JP4243971B2 - タイヤ滑り止め装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は帯状のゴム製の履帯に滑り止め金具を埋め込んだタイヤ滑り止め装置に関し、さらに詳しくは,履帯の長手方向に埋め込む滑り止め金具の分布を改良することにより、特にアンチロックブレーキ装置(ABS装置)を搭載した車両用にも好適な氷上性能を発揮するタイヤ滑り止め装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特に凍結路面でのタイヤの制駆動性能を発揮させるため金属製のチェーンに代えて複数の滑り止め金具を履帯の全周にわたり埋め込んだゴム製履帯からなるタイヤ滑り止め装置が普及している(例えば、特許文献1参照。)。近年の自動車の多くはアンチロックブレーキ装置(ABS装置)を搭載しているため、制動時において車輪がロックしずらくなっており、これが凍結路面での制動性能を低下させる要因の一つとなっていた。
【0003】
これを解消するための方策としては、履帯に埋め込む滑り止め金具の密度を多くすればよいが、滑り止め金具の数を増やすことはコストアップに繋がることから、必ずしも望ましい対策といえるものではなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−303006号公報(第1〜3頁、図1〜2)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、滑り止め金具の数を増やすことなく、たとえABS装置を搭載した車両の場合であっても、氷上路面での制動性能を向上させることを可能にしたタイヤ滑り止め装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明のタイヤ滑り止め装置は、網状に形成された帯状のゴム製の履帯に全周長にわたり複数の滑り止め金具を埋め込むと共に、前記滑り止め金具の埋め込み密度を、前記履帯の長手方向に対して疎の領域と密の領域とが交互に繰り返して分布するように形成したタイヤ滑り止め装置であって、前記履帯の全周長の10%からなる推定接地領域内において測定した前記滑り止め金具の投影面積が前記履帯の全周長にわたり平均して60mm 2 以下で、かつ前記滑り止め金具の投影面積が70mm 2 以上となる推定接地領域を前記履帯の全周長上に3〜6ケ所含むように構成すると共に、前記滑り止め金具を前記推定接地領域内においてその接地中心点が前記履帯の幅方向に対して互いに2mm以上の間隔を隔てて離れるようにしたことを特徴とする。
【0007】
このように、滑り止め金具の埋め込み密度を履帯の長手方向に対して疎の領域と密の領域とが交互に繰り返して分布するように構成すると共に、履帯の全周長の10%に相当する推定接地領域内において測定した滑り止め金具の平均投影面積及び滑り止め金具の投影面積が70mm 2 以上となる推定接地領域の配置数をそれぞれ設定したので、ABS装置のように車輪がロックしずらくなっていても、埋め込み密度が密の領域における滑り止め金具が路面に接地した時点において制動効果を発揮することができる。しかも、上述する推定接地領域内において、滑り止め金具の接地中心点を履帯の幅方向に対して互いに2mm以上の間隔を隔てて離れるように配置したので、タイヤの回転時に滑り止め金具が同一の軌跡上を移動することがなく、制駆動性能を効率よく向上することができる。さらに、滑り止め金具は、密の領域と共に疎の領域を配置するため、その埋め込み総数を従来と同等又はそれ以下にすることができ、コスト上昇を招くことはない。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を引用して本発明の実施形態を説明する。各図において、同一の構成要素は同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
図1は本発明のタイヤ滑り止め装置の一例を示す平面図である。タイヤ滑り止め装置1は、網状に形成された帯状のゴム製の履帯2に全周長Lにわたり滑り止め金具3が埋込まれて構成されている。滑り止め金具3は金属又は硬質樹脂などからなり、その材料は必ずしも金属のみに限定されるものではない。滑り止め金具3は、履帯2の長手方向に対して埋め込み密度が疎の領域Rと密の領域Qとが交互に繰り返して分布するように配置される。
【0010】
本発明において、滑り止め金具3の埋め込み密度は、履帯2の特定範囲内に埋め込まれる滑り止め金具3の投影面積として表わされる。そして、滑り止め金具3の投影面積とは、滑り止め金具3が履帯2の表面から突出した部分を履帯2の周方向に投影したときの面積として定義される。密の領域Qでは、図中○枠で囲んだ部分が示すように、疎の領域Rに比較して滑り止め金具3が密集して埋め込まれている。
【0011】
履帯2の全周長Lは、予めこれが装着されるタイヤの周長に応じてそれぞれ規定されており、履帯2はタイヤの周囲に巻きつけられた状態でその両端2a、2bを互いに連結してタイヤの外周上に装着される。履帯2が装着されたタイヤが走行した状態における履帯2の推定接地領域は通例履帯2の全周長Lの略10%を占めることから、本発明ではその推定接地領域内における滑り止め金具2の投影面積を履帯2の全周長Lにわたり平均して60mm2 以下に設定する。
【0012】
従来のタイヤ滑り止め装置の推定接地領域内における滑り止め金具の投影面積の上限は、一般に略60mm2であるので、本発明におけるタイヤ滑り止め装置1の推定接地領域内における滑り止め金具3の平均投影面積を履帯2の全周長Lにわたって60mm2以下にすることにより、滑り止め金具3の総埋め込み本数を従来装置と略同等にすることができるので、コスト上昇を抑えることができる。
【0013】
また、推定接地領域内における滑り止め金具3の投影面積を履帯2の全周長Lにわたり平均して60mm2 以下に設定したとき、当然、密の領域Qにおける滑り止め金具3の投影面積は上記平均投影面積よりも大きく、疎の領域Rにおける滑り止め金具3の投影面積は上記平均投影面積よりも小さくなることになるが、履帯2の全周長L上には滑り止め金具3の投影面積が70mm2 以上となる推定接地領域を含み、その推定接地領域が履帯2の全周長L上に3〜6ケ所、好ましくは4〜5ケ所含まれるようにする。
【0014】
これにより、埋め込み密度が密の領域Qにおける滑り止め金具3が路面に接地した時点において制動効果を発揮することができる。上記推定接地領域内における滑り止め金具3の投影面積が70mm2以上となる領域は、前記する密の領域Qと疎の領域Rとが含まれる場合もあり、密の領域Qのみからなる場合もある。推定接地領域内における滑り止め金具3の投影面積が70mm2以上となる領域の配置が、履帯2の全周長L上に2ケ所以下となると制動性能を向上させることができず、7ケ所超では滑り止め金具3が増加することになり経済性が悪化する。
【0015】
このように、滑り止め金具3の投影面積を設定することにより、たとえ車輪のロックがしずらいABS装置を装備した車両の場合であっても、密の領域Qにおける滑り止め金具3が作用することにより優れた氷上制動を発揮することができる。しかも、滑り止め金具3の総埋め込み本数を従来のタイヤ滑り止め装置と略同等数以下にすることができるため、コスト上昇を抑制することができる。
【0016】
それぞれの密の領域Qにおける滑り止め金具3の投影面積は互いに同等である必要はなく、また、これに隣接するそれぞれの疎の領域Rにおける滑り止め金具2の投影面積も互いに同等である必要はない。しかしながら、それぞれの疎の領域Rにおける滑り止め金具3の投影面積は、上記平均投影面積よりは小さいが、略30mm2以上であることが好ましい。
【0017】
また、履帯2の全周長L上に占める密の領域Qと疎の領域Rとの繰返し長さは、特に限定されるものではないが、密の領域Qと疎の領域Rとが履帯2の全周長L上にそれぞれ略均等な長さを以って繰返し配置されることが好ましい。
【0018】
図2及び図3は履帯2を装着した状態におけるタイヤの側面図である。図2では履帯2の全周長L上に滑り止め金具3の埋め込み密度が密の領域Qと疎の領域Rとをそれぞれ4ケ所含んでおり、図3では密の領域Q疎の領域Rとをそれぞれ5ケ所含んでいる。
【0019】
また、本発明では、各滑り止め金具3を上述した推定接地領域内において、その接地中心点の位置が履帯2の幅方向に対して互いに2mm以上の間隔を隔てて離れているように配置する。これによりタイヤの回転時に滑り止め金具3が同一の軌跡上を移動することのないようにして、制動性能及び駆動性能を一層向上させることを可能にする。
【0020】
上述したように、本発明のタイヤ滑り止め装置は、滑り止め金具3の埋め込み密度を履帯2の長手方向に対して疎の領域Rと密の領域Qとが交互に繰り返して分布するように構成すると共に、履帯の全周長の10%に相当する推定接地領域内における滑り止め金具の平均投影面積及び投影面積が70mm 2 以上となる推定接地領域の配置数をそれぞれ設定したので、ABS装置のように制動時に車輪がロックしないようにしてあっても、履帯2の密の領域Qにおける滑り止め金具3が作用して優れた制動効果を発揮することができる。しかも、上述する推定接地領域内において、滑り止め金具の接地中心点を履帯の幅方向に対して互いに2mm以上の間隔を隔てて離れるように配置したので、タイヤの回転時に滑り止め金具が同一の軌跡上を移動することがなく、制駆動性能を効率よく向上することができる。また、密の領域Qを疎の領域Rと共に交互に配置しているから、滑り止め金具3の総数を従来装置と同等の状態にすることができ、コストアップを生じない。
【0021】
【実施例】
履帯に埋め込む滑り止め金具の総投影面積を同一にして、履帯の長手方向に均等な長さ(全周長の1/8)を有する密の領域Qと疎の領域Rとがそれぞれ4つずつ交互に配置するようにし、各領域における滑り止め金具の投影面積を表1に示すように変化させた本発明のタイヤ滑り止め装置(実施例1〜3)と投影面積を一定とした従来のタイヤ滑り止め装置(従来例)とを作製した。
【0022】
これをタイヤ(サイズ:185/70R14)に装着して、以下の方法により氷上制動性能を評価した。その結果を従来のタイヤ滑り止め装置(従来例)の結果を100とした指数により表1に併せて記載した。
〔氷上制動性能評価方法〕
上記タイヤを1800cc(FF)車両に装着して、車速40km/hからのABS制動距離を測定した。
【0023】
【表1】
表1より、密の領域Qと疎の領域Rとを交互に繰り返して配置した本発明のタイヤ滑り止め装置は氷上制動性能に優れることを確認した。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のタイヤ滑り止め装置は、滑り止め金具の埋め込み密度を履帯の長手方向に対して疎の領域と密の領域とが交互に繰り返して分布するように構成すると共に、履帯の全周長の10%に相当する推定接地領域内における滑り止め金具の平均投影面積及び投影面積が70mm 2 以上となる推定接地領域の配置数をそれぞれ設定したので、ABS装置のように車輪がロックしずらくなっていても、密の領域における滑り止め金具が路面に接地した時点において制動効果を発揮することができる。しかも、上述する推定接地領域内において、滑り止め金具の接地中心点を履帯の幅方向に対して互いに2mm以上の間隔を隔てて離れるように配置したので、タイヤの回転時に滑り止め金具が同一の軌跡上を移動することがなく、制駆動性能を効率よく向上することができる。
【0025】
しかも、滑り止め金具は、密の領域と共に疎の領域を配置するため、その埋め込み総数を従来と同等にすることができ、コスト上昇を招くことはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイヤ滑り止め装置の一例を示す平面図である。
【図2】本発明のタイヤ滑り止め装置をタイヤに装着した状態の一例を示す側面図である。
【図3】本発明のタイヤ滑り止め装置をタイヤに装着した状態の他の例を示す側面図である。
【符号の説明】
1 タイヤ滑り止め装置
2 履帯
3 埋め込み金具
Q 密の領域
R 疎の領域
Claims (3)
- 網状に形成された帯状のゴム製の履帯に全周長にわたり複数の滑り止め金具を埋め込むと共に、前記滑り止め金具の埋め込み密度を、前記履帯の長手方向に対して疎の領域と密の領域とが交互に繰り返して分布するように形成したタイヤ滑り止め装置であって、前記履帯の全周長の10%からなる推定接地領域内において測定した前記滑り止め金具の投影面積が前記履帯の全周長にわたり平均して60mm 2 以下で、かつ前記滑り止め金具の投影面積が70mm 2 以上となる推定接地領域を前記履帯の全周長上に3〜6ケ所含むように構成し、さらに、前記滑り止め金具を前記推定接地領域内においてその接地中心点が前記履帯の幅方向に対して互いに2mm以上の間隔を隔てて離れるようにしたタイヤ滑り止め装置。
- 前記密の領域と疎の領域とが前記履帯の全周長上にそれぞれ略均等な長さを以って繰り返し配置される請求項1に記載のタイヤ滑り止め装置。
- 前記タイヤ滑り止め装置がアンチロックブレーキ装置を搭載した車両用のタイヤ滑り止め装置である請求項1又は2に記載のタイヤ滑り止め装置。
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