任意であり、特に制限されない。例えば、液状媒体に溶解又は分散された樹脂組成物を顔料及び水性バインダーの混合物に添加混合する方法、液状媒体に溶解又は分散された樹脂組成物を予め顔料又は水性バインダーに添加混合しておき、これを残りの成分と配合する方法などが採用できる。
【0042】
本発明の紙用塗工組成物は、上記の架橋アミン化合物、多価アルコール及び任意に用いられる不揮発性物質に加えて、他の耐水化剤や印刷適性向上剤などの樹脂成分を必要に応じて含有することもできる。さらには、その他の成分として、例えば、分散剤、粘度・流動性調整剤、消泡剤、防腐剤、潤滑剤、保水剤、また染料や有色顔料のような着色剤などを、必要に応じて配合することができる。
【0043】
この紙用塗工組成物は、従来より公知の方法、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター、キャストコーターなど、公知の各種コーターを用いる方法により、紙基体に塗布される。その後必要な乾燥を行い、さらに必要に応じてスーパーカレンダーなどで平滑化処理を施すことにより、塗工紙を製造することができる。
【0044】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、含有量又は使用量を表す%及び部は、特に断らないかぎり重量基準である。また、粘度及びpHは、25℃において測定した値である。
【0045】
合成例1:
温度計、還流冷却器及び攪拌棒を備えた四つ口フラスコに、N−(2−アミノエチル)ピペラジン646g(5.0モル)及びメタノール690gを仕込み、内温を45〜55℃に保って、そこへ、ビスフェノールAジグリシジルエーテル807g(2.4モル)とアセトン759gを予め混合した溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、内温45〜55℃でさらに4時間反応させ、次いで還流冷却器をリービッヒ冷却器に取り替えた後、アセトン及びメタノールを系外に抜きながら内温を80℃まで上げ、さらに内圧を21kPa まで減圧した。その後常圧まで復圧し、水1,692gを徐々に加えながら冷却して、不揮発分39.6%、pH11.9、粘度839mPa・s(50%濃度品に換算すると約5,000mPa・s)の架橋アミン化合物の水溶液を得た。これを架橋アミン水溶液Xとする。
【0046】
合成例2:
合成例1で用いたのと同様の反応容器に、N−(2−アミノエチル)ピペラジン426g(3.3モル)及びメタノール517gを仕込み、内温を45〜55℃に保って、そこへ、ビスフェノールAジグリシジルエーテル638g(1.9モル)とアセトン543gを予め混合した溶液をゆっくり滴下した。 滴下終了後、内温45〜55℃でさらに4時間反応させ、次に還流冷却器をリービッヒ冷却器に取り替えた後、アセトン及びメタノールを系外に抜きながら内温を120℃まで上げた。 その後、水1,286gを徐々に加えながら冷却して、不揮発分41.8%、pH11.8、粘度2,420mPa・s(50%濃度品に換算すると約9,000mPa・s)の架橋アミン化合物の水溶液を得た。これを架橋アミン水溶液Yとする。
【0047】
参考例1〜5、実施例1〜2及び対照1〜2:
まず、表1に示す組成で、固形分濃度64.5%、pH9.2の水系マスターカラーを調製した。
【0048】
【表1】
マスターカラーの組成
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
成分名 固形分重量比
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
顔料:ウルトラホワイト90*1 60
カービタル90*2 40
ポリアクリル酸系顔料分散剤 0.2
水性バインダー:スチレン−ブタジエン系ラテックス 11
酸化でんぷん 4
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0049】
(表1の脚注)
*1 ウルトラホワイト90:米国エンゲルハードミネラルズ社製のクレー
*2 カービタル90:富士カオリン(株)製の炭酸カルシウム
【0050】
次に、参考例1では、合成例1で得られた39.6%濃度の架橋アミン水溶液Xを25.3部、トリエチレングルコールを40部及び水を32.8部混合し、十分に攪拌して、有効成分51%の水溶液(樹脂組成物)を得た。参考例2〜5、実施例1〜2でも同様に、架橋アミン水溶液、多価アルコール及び場合により尿素を、表2に示す割合で用い、有効成分濃度が51%となるように水を加えて混合し、それぞれの樹脂組成物を得た。
【0051】
表1に示したマスターカラーへ、その中の顔料100部あたり、上で得たそれぞれの樹脂組成物をその中の固形分合計(有効成分)が0.6部の割合となるように添加した。また対照例1では、上記の樹脂組成物に代えて、特開昭 55-31837 号公報(= USP 4,246,153 )の実施例3に記載される方法に準じて製造された有効成分50%の熱硬化性ポリアミドポリ尿素ホルムアルデヒド樹脂水溶液(表中では「PAPU」と略す)を固形分量が参考例1〜5、実施例1〜2と同じになるように添加し、対照例2では、樹脂成分を添加せずにマスターカラーをそのまま用いた。それぞれの混合物につき、水を用いて総固形分が64%となるように濃度調整し、塗工組成物とした。得られたそれぞれの塗工組成物について、以下の方法で物性値を測定し、その結果を表2に示した。
【0052】
(1) pH:
ガラス電極式水素イオン濃度計〔東亜電波工業(株)製〕を用い、調製直後の塗工組成物のpHを25℃にて測定した。
【0053】
(2) 粘度:
B型粘度計〔(株)東京計器製、BL型〕を用い、60rpm 、25℃で、調製直後の塗工組成物の粘度を測定した。
【0054】
さらに、上で得られたそれぞれの塗工組成物を、米坪量80g/m2の上質紙の片面に、ワイヤーロッドを用いて塗工量が14g/m2となるように塗布した。塗布後ただちに、120℃にて30秒間熱風乾燥し、次いで温度20℃、相対湿度65%にて16時間調湿し、さらに温度60℃、線圧60kg/cmの条件で2回スーパーカレンダー処理を施して、塗工紙を得た。こうして得た塗工紙につき、以下の方法で耐水性及びインキ受理性の試験を行い、試験結果を表2に示した。
【0055】
(3) 耐水性:ウェットピック法(WP法)
RI試験機(明製作所製)を使用し、塗工面を給水ロールで湿潤させた後に印刷し、紙むけ状態を肉眼で観察して判定した。判定基準は次のように行った。
耐水性 (劣)1〜5(優)
【0056】
(4) インキ受理性
(4-1) A 法
RI試験機を使用して、塗工面を給水ロールで湿潤させた後に印刷し、インキの受理性を肉眼で観察して判定した。判定基準は次のように行った。
インキ受理性 (劣)1〜5(優)
【0057】
(4-2) B 法
RI試験機を使用して、金属ロールとゴムロールの間にわずかな間隙をあけ、その間隙に水を注いだ後速やかに印刷し、インキの受理性を肉眼で観察して判定した。判定基準は次のように行った。
インキ受理性 (劣)1〜5(優)
【0058】
【表2】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
参 考 例 実施例 対照例
No. 1 2 3 4 5 1 2 1 2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
架橋アミン水溶液 X X Y Y Y X Y
配合量(部) 25.3 25.3 23.9 23.9 23.9 25.3 23.9
多価アルコール * TEG DEG DEG DEG TMP SOL SOL
配合量(部) 40 10 20 40 10 20 10
尿素 (部) − 30 20 − 30 20 30
──────────────────────────────────────
対照で用いた樹脂 PAPU −
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
塗工組成物の物性
pH 9.4 9.4 9.4 9.4 9.4 9.4 9.4 9.1 9.2
粘度(mPa・s) 2700 2560 2580 2440 2480 2620 2400 2080 2100
──────────────────────────────────────
塗工紙の物性
耐水性:WP法 4.5 4.6 4.4 4.4 4.4 4.5 4.6 2.6 1.7
インキ受理性:A法 4.6 4.7 4.2 4.2 4.2 4.6 4.3 3.0 1.5
〃 :B法 4.6 4.6 4.4 4.4 4.5 4.6 4.4 3.0 1.5
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0059】
(表2の脚注)
* 多価アルコールの記号の意味
TEG:トリエチレングリコール、
DEG:ジエチレングリコール、
SOL:ソルビトール、
TMP:トリメチロールプロパン
【0060】
【発明の効果】
本発明の塗工紙用樹脂組成物は、ホルムアルデヒド由来成分を含まないため、それを配合した紙用塗工組成物がホルムアルデヒドを発生することはない。この樹脂組成物は、液状媒体に溶解又は分散された状態で用意することができ、これを顔料及び水性バインダーと組み合わせて紙用塗工組成物とすることができる。
そしてこの塗工組成物は、増粘や流動性悪化などの不都合を起こしにくく、またインキ受理性や耐水性など、種々の改良された性能を示す塗工紙を与える。
Claims (8)
- 脂肪族アミンと、分子内にグリシジル基を少なくとも2個有するグリシジル化合物との反応生成物である架橋アミン化合物、及び糖類を含有することを特徴とする塗工紙用樹脂組成物。
- 脂肪族アミンが複素環アミンである請求項1記載の樹脂組成物。
- 複素環アミンが、複素環を構成する2級又は3級アミノ基のほかに1級アミノ基を少なくとも1個有する請求項2記載の樹脂組成物。
- グリシジル化合物が芳香族グリシジルエーテルである請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- さらに非重合体の不揮発性物質を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 液状媒体に分散又は溶解されている請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 液状媒体が、水からなる請求項6記載の樹脂組成物。
- (a) 顔料、
(b) 水性バインダー、
(c) 脂肪族アミンと分子内にグリシジル基を少なくとも2個有するグリシジル化合物との反応生成物である架橋アミン化合物、及び
(d) 糖類
を含有することを特徴とする紙用塗工組成物。
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