JP4242959B2 - 自動二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動二輪車用の空気入りタイヤに関し、とくに、高速走行において顕著なシミーの発生を抑制するとともに該タイヤの操縦安定性の改善を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車のフロントに装着されるタイヤはハドリング等の操縦性能が重視されるために、従来はクロス構造になるベルト層を備えたものが適用されているのが普通であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、車両の軽量化、高性能化が進むなかで、クロス構造のベルト層を備えたタイヤにおいては、路面の微小凹凸からくるトレッド面の突き上げとそれに起因するハンドルの微小振動、いわゆるシミーが顕在化してきており、とりわけ高周波領域でのシミーの防止が強く望まれるようになってきている。また、自動二輪車においては超高速走行での車体の安定性の確保がより重要な課題となっていているが、この点に関して従来の自動二輪車用空気入りタイヤは、速度の上昇に対してタイヤのクラウン部のセンターのせり出し量が大きくなり、設置形状が大きく変形することにってタイヤの接地領域が小さくなるのが避けられず、このような状況下での不具合の解消を図った自動二輪車用の空気入りタイヤは今のところ知られておらず、その早急な開発が望まれていた。
【0004】
本発明の目的は、自動二輪車量の空気入りタイヤにおいて、とくに高周波領域でのシミーの発生を防止するとともに高速走行時の操縦の安定化を図るところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一対のサイドウオールとこのサイドウオール相互をつなぐトレッドとがトロイダル状に連なり、これらの各部をタイヤの赤道面に対して60〜90°の範囲で有機繊維コードを一方向に配列したプライの少なくとも一層のカーカス層にて補強され、該カーカス層の外周に一本のゴムコーディングコードないしは複数本のリボン状ゴムコーティングコードにより螺旋状に巻き回されてタイヤの幅方向に延在するコードプライからなるスパイラルベルトの層を少なくとも一層備える自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、
タイヤの最内層に配置されるカーカス層の内側もしくはインナーライナーの内側表面に少なくとも一層の補強層を有し、この補強層は、スパイラルベルトの幅の20〜120%の設置幅を有するゴム層からなるところに特徴を有する。
【0006】
また、本発明は、上記の構成になる空気入りタイヤにおいて、かかるタイヤはフロントタイヤとして適用される点に特徴を有する。
【0007】
さらに本発明は、補強層の設置幅がスパイラルベルトの幅の20〜60%の狭幅になる点に特徴を有する。
【0008】
【発明の実施の形態】
スパイラルベルト構造になる空気入りタイヤは、高速走行においてもタイヤの接地形状の変化が少なく高速耐久性にも優れておりシミーの発生防止や高速走行時の車両の安定性を図ることができる利点がある反面、トレッドの曲げ剛性が低いという欠点があるために、従来のタイヤ構造においてベルト層だけをスパイラルベルト層に置換しただけでは柔軟構造であるが故にハンドリングの応答性、路面グリップ力の低さ等といった操縦性の低下が避けられない。
【0009】
本発明においては、シミーの発生の回避、高速走行時の操縦性の安定化を実現するため基本的にはスパイラルベルト構造を適用するが、タイヤの最内層に配置されるカーカス層の内側もしくはインナーライナーの表面に配置される補強層は、タイヤに対する負荷時にトレッド部曲げの挙動に対して曲げ中立軸から距離を隔てた外側に位置することになるのでトレッドの曲げ剛性が改善される。また、トレッド表面〜プライ間のせん断剛性が低下することがないのでトレッド表面において発生した力がベルト、プライを経て車体側に伝達される挙動に対して悪影響(例えば、コーナーリングフォースの低下やその応答の低下など)を及ぼすことがないので高速安定性、グリップ力、操縦性が高いレベルに保たれる。
【0010】
プライとプライの間に補強層を配置したり、最外層のプライの外側に補強層を設置することが可能であり、この場合においてもトレッド部の曲げ剛性を改善することはできるが、トレッド表面からプライに至るまでの間のせん断剛性が低下するためにロスが大きくなりトレッド表面にて発生した力がベルト、プライを通じて車体側に伝達される挙動に対して悪影響を及ぼし、高速安定性やグリップ力あるいは操縦性の面で高い改善効果は期待できない。
【0011】
また、補強層を有しない場合においては十分な曲げ剛性の確保とせん断剛性の確保が難しい面があるために、高速安定性、グリップ力、操縦性を高いレベルでマッチングされることができない。
【0012】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明に従う自動二輪車用の空気入りタイヤの要部を示したものであって、図における番号1はサイドウオール、2はサイドウオール1の相互間をつなぐトレッドであって、サイドウオール1とトレッド2はトロイダル状に連なっている。また、3はビードコア、4はタイヤの枠組みを構成するカーカス層であり、このカーカス層4はタイヤの赤道面に対して60〜90°の範囲で有機線維コードを一方向に配列した一層の例で示したプライからなる。
【0013】
また、5はカーカス層4の外周において一本のゴムコーティングコードあるいは複数本のリボン状ゴムコーティングコードにより螺旋状に巻き回されてタイヤの幅方向(トレッドの幅方向)に延在するコードプライからなるスパイラルベルトの層、そして6はカーカス層4の内側に配置した例で示した補強層であり、この例ではスパイラルベルトの層4は一層設けた場合について示してあり、その幅はスパイラルベルトの層4の幅の20〜120%の設置幅を有する。
【0014】
補強層を備えない図2に示すような従来構造の空気入りタイヤでは、トレッド部の曲げ剛性とせん断剛性について高いレベルに保持するとともにそれらのバランスを自由に調整するのが難しいが、本発明では補強層6を設けることによってタイヤに負荷が加わった状態でのトレッド部の曲げ剛性とトレッド2の表面からプライ4に至るまでの間の領域におけるせん断剛性を高いレベルに保持でき、これによってスパイラルベルトを適用した場合に不可避な操縦性能の低下は補償されることになる。
【0015】
図3は、インナーライナー7の表面(タイヤの内壁面)に補強層6を一層設けた本発明に従う空気入りタイヤの他の構成例を示したものである。
図3に示すような構造の空気入りタイヤにおいても、トレッド部の曲げ剛性はもちろんのこと、トレッド表面〜カーカスプライ間のせん断剛性が高いレベルに保持される。
【0016】
図4は、補強層6の設置幅Lをスパイラルベルトの層5の幅L1の20〜60%の範囲内で狭幅にした例を示したものである。
このような狭幅の補強層6は上掲図3に示したような構成、すなわち、インナーライナー7の表面に設けることもでき、このような補強層の設置においても操縦性能の改善を図ることが可能であり、図1、図3に示したような広幅の補強層に比較し、とくに、コーナリング中のグリップ感や軽快性が改善される利点がある。
【0017】
本発明において適用する補強層6は基本的には、スパイラルベルトの幅の20〜120%の設置幅を有するものとしたが、その理由は、サイドの曲げ剛性を高くしすぎてしまうと、ハンドリング特性が悪化、吸収性が悪化するからである。
とくに、20〜60%の範囲で設置幅を設定すると適度なトレッド剛性の確保により、シミー・安定性・軽快性とコーナリング中のグリップの各性能バランスを高くとれる利点がある。
【0018】
本発明に適合する補強層としては、具体的にゴムシート、もしくは角度有もしくは無のコード層を1枚〜数枚を使用することができる。
【0019】
サイズが120/70ZR17で、ナイロン2P+ケブラー1ベルト(ベルト幅140mm)の基本構造を有する上掲図1に示した構造の空気入りタイヤ(最内層のカーカスプライの内側に厚さ0.5mm、幅70mmのゴムシートを配置した場合:適合例1、最内層のカーカスプライの内側に幅70mmで840Dnyコード層を配置した場合:比較例4とする)を自動二輪車(HONDA CB1100XX)の前輪に装着して高速走行(時速250km/h)における車両の直進安定性、シミー性、軽快性・応答性、旋回力、乗り心地性について、上掲図2に示した従来のタイヤ(補強層を有しないタイヤ:比較例1とする)と、ベルトとカーカスプライの相互間に補強層を入れたタイヤ(比較例2とする)及びカーカスプライの相互間に補強層(サイズ:120/70ZR17厚さ0.5mm×幅70mmのゴムシート)を配置したタイヤ(比較例3)を装着して走行した場合とともに調査した。
【0020】
上掲図2に示した従来構造の空気入りタイヤ(比較例1)を装着した場合に得られた調査項目に関しての結果を指数表示で全て100とした場合(値が大きくなるほど良好とする)、比較例2のタイヤにおいては高速直進安定性が90、シミー性が130、軽快性・応答性が110、旋回力・グリップ力が90、乗り心地性が85程度であり、比較例3のタイヤにおいては高速直進安定性が80、シミー性が120、軽快性・応答性が100、旋回力・グリップ力が80、乗り心地性が90程度であった。
【0021】
一方、本発明に従う適合例1は高速直進安定性が110、シミー性が110、軽快・応答性が110、旋回力・クリップ力が100、乗り心地性が100程度であり、比較例4のタイヤでは、高速直進安定性が120、シミー性が120、軽快性・応答性が120、旋回力・グリップ性が95、乗り心地性が90程度であった。
【0022】
本発明に適合するタイヤ(適合例1)は調査の結果として以上のような値になることが明らかとなったが、本発明に従うタイヤはとくに高速安定性については、比較例1〜3に比べてタイヤの横・捩じり方向の変形が小さくなり、かつ横力が低下せずウオーブル振動(ウオーブル振動とは高速域で発生するフレーム・ハンドル回り全体の10Hz以下の振動であり、この振動は車種や条件によって速度域が異なる。(今日のCB1100XXでは、150km/h以上)の収まりが改善され高速直進安定性の改善に寄与することが確認された。
【0023】
また、シミー性については、タイヤの横・捩じり方向の変形が小さくなり外乱入力時の振幅が小さくなる傾向にあった。軽快性・応答性については、とくにハンドル操作時の車体の反応が改善され、旋回力・グリップ力については横力の発生が大きくなるため二輪車特有の旋回中の倒れ込みが減少し旋回力の改善が見られた。
【0024】
乗り心地性に関しては、本発明に従う空気入りタイヤでは突起の乗り越し時に突き上げが若干シャープになるが、トレッド部がソフトなので乗り心地の絶対的なレベルは実用において十分に耐え得るものであった。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、自動二輪車用の空気入りタイヤにおいて、とくに車両の軽量化や高性能化に伴って顕在化してきたシミーの発生を軽減できるだけでなく、超高速走行での操縦安定性を著しく改善することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う自動二輪車用空気入りタイヤの構成説明図である。
【図2】従来の自動二輪車用空気入りタイヤの構成を示した図である。
【図3】本発明に従う自動二輪車用空気入りタイヤの他の例を示した図である。
【図4】本発明に従う自動二輪車用空気入りタイヤの他の例を示した図である。
【符号の説明】
1 サイドウオール
2 トレッド
3 ビードコア
4 カーカス層
5 スパイラルベルトの層
6 補強層
7 インナーライナー
L 設置幅
L1スパイラルベルトの幅
Claims (3)
- 一対のサイドウオールとこのサイドウオール相互をつなぐトレッドとがトロイダル状に連なり、これらの各部をタイヤの赤道面に対して60〜90°の範囲で有機繊維コードを一方向に配列したプライの少なくとも一層のカーカス層にて補強され、該カーカス層の外周に一本のゴムコーディングコードないしは複数本のリボン状ゴムコーティングコードにより螺旋状に巻き回されてタイヤの幅方向に延在するコードプライからなるスパイラルベルトの層を少なくとも一層備える自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、
タイヤの最内層に配置されるカーカス層の内側もしくはインナーライナーの内側表面に少なくとも一層の補強層を有し、この補強層は、スパイラルベルトの幅の20〜120%の設置幅を有するゴム層からなる、ことを特徴とする自動二輪車用空気入りタイヤ。 - フロントタイヤとして適用されるものである、請求項1記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
- 補強層の設置幅がスパイラルベルトの幅の20〜60%の狭幅になる請求項1記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
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