JP4240918B2 - 導電性化粧シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の内装、建具の内装、車両の内装等に用いられる化粧シートに関し、更に詳しくは、電磁波シールド性、電磁波吸収性、帯電防止性等に優れた導電性化粧シ−トに関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物の内装、建具の内装、車両の内装などに用いられる化粧シートとしては、図5(A)、(B)のように、基材1、着色層4、表面保護層5を順次積層させた化粧シートが一般に知られている。
【0003】
また、そうした建築物などの壁面等を、電磁波シールドすることのできる導電性の化粧シートが、従来より種々提案されている。例えば、図5(A)に示すような基材1と金属箔51とのラミネートにより製造される導電性化粧シートA、基材1、絵柄着色層42、表面樹脂層5が順次積層されてなる化粧シートにおいて、図5(B)に示すような基材1と絵柄着色層42との間に導電性塗料からなる隠蔽層52が形成されてなる導電性化粧シートB、同様の化粧シートにおいて、基材の絵柄着色層のない側に導電性塗料からなる隠蔽層が形成されてなる導電性化粧シートC、同様の化粧シートにおいて、基材に導電性物質が含有されてなる導電性化粧シートD、等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図5(A)に示す導電性化粧シートAにおいては、基材1と金属箔51のラミネートの際の貼り合わせ工程が複雑であり、また、化粧シートAに曲げ加工を施した場合には、金属箔51が断裂して電磁シールド性能が低下するという問題があった。
【0005】
また、図5(B)に示す導電性化粧シートBにおいては、隠蔽層52が導電性塗料で形成されるため、隠蔽層52の色が導電性塗料の色に影響され、化粧シートの色を調整する自由度がなくなるという問題があった。また、隠蔽層52が導電性塗料で形成されるので、基材1全体に導電性塗料を塗工しなければならず、コストが高くなるという問題があった。
【0006】
また、導電性化粧シートCは、導電性化粧シートBと同様に、基材全体に導電性塗料を塗工しなければならないため、コストが高くなるという問題があった。さらに、基材を紙等の繊維質の材料とした場合においては、導電性塗料が繊維質の材料に浸み込んでしまうため、化粧シート表面に十分な導電性を発現させようとすると、大量の導電性塗料を塗工しなければならず、コストが高くなる上に、化粧シート表面における導電性のばらつきも大きくなるという問題があった。
【0007】
また、導電性化粧シートDは、化粧シートに十分な導電性を発現させようとすると、大量の導電性材料を基材中に含有させなければならず、コストが高くなる上に、化粧シートが曲げにくくなったり、化粧シート表面に凹凸が生じたりするなど、物性も悪くなるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上述した問題が生じず、安定した電磁シールド性能を有する導電性化粧シートを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために提供される本発明の導電性化粧シートは、基材、着色層、表面保護層を有し、基材が繊維質の材料からなり、基材にはシーラー層を介して導電層が形成されている導電性化粧シートであって、前記導電層が、前記基材の着色層を有していない側の面に形成されていると共に前記シーラー層が着色されていることに特徴を有する。
【0010】
この発明によれば、繊維質の材料からなる基材にシーラー層を介して導電層が形成されているので、繊維質の基材に導電層を形成する塗料が浸み込むことがない。その結果、形成される導電層の膜厚が均一で、化粧シートにおける導電性のばらつきがなく、導電性化粧シートの品質が安定するという利点があり、また、従来よりもコストを低下させることができる。さらに、本発明の導電性化粧シートは、基材が繊維質の材料からなるため、プラスチック基材からなる化粧シートよりもコストが低く、また、曲げ加工適性が良好であるという利点がある。
【0011】
また、上記本発明の導電性化粧シートにおいては、導電層が基材の着色層を有していない側の面に形成されていることが好ましい。こうした面に導電層が形成されていることにより、表面の意匠性を損なうことなく化粧シートに導電性を付与することができる。
【0012】
上記本発明の導電性化粧シートにおいては、導電層がパターンで形成されていることに特徴を有する。この発明によれば、導電層がパターンで形成されているため、基材全体に導電層を設けた場合に比較して、コストを低下させることができるという利点がある。さらに、用途等に応じてパターン形状を自由に変更することができるので、例えばアンテナ形状にすることにより、単に電磁波を遮蔽するだけでなく、電磁波吸収性能を化粧シートに付与することができる。
【0013】
上記本発明の導電性化粧シートにおいては、前記シーラー層が前記導電層のパターン形状にあわせたパターンで、かつ、前記導電層が形成される部分よりも広い面積で形成されていることに特徴を有する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電磁波遮蔽シートについて図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の導電性化粧シート101の一例を示す断面図であり、基材1上にベタ着色層41と絵柄着色層42とからなる着色層4が設けられ、その着色層4上に表面保護層5が設けられており、基材1の着色層4がない側の面には、シーラー層2を介して導電層3が形成されている。図2は、基材1の着色層4がある側の面に、シーラー層2を介して導電層3が形成されている導電性化粧シート201の一例を示す断面図である。なお、導電性化粧シート201の導電層3は、パターンで形成されている。また、図3は、導電層3がパターンで形成されている導電性化粧シート301の一例を示す断面図である。
【0015】
(基材)
基材1は、本発明の導電性化粧シートに必須のものであり、繊維質の材料によって構成される。こうした繊維質の材料は、通常の化粧シートに用いられるプラスチック基材よりも安価であるため、化粧シート全体としてのコストを低減させることができる。また、基材1に繊維質の材料を用いたことにより、化粧シートの曲げ加工適性が良好になる。
【0016】
基材1に用いられる繊維質の材料としては、塗工液を塗布した場合にその液が浸み込むような材質のものが用いられる。具体的には、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、和紙、板紙、紙にポリ塩化ビニルをゾル塗工又はドライラミネートしたいわゆるビニル壁紙原反、あるいは上質紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙等の紙、硝子繊維,石綿,チタン酸カリウム繊維,アルミナ繊維,シリカ繊維,炭素繊維等の無機質繊維からなるシート又はフィルム、ポリエステルやビニロン等の有機樹脂等を用いた織布又は不織布等を用いることができる。
【0017】
なお、基材1には、上述の繊維質の材料に、さらにアクリル樹脂、スチレン−ブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を含有させた材料を用いてもよい。具体的には、紙間強化紙、含漬紙等が挙げられる。こうした樹脂を含有させるには、繊維質の材料からなる基材を抄造した後に樹脂を含漬させたり、または繊維質の材料からなる基材を抄造する際に樹脂を内填させたりすることが可能である。このような構成にすることにより、基材1に用いる繊維質の材料の繊維同士の間、または基材1と他の層(例えば、シーラー層2、着色層4)との間の密着性を強化したり、繊維質の材料のケバ立ちを防止することができる。
【0018】
基材1に用いる材料の秤量値は、特に限定されず、導電性化粧シートが使用される用途や要求される性能に基づいて任意に設定されるが、通常20〜300g/m2 程度とする。
【0019】
(シーラー層)
シーラー層2は、本発明の導電性化粧シートに必須の層であり、目止め層とも呼ばれるもので、基材1と導電層3との間に設けられる。
【0020】
シーラー層2が設けられることにより、塗工された未硬化で液状の導電層3を形成する塗工液(以下、導電性塗料という。)が基材1の内部に浸み込んで、導電層3の膜厚が減少したり、基材1の地合ムラが導電層3の塗膜の艶ムラとなったりすることが防止される。特に、基材1が繊維質の材料で構成されており、塗工液が浸み込みやすい性質を有するにもかかわらず、シーラー層2が存在することにより、導電性塗料が基材1に浸み込んでいかないため、導電層3の膜厚を均一化させることができ、その結果、化粧シートの導電性能を安定化させることができる。さらに、導電性塗料の塗工量が低減されて当該塗料にかかるコストを低くすることができる。
【0021】
また、シーラー層2は、図2のように基材1の着色層4を有する側の面に設けた場合には、着色層4及び表面保護層5との密着性を強化して化粧シートの耐擦傷性を向上させることもできる。
【0022】
また、導電層3を後述するようにパターンで形成する場合には、シーラー層2を着色することにより、導電層3の隠蔽性を向上させたり、また、化粧シ−トに帯電防止性能を付与することもできる。導電層3のパターン形状にあわせて、シーラー層2を同様のパターン形状にして形成することが可能であり、この場合にはシーラー層2は導電層3が形成される部分よりも広い面積に形成する。
【0023】
シーラー層2は、樹脂組成物、溶媒、その他の添加剤からなるシーラー層2用塗工剤を用いて形成される。なお、シーラー層2用塗工剤として、溶媒を用いない無溶剤タイプの塗工剤を用いることも可能である。無溶剤タイプの塗工剤は、環境問題が配慮されたものであり、好ましく用いられる。
【0024】
樹脂組成物としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、アミノアルキド樹脂等の1種又は2種以上の混合物が用いられる。
【0025】
ウレタン樹脂としては、2液硬化型ウレタン樹脂、1液硬化型(湿気硬化型)ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等が挙げられる。2液硬化型ウレタン樹脂は、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂である。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等が用いられる。また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、あるいは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート等が挙げられる。また、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体を用いることもできる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等が挙げられる。なお、脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートは耐候性、耐熱黄変性を良好に出来る点で好ましく用いられ、具体的には例えばヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0026】
1液硬化型ウレタン樹脂は、分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを必須成分とする組成物である。プレポリマーは、通常は分子両末端に各々イソシアネート基を1個以上有するプレポリマーであり、具体的には、ポリカーボネート骨格、ポリウレタン骨格、ポリブタジエン骨格、ポリエステル骨格等を骨格とする、ポリイソシアネートプレポリマーである。こうした1液硬化型ウレタン樹脂を用いた場合には、イソシアネート基同士が空気中の水分により反応して鎖延長反応を起こし、その結果、分子鎖中に尿素結合を有する反応物を生じる。そして、この尿素結合に更に分子末端のイソシアネート基が反応して、ビウレット結合を起こして分岐し、架橋反応することにより、シーラー層2が形成される。
【0027】
アクリル樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル−スチレン共重合体等のアクリル樹脂等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを指す。
【0028】
溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の非水溶性有機溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール等の水溶性有機溶剤、水、またはこれらの混合溶剤等が用いられる。
【0029】
シーラー層2は、シーラー層2用塗工剤を、グラビアコート、ロールコート等の方法を用いて基材1上に塗工し、その塗膜を乾燥させ、固化させることにより形成される。なお、シーラー層2は、グラビア印刷等による全ベタ印刷により形成されても良い。塗工量は0.5〜10g/m2 (固形分基準)程度であり、少なくとも塗工する樹脂組成物の一部は基材1中に含浸させるようにする。
【0030】
(導電層)
導電層3は、本発明の導電性化粧シートに必須の層であり、基材1にシーラー層2を介して形成される。導電層3が設けられることにより、化粧シートに電磁波シールド性、電磁波吸収性、帯電防止性等が付与される。
【0031】
導電層3は、上述のように、基材1との間にシーラー層2が存在するために、導電層3を形成する導電性塗料が基材1の材料に含浸することがないため、形成される導電層3の厚みが安定し、化粧シートの電磁波シールド性能が安定して発揮される。このように導電層3が形成された本発明の導電性化粧シートは、導電性能が極めて安定したものとなる。
【0032】
また、導電層3は、図1に示されるようにシーラー層2の全面に形成してもよいし、図2、図3に示されるようにパターン状に形成してもよい。
【0033】
導電層3をパターン状に形成することにより、ベタ状に導電層3を形成した場合よりも導電性塗料の塗工量が削減でき、導電層3を形成するためにかかるコストを低減することができる。また、パターン形状は下記のように化粧シートの用途等に応じて、任意に変えることができる。例えば、導電層3のパターンをアンテナ形状にすることにより、電磁波を遮蔽するだけでなく、電磁波吸収性能を化粧シートに付与することができる。また、所定のパターンを形成することにより、特定の波長の電磁波を対象とした電磁波遮蔽性能を化粧シートに付与することが可能である。
【0034】
導電層3を図2、図3のようにパターン状に形成する場合には、図4に示すように、(A)〜(E)に示す正方格子(A)、六角格子(B)、三角格子(C)、ストライプ格子(D)、煉瓦積み模様(E)等の種々の平面パターンを例示することができる。これらの各図において、黒い部分61は、シーラー層2上に導電層3が形成されている部分であり、白い部分は、シーラー層上に導電層3が形成されていない部分である。導電層3の平面パターンについては、領域全体を同じパターンで形成しても、領域毎に異なるパターンで形成してもよく、その用途や仕様により任意に変化させることができる。なお、図4の(A)〜(E)に示す平面パターンのうち、ストライプ格子(D)は、他のパターンよりも電磁波遮蔽効果が弱いので実用上はあまり使用されてはいない。また、基材1の面全体に対して導電層3のパターンが設けられない部分(図4の白い部分)の割合を示す開口率は、0〜90%程度とし、30〜80%程度とすることが好ましい。
【0035】
導電層3は、図1、図3に示されるように、基材1の着色層4を有しない側の面に形成させることもできるし(この場合を、便宜上化粧シートの裏側に形成するともいう。)、図2に示されるように、基材1の着色層4を有する側の面に形成させることもできる(この場合を、便宜上化粧シートの表側に形成するともいう。)。導電層3を化粧シートの裏側に形成した場合には、化粧シート表面の意匠性を損なうことなく化粧シートに導電性を付与できる点で有利である。また、導電層3を化粧シートの表側に形成した場合には、化粧シートの表面の導電性が向上し、通常静電気によって付着するホコリやチリが、化粧シート表面に付着しにくくなる点で好ましい。
【0036】
導電層3は、導電性塗料により形成される。導電性塗料は、導電性を付与できるものであればよく、バインダー樹脂に導電性粉末を分散させた塗料のほか、有機金属化合物からなる塗料、有機導電性樹脂からなる塗料などが使用できる。なお、導電性塗料として、溶媒を用いたタイプの塗料の他、無溶剤タイプの塗料を用いることも可能である。導電性塗料に用いられる溶媒は特に限定されず、シーラー層2用塗工剤について説明したのと同様の溶媒を用いることが可能である。また、無溶剤タイプの塗工剤は、環境問題が配慮されたものであり、好ましく用いられる。
【0037】
バインダー樹脂としては、硝化綿、酢酸繊維素、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸ブチルなどのアクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリウレタン樹脂などの1種または2種以上の混合物が用いられる。なお、後述するような、着色層4や表面保護層5に用いる電離放射線硬化性樹脂を使用することも可能である。
【0038】
導電性粉末としては、金、銀、銅、ステンレス、アルミニウム、亜鉛、錫、インジウム、アンチモン、ニッケルなどの金属粒子、カーボンブラック、黒鉛などの導電性顔料、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化チタンなどの金属酸化物などが用いられる。
【0039】
導電性粉末の形状は特に限定されないが、球、楕円、鱗片形、針状の導電性粉末を好ましく使用でき、特に鱗片形および針状の導電性粉末は導電性をより向上させることができる。
【0040】
有機金属化合物としては、メチル銀、ブチル銀、フェニル銀などの有機銀化合物、モノアルキル(アリール)金誘導体(二臭化エチル金、二塩化フェニル金など)、ジアルキル金誘導体、トリアルキル金誘導体などの有機金化合物などが用いられる。
【0041】
有機導電性樹脂としては、ポリアニリン、ポリチオフェンなどのπ共役系結合を有する有機化合物が用いられる。
【0042】
これらの導電性粉末、有機金属化合物、有機導電性樹脂は、それぞれ単独で、または組み合わせて用いることが可能である。なお、導電性塗料には、必要に応じてその他の添加剤、例えば、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、粘度調整剤等を添加することができる。また、溶剤乾燥型の塗料とする場合には、イソプロピルアルコール等の溶剤を使用できる。導電性塗料は、形成された導電層3の表面抵抗値が0.01〜1000Ω/□、好ましくは0.02〜500Ω/□となるように、バインダー樹脂と導電性粉末との含有比が調整される。導電性粉末は、バインダー樹脂100重量部に対し、5〜80重量部程度、好ましくは30〜70重量部程度を配合させる。
【0043】
導電層3は、導電性塗料を用い、シルクスクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、孔版印刷法、転写法など各種印刷法により形成される。こうした印刷方法は、使用する導電性塗料の粘度、流動性、塗工膜厚等によって適宜選択することができ、特に限定されない。導電層3は、基材1上にシーラー層2を形成した後に形成され、シーラー層2上の全面に設けてもよく、上述のようにパターン状に設けてもよい。形成された導電層3の膜厚は、特に限定されないが、乾燥後において0.1〜20μm程度、好ましくは1〜10μm程度とする。
【0044】
導電層3を設けた後の、化粧シートにおける導電層3の表面における表面抵抗値は、導電層3の膜厚にもよるが、0.01〜1000Ω/□の範囲で任意に設定することができ、0.02〜500Ω/□とすることが好ましい。
【0045】
(着色層)
着色層4は、本発明の導電性化粧シートにおける必須の層であり、ベタ着色層41および/または絵柄着色層42から構成される。
【0046】
ベタ着色層41は、基材1の地肌の隠蔽等の目的で設けられ、通常は模様のない全ベタ状の着色層として形成される。一方、絵柄着色層42は、図形、文字、記号、色彩、それらの組み合わせ等により、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等からなる模様ないし色彩を有し、ベタ着色層41上に、平面状、凹凸状、凸状(図1を参照。)の層として形成される。なお、絵柄着色層42がベタ着色層41の作用を兼ねる場合もあり、ベタ着色層41のみ、または絵柄着色層42のみから着色層4が構成されることもある。
【0047】
また、着色層4を、図1に示すように、基材1の表面全面に設けたベタ着色層41と、そのベタ着色層41の表面に部分的に設けた絵柄着色層42とから構成することができる。このように構成すれば、化粧シートに所望の柄を付与し、さらに表面保護層5とその下層との密着性を向上させることができる。一方、着色層4をベタ着色層41と絵柄着色層42とから構成し、絵柄着色層42を基材1側に設け、ベタ着色層41を表面保護層5側に設けることも可能である。この場合には、ベタ着色層41は、無色でも着色剤によって着色されていてもよいが、絵柄着色層42の絵柄が外から見られるように、少なくとも透明性を有している必要がある。
【0048】
着色層4は、架橋性樹脂を主成分とし、顔料等の色素(着色剤または着色顔料ともいう。)、溶媒から構成される着色層4用塗工剤により形成される。溶媒は特に限定されず、シーラー層2用塗工剤について説明したのと同様の溶媒を用いることが可能である。なお、着色層4用塗工剤として、溶媒を用いない無溶剤タイプの塗工剤を用いることも可能である。無溶剤タイプの塗工剤は、環境問題が配慮されたものであり、好ましく用いられる。
【0049】
架橋性樹脂としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルポリオール及びポリエステルアクリレートの少なくとも1種と硬化剤を用いて架橋反応して得られる樹脂、さらに後述する電離放射線硬化性樹脂をそのまま又は硬化剤を用いて架橋硬化させた樹脂が挙げられる。着色層4用塗工剤には、これらの樹脂から選ばれた少なくとも1種の架橋性樹脂を用いることができる。これらの樹脂の中で、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルポリオール及びポリエステルアクリレートより選ばれた少なくとも1種と硬化剤と架橋反応して得られる樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
架橋性樹脂を得るために用いる硬化剤としては、通常イソシアネート類又は有機スルホン酸塩が不飽和ポリエステル系樹脂やポリウレタン系樹脂に、アミン類がエポキシ系樹脂に用いられ、更にラジカル重合開始剤として、メチルエチルケトンパーオキサイドやアゾビスイソブチルニトリル等が使用される。
【0051】
イソシアネート類としては、2価以上の脂肪族又は芳香族イソシアネートが使用できるが、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0052】
また、電離放射線硬化性樹脂としては、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有する、紫外線、電子線等の電離放射線により硬化し得る樹脂であって、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又は単量体を適宜混合した組成物が用いられる。これらの組成物としては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート、シロキサン等の珪素樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0053】
プレポリマー、オリゴマーの例としては不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類等が挙げられる。
【0054】
エポキシ樹脂、エポキシ系又はウレタン系の各プレポリマーやオリゴマーを用いる場合には、各々の硬化に用いる硬化剤、例えばアミンやイソシアネートを混合して2液性混合物として使用することができる。
【0055】
また、単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸−2−(N、N−ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸−2−(N、N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N、N−ジベンジルアミノ)エチル、メタクリル酸−2−(N、N−ジメチルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N、N−ジエチルアミノ)プロピル等の不飽和酸の置換アミノアルコースエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、及び/又は、分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等が挙げられる。
【0056】
以上の化合物を必要に応じ1種もしくは2種以上混合して用いるが、樹脂組成物に通常の塗工適性を付与するために、樹脂組成物100重量%に対し、プレポリマー又はオリゴマーを5重量%以上、単量体及び/又はポリチオールを95重量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0057】
単量体の選定に際して、硬化物(形成された着色層4)の可撓性が要求される場合には、塗工適性上支障のない範囲で単量体の量を少なめにしたり、1官能又は2官能アクリレート系単量体を用い比較的低架橋密度の構造とするのが好ましい。また、硬化物(形成された着色層4)の耐熱性、硬度、耐溶剤性等が要求される場合には、塗工適性上支障のない範囲で単量体の量を多めにしたり、3官能以上のアクリレート系単量体を用い高架橋密度の構造とするのが好ましい。1、2官能単量体と3官能以上の単量体を混合し塗工適性と硬化物の物性とを調整することもできる。以上のような1官能アクリレート系単量体としては、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。また、2官能アクリレート系単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート等が、3官能以上のアクリレート系単量体としてはトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0058】
以上のようにして得られる電離放射線硬化性樹脂を架橋性樹脂に用いる時には、硬化剤と反応する官能基を有するのが好ましく、官能基としてOH基、SH基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられる。しかし、これらの官能基を有していない場合でも、重合性不飽和二重結合を有していれば、重合により硬化させて用いることができる。つまり、架橋性樹脂は、硬化剤を用いて架橋される樹脂と、硬化剤を用いずにラジカル重合により硬化される樹脂を含んでおり、例えばウレタンアクリレート、エポキシアクリレートやアクリルポリオール等を用いる場合には、OH基やエポキシ基は硬化剤による架橋反応を起こして硬化が進み、さらに、アクリル基の二重結合はラジカル重合を起こして各々硬化する。従って硬化後の架橋性樹脂は、架橋反応生成物と重合生成物が別々に生成している場合があり、また、同一分子中に架橋により生じる構造と重合により生じる構造が存在する場合もある。また、架橋反応生成物と重合生成物の各々に重合性二重結合が存在すれば、両反応生成物が重合反応を起こして1分子を形成することもある。
【0059】
着色顔料としては、通常使用される有機又は無機系の顔料が使用できる。黄色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン黄等の無機顔料が使用できる。赤色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料、弁柄、朱、カドミウムレッド、クロムバーミリオン等の無機顔料が使用できる。青色顔料としては、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の有機顔料、紺青、群青、コバルトブルー等の無機顔料が使用できる。黒色顔料としては、アニリンブラック等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が使用できる。白色顔料としては、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の無機顔料が使用できる。
【0060】
着色層4を形成するには、上記した架橋性樹脂に用いる官能基または/および重合性二重結合を有する樹脂、プレポリマーまたはオリゴマーを硬化剤または重合触媒等を混合した混合物として塗布することもできる。またこの混合物の硬化が進行して塗布に適宜な粘性に達したのちに塗布することもできる。
【0061】
着色層4は、ベタ着色層41、絵柄着色層42のいずれの層も上記した架橋性樹脂により構成されているので、表面保護層5との密着性に優れている。
【0062】
着色層4は、着色層4用塗工剤を塗工または印刷等によって設けた後、乾燥、硬化させて形成される。このうち、ベタ着色層41は、塗工や印刷により設けられ、絵柄着色層42は、通常、印刷により設けられる。着色層4用塗工剤を塗工する場合には公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用いることができ、通常、乾燥時において1.0〜10.0μm程度の膜厚に塗工される。また、着色層4用塗工剤を印刷する場合は、クラビア、活版、フレキソ等の凸版印刷、平版オフセット,ダイリソ印刷等の平版印刷、シルクスクリーン等の孔版印刷、静電印刷、インキジェットプリント等の公知の各種方法を用いることができ、通常、乾燥時において1.0〜10.0μm程度の膜厚に塗工される。
【0063】
(表面保護層)
表面保護層5は、本発明の化粧シートに必須の層であり、トップコート層またはオーバープリント層(OP層)とも呼ばれる。表面保護層5は、化粧シートの表面を保護して、化粧シートに耐汚染性、耐磨耗性を付与するために設けられる。
【0064】
表面保護層5は、着色層4について説明したのと同様の電離放射線硬化性樹脂組成物を主成分とし、溶媒、その他の添加剤とから構成される表面保護層5用塗工剤により形成される。溶媒は特に限定されず、シーラー層2用塗工剤について説明したのと同様の溶媒を用いることが可能である。なお、表面保護層5用塗工剤として、溶媒を用いない無溶剤タイプの塗工剤を用いることも可能である。無溶剤タイプの塗工剤は、環境問題が配慮されたものであり、好ましく用いられる。添加剤としては、マット剤、光重合開始剤、光増感剤等が挙げられる。なお、本発明の導電性化粧シートは、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる表面保護層5を有することが最も好ましいが、他の材料により表面保護層5が形成されることも可能である。
【0065】
表面保護層5を、電離放射線硬化性樹脂により形成し、後述するように電離放射線等の高エネルギー線で硬化させることにより、表面保護層の架橋性が高くなるため、耐磨耗性、耐汚染性などの化粧シートの表面物性が向上したものとなる。
【0066】
添加剤としてマット剤を用いることにより、形成された表面保護層5の艶消しの効果が得られる。マット剤としてはシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ガラスバルーン、ポリエチレン等の無機又は有機のフィラー乃至微粉末が挙げられる。マット剤の形状は任意であるが球状又は略球状が好ましい。マット剤の粒径としては0.1〜10μm程度のものを用いることができるが、最大粒径が9〜10μmのものが好ましい。最大粒径が9〜10μmの範囲内であることにより、均一に分散して美麗なマット面(艶消し面)を形成し得ると共に、表面保護層5の表面に目立った凹凸を形成せず比較的表面が平滑に形成される。また、マット剤の艶消し効果を充分に発現させるためには、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対してマット剤を5〜20重量部配合させることが好ましく、更に、耐スクラッチ性の向上のためには5〜20重量部が好ましい。表面保護層5は、最大粒径9〜10μmのマット剤を電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して5〜20重量部配合した塗工剤を用いて、後述するように乾燥後の膜厚を8〜15g/m2 として形成されることにより、耐スクラッチ性及び耐マーリング性に優れたものとなる。表面保護層5にマット剤を含有させる場合には、電離放射線硬化性樹脂組成物にマット剤を混合して分散させる。
【0067】
上述した電離放射線硬化性樹脂組成物を、特に紫外線で硬化させる場合には、電離放射線硬化性樹脂組成物に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類、及び/又は光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることもできる。光重合開始剤は電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部程度、光増感剤は電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部程度配合させることができる。
【0068】
表面保護層5は、表面保護層5用塗工剤を着色層4の上に塗工した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成される。塗工方法としては、上述した着色層4を全面ベタの態様で形成する塗工方法と同様の方法が用いられる。表面保護層5の膜厚は、通常、乾燥時で8〜15g/m2 (0.1〜100μm)程度になるように塗工する。
【0069】
電離放射線のうち、紫外線の発生源としては超高圧水銀燈、高圧水銀燈、低圧水銀燈、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等を用いることができる。また、電子線源としてはコックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは直線型、ダイナミトロン型、高周波等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを持つ電子線を照射する。電子線の照射線量としては通常、0.5〜30Mrad程度である。
【0070】
表面保護層5は電離放射線硬化性樹脂を材料として形成されるため、着色層4を構成する架橋性樹脂として電離放射線硬化性樹脂を用いた場合には、あらゆる物理的及び化学的性状が表面保護層5と着色層4との間で極めて類似している。この結果、両層の密着性が良く、着色層4と表面保護層5とはほぼ一体的な層が形成される。このため、両層間の剥離は起こり難く耐久性に優れた化粧シートを提供することができる。
【0071】
また、表面保護層5の上から電離放射線を照射して表面保護層5を硬化させる際に、電離放射線は着色層4にも照射され、着色層4を構成する架橋性樹脂に残存する重合性二重結合は、活性化されて重合反応を起こす。これにより電離放射線硬化性樹脂を含む着色層4と表面保護層5は、硬化が進み、着色層4の硬度が向上する共に、着色層4/表面保護層5間および着色層4(表面保護層5)/基材1間の密着性がさらに向上する。同時に表面硬度も高くなるので、表面保護層5は耐スクラッチ性に優れ、傷つき難くなり、長期にわたる美麗な外観を保持することができるようになる。
【0072】
このように表面保護層5および着色層4が硬化された結果、着色層4は硬度が高くなり、表面保護層5との硬度差も小さくなり、表面保護層5の耐スクラッチ性が更に優れたものとなる。特に、着色層4と表面保護層5との硬度差がH〜2H(鉛筆硬度)となるように各層を形成する材料を選択すれば、より一層耐スクラッチ性に優れたものとすることができる。ここにおいて表面保護層5の硬度は4H以上、特に7H以上であるのが好ましい。
【0073】
こうした表面保護層5を有する本発明の導電性化粧シートは、家具、壁面などの表面保護性能が必要とされる部材等に好適に使用できる。
【0074】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明する。
【0075】
(実施例1)
基材として一般紙(三興製紙製:プリント30g/m2 )を用い、この基材上に下記配合の着色層用塗工剤A(着色剤としてチタン白、黄鉛および弁柄を主成分としたものを添加して使用)をグラビア印刷することにより乾燥後の塗工量が2g/m2 となるようにベタ着色層を形成し、さらに着色層用塗工剤A(着色剤として弁柄およびカーボンブラックを主成分としたものを添加して使用)をグラビア印刷することにより乾燥後の塗工量が2g/m2 となるように絵柄着色層を形成した。次いで、下記配合の表面保護層用塗工剤Bをグラビア印刷することにより乾燥後の塗工量が5g/m2 となるようにベタ着色層/絵柄着色層上に塗工した後、電子線を175keV、30kGy(3Mrad)の条件で照射して塗膜を架橋硬化させて、表面保護層を形成した。次いで、上記基材の着色層が形成されていない側の面に、下記配合のシーラー層用塗工剤Cを、グラビア印刷することにより乾燥後の塗工量が約5g/m2 となるようにシーラー層を形成した。次いで、下記配合の導電性塗料Dを、スクリーン印刷することにより碁盤目状の開口を有するパターンとなるように塗工し、オーブンで150℃、30分間乾燥することにより、導電層を形成した。形成した導電層の厚みは10μm程度であり、パターンの線幅は1mm、パターンの開口幅は9mm角とした。このようにして、本発明の図3に示すような導電性化粧シートを作製した。
着色層用塗工剤A;
ウレタンアクリレート:50重量部、アクリルポリオール:50重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート:3重量部
表面保護層用塗工剤B;
3官能ポリエステルアクリレートプレポリマー:41重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート:40重量部、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート:18重量部、シリコンアクリレート:1重量部
シーラー層用塗工剤C;
アクリル樹脂:40重量部、ニトロセルロース:20重量部、希釈溶剤:50重量部
導電性塗料D;
銀(平均粒径10μmの鱗片状粉末):60重量%、黒鉛粉末(平均粒径1μmの鱗片状粉末):4重量%、バインダー樹脂(ポリエステル樹脂:ブロックイソシアネート硬化剤=10:2):15重量%、希釈溶剤:21重量%
(実施例2)
導電性塗料Dの代わりに下記配合の導電性塗料Eを用いた他は、実施例1と同様にして、本発明の導電性化粧シートを作製した。
導電性塗料E;
銀(平均粒径10μmの鱗片状粉末):65重量%、バインダー樹脂(ポリエステル樹脂:ブロックイソシアネート硬化剤=10:2):15重量%、希釈溶剤:20重量%
(実施例3)
導電性塗料Dをシーラー層上の全面にスクリーン印刷によりベタ状に塗工して導電層を形成した他は、実施例1と同様にして、本発明の導電性化粧シートを作製した。
【0076】
(比較例1)
一般紙(三興製紙製:プリント30g/m2 )に、塩酢ビ系の着色層用塗工剤をグラビア印刷することにより2g/m2 程度のベタ着色層および2g/m2 程度の絵柄着色層を形成した。次いで、ウレタン系の表面保護層用塗工剤を、グラビア印刷することにより乾燥後の塗工量が5g/m2 程度となるように表面保護層を形成した。次いで、基材の着色層が形成されていない側の面に、厚さ10μmの銅箔を貼り合わせることにより導電層を形成した。このようにして比較例1の導電性化粧シート(図5(A)参照)を作製した。
【0077】
(比較例2)
一般紙(三興製紙製:プリント30g/m2 )に、上記配合の導電層用塗工剤Cをグラビア印刷することにより10μm程度のベタ着色層を形成し、塩酢ビ系の着色層用塗工剤をグラビア印刷することにより2g/m2 程度の絵柄着色層を形成した。次いで、ウレタン系の表面保護層用塗工剤を、グラビア印刷することにより乾燥後の塗工量が5g/m2 程度となるように表面保護層を形成した。このようにして比較例2の導電性化粧シート(図5(B)参照)を作製した。
【0078】
(比較例3)
シーラー層を設けなかった他は、実施例1と同様にして、比較例3の導電性化粧シートを作製した。
【0079】
(導電性化粧シートの評価)
作製した実施例1〜3および比較例1〜3の導電性化粧シートについて、導電性、意匠性、加工性、耐磨耗性、耐汚染性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0080】
導電性は、4端子測定法により、Loresta−GP、MCP−T600(三菱化学製)を用いて、形成された導電層表面の表面抵抗値を測定することにより評価した。ただし、比較例2においては、化粧シートの使用状態での表面抵抗値を測定した。表面抵抗値が10Ω/□以下の場合には○とし、表面抵抗値が10Ω/□を超えて500Ω/□以下の場合には△とし、表面抵抗値が500Ω/□を超えた場合には×とした。また、表面抵抗値を表1中に記載した。
【0081】
意匠性は、基材表面からの外観目視により評価した。意匠性が良好な場合を○とし、全体的に色が暗くなるなど、意匠性が悪い場合を×とした。
【0082】
加工性は、得られた導電性化粧シートの基材の着色層がない側の面に、酢酸ビニル系エマルジョン接着剤を介して軽カル板に貼り合わせ、曲げたりすることにより、加工性を評価した。化粧シートを貼り付けた軽カル板を湾曲させたりしても、化粧シートに影響がでない場合を○とし、板端において折り曲げがしにくかったり、いずれかの層に微少な断裂が入るなど、加工性が悪い場合を×とした。
【0083】
耐磨耗性は、JAS磨耗C試験の基準に従い、得られた化粧シートの表面保護層に、軟質磨耗輪二個を用いて荷重9.81N(1kgf)の条件で磨耗試験を行い、着色が半分とれるまでの回数を測定した。この回数が700回以上の場合は、耐磨耗性が良好であるとして○とし、700回未満の場合は、耐磨耗性が不良であるとして×とした。
【0084】
耐汚染性は、JAS汚染A試験の基準に従い、得られた化粧シートの表面保護層面にサラダ油を滴下し、24時間放置した後、残留した汚染物の状況を目視で観察して評価した。化粧シートの外観に変化がない場合は耐汚染性が良好であるとして○とし、汚染物により濡れ色に変化した場合は耐汚染性が不良であるとして×とした。
【0085】
【表1】
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の導電性化粧シートによれば、繊維質の材料からなる基材にシーラー層を介して導電層が形成されているので、繊維質の基材に導電層を形成する塗料が浸み込むことがなく、化粧シートにおける導電性のばらつきがなく、導電性化粧シートの品質が安定するという利点があり、また、従来よりもコストを低下させることができる。さらに、本発明の導電性化粧シートは、基材が繊維質の材料からなるため、プラスチック基材からなる化粧シートよりもコストが低く、また、曲げ加工適性が良好であるという利点がある。
【0087】
また、本発明の導電性化粧シートによれば、導電層がパターンで形成されているため、基材全面に導電層を設けた場合に比較して、コストを低下させることができるという利点がある。さらに、用途等に応じてパターン形状を自由に変更することができるので、例えばアンテナ形状にすることにより、単に電磁波を遮蔽するだけでなく、電磁波吸収性能を化粧シートに付与することができる。
【0088】
さらに、本発明の導電性化粧シートにおいて、導電層が基材の着色層を有していない側の面に形成させることにより、表面の意匠性を損なうことなく化粧シートに導電性を付与することができる。
【0089】
こうした本発明の導電性化粧シートは、電磁波シールドが要求される用途に対して好適に用いられるものであり、例えば、公共施設、ホール、病院、学校、企業ビル、住宅等の建築物の内装、建具の内装および車両の内装などに好ましく使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性化粧シートの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の導電性化粧シートの他の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の導電性化粧シートの他の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の導電性化粧シートに形成された導電層の平面パターンの各例を示す概略図である。
【図5】従来の導電性化粧シートの例を示す断面図である。
【符号の説明】
101、201、301 本発明の導電性化粧シート
1 基材
2 シーラー層
3 導電層
4 着色層
41 ベタ着色層
42 絵柄着色層
5 表面保護層
501、502 従来の導電性化粧シート
51 金属箔層
52 導電性隠蔽層
61 導電層のパターン
Claims (3)
- 基材、着色層、表面保護層を有し、基材が繊維質の材料からなり、基材にはシーラー層を介して導電層が形成されている導電性化粧シートであって、前記導電層が、前記基材の着色層を有していない側の面に形成されていると共に前記シーラー層が着色されていることを特徴とする導電性化粧シート。
- 前記導電層が、パターンで形成されることを特徴とする請求項1に記載の導電性化粧シート。
- 前記シーラー層が前記導電層のパターン形状にあわせたパターンで、かつ、前記導電層が形成される部分よりも広い面積で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の導電性化粧シート。
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