JP4239656B2 - 調湿デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸湿剤を用いて空気中の水分を吸着により除去し、吸湿剤に吸着した水分を加熱により脱着再生させる調湿デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、空気中の水分の吸脱着装置として、ハニカム状セラミックスの基材の表面に吸湿剤を担持し、この吸湿剤に空気中の水分を吸着させ、また吸湿剤に吸着した水分を外部から主に輻射熱や対流熱により加熱して脱着再生するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来のものでは、水分の脱着過程において吸湿剤の温度上昇が遅く、水分脱着温度に達するまでに時間が長くかかるという問題を有している。すなわち、吸着した水分を脱着させて吸湿剤を再生するには、基材を外部から主に輻射熱や対流熱により間接的に加熱しており、そしてセラミックスの基材を用いた場合、熱容量が大きく、かつ熱伝導率が低いことに起因して、水分脱着速度が遅いものであった。
【0004】
また、前記問題を解決するために、基材をハニカム状とした場合は、基材の温度分布が不均一となり、水分脱着効率が悪くなったり、空気中の塵などによってハニカム状の基材が目詰まりすることで、水分脱着効率が悪くなるなどの問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−24235号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、水分脱着効率を向上させる調湿デバイスを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、通電により発熱可能な焼鈍処理を施した金属基材と、前記金属基材の表面に形成した吸湿剤層とを有し、水分吸着時は非通電とし、水分脱着時に通電するようにした調湿デバイスを提供する。
【0008】
上記手段によれば、温度上昇が速く、温度分布が均一で水分脱着効率を向上させることができる。また、基材を金属とすることで、熱伝導率が大きく水分脱着効率の高い、そして形状保持が容易な調湿デバイスとすることができる。さらに、金属基材に焼鈍処理を施すことで、基材の耐食性を向上させ、かつアンカー効果により吸湿剤層との密着性を向上させることができ、高耐久性の調湿デバイスとすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
上記した本発明の目的は、各請求項に記載した構成を実施の形態とすることにより達成できるので、以下には各請求項の構成にその構成による作用効果を併記し、併せて請求項記載の構成のうち説明を必要とする特定用語については詳細な説明を加えて本発明における実施の形態の説明とする。
【0010】
請求項1記載に係る発明は、通電により発熱可能な焼鈍処理を施した金属基材と、前記金属基材の表面に形成した吸湿剤層とを有し、水分吸着時は非通電とし、水分脱着時に通電するようにしたもので、基材の発熱により温度上昇が速く、かつ温度分布が均一になり、水分脱着効率の高い調湿デバイスとすることができる。また、基材を金属とすることで、熱伝導率が大きく水分脱着効率の高い、そして形状保持が容易な調湿デバイスとすることができる。さらに、金属基材に焼鈍処理を施すことで、基材の耐食性を向上させ、かつアンカー効果により吸湿剤層との密着性を向上させることができ、高耐久性の調湿デバイスとすることができる。
【0011】
請求項2記載に係る発明は、特に第1の発明における金属基材として少なくともパンチングメタル、エキスパンドメタル、金網のうちのいずれか一種を用いることで、ヒータとして必要な抵抗値を確保することができ、従って抵抗値設計が容易となり、かつ熱容量が小さくて温度上昇が速く、そして温度分布も均一で水分脱着効率の高い調湿デバイスとすることができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1 における調湿デバイスを示し、かつそのA部を拡大断面した斜視図で、図2は、図1に示す調湿デバイスを展開した図である。
【0014】
図1において、1は通電により発熱する基材としてのエキスパンドメタルで、表面に吸湿剤層4が形成されている。2、2aはエキスパンドメタル1に通電する給電端子で、スポット溶接によりエキスパンドメタル1に取り付けられている。エキスパンドメタル1の材料としては、体積抵抗率が大きく、耐熱性、耐食性、耐孔食性に優れたFe−Cr−Al系耐熱鋼、Ni−Cr系耐熱鋼のいずれかが適している。本実施例では、エキスパンドメタル1の表面に形成する吸湿剤層4の熱膨張係数と整合するために、相対的に熱膨張係数が小さいFe−Cr−Al系耐熱鋼(R20−5SR t0.1mm(川崎製鉄製))を用いた。
【0015】
そして、以上のエキスパンドメタル1は、図1に示すように波板状に加工する。この時、繰返し応力による基材の破断を防止するため、山部1aと谷部1bに適切なR加工を施すと良い。
【0016】
次に、基材としてのエキスパンドメタル1の耐食性を向上させ、かつアンカー効果により吸湿剤層4との密着性を向上させる目的で、エキスパンドメタル1に焼鈍処理を施している。焼鈍処理温度としては、900〜1000℃が適切である。すなわち、900℃未満では酸化皮膜の形成量が不十分であり、1000℃より高くなると結晶粒の成長による脆化が問題になるためである。本実施例における焼鈍処理は大気中で行っているが、不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。
【0017】
こうして焼鈍を終了したエキスパンドメタル1は、その表面に図1のA部を拡大断面して示すようにアルミナを主成分とするアンダーコート層3を塗布し焼成を行った後、ゼオライトを主成分とする吸湿剤4a を設けて吸湿剤層4の作製を行った。
【0018】
吸湿剤層4は、ゼオライト100重量部、コロイダルシリカ30重量部、イオン交換水100重量部を攪拌、混合して形成しているものである。このスラリーを、アンダーコート層3の上に塗布した後、130℃で20分間乾燥させ、600℃で20分間焼成して吸湿剤層4を形成している。本実施例では、吸湿剤4aとしてゼオライトを用いたが、他にシリカゲルや活性アルミナを用いても良い。
【0019】
以上のように構成された調湿デバイスについて、以下その動作と作用を説明する。調湿デバイスは、図1に示すように対流ファン(図示せず)により吸引した3個の矢印で示す空気の流路に、エキスパンドメタル1の波板状を沿わせて配置する。そして、水分脱着するときは、対流ファンの回転を停止し、給電端子2、2a間に通電するとエキスパンドメタル1は発熱するとともに、この発熱により同時に吸湿剤層4も加熱される。そして、水分脱着温度に達した吸湿剤層4からは、吸着されていた水分が脱着する。このとき、一部が開放してある空気の流路から積極的に自然排気するようにすれば良い。
【0020】
次に、流れる空気中の水分を吸着するときは、前記した一部が開放してある空気の流路を閉じ、調湿デバイスの給電端子2、2a間を非通電状態にするとともに、対流ファンを回転させる。そして、エキスパンドメタル1は非加熱状態となり吸湿剤層4の温度は下がり、流通する空気中の水分が吸湿剤4aに吸着される。以上の動作を繰り返すことにより、空気中の水分が吸着され、目的とする除湿された空気を所定の個所へ供給することができる。
【0021】
以上の構成による本実施例では、次のような効果を期待することができる。エキスパンドメタル1を一例として採用した基材の表面に吸湿剤層4を形成し、エキスパンドメタル1に通電して直接発熱させ、その発熱を利用して吸湿剤層4を加熱するため、吸湿剤層4の温度上昇が速く、水分脱着温度に達するまでの時間が非常に短くなるものである。
【0022】
すなわち、従来のようにハニカム状セラミックスの基材の表面に吸湿剤を担持し、この吸湿剤に空気中の水分を吸着させ、吸湿剤に吸着した水分を外部から主に輻射熱や対流熱により間接的に加熱して脱着再生するものと比較して、本実施例では入力電力量を同一とした場合、約3倍の速度で水分脱着温度に達した。従来のものでは、吸湿剤層の温度が200℃に達するまでの時間は100Wで約60秒であったが、本実施例では100Wで20秒弱であった。以上の結果より、吸脱着サイクルが比較的短い使用用途においては、本実施例の調湿デバイスは非常に有用である。
【0023】
また、エキスパンドメタルを基材として用い、かつ波板状に加工しているため、表面積を大きく確保できるとともに、それでいて、従来におけるハニカム形状の基材のように目詰まりする心配がなく、性能低下が少ない高耐久の調湿デバイスとすることができる。
【0024】
また、ヒータとしてエキスパンドメタルを用いているため、抵抗値の設定を自由に行え、任意の電力を吸湿剤層に供給できるものである。すなわち図2、図3に示すエキスパンドメタルの板厚、幅S、長さL、きざみ幅K、LW、SWのいずれを変更することによっても抵抗値を変えることができるものである。また、基材がパンチングメタルの場合は、基材の板厚、幅S、長さL、パンチング穴形状、開口率のいずれを変更することによっても抵抗値を変えることができるものである。さらに、基材が金網の場合は、基材の線径、幅S、長さL、メッシュのいずれを変更することによっても抵抗値を変えることができるものである。
【0025】
また、基材であるエキスパンドメタル1は、900〜1000℃の雰囲気中で焼鈍しているため、表面に酸化物の緻密な不働態皮膜を形成することで、耐熱性、耐食性が向上し、かつアンカー効果によりアンダーコート層3または吸湿剤層4との密着性を向上させることができる。
【0026】
以上の効果を示すため、図1に示す調湿デバイスを用いて、基材の耐食試験および基材とアンダーコート層との密着性試験を行った。すなわち、耐食試験としては、酸、アルカリ、塩化ナトリウム溶液浸漬試験により評価し、密着性試験としては、600℃の炉で一定時間加熱してから水中に投入することによる熱衝撃試験により評価を行った。比較例としては、焼鈍処理しない基材を使用し、それ以外は本実施例と同じ構成の調湿デバイスを用いた。
【0027】
液温25℃、1%塩化ナトリウム溶液、0.5%硫酸、0.5%水酸化ナトリウムの各水溶液に両サンプルを浸漬した結果、熱処理した本実施例の基材は全く腐食されなかったが、未熱処理の基材では1%塩化ナトリウム溶液、0.5%硫酸において、錆の発生が認められた。
【0028】
次に、熱衝撃試験を行った結果、熱処理の基材を使用した本実施例ではアンダーコート層に剥れはなかったが、未熱処理の基材を使用したものでは一部に剥れが認められた。
【0029】
また、吸湿剤層は、各吸湿剤に対して最適なバインダーを用いることにより、より強固に基材に固着させることができるものである。本実施例では、コロイダルシリカを用いたが、水ガラス、リン酸アルミニウムを用いても同様の効果が期待されるものである。
【0030】
【発明の効果】
以上のように本発明は、焼鈍処理を施した金属基材の表面に吸湿剤層を形成し、前記金属基材を水分吸着時は非通電とし、水分脱着時に通電するようにしたことにより、温度上昇が速く、温度分布が均一で水分脱着効率の高い調湿デバイスを提供できる。また、基材を金属とすることで、熱伝導率が大きく水分脱着効率の高い、そして形状保持が容易な調湿デバイスとすることができる。さらに、金属基材に焼鈍処理を施すことで、基材の耐食性を向上させ、かつアンカー効果により吸湿剤層との密着性を向上させることができ、高耐久性の調湿デバイスとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1における調湿デバイスの全体と、そのA部を拡大断面して示す斜視図
【図2】 同実施例1における調湿デバイスの展開図
【図3】 同実施例1における調湿デバイスの要部の拡大図
【符号の説明】
1 エキスパンドメタル(基材)
2、2a 給電端子
3 アンダーコート層
4 吸湿剤層
4a 吸湿剤
Claims (2)
- 通電により発熱可能な焼鈍処理を施した金属基材と、前記金属基材の表面に形成した吸湿剤層とを有し、水分吸着時は非通電とし、水分脱着時に通電するようにした調湿デバイス。
- 前記金属基材は、少なくともパンチングメタル、エキスパンドメタル、金網のうちいずれか一種を用いてなる請求項1に記載の調湿デバイス。
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